川崎Fストップの一番手は?/六川亨の日本サッカーの歩み
2021.03.16 16:30 Tue
J1リーグは第4節を終了し、戦前の予想通り昨季の王者・川崎Fが5連勝(ACLの関係で第11節を消化したため)で首位に立った。これを齋藤学や柿谷、長澤ら即戦力を補強した名古屋も4連勝で追走している。
果たして川崎Fを止めるチームは現れるのか。そのヒントになりそうな試合を13日の柏が演じた(結果は1-0で川崎Fの勝利)。
この日は東日本を中心に激しい雨と落雷があった。大宮対京都戦は試合途中で中止になり、14時キックオフの横浜FC対C大阪戦は16時キックオフに、そして川崎F対柏戦も30分遅れのキックオフとなった。
それでも開始直前まで係員がピッチに溜まった雨水を、タオルやちり取りですくってピッチの外へ捨てていた。
こうして迎えた試合は、見た目ピッチは普通のようでも水をたっぷりと含んでいるため球足が遅い。そこでネルシーニョ監督が、ロングパス主体のカウンターで川崎Fのポゼッションに対抗したのは当然の策でもあった。
そこで鬼木監督はベンチスタートとなった三笘を後半から投入し、19分には同じく温存しておいたレアンドロ・ダミアンをピッチに送った。すると三笘は5分に左サイドをえぐり、旗手の決定機をお膳立てする。これはGKキム・スンギュの好プレーに阻まれたが、14分にも三笘、小林、旗手とつないで決定機を作った。
三笘の投入によって川崎Fの左サイドは明らかに活性化した。
昨シーズンは大ブレイクした三笘だが、いかにして彼を止めるかが川崎F対策に欠かせない。もちろんネルシーニョ監督も策は講じてきた。それは「スピードに特長があるので名古屋戦は休ませて準備してきた」という、右サイドを主戦場にする高橋峻希の右SB起用だった。
ところがマークすべき三笘はベンチにいる。ネルシーニョ監督の秘策は空振りに終わった。
高橋峻は前半を長谷川とマッチアップし、後半はフレッシュな状態で入ってきた三笘に加え、攻勢を強める旗手とも対峙することになった。しかし5分は三笘のショルダーチャージに弾き飛ばされ突破を許した。
決勝点は35分、高橋峻をスピードで振り切って左サイドをえぐった三笘のクロスを家長がフリーで押し込んだ。終わってみれば三笘は後半アディショナルタイムにもカウンターから田中の決定機につながるクロスを送るなど、1人で4度の決定機に絡んだことになる。
そんな三笘をストップするためにマッチアップする選手には、スピードがありフィジカルコンタクトの強さが求められる。その意味で水曜の17日に対戦する神戸には、筑波大の同級生である山川がいる。大学時代は三笘との1対1の勝負で守備力を高めただけに、2人の激突は見物である。
続く対戦相手はアウェーの浦和戦。もしも元日本代表SBの西がケガから復帰していれば、クレバーな守備をする西とのIQ対決になるだろう。そして西が間に合わなければ宇賀神と対峙することになるが、宇賀神はフィジカルコンタクトの強さが特徴だけに、ハードなバトルが繰り広げられるはずだ。
この三笘だけでなく、川崎Fの進撃をどのチームが止めるかも序盤戦の焦点の1つだ。個人的には同じスタイル、ボールポゼッションで川崎Fの完成度に勝てるチームはないため、カウンターを武器にするチームであり、個の力でゴールを奪える選手がいるチームと予想する。
そうなると、試合を重ねるごとに復調しているディエゴ・オリベイラと俊足の永井を擁するFC東京(4月11日の第9節で対戦)ということになる。ファストブレイクというショートカウンターを掲げ、昨シーズンのルヴァン杯準決勝では川崎Fから2-0の勝利を収めている。
そしてFC東京戦の前に川崎Fと対戦する鳥栖との戦いも面白い。昨シーズンのリーグ戦では唯一負けなかったチーム(2試合ともドロー)で、現在は川崎Fと名古屋同様に無敗で3位につけている。豊富な運動量と球際の強さでどこまで王者を苦しめることができるか。降格候補からジャイキリで、いきなり波乱の主役に躍り出ることができればリーグ戦も面白くなるに違いない。
