スタジアムで試合が見られない…/原ゆみこのマドリッド

2023.08.19 20:45 Sat
Getty Images
「珍しい週末もあるもんだわ」そんな風に私が困惑していたのは金曜日、よくよく日程表を見てみたところ、リーガ2節はマドリッド勢1部4チームが揃ってアウェイ開催。要はスタジアムに行く日がないことに気がついた時のことでした。いやあ、今季はアルコルコンがRFEF1部から2部に最短Uターンしてきたため、土曜にサント・ドミンゴでレガネスとの弟分ダービーがあるにはあるんですけどね。実は先週末の開幕節でレガネスが0-1でアンドラに負けてしまい、やっぱりRFEF1部に昇格したアトレティコBのエース、この夏の世界一周ツアー韓国編、Kリーグ選抜チームに負けた試合でゴールも挙げていたカルロス・マルティンの気が変わり、レンタル移籍先としてレガネスではなく、ミランデスを選択。

それが響いたのかもと思った矢先、その翌日には彼がミランデスでルコルコンにdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)をかまして、華々しくデビュー。試合も4-0の大勝をしていただけに、先に今季初勝利を挙げるのはどっちが先かと、このダービーにも興味はあったんですが、キックオフが午後10時ではねえ。というのもブタルケも同様なんですが、サント・ドミンゴも最寄り駅がセルカニアス(国鉄近郊路線)で午前0時前に終電がなくなってしまうからで、いえ、根性さえあれば、もっと遅くまで動いているメトロの駅まで歩けないこともないんですけどね。深夜によく知らない場所をフラフラするのもどうかと、結局、今週末はすべてバル(スペインの喫茶店兼バー)観戦で済ませることにしたんですが…。
そうそう、今週は水曜にUEFAスーパーカップがあって、セビージャがEL王者として、CL王者のマンチェスター・シティに挑戦したんですが、一応、スペイン勢だから応援しようと先週末、レアル・マドリーの試合を見たバルに行ってみたところ、もうホントに8月のマドリッドのお店事情は悲惨そのもの。そこも時間差でバケーションに入ってしまい、またしても中継を流してくれるバルを探し回ることになったんですが、やっぱりプレーするのがセビージャというのが幸いしましたかね。昨年の夏もマドリーvsフランクフルト戦を見るため、バル行脚した挙句、ようやく見つけたお店はすでに超満員で立ち見する破目になったものの、キックオフ直前に滑り込んでも今年はTVのよく見える席を選べる程の余裕。

おかげでゆったり観戦することができたんですが、デ・ブライネやベルナルド・シウバらの重鎮がいないことも良かったんでしょうか。ソウルで彼らと対戦したアトレティコ同様、セビージャは上手くハーランドを抑え、前半25分にはアクーニャのクロスから、エン・ネシリがヘッドで先制点を挙げるという快挙を達成。その上、後半序盤には速攻カウンター攻撃の嵐で何度も追加点のチャンスを作ったんですが、3年前の1月、2部に沈みつつあったレガネスをブライトワイテ(バルサに移籍、今はエスパニョール)と共に見捨ててセビージャに移り、最初のゴールではその成長ぶりを示してくれたエン・ネシリが2度もGKエデルソンとの1対1を弾かれてしまってはねえ。

結局、18分にはロドリのクロスをパルマーに、こちらも頭で決められ、同点に追いつかれたセビージャは1-1で引分けて、いえ、今年からUEFAスーパーカップでは延長戦がなくなるなんて、私もその日に知ったんですけどね。メンディリバル監督は後半ロスタイムにラメラ、エン・ネシリをスソ、ラファ・ミルに代えて、ローマとの昨季EL決勝でもGKボノが敵2人を止めて勝利しているPK戦の準備に入ったんですが、6日のコミュニティ・シールドで1本しか決まらず、アーセナルにPK戦で4-1と負けていたグァルディオラ監督はそれから選手たちに特訓を課したんでしょうか。この日はハーランド、フリアン・アルバレス、コバチッチ、グリーリッシュ、ウォーカーの5人全員が見事にゴール。
後攻のセビージャもオカンポス、ラファ・ミル、ラキテッチ、モンティエルと4人目まで決めていたものの、最後のグデリがゴールバーにボールを当ててしまうとは!これには即座に2016年CL決勝のPK戦で4人目のファンフランがポストに弾かれ、クリスチアーノ・ロナウドに最後の1本を決められて、お隣さんにUndecima(ウンデシマ/11回目のCL優勝のこと)をプレゼントしたアトレティコのサン・シーロでの悲劇を思い出したのは私だけではない?どうやらメンディリバル監督によると、「Pensaba que el que entraba también podía tirar y en mejor situación/ペンサバ・ケ・エル・ケ・エントラバ・タンビエン・ポディア・ティラール・イ・エン・メホール・シトゥアシオン(ピッチに交代で入った選手も蹴れる、それもより良い状況で蹴れると考えた)」そうなんですが、何故かスソがキッカー希望者を募る際、手を挙げなかったよう。

これはグデリも貧乏クジを引いた口のようですが、まあ、後年、ファンフランも「本当は自分じゃなくて、カラスコがキッカーだったんだが、彼は蹴りたがらなかった」と暴露していましたしね。せめても慰めはこれがCLやELより格の劣るスーパーの付いた大会だったことですが、前人未踏のEL(UEFAカップ時代も含む)7回優勝という記録を持つセビージャもUEFAスーパーカップでの成績は1勝6敗。この試合の後、アテネからボノがチームと一緒に戻らず、サウジアラビアのアル・ヒラルと契約しに行ってしまったなんてこともありましたし、エン・ネシリ、アクーニャ、ラファ・ミルなど、8月末までに移籍が決まる可能性の高い選手も多いため、今季のセビージャは変革の年になるのかもしれませんね。

そしてまた話を今週末のリーガ戦に戻すと、2節のマドリッド勢トップバッターはマドリーでここ2、3年、恒例になったサンティアゴ・ベルナベウ大改修工事の時間を稼ぐため、9月の各国代表戦週間後までホームゲームのない彼らは土曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)から、パワーホース・スタジアムでアルメリアと対戦。相手は開幕節もホームで弟分のラージョにPK2本を決められ、0-2で黒星発進しているだけにおそらく、地元のファンの前で初勝利を挙げたいと勢い込んでいるはずですが、RMカスティージャから移籍したばかりのアリバスが見られるのは楽しみかと。

ちなみに今週のマドリーは火曜にGKケパ(チェルシーからレンタル移籍)の入団プレゼンがあったものの、アンチェロッティ監督はルニンのスタメン継続を金曜の記者会見で確約。ケパのデビューは3節セルタ戦以降になるようですが、2018年もマドリー移籍でチェルシーにケパが来る原因を作ったクルトワは木曜にヒザの靭帯の手術をし、先週土曜のアスレティック戦で同じケガを患ったミリトンも流れ作業のようにクルトワの後に手術を受けています。まあ、両者共、この先は6カ月とも10カ月とも言われる長いリハビリ生活が続くため、静かに見守るばかりですが、やはりミリトンの代わりの補強はないそう。ええ、「Estamos bien cubiertos en esa posición/エスタモス・ビエン・クビエルトー・エン・エサ・ポシシオン(そのポジションは十分、カバーできている)。マルベルもいるし、他のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)もいるからね」とアンチェロッティ監督もあまり心配していませんでしたっけ。

その一方で、半月板の手術をしたギュレル(フェネルバフチェから移籍)はもうバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でリハビリを開始したという朗報もあって、いえ、どちらにしろ、デビューはセバージョスやメンディのように9月の各国代表戦後になりそうですけどね。金曜のチーム練習に筋肉痛で参加しなかったカマビンガは招集リストに入り、試合当日まで様子を見るようですが、モドリッチやクロースも早めにスタメンで起用してあげないと、拗ねちゃうかもしれませんよ。

そして日曜には正午(日本時間午後7時)から、いよいよ女子W杯決勝でスペインがイングランドと対戦するのは別格として、いえ、さすがに初めての決勝とあって、マドリッドでもウィジンクセンター(普段はプロバスケの試合やコンサート会場として使われている)でパブリックビューイングが行われるなど、シドニーで戦う女子たちに熱い視線が注がれているんですけどね。リーガ戦を迎えるのはヘタフェとアトレティコで、まず前者は午後7時から、激暑のジローナ(スペイン東南部、バルセロナの近く)での戦いになるんですが、開幕バルサ戦では選手登録が間に合わず、パルコ(貴賓席)観戦を余儀なくされたアルデレテも今回は無事に出場できるよう。

そのバルサと0-0で引き分けた試合の前半、脛骨を打撲して交代したミトロビッチは出場が微妙なんですが、お休みが確定しているのはイエローカード2枚で退場したマタ。ただ、FWはボルハ・マジョラルやロサーノもいるため、影響は少ないかと思いますが、ジローナも先週は新加入のドブビク(ドニプロから移籍)のデビュー戦ゴールでレアル・ソシエダと1-1で分けていますからね。この1週間、補強選手のなかったボルダラス監督のチームは再び、少数精鋭のメンバーでやり繰りすることになりますが、果たして勝ち点3を持ち帰ることはできるんでしょうか。

え、それで開幕戦開始6分で右のハムストリングを負傷して、キャプテンのコケが全治3週間となってしまったアトレティコはもう、ボランチの補強はできたのかって?いやあ、とにかくジョアン・フェリックスが動かないことには登録人数的にも入る隙間がないんですが、日曜午後9時30分(日本時間翌午前6時30分)のベティス戦を目指して、シメオネ監督はバリオスを代わりにするプランBでマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習を水曜から開始。それが木曜に筋肉痛となったバリオスが金曜も戻って来ず、最初はビッツェルのプランCを試していたんですが、最後はデ・パウルのプランDに至ったとなれば、まさに混乱の極みじゃないですか。

実際、ジョアンに関してはサウジアラビアへのレンタル移籍は選手の価値が下がるため、クラブも当人も絶対拒否。スポーツ・ディレクターがデコに代わったバルサはともかく、最悪、期限ギリギリにベンフィカへのレンタル移籍という手をフロントは考えているようなので、ボランチ獲得もそれに合わせることになりそうですが、いやあ。マルカ(スポーツ紙)など、木曜にはカメージョのラージョへの完全移籍が500万ユーロ(約8億円)で成立し、少しはクラブの懐具合を温めてくれたものの、とても3000~4000万ユーロ(約48~64億円)を払って、ベラッティ(PSG)やホイビュルク(トッテナム)を買うことはできず。そのため、移籍市場が閉まるギリギリなら、相手のクラブも焦って、レンタルしてくれるのを狙っていると言っていたものの、そんな都合のいい話ってある?

