無限に続く体力は存在しなかった…/原ゆみこのマドリッド
2024.01.21 00:30 Sun
「やった、これなら勝てる!」そんな風に私が心の中でガッツポーズをしていたのは金曜日、近所のスーパーに買い物に行く間、スマホで聞いていたコパ・デル・レイ準々決勝組み合わせ抽選にアトレティコはなかなか現れず。セビージャと共に最後まで残っていたんですが、かつてシメオネ監督の下で第2監督を務めていたモノ・ブルゴス氏がアトレティコを先に引いてくれたため、来週ミッドウィークの試合もメトロポリターノ開催になったのを知った時のことでした。
そう、私なんか、どうせまた、延長戦で点を取られて、遅い時間にグッタリして帰ることになるのだからと、早出はしなかったんですけどね。午後7時半頃、スタジアム入りしたチームバスは、これはCL決勝トーナメントかと思われるぐらい大量のbengala(ベンガラ/発煙筒)が沿道に焚かれる中、決して希望を捨てない大勢のファンたちに迎えられることに。シメオネ監督も「Son octavos de la Copa. Pero es imposible no poner corazón/ソン・オクタボス・デ・ラ・コパ。ペロ・エス・インポシブレ・ノー・ポネール・コラソン(コパの16強対決だが、気合を入れないのは不可能だ)」と感動していたんですが、彼らのサポートがあれば、来週木曜のセビージャ戦もまったく心配ない?
え、準々決勝の話をする前に16強対決がどうだったかも知りたいって?そうですよね、つい嬉しくて先走ってしまったんですが、先行してプレーしたマドリッド勢の弟分たちは、やはり本音はリーガ優先だったんでしょうか。火曜に、それこそセビージャをコリセウムに迎えたのがヘタフェだったんですが、試合前のアップ中にGKドミトロビッチが負傷。20才のカンテラーノ(Bチームの選手)、アルベルト・フローレスが急遽、デビューすることになったキケ・サンチェス・フローレス監督のチームに対して、マジョラル、ラタサ、マタ、グリーンウッドとFW4人を並べ、強気に出たボルダラス監督だったものの、開始8分には滅多にないGKダビド・ソリアの飛び出しミスから、セルヒオ・ラモスのヘッドが決まり、早々に先制されてしまうことに。
その後はヒザの靭帯断裂から復帰して、このところ徐々にプレー時間を増やしていっているエネス・ウナルやオスカル・ロドリゲスらが入り、反撃を試みたヘタフェだったんですが、シュート16本中、枠内が3本だけと、ああまで精度が悪すぎては…。ディエゴ・アロンソ監督が率いていた12月にはサンチェス・ピスファンで0-3と完全勝利を挙げていた相手に、先週末はスペイン・スーパーカップによるマドリーとの兄弟分ダービー延期で中日もたっぷりあったにも関わらず、あっさり1-3で負け、彼らの今季のコパは終わってしまいましたっけ。
いえまあ、昨季はヘタフェをキケ監督から残り7試合で引き継ぎ、1部残留を達成したボルダラス監督も「Somos profesionales y hay que olvidarse de la Copa/ソモス・プロフェシオナレス・イ・アイ・ケ・オルビダールセ・デ・ラ・コパ(私たちはプロだから、コパのことは忘れないといけない)」と言っていたように、これでミッドウィーク開催の大会に伴う過密日程をセビージャに押し付け、この日曜のオサスナ戦以降、リーガに専念できるようになったのはいいことなのかもしれませんけどね。丁度、相手も水曜にレアル・ソシエダに負け、コパから解放されたばかりですし、エル・サダルでの一戦はどちらが早く態勢を立て直せるかといった感じでしょうが、前節ラージョ戦で退場したラタサとダミアンが出場停止というのは、ヘタフェにとって、痛いかもしれませんね。
そして翌水曜にジローナ戦をプレーしたのがラージョだったんですが、いやあ、もうこちらはフランシスコ監督も選手たちも、間が64時間しかない土曜午後2時からのラス・パルマス戦の方に頭が行ってしまっていたのは明白。だってえ、前半4分にエヌテカが絶好機にシュートを撃てなかったのは運が悪かったとはいえ、16分からの10分間で3点も取られてしまったんですよ!まずはツィガンコフの入れたクロスをポルトゥがゴール前で倒れながらもストゥアーニに繋ぎ、そのシュートで先制されると、19分にはムミンがポルトゥをエリア内で倒してPKを献上。それもストゥアーニが決めてリードを広げたミチェル監督のチームは26分、またしてもポルトゥのラストパスから、今度はブリントがゴールを決めているんですから、これぞまさにリーガ単独首位チームの実力?
