インテル長友入ってる! 青赤100%フットボール映画に迫る 『ユルネバ~キミは一人じゃない~』脚本・監督植田朝日Interview
2015.02.05 19:00 Thu
2015年2月7日(土)、8日(日)、11日(祝・水)に秋葉原UDXシアターで開催する東京国際フットボール映画祭が開催される。日本初公開となる「ユルネバ~キミは一人じゃない~」は、FC東京愛満載で送るゴール裏発ドタバタラブコメディだ。本作の見どころを伺うべく、FC東京を追いかける後藤勝氏が植田朝日監督を直撃した。
■映画そのものがまだできていない(笑)

もう完成しているのかと、アジアカップ準々決勝日本対UAE戦が迫った某日、脚本も手がけた仕掛け人・植田朝日監督の許を訪ねてみると、彼は主演の黒田耕平、撮影の渡部和彦(株式会社フューチャーフォーク)とともに、いまだ編集作業の真っ最中だった。
「まだできていないっていうね(笑)」
この余裕。そもそも、11月から12月上旬にかけていきなりつくることになり、あっという間に撮影を済ませるスピード感だ。ふつうの映画制作を思い浮かべていたら、面食らってしまう。
「映画の撮り方もわからないし、舞台のこともわからない。文学部卒だけど学校に行ったおぼえもない(笑)。そんなのは関係ないわけじゃん、自己流だから」
すんなりとことが運んだのは、植田が主宰する劇団コラソンで上演してきた芝居がもとになった作品だからでもある。2011年の「第2回せんがわ劇場演劇コンクール」 での初演以来、ヴァージョンアップを重ねてきた。コラソンの舞台を通して呼吸が合っている役者を中心にキャスティングしたから、映画になっても、その間が生きている。
この点について、植田は「オシムが日本代表の監督になったときに、ジェフの選手がいる感じ。やり方のわからない日本で名の通った11人よりも、やりたいサッカーを具現化、理解して動いてくれる選手を使ったほうがいい」と言っている。たしかに連携はよさそうだ。
■インテルの長友も役者として登場
しかしたんにコンビネーションだけを重視したわけではない。
「いろいろなところに響くキャストを呼ぼうと思ったんだ」
FC東京の応援番組に出演しているゆってぃと橘ゆりか。その縁でアイドリング!!!から倉田瑠夏と関谷真由。『テニミュ』で知られる上田悠介。ハロプロの舞台にも出演している宮原将護。『手裏剣戦隊ニンニンジャー』アオニンジャー役の松本岳。
「彼らのファンを東京ファンにしたい」
たとえば『ニンニンジャー』を観るような子どももお母さんも好きになってくれればいい、と植田は言う。「アオニンジャーの青も東京っぽいし。ゴール裏のチャントを『サマーライオン』にしたら、アイドリング!!!のファンが東京ファンになってくれたこともある」
インテルの長友佑都が出演していることも大きなニュースだ。ただ撮ってきたものを強引に混ぜ込んだ、というものではなく、ちゃんと長友が芝居をしている。
「(映画の企画が持ち上がるより前から)イタリアにサッカーを観に行く予定があったの。だけど、映画の撮影が始まっているのに、一週間も現場を空ける監督がいるというのは気まずかった(笑)。つじつま合わせだよ」
“合法的にイタリアに行く理由”を探した植田は、FC東京に関係した人間で、世界にもっとも名が通っている長友を出そうと思いついた。所属事務所もすぐにOK。制作をさぼってのイタリア旅行と白い目で見られるはずが、貴重なイタリアロケに早変わり。
長友は数十秒に渡り、ある心境を吐露している。どこであらわれ、どんな演技をするか。ムーヴィースター長友の登場に乞うご期待!
