【コラム】異国のサッカーファン
2014.10.24 21:15 Fri
▽皆さんはどこのサッカーを、どれほど見ているのだろうか? 「サッカーと名のつくものであれば何でも」という熱狂的な人もたくさんいると思うが、時間は限られている。仕事や学業、プライベートの折り合いをつけて、ようやく趣味に費やす時間が生まれるものだ。となれば、自分の中で優先順位ができてくるだろう。
▽僕の場合、そのプライオリティーの上位にあったのがセリエAだ。生で見るJリーグも悪くないが、それよりも、深夜にテレビで見る遠いカルチョが自分の最優先事項だった。
▽そんなことを思い出すきっかけをくれたのは、ヴェローナのスタジアムにいたスチュワードの青年だった。
▽ヴェローナの試合を見に行った際、一般的に想像されるイタリア男性をかなりマイルドにした感じの好青年風のスチュワードに声をかけられた。流ちょうな英語で「日本人の人ですか? 」というような感じ。日本人選手がいる試合では、案外少なくない光景である。
▽だが、その次の質問がどうもおかしい。「日本のリーグも追っているの? 」である。初めて受けた質問で聞き直したところ、やはり同じだった。
▽今のセリエAの力はさておき、自分が海外サッカーを見始めた理由といえば、やはりレベルの違いがあった。その中でプレミア好きやリーガ好きなど分かれたが、その前提は同じだったと思う。
▽イタリア人から発せられた「ガンバ大阪のファンなんだ」は、自分の感覚からズレており、かなり驚いた次第だ。
▽思わず「なぜ? 」と聞くと「よく分からないけど好きなんだ」との回答。確かに、好きになるのに、明確な理由などなくていい。
▽この青年、マイルドフェイスのわりに「ガチ」なJリーグ好きのようで、ここからさらに驚かされた。
▽「君はどこのファンなんだい? 」なんて聞くから、レッズを挙げると、「昨日はベガルタに負けちゃったね。どんまい! 」みたいな感じである。
▽正直なところ、レッズは地元の近くだからよく試合を見ていた程度。ファンというのはおこがましいような知識しかない。「そうだね、残念だったよ」と答えた後、スマホでJリーグの結果を検索したのは内緒である。
▽あまり時間もなく、細かい話はできなかったので、僕がJリーグに疎いということはバレなかったことだろう。ただ、浦和と大宮が近いことなど、どのクラブがどのあたりにあるといったことも彼は把握しており、感心した。Jリーグの情報など、イタリアで普通に生活して入ってくるものではない。自発的に調べようとしなければ、得られない知識である。
▽そんな彼を見て、深夜に眠い目をこすりながらセリエAを見ていた自分を思い出した。たしかに、イタリアへ行ったことがないときから、「この地方はよく雪が降っているな」とか「ここはファンが熱狂的だな」といった知識は無駄に持っていた。そのすべてが正しかったわけではないが、サッカーを通していろいろなことを知ったと感じている。
▽ヴェローナの好青年も、Jリーグを通じて、ガンバ大阪を通じて、日本にいろいろなイメージを持っているころだろう。
▽彼は極めて稀な例だと思うが、Jリーグの世界展開をいつか見てみたいものである。
【著者紹介】
ペッピーノ伊藤
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
▽僕の場合、そのプライオリティーの上位にあったのがセリエAだ。生で見るJリーグも悪くないが、それよりも、深夜にテレビで見る遠いカルチョが自分の最優先事項だった。
▽そんなことを思い出すきっかけをくれたのは、ヴェローナのスタジアムにいたスチュワードの青年だった。
▽だが、その次の質問がどうもおかしい。「日本のリーグも追っているの? 」である。初めて受けた質問で聞き直したところ、やはり同じだった。
▽日本人として「まあ、それなりにね」と結構なウソをついてしまったのだが、今思うと彼には申し訳なかったと思う。その好青年は「僕、ガンバ大阪のファンなんだ」と言い出したのだ。意味が分からなかった。
▽今のセリエAの力はさておき、自分が海外サッカーを見始めた理由といえば、やはりレベルの違いがあった。その中でプレミア好きやリーガ好きなど分かれたが、その前提は同じだったと思う。
▽イタリア人から発せられた「ガンバ大阪のファンなんだ」は、自分の感覚からズレており、かなり驚いた次第だ。
▽思わず「なぜ? 」と聞くと「よく分からないけど好きなんだ」との回答。確かに、好きになるのに、明確な理由などなくていい。
▽この青年、マイルドフェイスのわりに「ガチ」なJリーグ好きのようで、ここからさらに驚かされた。
▽「君はどこのファンなんだい? 」なんて聞くから、レッズを挙げると、「昨日はベガルタに負けちゃったね。どんまい! 」みたいな感じである。
▽正直なところ、レッズは地元の近くだからよく試合を見ていた程度。ファンというのはおこがましいような知識しかない。「そうだね、残念だったよ」と答えた後、スマホでJリーグの結果を検索したのは内緒である。
▽あまり時間もなく、細かい話はできなかったので、僕がJリーグに疎いということはバレなかったことだろう。ただ、浦和と大宮が近いことなど、どのクラブがどのあたりにあるといったことも彼は把握しており、感心した。Jリーグの情報など、イタリアで普通に生活して入ってくるものではない。自発的に調べようとしなければ、得られない知識である。
▽そんな彼を見て、深夜に眠い目をこすりながらセリエAを見ていた自分を思い出した。たしかに、イタリアへ行ったことがないときから、「この地方はよく雪が降っているな」とか「ここはファンが熱狂的だな」といった知識は無駄に持っていた。そのすべてが正しかったわけではないが、サッカーを通していろいろなことを知ったと感じている。
▽ヴェローナの好青年も、Jリーグを通じて、ガンバ大阪を通じて、日本にいろいろなイメージを持っているころだろう。
▽彼は極めて稀な例だと思うが、Jリーグの世界展開をいつか見てみたいものである。
【著者紹介】
ペッピーノ伊藤
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
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