【原ゆみこのマドリッド】誰もが2冠を目指している…
2016.04.16 14:50 Sat
▽「それぞれ1つずつって訳にはいかないか」そんな風に私が思い巡らしていたのは金曜日。CL準決勝の抽選が始まるのを待っていた時のことでした。いやあ、このミッドウィークに終わった準々決勝2ndレグではマドリッドの両雄共にremontada(レモンターダ/逆転突破)に成功。おかげであと2回は私も地元を離れず、ヨーロッパの試合を見られることになったんですけどね。レアル・マドリーもアトレティコもあと3試合でCLに優勝できるのと同時に、リーガの方も前節で首位のバルサとの勝ち点差が縮まって、それぞれ4と3。要はこちらも逆転優勝が視野に入ってきたため、となれば、どちらのチームも目標がdoblete(ドブレテ/2冠優勝)になるのは当然だったから。
▽ただ、それが可能なスペインのチームはまだあって、CL準決勝敗退で、前人未到の2年連続triplete(トリプレテ/3冠優勝)の夢は消えたものの、バルサもリーガとすでに決勝進出が決まっているコパ・デル・レイのトロフィーを獲得することはできますしね。木曜日にアスレティックとのヨーロッパリーグ準々決勝2ndレグでは、こちらもレモンターダだったんですが、壮絶な延長、PK戦を勝ち抜いたセビージャもEL3連覇の偉業へ向けて前進。もちろんコパ決勝でもバルサを倒して優勝すれば2冠をゲット。でもこういうのって、両方獲れれば最高ですが、どちらも叶わなかった場合、かなりガッカリしちゃうんですよね。
▽まあ、そんな話はともかく、とりあえず、マドリッド勢の2ndレグがどうだったか、お伝えしておくことにすると。冬に逆戻りしたような寒さ、雨が降ったりやんだりという、気の滅入るような天気の火曜日、先に試合をしたのはマドリーでした。いえ、それでもファンはサンティアゴ・ベルナベウ入りするチームバスを大群衆で迎えて、レモンターダの雰囲気を盛り上げたんですよ。モザイクこそ、fondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏)のみ限られましたが、スタンドを華やかに彩って、ジダン監督率いるチームは1stレグのリベンジをすべく軽やかにスタート。
▽実際、対戦をイーブンに戻すのもあっという間で、15分にはカルバハルのクロスをゴール前でアーノルトがクリアし損ね、その後ろにいたクリスチアーノ・ロナウドが押し込んで先制。その2分後、クロースのCKをまたしてもロナウドが今度は頭で決めているんですから、こんな楽なレモンターダはない? それこそ、だったらどうして1stレグで負けたんだと突っ込みたくなりましたが、ジダン監督が事前に落ち着いてプレーすることを強調していたせいでしょうかね。3点目は後半、セルヒオ・ラモスのヘッドがゴールポストに当たり、さらに敵GKベナリオの背中で止まってゴールにならなかったせいもあって、75分を過ぎるまで生まれず。
▽ええ、わざわざ自陣ゴールから駆けつけたGKケイロル・ナバスに「Me dijo que corriera despacio para lanzar la falta/メ・ディホ・ケ・コリエラ・デスパシオ・パラ・ランサル・ラ・ファルタ(FKを蹴る時にはゆっくり走った方がいいと言われた)」(ロナウド)とアドバイスされたおかげか、丁度、ボールの軌道上にいたナウドが腰を捻って空いた隙間を通って、すっぽりゴールに入ってくれたから、「この天気で延長戦なんてありえない!」と思っていたファンたちにはどんなに有難かったことか。うーん、前半30分にチームで一番いいアタッカーのドラクスラーがカルバハルとの接触プレーで負傷。交代を与儀なくされたこともあって、ヴォルフスブルクもまったくいいところを見せられませんでしたしね。
