【日本サッカー見聞録】巧妙化する八百長組織の現状
2015.10.08 13:00 Thu
▽今日のシリア戦のレビューは来週のメルマガに譲るとして、このコラムではJFA(日本サッカー協会)、Jリーグ、FIFA(国際サッカー連盟)のEWS(早期警告システム)社の3社共催による「インテグリティーセミナー」が10月7日に都内で行われたので、その概要を紹介しよう。
▽折しもプロ野球では巨人の福田投手が野球賭博に関与した疑いで告発された。別にそのタイミングでのセミナー開催ではないが、冒頭で挨拶に立った原博実JFA専務理事は「国体でスポーツ庁の鈴木大地長官と会った際に野球賭博の話題になった。スポーツ界が襟を正すことが必要と話し合いました。八百長や暴力にサッカー界が先人となって取り組まないといけない」と決意を述べた。
▽セミナーにはJ1~J3のコンプライアンス・オフィサー、契約担当者、JFLクラブの担当者、審判関係者、指導者関係者に加え、JFA、EWS社、韓国Kリーグ、警視庁、文科省、JOC(日本オリンピック委員会)、JSC(日本スポーツ振興センター)の関係者など約180名が出席。午後10時から18時まで長時間に渡って開催された。
▽まず「インテグリティー」だが、JSCの桶谷研究員によると、直訳すれば「高潔さ、品位」、「完全性」を意味するが、スポーツ界では「スポーツを守り、価値を保とう」という意味で使われているそうだ。その対象も八百長行為だけでなく、ドーピング、セクハラ、暴力、無気力試合、チート行為(不正行為)、中東やアフリカに多い政治的圧力、ガバナンスの欠如(不正経理)など様々な行為が含まれている。
▽これらを防止するには、ガイドラインの作成、監視体制の整備と実行、情報提供と教育の徹底が必要だと言う。日本でも指導者の暴力やセクハラが問題になった時期があったものの、社会問題化したことでここ数年は沈静化している。その点、防止が難しいのが八百長行為だ。
▽有罪判決を受けたシンガポールの大物フィクサー、ウィルソン・ラジ・ベルマルはハンガリー在住といったように、「サッカーの八百長は国境をまたがっているため、司法の管轄が違い追跡できない難しさがある。不正組織としては司法のターゲットにされにくいためリスクが少ない」とEWSの担当者は語る。さらに同氏は「司法としてはコカインやヘロインの方が証拠もあるので摘発が簡単。FIFAは八百長行為に加担した選手や審判を制裁できても、犯罪組織に対しては無力のため、司法が動かないと摘発できない」と実情を語る。
▽そうした点を踏まえ、村井チェアマンは「デジタル化が犯罪の国際化を呼んでいる。J1からJ3まで対象となるJリーグは、プロ野球の比ではないことを自覚しないといけない。日本はクリーンだから大丈夫と思ってはいけないし、ACLで巻き込まれるリスクもある。もしもJリーグに何かあったら、サッカーくじの対象だけに、日本のスポーツ界全体に影響が出てしまう。このため日本はいつも調べているとメッセージを出さないといけない」と警鐘を鳴らしていた。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽折しもプロ野球では巨人の福田投手が野球賭博に関与した疑いで告発された。別にそのタイミングでのセミナー開催ではないが、冒頭で挨拶に立った原博実JFA専務理事は「国体でスポーツ庁の鈴木大地長官と会った際に野球賭博の話題になった。スポーツ界が襟を正すことが必要と話し合いました。八百長や暴力にサッカー界が先人となって取り組まないといけない」と決意を述べた。
▽セミナーにはJ1~J3のコンプライアンス・オフィサー、契約担当者、JFLクラブの担当者、審判関係者、指導者関係者に加え、JFA、EWS社、韓国Kリーグ、警視庁、文科省、JOC(日本オリンピック委員会)、JSC(日本スポーツ振興センター)の関係者など約180名が出席。午後10時から18時まで長時間に渡って開催された。
▽これらを防止するには、ガイドラインの作成、監視体制の整備と実行、情報提供と教育の徹底が必要だと言う。日本でも指導者の暴力やセクハラが問題になった時期があったものの、社会問題化したことでここ数年は沈静化している。その点、防止が難しいのが八百長行為だ。
▽EWS社の担当者は「サッカーの不正行為は世界的な現象で、昔は試合前に賭けなければならなかったのが、今は電子デバイスの普及によりいつでも連絡が取れるため、ライブで賭けられるようになった」と指摘する。例えばライブベットという賭けは、CKやFKの数を当てる、勝敗には関係のない賭博のため、試合途中からでも参加できる。テレビ放映とライブでのタイムラグを利用した巧妙な賭けで、スマホの普及により、いつでもどこにいても参加できるのも近年の賭博事情だ。
▽有罪判決を受けたシンガポールの大物フィクサー、ウィルソン・ラジ・ベルマルはハンガリー在住といったように、「サッカーの八百長は国境をまたがっているため、司法の管轄が違い追跡できない難しさがある。不正組織としては司法のターゲットにされにくいためリスクが少ない」とEWSの担当者は語る。さらに同氏は「司法としてはコカインやヘロインの方が証拠もあるので摘発が簡単。FIFAは八百長行為に加担した選手や審判を制裁できても、犯罪組織に対しては無力のため、司法が動かないと摘発できない」と実情を語る。
▽そうした点を踏まえ、村井チェアマンは「デジタル化が犯罪の国際化を呼んでいる。J1からJ3まで対象となるJリーグは、プロ野球の比ではないことを自覚しないといけない。日本はクリーンだから大丈夫と思ってはいけないし、ACLで巻き込まれるリスクもある。もしもJリーグに何かあったら、サッカーくじの対象だけに、日本のスポーツ界全体に影響が出てしまう。このため日本はいつも調べているとメッセージを出さないといけない」と警鐘を鳴らしていた。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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