ちなみにそのジョアンは金曜の練習をどこかが痛くて早退してしまったんですが、アトレティコではコレアもグラナダ戦でGKフェレイラに吹っ飛ばされた際に足首をネンザしてしまい、今週はジム籠り。金曜にはGKオブラクまで体調不良でお休みと少々、開幕節でビジャレアルに1-2で勝利したベティスにベニト・ジャマリンで挑むのには心もとないんですが、向こうもヘタフェから掻っ攫っていったアルティミラ(サダベルと契約終了)はBチームの選手として登録できたものの、まだバルトラ(トラブゾンスポルと契約解消)とベジェリン(スポルティングCPと契約終了)が欠けているようですからね。「Muchas ganas, hambre/ムーチャス・ガナス、アンブレ(やる気もハングリー精神も大量にある)。ゴールを入れて、アシストして、リーガ優勝して、CLとコパ・デル・レイでも競うためにね」というグリーズマンと選手皆が同じ気持ちでいてくれたら、きっと勝てますって。

そして開幕節では金曜開催でトップを務めたラージョは今節ではトリとなり、月曜午後9時30分、前節には兄貴分に3-1と負けたグラナダと試合するんですが、カメージョが出戻りを決めた木曜にはデ・フルートスもレバンテから、19-20シーズンの2部時代に在籍したチームに帰って来ることに。翌日には同じレバンテからGKカルデナも加わり、とうとうこの夏の補強選手は7人となったんですが、どうしてこちらも2試合連続アウェイが続くのかと思っていれば、実はエスタディオ・バジェカスのピッチにまだ芝が貼られていないからだったんですね。連続月曜開催となる28日の3節、アトレティコとの兄弟分ダービーでホーム開幕を迎えることになりますが、相変わらず、メトロの1号線はソルで折り返し運転しているため、夏休みの最後にマドリッドでのサッカー観戦を計画しているファンは気をつけた方がいいですよ。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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最終節は結果よりセレモニーを堪能…/原ゆみこのマドリッド

