【東本貢司のFCUK!】ルール、変えてみませんか?

2015.07.09 13:00 Thu
▽移籍市場が佳境に入るのはまだまだ先のこと・・・・“骨格”がどうにもはっきりしない今どき、チームの何を語っても鬼に笑われる。せいぜい、誰それがたまたま拾った携帯電話の主とお茶したとかしなかったとかがニュースになる程度。U21ユーロが、コパ・アメリカが、女子ワールドカップが閉幕して間もない今日この頃は、まさに“農閑期”・・・・確かに、もうじきいくつかのビッグクラブがマーケティング狙いで海を渡るオフシーズン“フレンドリー”ツアーが始まるとはいえ、これとてそもそもがウォームアップイベントだし、ギリシア・クライシスに中国の株暴落、我がガヴァメント絡みの醜聞、迷走とくれば、呑気にフットボール談義をしている場合じゃない、もとい、気が散って落ち着いてなどいられない。それに、いったいFIFAがどうなっちゃうのかという鬱陶しい問題もあって・・・・。

▽そうは言ってもFCUK。ひとまず、現時点で移籍が「ほぼ内定、もしくはその方向」にある“気になる”名前をいくつかピックアップしてみようか。ラダメル・ファルカオ→チェルシー。どうかな・・・・退団したドログバの代わり、結局はベンチウォーマー/スーパーサブの運命・・・・そんな気がするのだが? モルガン・シュネダルラン(こんな感じの発音が“近い”らしい)→マン・ユナイテッド。どう使う? もはやキャリックはサブに追いやられるのか? ファン・ハールはあれだけ持ち上げていたのに? それともキャリックをCBに“固定”する腹なのか? ブリントはどうする? そう、層は厚くするに越したことはない。が、どうも見えるものが見えてこない。それよりもファルカオ、ファン・ペルシーなき後のストライカー補強は? そう、すべては「これから」だ。しかし、誰がいる? ケインも、レヴァンドフスキも多分無理だし・・・・だめだ、やっぱり鬼に笑われる。

▽それにしても首をかしげてしまうのは、ラヒーム・スターリングを「クリスティアーノやメッシやベイルに匹敵する才能」と持ち上げる声。そこまでの器だろうか。どうにも釈然としない。で、案の定、オフの海外ツアーメンバーから外してくれという本人のリクエスト。つまり、行けるものならマン・シティーやレアルやバルサに行きたい、と。ふ~ん、何だか、作為というか“裏の意図”を感じてしまう。例えば、アーセナルがアネルカを獲ったときなどは「まだ無名の青田買い」で済んだ話だったが、すでに年収数億の20歳の若輩者をこうまで褒めそやしてケツを叩く、そんな“せわしない”時代になってしまったのか。そこで思うのだが・・・・健全なるチーム強化と健全なるプレーヤーのキャリア形成のためにも、トップチームに上がってからの一定期間は移籍できないルールでも作ったらどうかな、と。どうです、ジーコ閣下、もしくはフィーゴ先生、公約に加えてくださらんか?
▽そのリヴァプールは、ロジャーズの副官にイングランドユース代表コーチのショーン・オドリスコルを新しく雇い入れた。ヴィジョンとしては優秀な明日のイングランド代表候補に“照準”を定めている節がありありだ。もしくは、リヴァプールにてそんな逸材を発掘、養成せんとする一つのステップ。例えば、スパーズでそれに通じる努力の果実が実り始めている背景もある。ケイン、メイソン、ベンタレブ。折しも、ベンタレブ契約更新のニューズがあった。筆者は常にして思う。才能は作り育てるもの。どこかが苦労して作り育てた才能を、カネをちらつかせてかっさらうものじゃない。だが、優勝請負人よろしく大物プレーヤーに匹敵するギャラで雇われた外国人監督は、その要求を満たすべくなりふりかまわぬ“トンビの油揚げ”横取り作戦を敢行する。少なくともリヴァプールは正道を目指していないか。多分、クリスタル・パレスのパーデューも。正直(勝手な言い分を百も承知で)、ノンブリティッシュ・マネージャーの百花繚乱にはため息を吐いてしまうのだ。

▽いやはや、また愚痴になってしまった。お口直しにほっとする(?)話題で締めくくらせていただこう。LAギャラクシー正式入団の会見に臨んだスティーヴン・ジェラードは開口一番、こう語りき。「この移籍に心動かされた最大の要因はベッカム(のアドバイス、存在、および先例)だ。わたしが常に敬愛し、お手本にしてきた真のプロ。わたしのヒーローであり、すばらしい人格の持ち主」。加えて、かつての同僚ロビー・キーンの存在もある。「さながら、今のわたしは転校生の気分だけど、ロビーが上手く取り持ってくれるおかげで、すんなり溶け込めるのはありがたい」。そして彼はこう締めくくるのだ。「決して休暇で(ロスに)来たんじゃない。そう考えている人がもしいるとしたら、有り金はたいてでも、それは誤解だと証明して見せる」。よくぞ言ってくれました。折しもニューヨークシティーFCに転身を図ったピルロとの司令塔対決が、今から楽しみではないか。

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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