いえ、ラージョも36分にはエヌテカが1点を返し、汚名返上していたんですけどね。後半には負傷が治ったアルバロ・ガルシアとトレホ、更にはファルカオも入れて得点を目指したものの、こちらも3-1で試合は終了。ヘタフェ同様、コパの重荷を取り去って、この週末はまだ今季、1勝しかしていないエスタディオ・バジェカスでファンに白星をプレゼントすることに専念できますが、ただ、これでジローナは来週水曜、32強対決でラス・パルマスを破っていたテネリフェ(2部)を16強対決で倒したマジョルカのホームを訪れるクラブ史上2度目のコパ準々決勝に挑戦。しばらくはリーガに集中して、首位奪回を目指す兄貴分のマドリーには有難い援護射撃になるかもしれませんね。
続く木曜、バルサがRFEF1部(実質3部)のウニオニスタに1-3で勝った後、メトロポリターノでマドリーダービー祭り第2弾が始まったんですが、いやあ何か、スペイン・スーパーカップ準決勝とは随分、趣きが変化。というのもその日のアトレティコは妙に動きが緩慢で、マドリーの速攻カウンターが始まった時だけ、全力で走るといった風だったからで、でも39分には不思議にも先制していたんですけどね。この時はデ・パウルのクロスをリュディガーが頭でカットしたボールがサムエル・リノに渡り、ゴール前左からの彼のシュートが、ケパから代わっていたGKルーニンの股間を抜いてゴールになったんですが、もちろんすぐにマドリーは追いつきます。
というのもハーフタイムまであと一息だった45分、前半中盤にはロドリゴとビニシウスの連続シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)2連発で防ぎ、最もミスから遠いところにいるように見えたGKオブラクも無敵ではなかったから。モドリッチの蹴ったFKをヒメネス、リュディガーに邪魔されて上手くパンチングできず、当人の腕に当たったボールがオウンゴールになってしまうとはあんまりですが、もうこの程度はダービーあるあるだったため、別に驚くことではなし。でもその時、ビニシウスがまるで自分が決めたみたいにゴールを祝っていたのは、あまりいい趣味とは言えなかったかと。
そして同点で始まった後半もアトレティコは早めにサウールをモリーナに代えたぐらいで、あまり活発とは言えなかったんですが、13分には再びリードすることに。今度はルーニンがキャッチできずに弾いたボールがリュディガーに当たり、こぼれたボールをモラタが押し込んだんですが、何にしたって、時間が早すぎますって。案の定、20分過ぎから、ブライム、クロース、チュアメニ、そしてホセルとアンチェロッティ監督がチームをリフレッシュしてきたため、同点へのカウントダウンがどんどん進んでいるようにしか見えなかったんですが、たらればとはいえ、37分、モラタがエリア内からフリーで撃ったシュートで3点目が取れていればねえ。
まさにそれがルーニンに弾かれてしまった直後のことだったんですよ。エリア内に切り込んだベリンガムにアトレティコの選手が全集中し、そのクロスから、反対サイドにいたホセルに悠々ヘッドを決められてしまったのは。途端に全てのダービーの悪夢が私の頭には浮かび、いえ、確かに延長戦には入ったんですけどね。大抵はマドリーのremontada(レモンターダ/逆転劇)で終わっていたところ、この日のシメオネ監督には1週間前の敗戦を糧とした大いなるプランがあったよう。ええ、通常の90分間、アトレティコがたらたらしていたのは体力温存のためで、延長戦でガス切れとなるのを回避。選手交代も後半ロスタイムにリノをリケルメにしただけで、モラタとジョレンテがメンフィス・デパイとバリオスに代わったのも延長戦前半8分と遅めだったんですが、その成果が2分後に現れたから、ビックリしたの何のって。
そう、ずっとなりを潜めていたグリーズマンがビニシウスからボールを奪い、右サイドからゴールに近づくと、角度のないところからシュート。これが勝ち越し点となってくれるとは、まさに「un futbolista mágico/ウン・フトボリスタ・マヒコ(マジカルサッカー選手)」(シメオネ監督)じゃないですか。いやあ、年末のヘタフェ戦でアトレティコ通算173得点目を挙げ、故ルイス・アラゴネス監督のクラブ最多記録に並びながら、試合は3-3の引分け。スペイン・スーパーカップ準決勝でも174得点の記録更新をしながら、お隣さんに負けてしまうというツキのなさだったグリーズマンなんですけどね。これって、試合前にピッチで記念のプレートをもらい、ファンの喝采を受けたこの日こそ、絶対、勝利でお祝いしたいという当人の夢がとうとう叶ったってこと?