▽ちなみに試合後のミックスゾーンでは、各国TVの集合インタビューでスペイン語、英語、ポルトガル語を駆使して、次々と質問に答えていたロナウドはこの日でもう、今季のCLで3回目のハットトリック。「Voy a intentar siempre ayudar con goles y asistencias, y goles son mi ADN/ボイ・ア・インテンタール・シエンプレ・アジュダル・コン・ゴーレス・イ・アシステンシアス、イ・ゴーレス・ソン・ミ・アーデーエネ(ボクは常にゴールとアシストでチームを助けるつもりだ。ゴールは自分のDNIにあるしね)」と話していましたが、そうであれば、次は1stレグから頑張ってくれるといいのですが。
▽そして翌水曜日、こちらは雨の中、前日の夕方には合宿先のホテル・モンテ・レアル前に500人のサポーターが集合、bengala(ベンガラ/発煙筒)を盛大に炊いて迎えられた後、アトレティコはビセンテ・カルデロンでバルサと対戦。もちろん、スタジアム入りするチームバスも入り口にたどり着くまで、大勢のファンに囲まれて大変だったんですが、やっぱりスタンド3面をモザイクが覆い、“Juntos hacia la Victoria/フントス・アシア・ラ・ビクトリア(一緒に勝利へ)"という標語を見れば、選手たちだって勇気づけられますよね。出場停止のフェルナンド・トーレスもパルコ(貴賓席)から応援する中、先週の1stレグ同様、序盤からアトレティコは攻めていきます。
▽え、ポゼッションがたったの28%しかなかったというのに、どうしてアトレティコが優勢に見えたのかって? うーん、カウンターでカラスコなどがチャンスを作ったこともありますが、ここまでバルサに7連敗している彼らはシメオネ監督にしっかり仕込まれて、「Fue un partido muy táctico/フエ・ウン・パルティードー・ムイ・タクティコ(とても戦術的な試合だった)。ウチは細部までわかっていて、敵の誰がボールを持った時までポジション取りが決まっていた」(フィリペ・ルイス)というように、コケやサウルがSBの上がりもキッチリ抑え、バルサに突け込む隙を与えず。しかも敵陣で高めにプレスをかけたのが功を奏し、とうとう35分にはジョルディ・アルバのクリアミスを誘い出すことに。
▽エリア近くでボールを回収したガビがサウルに送ると、彼の上げたクロスがグリーズマンの頭にジャストミート。ええ、GKテア・シュテーゲンの手も届かず、ネットに収まって、早くも1stレグでの2-1負けを引っくり返してしまったから、ビックリしたの何のって。おまけに以前の試合の轍を踏まないよう学習していた選手たちはハーフタイムの笛を聞くまで、退場者だって出さなかったとなれば、あとは上手く逃げ切ってくれることを祈るばかりだったんですが…。
▽まあ、シメオネ監督も「ハーフタイムには計画通りやるように伝えたが、そのまったく反対のことが起きてしまった」と言っていたように、そう簡単にはいきませんね。このままだと敗退してしまう敵が猛攻をかけてきたため、後半はまたしても自陣に貼りつくことになったアトレティコでしたが、やはりメッシとネイマールの調子が悪いとバルサも得点力がグッと落ちるんですね。
▽それでもゴディンなど、ウルグアイ代表チームメートのルイス・スアレルとボールを争った際にcodazo(コダソ/肘打ち)を喰らい、右の瞼を腫らしていましたが、バルサにレッドカードが出ないのはお約束のようなもの。それだけに85分、フィリペ・ルイスが、どこに体力が残っていたのかと驚くようなドリブル突破を見せ、エリア内にいたグリーズマンに送ったラストパスがイニエスタの手に当たり、ハンドでアトレティコにPKが与えられた時に思わず、目をこすったのは私だけではなかった?