【文・六川亨】
果たして川崎Fを止めるチームは現れるのか。そのヒントになりそうな試合を13日の柏が演じた(結果は1-0で川崎Fの勝利)。
それでも開始直前まで係員がピッチに溜まった雨水を、タオルやちり取りですくってピッチの外へ捨てていた。
こうして迎えた試合は、見た目ピッチは普通のようでも水をたっぷりと含んでいるため球足が遅い。そこでネルシーニョ監督が、ロングパス主体のカウンターで川崎Fのポゼッションに対抗したのは当然の策でもあった。
ピッチコンディションは万全ではないため、不測の事態が起きてもおかしくない。鬼木監督は「前半は止めていいところで、1タッチでやってミスが出た」と振り返ったように、「いい守備からカウンターで出て行く形が前半から作れていた」(ネルシーニョ監督)45分間だった。
そこで鬼木監督はベンチスタートとなった三笘を後半から投入し、19分には同じく温存しておいたレアンドロ・ダミアンをピッチに送った。すると三笘は5分に左サイドをえぐり、旗手の決定機をお膳立てする。これはGKキム・スンギュの好プレーに阻まれたが、14分にも三笘、小林、旗手とつないで決定機を作った。
三笘の投入によって川崎Fの左サイドは明らかに活性化した。
昨シーズンは大ブレイクした三笘だが、いかにして彼を止めるかが川崎F対策に欠かせない。もちろんネルシーニョ監督も策は講じてきた。それは「スピードに特長があるので名古屋戦は休ませて準備してきた」という、右サイドを主戦場にする高橋峻希の右SB起用だった。
ところがマークすべき三笘はベンチにいる。ネルシーニョ監督の秘策は空振りに終わった。
高橋峻は前半を長谷川とマッチアップし、後半はフレッシュな状態で入ってきた三笘に加え、攻勢を強める旗手とも対峙することになった。しかし5分は三笘のショルダーチャージに弾き飛ばされ突破を許した。
決勝点は35分、高橋峻をスピードで振り切って左サイドをえぐった三笘のクロスを家長がフリーで押し込んだ。終わってみれば三笘は後半アディショナルタイムにもカウンターから田中の決定機につながるクロスを送るなど、1人で4度の決定機に絡んだことになる。
そんな三笘をストップするためにマッチアップする選手には、スピードがありフィジカルコンタクトの強さが求められる。その意味で水曜の17日に対戦する神戸には、筑波大の同級生である山川がいる。大学時代は三笘との1対1の勝負で守備力を高めただけに、2人の激突は見物である。
続く対戦相手はアウェーの浦和戦。もしも元日本代表SBの西がケガから復帰していれば、クレバーな守備をする西とのIQ対決になるだろう。そして西が間に合わなければ宇賀神と対峙することになるが、宇賀神はフィジカルコンタクトの強さが特徴だけに、ハードなバトルが繰り広げられるはずだ。
この三笘だけでなく、川崎Fの進撃をどのチームが止めるかも序盤戦の焦点の1つだ。個人的には同じスタイル、ボールポゼッションで川崎Fの完成度に勝てるチームはないため、カウンターを武器にするチームであり、個の力でゴールを奪える選手がいるチームと予想する。
そうなると、試合を重ねるごとに復調しているディエゴ・オリベイラと俊足の永井を擁するFC東京(4月11日の第9節で対戦)ということになる。ファストブレイクというショートカウンターを掲げ、昨シーズンのルヴァン杯準決勝では川崎Fから2-0の勝利を収めている。
そしてFC東京戦の前に川崎Fと対戦する鳥栖との戦いも面白い。昨シーズンのリーグ戦では唯一負けなかったチーム(2試合ともドロー)で、現在は川崎Fと名古屋同様に無敗で3位につけている。豊富な運動量と球際の強さでどこまで王者を苦しめることができるか。降格候補からジャイキリで、いきなり波乱の主役に躍り出ることができればリーグ戦も面白くなるに違いない。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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