「リーガが終わったのに週末の予定に悩むなんて」そんな風に私が弱り果てていたのは月曜日、レアル・マドリー恒例のCL決勝前メディアデーの開催されたバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で公開セッションを眺めながら、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のスペイン・サッカー協会本部で行われていたスペイン代表ユーロ出場に向けた、デ・ラ・フエンテ監督のプレ招集リスト発表の配信ライブを見ていた時のことでした。いやあ、大体がして、この2つのビッグイベントを同日、同時間帯にやられるだけでも、ええ、私は1人しかいませんからね。片方を捨てないといけなかったというのに、これでもかとばかりに代表公開練習が集合日の夕方、6月1日午後7時なんですよ。 そう、ご存知、まさにその土曜の午後9時から、マドリーとドルトムントのCL決勝がキックオフとなるからで、バスで市内に戻らないといけないため、代表の練習見学をした後、サンティアゴ・ベルナベウでのパブリックビューイングに間に合わせるのはかなり厳しいことに。何せ、昨今は代表も非公開練習が多く、その日以外、モラタのアトレティコ勢1人参加を覆して、予想外の再招集。W杯カタール大会以来となるジョレンテを含む、ユーロ前合宿の29選手を見る機会は他にないかもしれませんしね。うち3人は大会前の親善2試合が終わった後、招集解除となるため、尚更、見ておきたい気がしなくもないんですが、果たしてどうしたものやら。 そして更に日曜も困ったことになりそうで、何せ、1981年にリバプールに負けたのを最後にマドリーは8回連続でCL決勝に勝利。確率的な問題で、決勝翌日の夕方はシベレス噴水広場でのDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)のお祝い、続いてベルナベウでのメガフィエスタを見に行くつもりでいたんですが、先週末で決まると思っていたレガネスの1部昇格が先延ばしになってしまってねえ。そう、日曜の2部41節統合時間帯の試合、リードしていた彼らは後半3分にラシン・フェロルにPKを決められて、2-2の引分けで終了。 メディアデーで会った顔馴染みのテレマドリッド(ローカルTV局)のレポーターなど、せっかく彼らのお祝いの定点、レガネスにあるプラサ・エスパーニャ噴水広場で待機していたのが、ムダになったと嘆いていたのはともかく、逆に土壇場にシラがPKを挙げたバジャドリーは3-2と勝利。ビジャレアルBをRFEF1部(実質3部)に追いやると同時に、1部昇格一番乗りされてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。おかげで今週末の日曜、再び統合時間帯となった午後6時30分から、レガネスはあと勝ち点1を求めて、ブタルケに前節で完全に昇格プレーオフ圏入りが消えたエルチェを迎えることになったんですが、4年越しの再昇格祝い、私だって、見られるものなら、見たいですって。 その一方でレバンテと2-2で引き分けたもう1つの2部の弟分、アルコルコンの最速RFEF1部Uターンが決まってしまったのは嘆かわしいんですが、とりあえず、今はすでに何も懸かっているものがなかった先週末のリーガ1部最終節がどうだったか、お話ししていくことにすると。先陣を切ったのはアトレティコだったんですが、彼らだけがアウェイゲームでねえ。今季は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で何度も苦い思いをしていただけに、レアル・ソシエダとの一戦をあまり期待はせずに見ていたんですが、これまた意外だったんですよ。 そう、1月にアントワープから来て、ほとんど出場時間をもらえてなかった19才のフェアメーレンがご褒美スタメン入りとなったこの試合、前半9分にはジョレンテの右側からのラストパスにゴール前に突っ込んだグリーズマンは届かなかったものの、左から来たサムエル・リノがvalea(ボレア/ボレーシュート)で決めて先制点をゲット。ハーフタイム入り直前にはセットプレーから、ジョレンテのシュートを、序盤のゴールでサモラ(リーガで失点率が一番に低いGKに与えられる賞)獲得の可能性がなくなったGKレミロにparadon(パラドン/スパーセーブ)されるなんてこともあったんですが、何よりだったのはお馴染みのザル守備が、今更ながら、改善されていたことでしょうか。 実際、メトロポリターノで今季最後となったオサスナ戦では4点も取られ、ファンからpito(ピト/ブーイング)が飛ぶやら、呆れて早帰りする客が多いやらで、ガラガラのスタンドを前にアトレティコはお別れの場内一周をする羽目に。それがサビッチ、パウリスタに代わり、ビッツェル、ヒメネスがCBに入ったレアル・アレナでは、いえ、私は次の時間帯のラージョの試合を見るため、後半が始まる前にバルを退散したんですけどね。1点差でずっと持ちこたえ、あまつさえ、後半ロスタイムにはモラタのアシストでレイニウドが2点目を挙げ、0-2で勝ってしまったから、ビックリしたの何のって。 いやあ、アリツ・エルストンドなどによると、「El Atlético nos tenía muy estudiados/エル・アトレティコ・ノス・テニア・ムイ・エストゥデイアードー(アトレティコはボクらをとても良く研究していた)」というんですけどね。それこそ、4位が確定する前から、もしくはCL準々決勝ドルトムント戦2ndレグやコパ・デル・レイ準決勝アスレティック戦前から、そういう姿勢で挑んでいてくれれば、ファンもこれ程、失望することはなかった? まさに覆水盆に返らずです。実際、この日はイマノル監督も「Es una temporada histórica/エス・ウナ・テンポラーダ・イストリカ(歴史的なシーズンだった)。5年連続でヨーロッパの大会出場を果たしただけでなく、CLでも素晴らしかったし(16強対決でPSGに敗退)、コパも決勝進出直前(準決勝でマジョルカに敗退)まで行ったのだから」と言っていたように、むしろ、6位で終わったソシエダが今季はもうやりきった感に満ちていたおかげもあったかと。 まあ、それがこの12年間でシメオネ監督が築いたCL出場皆勤のチームの期待値との差でもあるんですが、実はアトレティコがリーガ最後の6試合で5勝するというのはクラブ史で初めてのことなのだとか。あの悲惨なオサスナ戦でシーズン終盤の印象が最悪になってしまったとはいえ、シメオネ監督も今季最後の記者会見で、この夏は大幅な選手入れ替えを匂わせていましたしね。今はただ、6月はグリーズマン(フランス)、オブラク(スロベニア)、デパイ(オランダ)、デ・パウル、モリーナ、コレア(アルゼンチン)、そして代表引退を撤回したらしいビッツェル(ベルギー)らのユーロやコパ・アメリカでの活躍を楽しむことができたらと思いますが…ソシエダ戦でもレミロとの1対1でvaselina(バセリーナ/ループシュート)を失敗していたモラタはスペイン代表で再生してくれるんですかね。 そして前節、カディスが降格3席目を占めてくれたおかげで残留が決まったラージョはエスタディオ・バジェカスにアスレティックを迎えたんですが、これがもう、残留祝いに加え、クラブ創設100周年祝賀行事が始まって、キックオフ1時間前から、ファンたちが色々、演出をしていたよう。丁度、私が着いた時には全てのスタンドが大幕で覆われており、ピッチが全然、見えず、困惑したものでしたが、選手入場の際も全面モザイクが展開。いつにも増して、応援の歌声にも力が入っていたんですが、試合の方はシーズン通じてのゴール日照りに祟られることに。 