▽そのPKを、FWなのに最近はガビやコケ並に守備にも走っていて、やっぱり足がもうヘロヘロしていたはずのグリーズマンがまた、生まれたばかりの娘さん、ミアちゃんに捧げようと決めてくれたんですよ! テア・シュテーゲンの手が触れてちょっと危なかったとはいえ、2-0となれば、全精力を込めて応援していたサポーターたちだって、どんなに安心したことでしょう。ただ、終了間際にはドッキリもあって、イニエスタのシュートをガビがペナルティエリアライン上で手に当ててしまうというアクシデントが発生。
▽いやあ、これは後で当人も「Le doy con la mano/レ・ドイ・コン・ラ・マノ(手に当たったよ)」と素直に認めていましたが、審判はラインの外側と判断してFKを指示。ええ、「El abitro a veces te dan y otras quitan/エル・アルビトロ・ア・ベセス・テ・ダン・イ・オトラス・キタン(審判は時には与えてくれたり、取り上げたりする)」(ガビ)もんですからね。メッシのFKが外れ、バルサが延長戦に持ち込める1点を取れなくたって、いくら試合後、ピケがシメオネ監督に「ガビのハンドはPK、レッドカードだ!」とイチャモンをつけに来たって、アトレティコのせいじゃありません。
▽その結果、総合スコア3-2で彼らはお隣さんの専売特許だったレモンターダを達成。いやあ、「Acabamos el partido con 11 y eso era importante/アカバモス・エル・パルティードー・コン・オンセ・イ・イソ・エラ・インポルタンテ(ウチは試合を11人で終えて、それは大事なこと)」(グリーズマン)という意見もありますけどね。何より凄いのはシメオネ監督の影響力で、この試合の間中、選手たちもファンも「Nunca dejes de creer/ヌンカ・デヘス・デ・クレエル(決して信じることを止めてはいけない)」というモットーを一言も疑わずに行動。
▽そこへ、「ウチは選手もスタッフもクラブ全員、そしてファンも同じ価値感に寄り添っている。昨今の社会では少なくなりつつある人生の価値観だ」なんて話をシメオネ監督から記者会見で聞いたりしたら、もうこの人、カリスマ教祖様みたいになっているとしか思えませんって。でもねえ、何せアトレティコは1憶ユーロの値段がつく天才的な選手を持たない普通人たちのチーム。この試合だって、チーム全体でバルサより12キロも多く走っていますし、簡単には繋がらないパスを自慢の体力と助け合いの精神で補おうとする努力は称賛に値するかも。
▽そんな彼らにはファンたちも大感激して、試合後はしばらく誰も帰らず。先日のベティス戦のように、スタンドから乞われて選手たちも1度、ピッチに戻って来たんですが、その時の様子はコケの撮影したビデオを見るとよくわかるかと。うーん、実は前日のサンティアゴ・ベルナベウでもマドリーの選手たちがファンに感謝して出て来ていたんですけどね。何となく場内の人が少ないような気がするのはきっと、きっとイヤな天気だったからですよね。
▽そして金曜日、UEFAの抽選会では、フィリペ・ルイスの「Lo unico que pido en semifinales es que no nos toque el Real Madrid/ロ・ウニコ・ケ・ピド・エン・セミフィナレス・エス・ケ・ノー・ノス・トケ・エル・レアル・マドリッド(マドリーだけには準決勝で当たりたくない)」という望みが叶い、アトレティコは同じ水曜日にベンフィカを総合スコア3-2で破ったバイエルンと顔を遭わすことに。マドリーはPSGをやはり同じスコアで破ったマンチェスター・シティと戦います。ちなみにELの方ではセビージャが準々決勝でブラガを破ったシャフタールと、スパルタ・プラハを一蹴したビジャレアルがドルトムントに脅威の逆転勝ちをしたリバプールと対戦。まだどうなるかは予測しませんが、5月の決勝がCL、EL揃ってスペイン勢対決になるかもしれないって、ちょっとデル・ボスケ代表監督が困るかもしれないですよ。
▽え、状況が変わった今、マドリッドの両雄は週末のリーガにも気を張って取り組まないといかないんだろうって? そうですね、ただ、アトレティコは2位も守りたいですし、大体がして、常に勝つことしか念頭にないため、日曜日午後6時15分(日本時間翌午前1時15分)キックオフ、残留争いをしている17位グラナダとのホームゲームも今度はトーレスが使えるという以外、ベストメンバーで取り組むことになりますが、土曜日午後4時(日本時間翌午前零時)からヘタフェとのダービーに挑むジダン監督はローテーションを宣言。