いえ、もちろんたった1点のリードで、常人には理解不能なレモンターダ根性を持つマドリーを前に安心なんてできませんけどね。それこそ、延長戦後半にはドッキリもあって、ベリンガムのシュートをオブラクが弾いたボールをセバージョスがゴールに入れ、スタンドに悪寒が走ったんですが、大丈夫。VAR(ビデオ審判)通信でベリンガムのオフサイドが報告され、3度目の同点が避けられただけでなく、終了間際の14分にはリケルメが、こちらも3度目のシュートで4点目を取ってくれたとなれば、さすがに勝負はあったかと。
そのまま試合は4-2で終わり、アトレティコはリベンジを達成。これも「Tuvimos la paciencia para esperar nuestro momento/トゥビモス・ラ・パシエンシア・パラ・エスペラル・ヌエストロ・モメントー(ウチには自分たちの時を待つという辛抱があった)」(シメオネ監督)おかげですが、リアドでは無限に見えたマドリーの選手たちの体力に翳りが見えたのも確か。「Nos ha pasado factura esta semana, la prórroga de las semifinales, un viaje tan largo.../ノス・ア・パサードー・ファクトウーラ・エスタ・セマーナ、ラ・プロロガ・デ・ラス・セミフィナレス、ウン・ビアヘ・タン・ラルゴ(準決勝の延長戦、とても長い移動…先週のツケが回った)」とカルバハルも認めていたように、その120分の戦いから、中7日もあったアトレティコの方が余力があったのも当然ではありますが…。
結果として、この先、もし準々決勝も勝ち抜けば、4週連続2試合ペースの過密日程に苦しむのはアトレティコとなり、何せ、延長戦後半から入ったアスピリクエタなど、ヒザの半月板を断裂して、9分にはサビッチと交代。全治2、3カ月になってしまいましたからね。ただ、それ以外、デパイもバリオスも復帰したチームには長期リハビリ中のレマルとアフリカ・ネーションズカップのモザンビーク代表に出向中のレイニウドしか、休場者がおらず、次のリーガは月曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのグラナダ戦。ここ4試合続くアウェイ連敗を何とか解消して、2月4日のサンティアゴ・ベルナベウでのダービーには挑みたいところですが…それにしたって、兄貴分対決がこうも多いのは本当に心臓に悪いですよね。
一方、昨年9月のリーガダービーで敗戦して以来、今季2度目の黒星を同じ場所、同じ相手に喫したマドリーはこの週末、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にアルメリア戦と、ラージョ並みのハードスケジュールなんですが、何せ相手は最下位チームですからね。会場もベルナベウですし、弟分たちと違い、中2日に慣れているアンチェロッティ監督のチームとなれば、それ程、心配することはない?金曜からは練習にルーカス・バスケスも戻りましたし、とにかく来週はミッドウィークフリーで休めるんですから、きっと最後のひと踏ん張りを見せてくれるに違いませんって。
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いやあ、前夜は恒例通り、一発勝負のマドリーダービーが延長戦となったせいで、家に着いたのはほぼ午前2時近くだったんですが、奇跡を見たせいで、あまり気にならず。ただただ、喜んでいた私だったんですが、冷静になってみれば、先日のスペイン・スーパーカップ準決勝を始め、シメオネ監督が着任して以来、8回あったお隣さんとの延長戦の中でようやく3度目の勝利を挙げたと言えど、まだコパの16強対決でしたからね。要はこの先も準々決勝、準決勝、決勝と進まないと優勝はできない訳で、アトレティコのことだから、コロッと次の試合で負けてしまったりするかもと心配していたんですが、ホームなら鬼に金棒。実際、これは冗談ではなく、サウジアラビアではほぼ100%、レアル・マドリーファンに囲まれて、3点も取りながら追いつかれ、延長戦でやられて、5-3で敗退しちゃいましたからね。それを決勝ではバルサが開始10分で2点も取られていたのをいいことに、「少なくともアトレティコは延長戦まで抵抗する。