“眠れる巨象”の大きな一歩 ~インド・スーパーリーグの開幕に際し~

2014.10.12 18:51 Sun
▽約12億5000万人という世界2位の人口を誇る“眠れる巨象”インドが、世界に轟く音を立て、フットボール界に大きな一歩を踏み出そうとしている――新たなプロサッカーリーグ、インディアン・スーパーリーグ(ISL)が10月12日に開幕を迎える。
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▽ISLは、Iリーグ(インドのプロサッカーリーグ)とは別もので、「インド代表が2026年のワールドカップ予選を通過することを目標とした“国内サッカーの人気獲得”と“インドサッカーのレベル向上”」というビジョンの下、リライアンス・インダストリーズ社(石油やガス開発などの事業を手がける国内最大の企業)と、IMG社(世界でスポーツ事業を展開するアメリカの企業)、そしてスター・インディア社(インド最大のテレビ局)の3社と、AIFF(全インドサッカー連盟)によって2013年10月21日に創設された。▽10月12日(日)にシーズンの開幕を迎えるISLは、8クラブがホーム&アウェイ方式で対戦し、全14節の結果で順位を決定。その後、シーズンを4位以内で終えた上位4チームによる、トーナメント形式のファイナルシリーズが行われ、12月20日に行われるグランドファイナルで優勝を決定する。なお、1日1試合というレギュレーションも非常にユニークだ。
▽ただ、何よりも注目すべきなのは、“往年のスター選手の大集合”だ。かつてリバプールでプレーした元スペイン代表FWルイス・ガルシアの移籍を皮切りに、続々とかつてのスーパースターがインドに渡ってきた。共にアーセナルで一時代を築いた元スウェーデン代表FWフレドリック・ユングベリと元フランス代表FWロベール・ピレス、さらには、Jリーグ加入の噂もあった元イタリア代表FWアレッサンドロ・デルピエロも参戦。まさに“インド人もビックリ”の顔ぶれだ。

▽これだけのスーパースターたちがインドに集まるのには理由がある。ISLに参加する各クラブは、規定で「最低22名の選手を登録し、各クラブは7名の外国籍選手、14名のインド人選手(そのうち4名は地元出身者であること)、そして少なくとも1名のマーキープレーヤーを保有しなければならない」と定められている。AIFFは、マーキープレーヤーを「ユーロ、コパ・アメリカ、アフリカネーションズカップ、アジアカップ、FIFAワールドカップのような国際大会に代表の一員として出場した経験を持つ選手」と定義しているため、前述したスター選手たちがインドに集結することになった。ちなみに各クラブのマーキープレーヤーは以下の通りだ。
◆ISL各クラブのマーキープレーヤー(参考※1)
※()内はかつての所属クラブ

◆アトレティコ・コルカタ(※アトレティコ・マドリーが関与)
【マーキープレーヤー】
元スペイン代表FWルイス・ガルシア(リバプールなど)
【外国籍選手】
スペイン人MFボルハ・フェルナンデス(レアル・マドリーなど)
スペイン人MFホセミ(リバプール、ビジャレアルなど)
【監督】
スペイン人:アントニオ・ロペス

◆チェンナイ・タイタンズ(※インテルが関与)
【マーキープレーヤー】
元ブラジル代表MFエラーノ(マンチェスター・シティなど)
【外国籍選手】
元フランス代表DFベルナール・メンディ(パリ・サンジェルマンなど)
元フランス代表DFミカエル・シルベストル(マン・ユナイテッド、アーセナルなど)
【監督(選手兼任)】
元イタリア代表DFマルコ・マテラッツィ(インテルなど)

◆デリー・ダイナモス
【マーキープレーヤー】
元イタリア代表FWアレッサンドロ・デルピエロ(ユベントスなど)
【外国籍選手】
元チェコ代表DFマレク・チェフ(ジリナなど)
元デンマーク代表FWマッズ・ユンカー(フィテッセ、ローダなど)
【監督】
オランダ人:ハルム・ファン・フェルドホーフェン

◆FCプネ・シティ
【マーキープレーヤー】
元フランス代表FWダビド・トレゼゲ(ユベントス、モナコなど)
【外国籍選手】
元ギリシャ代表MFコンスタンティノス・カツラニス(AEKアテネ、ベンフィカなど)
【監督】
イタリア人:フランコ・コロンンパ

◆FCゴア
【マーキープレーヤー】
元フランス代表FWロベール・ピレス(アーセナル、マルセイユなど)
【外国籍選手】
元ブラジル代表DFアンドレ・サントス(アーセナル、コリンチャンスなど)
【監督】
元ブラジル代表:ジーコ

◆ケララ・ブラスターズ
【マーキープレーヤー】
元イングランド代表GKデイヴィッド・ジェームズ(ウェストハム、ポーツマスなど)
【外国籍選手】
フランス人DFセドリック・アングバール(カーン、オセールなど)
【監督(選手兼任)】
元イングランド代表:デイヴィッド・ジェームズ

◆ムンバイ・シティ
【マーキープレーヤー】
元スウェーデン代表MFフレドリック・ユングベリ(アーセナル、清水など)
【外国籍選手】
元フランス代表FWニコラ・アネルカ(チェルシー、マン・シティなど)
元ドイツ代表DFマヌエル・フリードリヒ(レバークーゼンなど)
【監督】
元イングランド代表:ピーター・リード

◆ノースイースト・ユナイテッド
【マーキープレーヤー】
元スペイン代表DFジョアン・カプテビラ(ビジャレアル、デポルティボなど)
【外国籍選手】
元ギリシャ代表GKアレクサンドロス・ツォルヴァス(パナシナイコスなど)
【監督】
元ニュージーランド代表:リッキーハーバート

▽どのマーキープレーヤーも、サッカーファンであれば目に、そして耳にしたことがあるはずであり、インドの人たちにとっても、世界中のフットボールファンにとっても、「毎節がスペシャル」となるほどの顔ぶれだ。インドでは、今年6月に行われたブラジル・ワールドカップの視聴者数が1億人を超えたということもあり、ISLが開幕することで国内のサッカー人気に拍車が掛かることが期待されている。

▽ISLのビジョンである、「国内サッカーの人気獲得」に関しては、スポンサーの資金力を生かした『往年のスター選手の大人買い』効果もあって、人気獲得に繋がる可能性は十分にある。一方の「インドサッカーのレベル向上」に関しては、約3カ月という短いシーズンでどこまで成果を挙げられるのか気になるところだ。しかし、“大きな一歩”の轟音に引かれて振り返ってしまった私としては、「2026年のワールドカップ予選の通過」という目標に向かって、“眠れる巨象”がどのように “次の一歩”を踏み出すのかに注目したいと思う。

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