ええ、これがバジェカスで最後の試合となるファルカオをスタメンにして、得点を狙いにいったラージョだったんですけどね。いくらアスレティックがGKウナイ・シモンのサモラ確定に全精力を注ぎ、前半から守り固めに入っていたとて、とにかくシュートが入らなくではどうしようもありません。後半15分には、失点率計算条件の60分をクリーンシートで終え、翌日のセビージャ戦でバルサのテア・シュテーゲンが追いつけなくなったため、ウナイ・シモンはアギレサバラと交代。1970年のイリバル以来、初めてアスレティックでサモラを獲得したGKになったのを、ラージョファンまで、拍手で称えているのを見た後、またしても私はタイムアップに。次のマドリー戦に向かうため、スタジアムを出たところ…まさか、同行してくれた顔見知りのイギリス人記者とタクシーを探している間にニコ・ウィリアムスにゴールを入れられてしまうとは! それが起こったのは22分、ベレンゲルから折り返しのパスをもらった彼がその日、ディミトリエフスキに代わって入ったGKカルデナスを破ったんですが、何せ、兄のイニャキは先週、2年前のバケーション中にガラス瓶を踏み、その時以来、足の裏に埋まっていた2cmもの欠片を除去する手術をしたばかり。この試合には来てなかったにも関わらず、立派に弟がゴールゲッターの役目を果たしてくれるとは、確かにスペイン代表のデ・ラ・フエンテ監督には朗報でしたけどね。RdT(ラウール・デ・トマス)が入ろうが、ベベが入ろうが、最後までこの1点を返せなかったラージョは最終節もホームで勝利を飾ることはできませんでしたっけ。 とはいえ、その日は0-1の敗戦でも試合後、契約満了でバレンシアに移籍するらしいディミトリエフスキを胴上げするなど、選手たちもファンも負けたにも関わらず、最後は「Vida de pirate(ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って、盛大に残留をお祝い。その様子はすでにベルナベウのスタンドに到着していた午後8時半頃、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で知ることができたんですが、はあ。結局、日曜試合が終わった後には降格圏ギリギリの17位になってしまったラージョはこの水曜午後7時から、バジェカスで100周年記念試合を実施。ジローナに今季3位でCL初出場をもたらしたミチェル監督を始め、OBのレジェンドチームとダビド・ビジャ、ホアキンら、他チームの引退選手のオールスターチームと対戦する、その時ぐらいは沢山、ファンにゴールを見せてあげてくださいね。 そして土曜の最後の時間帯でマドリーvsベティス戦となったんですが、こちらもスコアレスドローだった内容より、メインイベントは今週、現役引退を発表したクロースへのお別れセレモニーの方だったかと。ええ、まずは選手入場の時にチームメート全員が背番号8のユニを着て、ベティスの選手共々、花道を作って当人を迎えたのから始まって、後半40分に彼がFKをGKビエイテスにそらされた後、セバージョスと交代する時もピッチにいる全員と抱擁を交わして、スタンドは総立ちで感謝の拍手。 自慢の360度大型スクリーンも延々、ベンチで待っていた奥さんや子供たちを抱きしめる彼の姿を映していましたしね。この時ばかりは普段は冷静なクロースも「He estado fuerte hasta que he visto a mis niños, eso me ha matado/エ・エスタード・フエルテ・アスタ・ケ・エ・ビストー・ア・ミス・ニーニョス、エソ・メ・ア・マタードー(子供たちを見るまで、しっかり気持ちを保てたんだけど、その姿にやられた)」と思わず、涙してしまったそう。まあ、こんなゆとり展開はそれこそ、ベティスも7位がすでに確定。前半にはGKクルトワのFKクリアミスに乗じて、カルドーソが決めたゴールがマルク・ロカのオフサイドで認められなかったり、後半もアジョセのゴールがウィリアム・ホセのオフサイドでスコアに上がらずともカリカリする必要がなかったおかげですが、お別れセレモニーは試合が0-0で終わった後も続くことに。 そう、チームメートによる胴上げや記念写真撮影があった後、更には子供たちを連れたクロースが先頭となり、感動に浸る場内一周となったんですが、こんな経験は彼だって、一生に一度のことですからね。この10年間の貢献がそれに十分、値するものだったということは、大勢のマドリーファンが席に残って、最後の勇姿を目に焼き付けようとしていたのからも感じとれましたが、早くも大変なのは、クロースのいなくなった後のチーム編成を効かれていたアンチェロッティ監督。 とりあえずは、「Podemos pensar que puede ser un juego más vertical/ポデモス・オンサール・ケ・プエデ・セル・ウン・フエゴ・マス・ベルティカル(もっと縦のプレーを考えることができる)。よりエネルギーある選手たちで、少しプレーのテンポを落としてね」と答えていましたが、大丈夫。CL決勝ではまだ、最高のレベルで引退することにした34才を当てにできますって。 そして翌日曜はコリセウムに向かった私だったんですが、実はこちらのマジョルカ戦も元々は6年間、ヘタフェに尽くして、今季限りで退団するマタ(契約終了)とマクシモビッチ(パナシナイコスに移籍)へのお別れセレモニーがメインだったんですが、試合中に水を差すようなアクシデントが起きてねえ。というのも、後半3分にはガストンのゴールで先制した彼らだったものの、27分にGKダビド・ソリアがラリンと正面衝突して、昏倒してしまったから、さあ大変!ピッチに救急車が入り、一時はどうなるかと心配されたんですが、幸い脳震盪から覚めた当人が歩いてピッチを出ることができたのは良かったかと。 ただ、その様子を間近で見たせいで、「泣いている選手もいて、皆怯えていた」(ボルダラス監督)というヘタフェはその後、まったく試合に集中することができず。GKをフサトに代え、12分後にプレー再開となったものの、45分にはCKから、ライジョ、ムリキとヘッドで繋がれて同点にされると、ロスタイムにはマッフェオのゴールで1-2と、マジョルカを離れることになったアギーレ監督の最終戦に花を添える逆転勝利を贈ってしまうことに。 いえまあ、こちらは随分前に残留確定していましたし、順位も12位から動きませんでしたからね。試合後、チームメート総出で花道を作って、マタとマクシモビッチを迎え、その奥さん、お子さん共々、場内一周。ベルナベウ程、ファンは残っていなかったとはいえ、応援団のカンティコを選手たちが並んで聞いているシーンも含めて、ヘタフェでは滅多に見られない、立派なお別れセレモニーをしてもらえた2人は本当に幸せ者だったかと。 惜しむらくは「Mason quedate/メイソン・ケダテ(メイソン、残って)」と一際、大きなボリュームのカンティコを歌われていたグリーンウッドがレンタル元のマンチェスター・ユナイテッドに戻ることはないものの、来季は別のチームに行ってしまうらしいことですが、まあ、こればっかりはねえ。その場には3月にヒザを靭帯断裂したボルハ・マジョラルの姿もあり、彼は3カ月間、11試合も欠場したにも関わらず、それまでの15得点にモラタに並ばれただけで、無事にサラ(スペイン人の得点王)を獲得。年内復帰を目指して、リハビリに励むモチベーションにもなりそうですしね。長かったシーズンの終わり、今はどの選手もバケーションを満喫してくれればいいんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.28 22:00 Tue

