【CL決勝特集④・戦術分析】主導権を握るのは? 煙幕張ったペップに秘策は…
2021.05.29 12:00 Sat
2020-21シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝、マンチェスター・シティvsチェルシーが日本時間5月29日28時からポルトガルのエスタディオ・ド・ドラゴンで開催される。
◆ボールの主導権を握るのは?
トゥヘル新体制移行後のチェルシーとシティは今シーズンのFAカップ準決勝とプレミアリーグ第35節で対戦し、初戦は1-0、第2戦は2-1といずれもチェルシーが勝利。また、ボール支配率に関してはほぼ五分も、初戦はシティ、第2戦はチェルシーがわずかながら上回っていた。そのため、今回のファイナルでも明確にボールの主導権が片方に大きく傾く可能性は低い。
ただ、GKエデルソンの存在を含め、ボールを保持するプレーモデルを持つシティはボールを握って相手を押し込み、ボールを失ったタイミングでも即時奪回を図る、より前がかりな戦いを選択するはずだ。
一方、チェルシーはやや相手を引き込みながらヴェルナーやツィエクをハイラインの背後に走らせるロングカウンターをベースに応戦。さらに、相手のハイプレスの場面ではジョルジーニョやカンテ(コバチッチ)、低い位置まで下りるマウントのところでプレスを剥がして一気に局面を変えるプレーを狙うはずだ。
また、新生ブルーズは攻守のバランスが整った非常にバランスが良い戦いを見せている一方、アーセナル戦での敗戦やリーグ戦でドローに終わった数試合では引かれた相手を崩し切れないという課題がある。これに対して、今季はルベン・ディアスの加入、ストーンズの進化によって守備面の安定が際立つシティは状況に応じて相手を引き込む戦いも採用しており、相手の弱点を徹底的に突く考えがある場合は、あえてボールを持たせる戦いをする可能性もありそうだ。
◆手の内を見せていないペップにスペシャルな策は?
ドルトムント時代から策士の印象があるトゥヘル監督だが、チェルシーの指揮官就任後は就任当初の数試合で4バックを採用した以外、一貫して[3-4-2-1]、[3-4-1-2]の布陣を継続。また、右サイドに関してアスピリクエタとリース・ジェームズの縦の入れ替え、プリシッチの変則的な起用法など幾つかのオプションは持っているが、比較的正攻法の戦いを貫いている。直近2試合での連勝という結果を含め対シティという部分で奇策を講じる可能性は低いと思われる。
一方、今回の大一番に向けてグアルディオラ監督のゲームプランに注目したい。前述の2つの敗戦ではFAカップこそ一部主力を温存した[4-2-3-1]の布陣で臨んだが、前哨戦となったリーグ戦での直近の対戦ではインサイドハーフにスターリング、フェラン・トーレスを配置する見慣れない[3-1-4-2]の布陣で臨み、煙幕を張る格好となった。
今回の大一番では単純にベストメンバーを起用し、普段通りの[4-3-3]、パリ・サンジェルマン戦で機能したベルナルド・シウバ、デ・ブライネを最前線に配した[4-4-2]の形で臨む可能性が高いが、その人選や各選手の起用法のところで何らかの変化を加えることも想定される。
◆リーグ戦と異なる5枚の交代カードの切り方に注目
ヨーロッパ主要リーグで唯一現行の交代枠3枚を維持しているプレミアリーグでは、先日のヨーロッパリーグ決勝で交代策に批判が集まったマンチェスター・ユナイテッドのスールシャール監督を含め今季ここまでの戦いで5枚の交代枠を効果的に使えていない印象がある。
シティとチェルシーの2チームに関しても、今シーズンのCLにおいて交代選手が劇的に試合の流れを変えたケースはなく、逆に今回のファイナルでは交代策の部分に注目したい。
シティに関してはアグエロとジェズスという2人のストライカーに加え、個で局面を変えられるスターリング、フェラン・トーレスがゲームチェンジャーの役割を担う。さらに、クローザーとしては百戦錬磨のフェルナンジーニョが控える。また、ラポルテ、アケの左利きのセンターバック、カンセロの投入で布陣変更もスムーズに行えるはずだ。
その中でシティでの正真正銘のラストマッチとなるアグエロ、終盤戦に入って決定力に磨きをかけるフェラン・トーレスにはビハインドや同点時に大きな仕事が期待されるところだ。
チェルシーは各選手の個性という部分ではシティより多彩なバリエーションを有しており、アタッカー陣では空中戦で頼りになるジルー(エイブラハム)、異なる特長を持つドリブラーのプリシッチとハドソン=オドイ、前線と中盤で複数のタスクをこなせるハヴァーツが控える。さらに、守備陣ではクローザー、パワープレー要員を兼任するクリステンセンとズマ、直近の対戦で劇的決勝点を挙げたマルコス・アロンソもいる。
ビッグマッチで度々大仕事を果たすジルー、今季2度の対戦で2ゴールに絡む仕事を見せているハドソン=オドイは、シティにとって不気味な存在となるはずだ。
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初のファイナル進出で悲願のビッグイヤー獲得を目指す今季のプレミアリーグ王者と、2011-12シーズン以来2度目の優勝を目指すチェルシーによる、イングランド勢対決のファイナルだ。この大一番を前に、注目の一戦のタクティカルプレビューを紹介する。Getty Images
