過ちから学ばないチームもある…/原ゆみこのマドリッド

2024.03.12 20:00 Tue
©Real Madrid
「やっぱり勝たなきゃダメなのよ」そんな風に私が絶望していたのは月曜日、4位アトレティコと5位アスレティックの差がたった勝ち点2しかない順位表を眺めていた時のことでした。いやあ、先週末は久々にミッドウィークフリーの1週間を過ごしながら、シメオネ監督のチームはアウェイ弱者の真骨頂を披露。9月から白星がない18位のカディスにヌエボ・ミランディージャでコロッと負けた後、コケが「Tenemos que ver qué nos está pasando fuera de casa/テネモス・ケ・ベル・ケ・ノス・エスタ・パサンドー・フエラ・デ・カサ(アウェイでボクらに何が起きているのか、見てみないといけない)」などと言っているのを聞いた日には、あまりに今更ながらで、開いた口が塞がらなかったんですけどね。
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そう、彼らは1月からアウェイゲームで1勝2分け3敗とボロボロで、直近では最下位のアルメリアとも2-2と引分け。ずっと週2試合ペースで忙しかったとはいえ、少なくとも先週中には十分、勝てない理由を分析して、軌道修正する時間はあったはずですが、同じ降格圏組でも勝ち点10多いカディスには負けてしまう程の重症だったとは、これ如何に。それとももしや、残り5試合のアウェイ戦で1勝もできずとも、ええ、アスレティックもここ4試合、2分け2敗とアウェイを苦手にしていましたからね。彼らとは神風の吹くメトロポリターノで直接対決もある上、レアル・マドリー、ヘタフェ、ラージョら、マドリッド勢らのホームでの援護射撃も当てにできると思ったか、アウェイで頑張らなくても4位にはなれるはずと、ノホホンとしていたのが致命的。日曜にはアスレティックがグラン・カナリア島でラス・パルマスに0-2と勝ったから、いよいよ虎の子のCL出場圏末席の座がピンチになってしまったんですが、ホント、愚かですよね。バルベルデ監督のチームには今季唯一のホーム黒星をコパ・デル・レイ準決勝1stレグで喰らっているのを忘れているなんて。
その後、サン・マメスの2ndレグでもアウェイ弱者ぶりをあますところなく発揮して、コパ決勝の切符を奪われてしまっただけでなく、ここ11年間、皆勤しているCL出場権も取られてしまったら、最悪中の最悪ですが、え?もしや、アトレティコの選手たちはこの水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのCL16強対決インテル戦2ndレグで頭がいっぱいだったんじゃないかって?うーん、確かにその試合では1-0で負けた1stレグをremontada(レモンターダ/逆転突破)しないといけず、それもメトロポリターノのファンの力を借りれば、可能かもしれないと、浮足立っていたところはあったかもしれませんけどね。

だからといって、土曜のカディス戦の惨状の言い訳になるはずもないんですが、ちなみにどんな試合だったかお話ししておくと。前日からチーム練習に復帰したグリーズマンをお留守番にして、シメオネ監督はモラタとメンフィス・デパイの2トップをリピート。それが2人共、まだ何もしていない前半24分には得意の敵の動きを注意深く見守るだけの守備が顕現し、ソブリーノが左から上げたクロスをファンミがヘッドでゴールに叩き込むのにパウリスタもエルモーソもまったく干渉しないんですから、一体、どうしたらいいものやら。
幸い40分に敵のパスがエリア内にいたパウリスタの腕に当たった時にはハンドをお目こぼししてもらえたんですけどね。サムエル・リノのシュートも昨今あるあるで、GKレデスマに弾かれてしまったため、1-0で折り返したアトレティコは後半頭から、一気に選手3人を交代。ええ、デ・パウル、サウール、デパイをリケルメ、コレア、モリーナにしてみたんですが、降格の危機に瀕している相手のアグレッシブなプレーに対抗するどころではなく、19分には再び、ファンミにゴールを奪われてしまうことに。そう、今度は自陣からハビ・エルナンデスが蹴ったロングボールをパウリスタがクリアできず、他のDFたちもヘルプに来ていなかったため、まんまとシュートされてしまうんですから、もうこの世も末ですって!