お別れの季節がやって来た…/原ゆみこのマドリッド

「ホントに解任されちゃったんだ」そんな風に私が驚いていたのは金曜日、お昼過ぎにチャビ監督の来季続投がないことを、バルサが公式に発表したのを知った時のことでした。いやあ、彼に関しては昨年中に契約を1年延長しながら、1月末のビジャレアル戦にホームで3-5と赤っ恥の逆転負け。その直後、当人が今季限りでの退団を宣言したのが功を奏してか、チームは調子を取り戻したかに見えたものの、4月半ばにはCL準々決勝PSG2ndレグで逆転敗退、続けてクラシコ(伝統の一戦)にも負けて、リーガ優勝の目がなくなることに。それが、どういう心境の変化か、チャビ監督が翻意して、来季も続投することになったという経緯があったんですけどね。 これだけでもお騒がせなクラブという印象を持ったファンも多かったんじゃないかと思いますが、うーん、口は禍の下とはまさにこのこと。5月16日のアルメリア戦前の記者会見でチャビ監督が、クラブの懐具合が厳しいせいで、レアル・マドリーやヨーロッパの強豪と競うのは難しいと話したのがラポルタ会長の逆鱗に触れちゃったんですよ。すぐさま、後任を探し始めたクラブは、この金曜にバイエルンでsextete(セクステテ/7冠優勝のこと)を達成し、ドイツ代表監督も務めたハンス・フリック氏と契約に合意。その途端、チャビ監督はお払い箱にされてしまったんですが、やっぱりスペイン2巨頭はプライドも高いよう。 だってえ、それでもバルサは前節ラージョに勝って、リーガ2位を確定させ、少なくとも来季のスペイン・スーパーカップ出場権獲得という、次善の目標は果たしているんですよ。その一方で前節はクラブの至上命題である4位がすでに確定したことに胡坐をかき、今季は奇跡の宝庫だったメトロポリターノでオサスナに1-4の惨敗。少しでも上の3位になりたいという意志をまったく、見せなかったアトレティコなど、試合後、シメオネ監督が「ウチはリーガでの位置づけをわきまえている。怪物のようなクラブと競っていることも」なんて、お隣さんに今季、勝ち点21もつけられていることを正当化するようなことを言おうとも、クラブ上層部からの批判はまったくなし。 もちろん、シメオネ監督の続投に疑問を抱く者もなく、うーん、もうちょっと頑張って、2位で終わればリーガの放映権料分配金1370万ユーロ(約24億円)+スペイン・スーパーカップ参加報酬、3位でも前者を680万ユーロ(約12億円)多くもらえていたはずなんですけどね。そんなことを気にもしない選手たちだからか、この夏、フロントはチームのかなりのメンツを入れ替える腹積もりのよう。ええ、契約1年自動延長を放棄するサビッチはオサスナ戦の後にもう、ファンにお別れしていましたしね。契約満了を迎えるエルモーソも減棒となる延長オファーを受け入れず、更に挙げれば、モラタ、メンフィス・デパイ、コレア、レマルらも売却候補なのだとか。 とりわけ年棒1500万ユーロ(約26億円)ながら、控えであるサウールには河岸を変えてもらいたいようですが、彼らの代わりとして、誰を獲るのか、名前はまだ具体的にあまり出ておらず。とにかく、昨夏入団しながら、シメオネ監督のお眼鏡に叶わず、1月にはレンタル移籍となったソユンチュ(フェネルバフチェ)やハビ・ガラン(レアル・ソシエダ)のような、意味のない投資はしないでほしいかと。 ちなみにすでに優勝、CL、EL、コンフェレンスリーグ出場権、そして降格3チームも確定し終わった、この週末のリーガ最終節ではunificacion(ウニフィカシオン/時間帯統一)も解消。アトレティコは土曜の午後4時15分(日本時間午後11時15分)にレアル・ソシエダとのアウェイ戦で幕を閉じるんですが、うーん、今季はもう彼らの姿を目にすることもないのかと、金曜には私もマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションを覗きに行ってみたんですけどね。普段はマスコミ公開15分のところ、最終日サービスだったのか、30分近く、見ていられたのは良かったものの、2人で三角コーンをどちらが速くポールに挿せるかを競うエクササイズとか、困惑させられる光景もなきにしろあらず。 まあ、勝っても負けても、どうせ順位は変わりませんし、すでにユーロやコパ・アメリカの各国代表招集のかかっている、or確実な選手たち、オブラク(スロベニア)、グリーズマン(フランス)、デパイ(オランダ)、モラタ(スペイン)、デ・パウル、モリーナ、コレア(アルゼンチン)などは、頭もそっちの方に行っているはずですしね。レアル・アレナで今更、今季のアウェイ弱者ぶりが改善されるとも思えないんですが、その試合に参加できないのは出場停止となるパウリスタ。そしてオサスナ戦でケガをしたサビッチ、リハビリ中のバリオス、モリーナとなりますが、後者2人はそれぞれ、パリ五輪、コパ・アメリアまでには回復するはずなのだとか。 対するソシエダではまさに、アトレティコからレンタル中のガランが足指骨折中で、サディクも背筋痛で欠場に。他にもアイエン、スベルディア、スビメンディ、カルロス・フェルナンデスらが出られないそうですが、イマノル監督のチームは前節、ベティスに勝って、7位と6位の順位を入れ替えることに成功。すでに4年連続ヨーロッパの大会出場は確定していたものの、コンフェレンスリーグから、ELに格上げできたことである意味、やり切った感も漂っているはずですからね。オサスナ戦で3カ月ぶりのゴールを挙げ、3月上旬にヒザの靭帯を断裂して、15本で止まっているボルハ・マジョラル(ヘタフェ)に並び、この試合では単独サラ(スペイン人の得点王)を狙っているらしいモラタ辺りが当たってくれませんかねえ。 そしていよいよ、CL決勝総合リハーサルを土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、サンティアゴ・ベルナベウでのベティス戦で行うのがマドリーなんですが、こちらは奇しくもクロースのお別れ試合も兼ねることに。そう、火曜には最高のレベルにいるうちに引退したいという持論に基づき、10年のマドリーでのキャリアに終止符を打ち、ユーロのドイツ代表戦を最後に現役から退くことを、34才の彼が発表したからですが、世間からはもったいないという声がしきり。 それについてはアンチェロッティ監督も金曜の試合前日記者会見で、「Es un alemán y es muy complicado hacerle cambiar de idea/エス・ウン・アレマン・イ・エス・ムイ・コンプリカードー・アセールレ・カンビアル・デ・イデア(ドイツ人だから、考えを変えさせるのはとても難しい)」と言っていたんですけどね。同時に「Reemplazarle es muy complicado sino imposible/レエンプラサルレ・エス・ムイ・コンプリカードー・シノ・インポシーブレ(彼を置き換えるのは非常に難しいだけでなく、不可能)」とも認めていたんですが、まあ、そこは正しく、アンチェロッティ監督が2014年に待望のDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)を達成してから、クリスチアーノ・ロナウド(アル・ナスル)、カセミロ(マンチェスター・ユナイテッド)、セルヒオ・ラモス(セビージャ)ら、中心選手を失ってもCL11回、12回、13回、14回目と勝ち続けてきたマドリー。 「このチームにはこの10年間、沢山のタイトルを獲って示してきたように、リソースがある。毎年、ピースが欠けても、選手たちがその姿勢と献身を失うことはない」(アンチェロッティ監督)という言葉通り、来季もベリンガム、バルベルデ、チュアメニ、カマビンガ、そして契約延長が近いモドリッチで上手く回してしまうか、ええ、彼らはお金にまったく困っていないクラブですからね。すでにキミッヒ(バイエルン)、ロドリ(マンチェスター・シティ)といった獲得候補の名前も挙がっているんですが…きっと、先日のCL準決勝バイエルン戦1stレグで見せた、ビニシウスへの神スルーパスみたいなクロースのプレーが見られなくなるのが淋しいファンは多いんじゃないでしょうか。 そんな訳でベティス戦はすでにチケット完売なんですが、他の予想スタメンはGKクルトワを始め、6月1日にウェンブリーでプレーする選手たち。そのクルトワのヒザの靭帯断裂を受け、昨夏、チェルシーから緊急レンタル移籍しながら、結果的にルーニンの控えとなってしまったケパも途中出場のご褒美をもらえるようです。一方、ベティスは、うーん、前節に直接ライバルだったレアル・ソシエダに負けて、7位に落ちてしまったショックもあるんでしょうかね。イスコを含む8人がケガ、2人が体調不良、そしてクリスタルパレスへの移籍が決まったシャドリもベルナベウには連れてこられないことに。 となると、マドリーが勝って、ペジェグリーニ監督が2009-10シーズンに作ったクラフのシーズン゛最多勝ち点記録96を1つ上回る可能性もかなり高い気もしますが、まあ、今の彼らにとって、一番大事なのはチュアメニ以外、もう負傷者を出さず、ドルトムント戦を迎えること。ええ、水曜のEL決勝で下馬評の低かったアタランタが、今季これまで無敗だったシャビ・アロンソ監督のレバークーゼンに3-0で勝って、優勝したなんて例もありますからね。マドリーに限って、その心配はないとは思うんですが、用心するに越したことはありませんって。 そしてマドリッドの弟分たちはラージョが土曜にアスレティックを、ヘタフェが日曜にマジョルカをホームに迎えるんですが、実は現在、16位の前者も、12位の後者もこの順位は確定ではなく、上手い具合にいけば、最大2つは這い上ることが可能。低い順位のチームはTV放映料分配金も少ないとはいえ、そうなると、どちらも130万ユーロ(約2億円)増しになりますからね。規模の小さいクラブだけに、それだけでも嬉しい収入となるはずなので、ここはそれぞれ、5位が確定、残留が確定した相手を前に、ホームのファンを喜ばせる結果となってほしいかと。 そうそう、この両者にもこの最終節で退団となることが決まっている選手がいて、エスタディオ・バジェカスのファンとお別れするのは3年間の契約が終わるファルカオ。コリセウムでは今週、お別れ会見を開いたマクシモビッチ(契約終了でパナシナイコスに移籍)、マタ(契約終了、行き先を探し中)が最後のプレーとなりますが、まあ、どちらもレンタル移籍などで来ている選手が結構、いますからね。他にも来季は戻って来ないメンツがいそうですが、とりあえず、イニゴ・ペレス監督とボルダラス監督の続投は決まっているようです。 え、1部はもうカタがついたけれど、今まさに大詰めを迎えているのが2部じゃないのかって?その通りで、残り2試合となった41節は日曜午後6時30分に統合されているんですが、いよいよ、レガネスの4年ぶりの1部再昇格が決まるかもしれないんですよ。そう、前節、スポルティングに勝って、首位を取り戻した彼らはアウェイでラシン・フェロル戦に挑むんですけどね。3位のエイバルとは勝ち点2差のため、レガネスが勝利し、エイバルがまさにその、7位でプレーオフ圏入りを狙っているスポルティングに勝てない場合は直接昇格が確定。 もちろん、それが叶わなくても、ブタルケでの最終節エルチェ戦で決めることはできるんですが、問題は今のところ、そちらも6月2日(日)に時間帯統一となっていて、そう、まさにCL決勝の翌日。是非ともレガネスの昇格祝いをその場で見たい私としては、ベルナベウでのDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝)祝いと重ならないよう、チャッチャと今週末に上がってほしいところかと。ええ、エルチェの方も今節、エルデンセに負けると、6位のオビエドが降格圏にいるアンドラに負けなければ、プレーオフ圏入りがなくなって、最終節が時間帯統一から、外れてくれることを期待しているんですが、こればっかりはねえ。 それより気の毒なのはお隣さんのアルコルコンで、今季はせっかくRFEF1部(実質3部)から、速攻で戻ったにも関わらず、今週末のレバンテ戦で最速Uターンが確定する可能性が。というのも、2021-22シーズンにはレガネスにいたナフティ監督が率いる2部の弟分はレバンテに勝っても、上にいるウエスカ、サラゴサ、ミランデス、エルデンセが勝つと、降格が決まってしまうからですが、どちらにしろ、彼らは20位とかなり分が悪いですからね。マドリッドに2部チームが1つもないのも淋しいですし、何とか奇跡が起こってくれるといいのですが。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.25 21:00 Sat

