喜びは長続きしなかった…/原ゆみこのマドリッド

2024.03.19 21:00 Tue
©Real Madrid
「このまま3週間もCL圏外なのは辛いわね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)が始まった日のことでした。いやあ、リーガ29節最後の試合でアトレティコは黄色のユニを着たバルサにメトロポリターノで完敗し、一足早くアラベスに勝って、追い越されていたアスレティックから4位の座を取り戻すことができず。それでも勝ち点差は1だけですし、まだ残り9試合もあるため、何とかする余地は十分、あるんですが、問題なのは昨季の1月に同じバルサに負けて以来、無敗だったホームの神通力より、黄色のユニの呪いの方が強かったこと。
PR
そう、リーガ再開の30節は大多数のファンの応援を受けられないアウェイでのビジャレアル戦で、すでに今季、アトレティコが負けているラス・パルマスやカディスと同じ黄色のユニで相手がプレーするため、もう初めから勘定に入れていなかったんですけどね。その週はアスレティックもサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリー戦となるため、差が開く心配はしなくていいですが、その次の週末、4月6日にバルベルデ監督のチームがコパ・デル・レイ決勝をマジョルカと戦う間、アトレティコは10日のCL準々決勝ドルトムント戦1stレグに備えてお休みできることに。そのメトロポリターノでの試合でも相手が黄色の第1ユニで戦うことに決めたら、かなりヤバそうですが、リーガのホームゲームで対戦するチームでもジローナのアウェイユニが黄色と赤。その他、黄色属性ユニの相手はいないとはいえ、そう、お隣さん同様、彼らだって先日、いきなり濃紺の第4ユニを発売していたように、4月末にメトロポリターノで直接対決となるアスレティック、いえいえ、残留争いが厳しくなってきたら、セルタだって、急遽、黄色のユニを作って、メトロポリターノのピッチに立つことぐらい、してくるのでは?
そんなことになったら、今季のCLに優勝して、来季の出場権を得るか、参加チームが32から36チームに増える新フォーマットの来季はスペインの出場枠が5つに増えてくれることを、ファンは真剣に祈らないといけなくなってしまいますが、まあそれはそれ。とりあえず、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、見ていくことにしましょうか。

29節では、マドリーが先陣を切って、土曜にオサスナ戦に挑んだんですが、この日もベリンガムが出場停止2試合目でプレーできず。それが全然、影響なくて、だってえ、前半4分、今季はラージョから河岸を変えていたカテナから、敵陣エリア前でボールをビニシウスが奪い、早くも先制ゴールを挙げているんですよ。ただ、その時はまだエル・サダルの熱いファンの声援を受ける相手も闘志を失わず、7分にはCKから、カルバハルがヘッドクリアしたボールをファーサイドにいたエランドがブドミルにラストパス。マスクを着けたクロアチア人FWに今季自身14得点目を決められ、同点に追いつかれてしまうことに。
すると18分、エリア内左奥からのバルベルデの折り返しを汚名返上すべく、カルバハルが右足の外側で蹴り入れて、再びマドリーはリードを奪ったんですが、前半はまたしても主審に抗議したビニシウスがイエローカードをもらい、累積警告でアスレティック戦に出場停止となったぐらいで終了。いやあ、実際、ハーフタイムでロッカールームに戻る際、当人も「Todos los partidos me saca tarjeta este árbitro, es increíble/トードス・ロス・パルティードス・メ・サカ・タルヘタ・エステ・アルビトロ、エス・インクレイブレ(この審判は全ての試合でボクにカードを出す。信じられないよ)」と文句を言っていたぐらい、この日のマルティネス・ムヌエラ主審と彼の相性が最悪なのは本当みたいですけどね。

もうすでに彼には3、4回イエローカードをもらっているからですが、昨季など、マドリーOBのセルヒオ・ラモス(現セビージャ)じゃあるまいに、トータル14枚にもなりましたからね。その半数近くが抗議によるものとなれば、いくらアンチェロッティ監督が、「Va a mejorar porque es un chico serio, humilde e inteligente/バ・ア・メホラル・ポルケ・エス・ウン・チコ・セリオ、ウミルデ・エ・インテリヘンテ(マジメで謙虚、賢い子だから改善するだろう)」と庇おうと、更生できるか怪しいものですが、それとビニシウスのサッカーのパフォーマンスは全然無関係。そう、私が次の時間帯の試合を見にコリセウムに向かうため、バル(スペインの喫茶店兼バー)を出ないといけず、見られなかった後半、またしても彼は得点していたんですよ。

