ELグループステージ総評

2014.12.12 09:30 Fri
▽2014-15シーズンのELグループステージが11日に終了した。ここでは、グループステージの結果を大まかに総評していきたい。

◆苦戦も4大リーグ所属チームが32強入り
▽前日まで行われていたCLと同様に4大リーグ所属チームが実力通りの戦いぶりを見せ、大きな波乱のないままグループステージを終えた。かつては“罰ゲーム”とも揶揄されたELだったが、今季から優勝チームに翌年のCL出場権が与えられることが決定。それが各チームに大きなモチベーションを与えたようだ。

▽4大リーグ所属の10チーム全てが勝ち残った中、とりわけ印象的だったのは近年ヨーロッパの舞台での不振が目立ったイタリア勢の復権だ。以前は世界最強リーグと評されたセリエAだが、ヨーロッパリーグでは1998-99シーズンにパルマがUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)を制して以来、10年以上タイトルから見放されている。だが、今大会では勝ち抜けが順当と思われたインテルとナポリ、フィオレンティーナに加え、奮闘を見せたトリノの4チームが決勝トーナメント進出を決定。これにCL敗退組のローマが加わるため、久方ぶりのヨーロッパリーグ制覇の可能性は十分にあるはずだ。
▽例年、ELとの相性の良さを見せているイベリア半島勢だが、今グループステージでは前大会王者のセビージャとビジャレアルのスペイン勢がともに2位通過、エストリルとリオ・アヴェのポルトガル勢はいずれも敗退と苦戦を強いられた。それでも、セビージャとビジャレアルに関しては国内リーグでもここまで上位(セビージャが4位、ビジャレアルが6位)と、“二束のわらじ”をうまく履きこなしている印象だ。それだけに決勝トーナメントでもきっちりと結果を残してくれるだろう。

▽エバートンとトッテナムのイングランド勢、ボルシアMGとヴォルフスブルクのドイツ勢に関しては、国内リーグとの兼ね合いもあっていずれも波に乗り切れなかった印象だ。特に、トッテナムとエバートンはEL前後のリーグ戦での取りこぼしが多かったため、決勝トーナメントではどちらのコンペティションでヨーロッパのカップ戦出場権を狙うのか、はっきりさせたいところだ。
◆久保が躍動! EL初参戦の瀬戸も初ゴール
▽今季のグループステージではインテルのDF長友、ヤングボーイズのFW久保、アストラのMF瀬戸、スタンダール・リエージュのGK川島、FW小野と5人の日本人選手がプレーした。その中で最も印象的な活躍を披露したのが、先日U-21日本代表から招集を受けた久保。スイスの地で着実に成長を続ける久保は、第3節のナポリ戦でチームをジャイアントキリングに導くアシストを記録すると、第5節のスロバン・ブラチスラバ戦でも2ゴールを奪い、チームの勝利に大きく貢献。最終節でスパルタ・プラハに勝利したチームは、2010-11シーズン以来となる決勝トーナメント進出を決めた。

▽また、日本ではまだまだ無名ながら東欧の地で活躍を続ける瀬戸は、クラブ史上初めて参戦したヨーロッパリーグの舞台で確かな足跡を残した。クラブは2節を残して敗退が決定したものの主力としてプレーした瀬戸は、第2節のザルツブルク戦で見事なミドルシュートを決め、EL初ゴールを記録。また、第5節のディナモ・ザグレブ戦ではクラブの歴史的勝利にフル出場で貢献した。

▽ヨーロッパの舞台で十分な経験値を持つ長友だったが、今季は序盤からケガに悩まされてELの出場試合は2試合にとどまった。それでも、チームは首位通過を決定しており、長友の本領発揮は決勝トーナメントからといったところだ。

▽一方、昨季に続いて低調な戦いぶりを見せたのが、川島と小野が在籍するスタンダール・リエージュ。国内リーグでも低調なチームは、前大会王者セビージャらと同居したグループGで最下位に終わった。川島自身も低調なパフォーマンスを理由に正GKの座を奪われてしまった。長期の負傷離脱から復帰した小野もレギュラーを掴むまでには至っていない。

◆ディナモ・モスクワに注目
▽ELの魅力のひとつが、アウトサイダーの躍進だ。昨季のザルツブルクやルドゴレツほど強烈なインパクトを残したチームはなかったものの、今季も驚きを提供してくれたチームがいくつもあった。

▽その筆頭が、グループEを全勝で突破したディナモ・モスクワ(ロシア)だ。例年豊富な資金を後ろ盾にヨーロッパのコンペティションで好成績を収めているロシアやウクライナ勢だが、今季は両国間の政情不安の影響もあってか、苦戦を強いられた。その中でグループ首位通過を決めたディナモ・モスクワの戦いぶりは称賛に値する。

