【原ゆみこのマドリッド】ゴールが少なくて助かった…

2015.08.25 13:45 Tue
▽「やっぱり無理があるわよね」そんな風に私が首を捻っていたのは月曜日、週末にとうとう開幕したリーガの結果をおさらいしようと、クアトロ(スペインの民放)のスポーツニュースを見ていた時のことでした。いやあ、スペイン・サッカー界を統括する組織のお偉いさん同士のメンツ争いから試合日程が二転三転しただけでも、相変わらずこの国はいい加減だなと思ったものでしたが、今度はリーガと放送業界の間で騒ぎが勃発。今季から試合のサマリー放映権を購入したTVE(スペイン国営放送)以外の局では1日、試合のシーンは計90秒以内でしか流してはいけないとリーガが決めたため、これにメディアセット(クアトロやテレシンコなどのオープン局を持つグループ)が反発することに。その協定にサインをしなかったところ、試合中のスタジアムにTVカメラと入場できなくなってしまったばかりか、試合のサマリーすらオンエアできなくなってしまったらしいんですけどね。

▽そのことに関しては後日、報道の自由に反するとの名目で司法に判断してもらうようですが、とにかく肝心の現場の映像がないのではねえ。いくら番組をスタジアム周辺でチームバスの到着を待つ、とりわけ今季1部昇格組のファンたちの盛り上がりぶりや、各クラブがホームページに載せているビデオ、試合後の監督記者会見、過去の試合の映像などで時間を埋め、果てはバル(スペインの喫茶店兼バー)の大型TVの画面を映してゴールを見せるって、いや、これが毎節続いたら、試合の翌日は誰もその局のニュースなんか、見る気にならないのでは?

▽まあ、それはスペインのことですから、こんな状態、しばらくしたらうやむやになって、普通の状態に戻るんでしょうが、とりあえず、各節にあったマドリッド勢の試合は全部、把握しておきたい私のような者にとって、現在、頼りになるのはTVEの土日のまとめ番組Estudio1(エストウディオ・ウノ)とニュース。うーん、今季からはチャンピオンズリーグ(CL)も放送局が変わり、アンテナ3(スペインの民放)の水曜枠以外はbeIN Sportsと、聞き慣れない名前がプレーオフ前の新聞に書いてあったものの、顔見知りのマルカ(スポーツ紙)の記者に尋ねても、どうやって見たらいいのか知りませんでしたしね。今季はスペインから初の5チーム参戦となるかもしれませんし、この木曜のグループリーグ抽選で組み合わせが決まり、9月に試合が始まるまでには、行きつけのバルのウェイターさんたちのためにも判明してほしいものですが…。
▽そんなことはともかく、開幕戦の様子がどうだったのか、お伝えしておかないと。マドリッド勢で先陣を切ったのは弟分チームのヘタフェだったんですが、どうやらこちら開始3分にサルバ・セビージャに見事なFKを直接ゴールにねじ込まれ、最後までこの1点が返せなかったよう。残り5分にはアルバロ・バスケスがゴール前のシュートを外すなんて不運なこともあったようですけどね。エスクリバ新監督も「(8月)31日までウチは移籍市場に注意している。Posiblemente venga algún jugador/ポシブレメンテ・ベンガ・アルグン・フガドール(おそらく誰か選手が来るだろう)」と言っていたように、2人目のCFはやはり獲っておいた方がいいかと(最終結果0-1)。

[心臓疾患から復活を遂げたコレア]
▽え、その日は兄貴分も似たようなことをやっていなかったかって? いやあ、実際、次の時間帯でアトレティコの試合があったため、パワー8スタジアム(エスパニョールのホーム)でのゲームは見ることができずにビセンテ・カルデロンに向かった私でしたが、確かにそうなんですよね。ただ違うのは結果だけで、昇格組のラス・パルマスを迎えた彼らは序盤から、semichilena(セミチレナ/オーバーヘッドもどき)でゴールを狙うなど、活発だったグリーズマンがチームのシーズン初得点もゲット。ええ、これも前半15分と早めの時間帯で、自分の受けたファールでもらったFKにチャレンジすると、左足で蹴ったボールは敵の壁に当たったものの、おかげで軌道が変わってGKラウールを幻惑することに。ちなみにアトレティコでFKから直接ゴールが決まったのは1000日ぶり、2012年10月のヨーロッパリーグ、アカディミカ・コインブラ戦でエムレが決めて以来だとか。

▽これで先制点が入りましたし、終盤にもグリーズマンに対抗心を燃やしたか、CKなら直接にゴールに入れる能力を持つ自分がFKで決められないのは理に適っていないと気づいたか、コケがゴールポストに当てる一撃を放っていたので、今季はチームの頭自慢に頼らないセットプレーからのゴールも生まれるかと思いますが、ただねえ。まだ主砲が不発なんですよ。その日、先発CFとして入ったのは期待の新戦力、ジャクソン・マルティネスでしたが、シュートもほとんどなく、後半12分にはフェルナンド・トーレスと交代。こちらも当たりは出ず、むしろオリベルと代わって入ったアンヘル・コレアの方が心臓の手術で棒に振った1年目の無念を晴らそうとしてか、活発に動いて喝采を浴びていましたが、それでも結局、最後まで追加点は取れません。

▽むしろ後半はラス・パルマスのCKに何度かドキドキさせられる始末でしたしね。そのまま1-0で逃げ切れたのも、GKオブラクがオウンゴールめいたボールを賞賛に値する反射神経によるparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれたのと、相手がまだ1部チームの守備陣を崩すスピードを身につけていなかったおかげと言って良かったかも。

