【日本サッカー見聞録】東アジア杯は無名の武藤やU-20敗退組に注目!

▽8月2日から中国・武漢で始まる東アジアカップの日本代表メンバー23名が発表された。初招集4名、1試合以下の出場歴7名というなでしこジャパンに比べれば、それなりに実績のある顔ぶれだ。初招集は、五輪組から昇格の遠藤航(湘南)と、G大阪の右DF米倉恒貴、左FWの倉田秋、そして今シーズン浦和に移籍し、1stステージは8ゴールを挙げて優勝に貢献した武藤雄樹の3人だ。

▽浦和からはGK西川周作とDF槙野智章が順当に選ばれた他、MF柏木陽介とFW興梠慎三が久々に代表へ復帰。リーグ覇者の原動力となっただけに、国内組という制約のある今回の招集では、ある意味で無難な選出だった。そんな中で意外だったのは、やはり武藤ということになる。

▽大学時代(流通経済大)に得点ランクで2位になったことはあるものの、4年間在籍した仙台ではスーパーサブ的な存在で、通算得点も6ゴールに過ぎなかった。今シーズン移籍した浦和でも、移籍組での序列では石原、高木に次いで3番手の選手だったのではないだろうか。しかしリーグ戦ではドリブル突破によるタテへの推進力やスピードで宇賀神とともに左サイドを活性化しつつ、ドリブラーとしては珍しい球離れの良さからシャドーストライカーとしてもゴールを量産して初代表の座をつかんだ。
▽今回招集されたメンバーで最年長は水本裕貴の29歳。2005年にオランダで開催されたU-20W杯出場組だ。その次の2007年カナダ大会には柏木や槙野、森重、太田らが出場。しかし2009年エジプト大会から日本は出場権を失い、今日に至っている。その時のメンバーがGK権田修一やFW永井謙佑たちだった。

▽米倉は2007年大会の候補止まりで、倉田は2005年のU-17W杯アジア予選に出場したものの予選で敗退している。彼ら以外にも丹羽大輝は2002年のU-17に出場するなど、どこかで各年代の代表候補になっている。ところが武藤だけは、過去に一度も日本代表と呼ばれるカテゴリーの代表歴がない。アンダーカテゴリーからの育成と強化が浸透した現代にあって、武藤のようなケースは例外的と言っていいだろう。▽そんな“遅れてきたシンデレラボーイ”が中国でどんなプレーを披露するか。彼だけでなく、U-20カナダ大会の2007年組、いわゆる「悪ガキ世代」「調子乗り世代」以降、日本は世界大会に出られていない。予選敗退を経験した権田や永井、宇佐美、遠藤らが東アジアの列強を相手にどんなプレーを見せるのか、それも今大会の楽しみだ。

---

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。