最終節には何もない…/原ゆみこのマドリッド

「契約延長しないんだ」そんな風に私が驚いていたのは火曜日、レアル・マドリーのプレスオフィスから、今季いっぱいでクロースが退団するというメールが届いた時のことでした。すぐさまマルカ(スポーツ紙)のサイトを開けたところ、すでにメインページはそのニュースでいっぱいで、当人からの手紙も掲載。「Mi ambición siempre fue terminar mi carrera en la cima de mi nivel/ミ・アンビシオン・シエンプレ・フエ・テルミナール・ミ・カレラ・エン・ラ・シマ・デ・ミ・ニベル(望んでいたのは常に最高のレベルにいる時に自分のキャリアを終わらせることだった)」という理由で、この夏のユーロのドイツ代表戦を最後に引退することが分かったんですけどね。 それにしたって、この発表のタイミングは絶妙で、ええ、4節前にリーガ優勝が決まり、ここ3試合、6月1日のCL決勝に向けての調整をしていたマドリーの最終節はサンティアゴ・ベルナベウでのベティス戦。ホームで盛大にファンとのお別れができる上、チームメートだって、クロ-スの10年間のマドリー生活に最後の花を添えるべく、いえ、すでに彼は4回も経験済みなんですけどね。Decimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)達成にますます意欲が湧くはずとなれば、これぞ、まさにクロース最後のご奉公? いえまあ、34才の彼が今季もレギュラーだったにも関わらず、引退するのに対して、38才で今季はスーパーサブの位置づけに落ちてしまったモドリッチが契約延長成立間近と言われているのには、ちょっと矛盾を感じなくもないんですけどね。何はともあれ、マドリーファンはまだ、ウェブリーでのCL決勝、そこで優勝すれば再び、シベレス噴水広場やベルナベウでの祝賀行事でクロースの姿を目に焼き付けることができるため、今はそれを慰みにするばかりかと。 え、それでリーガ1部、全ての片がついた先週末の37節はどうだったのかって?いやあ、実は試合結果だけでいうと、マドリッド勢4チームは誰も勝てなかったんですよ。ただ、私がブタルケに見に行った2部の弟分、レガネスだけは4年ぶりの再昇格を後押しするファンの熱気のおかげもあって、7位のスポルティングに勝利。そう、前半17分、敵GKのパンチングミスから、ミゲール・ラ・フエンテがヘッドで入れた先制点こそ、後半8分にロサスにエリア前からシュートを決められて、帳消しにされてしまったものの、32分にはシセが決勝点を挙げて、2-1で終わることに。 おかげでアルバセテ戦に負け、27節の間、維持していた首位をバジャドリーに奪われていたのも、その相手が降格圏からの脱出がどんどん難しくなっているお隣さん、アルコルコンと1-1で引き分けたため、取り戻すことができたんですけどね。とはいっても40節は3位のエイバルもカルタヘナに勝ったため、勝ち点差が2なのは変わらず。要は直接昇格の上位2席を3チームで争っている状態なので、次節でライバルのどちらかが躓かない限り、1部昇格確定はCL決勝の1週間後にある最終節まで持ち越されることに。うっかりプレーオフの4試合を戦う破目になったりすると、レガネスファンの夢も叶わないかもしれないため、今週末のラシン・フェロル戦、続くエルチェ戦では最後のひと踏ん張りを見せてもらいたいものです。 そしてその夜は1部試合のunificacion(ウニフィカシオン/時間帯統合)から1カードだけ外れたヘタフェがメンディソローサでアラベスと対戦。それが元々、何も懸かってないところに大雨の中、プレーさせられたのも気の毒でしたが、前節、ベルナベウで5-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らった相手に1-0で負けて、憂さ晴らしされてしまってはねえ。前半12分にドゥアルテのロングボールから、カルロス・ビセンテが決めたゴールをボルダラス監督のチームは最後まで返せなかったんですが、まあ、昨季と違い、とうに残留が決まっているヘタフェはもう閉店休業状態。 せめて最終節の日曜、コリセウムにマジョルカを迎える試合では、ええ、こちらでは長年、チームに貢献してくれていたマタ(契約満了)とマクシモビッチ(パナシナイコスに移籍)のお別れイベントも予定されていますしね。有終の美を飾って、10位から12位に落ちてしまった順位をちょっとでも改善できればと。とはいえ、今更ながら、4人の長期負傷者に加えて、アラベス戦で退場したモリバス、累積警告のラタサ、ディエゴ・リコと頭数不足がいつにもまして激しいのは困っちゃいますよね。 一方、日曜午後7時の一斉キックオフを迎えたマドリッド勢3チームはというと。いやあ、願いに反して、どこもゴールが多かったため、メトロポリターノのスタンドでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の多元中継を聴いていた私も頭がクラクラしたくらいだったんですけどね。ややこしいので、1つずつ、お伝えしていくことにすると、唯一、まだ降格の可能性が薄っすらとあったラージョはモンジュイックでバルサと対戦。それが開始3分から、ジャマルのラストパスをレバンドフスキがゴール前で胸トラップ、落としたボールをそのまま蹴り込んで、早々に先制されてしまったんですよ。 その後はかなりラージョが攻めていたようなんですが、やっぱりここまで来て、いきなり慢性ゴール日照りは治りませんよね。後半になり、チャビ監督が選手のリフレッシュを行ったところ、26分にはジョアン・フェリックスがパテ・シス、エスピーノらをエリア内右奥でキリキリ舞いさせてシュート。GKディミトリエフスキが弾いたボールをペドリが決めて、2点差にすると、その4分後にもアラウホのロングボールに抜け出して、自身2点目を挙げたとなれば、もうラージョはギブアップするしかなかったかと。 ただ、バルサに2位確定を贈る、その3-0の完敗も試合終了から間もなくして、同時進行だったカディスがラス・パルマスと0-0で引分け。17位との差が勝ち点4となり、カディスが降格組の最後の一席を占めることが確定したため、ピッチに残って、結末を待っていたラージョの選手たちも心おきなく残留祝いができたんですけどね。同じ光景はマジョルカ、ラス・パルマス、セルタでも見られたんですが、おかげでマドリッド勢が最終節のガラガラドボンに巻き込まれる心配がなくなったのは朗報でしたっけ。 まあ、あとは土曜のアスレティック戦でラージョが、5位で来季はELに出場する相手に臆することなく、低空飛行が続き、辛い思いをさせたエスタディオ・バジェカスのファンにいい試合を披露。来たる5月28日のクラブ創設100周年行事の前祝いができればいいんじゃないかと思いますが、その一方で、凄まじいゴール祭りとなっていた試合もあって、それはマドリーのビジャレアル戦。この日はアンチェロッティ監督がリュディガー、バルベルデ以外、プランBの選手を大量にスタメンに入れて、スタートしたんですけどね。序盤、GKルーニンもセルトートのエリア外シュートparadon(パラドン/スーパーセーブ)した後には普段、控えのメンバーがCL決勝での途中出場枠を争うべく、猛ラッシュをかけたから、忙しないったらありません。 そう、14分にはルーカス・バスケスのラストパスを最近、出場する度にゴールを挙げているギュレルがエリア内左から決めて、先制したかと思えば、30分にもルーカス・バスケスのクロスから、ホセルがヘッドで2点目をゲット。39分にはセバージョスが右奥でモスケラにボールを奪われ、そこからセルロートに頭で1点を返されたものの、その1分後にはモドリッチ、ブライムを経て、ルーカス・バスケスが今度は自身でチームの3点目を挙げることに。更にロスタイムにもギュレルが再びGKヨルゲンセンを破り、とうとう前半だけで4点を挙げてしまったとなれば、一体、誰がマドリーの勝利を疑った? 実際、これで今季10試合出場6得点となったギュレルに関しては、試合後、アンチェロッティ監督も「Es muy eficaz, ha marcado muchos goles con pocos tiros/エス・ムイ・エフィカス、ア・マルカードー・ムーチョス・ゴーレス・コン・ポコス・ティロス(とても効率的だ。少しのシュートでゴールを沢山挙げた)」と褒めていたんですが、何せ、チーム総得点がリーガ最多の87というマドリーですからね。ゴール不足で悩んでいるチームとは違い、ギュレルをもっと早くから使っていればという声が巷から聞こえてこないのも当然だった?それが後半はまったく様相が変わって…。 ええ、折しもセビージャではベティスが前半、レアル・ソシエダに0-2と負けていて、ビジャレアルは頑張れば、最終節で7位のコンフェレンスリーグ出場権に手が届くかもしれないというのもあったんでしょうね。ハーフタイムには、「No puedes jugar con tanta falta de intensidad/ノー・プエデス・フガール・コン・タンタ・ファルタ・デ・インテンシダッド(あんな強度のなさでプレーすることはできない)」とマルセリーノ監督が選手たちを叱咤激励。後半頭から、クエンカ、アコマック、パレホをアルビオル、トラオレ、コケリンに代えたのも良かったか、再開早々3分にはジェラール・モレノのクロスから、セルロートがまたしてもヘッドで得点したんですよ。 それどころか、8分にも彼はジェラール・モレノのスルーパスで抜け出して3点目を決めると、11分にはとうとう、4点目を挙げて、ピピチ(リーガ得点王)レーストップだったドブビク(ジローナ)に2本差つけているんですから、恐ろしい。とはいえ、これでセルロートのゴールラッシュも打ち止めだったようで、ええ、後半15分には全ての失点シーンに顔を出し、CL決勝前に大きく株を下げてしまったミリトンがナチョと交代したのも影響したんでしょうね。試合はそのまま4-4で終わることに。 結局、引分けではビジャレアルが最終節に望みを託すことは叶わず、7位はベティス、そのまま勝ったレアル・ソシエダが6位でEL出場とこちらも片がついたんですが、え?ドルトムントだって、アトレティコとのCL準々決勝では4点も取っていたし、こんなにゴールを奪われるマドリーには懸念が湧かないかって?いえ、アンチェロッティ監督も「Hemos encajado más de los necesario pero no cambia nada pensando en la final/エモス・エンカハードー・マス・デ・ロス・ネセサリオ・ペロ・ノー・カンビア・ナーダ・ペンサンドー・エン・ラ・フィナル(必要以上に失点したが、決勝を考えるにあたっては何も変わらない)」と言っていたように元々、ミリトンもGKルーニンもスタメンにするつもりはなかったみたいですからね。要はウェンブリーではナチョとクルトワがプレーするため、その辺は心配することないということでしょうが、さて。 そして最後に唯一、ホームゲームでオサスナ戦をプレーしたアトレティコはというと、ホント、マスコミの「目標は3位」という言葉を信じた私がバカでしたよ。キックオフ前には12年間、フィジカルコーチとして、選手を指導したプロフェ・オルテガのお別れイベントを、オサスナ勢がピッチで退屈してしまう程、長々と開催していたのは、まあ、この日が最後の機会でしたからね。仕方ないとはいえ、どうやら、4位で来季のCL出場が確定していた彼らはすでにバケーションモードに入っていたよう。 いえ、それでもビッツェル、ヒメネスが出場停止でいなかったにも関わらず、前半は26分にFKから、パウリスタのヘッドクリアをカテナにゴール前に戻され、ラウール・ガルシアに1点取られただけで済んだんですけどね。前節のヘタフェ戦でハットトリックを挙げたグリーズマンも、うーん、また足首の痛みがぶり返した?シュートの精度はもちろん、パスもようよう味方に届けられない状態に戻っていたんですが、0-1で始まった後半には今季、散々、アウェイゲームで目撃した悲劇が襲い掛かることになるとは。 そう、早くも7分にはゴール脇でアスピリクエタがクリアしようとして、GKオブラクに当たって跳ねたボールが誰もついていなかったアイマール・オロスに渡り、2点目を入れられてしまったんですよ。ただ、その時は3分後に後半頭から、パウリスタと交代で入っていたモラタがサムエル・リノにラストパスをもらい、3ケ月ぶりとなるゴールを決めて、1点差に迫ってくれたから、まだ良かったんですけどね。交代で入ったリケルメとレイニウドがあまりにぼうっとしすぎです。19分にはエリア内右からアレソにクロスを上げられ、またしてもラウール・ガルシアに決められているって、これじゃ、オブラクから滅多に見ない程の叱責を喰らっても仕方なかった? 実際、1-3にされた後になって、今季はもう、研修生のままでいい感じになっていた19才のフェルメーレンをシメオネ監督がピッチに入れた理由もよくわかりませんでしたしね。モラタとメンフィス・デパイの2弾頭にしても、すでに残留は達成しながら、まだバケーション入り一歩手前の状態でプレーしていたオサスナの守備を崩すことはできず。最後は43分にも右サイドから、パブロ・イバニェスのクロスをトロにvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込まれ、ここ11試合、アトレティコに勝ったことのなかったアラサーテ監督のチームに1-4で負けてしまいましたっけ。 何せ、今季メトロポリターノはほぼ難攻不落の要塞で、リーガではバルサに負けただけ、引分けもヘタフェとの一戦だけと、ファンは勝利に慣れていましたからね。最後の最後になって、どうしてアウェイでのダメダメぶりをホームで見せられないといけないんだという、pito(ピト/ブーイング)がスタンドから飛んでいたのもムリはありませんが、その日はジローナもバレンシアに勝利。アトレティコとの差が5となり、最終節での3位上昇可能性が完全に消滅することに。 うーん、シメオネ監督は「Entiendo el lugar que ocupamos en Liga. Entiendo que competimos contra monstruos/エンティエンドー・エル・ルガール・ケ・オクパモス・エン・リーガ。エンティエンドー・ケ・コンペティモス・コントラ・モンストロス(ウチがリーガで占める位置はわかっている。モンスターのようなチームたちと競っているのもわかっている)」と言っていたんですけどね。その中にジローナが入るかどうかは大いに疑念の湧くところ。試合後には今季限りで退団するサビッチがファンにお別れしていたんですが、今季のここ一番で残念だったチームの姿を見る限り、そろそろ選手の大幅入れ替えを考えた方がいい?この土曜にもアトレティコにはレアル・ソシエダ戦があるんですが、今はまた、アウェイでみっともない試合をしないことを祈るばかりです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.22 20:00 Wed

