【原ゆみこのマドリッド】まだ予選だし…

2015.09.05 13:44 Sat
▽今週のスペイン代表の動きを追っていくと、彼らがラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に集合したのは火曜の夜。翌日の夕方にはpuerta abierta(プエルタ・アビエルタ/公開)のセッションがあったので、私もモンクロア(市内のバスターミナル)からバスに乗って行ってみたところ、いやあ、学校が始まるのが来週からだからでしょうかね。夏休み最後の家族揃ってのお出かけなのか、入口の前にはファンの長蛇の列ができているわ、開門と同時に雪崩のようにスタンドへ向かってダッシュしているわ、2000程のシートもあっという間に満員になって、挙句の果てに階段にまでギッシリ座っているって、こんな光景、私も初めて見たような。

▽午後7時半にグラウンドに出て来た選手たちの中で注目だったのは、やはり市場クローズの日にマンチェスター・ユナイテッドからレアル・マドリーへの移籍が叶わなかったデ・ヘアで何故か、チームメートになりそこねたセルヒオ・ラモスと仲良く話しながら、歩いていたんですが、おやおや、随分とまあ、心が広い。だって、デ・ヘアの移籍手続きが遅れたのはこの夏、マンU行きが噂されながら、結局マドリーとラモスが契約を延長することになったことをファン・ハール監督が恨んでのイヤがらせだったんじゃないかという説もありながら、心機一転だか何だか、頭をスポーツ刈りにして代表合宿に着いた時には「La vida sigue, nadie muere por esto/ラ・ビダ・シゲ、ナディエ・ムエレ・ポル・エスト(人生は続くよ。誰もそのことで死ぬ訳じゃないし)」とシラッとした顔で言っていたラモスですよ。

▽確かに8月にユース時代からいたバルサからチェルシーへ移ったペドロが、移籍先が決まるまで「Tienes la incertidumbre de dónde vas a jugar, a vivir, a qué escuela van a ir los niños.../ティエネス・ラ・インセルティドゥンブレ・デ・ドンデ・バス・ア・フガール、ア・ビビール、ア・ケ・エスクエラ・バン・ア・イル・ロス・ニーニョス(どこでプレーするのか、どこに住むのか、どこの学校に息子たちは行くのかといった不安があった)」とマルカ(スポーツ紙)のインタビューで告白していた程、芸能人の彼女、エドゥルネさんもマドリッド通勤圏内出身で、自分もラ・フィンカ(マドリッド近郊の高級住宅地)に家を持ち、まだ子供もいない24歳のデ・ヘアには苦労はなかったかもしれませんけどね。それでも昨季終了後すぐ、マンチェスターの自宅を空にしながら、プレシーズンにはマンUの練習に参加するために戻り、それでもいつかはマドリー入団が叶うと待っていた身としては、そんな簡単に言ってくれるなよと文句の1つや2つでも出るのが人情では?
▽え、でも来年6月まで辛抱すれば、マンUとの契約も切れるんだし、この夏の移籍が叶わなかったことによるマドリーから違約金1000万ユーロ(約13億円)をもらって、来年夏に移籍すればいいんじゃないかって? いやあ、そうコトは単純じゃないらしく、今季まだ公式戦に「集中していないから」と、ファン・ハール監督に1度も出場させてもらっていないデ・ヘアはフロントから改めて、契約延長を突きつけられそうなんですよ。サインしないと試合に出さないと言われれば、来年夏のユーロ本大会への出場にも影響してくるため、本当に難しい立場だとか。それなのにこの冬にまた彼の獲得を試みるのかと、あまりの世間からの反響の多さにとうとう木曜、自らラジオに出演してインタビューに答えることにしたペレス会長は、「Ahora no toca hablar de eso/アオラ・ノー・トカアブラル・デ・エソ(今はそれを話す時じゃない)」と結構、つれない反応。