それにしても、日本代表やFC東京の試合に足繁く通い応援するサッカーファンとして知られる植田が、なぜ映画を撮ろうと思い立ったのだろうか。
「以前から“映画を撮る撮る!”と言っていたから、口だけ番長になってしまうのが嫌だった(笑)。けがした膝のオペで、二週間の入院になったの。こんなにまとまった時間をとれることはないから、これはチャンスだと思って。まず(主演の黒田)耕平に話をして。映像はいま横にいる渡部(和彦)くんしかいないと思って声をかけて」
ちょっとみんな集まって! キャストも集まって! 瞬く間にスタッフと役者が揃い、病院の待合室が会議室を化していた。そして映画を撮ると公表すると、すぐに「ぜひいらしてください!」と打診され、まだ撮り終わってもいないのに映画祭への出品が決まってしまった。
■FC東京といっしょに世界に出たい
「やっぱりFC東京が大好きだから。いまさら言う話ではないけれど、好きすぎるから、東京をいろいろなひとに知ってほしかった、というのがすごくでかくて。もうひとつは、ずっと、FC東京といっしょに世界に出たいと思っていた」
それこそ東京ガス時代から誰よりもそう思ってきたと、植田は自負している。しかしなかなかクラブは世界に行けない。ならば、自分たちが行けばいい。サッカーの映画祭は海外にもたくさんあると知っていた。おもしろいものをつくったらFC東京といっしょに海外に出ていけるのではないか。それがきっかけになってFC東京を知ってくれたら――。
「『メジャーリーグ2』に石橋貴明が出てきたらインディアンス気になるじゃん? そういうふうにFC東京がなれたら最高だな、と」
即興でインテル長友を出演させてしまったこともそうだが、もともと植田のフットワークは軽い。劇団コラソンの成り立ちもほとんど悪ノリ。オーディションで落ちるんだ、と悩む俳優に「オーディションを受けるから落ちるんだ」「自分でオーディションをやればいい」。
そんな調子で、この映画は自由だ。サッカー映画なのに、ボールはパチンコしか出てこない。
「おれはサッカーをカルチャーだと思っているから。そのスタジアムでサッカーボールを追いかけているのは22人しかいないでしょ? 残る数万人はボールを持たずに試合を観ているんだよ」
サッカーボールがまったく出てこないサッカー映画。さらに言えば、サッカー映画ですらないのかもしれない。サッカーファンが登場するラブコメディ。サッカーを知らなくてもおもしろい。知っていてもおもしろい。緑色のものとよみうりの名がつく場所をよしとせず、FCと呼ばれることを嫌う、あるクラブのファンの姿が描かれる。頑なな信条を持つフットボールファンと、他者とのすれちがい。はたして応援するチームの行方は? そして彼の恋は成就するのか!?
初演では30分の舞台だったものが、インタヴュー時点では110分の映像になっていた。映画祭当日、どのような完成品を拝むことができるのか。いまから待ち遠しい。
Text by 後藤勝
【東京国際フットボール映画祭 公式ホームページ】
http://football-film.jp/post/100/
チケットはこちらから
■映画そのものがまだできていない(笑)

写真:後藤勝
[現在編集作業の真っ只中にある植田朝日監督]
2月7日(土)、8日(日)、11日(水)の三日間に渡り秋葉原のUDXシアターにて開催される東京国際フットボール映画祭2015に、100%FC東京、青赤以外まじりけなしのフットボール映画「ユルネバ~キミは一人じゃない~」が参加する。もう完成しているのかと、アジアカップ準々決勝日本対UAE戦が迫った某日、脚本も手がけた仕掛け人・植田朝日監督の許を訪ねてみると、彼は主演の黒田耕平、撮影の渡部和彦(株式会社フューチャーフォーク)とともに、いまだ編集作業の真っ最中だった。
「まだできていないっていうね(笑)」
「映画の撮り方もわからないし、舞台のこともわからない。文学部卒だけど学校に行ったおぼえもない(笑)。そんなのは関係ないわけじゃん、自己流だから」
全編をほぼiPhone6+で撮影している。若干、iPadも使っているらしいが、いずれにしろキャメラを構える撮影風景とはちがう。一度のカットについて角度を変えての撮り直しをせず、一度に8台ものカメラでいくつもの角度から撮ったこともあり、NGはあっても撮影は迅速に進んだ。実際の映像を観たが、クオリティは高かった。ドキュメンタリー的な迫真性すら漂っていたように思う。
すんなりとことが運んだのは、植田が主宰する劇団コラソンで上演してきた芝居がもとになった作品だからでもある。2011年の「第2回せんがわ劇場演劇コンクール」 での初演以来、ヴァージョンアップを重ねてきた。コラソンの舞台を通して呼吸が合っている役者を中心にキャスティングしたから、映画になっても、その間が生きている。
この点について、植田は「オシムが日本代表の監督になったときに、ジェフの選手がいる感じ。やり方のわからない日本で名の通った11人よりも、やりたいサッカーを具現化、理解して動いてくれる選手を使ったほうがいい」と言っている。たしかに連携はよさそうだ。
■インテルの長友も役者として登場
しかしたんにコンビネーションだけを重視したわけではない。
「いろいろなところに響くキャストを呼ぼうと思ったんだ」
FC東京の応援番組に出演しているゆってぃと橘ゆりか。その縁でアイドリング!!!から倉田瑠夏と関谷真由。『テニミュ』で知られる上田悠介。ハロプロの舞台にも出演している宮原将護。『手裏剣戦隊ニンニンジャー』アオニンジャー役の松本岳。
「彼らのファンを東京ファンにしたい」
たとえば『ニンニンジャー』を観るような子どももお母さんも好きになってくれればいい、と植田は言う。「アオニンジャーの青も東京っぽいし。ゴール裏のチャントを『サマーライオン』にしたら、アイドリング!!!のファンが東京ファンになってくれたこともある」
インテルの長友佑都が出演していることも大きなニュースだ。ただ撮ってきたものを強引に混ぜ込んだ、というものではなく、ちゃんと長友が芝居をしている。
「(映画の企画が持ち上がるより前から)イタリアにサッカーを観に行く予定があったの。だけど、映画の撮影が始まっているのに、一週間も現場を空ける監督がいるというのは気まずかった(笑)。つじつま合わせだよ」
“合法的にイタリアに行く理由”を探した植田は、FC東京に関係した人間で、世界にもっとも名が通っている長友を出そうと思いついた。所属事務所もすぐにOK。制作をさぼってのイタリア旅行と白い目で見られるはずが、貴重なイタリアロケに早変わり。
長友は数十秒に渡り、ある心境を吐露している。どこであらわれ、どんな演技をするか。ムーヴィースター長友の登場に乞うご期待!