いえ、その前には16分、GKルーニンのゴールキックを頭でベルベルデがセンターから流したボールを受け、ドリブルで敵エリア内まで駆け上がり、GKエレーラとの1対1のシュートでブライムが3点目を決めているんですけどね。こうまで立派にベリンガムの代理を務めているところを披露されると、当人がこの3月の代表招集でU21まで勤め上げながら、なかなかお声のかからなかったスペインA代表ではなく、祖母の出身国であるモロッコを選んだのを残念に思うファンも増えそうですが、ビニシウスのゴールが入ったのは20分のこと。今度はセンターからロドリゴ、バルベルデと繋がる速攻カウンターでエリア内左から、エレーラを破っていましたが、これで4点目となれば、すでに勝敗は決したかと。

まあ、オサスナも後半ロスタイムには意地を見せ、アレソのラストパスからイケル・ムニョスが2点目を挙げたため、スコアは2-4で終了したんですけどね。先日のセルタ戦でマドリー初ゴールを挙げ、この日も後半40分からの出場となったギュレルがロングシュートを放ち、ゴールバーに当てるという惜しいシーンもあったようですが、このまま首位固めが順調に行けば、彼の出番もだんだん増えていくのでは?それには何より、これで勝ち点10と離れた2位ジローナとの差を弟分が確定させることが大事だったんですが…。

いやあ、驚かされましたよ。ジローナを迎えたヘタフェは、うーん、半月板損傷のボルハ・マジョラルに加え、グリーンウッドも出場停止で欠いた前節のバレンシア戦でラタサとマタをスタメンで並べながら、1点も取れずに負けてしまったせいですかね。この日のボルダラス監督は2人をベンチに置き、MFのオスカル・ロドリゲスとマクシモビッチが適宜、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)を務める陣形を選択。どうやらミチェル監督もこれには混乱させられたよう。

ツィガンコフら、欠場者が多かったジローナ相手にどちらかと言えば、押し気味にゲームを進めていたヘタフェはとうとう、33分、イアリス・モリバが入れたラストパスをジェジュがエリア内から撃ち込み、この1月に加入した若い新戦力2人で先制点を取ってしまったから、ビックリしたの何のって。そのまま1-0で試合は進み、ええ、ようやくマタが入ったのは後半22分だったんですけどね。その日はドブビクが6本もシュートを放ちながら、まったく精度がなかったおかげもあって、最少得点差で4試合ぶりの白星を挙げたとなれば、ヘタフェファンだけでなく、マドリーファンも弟分を見直すことになった?

まあ、おかげで10位に上がったとはいえ、ヘタフェはEL出場権6位のレアル・ソシエダと勝ち点8差ありますからね。あまり大きな夢は見ない方が良さそうですが、14人も各国代表に出向するマドリーとは違い、こちらはトルコ代表常連のエネス・ウナルが1月にボーンマスに移籍、スペイン代表の呼び声が高かったマジョアルも今季絶望になってしまったため、今回はジェネ(トーゴ)とアルデレテ(パラグアイ)の2人だけ。今季限りでヘタフェを退団して、母国に近いチームに移籍するとアンヘル・トーレス会長がジローナ戦直前に暴露していたマクシモビッチもセルビアに呼ばれなかったようですし、3月30日に再びコリセウムにセビージャを迎える試合まで、チームがラストスパートに備えて、じっくり調整できるのは有難いかと。

そして翌日曜も弟分のいいニュースは続いて、そう、とうとうラージョが9月以来のホーム勝利を挙げたんですよ。エスタディオ・バジェカスにベティスを迎えた彼らは前半、今年になって1勝しかしていないための焦燥感か、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況アナにも「Rayo irreconocible/ラージョ・イレコノシブエレ(ラージョと認識できない)」と言われる程、フラストレーションの溜まるプレーぶりだったんですけどね。辛抱強く応援を続けるスタンドに応え、39分にはルジューヌの直接FKが GKルイ・シウバの手を弾いてゴールに入り、先制点をゲット。

1-0のリードのまま、この日も私はメトロポリターノに向かうため、ハーフタイムにスタジアムを出ないといけなかったため、うーん、後々考えれば、最後まで留まって、後半33分にはカメージョが最初はペッツェッラにブロックされながら、2度目のトライでゴールを決め、2-0で完勝。ファンと一緒に今季2度目の「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラタ(海賊人生)」を歌って、勝利を祝う選手たちの姿を見ている方が楽しかったんじゃないかと後悔したものでしたけどね。この節は18位のカディスが金曜にレアル・ソシエダに負けていたため、4まで縮まっていた降格圏との差も7に広がり、順位も15位と1つ上がったラージョだったんですが、残留確定目安の勝ち点40に到達するまでは、次節のセルタ戦を含め、あと4勝ぐらいはしておきたいところでしょうか。

