とうとうアトレティコの番がやって来た…/原ゆみこのマドリッド
2024.02.20 22:00 Tue
「また忙しくなるのね」そんな風に私が気の毒がっていたのは月曜日、午前中にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッションを終えたアトレティコが午後にはもう、ミラノに移動していたのを知った時のことでした。いやあ、CL16強対決1stレグでは後発組となったため、お隣さんがライプツィヒ遠征するのを横目に、先週は久々のミッドウィークフリーを楽しめた彼らだったんですけどね。今週は逆にレアル・マドリーがヒマとなり、シメオネ監督は中2日で選手たちを準備させて、火曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、昨季のCLフィナリスト、今季のセリアA首位で、ここ8連勝と絶好調のインテルに立ち向かわないといけないことに。
まあ、CLの話はともかく、リーガ25節のマドリッド勢の様子も伝えていくことにすると、先陣を切ったのは金曜試合に当たった弟分のヘタフェだったんですが、ラ・セラミカでのビジャレアル戦は1-1の引分けで終了。前半24分にはグリーンウッドの蹴ったFKをモスケラがしっかりクリアできず、エリア内に落ちたボールをマクシモビッシが決めて先制したものの、後半11分にはアルベルト・モレノに同点ゴールを許してしまったんですが、彼らは残留確定ラインの勝ち点40まで、あと2勝程ですからね。
このままホームのコリセウムで必勝を目指して、アウェイは引分けベースで進んでもまったく問題はないかと思いますが、ええ、今週末土曜のバルサ戦もモンジュイックでの開催と、格上とのアウェイゲームですし、勝ち点1を稼げれば、それでもう十分?ただ、今週はチャビ監督のチームもCL16強対決1stレグが水曜にあって、ナポリ遠征をした後、中2日での試合であることを考えると、中7日のヘタフェにも勝機があるんじゃないかと思いますが、さて。まだ今季の残り試合は13もありますし、勝ち点6差のEL出場圏を目指すぐらいの気持ちを持った方がきっと、ファンも喜ぶんじゃないでしょうか。
でも全然、大丈夫だったんです。大体がして、何でそんな最初から得点チャンスがあったのかといえば、「Apostamos por la presión de Llorente, Koke, Saúl, Correa... /アポルタモス・ポル・ラ・プレシオン・デ・ジョレンテ、コケ、サウール、コレア…(ジョレン、コケ、サウール、コレアのプレスに賭けた)」とシメオネ監督も後で言っていたように、アトレティコは必ずプレーをGKからパスを繋いで始める相手にガンガン詰めて、ボールを敵エリア付近で奪取していたからで、15分にはとうとう、その作戦が実ることに。サムエル・リノがエリア外左から入れたパスをコレアがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋ぎ、いえ、その時はカルドナのクリアが味方のペローネに当たってしまうという、ツキもあったんですけどね。
地面に落ちたボールに脱兎のごとく駆けつけたのがジョレンテで、いやもう、それこそ先週は「Intentamos, más que entrenar, descansar/インテンタモス、マス・ケ・エントレナール,デスカンサール(練習するより休むようにした)」(シメオネ監督)効用でしょうか。その前の3週間で8試合という地獄のハードスケジュールで枯渇しかかっていた選手たちを充電できたのが良かったか、そのシュートで先制点が入ったから、スタンドを埋めた6万人以上の観客もどんなに沸いたことか。おまけにその5分後にはコレアが敵陣エリアすぐ外でココからボールを奪い、ジョレンテにキラーパス。こちらもゴールとなり、あっという間に2点リードしているとは、もしや2021年にリーガ優勝したシーズンの彼がついに戻って来た?
