【原ゆみこのマドリッド】逆転できる? できない?

2016.04.12 13:30 Tue
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▽「次のレアル・マドリー戦、どうするんだろう」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、前日はヨーロッパリーグ疲れをしているはずのビジャレアルにも2-0で負け、とうとう12試合白星なし。残りが6試合しかないにも関わらず、一向に降格圏から脱出する気配のないヘタフェがエスクリバ監督を解任したというニュースをスポーツ紙のサイトで見つけた時のことでした。

▽いやあ、先週末のリーガが始まる前とは状況が一変したリーガとはいえ、今日び、マドリー関係者が気にしているとは思いませんけどね。逆にヘタフェとしてはもう、相手が強豪だろうが何だろうが、とにかく勝ち点を溜めなければ後がない今、土曜のコリセウム・アルフォンソ・ペレスで指揮を執る後任候補の名前も出てこないまま、監督がいなくなったら、選手たちも何をどう練習したらいいか、困ってしまうのでは?

▽まあ、それはともかく、32節の前にはこの火曜のCL準々決勝のボルフスブルクとの2ndレグでremontada(レモンターダ/逆転突破)をすることしか頭になく、エイバル戦など、まるで消化試合の扱いだったマドリーなんですが、今週になって、何が一体、どう変わったのか、説明していくことにすると。土曜の午後4時、アジアのファンが見やすいプレミアムタイムにサンティアゴ・ベルナベウでキックオフした彼らはCL戦を念頭に置いて、クリスチアーノ・ロナウドを除き、主だった選手たちをローテーション。それでもやはり、エイバルとはレベルの差がありすぎるんでしょうかね。前半4分にはエリア近くからのFKをハメス・ロドリゲスが見事に捻じ込んで、あっさり先制点を奪います。
▽さらに17分にはロナウドのラストパスをルーカス・バスケスが決め、19分にも今度はヘセのアシストでロナウドも今季リーガ30本目をゲット。そして最後は38分、またしてもロナウドがヘルプ役に回り、ヘセにゴールをプレゼントと実に効率良く、スコアを4-0にすることに。うーん、後半は無駄撃ちを嫌ったか、ハメスやイスコら、最近あまり先発で使ってもらえてない選手たちが疲れてしまったのか、それ以上のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)にはなりませんでしたけどね。

▽カルバハルがダニーロに代わってからは、先週、アウェイで2-0の負けを喫した戦犯と、ファンに思い込まれてしまった彼にpito(ピト/ブーイング)が飛んでいたりもしたんですが、それは経験者であるジダン監督も「Aqui se ha pitado a todos los jugadores/アキー・セ・ア・ピタードー・ア・トードス・ロス・フガドーレス(ここではどんな選手もブーイングされた)」と言っていましたし、ベルナベウではありがちなことなので、大して気にすることはないかと。
▽そんな感じで、エイバルのメンディリバル監督も最初から勝負を諦めていたような展開だった試合は結局、乾貴士選手も出場することなく4-0で終了。ベルナベウでのマドリーにしては珍しくない得点数だったせいもあって、試合後はジダン監督も、ミックスゾーンに出て来たルーカス・バスケスやナチョも、スタンドから何度も聞こえた「Echarle huevos, el martes echarle huevos/エチャーレ・ウエボス、エル・マルテス・エチャレ・ウエボス(火曜は根性見せろ)」というカンティコ(メロディのついたシュプレヒコール)に応えて、「Vamos a jugar a tope el martes/バモス・ア・フガール・ア・トペ・エル・マルテス(火曜はトップギアでプレーする)」と誓ってお開きとなったんですが、それまでラジオでアトレティコ戦を聞きながら、私がイライラしていたのはまた別の話。

▽というのもその日の次の時間帯、アウェイでエスパニョール戦に挑んだ彼らが前半28分にはCKからディオプにヘッドを決められ、先制されてしまっていたから。いやあ、後で映像を見るまで、オンダ・マドリッド(ローカル・ラジオ局)の実況アナが「マークについていたファンフランはジャンプしてボールを競り合うどころか、かがんでいましたよ」と呆れたように言っていたのには、まったく状況が読めず、お隣さんとは一線を画して、CL準々決勝2ndレグに備えてのローテーションもしていないくせに一体、何をやっているんだろうかと、その時は頭がクラクラしていたものでしたけどね。

▽その問題はメトロ(地下鉄)のサンティアゴ・ベルナベウ駅に着く前に解決。ええ、35分にはコケが中盤左サイドから放ったパスをフェルナンド・トーレスが受け、同点ゴールを決めてくれたから、ひとまず安心です。うーん、これで彼も3試合連続得点となると、返す返すもゴールが絶対必要な水曜のバルサ戦に出られないのが残念なんですけどね。それでも家の近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に腰を落ち着けて見た1-1から始まった後半、アトレティコがファンを力づけてくれるようなパフォーマンスを見せてくれたから、嬉しかったの何のって。