いやあ、今季もヒメネスが負傷でいないことが多く、サビッチ、エルモーソも怪しいプレーが多いため、1月にバレンシアから移籍したCBの株が最近急上昇。それが、単にその相対評価のおかげだっただけなのがわかったのもガッカリでしたが、アトレティコは唯一と言ってもいい絶好機にもジョレンテのヘッドがレデスマにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまいましたからね。前節のベティス戦では8試合ぶりにゴールを挙げたものの、やはりゴール日照りから完全脱却はしていなかったか、モラタも不発だったんですが、シメオネ監督も2点目を取られた時点でギブアップ。あとはフェアマーレンとカンテラーノ(アトレティコBの選手)のエル・ジェバリを入れて、リノとコケの体力温存をしていたんですが、ホントにもう。

そのまま、2-0で負けた後、シメオネ監督はいつも通り、「Siento que el equipo está dando todo/シエントー・ケ・エル・エキポ・エスタ・ダンドー・トードー(チームは全力を尽くしているように感じる)。私がホームでのパフォーマンスを発揮できる方法を見つけられていない」と全てを自己責任にしていましたけどね。アウェイで悲惨なプレーしかできない理由を問われ、「No es tiempo de hablar de LaLiga/ノー・エス・ティエンポー・デ・アブラル・デ・ラ・リーガ(今はリーガについて話す時じゃない)」(ビッツェル)と差し迫ったインテル戦を口実に、選手たちが現実直視を避けているようでは、この先も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアトレティコの試合を見るたび、私は溜息をつくことにならない?

まあ、それでも万が一、CLで逆転突破できれば、ええ、水曜にはグリーズマンと風邪でカディス戦を休んだバリオスも戻って来られるようですしね。今週末日曜のバルサ戦もホームですし、相手も火曜にはナポリとの2ndレグがあって、CL準々決勝進出が叶うか、叶わないかで、士気が変わってくる可能性も。そこで勝てれば、アトレティコもリーガ4位の座を守る戦いが少しは楽になるかと思いますが…とにかく全てがメトロポリターノマジックにおんぶに抱っこというのは不安すぎますよね。

え、先週末、リーガで辛い思いをしたのはアトレティコだけじゃないだろうって?その通りで、土曜には彼らの前の時間帯に弟分のヘタフェがメスタジャに乗り込んだんですが、前半40分にウーゴ・ドゥーロに見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で古巣恩返しゴールを決められ、その1点を返せずに敗戦。ただ、前節のマドリー戦でディアカビがヒザの脱臼という重傷を負い、CB不足に相手が陥っていたせいもあったか、後半にはマタ、ラタサ、オスカル・ロドリゲスのシュートがGKママルダシビリの八面六臂の活躍で防がれ、得点できなかったという経緯も。とりあえず、ボルハ・マジョラルが半月板損傷で今季絶望となったせいでの攻撃力減退をあまり感じさせなかったのは良かったかと。

一応、ヘタフェは12位で降格圏まで勝ち点15差と余裕がありますし、こちらもやや内弁慶の気があるため、土曜にジローナをコリセウムに迎える試合で挽回できたらいいんですけどね。といっても相手はオサスナに勝って、プチ不調を脱出。1度はバルサに越された2位に返り咲き、CL出場権ゲットに邁進中とあって、バレンシア戦で出場停止だったグリーンウッドが戻るといっても、ちょっと難しいかもしれませんが、さて。ミチェル監督のチームもシーズン前半のように無敵ではないため、互角の勝負ができたら、ファンも喜んでくれるんじゃないでしょうか。

そして日曜組だったラージョもアウェイゲームでアラベスに1-0と負けたんですが、いえ、確かに前半44分のゴロサベルのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)には成す術がなかったんですけどね。彼らの得点力不足は今更、嘆いても仕方ないとはいえ、この日はせっかく後半、RdT(ラウール・デ・トマス)のゴールが決まってもオフサイドで認められず。ロスタイムにはイシの至近距離ヘッドをGKシベラに弾かれ、ファルカオが撃ったこぼれ球もゴールバーを直撃と、勝ち点1すら持ち帰れなかったのがもう、残念どころの話じゃなくなってきちゃったんですよ。

そう、情けない兄貴分がカディスに負けていたため、同じ16位のままでもとうとう、ラージョと降格圏18位の差が勝ち点4になってしまったからで、このままだと、最終節までもつれ込む残留争いに巻き込まれる恐れがなきにしろあらず。何せ、彼らの場合は今季ホームで1勝しか挙げておらず、この日曜にエスタディオ・バジェカスにベティスを迎える試合もあまり楽観的になれませんからね。フランシスコ監督を引き継いだイニゴ・ペレス監督も4試合で2分け2敗と、まったく悪い流れを変えられていませんし、私もかなり心配になってきているんですが…ここは、選手たちが奮起してくれることを祈るしかありません。