それにしても、日本代表やFC東京の試合に足繁く通い応援するサッカーファンとして知られる植田が、なぜ映画を撮ろうと思い立ったのだろうか。
「以前から“映画を撮る撮る!”と言っていたから、口だけ番長になってしまうのが嫌だった(笑)。けがした膝のオペで、二週間の入院になったの。こんなにまとまった時間をとれることはないから、これはチャンスだと思って。まず(主演の黒田)耕平に話をして。映像はいま横にいる渡部(和彦)くんしかいないと思って声をかけて」
ちょっとみんな集まって! キャストも集まって! 瞬く間にスタッフと役者が揃い、病院の待合室が会議室を化していた。そして映画を撮ると公表すると、すぐに「ぜひいらしてください!」と打診され、まだ撮り終わってもいないのに映画祭への出品が決まってしまった。
■FC東京といっしょに世界に出たい

写真:コラソン
[東京国際フットボール映画祭では、アイドリング!!!の橘ゆりかさんなど、出演者の方々が舞台挨拶で来場することになっている。]
この映画に込めたものとはなんなのか。「やっぱりFC東京が大好きだから。いまさら言う話ではないけれど、好きすぎるから、東京をいろいろなひとに知ってほしかった、というのがすごくでかくて。もうひとつは、ずっと、FC東京といっしょに世界に出たいと思っていた」
それこそ東京ガス時代から誰よりもそう思ってきたと、植田は自負している。しかしなかなかクラブは世界に行けない。ならば、自分たちが行けばいい。サッカーの映画祭は海外にもたくさんあると知っていた。おもしろいものをつくったらFC東京といっしょに海外に出ていけるのではないか。それがきっかけになってFC東京を知ってくれたら――。
「『メジャーリーグ2』に石橋貴明が出てきたらインディアンス気になるじゃん? そういうふうにFC東京がなれたら最高だな、と」
即興でインテル長友を出演させてしまったこともそうだが、もともと植田のフットワークは軽い。劇団コラソンの成り立ちもほとんど悪ノリ。オーディションで落ちるんだ、と悩む俳優に「オーディションを受けるから落ちるんだ」「自分でオーディションをやればいい」。
そんな調子で、この映画は自由だ。サッカー映画なのに、ボールはパチンコしか出てこない。
「おれはサッカーをカルチャーだと思っているから。そのスタジアムでサッカーボールを追いかけているのは22人しかいないでしょ? 残る数万人はボールを持たずに試合を観ているんだよ」
サッカーボールがまったく出てこないサッカー映画。さらに言えば、サッカー映画ですらないのかもしれない。サッカーファンが登場するラブコメディ。サッカーを知らなくてもおもしろい。知っていてもおもしろい。緑色のものとよみうりの名がつく場所をよしとせず、FCと呼ばれることを嫌う、あるクラブのファンの姿が描かれる。頑なな信条を持つフットボールファンと、他者とのすれちがい。はたして応援するチームの行方は? そして彼の恋は成就するのか!?
初演では30分の舞台だったものが、インタヴュー時点では110分の映像になっていた。映画祭当日、どのような完成品を拝むことができるのか。いまから待ち遠しい。
Text by 後藤勝
【東京国際フットボール映画祭 公式ホームページ】
http://football-film.jp/post/100/
チケットはこちらから
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