その後、前半の残りは、得意のリードしたら一歩後退癖が発現して、おとなしかったアトレティコなんですが、ハーフタイムにシメオネ監督に喝を入れられたんでしょうか。後半開始早々、今度はコケがヘッドで入れたボールをコレアがvolea(ボレア/ボレーシュート)で3点目をゲット。更に17分にも、いえ、リノがマルビンにエリア内で倒されたのはその5分前だったんですけどね。VAR(ビデオ審判)注進が遅かったため、主審がPKを与えるのに時間がかかったものの、こちらもコレアがしっかり決めて、とうとうスコアは4点差に。いやあ、実は彼、先週はずっと咳が止まらず、「Tomé jarabe pero no se me quitaba, un día no pude ir a entrenar/トメ・ハラベ・ペロ・ノー・セ・メ・キタバ、ウン・ディア・ノー・プデ・イル・ア・エントレナール(咳止めシロップを飲んだんだけど、治らなくて、練習に行けない日もあった)」のだとか。
それでもコレアのやる気を買って、先発させたのは指揮官の大英断だったと言えますが、こういう当たりの日がもう少し多ければねえ。1月にサウジアラビア行きの噂が出ることもなかったかと思いますが、試合の方は4点目が入った直後、シメオネ監督はインテル戦前選手温存策第2弾を実行。そう、ジョレンテ、コケ、リノ、ヒメネスの4人を一斉に下げ、メンフィス・デパイ、デ・パウル、リケルメ、ビッツェルが入ったんですが、30分前にはバリオスもフェルメーレンと代わり、アントワープからこの冬、移籍してきた18才は2度目のメトロポリターノ体験ができることに。
その交代組の中でもリケルメとデパイが張り切って、42分には前者のスルーパスから、後者が5点目のゴールを決めていたのはまあ、インテル戦に向けての景気づけとはなっても、あまりスコア的には意味はなかったんですが、そのままアトレティコのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は5-0で完成。根がセコい私など、そのうち2点をコパ・デル・レイ準決勝アスレティック戦1stレグに、もう2点を前節のセビージャ戦に回していれば、計36本もシュート撃ちながら、2連敗することもなかったのにと悔しく思ってしまうんですが、覆水盆に返らずですからね。
今は「Hay mucha diferencia entre un equipo y otro/アイ・ムーチャ・ディフェレンシア・エントレ・ウン・エキポ・イ・オトロ(両チームの間には大きな差がある)」というピミエンタ監督の言葉を自信にして、強敵インテルに挑んでもらいたいところですが、そうそう、この試合、まったく出番のなかったのはグリーズマン。実際、彼はコパ・デル・レイ準々決勝のマドリーダービー延長戦で決めた、クラブ通算175本目のゴールを最後に7試合、得点がありませんでしたからね。まさに「Necesitaba un espacio de stop para recuperar energía/ネセシタバ・ウン・エスパシオ・デ・ストップ・パラ・レクペラール・エネルヒア(エネルギーを回復するため、休止が必要だった)」(シメオネ監督)状態だったため、彼の力を借りずともラス・パルマに快勝できたのは何よりだったんですが、月曜の練習ではグリーズマンとジョレンテの2トップでインテル戦のリハーサルをしていたというのは本当なんでしょうか。
そして翌日曜、こちらも午後2時という嬉しい時間に始まったのがラージョとマドリーの兄弟分ダービーで、いやあ、先週はフランシスコ監督が解任され、昨季、イラオラ監督の下で第2監督をしていたイニゴ・ペレス氏の就任が決まったりと、弟分の方も慌ただしかったんですけどね。エスタディオ・バジェカスにマドリーがやって来る度、リーガで唯一、チケットのオンライン販売を行っていないクラブという事情のせいで、スタジアムの売り場に何時間も行列しないといけない、年間指定席保有者以外のファンも大勢駆けつけ、ここ15試合で1勝しかしておらず、ホームでは今季1勝しかしていないという、スランプを一切感じさせない明るいムードでキックオフしたところ…。
