【欧州主要リーグ日本人選手前半戦総括】古橋亨悟がスコットランド席巻! 三笘や堂安、板倉も躍動

2022.01.06 20:00 Thu
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欧州主要リーグの2021-22シーズンの前半戦が終了しました。そこで本稿では4大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ)を除く主要リーグに所属する日本人選手のパフォーマンスを総括しました。※データは2022年1月2日終了時点

◆スコットランド
★セルティック・パークの新たなアイドル爆誕!
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▽古橋亨悟[セルティック]
公式戦出場試合数:26(先発:23)ゴール:16/アシスト:5
昨夏にヴィッセル神戸から加入し、海外初挑戦となった26歳FWは、早くも同リーグを代表するアタッカーとしての評価を確立するセンセーショナルな活躍を披露。レジェンド中村俊輔の存在もあり、セルティック・パークで好意的な歓迎を受けたものの、加入時はその能力を疑問視する声も多かったが、スタメンデビューを飾ったヨーロッパリーグ(EL)予選のヤブロネツ戦で初ゴールを挙げると、直後のリーグ戦のダンディー戦ではハットトリックを達成する圧巻の活躍で一気にチームの信頼を獲得。
以降は左ウイングを主戦場に、センターフォワード、右ウイングでもプレーし、傑出したアジリティ、オフ・ザ・ボールの動き出し、シュートセンスを武器に公式戦16ゴールを記録。スコティッシュリーグカップの決勝戦では2ゴールを挙げる活躍で自身を呼び寄せたポステコグルー監督に新天地での初タイトルをプレゼントした。国内リーグではコンディションの問題や、対戦相手の分析によってゴールペースは落ちているが、リーグ2位タイの8ゴールを奪取。FW前田大然、MF旗手怜央、MF井手口陽介と3人の援軍が加入する後半戦では更なる爆発が期待される。

◆ベルギー
★伊東&森岡が貫録の活躍、三笘躍動もシント=トロイデンでは明暗分かれる…
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▽伊東純也[ヘンク]
公式戦出場試合数:31(先発:30)ゴール:4/アシスト:11

▽森岡亮太[シャルルロワ]
公式戦出場試合数:22(先発:21)ゴール:4/アシスト:8
▽三笘薫[ユニオン・サン・ジロワーズ]
公式戦出場試合数:17(先発:9)ゴール:6/アシスト:3

▽三好康児[アントワープ]
公式戦出場試合数:13(先発:8)ゴール:3/アシスト:0

▽鈴木武蔵[ベールスホット]
公式戦出場試合数:17(先発:8)ゴール:0/アシスト:0

▽シュミット・ダニエル[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:20(先発:20)ゴール:0/アシスト:0

▽橋岡大樹[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:19(先発:17)ゴール:0/アシスト:1

▽松原后[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:8(先発:6)ゴール:1/アシスト:1

▽伊藤達哉[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:5(先発:0)ゴール:0/アシスト:0

▽鈴木優磨[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:11(先発:11)ゴール:2/アシスト:2

▽林大地[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:13(先発:10)ゴール:2/アシスト:1

▽原大智[シント=トロイデン]
公式戦出場試合数:17(先発:8)ゴール:3/アシスト:0

12選手と欧州で最も日本人選手がプレーするベルギーでは、ヘンクFW伊東純也、シャルルロワMF森岡亮太と同リーグで実績十分の2選手が貫録を見せつける前半戦となった。

昨夏のステップアップも予想された中、昨年10月にクラブとの契約を2024年まで延長した伊東は今季も右ウイングの主力として躍動。12ゴールを挙げた昨季に比べ、ここまで4ゴールとゴール数は少ないが、アシストはすでに「11」を記録しており、キャリアハイとなった昨季の「16」を更新する可能性は高い。また、9月のシント=トロイデン戦ではゲームキャプテンを託されるなど、同国屈指の強豪で確固たる地位を築く。
また、ベルギーで5シーズン目を戦う森岡はここまで4ゴール8アシストと持ち味の高精度の左足のキックと創造性を遺憾なく発揮。伊東同様に数試合で腕章を託されるなど、ここまで5位と上位争いに食い込むチームにおいて攻撃の牽引車となっている。

今季からの新加入組では川崎フロンターレから保有元のブライトン(イングランド)を経由してユニオン・サン・ジロワーズに加入したMF三笘薫が初の海外リーグで躍動中。[3-5-2]の左ウイングバックを主戦場とする中、ここまで6ゴール3アシストを記録。10月に行われたセラン戦ではチームが2点ビハインド且つ数的不利を背負った中、後半開始から投入されると、驚異的な突破力と決定力を発揮し、チームを4-2の逆転勝利に導く驚愕のハットトリックを達成。いずれも2桁ゴールを記録するFWウンダフ、FWバンゼイルの2トップと共にリーグ首位チームを牽引している。

7選手が在籍するシント=トロイデンでは守護神を務めるGKシュミット・ダニエル、昨夏浦和レッズから買い取りオプション付きのレンタルで加入し、先日に完全移籍を勝ち取ったDF橋岡大樹が右サイドバックの主力に定着。また、サガン鳥栖から加入したFW林大地、アラベスからのレンタルで加入中のFW原大智が出場機会を分け合いながらも主力としてプレー。

