「サッカー不毛の地」にプロクラブを作ったサポーターたち「ベンジャミン・フランクリンの息子たち —アメリカン熱狂サポーターライフ—」東京国際フットボール映画祭 特別上映作品

2015.02.06 20:45 Fri
2015年2月7日(土)、8日(日)、11日(祝・水)に秋葉原UDXシアターで東京国際フットボール映画祭が開催される。特別上映作品の「ベンジャミン・フランクリンの息子たち —アメリカン熱狂サポーターライフ—」(ジャパンプレミア上映)は、サッカークラブが存在しなかったフィラデルフィアにサポーターグループを作ったサッカーマニアたちが、ローカルクラブを立ち上げるまでの戦いを描いている。「4大スポーツ」が根付くアメリカで、彼らが直面する現実とは?

■「メジャー・スポーツ」が既に根付いていたフィラデルフィア

「フィラデルフィア地方でアメフトは間違いなく至高のスポーツ。米国でもっとも人気が高いと言われるアメフトチームがある。アイスホッケーのチームも同様に人気だ。(アメフトチームの)イーグルスでも果たせなかった優勝を取った野球チームもある。(バスケットボールの)セブンティシクサーズもある。NCAAディビジョン1の大学は7校もある。スポーツの市場は既に飽和していて、私でもついていけない。サッカーに関心を持つ余裕はありますか? フィラデルフィア人の心は、そこまで広いのかな?」
「ベンジャミン・フランクリンの息子たち —アメリカン熱狂サポーターライフ—」では、このようにフィラデルフィアのスポーツラジオ94WIPのアンソニー・ガルガーノ氏がフィラデルフィアにおけるスポーツの背景を語る。

「2大スポーツ」に慣れた日本人には想像できないかもしれないが、アメリカではアメフト・野球・バスケットボール・アイスホッケーという「4大スポーツ」があり、全てが「メジャー」と扱われる。数字にすると「4大スポーツ」に参加しているチームは122もある。
「全メジャー参加」と言える都市は12。フィラデルフィアもその中に入っている。
一つの街に大きいスポーツチームが多くても2つしかない環境にいる日本人には考えられないほど、このような街で生まれたら「スポーツに育てられる」ことになる。

自分のチームで生きたり、死んだりする。フィラデルフィア人ならフィリーズ、イーグルス、セブンティシクサーズ、フライヤーズを応援する。友達も先生もボスも恋人も、いつか子供も応援する。

そしてようやく2010年にサッカークラブの「フィラデルフィア・ユニオン」がそのリストに追加された。

フィラデルフィアに生まれ育った者としては、なかなか信じられなかった。「4大チーム」は頭にしっかり入ったが、この街でサッカーが流行するのかどうかは心配だった。

ガルガーノ氏が語る通り、フィラデルフィア人の心はそれほど広くなさそうだった。

■アメリカは「サッカーの国」にはなれないのか?

しかし、自分の街にサッカーチームを呼ぶためにサンズ・オブ・ベン(フィラデルフィアの偉人から名を取ったサポータークラブ)が見せてくれたパッション、献身、そしてガッツは、フィラデルフィアでしか見られないものだった。

筆者も2010年の初ホーム開幕戦を現地で観戦したが、その試合はアメフトのスタジアムで行われ、フィラデルフィア初の「プロの試合」というだけで雰囲気は微妙なものだった。

4年後、本拠地であるPPLパークで改めて試合観戦をしたら驚くべきほどに興奮してしまった。ゲーフラを持ったり、煙を使ったり、マフラーを振りながら歌ったりしているサポーターは、満員のゴール裏から全力でチームを応援していた。

やはり、フィラデルフィアもサッカーが好きなのだなと強く感じた。

たった74分間のこのドキュメンタリーは様々な物語を伝える。一つは「自分のチーム」を探して、やっとのことでそれを見つけられたサッカーファン。もう一つは不況を脱するための方法を模索する街。そしてその街の成功と闘争。

しかし何よりも、これは「アメリカ・サッカー物語」の一つだ。

2015年に20チームまで拡大するメジャーリーグ・サッカーは2014年に平均来場者数が初めて1試合19000人を突破した。これはNHLやNBAの平均数を上回る金星であり、国内サッカーのレベルは明らかに高くなっている。

ところが、私がJリーグの試合を観に行ったときに一番聞かれる質問は「何故外国人は日本のサッカーが好きなのか?」ではなく、「何故アメリカ人なのにサッカーが好きなのか?」だ。

もちろんそれは失礼なことではないが、明らかに日本人はアメリカを「サッカーの国」として意識していない。恐らくギャラクシーのベッカム、レッドブルズのケーヒル、そして今年渡米するランパード、ジェラード、とカカくらいしか日本人はMLSのことを知らない。

サッカーの歴史はスター選手やビッグマッチだけではなく、サポーターやファンによって紡がれていく。だからこそMLSのことを理解するためには、リーグのスタッフではなく最初からいたファンの話を聞くべきだ。

そしてリーグやクラブとの関係が複雑になってきたJリーグのサポーターはこの映画を見るべきだ。アメリカでも、フィラデルフィアでも、チェスターでもサッカーで盛り上がれるのだから、日本でももっと盛り上げることが出来るはずだ。

text by ダン・オロウィッツ

■「ベンジャミン・フランクリンの息子たち —アメリカン熱狂サポーターライフ—」上映スケジュール
2/7(土) 15:50~
トークゲスト:チェーザレ・ポレンギ(サッカージャーナリスト)、ダン・オロウィッツ(サッカージャーナリスト、サンズ・オブ・ベンのサポーター)

2/8(日) 14:55~
トークゲスト:チェーザレ・ポレンギ(サッカージャーナリスト)、ダン・オロウィッツ(サッカージャーナリスト、サンズ・オブ・ベンのサポーター)

東京国際フットボール映画祭 公式ホームページ

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