【東本貢司のFCUK!】ストーンズ移籍問題の“運命論”

2015.08.27 11:46 Thu
▽唐突な話で恐縮だが、日本では最近中高年ストーカーが増えているらしい。どこのデータなのかは知らないが、この10年で4.6倍だとか。高齢化社会のいち現象? だとしたら、いつ自分も・・・・縁起でもない。しかし、Never give up の精神も考えてみれば諦めの悪さと紙一重。「熱意」ってやつはとかく厄介だ。というわけで、今も燻り続けているいくつかの「移籍の可能性」の案件。チェルシーはまだジョン・ストーンズにこだわっているらしく、伝えられるところストーンズ本人も「移籍志願」を(2度も?)提出したという。が、エヴァートンはその件についての公式発表を控えている。メディアはその真意をひもとく一つのカギとして「リーグカップ2回戦の動向」に注目していた。対戦相手がストーンズの古巣バーンズリーだったからだ。はたしてストーンズは26日に行われたこのゲームで90分間プレーをまっとう、苦戦はしながらもエヴァートンは5-3の大逆転勝利を手にした。

▽もっとも、ゲームは本稿執筆時点でほんのつい先ほど終わったばかりで(ストーンズに関して)何がどうなったわけでもない。しかし“収穫らしきもの”はあった。ストーンズが8歳の時から面倒を見た現バーンズリー・ユースコーチ、ロニー・ブランソンの「一言」である。「あいつは何があっても気後れするタマじゃない。エヴァートンでよくやってるし、チェルシーに行ってもちゃんとやるだろうよ」。これはあくまでもメディアのインタヴューに答えたもので、ストーンズ本人に声をかけたわけでも何でもない。だが、第二の親にも等しいかつての恩師が、懐かしいオークウェル(バーンズリーのホーム)にて押した“太鼓判”が、もやもやを吹っ切れさせる一つの決め手になる可能性はある。個人的にはそうはなって欲しくない(まだ“希望”は捨てていない!)が、どうやら移籍は実現する方向に動きそうな気配になってきた。このタイミングでバーンズリー戦がめぐってきたのも運命か・・・・それならそれで(本人も筆者も)腹をくくるべきときなのかもしれない。

▽さて、そのリーグカップ2回戦、幸か不幸か波乱らしきものはほぼなかった。エヴァートンの他、ホームのアストン・ヴィラがノッツ・カウンティーに苦しみながらも同スコアで勝利。ルートンにて終了間際に追いつかれたストーク、ホームでポート・ヴェイルの抵抗に遭ったウェスト・ブロムが、ともにPK戦であやうく難を逃れた。数少ない“誤算”といえば、プレミアに昇格したばかりのワトフォードがプレストンに、カーディフがMKドンズに惜敗した二戦くらいかな。常々プレミア勢が絡む早期カップ戦のいくつかでも“茶の間”で観戦できればと思うのだが(かつては一時期、それが叶ったこともあり、不肖東本が乏しい資料と格闘しながら解説に与ったこともあった・・・・)、なぜかと言えばこのスポーツの原点、真のすばらしさを理屈抜きで味わえ、楽しめるに違いないからだ。まるで世界選抜軍のような無国籍軍団が幅を利かせ、勝った負けたと上っ面で語られる世界よりも遥かにずっと・・・・。詮無い愚痴はここまでに。放送コンテンツが多すぎる時代の宿命か。
▽こちらも多分「結果のみ」の、しかもマイナー扱いのニューズかもしれないが、チャンピオンズ予備戦で明暗が・・・・。マンチェスター・ユナイテッドが無事通過、セルティックがまさかの敗退。前者は4月以来(つまり今季はまだ)ノーゴールだったウェイン・ルーニーのハットトリックでベルギーのクラブ・ブルージュを撃退。後者はまるで萎縮したようなぎこちないアウェイの第二戦でスウェーデンのマルメに完敗して散った(ヨーロッパリーグへ“降格参戦”)。昨季からセルティックを率いるノルウェー人監督ロニー・デリアは「(わが軍)はびびってしまっていた」と嘆いたが、これにはいかんせん、サマーリーグたけなわの北欧と指導したばかりのスコットランドの差も出たようだ。あるいは、最大のライバル、レインジャーズの「リーグ不在」にやはり少々牙が鈍ったままだったか・・・・。スコットランドに再び陽の目が当たるよう、ヨーロッパリーグでは意地を見せて欲しい。

▽チャンピオンズとヨーロッパ(リーグ)の間には“奇妙な格差”が歴然と存在する。それは、予備戦の段階では「勝利報酬」がなぜか後者は前者の1.5倍なのに、本戦ともなると大逆転して前者が後者の5倍にも跳ね上がるのだ。差がついて当然なのは分かるが、この逆転現象はどういう意図によるものなのか。ごく有体に考えると、予備選つまりチャピオンズ本戦入りか否かの分かれ目に、少しなりとも高いモチベーションを促す設定ということなのだろうが、いかにもあざとい。かねがね、チャンピオンズとヨーロッパ(うーん、なぜ「UEFA」から変更したのだろうか。そもそも、同協会から複数出場する国があるにもかかわらず「チャンピオンズ」というのもおかしい・・・・とぼやいても今更仕方がないのだが)の“弊害”を叫んでいる身としては、あえて「一律」にしてすっきり(格差を明確に)させた方が良くはないか。両リーグのその後の日程に違いが生じる点(要するにTV放送上の勝手な都合)も“降格組”に小さくない影響を及ぼす。改めて改善を促したい。

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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