▽ラモス、カゼミロ、ダニーロがお休みをもらい、前節のエイバル戦同様、イスコやハメス・ロドリゲスが先発に入るようですが、何せ近場と言えと、コリセウム・アルフォンソ・ペレスは苦手なアウェイですからね。金曜日にレバンテがエスパニョールに勝ったため、最下位でスタートするヘタフェもエスクリバ監督から、2009-11シーズンにはミチェル監督のアシスタントを務めていたスナイデル監督に交代して、残り6試合で残留を掴もうと必死なため、油断は禁物。とはいえ、別に戦力を落としたって、弟分チームより何倍もいい選手が出てくるのですから、丁度、水曜日に夏のユーロ大会のフランス代表には招集されないことになったと通達を受けたベンゼマは気落ちしているかもしれませんが、あとは各人のやる気次第かと。
▽16位のラージョの方はアトレティコと同じ時間にエスタディオ・バジェカスにELフィーバー中のビジャレアルを迎えますが、こちらもあまり降格圏から離れていないため、頑張らないと。いやあ、シーズン最後まで緊張した試合が続くのはいいものの、今季のマドリッド勢の上下格差の激しさには私も参ってしまいますよ。
▽ただ、それが可能なスペインのチームはまだあって、CL準決勝敗退で、前人未到の2年連続triplete(トリプレテ/3冠優勝)の夢は消えたものの、バルサもリーガとすでに決勝進出が決まっているコパ・デル・レイのトロフィーを獲得することはできますしね。木曜日にアスレティックとのヨーロッパリーグ準々決勝2ndレグでは、こちらもレモンターダだったんですが、壮絶な延長、PK戦を勝ち抜いたセビージャもEL3連覇の偉業へ向けて前進。もちろんコパ決勝でもバルサを倒して優勝すれば2冠をゲット。でもこういうのって、両方獲れれば最高ですが、どちらも叶わなかった場合、かなりガッカリしちゃうんですよね。
▽まあ、そんな話はともかく、とりあえず、マドリッド勢の2ndレグがどうだったか、お伝えしておくことにすると。冬に逆戻りしたような寒さ、雨が降ったりやんだりという、気の滅入るような天気の火曜日、先に試合をしたのはマドリーでした。いえ、それでもファンはサンティアゴ・ベルナベウ入りするチームバスを大群衆で迎えて、レモンターダの雰囲気を盛り上げたんですよ。モザイクこそ、fondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏)のみ限られましたが、スタンドを華やかに彩って、ジダン監督率いるチームは1stレグのリベンジをすべく軽やかにスタート。
▽ええ、わざわざ自陣ゴールから駆けつけたGKケイロル・ナバスに「Me dijo que corriera despacio para lanzar la falta/メ・ディホ・ケ・コリエラ・デスパシオ・パラ・ランサル・ラ・ファルタ(FKを蹴る時にはゆっくり走った方がいいと言われた)」(ロナウド)とアドバイスされたおかげか、丁度、ボールの軌道上にいたナウドが腰を捻って空いた隙間を通って、すっぽりゴールに入ってくれたから、「この天気で延長戦なんてありえない!」と思っていたファンたちにはどんなに有難かったことか。うーん、前半30分にチームで一番いいアタッカーのドラクスラーがカルバハルとの接触プレーで負傷。交代を与儀なくされたこともあって、ヴォルフスブルクもまったくいいところを見せられませんでしたしね。
▽せっかく春爛漫の暖かいスペインでの試合を期待していたドイツからのサポーターたちにとっても気の毒な遠征になってしまいましたが、実際、彼らはこれが初めてのCL準々決勝ですからね。ここまで来られないチームも沢山ある上、ベルナベウ恒例のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)にも遭わなかったのですから、まあ良しとしてもらいましょうか。
▽ちなみに試合後のミックスゾーンでは、各国TVの集合インタビューでスペイン語、英語、ポルトガル語を駆使して、次々と質問に答えていたロナウドはこの日でもう、今季のCLで3回目のハットトリック。「Voy a intentar siempre ayudar con goles y asistencias, y goles son mi ADN/ボイ・ア・インテンタール・シエンプレ・アジュダル・コン・ゴーレス・イ・アシステンシアス、イ・ゴーレス・ソン・ミ・アーデーエネ(ボクは常にゴールとアシストでチームを助けるつもりだ。ゴールは自分のDNIにあるしね)」と話していましたが、そうであれば、次は1stレグから頑張ってくれるといいのですが。