トゥヘル新体制移行後のチェルシーとシティは今シーズンのFAカップ準決勝とプレミアリーグ第35節で対戦し、初戦は1-0、第2戦は2-1といずれもチェルシーが勝利。また、ボール支配率に関してはほぼ五分も、初戦はシティ、第2戦はチェルシーがわずかながら上回っていた。そのため、今回のファイナルでも明確にボールの主導権が片方に大きく傾く可能性は低い。
ただ、GKエデルソンの存在を含め、ボールを保持するプレーモデルを持つシティはボールを握って相手を押し込み、ボールを失ったタイミングでも即時奪回を図る、より前がかりな戦いを選択するはずだ。
一方、チェルシーはやや相手を引き込みながらヴェルナーやツィエクをハイラインの背後に走らせるロングカウンターをベースに応戦。さらに、相手のハイプレスの場面ではジョルジーニョやカンテ(コバチッチ)、低い位置まで下りるマウントのところでプレスを剥がして一気に局面を変えるプレーを狙うはずだ。
その中でシティはシーズンを通してビルドアップの起点となっていたカンセロが守備の強度のところで、ジンチェンコやウォーカーに大きく見劣りし序列が下がっており、ベンチスタートが濃厚だ。その中で両サイドバックを中心とする立ち位置、ビルドアップ時のボールの循環の仕方などのディテールの部分にも注目が集まる。
また、新生ブルーズは攻守のバランスが整った非常にバランスが良い戦いを見せている一方、アーセナル戦での敗戦やリーグ戦でドローに終わった数試合では引かれた相手を崩し切れないという課題がある。これに対して、今季はルベン・ディアスの加入、ストーンズの進化によって守備面の安定が際立つシティは状況に応じて相手を引き込む戦いも採用しており、相手の弱点を徹底的に突く考えがある場合は、あえてボールを持たせる戦いをする可能性もありそうだ。
◆手の内を見せていないペップにスペシャルな策は?
Getty Images
ドルトムント時代から策士の印象があるトゥヘル監督だが、チェルシーの指揮官就任後は就任当初の数試合で4バックを採用した以外、一貫して[3-4-2-1]、[3-4-1-2]の布陣を継続。また、右サイドに関してアスピリクエタとリース・ジェームズの縦の入れ替え、プリシッチの変則的な起用法など幾つかのオプションは持っているが、比較的正攻法の戦いを貫いている。直近2試合での連勝という結果を含め対シティという部分で奇策を講じる可能性は低いと思われる。
一方、今回の大一番に向けてグアルディオラ監督のゲームプランに注目したい。前述の2つの敗戦ではFAカップこそ一部主力を温存した[4-2-3-1]の布陣で臨んだが、前哨戦となったリーグ戦での直近の対戦ではインサイドハーフにスターリング、フェラン・トーレスを配置する見慣れない[3-1-4-2]の布陣で臨み、煙幕を張る格好となった。
今回の大一番では単純にベストメンバーを起用し、普段通りの[4-3-3]、パリ・サンジェルマン戦で機能したベルナルド・シウバ、デ・ブライネを最前線に配した[4-4-2]の形で臨む可能性が高いが、その人選や各選手の起用法のところで何らかの変化を加えることも想定される。
◆リーグ戦と異なる5枚の交代カードの切り方に注目
Getty Images
ヨーロッパ主要リーグで唯一現行の交代枠3枚を維持しているプレミアリーグでは、先日のヨーロッパリーグ決勝で交代策に批判が集まったマンチェスター・ユナイテッドのスールシャール監督を含め今季ここまでの戦いで5枚の交代枠を効果的に使えていない印象がある。
シティとチェルシーの2チームに関しても、今シーズンのCLにおいて交代選手が劇的に試合の流れを変えたケースはなく、逆に今回のファイナルでは交代策の部分に注目したい。
シティに関してはアグエロとジェズスという2人のストライカーに加え、個で局面を変えられるスターリング、フェラン・トーレスがゲームチェンジャーの役割を担う。さらに、クローザーとしては百戦錬磨のフェルナンジーニョが控える。また、ラポルテ、アケの左利きのセンターバック、カンセロの投入で布陣変更もスムーズに行えるはずだ。
その中でシティでの正真正銘のラストマッチとなるアグエロ、終盤戦に入って決定力に磨きをかけるフェラン・トーレスにはビハインドや同点時に大きな仕事が期待されるところだ。
チェルシーは各選手の個性という部分ではシティより多彩なバリエーションを有しており、アタッカー陣では空中戦で頼りになるジルー(エイブラハム)、異なる特長を持つドリブラーのプリシッチとハドソン=オドイ、前線と中盤で複数のタスクをこなせるハヴァーツが控える。さらに、守備陣ではクローザー、パワープレー要員を兼任するクリステンセンとズマ、直近の対戦で劇的決勝点を挙げたマルコス・アロンソもいる。
ビッグマッチで度々大仕事を果たすジルー、今季2度の対戦で2ゴールに絡む仕事を見せているハドソン=オドイは、シティにとって不気味な存在となるはずだ。
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