何と開始4分にはマドリーのカウンターにはまり、自陣からブライムが出したパスを追ったバルベルデがエリア内のホセルにアシスト。そのシュートが決まり、VARのオフサイドチェックも無事通過したため、早々にリードを奪われてしまったから、さあ大変!更には19分にもルーカス・バスケスが出したラストパスをホセルがヘッドでゴールに入れ、もう点差が広がったかと、スタンドは凍りついたんですが、こちらはラッキーでした。ルーカス・バスケスがエリア内右奥をドリブルしていた時にボールがラインの外に出ていたのが見つかったせいで、そのまま0-1でゲームは進行することに。
すると24分、エスピーノのクロスをトレホがシュートして外れた後、VAR注進でカマビンガの手にボールが当たっていたことが発覚。モニターチェックの後、ラージョにPKが与えられたんですが、キッカーに立ったのは新監督になって、スタメンに復活したRdT(ラウール・デ・トマス)だったんですよ。実は彼、今季はまだ1本もゴールを決めておらず、多分、それでイシもボールを譲ってあげたんでしょうね。あまりPKの成功率は高くないラージョと記憶していましたが、この時は見事にGKルーニンを破り、同点にしてくれたとなれば、ファンも歓喜しない訳ありませんって。
幸いバルベルデのシュートもポストに当たり、同点のまま、試合は後半に入ったんですが、うーん、もしやマドリーはベリンガムが足首の捻挫で不在なのがマズかった?ええ、先週のCLライプツィヒ戦ではブライムを代理に立てたのが成功したとはいえ、それでも0-1勝利と言う淋しいスコアでしたからね。25分にはアンチェロッティ監督もカマビンガ、ブライムをクロース、ロドリゴに代えてみたものの、CLの疲労に加え、慣れない午後2時という、お日様の眩しい時間だったのも影響したか、結局、最後まで勝ち越し点は奪えず。
それどころか、30分にルーカス・バスケスと交代で入ったカルバハルなど、後半ロスタイムにキケ・ペレスの顔を払い、2枚目のイエローカードをもらって退場する始末で、ええ、その前にはカマビンガも累積警告となる5枚目をもらっていましたからね。要は2人共、週末日曜のセビージャ戦に出られなくなってしまったんですが、まあ、だからって、月曜には2位のジローナもアスレティックに3-2で負けていますし、マドリーの首位の座が揺るぐこともなし。おかげで世間は1-1の引分けという躓きより、もっぱら先週、PSGに契約延長をしないと告げたエムバペがいつマドリー入団を決めるのかといった話題に懸かり切りなんですが…どっちにしろ、来季の話となれば、散々、来る来る詐欺を聞かされてきただけに、私があまり興味を持てないのも仕方なかったかと。
一方、残念ながら、終盤はファルカオとカメージョを投入して攻めに出たものの、今季ホーム2勝目を掴めなかったラージョは、それでも相手は天下のマドリーですからね。しかもシーズン前半のサンティアゴ・ベルナベウでのスコアレスドローに続き、兄貴分から勝ち点2を奪ったとなれば、十分、賞賛に値するんですが、彼らの立て直しの闘いが始まるのは次の月曜試合、ジローナ戦から。ええ、この引分けで降格圏との差が勝ち点1広がって、8となったのはいいことですが、「Se vive mirando toda la jornada deseando que los de abajo no ganen/セ・ビベ・ミランドー・トーダ・ラ・ホルナーダ・デセアンドー・ケ・ロス・デ・アバホ・ノー・ガネン(下のチームが勝たないようにと願いながら、全ての試合をずっと見ている)」とバリウも言っていましたからね。
イニゴ・ペレス監督の就任でチームの運気が変わって、これからは自力で差を広げ、なるたけ早いうちに残留確定ラインに到達してくれることを祈るばかりですが、それにはこのPKの得点をキッカケにRdTが目覚めてくれることが必須。丁度、先週末はレガネスもアルコルコンとのダービーに勝利して、2部首位の座を固めたところですし、来季は再び、マドリッド勢5チーム体制に戻ってくれたら、私も嬉しいんですが、そのためにもラージョが脱落する訳にはいきませって。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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何せ、今季はアウェイ弱者が板について、リーガでは4勝2分け6敗と、それが首位に大差をつけられて、4位に甘んじる原因になっているアトレティコですからね。