▽そして翌水曜日、こちらは雨の中、前日の夕方には合宿先のホテル・モンテ・レアル前に500人のサポーターが集合、bengala(ベンガラ/発煙筒)を盛大に炊いて迎えられた後、アトレティコはビセンテ・カルデロンでバルサと対戦。もちろん、スタジアム入りするチームバスも入り口にたどり着くまで、大勢のファンに囲まれて大変だったんですが、やっぱりスタンド3面をモザイクが覆い、“Juntos hacia la Victoria/フントス・アシア・ラ・ビクトリア(一緒に勝利へ)"という標語を見れば、選手たちだって勇気づけられますよね。出場停止のフェルナンド・トーレスもパルコ(貴賓席)から応援する中、先週の1stレグ同様、序盤からアトレティコは攻めていきます。
▽え、ポゼッションがたったの28%しかなかったというのに、どうしてアトレティコが優勢に見えたのかって? うーん、カウンターでカラスコなどがチャンスを作ったこともありますが、ここまでバルサに7連敗している彼らはシメオネ監督にしっかり仕込まれて、「Fue un partido muy táctico/フエ・ウン・パルティードー・ムイ・タクティコ(とても戦術的な試合だった)。ウチは細部までわかっていて、敵の誰がボールを持った時までポジション取りが決まっていた」(フィリペ・ルイス)というように、コケやサウルがSBの上がりもキッチリ抑え、バルサに突け込む隙を与えず。しかも敵陣で高めにプレスをかけたのが功を奏し、とうとう35分にはジョルディ・アルバのクリアミスを誘い出すことに。
▽エリア近くでボールを回収したガビがサウルに送ると、彼の上げたクロスがグリーズマンの頭にジャストミート。ええ、GKテア・シュテーゲンの手も届かず、ネットに収まって、早くも1stレグでの2-1負けを引っくり返してしまったから、ビックリしたの何のって。おまけに以前の試合の轍を踏まないよう学習していた選手たちはハーフタイムの笛を聞くまで、退場者だって出さなかったとなれば、あとは上手く逃げ切ってくれることを祈るばかりだったんですが…。
▽まあ、シメオネ監督も「ハーフタイムには計画通りやるように伝えたが、そのまったく反対のことが起きてしまった」と言っていたように、そう簡単にはいきませんね。このままだと敗退してしまう敵が猛攻をかけてきたため、後半はまたしても自陣に貼りつくことになったアトレティコでしたが、やはりメッシとネイマールの調子が悪いとバルサも得点力がグッと落ちるんですね。
▽それでもゴディンなど、ウルグアイ代表チームメートのルイス・スアレルとボールを争った際にcodazo(コダソ/肘打ち)を喰らい、右の瞼を腫らしていましたが、バルサにレッドカードが出ないのはお約束のようなもの。それだけに85分、フィリペ・ルイスが、どこに体力が残っていたのかと驚くようなドリブル突破を見せ、エリア内にいたグリーズマンに送ったラストパスがイニエスタの手に当たり、ハンドでアトレティコにPKが与えられた時に思わず、目をこすったのは私だけではなかった?
▽そのPKを、FWなのに最近はガビやコケ並に守備にも走っていて、やっぱり足がもうヘロヘロしていたはずのグリーズマンがまた、生まれたばかりの娘さん、ミアちゃんに捧げようと決めてくれたんですよ! テア・シュテーゲンの手が触れてちょっと危なかったとはいえ、2-0となれば、全精力を込めて応援していたサポーターたちだって、どんなに安心したことでしょう。ただ、終了間際にはドッキリもあって、イニエスタのシュートをガビがペナルティエリアライン上で手に当ててしまうというアクシデントが発生。
▽いやあ、これは後で当人も「Le doy con la mano/レ・ドイ・コン・ラ・マノ(手に当たったよ)」と素直に認めていましたが、審判はラインの外側と判断してFKを指示。ええ、「El abitro a veces te dan y otras quitan/エル・アルビトロ・ア・ベセス・テ・ダン・イ・オトラス・キタン(審判は時には与えてくれたり、取り上げたりする)」(ガビ)もんですからね。メッシのFKが外れ、バルサが延長戦に持ち込める1点を取れなくたって、いくら試合後、ピケがシメオネ監督に「ガビのハンドはPK、レッドカードだ!」とイチャモンをつけに来たって、アトレティコのせいじゃありません。