▽それは12分、同点に追いつかれてから、対応方法がわからなくなったようなエスパニョールDF陣をエリア前でトーレスとコケが翻弄してから、後者がグリースマンにラストパス。そのシュートがゴールポストに当たり、ピンボールのように反対側のネットで止まって、とうとう逆転に成功します。おかげで、すでにライン際にはコレアとトマスが待機、シメオネ監督の早めの交代策で、カラスコと共に温存されるはずだったグリースマンも先週、生まれた第1子のお嬢さんへ捧げるおしゃぶりのポーズもできて、バルサ戦には余計なことを考えずに没頭してもらえるのは有難いかと。

▽でも、その日はこれで終わりではなく、まだオマケがあったんですよ。このところ、アシストの勘が戻ってきたコケでしたが、それだけではやっぱり物足りなかったんでしょうかね。27分にはエリア内の絶好の位置からのvolea(ボレア/ボレーシュート)をGKパウにセーブされてしまったものの、43分にはトーレスが低いクロスをゴール前に上げて後輩に恩返し。コケのヘッドでゴールが決まり、試合は1-3で終わることに。ええ、同じスコアをバルサ戦で挙げられれば突破できるせいか、試合後の選手たちも「Confiamos en remontar, si no, no saldriamos a jugar/コンフィアモス・エン・レモンタール、シー・ノー、ノー・サルドリアモス・ア・フガール(逆転することに自信を持っている。そうじゃなきゃ、プレーしにピッチに出たりしないよ)」(コケ)と楽観的でしたっけ。

▽え、その日の試合後の記者会見でシメオネ監督が「hay que insistir y creer en lo que uno hace/アイ・ケ・インシスティール・イ・クレエル・エン・ロ・ケ・ウノ・アセ(自分のやっていることを信じて粘らないといけない)。起こらなきゃならないことは勝手に起こるんだから」と、あくまでリーガを諦めない姿勢を示していたのはすでに、続く時間帯でキックオフしたバルサがアノエタ(レアル・ソシエダのホーム)で開始4分にオジャルサバルに先制点を奪われ、0-1で負けているという報が入っていたからかって?

▽いやあ、その辺の時間関係は私にはよくわからないんですが、丁度、選手たちがパワー8スタジアム(エスパニョールのホーム)のミックスゾーンで応対をしていた時には伝わっていたよう。とはいえ、あのバルサのことですから、ぬか喜びはしたくないと、エル・プラッツ空港でチャーター便の離陸を遅らせて、彼らは試合終了を待っていたそうなんですけどね。何と最後までそのスコアのまま、負けてしまったとなれば、とても快適なフライトになったのは想像できるかと。

▽そう、この結果、首位バルサとアトレティコの差は勝ち点3に、3位マドリーとの差は4に縮小。もちろんどちらも直接対決のゴールアベレージで不利なので、相手には1敗1分け以上してもらわないといけないんですけどね。それでもこの先、降格を避けるために必死のスポルティングやグラナダが窮鼠猫を噛むことになるかもしれないし、リアソル(デポルティボのホーム)やベニト・ビジャマリン(同ベティス)で躓くかもしれないし、まさに「Hay Liga/アイ・リーガ(リーガはある)。あと6節、開かれた情熱的なレースで、一番いいチームが勝つだろう」(ルイス・エンリケ監督)という状態になったということじゃないですか!

▽ただこのせいで、他にも再燃した争いがあって、それはバルサのピケとマドリーのアルベロアの舌戦。いえ、その日のエイバル戦に先発して、その後、ソシエダ戦を見ていた後者が「Que dificil es ganar contra 11!/ケ・デフィシル・エス・ガナール・コントラ・オンセ(11人相手に勝つのは何て難しいんだ)。イジャラ、グラネロ、いい試合だったぞ」と、皮肉も混じっていたものの、元チームメートの2人にお祝いをツィッターで言ったのは別に構わないと思うんですけどね。それについて、アノエタのミックスゾーンで訊かれたピケの返事が最悪。

▽曰く、「32歳になって、たった1度しか先発してない選手の言うことなんか、注目に値しない。いつも自分の友人には、ボクが同じ立場になったら、ピッチで主役じゃないなら、外でもそうなるなと言ってくれと頼んでいる」って、でも、マドリーの失敗をあげつらうようなツィートをいつもしてくるのはそっちでしょ? おまけにアルベロアの方もこの挑発に乗ってしまい、「Pues tenia razon. Peliculon. La verdad duele/プエス・テニア・ラソン。ペリクロン。ラ・ベルダッド・ドゥエレ(君の言う通りだ。大作映画。真実は痛いものだ)」と、先週のボルフスブルク戦の後、映画の感想に見せかけた嫌味な相手のツィートに応酬しているんですから、ちょっと本当に32歳?