そんな中、マドリッド勢3チームが続々と負けた後、唯一、先週末白星を挙げたのがレアル・マドリーだったんですが、まあ、日曜はサンティアゴ・ベルナベウでのセルタ戦でしたからね。ここ4試合で1勝3引き分けとちょっと停滞気味で、直近のCLライプツィヒ戦2ndレグでは準々決勝進出を決めたものの、要求の高いマドリーファンからpito(ピト/ブーイング)を受けたなんてこともあったものの、逆にそれが選手たちに喝を入れてくれたんでしょうか。ベリンガムの2試合出場停止に加え、ローテーションでスタメンにブライム、モドリッチ、ルーカス・バスケスを入れたアンチェロッティ監督のチームはこの日は序盤から、積極的に出ていくことに。

そのおかげもあって、前半21分にはモドリッチの蹴ったCKをリュディガーがヘッド。これはGKグァイタに弾かれてしまったものの、ビニシウスが2度撃ちで先制ゴールを挙げたとなれば、ええ、相手は降格圏と勝ち点2差しかない17位のチームですからね。スタンドもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を期待したんですが、その後はなかなか追加点が入りません。1-0のまま、後半が始まったのにジレたか、ビニシウスなど、9分にはミンゲサにユニフォームを引っ張られてドリブルを止められたのがよっぽど悔しかったんですかね。ライプツィヒ戦のオルバンに続いて、相手を突き倒し、この日もイエローカードをもらっていたんですが、まったく。

いやまあ、この試合の前に「あれ程、付け狙われる選手は見たことがない。Creo que todo el mundo tiene que cambiar la actitud contra Vini/クレオ・ケ・トードー・エル・ムンド・ティエネ・ケ・カンビアール・ラ・アクティトゥッド・コントラ・ビニ(皆がビニシウスに対する態度を改めないといけないと思う)」とアンチェロッティ監督に庇われたせいで、当人も自分のやることは何でも正当化できると自信をつけちゃったのかもしれませんけどね。何かもう、最近の彼はいきなりキレることが多すぎて、そのうち大事を起こすんじゃないかと不安になりますが、大丈夫。

時間はかかったものの、ロドリゴがホセルに代わった後の34分、またしてもモドリッチのCKから、リュディガーがヘッドして、いえ、これもゴールバーに弾かれてしまったんですけどね。今度はグァイタの背中に当たり、オウンゴールでマドリーは2点目をゲット。更に43分にはビニシウスのクロスをグァイタが逃し、後ろにいたカルロス・ロドリゲスが自軍ゴールに蹴り込んで、3点目となったとなれば、ゴール祝いを楽しみにベルナベウにやって来るファンも満足しますって。

おまけにロスタイム4分には、ようやく3点差となって出番がもらえたセバージョスとギュレルが発奮。クロースが素早く出したFKを前者がエリア内に送り、後者がグァイタをかわして撃ったボールがゴールに入り、今季加入した18才のトルコ人MFのマドリー初得点となるんですから、嬉しいじゃないですか。ええ、シーズン前半の彼は負傷に祟られ、治った後も選手層の厚さになかなか、試合で自身のプレーを披露する機会がありませんでしたからね。まだ若いですし、今季は修行の年と割り切って、精進に努めていた甲斐があったかと。

結局、ほとんどチャンスもなかったセルタはそのまま4-0で負け、ベニテス監督もより厳しくなった残留争いを続けることになったんですが、マドリーの方は2位ジローナ、3位バルサとの差をそれぞれ、勝ち点7、8と保って、再びミッドウィークフリーの1週間を楽しめることに。バルサやアトレティコがCL準々決勝に勝ち上がるかどうか、高みで見物しながら、土曜のオサスナ戦までじっくり調整していればいいんですが、来週はドイツ代表復帰を決めたクロースを含め、大量の選手が世界各地に出向するインターナショナルウィークに入りますからね。スペインとモロッコの間で迷っていたブライムも後者を選び、即招集となるようですし、アンチェロッティ監督の当面の懸念は代表戦で負傷者が出ないかといったところになりましょうか。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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