▽その結果、総合スコア3-2で彼らはお隣さんの専売特許だったレモンターダを達成。いやあ、「Acabamos el partido con 11 y eso era importante/アカバモス・エル・パルティードー・コン・オンセ・イ・イソ・エラ・インポルタンテ(ウチは試合を11人で終えて、それは大事なこと)」(グリーズマン)という意見もありますけどね。何より凄いのはシメオネ監督の影響力で、この試合の間中、選手たちもファンも「Nunca dejes de creer/ヌンカ・デヘス・デ・クレエル(決して信じることを止めてはいけない)」というモットーを一言も疑わずに行動。
▽そこへ、「ウチは選手もスタッフもクラブ全員、そしてファンも同じ価値感に寄り添っている。昨今の社会では少なくなりつつある人生の価値観だ」なんて話をシメオネ監督から記者会見で聞いたりしたら、もうこの人、カリスマ教祖様みたいになっているとしか思えませんって。でもねえ、何せアトレティコは1憶ユーロの値段がつく天才的な選手を持たない普通人たちのチーム。この試合だって、チーム全体でバルサより12キロも多く走っていますし、簡単には繋がらないパスを自慢の体力と助け合いの精神で補おうとする努力は称賛に値するかも。
▽そんな彼らにはファンたちも大感激して、試合後はしばらく誰も帰らず。先日のベティス戦のように、スタンドから乞われて選手たちも1度、ピッチに戻って来たんですが、その時の様子はコケの撮影したビデオを見るとよくわかるかと。うーん、実は前日のサンティアゴ・ベルナベウでもマドリーの選手たちがファンに感謝して出て来ていたんですけどね。何となく場内の人が少ないような気がするのはきっと、きっとイヤな天気だったからですよね。
▽そして金曜日、UEFAの抽選会では、フィリペ・ルイスの「Lo unico que pido en semifinales es que no nos toque el Real Madrid/ロ・ウニコ・ケ・ピド・エン・セミフィナレス・エス・ケ・ノー・ノス・トケ・エル・レアル・マドリッド(マドリーだけには準決勝で当たりたくない)」という望みが叶い、アトレティコは同じ水曜日にベンフィカを総合スコア3-2で破ったバイエルンと顔を遭わすことに。マドリーはPSGをやはり同じスコアで破ったマンチェスター・シティと戦います。ちなみにELの方ではセビージャが準々決勝でブラガを破ったシャフタールと、スパルタ・プラハを一蹴したビジャレアルがドルトムントに脅威の逆転勝ちをしたリバプールと対戦。まだどうなるかは予測しませんが、5月の決勝がCL、EL揃ってスペイン勢対決になるかもしれないって、ちょっとデル・ボスケ代表監督が困るかもしれないですよ。
▽え、状況が変わった今、マドリッドの両雄は週末のリーガにも気を張って取り組まないといかないんだろうって? そうですね、ただ、アトレティコは2位も守りたいですし、大体がして、常に勝つことしか念頭にないため、日曜日午後6時15分(日本時間翌午前1時15分)キックオフ、残留争いをしている17位グラナダとのホームゲームも今度はトーレスが使えるという以外、ベストメンバーで取り組むことになりますが、土曜日午後4時(日本時間翌午前零時)からヘタフェとのダービーに挑むジダン監督はローテーションを宣言。
▽ラモス、カゼミロ、ダニーロがお休みをもらい、前節のエイバル戦同様、イスコやハメス・ロドリゲスが先発に入るようですが、何せ近場と言えと、コリセウム・アルフォンソ・ペレスは苦手なアウェイですからね。金曜日にレバンテがエスパニョールに勝ったため、最下位でスタートするヘタフェもエスクリバ監督から、2009-11シーズンにはミチェル監督のアシスタントを務めていたスナイデル監督に交代して、残り6試合で残留を掴もうと必死なため、油断は禁物。とはいえ、別に戦力を落としたって、弟分チームより何倍もいい選手が出てくるのですから、丁度、水曜日に夏のユーロ大会のフランス代表には招集されないことになったと通達を受けたベンゼマは気落ちしているかもしれませんが、あとは各人のやる気次第かと。
▽16位のラージョの方はアトレティコと同じ時間にエスタディオ・バジェカスにELフィーバー中のビジャレアルを迎えますが、こちらもあまり降格圏から離れていないため、頑張らないと。いやあ、シーズン最後まで緊張した試合が続くのはいいものの、今季のマドリッド勢の上下格差の激しさには私も参ってしまいますよ。
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