▽ここのところELでサプライズを起こしているチームの共通点としては、圧倒的な運動量と徹底した攻守の切り替えの2点が挙げられているが、ディナモ・モスクワは、より個人の能力を生かした王道なスタイルで好成績を収めている。

▽先のブラジル・ワールドカップでフランス代表の司令塔として活躍したMFヴァルブエナを今夏に獲得したチームは、そのヴァルブエナを軸とした攻守に安定感のある試合運びを得意とする。彼以外にもFWココリンやMFデニソフ、DFコズロフといったロシア代表で主力を担う選手たち、元ドイツ代表FWクラニィとQPRなどプレミアのクラブで活躍したDFサンバというベテラン選手がしっかりとチームの屋台骨を支えている。加えてグループステージで挙げた6勝の全てが1点差での勝利と、接戦での勝負強さが際立った。決勝トーナメントでは、CL敗退組のゼニトと共にロシア勢の強さを見せてほしいところだ。

▽そのほかのチームでは、前大会王者セビージャとフェイエノールトの前に屈したものの予想外の善戦を見せたリエカ(クロアチア)。同じくビジャレアルとボルシアMGと好勝負を演じたチューリッヒ(スイス)が興味深い活躍を披露した。

▽前者はビッグクラブ注目の若手ストライカーであるFWクラマリッチやMFモチニッチといったクロアチア代表選手が躍動を見せた。また、後者はチュニジア代表FWシハウィとスイス代表FWガブラノビッチといった実力者と、ヴォルフスブルクのスイス代表DFリカルド・ロドリゲスの実弟であるMFフランシスコ・ロドリゲスなど期待の若手がうまく融合した好チームだった。

■ELグループステージ順位表■
【グループA】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ボルシアMG[12/3/3/0/10]
2.ビジャレアル[11/3/2/1/8]
3.チューリッヒ[7/2/1/3/-4]
4.アポロン・リマソル[3/1/0/5/-14]

【グループB】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.クラブ・ブルージュ[12/3/3/0/8]
2.トリノ[11/3/2/1/6]
3.ヘルシンキ[6/2/0/4/-6]
4.コペンハーゲン[4/1/1/4/-8]

【グループC】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ベシクタシュ[12/3/3/0/6]
2.トッテナム[11/3/2/1/5]
3.アステラス・トリポリス[6/1/3/2/-3]
4.パルチザン[2/0/2/4/-8]

【グループD】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ザルツブルク[16/5/1/0/13]
2.セルティック[8/2/2/2/-1]
3.ディナモ・ザグレブ[6/2/0/4/-3]
4.アストラ[4/1/1/4/-9]

【グループE】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ディナモ・モスクワ[18/6/0/0/6]
2.PSV[8/2/2/2/0]
3.エストリル・プライア[4/1/1/3/-1]
4.パナシナイコス[2/0/2/4/-5]

【グループF】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.インテル[12/3/3/0/4]
2.ドニプロ[7/2/1/3/-1]
3.カラバフ[6/1/3/2/-2]
4.サンテチェンヌ[5/0/5/1/-1]

【グループG】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.フェイエノールト[12/4/0/2/4]
2.セビージャ[11/3/2/1/3]
3.リエカ[7/2/1/3/-1]
4.スタンダール・リエージュ[4/1/1/4/-6]

【グループH】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.エバートン[11/3/2/1/7]
2.ヴォルフスブルク[10/3/1/2/4]
3.FCクラスノダール[6/1/3/2/-5]
4.リール[4/0/4/2/-6]

【グループI】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ナポリ[13/4/1/1/8]
2.ヤングボーイズ[12/4/0/2/6]
3.スパルタ・プラハ[10/3/1/2/5]
4.スロバン・ブラチスラバ[0/0/0/6/-19]

【グループJ】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.ディナモ・キエフ[15/5/0/1/8]
2.オールボー[9/3/0/3/-5]
3.ステアウア・ブカレスト[7/2/1/3/2]
4.リオ・アヴェ[4/1/1/4/-5]

【グループK】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.フィオレンティーナ[13/4/1/1/7]
2.ギャンガン[10/3/1/2/1]
3.PAOK[7/2/1/3/3]
4.ディナモ・ミンスク[4/1/1/4/-11]

【グループL】
[勝ち点/勝/引/負/得失点]
1.レギア・ワルシャワ[15/5/0/1/5]
2.トラブゾンシュポル[10/3/1/2/2]
3.ロケレン[10/3/1/2/0]
4.メタリスト[0/0/0/6/-7]

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