その一方で、昨季リーグ17ゴールを挙げる活躍を見せながらも去就問題の影響で微妙な立場となったFW鈴木優磨は、今冬の鹿島アントラーズ復帰が正式決定。また、ポジション争いで苦戦するFW伊藤達哉、DF松原后の2選手に関しても今冬の退団の可能性が報じられている。

◆フランス
★川島はリーグ戦出場なし、オナイウ&植田は2部で奮闘
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▽川島永嗣[ストラスブール]
公式戦出場試合数:1(先発:1)ゴール:0/アシスト:0

▽オナイウ阿道[トゥールーズ(2部)]
公式戦出場試合数:23(先発:18)ゴール:7/アシスト:1

▽植田直通[ニーム(2部)]
公式戦出場試合数:20(先発:20)ゴール:0/アシスト:0

ストラスブールで4シーズン目を戦う川島は昨シーズンのリーグ・アンで24試合に出場したものの、今季は正GKセルスが健在ということもあり、リーグ戦の出場はなし。それでも、クープ・ドゥ・フランスでは初戦のヴァランシエンヌ戦に出場し、1-0の勝利に貢献した。なお、チームではセカンドGKを争っていたカマラがレンタルに出されており、有事の際にはリーグ後半戦で再び出番が与えられるはずだ。

共にリーグ・ドゥでプレーするFWオナイウ阿道、DF植田直通はぞれぞれトゥールーズ、ニームで主力として活躍。なお、今季はリーグ戦とクープ・ドゥ・フランスで2度の日本人対決が実現しており、いずれもトゥールーズに軍配。クープ・ドゥ・フランスではオナイウが2ゴール1アシストの圧巻の活躍をみせ、4-1の大勝に導いている。ニームは現在12位と中位以下に甘んじているが、トゥールーズは僅差ながらも自動昇格圏内の2位に立っており、後半戦次第では来季リーグ・アンでプレーするオナイウを見られるかもしれない。

◆オランダ
★堂安が首位チームで奮闘
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▽堂安律[PSV]
公式戦出場試合数:15(先発:11)ゴール:5/アシスト:2

▽菅原由勢[AZ]
公式戦出場試合数:26(先発:19)ゴール:0/アシスト:3

▽中山雄太[ズウォレ]
公式戦出場試合数:16(先発:16)ゴール:1/アシスト:3

▽ファン・ウェルメスケルケン際[ズウォレ]
公式戦出場試合数:0(先発:0)ゴール:0/アシスト:0

4選手がプレーするオランダ勢では長期離脱中のDFファン・ウェルメスケルケン際を除き、3選手がいずれも主力として活躍している。

その3選手の中で最も印象的だったのは、アヤックスを僅差で抑えて前半戦を首位で終えたPSVのMF堂安律だ。昨シーズンはチームの構想に入れず、ビーレフェルトにレンタル移籍した中、初のブンデスリーガで1年間主力として活躍した堂安。だが、PSVでは引き続き構想外と見られ、昨夏の段階では移籍が濃厚だった。しかし、諸々の条件が整わず、最終的に残留の運びとなり、厳しい前半戦が予想されたものの、蓋を開けてみれば、ここまで右ウイングの主力として15試合5ゴール2アシストと見事な活躍を披露している。

オランダ以上に球際での戦いを求められるドイツでの経験によって持ち味のテクニック、創造性に強さが加わり、相手守備にとってより対応し辛い選手となっており、後半戦ではゴール、アシストという数字の部分にもよりこだわり、チームの覇権奪還に貢献したい。

AZのDF菅原由勢、ズウォレのDF中山雄太は共に力強さを増すフィジカルと高い戦術理解力を武器に、チームの主力に定着。菅原は本職の右サイドバックに加え、一列前の右サイドハーフでも起用され、クロスやチャンスメークの部分で成長を見せている。一方、中山は日本代表でも起用される左サイドバック、本職のセンターバックを主戦場に守備的MFもこなすなど、最下位に沈むチームにおいて個人としては奮闘を見せていた。

◆ポルトガル
★守田がフル稼働、東京V育ちの2人の10番も奮闘
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▽守田英正[サンタ・クララ]
公式戦出場試合数:23(先発:23)ゴール:2/アシスト:1

▽藤本寛也[ジル・ヴィセンテ]
公式戦出場試合数:18(先発:17)ゴール:2/アシスト:2

▽中島翔哉[ポルティモネンセ]
公式戦出場試合数:8(先発:6)ゴール:1/アシスト:4

▽中村航輔[ポルティモネンセ]
公式戦出場試合数:1(先発:1)ゴール:0/アシスト:0

▽川崎修平[ポルティモネンセ]
公式戦出場試合数:0(先発:0)ゴール:0/アシスト:0

▽食野亮太郎[エストリル]
公式戦出場試合数:8(先発:1)ゴール:1/アシスト:0

6選手がプレーするポルトガルでは昨季に続きMF守田英正が主力として存在感を発揮。また、東京ヴェルディ育ちで共に現チームの10番を背負う2選手が奮闘を見せた。

昨シーズンの印象的な活躍により、昨夏の移籍市場では国内やトルコへの移籍が取り沙汰された中、最終的にサンタ・クララに残留した守田は、今シーズンもチームの中盤に君臨。昨季に比べてチームのパフォーマンスは芳しくないものの、個人としては初のUEFAコンペティションとなったヨーロッパ・カンファレンスリーグの予備予選でゴールを挙げるなど、上々の前半戦となった。