▽え、何だか今季のアトレティコはサッカーも少し、変わっていたんじゃないかって? そうですね、以前よりボールポゼッションが増え(62%)、パスで相手を崩そうとしていたようですが、何せこのチームにはメッシがいませんからね。ゲームの主導権は握っても、それをなかなかチャンスに繋げることができないのは困ったもの。いえ、シメオネ監督が「El campo estaba muy malo/エル・カンポ・エスタバ・ムイ・マロ(ピッチの状態がとても悪かった)」と言っていたのはあまり関係ないと思いますよ。それには「バルサ戦に備えてではない」と付け加えていたものの、実際、代表戦のparon(パロン/休止期間)明けの3節で芝が改善されていれば、きっと敵にとっての好材料になるんじゃないでしょうか。

▽そして試合後は、出場はしなかったものの、久々にバレロンの顔が見られるかと期待してミックスゾーンに行った私ですが、40歳のリーガの長老はそのままTVEに直行。家のTVでサマリー番組のゲストを務めているのを眺める破目になりましたが、実はその間、もう1つの弟分チーム、ラージョがエスタディオ・デ・ラス・バジェカスで奮闘していたんです。そう、彼らの相手は昨季4位のバレンシア。この火曜にはCLプレーオフ・モナコ戦の2ndレグを控えているため、先週3-1と勝利した先週の1stレグから、メンバーを7人も変えてきていながら、前半からサンティ・ミナやピアッティのシュートをGKトーニョが必死で止める破目に。後半もネグレドのビッグチャンスを阻んで、何とか無失点で乗り切ったというんですから、今季の彼らは守備も進歩している? ただし、マヌーチョがゴール前1メートルのシュートを外すなど、自分たちの方も得点はできなかったため、昨季の開幕アトレティコ戦と同様の結果、スコアレスドローで試合を終えています。



[リーガデビューを飾ったコバチッチ]
▽一方、レアル・マドリーは日曜試合だったんですが、もうこの時点になると、その前の時間帯でアスレティック・ビルバオにサン・マメスでスーペル・コパのリベンジを挑んだバルサでさえ、ルイス・スアレスの1点のみの1-0で勝利と、開幕節での全般的なゴール日照り傾向が顕著に。とはいえ、ここずっと、毎年100ゴール以上を記録しているマドリーの相手は昇格組のスポルティング・ヒホン。たとえベンゼマはまだ負傷で出られないとしても、クリスティアーノ・ロナウドやベイルが景気よく得点を重ねてくれるんじゃないかと気楽に構えていたところ…。

▽これまたスコアレスドローだったんですよ! いえ、前半35分近辺にはCKから、サナブリアのヘッドがバーに当たり、落ちたボールがゴールラインを割ったかもしれないとか、ロナウドがエリア内でセルヒオ・アルバレスに倒されたプレーはペナルティだったかもしれないといった怪しげなジャッジは双方共にあったんですけどね。計22本、うち8本もの枠内シュートを撃ったマドリーは結局、ゴールを挙げるに至らず。もちろんスポルティングのGKクェジェルも好セーブを連発したんですが、これで彼らが無得点で終わるのはベニテス監督になってから5試合目ともなれば、「En la pretemporada ya se ha visto que el Madrid tiene gol/エン・ラ・プレテンポラーダ・ジャー・セ・ア・ビストー・ケ・エル・マドリッド・ティエネ・ゴル(プレシーズンでマドリーにはゴールあるってわかったはず)」(セルヒオ・ラモス)って、ちょっと何か勘違いしていない?

▽いえ、もちろんハメス・ロドリゲスをベンチスタートにしたベニテス監督の選手起用に問題もあったかもしれないですけどね。ほとんど専守防衛だった相手から、いつまで経っても点が奪えず、投入した残り2人は、これがデビュー戦となったコバチッチ(インテルから移籍)とカルバハル。しかも前者はボランチ要員のはずが、イスコの位置でプレーしていたとなれば、獲得の前提からしておかしなことになりますが、何せ、その他の攻撃要員はチェリシェフがマドリッドでお留守番、ルーカス・バスケスはスタンド観戦していましたからね。要は監督もロナウドとベイルで十分という見込みが外れたということでしょうか。

▽おかげで1節を終え、早々にバルサ、アトレティコと勝ち点差2をつけられてしまったマドリーですが、優勝には勝ち点100が必要という趨勢もここ2年で途切れましたしね。月曜からはベンゼマも全体練習に復帰、自身のツィッター(https://twitter.com/Benzema)で移籍疑惑を「ボクのファンにあれこれ信じさせようとしているピエロたちへ。ここが自分の家だよ」と払拭して、この土曜のホーム開幕、ベテイス戦に間に合うとなれば、そうそう悲観することはないかと。いえ、だからといって、ロナウドの照準ズレが今週末までに直るという保証はありませんが。

▽そして2節では同じく土曜にラージョがセルタとアウェイ戦、日曜にアトレティコはセビージャ、ヘタフェはグラナダと対戦となるんですが、何と1節最後の月曜試合、グラナダvsエイバルが終わってみれば、この節、最大得点を挙げて、3-1で勝った後者が栄えある首位に輝くというサプライズが。うーん、昨季終了時点では18位で降格が決まりながら、エルチェが財政的理由で降格したため、まさかの残留となったエイバルにしてみれば、喜びもひとしおでしょうが、リーガも5節ぐらいまではどこがトップになってもおかしくないのが毎年の常。とりあえず今季もマドリッドの兄貴分には頂点争い、弟分には10位以上キープを目指していってもらいたいものです。


【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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