▽その返しのピケのツィート、「Peliculon lleva tilde/ペリクロン・ジェバ・ティルデ(ペリクロンの綴りにはアクセント記号がつくんだ。)」、アルベロアの「Igual que 'expulsión'/イグアル・ケ・エクスプルシオン(退場もだよ)」に至っては、もう小学生の喧嘩としか思えないかと。それに比べたら、日曜にセルヒオ・ラモスがやはり、ボルフスブルクの予想外の先勝を受け、「ユニフォームだけでは勝つことはできない」と意見したバイエルンのグアルディオラ監督に、「Este escudo no gana partidos, pero si nos obliga a ganarlos/エステ・エスクード・ノー・ガナ・パルティードス、ペロ・シー・ノス・オブリガ・ア・ガナールロス(この紋章で試合に勝つことはできないけど、ボクらに勝利を義務付ける)」(https://twitter.com/SergioRamos/status/719139271903481857)と返していた方が上品に感じますが、ふう。ファンが本当に期待しているのはピッチ上の戦いなんですけどね。

▽そして日曜にはヘタフェの後、ラージョもサン・マメスでウィリアムスのゴールで取られた1点が返せず、EL疲れのアスレティックに1-0で負けて、マドリッド勢のリーガは終わったんですが、もう週が明けるとすぐにCL準々決勝2ndレグが目前に。先にレモンターダに挑むマドリーはバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習を月曜午前中に終え、夜には合宿に入っています。ちなみに、「2-0で負けていて、点を取らないといけないが、ウチには5分でなく、90分時間がある。El mensaje es paciencia/エル・メンサヘ・エス・パシエンシア(チームへのメッセージは辛抱だよ)」とジダン監督が言っていたマドリーでの朗報は、エイバル戦をヒザの打撲で欠場したベンゼマの復帰。

▽おかげでスタートからBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)を並べて、ガンガン攻めることができますが、私も行くたびにゴールラッシュで頭が鈍っているので見直してみたところ、今季公式戦21試合をホームで戦って、今回の対戦で逆転ができないスコアだったのが実は7試合もあったことを発見。まあ、負けたマドリーダービーやクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)はともかく、勝っていても4-2のアスレティック戦、3-1のソシエダ戦、ラス・パルマス戦のように、敵にアウェイゴールを奪われる展開になると、かなりキツいことになるかと。

▽実際、ボルフスブルクのドラクスラーやシュールレには得点力がありますし、アトレティコからレンタルしているギラボギも、カンプ・ノウの試合の後、ビジターのロッカールームに駆けつけて旧交を温めたというアルダ・トゥランと違い、在籍が2013年シーズン前半だけと短かったせいか、古巣にアドバイスは求めてないとは言っていたものの、中盤でいい働きをしていましたからね。それでも月曜には残っていた1700枚のチケットも午前中に完売と、ファンはジダン監督のチームを信頼しているようなんですが、さて。そうそう、座席にクラブが旗や台紙を配って、キックオフ前にスタンド中を白く染めて場内を盛り上げる応援は万が一、負けた場合、ペレス会長のいるパルコ(貴賓席)へ向けて振られるハンカチに代用されるため、今回は用意されるのかどうか、まだ確認できていません。

▽一方、アトレティコでは、トーレスが出場停止で出られない以外、エスパニョール戦から先発に変化はないようですが、日曜からサビッチやヒメネスがボールを使った練習を開始。彼らが水曜までに実戦可能になるのかわからないものの、その日から早速、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場の金網に「Nunca dejes de creer/ヌンカ・デヘス・デ・クレエル(決して信じることを止めるな)」と書かれた、サポーターによるバナーが現われ、ツィッターの#nuncadejesdecrreerにも世界各地から、応援の言葉を掲げるファンたちの姿が続々と届くことに。

▽まだ時間がありますから、興味のある方は投稿してみてもいいかと思いますが、何せこのところ、メッシやネイマールの不発が続いているとはいえ、この試合にはソシエダ戦で出場停止だったルイス・スアレスが出ますからね。ゴディンとCBペアを組むカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)のルーカス、ファンフラン、フィリペ・ルイスらDF陣にはとにかくレッドカードに注意。あとは頑張って1点を取ってくれれば…この火曜と水曜の午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からは、私もとにかく気の休まらない90分間、下手したら120分間プラスPK戦でドキドキすることになりそうです。

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