最後のミッドウィークリーガが終わった…/原ゆみこのマドリッド

「とうとうこの時期が来たか」そんな風に私が今季のゴールが近づいていることを感じていたのは金曜日、この週末のリーガ37節が1試合を除いて、全て日曜午後7時(日本時間翌午前2時)スタートとなるのに気がついた時のことでした。いやあ、確かに土曜に回されたアラベスvsヘタフェ戦は両者共、すでに残留確定済み。どちらもヨーロッパの大会出場圏には手が届かず、所謂10位争いのゲームですからね。マドリッドの弟分の方は中2日で迎える3連戦目となって、ちょっと体力的に辛そうなのは何ですが、あと2試合で選手たちの大部分は長いバケーション入りとなれば、今だけの辛抱ですって。 逆にunificacion(ウニフィカシオン/試合時間統一)に組み込まれてしまった、残りのマドリッド勢3チームも何か大事なことが懸かっているかというと、いえ、実はラージョはまだ、数字的に1部残留が確定した訳ではないんですが、18位のカディスとは勝ち点6差。最悪、クラシコ(伝統の一戦)でレアル・マドリーに負け、リーガ優勝の目がほぼなくなった後、今季限りの退任を宣言していたチャビ監督が意見を変え、続投となりながら、今度は解任されるかもしれないお家騒動が勃発しているバルサとのモンジュイックでの試合、最終節のアスレティック戦と連敗しても、ゴールアベレージ差が11もあるため、まず大丈夫なんですよ。 実際、ビジャレアルvsマドリー戦など、うーん、一応、ビジャレアルには勝ち点5差の7位ベティスに追いついて、コンフェレンスリーグ出場権を手に入れる可能性がない訳じゃないんですけどね。ただ、相手が今季リーガで1敗しかしていない優勝チームとなると、勝ち点を取るのは難しいかと思いますが、どちらにしろ、ヘタフェ、ラージョ、マドリーの試合はアウェイですからね。私はメトロポリターノに行って、アトレティコが、就任2年目から、ずっと3位以上をキープしているシメオネ監督の記録を守るため、勝ち点2差に迫ったジローナの上に立つべく、プレーするオサスナ戦を観戦。他はオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の多元中継頼みとなりますが、ゴールが多いと展開を把握しにくくなるため、どこも落ち着いた試合になってくれたらと。 まあ、そんなことはともかく、今週の平日リーガの試合がどうだったか、お伝えしていかないといけません。先陣を切ったのはマドリーで、火曜にサンティアゴ・ベルナベウにアラベスを迎えたんですが、その試合でもまだリーガ優勝祝いが続いていてねえ。キックオフ前にはセンターサークルに沿って、通算回数分、36個の紙トロフィーオブジェが並び、アラベスの選手たちの作るPasillo de campeones(パシージョ・デ・カンペオネス/チャンピオンの花道)を通って入場したマドリー選手たちは、日曜の祝勝行事前にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でもらったトロフィーをファンにお披露目することに。 相手のアラベスも丁度、前節には残留が確定し、お祝い気分で来ていたため、おかげでキックオフが5分程、遅れても構わないようでしたが、試合では、何も懸かっていないチーム同士が素で戦うとモロに実力差が現れてしまうことが判明。しかもこの日のマドリーは6月1日のCL決勝ドルトムント戦に備え、ローテーションのBチームではなく、レギュラーがスタメンでしたからね。昨季2部4位で昇格プレーオフを経て、1部復帰したばかりのアラベスとは、「La diferencia es abysmal/ラ・ディフェレンシア・エス・アビスマル(深淵のような差がある)」(ルイス・ガルシア監督)のは仕方なかったかと。 そう、開始早々にはアトレティコからレンタル修行に出されているサムがゴール左前から2度も蹴りながら、GKクルトワに弾かれてしまうなんてこともあったアラベスでしたが、やっぱりマドリーは効率が段違い。前半10分にはクロースのパスをベリンガムがエリア内左で受け、うーん、当人はカルバハルへのクロスのつもりだったかもしれませんが、そのvolea(ボレア/ボレーシュート)がゴール反対側の隅にすっぽり収まったから、ビックリしたの何のって。 その後もビニシウスが積極的に攻めていった甲斐があって、27分にはカマビンガのラストパスをゴール前で角度を変えて、2点目をゲット。46分にはベリンガムのスルーパスから、バルベルデも決めて、前半だけで3点も取ってしまったとなれば、まさに優勝祝いに相応しいgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)じゃあないですか。おまけにマドリーの貪欲さは後半になっても衰えず、25分には再び、ベリンガムのアシストでビニシウスが自身2点目を、更には交代出場したギュレルまで、ロドリゴのシュートが敵DFに当たって転がってきたボールを撃ち込んで、とうとう5-0のmanita(マニータ/5得点のこと)になってしまったから、もしや今頃、ドルトムントは震えてない? いえまあ、結局、対戦前にはマルカにもASにもインタビューが載っていたシメオネ監督の三男、ジュリアーノは出なかったとはいえ、アラベスも枠内シュート10本でクルトワの手を煩わしたんですけどね。中でも後半序盤にハジがゴール右下隅を狙って放ったシュートは際どかったんですが、プレシーズンのヒザの靭帯断裂から復帰して、3試合目となる彼が得意のparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露。3連続無失点記録を達成し、「どんな状態で戻るか、疑う人もいたけど、yo sabía que iba a ser el mismo Courtois o incluso major/ジョ・サビア・ケ・イバ・ア・セル・エル・ミスモ・クルトワ・オ・インクルソ・メホール(ボクは同じクルトワ、それどころか、前よりいいクルトワになることを知っていたよ)」と懐かしのクルトワ節まで復活することに。 「Me hacía falta un partido así con muchos disparos/メ・アシア・ファルタ・ウン・パルティードー・アシー・コン・ムーチョス・ディスパーロス(こんな風に沢山、シュートを撃たれる試合がボクには欠けていた)。カディス戦では1対1、グラナダ戦では足を使ったプレーが多かったからね」と続けたクルトワは、水木金と3日間、チーム練習が休みになるニバケーション中も調整に励むそう。それに対抗してか、「Un partido lo va a jugar Lunin y el otro Courtois/ウン・パルティードー・ロ・バ・ア・フガール・ルーニン・イ・エル・オトロ・クルトワ(1試合はルーニンが、もう1試合はクルトワがプレーする)」とアンチェロッティ監督が言っていたように、この日曜のビジャレアル戦に出場予定のルーニンも自宅でのトレーニング姿をインスタグラムに上げるなど、CL決勝に向けて、アピールに余念ないんですが…アトレティコが準々決勝でやられたブラントやフュルクルク、ザビッツァーらのシュートを防ぐのは果たして、どちらになるんでしょうかね。 そして水曜にはまず、エスタディオ・バジェカスにラージョvsグラナダ戦を見に行った私だったんですが、いまあ、まさか開始3分にミゲル・ルビオの頭に足が当たってしまったトレホへのイエロカードが、VAR通信でモニターをチェエクした主審により、色がレッドに変更。5分にはもう、イニゴ・ペレス監督のチームは10人になってしまうという、衝撃のスタートを切った試合だったんですが、やはり相手は前節、マドリーに0-4と大敗する以前に2部降格が決まったショックから、抜け切れてなかったんでしょうか。 そう、人数的不利も何のその、攻撃するのを止めなかったラージョの根性が23分には報われたんですよ。CKから跳ね返されてきたボールをイシが再びエリア内に入れたところ、GKマルク・マルティネスがこぼし、ミゲル・ルビオがライン上でクリアしようとして、それが中途半端だったのが運の尽き。ゴール前にいたルジューヌが低い位置でのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で先制点を奪ったとなれば、後はこの虎の子の1点を死ぬ気で守るだけでいい?うーん、次の時間帯の兄弟分ダービーのため、1-0でハーフタイムに入るやいなや、スタジアムを出た時は私もまだ、不安を拭えなかったんですけどね。 並行して進んでいたセビージャ戦でカディスに次々とチャンスが訪れ、移動中もずっと聞いていたオンダ・マドリッドのコメンテーターたちが、「これで点が取れないなんて信じられない」と驚いていたのも気になりましたし、後半半ばにはバデのオウンゴールでとうとうカディスが得点。それがVARチェックでクリス・ラモスのファールが発覚して取り消されるなんていうドッキリも。それを知ってか、知らずか、ラージョも後半35分にはパテ・シスのパスから、デ・フルートスがGKに弾かれた自身のシュートに当たって、ボールがゴールに入ってくれたから、有難かったの何のって。 ようやく2点リードとなったため、コリセウムに着く頃、ロスタイムにボジェのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で1点返された時も、カディスがとうとう、51分にセルジ・グアルディオラのゴールでセビージャに0-1と勝って、ギリギリで降格決定を免れた時も比較的、平静でいられたんですが、まったく。せっかくラージョが2-1で勝って、ファンが「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を唱和するのも、チームを残り2試合必勝の崖っぷちに追い込むことにもなりかねなかったトレホがチームメートに胴上げされるのも見られないなんて、ホント、連続時間帯試合って、悔しいですよね。 え、それで午後10時という遅い時間にアトレティコがヘタフェに挑んだ試合はどうだったのかって?いやあ、この弟分が兄貴分を負かしたのはシメオネ監督就任以前のずっと昔が最後というぐらい、彼らがアトレティコを天敵にしているのが、今季の根強いアウェイアレルギーに勝ったんですかね。それも前半27分、デ・パウルのクロスをグリーズマンが天才的なボールコントロールで落とし、GKダビド・ソシアを破ったかと思えば、コレアのゴールがオフサイドに認められなかった後の41分にも2点目をゲットって、もしや好調期の彼がようやく戻って来たってこと? そう、この時はコレアがエリア内右から出したラストパスをサムエル・リノは撃てなかったものの、その先にいたグリーズマンが必殺のシュートをゴール内に送り込んでくれたんですけどね。いやでもまさか、後半6分にもリノからパスをもらい、今度はダビド・ソリアの股間を抜いて、ハットトリック達成なんて、最近のパスすら、ようよう味方に届かない彼の姿から、一体、誰が予想できたでしょう!いえ、当人は謙虚に、「Sin mis compañeros no soy nadie/シン・ミス・コンパニェロス・ノー・ソイ・ナディエ(チームメートがいなかったら、ボクは何者でもない)。自分がピッチで居心地いいようにしてくれる彼らに感謝している」と言っていたんですけどね。 このところ、精彩がなかったのは、CL16強対決インテル戦1stレグでネンザした足首にしつこく痛みが残っていたためというのも明らかになったんですが、いやあ、もしやこの回復を今、一番喜んでいるのはフランス代表のデシャン監督かも。だってえ、そのまま、0-3で勝ったアトレティコは、同じ時刻にプレーしていたアスレティックがセルタに逆転負けを喰らったため、完全に4位以上が保証されたものの、要はそれだけですからね。 試合後は、「Yo quiero salir campeón más que nadie/ジョ・キエロ・サリール・カンペイン・マス・ケ・ナディエ(誰よりチャンピオンになりたいのは私)」(シメオネ監督)、「El equipo es ambicioso/エル・エキポ・エス・アンビシオーソ(チームには野心がある)。毎年、4位で、タイトルを獲れないのはイヤだよ」(コケ)と、アトレティコはCL出場圏に安住していることで満足しているという、世間の指摘を否定していたものの、これは私には何とも言えないところ。まずはビッツェル、ヒメネスが累積警告で出場停止、コリセウムで左脚の筋肉を負傷して、ハーフで交代したバリオスもお休みとなるオサスナ戦、そして最終節のアウェイゲーム、レアル・ソシエダ戦でも勝って、3位に這い上がれたら、信じてあげてもいいかもしれません。 とりあえず、ドルトムント戦2ndレグで楽勝シュートを外し、その後、顔面神経痛で休んだ後、めっきり出番が減少。この日もプレーしなかったモラタがシーズン終了まで、ゴールを1本も挙げないまま、ユーロのスペイン代表のエースとなるのはどうかという問題は先送りにすることにして、一方のヘタフェはというと。いやあ、シーズン後半は選手の退団や長期の負傷者で元々、頭数を欠いているだけに、さすがに連戦は堪えたか、MFのアレニャをfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)にして、マタ、ラタサを後半頭まで温存する作戦が裏目に出ちゃったんですかね。 前半にはグリーンウッドのシュートがGKオブラクの手により、ゴールバーに逸らされてしまうという、惜しいチャンスもあったんですが、人出が足りずに最後はとうとう、19才のカンテラーノ(ヘタフェBの選手)、リスコがデビューするぐらい。ボルダラス監督も「Lo mejor es que acabe cuanto antes/ロ・メホール・エス・ケ・アカベ・クアントー・アンテス(できるだけ早く終わるのがいい)。来季のチーム構想に集中して、いい選手を沢山、獲らないと」と言っていたんですが、やはり急務はFW陣の補填かと。 ええ、アトレティコ戦の後半20分過ぎにはファンもチームの反撃力にまったく期待を抱けず、コリセウムから、どんどん引き揚げていったなんてこともありましたしね。どうやらマタも契約更新をしないようですし、ヒザの靭帯を断裂したボルハ・マジョラルも開幕から戻って来る訳ではないとなると…何より、今度は同じ負傷からエネス・ウナルが復帰した途端、ボーンマスに売却してしまったような過ちを、アンヘル・トーレス会長が犯さないようにしてもらいたいものです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.19 00:05 Sun