▽何だか、昨季末からマンUにはデ・ヘアを売る気はないと聞いていたので、何もしなかったが、移籍最終日のお昼に代理人のメンデス氏が「今なら交渉してくれるらしい」と連絡。そこで前々から移籍の約束はしていて、選手に期待もさせていたため、「no podíamos dejarle tirado/ノー・ポディアモス・デハールレ・ティラードー(ほったらかしにしておくことはできなかった)」と、期限が迫っているのはわかっていながら動き出したのとは、ちょっと好対照ですけどね。おまけにペレス会長が何度も契約手続きが間に合わなかったのは、「Les falta experiencia/レス・ファルタ・エクスペリエンシア(彼らには経験が足りなかった)」と、マンUフロントの不手際を強調するものだから、またしても相手側から反論の声明が出されることに。
▽まあ、ここまでの目に遭って、来年の夏にデ・ヘアが再び、マドリー入団を目指すのかはわかりませんが、代表練習では決して落胆ぶりを見せなかったのは救いでしょうか。30分程して始まったピッチ3分の2でのpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)では、カソルラ(アーセナル)のシュートを横っ飛びでparadon(パラドン/スーパーセーブ)していたりもしましたしね。ただし、スタンドからの人気度ではずっと名前を呼ばれていたカシージャスには遥かに及ばず。それに気を良くしたか、「常に人々の批判の的になっていたから、necesitaba respirar/ネセシターバ・レスピラール(呼吸する必要があった)」とマドリーを離れてポルトに移り、すっかり明るい顔になったカシージャスもセスク(チェルシー)やビトロ(セビージャ)の至近距離シュートを次々と弾いていましたっけ。

▽そして翌木曜も夕方の同じ時間からセッションがあったんですが、こちらはマスコミだけに公開だったため、今度はじっくりデル・ボスケ監督の指示や選手たちの声を聞くことが可能に。今回の招集には初めて来るメンツはいなかったため、メニューは比較的スムースに進んでいたんですが、ビブスを付けた組と付けていない組は、特に土曜の試合の先発を意識した分け方ではなかったよう。前日と違って、この日はなかなかゴールが決まらず、15分ぐらいしてやっとマタ(マンチェスター・ユナイテッド)が入れてくれましたが、久々に体調が良くて戻って来たジエゴ・コスタ(チェルシー)はほとんどチャンスに恵まれなかったのは困ったことかと。

▽うーん、生まれはブラジルの彼ですが、W杯を前に2重国籍を持つスペインを選択してくれた時にはこれで代表のゴール不足も解消かと思われたんですけどねえ。これまでは7試合でたったの1ゴールと期待外れに終わり、本人も「Todavia no he hecho nada con Espana/トダビア・ノー・エ・エッチョー・ナーダ・コン・エスパーニャ(自分はまだスペイン代表で何もやっていない)」と言っていましたが、早くチームメートのパスサッカーに慣れて、活躍できるようになってくれるといいんですが。

▽ちなみに金曜には試合の行われるヌエボカルロス・タルティエレ(2部のオビエドのホーム)で7000人のギャラリーに囲まれて前日練習に励んだチームですが、一応、スポーツ紙などで言われている先発予想を伝えておくと。GKはキャプテンとしてこれで代表100試合目を迎えるカシージャス。DF陣はファンフラン(アトレティコ)、ピケ(バルサ)、ラモス、ジョルディ・アルバ(バルサ)で、中盤がブスケツ(同)、イニエスタ(同)、セスク(チェルシー)、前線はジエゴ・コスタにペドロ、シルバ(マンチェスター・シティ)となっているようです。まあ、普通にプレーすれば、相手は名の知れた選手もハムシク(ナポリ)ぐらいしかいないチームですしね。リーガとプレミアリーグの精鋭が揃っているスペインが余裕で勝つと思うんですが、そこは一筋縄ではいかないのがサッカー。土曜の午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からの一戦では、いい意味でのドラマが見られることを期待しましょうか。

※このニュースは一部省略してご紹介させていただいております。全文が気になる方は[コラム]でご覧ください。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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