映画界の鬼才が描くサッカー界の天才 リオネル・メッシが歩んだ道のり 「MESSI」東京国際フットボール映画祭 特別上映作品

2015.02.06 21:15 Fri
2015年2月7日(土)、8日(日)、11日(祝・水)に秋葉原UDXシアターで東京国際フットボール映画祭が開催される。上映作品の「MESSI」は、FCバルセロナのリオネル・メッシのこれまでの人生を描いたスポーツ・ドキュメンタリーだ。再現ドラマと関係者の証言により、アルゼンチン代表FWの人生が克明に描き出されている。

■メッシの歩みを知っていても観る価値がある作品

熱心なサッカーファンなら、リオネル・メッシのこれまでの歩みや、エピソードについてすでに多くを知っていることだろう。
アルゼンチンのロサリオで生まれ、5歳の時に近所のクラブで本格的なプレーをスタート。以来、天才の名をほしいままにする。しかし、成長ホルモンの分泌異常が発覚し、成長ホルモン投与などの治療なしでは身体が発達しないと診断されてしまう。アルゼンチンのクラブは高額な治療費を工面してくれなかったため、メッシは13歳でスペインのFCバルセロナのセレクションを受け合格。家族そろってバルセロナへ移住する。この時、143cmだった身長は、成長ホルモンの投与治療によって169cmまで伸びた。そして、17歳となった2004年10月16日、第7節エスパニョール戦にてトップデビューを飾り、以降の歩みはご存じのとおりである。

そんなメッシの軌跡を描いたスポーツ・ドキュメンタリーが本編である。基本的なストーリーは、彼のこれまでの人生に即したものなので、当然、多くの方がすでに概要を知っている、いわば“ネタバレ”の状態。それでも、本編を見るべきなのは、スペインの鬼才、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の手によるものだからだ。
1993年に映画『ハイル・ミュタンテ!/電撃XX作戦』で長編映画監督デビューした彼は、2010年の映画『気狂いピエロの決闘』でヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞と脚本賞を受賞。2014年には『スガラムルディの魔女』でゴヤ賞最多8部門を受賞し、スペイン国内で70万人以上の観客動員を記録している。芸術性と娯楽性を兼ね備え、商業的にも成功しているスペインを代表する映画監督なのだ。

奇想天外なストーリーと映像がイグレシア映画の特徴で、ピカソやダリなど一筋縄ではいかない同国の天才芸術家の系譜を受け継いでいるといっても過言ではない。日本ではまだそれほど有名ではないが、昨年10月に『スガラムルディの魔女』PRのために来日し、同作と2012年の作品『刺さった男』が同時公開されるなど、日本での注目度も上がっている。

■バルダーノとクライフを話しこませる等のトリッキーな仕掛け

そんな鬼才が天才をどう撮るか、という点が本編の大きな見どころと言ってもいい。映画ほど奇抜な演出はないものの、構成自体もなかなか凝っている。レストランのような場所で、メッシの幼馴染や学校の先生たちが、レオの思い出話に花を咲かせる。そうした興味深い証言の数々と同時に再現ドラマが挿入され、観客はメッシの人生によりリアルに触れることになる。

かと思えば、別のテーブルにはアルゼンチン代表の大先輩、ただしFCバルセロナの宿敵レアル・マドリーでゼネラルディレクターを務めたホルヘ・バルダーノが座り、彼と話し込んでいるのはFCバルセロナのレジェンド、ヨハン・クライフといったひねり具合。こうしたトリッキーな仕掛けが、作品内にいくつも仕組まれている。それに気づいて、思わずニヤリとするのも一興だ。

メッシが常に比較される運命にあるディエゴ・マラドーナには、『マラドーナ』というドキュメンタリー映画がある。旧ユーゴスラビア出身の鬼才、エミール・クストリッツァ監督による珠玉の作品(DVDあり)だが、これと比較してみるのもよりマニアックな楽しみ方だ。もちろん、何の予備知識もなく観ても、本編は十分楽しめる。ドキュメンタリー映画の命でもある題材が“神の子”なのだから、退屈であるはずがない。ジョゼップ・グアルディオラ、ジェラール・ピケ、ハビエル・マスチェラーノなど、豪華な証言者たちも本編に華を添えている。

text by 浅川俊文

■「MESSI
2/7(土) 9:30~
トークゲスト:coming soon

2/8(日) 12:35~
トークゲスト:西部謙司(サッカージャーナリスト)

2/11(水/祝) 18:35~
トークゲスト:小澤一郎(サッカージャーナリスト)、亘崇詞(ASエルフェン埼玉コーチ)

東京国際フットボール映画祭 公式ホームページ

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