CLの方でも昨年の11月のグループリーグ5節でフェイエノールトに勝つまで、6試合白星なしが続いていましたし、何よりインテルのホーム、サン・シーロは2016年CL決勝でジダン監督率いるマドリーにPK戦で負けた悪夢のスタジアム。当時を知っているシメオネ監督以下、グリーズマン、コケ、サウール、サビッチ、オブラク、コレア、ヒメネスらには全然、いい思い出がないのも不安かと。ただ、イタリアに旅立ったチームには朗報もあって、1週間前のセビージャ戦でヒザを捻り、全治2~3週間と言われていたモラタが脅威の回復力を披露し、日曜から練習に加わると、遠征メンバーに参加。先週末のリーガ戦の出来を見る限り、特にFW陣やゴール力に不足はない感じはしますが、その前の2試合は無得点で2連敗していましたからね。モラタがいるに越したことはないんですが、そのセビージャ戦で先発デビューした後、腹筋を痛め、ラス・パルマス戦を休んだパウリスタも速攻で治ったようで、このインテル戦に出られないのはレマル、アズピリクエタの2人だけ。どこぞのチームと比べると、驚く程、ケガ人の少ないアトレティコですが、果たして3月13日のメトロポリターノでの2ndレグに希望を持てる結果を持ち帰ってくることはできるのでしょうか。このままホームのコリセウムで必勝を目指して、アウェイは引分けベースで進んでもまったく問題はないかと思いますが、ええ、今週末土曜のバルサ戦もモンジュイックでの開催と、格上とのアウェイゲームですし、勝ち点1を稼げれば、それでもう十分?ただ、今週はチャビ監督のチームもCL16強対決1stレグが水曜にあって、ナポリ遠征をした後、中2日での試合であることを考えると、中7日のヘタフェにも勝機があるんじゃないかと思いますが、さて。まだ今季の残り試合は13もありますし、勝ち点6差のEL出場圏を目指すぐらいの気持ちを持った方がきっと、ファンも喜ぶんじゃないでしょうか。
そして土曜の午後2時には今年になって、初めて午後9時以降以外の時間帯にメトロポリターノで試合となったアトレティコがラル・パルマスを迎えたんですが、最近は気候も春めいてきたこともあって、軽装で観戦に行けるのがどんなに気が楽か、私も久々に思い出すことに。とはいえ、シメオネ監督がインテル戦を重視して、先週は中日が沢山あったにも関わらず、レギュラーの選手を半分程温存。モラタが負傷でいなかったのもあり、スタメン2トップがコレアとジョレンテだったのにはちょっと違和感があったんですが、ええ、コレアなど、序盤から3度も絶好機にシュートをミスっていましたからね。
でも全然、大丈夫だったんです。大体がして、何でそんな最初から得点チャンスがあったのかといえば、「Apostamos por la presión de Llorente, Koke, Saúl, Correa... /アポルタモス・ポル・ラ・プレシオン・デ・ジョレンテ、コケ、サウール、コレア…(ジョレン、コケ、サウール、コレアのプレスに賭けた)」とシメオネ監督も後で言っていたように、アトレティコは必ずプレーをGKからパスを繋いで始める相手にガンガン詰めて、ボールを敵エリア付近で奪取していたからで、15分にはとうとう、その作戦が実ることに。サムエル・リノがエリア外左から入れたパスをコレアがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋ぎ、いえ、その時はカルドナのクリアが味方のペローネに当たってしまうという、ツキもあったんですけどね。
地面に落ちたボールに脱兎のごとく駆けつけたのがジョレンテで、いやもう、それこそ先週は「Intentamos, más que entrenar, descansar/インテンタモス、マス・ケ・エントレナール,デスカンサール(練習するより休むようにした)」(シメオネ監督)効用でしょうか。その前の3週間で8試合という地獄のハードスケジュールで枯渇しかかっていた選手たちを充電できたのが良かったか、そのシュートで先制点が入ったから、スタンドを埋めた6万人以上の観客もどんなに沸いたことか。おまけにその5分後にはコレアが敵陣エリアすぐ外でココからボールを奪い、ジョレンテにキラーパス。こちらもゴールとなり、あっという間に2点リードしているとは、もしや2021年にリーガ優勝したシーズンの彼がついに戻って来た?
その後、前半の残りは、得意のリードしたら一歩後退癖が発現して、おとなしかったアトレティコなんですが、ハーフタイムにシメオネ監督に喝を入れられたんでしょうか。後半開始早々、今度はコケがヘッドで入れたボールをコレアがvolea(ボレア/ボレーシュート)で3点目をゲット。更に17分にも、いえ、リノがマルビンにエリア内で倒されたのはその5分前だったんですけどね。VAR(ビデオ審判)注進が遅かったため、主審がPKを与えるのに時間がかかったものの、こちらもコレアがしっかり決めて、とうとうスコアは4点差に。いやあ、実は彼、先週はずっと咳が止まらず、「Tomé jarabe pero no se me quitaba, un día no pude ir a entrenar/トメ・ハラベ・ペロ・ノー・セ・メ・キタバ、ウン・ディア・ノー・プデ・イル・ア・エントレナール(咳止めシロップを飲んだんだけど、治らなくて、練習に行けない日もあった)」のだとか。
それでもコレアのやる気を買って、先発させたのは指揮官の大英断だったと言えますが、こういう当たりの日がもう少し多ければねえ。1月にサウジアラビア行きの噂が出ることもなかったかと思いますが、試合の方は4点目が入った直後、シメオネ監督はインテル戦前選手温存策第2弾を実行。そう、ジョレンテ、コケ、リノ、ヒメネスの4人を一斉に下げ、メンフィス・デパイ、デ・パウル、リケルメ、ビッツェルが入ったんですが、30分前にはバリオスもフェルメーレンと代わり、アントワープからこの冬、移籍してきた18才は2度目のメトロポリターノ体験ができることに。
その交代組の中でもリケルメとデパイが張り切って、42分には前者のスルーパスから、後者が5点目のゴールを決めていたのはまあ、インテル戦に向けての景気づけとはなっても、あまりスコア的には意味はなかったんですが、そのままアトレティコのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は5-0で完成。根がセコい私など、そのうち2点をコパ・デル・レイ準決勝アスレティック戦1stレグに、もう2点を前節のセビージャ戦に回していれば、計36本もシュート撃ちながら、2連敗することもなかったのにと悔しく思ってしまうんですが、覆水盆に返らずですからね。
今は「Hay mucha diferencia entre un equipo y otro/アイ・ムーチャ・ディフェレンシア・エントレ・ウン・エキポ・イ・オトロ(両チームの間には大きな差がある)」というピミエンタ監督の言葉を自信にして、強敵インテルに挑んでもらいたいところですが、そうそう、この試合、まったく出番のなかったのはグリーズマン。実際、彼はコパ・デル・レイ準々決勝のマドリーダービー延長戦で決めた、クラブ通算175本目のゴールを最後に7試合、得点がありませんでしたからね。まさに「Necesitaba un espacio de stop para recuperar energía/ネセシタバ・ウン・エスパシオ・デ・ストップ・パラ・レクペラール・エネルヒア(エネルギーを回復するため、休止が必要だった)」(シメオネ監督)状態だったため、彼の力を借りずともラス・パルマに快勝できたのは何よりだったんですが、月曜の練習ではグリーズマンとジョレンテの2トップでインテル戦のリハーサルをしていたというのは本当なんでしょうか。
そして翌日曜、こちらも午後2時という嬉しい時間に始まったのがラージョとマドリーの兄弟分ダービーで、いやあ、先週はフランシスコ監督が解任され、昨季、イラオラ監督の下で第2監督をしていたイニゴ・ペレス氏の就任が決まったりと、弟分の方も慌ただしかったんですけどね。エスタディオ・バジェカスにマドリーがやって来る度、リーガで唯一、チケットのオンライン販売を行っていないクラブという事情のせいで、スタジアムの売り場に何時間も行列しないといけない、年間指定席保有者以外のファンも大勢駆けつけ、ここ15試合で1勝しかしておらず、ホームでは今季1勝しかしていないという、スランプを一切感じさせない明るいムードでキックオフしたところ…。
何と開始4分にはマドリーのカウンターにはまり、自陣からブライムが出したパスを追ったバルベルデがエリア内のホセルにアシスト。そのシュートが決まり、VARのオフサイドチェックも無事通過したため、早々にリードを奪われてしまったから、さあ大変!更には19分にもルーカス・バスケスが出したラストパスをホセルがヘッドでゴールに入れ、もう点差が広がったかと、スタンドは凍りついたんですが、こちらはラッキーでした。ルーカス・バスケスがエリア内右奥をドリブルしていた時にボールがラインの外に出ていたのが見つかったせいで、そのまま0-1でゲームは進行することに。
すると24分、エスピーノのクロスをトレホがシュートして外れた後、VAR注進でカマビンガの手にボールが当たっていたことが発覚。モニターチェックの後、ラージョにPKが与えられたんですが、キッカーに立ったのは新監督になって、スタメンに復活したRdT(ラウール・デ・トマス)だったんですよ。実は彼、今季はまだ1本もゴールを決めておらず、多分、それでイシもボールを譲ってあげたんでしょうね。あまりPKの成功率は高くないラージョと記憶していましたが、この時は見事にGKルーニンを破り、同点にしてくれたとなれば、ファンも歓喜しない訳ありませんって。
幸いバルベルデのシュートもポストに当たり、同点のまま、試合は後半に入ったんですが、うーん、もしやマドリーはベリンガムが足首の捻挫で不在なのがマズかった?ええ、先週のCLライプツィヒ戦ではブライムを代理に立てたのが成功したとはいえ、それでも0-1勝利と言う淋しいスコアでしたからね。25分にはアンチェロッティ監督もカマビンガ、ブライムをクロース、ロドリゴに代えてみたものの、CLの疲労に加え、慣れない午後2時という、お日様の眩しい時間だったのも影響したか、結局、最後まで勝ち越し点は奪えず。
それどころか、30分にルーカス・バスケスと交代で入ったカルバハルなど、後半ロスタイムにキケ・ペレスの顔を払い、2枚目のイエローカードをもらって退場する始末で、ええ、その前にはカマビンガも累積警告となる5枚目をもらっていましたからね。要は2人共、週末日曜のセビージャ戦に出られなくなってしまったんですが、まあ、だからって、月曜には2位のジローナもアスレティックに3-2で負けていますし、マドリーの首位の座が揺るぐこともなし。おかげで世間は1-1の引分けという躓きより、もっぱら先週、PSGに契約延長をしないと告げたエムバペがいつマドリー入団を決めるのかといった話題に懸かり切りなんですが…どっちにしろ、来季の話となれば、散々、来る来る詐欺を聞かされてきただけに、私があまり興味を持てないのも仕方なかったかと。
一方、残念ながら、終盤はファルカオとカメージョを投入して攻めに出たものの、今季ホーム2勝目を掴めなかったラージョは、それでも相手は天下のマドリーですからね。しかもシーズン前半のサンティアゴ・ベルナベウでのスコアレスドローに続き、兄貴分から勝ち点2を奪ったとなれば、十分、賞賛に値するんですが、彼らの立て直しの闘いが始まるのは次の月曜試合、ジローナ戦から。ええ、この引分けで降格圏との差が勝ち点1広がって、8となったのはいいことですが、「Se vive mirando toda la jornada deseando que los de abajo no ganen/セ・ビベ・ミランドー・トーダ・ラ・ホルナーダ・デセアンドー・ケ・ロス・デ・アバホ・ノー・ガネン(下のチームが勝たないようにと願いながら、全ての試合をずっと見ている)」とバリウも言っていましたからね。
イニゴ・ペレス監督の就任でチームの運気が変わって、これからは自力で差を広げ、なるたけ早いうちに残留確定ラインに到達してくれることを祈るばかりですが、それにはこのPKの得点をキッカケにRdTが目覚めてくれることが必須。丁度、先週末はレガネスもアルコルコンとのダービーに勝利して、2部首位の座を固めたところですし、来季は再び、マドリッド勢5チーム体制に戻ってくれたら、私も嬉しいんですが、そのためにもラージョが脱落する訳にはいきませって。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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