ジル・ヴィセンテ2年目で今季から10番を背負うMF藤本寛也は、クラブからの期待通り、2列目を主戦場に司令塔としてチームを牽引。スポルティング・リスボン戦では不用意な一発退場があったものの、1ゴールに終わった昨季を上回る2ゴールを挙げており、後半戦では更なる躍進が期待される。

その藤本のユースの先輩にあたるFW中島翔哉はポルト、アル・アインでの厳しい1年を経て、今季古巣のポルティモネンセにレンタルで復帰。昨年10月に負傷から約10カ月ぶりの実戦復帰を果たすと、試合をこなすごとにコンディションを挙げ、ポルティモネンセの王様としての風格を取り戻した。ここ最近では笑顔と共にプレーに遊び心が戻ってきており、後半戦での完全復活が期待される。

中島の同僚であるGK中村航輔、FW川崎修平はトップチームでなかなか出番が与えられず、リザーブチームが主戦場に。また、マンチェスター・シティからエストリルにレンタル加入のFW食野亮太郎はデビュー戦でいきなりゴールを挙げる鮮烈なデビューを飾ったが、以降はポジション争いで苦戦。リーグ戦では未だスタメンでのプレー機会が一度もない。

◆スペイン2部
★2人のベテランが健在ぶりを発揮
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▽柴崎岳[レガネス]
公式戦出場試合数:18(先発:18)ゴール:2/アシスト:0

▽岡崎慎司[カルタヘナ]
公式戦出場試合数:17(先発:9)ゴール:1/アシスト:1

スペイン2部ではMF柴崎岳、FW岡崎慎司がそれぞれレガネス]、カルタヘナで奮闘中だ。

昨シーズンにデポルティボ・ラ・コルーニャからレガネスに加入した柴崎は1年目から主力に定着し、惜しくも昇格プレーオフに敗れたものの、プリメーラ復帰にあと一歩のところまで迫る奮闘を見せた。今シーズンも引き続き昇格を目標に掲げる中、チームはここまで22チーム中17位と苦戦を強いられているが、柴崎自身は中盤の主力を担う。

一方、昨季はウエスカでプリメーラを戦った岡崎は昨夏の移籍市場でカルタヘナに加入。22チーム中8位と昇格プレーオフ争いに身を置くチームで、準主力の立ち位置にいる。利他的なプレーでチームに貢献する一方、後半戦ではゴールという目に見える結果を残したい。

◆ドイツ2部
★板倉が名門シャルケの中心選手に
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▽板倉滉[シャルケ]
公式戦出場試合数:16(先発:15)ゴール:2/アシスト:0

▽田中碧[デュッセルドルフ]
公式戦出場試合数:14(先発:11)ゴール:0/アシスト:0

▽室屋成[ハノーファー]
公式戦出場試合数:17(先発:15)ゴール:0/アシスト:4

ドイツ2部ではハノーファー加入2年目のDF室屋成と、川崎フロンターレの下部組織育ちの2選手がプレー。いずれも定期的にプレー機会を得ているが、パフォーマンスではやや明暗が分かれる結果となっている。

この前半戦で最もインパクトを残したのは、フローニンヘンからレンタル先をシャルケに変えた板倉だ。深刻な財政難に加え、クラブ内でのゴタゴタによって、まさかの2部降格となったドイツ屈指の名門に加入した板倉は、加入直後から3バックの主力に定着。オランダで培ったフィジカルコンタクトに加え、持ち味の視野の広さ、キック精度を生かした安定したビルドアップによって攻守両面で活躍。ドイツ『キッカー』が選出する前半戦のセンターバック部門で最優秀選手に選出されるほどのインパクトを残した。

また、今シーズンも引き続きハノーファーの右サイドバックの主軸を担う室屋だが、チームは昇格はおろか残留圏内ギリギリの15位に低迷している。その大きな要因がリーグワーストタイの得点力にあり、すでに3アシストを記録して昨季全体の4アシストに迫る室屋としては後半戦により多くのアシストを記録し、チームの浮上に繋げたいところだ。

昨夏、川崎フロンターレからデュッセルドルフに新天地を求めた田中碧はここまで11試合に先発出場するなど定期的にプレー機会を得ている。ただ、川崎Fや日本代表とは異なり、より攻撃的な「8番」や「10番」のプレーを求められるチーム事情もあり、現地ではフィジカル面の適応を含め厳しい評価が目立つ。卓越した技術と戦術眼を併せ持つ選手だけに、前半戦で見つかった多くの課題を克服し、後半戦では現地メディアに手のひら返しをさせる活躍を期待したい。

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