2012年以来、マドリーが負けた決勝4回のうち、3回はアトレティコ相手だった」なんて、マルカ(スポーツ紙)が言い出した日にはもう、「でも他は全部、勝っているじゃない(21タイトル)」と突っ込むしかなかったんですが、いやホント、メトロポリターノを満員にしたアトレティコファンの応援は効果絶大なんですって。え、準々決勝の話をする前に16強対決がどうだったかも知りたいって?そうですよね、つい嬉しくて先走ってしまったんですが、先行してプレーしたマドリッド勢の弟分たちは、やはり本音はリーガ優先だったんでしょうか。火曜に、それこそセビージャをコリセウムに迎えたのがヘタフェだったんですが、試合前のアップ中にGKドミトロビッチが負傷。20才のカンテラーノ(Bチームの選手)、アルベルト・フローレスが急遽、デビューすることになったキケ・サンチェス・フローレス監督のチームに対して、マジョラル、ラタサ、マタ、グリーンウッドとFW4人を並べ、強気に出たボルダラス監督だったものの、開始8分には滅多にないGKダビド・ソリアの飛び出しミスから、セルヒオ・ラモスのヘッドが決まり、早々に先制されてしまうことに。
23分にはそのセルヒオがグリーウッドのクロスをクリアし損ね、エリア内でボールを拾ったマタが見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で同点にしてくれたんですが、1-1のまま始まった後半でも序盤に失点してしまうんですから、救えません。ええ、3分にはガストンが追わなかったボールをオカンポスがエリア内奥でゲットし、そのアシストでこちらもカンテラーノながら、すでに23才になっていたため、この1月に背番号20をもらうまで、出場できなかったFWイサークがヘッド。勝ち越し点を奪われたと思いきや、リーガでは降格圏まで勝ち点1というスランプに苦しんでいるチームを見捨てず、応援に駆けつけた大勢のセビージャファンがまだ浮かれていた10分にもイサークに自身トップチーム2得点目、セビージャの3点目を決められてしまってはねえ。
その後はヒザの靭帯断裂から復帰して、このところ徐々にプレー時間を増やしていっているエネス・ウナルやオスカル・ロドリゲスらが入り、反撃を試みたヘタフェだったんですが、シュート16本中、枠内が3本だけと、ああまで精度が悪すぎては…。ディエゴ・アロンソ監督が率いていた12月にはサンチェス・ピスファンで0-3と完全勝利を挙げていた相手に、先週末はスペイン・スーパーカップによるマドリーとの兄弟分ダービー延期で中日もたっぷりあったにも関わらず、あっさり1-3で負け、彼らの今季のコパは終わってしまいましたっけ。
いえまあ、昨季はヘタフェをキケ監督から残り7試合で引き継ぎ、1部残留を達成したボルダラス監督も「Somos profesionales y hay que olvidarse de la Copa/ソモス・プロフェシオナレス・イ・アイ・ケ・オルビダールセ・デ・ラ・コパ(私たちはプロだから、コパのことは忘れないといけない)」と言っていたように、これでミッドウィーク開催の大会に伴う過密日程をセビージャに押し付け、この日曜のオサスナ戦以降、リーガに専念できるようになったのはいいことなのかもしれませんけどね。丁度、相手も水曜にレアル・ソシエダに負け、コパから解放されたばかりですし、エル・サダルでの一戦はどちらが早く態勢を立て直せるかといった感じでしょうが、前節ラージョ戦で退場したラタサとダミアンが出場停止というのは、ヘタフェにとって、痛いかもしれませんね。
そして翌水曜にジローナ戦をプレーしたのがラージョだったんですが、いやあ、もうこちらはフランシスコ監督も選手たちも、間が64時間しかない土曜午後2時からのラス・パルマス戦の方に頭が行ってしまっていたのは明白。だってえ、前半4分にエヌテカが絶好機にシュートを撃てなかったのは運が悪かったとはいえ、16分からの10分間で3点も取られてしまったんですよ!まずはツィガンコフの入れたクロスをポルトゥがゴール前で倒れながらもストゥアーニに繋ぎ、そのシュートで先制されると、19分にはムミンがポルトゥをエリア内で倒してPKを献上。それもストゥアーニが決めてリードを広げたミチェル監督のチームは26分、またしてもポルトゥのラストパスから、今度はブリントがゴールを決めているんですから、これぞまさにリーガ単独首位チームの実力?