そう、メトロポリターノに余裕を持って到着したかったのは、バルサにレンタル移籍中のジョアン・フェリックスがアトレティコファンにどのように迎えられるかを見たかったのもあったんですが、チャビ監督もちゃっかりしていますよね。スタジアム正面の地面にある100試合以上出場選手のプレートを汚されたり、スタメンアナウンスからpito(ビト/ブーイング)を受けるのをわかっていながら、当人の反骨心を当てにして、スタメンに並べてくるとは。おまけに相手には前日、カンセロが負傷で、試合前のアップ中にはクリステンセンが不調を訴え、先発できなくなったため、17才のフォントが左SBとしてデビュー。そして20才のフェルミンが中盤に入るという、17才で先日、スペインA代表に初招集されたCBクバルシを含め、カンテラーノ(バルサB)が3人も入ったとなれば、水曜にはCL16強対決2ndレグでセリエA独走首位のインテルを逆転敗退に追いやっているアトレティコだけに、何とかなるんじゃないかと思ったんですが…。

もう絶対、黄色のユニの呪いですよお。立ち上がりから、6分にはモラタがアラウホにエリア内でファールを受けながら、オフサイドでペナルティを取ってもらえなかったのは当人の悪癖故で、よくあることなんですが、そのすぐ後、バリオスがエリアすぐ前から撃ったシュートも僅かに外れてしまうことに。27分にもモラタのヘッドが決まらないなど、そのぐらいまではインテル戦の勢いを持続していたシメオネ監督のチームだったものの、30分を過ぎた辺りから、バルサが反撃を開始。ええ、最初はラフィーニャのヘッドから始まり、35分にはギュンドガンのスルーパスをレバンドフスキが折り返し、ゴール左前にいたジョアンが軌道を変えて、先制ゴールを奪われてもらったから、さあ大変!

いえまあ、41分には抗議でイエローカードをもらったチャビ監督が、その1分後にはレッドカードで退席させられてしまうというアクシデントもあったんですが、バルサの選手が減った訳ではないですからね。後半は頭から、ネンザが完治していない足首の痛みに耐え、インテル戦で延長戦前半まで頑張ったグリーズマンと殊勲の総合スコア同点ゴールを挙げたメンフィス・デパイを入れ、攻勢に出るはずだったアトレティコなんですが、木金と完全休養して、練習は土曜しかしていないのに選手たちはまだ、CLの死闘からの疲労が抜けていなかったよう。

そう、再開1分にイエローカードをもらい、次節出場停止になったデ・パウルがその1分後、何と自陣エリア前でラフィーニャ目掛けてパスを出すという大ポカを犯してくれたんですよ。それが原因でレバンドフスキに決められしまったとなれば、選手たちが「2点目のゴールのダメージは大きかった。Nos sacó la energía para seguir competiendo/ノス・サコ・ラ・エネルヒア・パラ・セギール・コンペティエンドー(ウチは競い続けるエネルギーを奪われてしまった)」(シメオネ監督)としても仕方ない?

実際、12分にジョレンテのvolea(ボレア/ボレーシュート)とデパイのシュートを連続してGKテア・シュテーゲンに弾かれた後、コケやコレアがピッチに入ってもほとんどチャンスは作れず。それどこから、20分にはレバンドフスキのクロスを小柄なフェルミンにゴール前で悠々、頭で撃ち込まれ、3点目まで取られたとなれば、もうどうしようもありませんって。こうなるとさすがに、いつもは最後の最後まで諦めないアトレティコファンでも終了10分程前には席を立ち、スタンドはかなりスカスカになっていたんですが、いい判断です。少なくとも早帰り組はロスタイム2分、モリーナがビクトル・ルケに自陣エリア前で強烈なタックルを見舞い、最終デフェンダーであったため、一発レッドで退場するところを見ずに済んだんですから(最終結果0-3)。

何せチャビ監督になってから、もうこれでアトレティコはバルサに4連敗ですからね。元々、苦手にしている上、向こうは20才以下の選手を6人も使ってきたのに対して、彼らは半分が30才以上。インテル戦で17.5kmも走ったコケも「El esfuerzo del otro día nos ha pasado factura/エル・エスフエルソ・デル・オトロ・ディア・ノス・ア・パサードー・ファクトゥーラ(先日の努力のツケを払った)」と告白していたように、最近は連戦でムリが効かなくなっているのも心配ですが、その辺はシーズン前にフロントが考えないといけないことですからね。

おかげでバルサがジローナに取って代わり、首位と勝ち点8差の2位になったのはともかく、とりあえず今のアトレティコは各国代表に出向する7人以外、粛々と体力回復に努めるしかないないんですが、そうそう、月曜にフランス代表に行ったグリーズマンは足首完治を目指して、即Uターンとなるよう。他の選手たちも試合は全て親善試合ですしね。アメリカ興行をするアルゼンチン代表のデ・パウルとモリーナを除いて、ヨーロッパ内で移動が済むというのは朗報ですが、とにかく誰もケガをせず、戻って来てほしいものです。

PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly