【日本サッカー見聞録】不安の尽きない日本代表の右サイド

▽シリア戦(10月8日)とイラン戦(10月13日)に臨む日本代表23名が10月1日に発表された。9月の2試合に続き所属クラブを見つけられていないGK川島が外れたのは想定内だったが、酒井宏と遠藤航がケガで外れたのは予想外だった。

▽ハンブルガーで出番のない酒井高に比べ、酒井宏はハノーファーでコンスタントに出場したいたため、W杯2次予選は3試合ともスタメン出場を果たした。その酒井宏がリタイアし、ボランチだけでなくセンターバックや右DFもできるユーティリティープレーヤーの遠藤航まで負傷離脱してしまったのだ。「テクニックとパワーを兼ね備えた選手」とハリルホジッチ監督も高く評価する遠藤航の離脱は痛い。

▽その酒井宏に代わって招集されたのが塩谷だが、前回のメンバー発表時にハリルホジッチ監督自身、「酒井宏と酒井高に代わる選手は国内にいない。いればすぐに呼ぶ」と断言していただけに、右DFは日本にとってアキレス腱となりかねない。現状では酒井高が一歩リードといったところだが、それも集合してパフォーマンスを確認してからの抜擢となるだろう。
▽むしろ、左DFとして今回も招集された米倉を本来の右DFで使ってはいかがだろう。「米倉を左で使ったのは闘える選手、デュエルがあると判断したからだ。右DFだが左DFでも使えるし、スプリントも素晴らしい」とハリルホジッチ監督も高く評価しているからだ。米倉を右DFに回し、左DFは長友に加え太田を呼んだ方がリスクも少ないと思ったものだ。

▽勝点3を取りに行くシリア戦のスタメンは、GK西川、DFの吉田、森重、長友は決まりで、ボランチは長谷部と山口。トップ下は香川が務め、FW陣は右から本田、岡崎、原口か宇佐美といったところだろう。そうすると、唯一予想が難しいのが、やはり右DFということになる。▽これまでの対戦相手は専守防衛だったため日本も守備のことはさほど気にする必要はなかった。しかしシリア相手ではそうはいかないだろう。日本が攻める時間帯が長くなることが予想されるだけに、相手のカウンターに対するリスク管理はしっかりとケアする必要がある。東アジアカップでは丹羽を右DFで起用していたものの、代表歴1試合ではやはり心許ない。いっそ長友を右DFにコンバートするという選択肢もあるが、それは現実的ではないだろう。

▽今回は浅野、遠藤航に続きU-22日本代表から南野が代表初招集を果たしたように、五輪世代を早めにフル代表に呼んで経験を積ませる手もあるが、松原は長期離脱だし、他の選手も所属クラブでレギュラーではないというジレンマがある。「日本は若手が育っていない」というハリルホジッチ監督のボヤキが聞こえてきそうだ。

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【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。