いえ、ラージョも36分にはエヌテカが1点を返し、汚名返上していたんですけどね。後半には負傷が治ったアルバロ・ガルシアとトレホ、更にはファルカオも入れて得点を目指したものの、こちらも3-1で試合は終了。ヘタフェ同様、コパの重荷を取り去って、この週末はまだ今季、1勝しかしていないエスタディオ・バジェカスでファンに白星をプレゼントすることに専念できますが、ただ、これでジローナは来週水曜、32強対決でラス・パルマスを破っていたテネリフェ(2部)を16強対決で倒したマジョルカのホームを訪れるクラブ史上2度目のコパ準々決勝に挑戦。しばらくはリーガに集中して、首位奪回を目指す兄貴分のマドリーには有難い援護射撃になるかもしれませんね。
続く木曜、バルサがRFEF1部(実質3部)のウニオニスタに1-3で勝った後、メトロポリターノでマドリーダービー祭り第2弾が始まったんですが、いやあ何か、スペイン・スーパーカップ準決勝とは随分、趣きが変化。というのもその日のアトレティコは妙に動きが緩慢で、マドリーの速攻カウンターが始まった時だけ、全力で走るといった風だったからで、でも39分には不思議にも先制していたんですけどね。この時はデ・パウルのクロスをリュディガーが頭でカットしたボールがサムエル・リノに渡り、ゴール前左からの彼のシュートが、ケパから代わっていたGKルーニンの股間を抜いてゴールになったんですが、もちろんすぐにマドリーは追いつきます。
というのもハーフタイムまであと一息だった45分、前半中盤にはロドリゴとビニシウスの連続シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)2連発で防ぎ、最もミスから遠いところにいるように見えたGKオブラクも無敵ではなかったから。モドリッチの蹴ったFKをヒメネス、リュディガーに邪魔されて上手くパンチングできず、当人の腕に当たったボールがオウンゴールになってしまうとはあんまりですが、もうこの程度はダービーあるあるだったため、別に驚くことではなし。でもその時、ビニシウスがまるで自分が決めたみたいにゴールを祝っていたのは、あまりいい趣味とは言えなかったかと。
そして同点で始まった後半もアトレティコは早めにサウールをモリーナに代えたぐらいで、あまり活発とは言えなかったんですが、13分には再びリードすることに。今度はルーニンがキャッチできずに弾いたボールがリュディガーに当たり、こぼれたボールをモラタが押し込んだんですが、何にしたって、時間が早すぎますって。案の定、20分過ぎから、ブライム、クロース、チュアメニ、そしてホセルとアンチェロッティ監督がチームをリフレッシュしてきたため、同点へのカウントダウンがどんどん進んでいるようにしか見えなかったんですが、たらればとはいえ、37分、モラタがエリア内からフリーで撃ったシュートで3点目が取れていればねえ。
まさにそれがルーニンに弾かれてしまった直後のことだったんですよ。エリア内に切り込んだベリンガムにアトレティコの選手が全集中し、そのクロスから、反対サイドにいたホセルに悠々ヘッドを決められてしまったのは。途端に全てのダービーの悪夢が私の頭には浮かび、いえ、確かに延長戦には入ったんですけどね。大抵はマドリーのremontada(レモンターダ/逆転劇)で終わっていたところ、この日のシメオネ監督には1週間前の敗戦を糧とした大いなるプランがあったよう。ええ、通常の90分間、アトレティコがたらたらしていたのは体力温存のためで、延長戦でガス切れとなるのを回避。選手交代も後半ロスタイムにリノをリケルメにしただけで、モラタとジョレンテがメンフィス・デパイとバリオスに代わったのも延長戦前半8分と遅めだったんですが、その成果が2分後に現れたから、ビックリしたの何のって。
