【日本サッカー見聞録】低レベルのJリーグを痛感させられたドルトムントの来日
2015.07.16 23:00 Thu
▽J1リーグは7月11日に2ndステージが開幕した。2節を終了して首位は2連勝の広島。年間勝点でもFC東京を抜いて2位に躍り出た。ただ、「ヤマ場」を数多く作るはずだった2ステージ制は、1stステージを見る限り成功したとは言えない。G大阪もFC東京も浦和の勢いを止められなかったからで、“ライバル不在”がもたらした浦和の1stステージ制覇でもあった。
▽かつての鹿島は1stステージで低迷しても、2ndステージはしっかり補強して優勝し、その勢いでチャンピオンシップを制した時代もあった。しかし今シーズン、2ndステージを前に目ぼしい補強をしたのは、柏からレアンドロを獲得した神戸くらいだろう。
▽FC東京はマインツへ移籍した武藤の代わりにネイサン・バーンズとサンダサを獲得したものの、チームにフィットするまでしばらく時間がかかりそうだ。そして川崎Fは得点源のレナトが広州富力へ電撃移籍した。こうなると2ndステージも浦和を中心に低レベルの優勝争いとなる可能性が高いかもしれない。
▽そんなJクラブと世界との差を痛感させられたのが、プレシーズンマッチの川崎Fとボルシア・ドルトムントの試合だった。交代枠11人というレギュレーションだったため、前半のドルトムントでレギュラークラスはトップ下の香川に、DFのパパスタソプーロス、ピシュチェク、ドゥルムとFWロイスの5人だけ。それでも香川の2ゴールでリードを奪った。
▽ドルトムントが本領を発揮したのは、丸岡1人を残して10人を入れ替えた後半だった。オーバメヤンの2ゴールや丸岡、スタンコビッチの得点で6-0の大差をつける。川崎Fが得意とする自陣でのパス回しに高い位置からプレッシャーをかけて、簡単にはビルドアップさせない。そしてボールを奪うや否やショートカウンターで川崎Fゴールに迫って圧倒した。
▽圧巻だったのは74分の攻撃だ。自陣右でボールを持ったフンメルスが左前方のシュメルツァーへ大きくサイドチェンジ。そしてシュメルツァーはルックアップするとグラウンダーのアーリークロスを入れる。走り込んだオーバメヤンの手前で辛うじてクリアしたが、通っていれば1点モノのシーンだった。
▽時間にして5秒足らず、たった3本のパスで決定機を作ってしまうのが、ヨーロッパのトップレベルであることを改めて痛感した。川崎Fがポゼッションしてリズムを作り、レナトらの個人技で突破を図るなら、自分たちは奪ったらスペースを利用してシンプルに攻める。そうした共通理解があるからこそできるドルトムントの圧力だった。
▽良い試合を見た反動は、日常であるJリーグに跳ね返る。2ndステージ開幕戦はカウンターを得意とするFC東京と川崎Fの試合を取材したが、FC東京のカウンターは不発に終わり0-2の完敗を喫した。
▽やはりリーグ戦で好勝負を期待するのは日本では難しいのだろうか。J1昇格プレーオフのような短期決戦が日本人に合っているのなら、J1リーグチャンピオンシップに期待するしかなさそうだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽かつての鹿島は1stステージで低迷しても、2ndステージはしっかり補強して優勝し、その勢いでチャンピオンシップを制した時代もあった。しかし今シーズン、2ndステージを前に目ぼしい補強をしたのは、柏からレアンドロを獲得した神戸くらいだろう。
▽FC東京はマインツへ移籍した武藤の代わりにネイサン・バーンズとサンダサを獲得したものの、チームにフィットするまでしばらく時間がかかりそうだ。そして川崎Fは得点源のレナトが広州富力へ電撃移籍した。こうなると2ndステージも浦和を中心に低レベルの優勝争いとなる可能性が高いかもしれない。
▽ドルトムントが本領を発揮したのは、丸岡1人を残して10人を入れ替えた後半だった。オーバメヤンの2ゴールや丸岡、スタンコビッチの得点で6-0の大差をつける。川崎Fが得意とする自陣でのパス回しに高い位置からプレッシャーをかけて、簡単にはビルドアップさせない。そしてボールを奪うや否やショートカウンターで川崎Fゴールに迫って圧倒した。
▽シーズン開幕前の調整段階で、しかも大差がついているというのにまるで手を抜こうとしない。小林の突破を両手で倒してストップするなど本気モードだったのは、今シーズンから指揮を執るトゥヘル監督へのアピールもあったのだろう。ただ、それ以上にブンデスリーガの強豪の意地を感じさせた球際での厳しさであり、縦への速い攻撃だった。
▽圧巻だったのは74分の攻撃だ。自陣右でボールを持ったフンメルスが左前方のシュメルツァーへ大きくサイドチェンジ。そしてシュメルツァーはルックアップするとグラウンダーのアーリークロスを入れる。走り込んだオーバメヤンの手前で辛うじてクリアしたが、通っていれば1点モノのシーンだった。
▽時間にして5秒足らず、たった3本のパスで決定機を作ってしまうのが、ヨーロッパのトップレベルであることを改めて痛感した。川崎Fがポゼッションしてリズムを作り、レナトらの個人技で突破を図るなら、自分たちは奪ったらスペースを利用してシンプルに攻める。そうした共通理解があるからこそできるドルトムントの圧力だった。
▽良い試合を見た反動は、日常であるJリーグに跳ね返る。2ndステージ開幕戦はカウンターを得意とするFC東京と川崎Fの試合を取材したが、FC東京のカウンターは不発に終わり0-2の完敗を喫した。
▽やはりリーグ戦で好勝負を期待するのは日本では難しいのだろうか。J1昇格プレーオフのような短期決戦が日本人に合っているのなら、J1リーグチャンピオンシップに期待するしかなさそうだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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