そう、ずっとなりを潜めていたグリーズマンがビニシウスからボールを奪い、右サイドからゴールに近づくと、角度のないところからシュート。これが勝ち越し点となってくれるとは、まさに「un futbolista mágico/ウン・フトボリスタ・マヒコ(マジカルサッカー選手)」(シメオネ監督)じゃないですか。いやあ、年末のヘタフェ戦でアトレティコ通算173得点目を挙げ、故ルイス・アラゴネス監督のクラブ最多記録に並びながら、試合は3-3の引分け。スペイン・スーパーカップ準決勝でも174得点の記録更新をしながら、お隣さんに負けてしまうというツキのなさだったグリーズマンなんですけどね。これって、試合前にピッチで記念のプレートをもらい、ファンの喝采を受けたこの日こそ、絶対、勝利でお祝いしたいという当人の夢がとうとう叶ったってこと?
いえ、もちろんたった1点のリードで、常人には理解不能なレモンターダ根性を持つマドリーを前に安心なんてできませんけどね。それこそ、延長戦後半にはドッキリもあって、ベリンガムのシュートをオブラクが弾いたボールをセバージョスがゴールに入れ、スタンドに悪寒が走ったんですが、大丈夫。VAR(ビデオ審判)通信でベリンガムのオフサイドが報告され、3度目の同点が避けられただけでなく、終了間際の14分にはリケルメが、こちらも3度目のシュートで4点目を取ってくれたとなれば、さすがに勝負はあったかと。
そのまま試合は4-2で終わり、アトレティコはリベンジを達成。これも「Tuvimos la paciencia para esperar nuestro momento/トゥビモス・ラ・パシエンシア・パラ・エスペラル・ヌエストロ・モメントー(ウチには自分たちの時を待つという辛抱があった)」(シメオネ監督)おかげですが、リアドでは無限に見えたマドリーの選手たちの体力に翳りが見えたのも確か。「Nos ha pasado factura esta semana, la prórroga de las semifinales, un viaje tan largo.../ノス・ア・パサードー・ファクトウーラ・エスタ・セマーナ、ラ・プロロガ・デ・ラス・セミフィナレス、ウン・ビアヘ・タン・ラルゴ(準決勝の延長戦、とても長い移動…先週のツケが回った)」とカルバハルも認めていたように、その120分の戦いから、中7日もあったアトレティコの方が余力があったのも当然ではありますが…。
結果として、この先、もし準々決勝も勝ち抜けば、4週連続2試合ペースの過密日程に苦しむのはアトレティコとなり、何せ、延長戦後半から入ったアスピリクエタなど、ヒザの半月板を断裂して、9分にはサビッチと交代。全治2、3カ月になってしまいましたからね。ただ、それ以外、デパイもバリオスも復帰したチームには長期リハビリ中のレマルとアフリカ・ネーションズカップのモザンビーク代表に出向中のレイニウドしか、休場者がおらず、次のリーガは月曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのグラナダ戦。ここ4試合続くアウェイ連敗を何とか解消して、2月4日のサンティアゴ・ベルナベウでのダービーには挑みたいところですが…それにしたって、兄貴分対決がこうも多いのは本当に心臓に悪いですよね。
一方、昨年9月のリーガダービーで敗戦して以来、今季2度目の黒星を同じ場所、同じ相手に喫したマドリーはこの週末、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にアルメリア戦と、ラージョ並みのハードスケジュールなんですが、何せ相手は最下位チームですからね。会場もベルナベウですし、弟分たちと違い、中2日に慣れているアンチェロッティ監督のチームとなれば、それ程、心配することはない?金曜からは練習にルーカス・バスケスも戻りましたし、とにかく来週はミッドウィークフリーで休めるんですから、きっと最後のひと踏ん張りを見せてくれるに違いませんって。
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