リーガ2位以下はまだ闘っている…/原ゆみこのマドリッド

「またお祝いするのかなあ」そんな風に私が恐れていたのは月曜日、今更というタイミングで来るミッドウィークリーガのレアル・マドリーvsアラベス戦がもう、火曜に迫っていることに気がついた時のことでした。いやあ、日曜に1週間遅れでリーガ優勝祝賀行事開催の運びとなり、出発前の午前10時にはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でマスコミもファンも入れず、ひっそりスペイン・サッカー協会会長のロチャ氏から、23-24シーズンのトロフィーをマドリーはもらっていたんですけどね。それを携えて、セントロ(中心部)のプレルタ・デ・ソルにあるマドリッド州庁舎、続いてまさにシベレス噴水広場に面しているマドリッド市庁舎を表敬訪問した後、選手たちは背広を脱ぎ、36回目リーガ優勝記念シャツに着替えてオープンデッキバスに乗車。 すでに何千人ものファンが待っていた広場と逆の方向に走り出し、付近の数ブロックを回るパレードをしてから、噴水周りにキャットウォークが設置されているシベレスに戻り、そこでは歌あり、踊りありのお馴染みのお祝い風景が展開されることに。最後は今季の第1キャプテン、ナチョが女神像にbufanda(ブファンダ/マフラー)、bandera(バンデラ/旗)を巻きつけるという、宿願を果たしたんですが、まあ、その一部始終はレアル・マドリーTVだけでなく、テレマドリッド(ローカルTV局)までが4時間近くに渡って、生中継をしてくれましたからね。私も夏日となった暑さと紫外線、人込みにも煩わされず、快適に見られたのは良かったんですが、何せ、アラベス戦は週末リーガより遅い、午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)キックオフなんですよ。 そこでまた、試合が終わった後、選手たちにトロフィーを持って、場内一周などされた日にはそれこそ、帰りが何時になることやら。大体がして、その試合もマドリーにしてみれば、6月1日のドルトムントとのCL決勝に「El objetivo es llegar con toda la plantilla a tope/エル・オブヘティーボ・エス・ジェガール・コン・トーダ・ラ・プランティージャ・ア・トペ(目的は選手全員が最高の状態で辿り着くこと)」(アンチェロッティ監督)という扱いですからね。もちろん、その中にはウェンブリーでマドリーのゴールを守るのが、「ルーニンは素晴らしいシーズンを送った。自身のレベルに到達すれば、クルトワは世界一のGK」(同)という、熾烈なポジション争いをしている選手もいるんですが、最終決定は2週間後のリーガ最終節が終わってからになるのだとか。 そこに、すでに2節前には1部残留が確定。金曜には来季のCL出場権獲得済みで、バルサと2位争いをしているジローナに後半ロスタイムのゴールで2-2と追いついたとはいえ、すでに目標は達成。ルイス・ガルシア監督がこの3試合は今季出番の少なかった選手を起用していくという方針のアラベスをサンティアゴ・ベルナベウに迎える訳ですからね。シメオネ監督の三男ジュリアーノやサムなど、アトレティコからレンタルされているFWの成長ぶりを見るという個人的な興味はあるものの、それ以外、特に見どころといっても思いつかず。となると、やっぱりファンはトロフィー付きのお祝いを期待して、スタジアムに来るんじゃないかと思ってしまうんですが…。 え、その祝賀行事の前日、マドリーは試合をしていなかったかって?その通りで、彼らは土曜にヌエボ・ロス・カルメネスでグラナダ戦となったんですが、早い時間帯の試合でマジョルカがラル・パルマスに勝っていたため、キックオフ前から、相手は2部降格が決定。それでも律儀にグラナダの選手たちはピッチ入場時にPacillo de campeones(パシージョ・デ・カンペオネス/チャンピオンの花道)を作って、マドリーに敬意を表してくれたんですが、どうやらそれが試合中も続いてしまったよう。ええ、ここ2節、レアル・ソシエダ戦、カディス戦同様、スタメンをリュディガー以外、控え選手でローテーションしたマドリーだったんですが、彼らだって、CL決勝での途中出場枠を掴みたいですからね。 しばらくはグラナダの守備陣も持ちこたえていたんですが、前半38分にはブライムがエリア内右から出したパスをゴール前のモドリッチはスルーしたものの、突撃してきたフラン・ガルシアが撃ち込んで、自身のトップチーム初ゴールを挙げると、ロスタイムの47分にはギュラーにアシスト。ようやくリーガ優勝が近くなって、出番をもらえるようになった19才のトルコ人MFがシュートを決め、再び才能の片りんを見せつけてくれるんですから、ほとほと、マドリーの若手選手発掘力には感心するしかないかと。 0-2で始まった後半、来季はエムバテ(PSG退団を発表)が来ても、エンドリッキ(パルメイラス)が来ても一歩も引かないという決意を見せてくれたのはブライムで、4分にはセンターからドリブルで上がると、敵DF2人かわして撃ったシュートで3点目をゲット。更に14分にもモドリッチからもらったパスをゴール前から決めて、4点目を奪っていたんですが、うーん、グラナダもその前後にはウズニにチャンスがあったんですけどね。そのvolea(ボレア/ボレーシュート)もヘッドも外れてしまったため、今回はたった1シーズンで2部最速リターンとなったことを嘆く、スタンドのファンにゴール祝いの1つもさせてあげられませんでしたっけ。 試合はそのまま0-4で終わり、いえ、先日のCL準決勝バイエルン戦2ndレグでチームを決勝進出に導いた2ゴールを挙げたホセルが3度程、惜しいシュートを弾かれてしまったなんてこともあったんですけどね。彼の場合、ほとんどベンチスタートでありながら、もうリーガとCLで計14得点もしているため、もっと大事な試合のためにゴールをお取り置きしていると思えばいいのでは?この日は選手交代もリュディガー、モドリッチをナチョ、クロースにしただけで、ビニシウス、ロドリゴ、ベリンガム、バルベルデ、カルバハル、メンディらは日曜の祝賀行事に備えて、体力温存できましたしね。今のところ、マドリーで気になるのは、シベレス広場でも杖をついて歩いているのが目撃されたチュアメニの足のケガが、CL決勝までに治るのかどうかぐらいでしょうか。 そして日曜はマドリーの祝賀行事をTVで見た後、メトロポリターノに向かった私だったんですが、ええ、こちらも大賑わいでしたよ。スタジアム周辺で土曜からやっている”Fin de Semana del Nino/フィン・デ・セマーナ・デル・ニーニョ(子供の週末)”のアトラクションは。天気も良かったため、そこここで、フードトラックで売っている軽食や持参のお弁当を食べている家族も多かったんですが、そのセルタを迎えた一戦の内容が彼らを満足させたかどうかは微妙かと。 だってえ、前日には5位のアスレティックが後半ロスタイムにはビジャリブレのゴールでオサスナに2-2と追いついたものの、勝ち点2を落として、マストの4位確定に大きく近づく絶好のチャンスだったにも関わらず、アトレティコは全然、シュートが決まらないんですよ。リケルメ、サヌエル・リノ、ジョレンテと皆、GKグァイタに止められてしまい、ええ、前節マジョルカ戦での出場停止から戻ったグリーズマンもこのところ、「Si jugara toda la temporada entera al nivel que jugó hasta abril es muy difícil/シー・フガラ・トーダ・ラ・テンポラーダ・エンテーラ・アル・ニベル・ケ・フゴ・アスタ・アブリル・エス・ムイ・ディフィシル(シーズン全てを4月までのレベルでプレーするのはとても難しい)」とシメオネ監督も認めていたように、パスすら、ようよう味方に届かないぐらいの大殺界中ですからね。 前の時間帯で18位のカディスがルーカス・アルカラスのPKでヘタフェに1-0と勝ったのを知りながら、一応、勝ち点5差はあることから、セルタのヒラルデス監督がそのまま0-0で引分けるのも悪くないと思い始めた後半、アトレティコはリノをモラタに代えて、気持ちも新たに挑んだものの…それがもう、3月初旬のベテイス戦以来、ゴールを1本も挙げておらずとも、デ・ラ・フエンテ監督にはユーロのスペイン代表に呼んでもらえると、モラタは達観しちゃったんでしょうか。 この日もヘッドを2本、外したぐらいで、むしろ30分過ぎにグリーズマンと交代で入った、負傷から復帰したばかりのメンフィス・デパイの方がずっとセルタのゴールを脅かしていたかと。それがまさか、どんどん残り時間が減っていく中、いよいよ大詰め38分になって、15分に途中出場となったデ・パウルがメトロポリターノマジックを発動してくれるとは!その少し前にも彼がバリオスにラストパスを送って、そのジャンピングボレーがゴールバーに当たるという、惜しいチャンスがあったんですが、この時はコケの蹴ったCKをウナイ・ヌニェスが頭でクリア。そのボールがゴール前の一団に加わっていなかったデ・パウルのところに落ちてきたところ…。 ええ、当人も後で「エリアの端にいる時は、カウンターを喰わらないためにプレーを終わらせないといけない。Sabía que si me caía, iba a golpear/サビア・ケ・シー・メ・カイア、イバ・ア・ゴルペアル(自分のところに落ちたら、撃つのはわかっていたよ)」と話していたんですけどね。胸でトラップしたボールをボレーシュートでゴール右端に決めてしまったから、ビックリしたの何のって。いやあ、ヒラルデス監督は「Ellos tienen un talentazo/エジョス・ティエネン・ウン・タレンタソ(彼らには凄い才能がある)」とお世辞を言ってくれていたものの、こういうのが、アトレティコでゴールになるのはまさに奇跡。前節マジョルカ戦から無失点体制を取り戻した彼らにはこの1点で十分で、そのまま、1-0で勝ってくれたとなれば、本当にメトロポリターノ様々ですって。 おかげでアスレティックとの差を勝ち点8まで広げたアトレティコは次節、この差をキープすれば、無事に4位が確定して、来季もCLでプレーできることになったんですが、それもありましたかね。珍しく、シメオネ監督が試合後恒例の場内一周をする選手たちに加わっていたのは。まあ、このセルタ戦でも選手たちの体力が早くも前半半ばには枯渇したのか、歩いてプレーしているシーンがチラホラ。大体がして、お隣さんなど、今はアトレティコより、ハードスケジュールなのに疲れはまったく見られず、それは体力も選手の才能の一部だからなのか、あまりいい練習をしていないせいなのか、突っ込みどころは沢山あるんですけどね。その辺はもう、この時期に言っても仕方ない? そんなアトレティコはこのミッドウィークリーガ、水曜午後10時(日本時間翌午前5時)にヘタフェとの兄弟分ダービーでコレセウムに乗り込むことに。何せ、デ・パウルも「いつも沢山のファクターがある。Habrá que seguir buscando las explicaciones/アブラ・ケ・セギール・ブスカンドー・ラス・エクスプリカシオネス(理由を探し続けないといけないだろう)」と言っていたように、今になっても今季の強烈なアウェイ弱者ぶりの原因はわかっていませんからね。とりあえず、ヘタフェは残留が確定しているのと、もうコンフェレンスリーグ出場圏の7位とは勝ち点11も離れてしまったため、ここは兄貴分に花を持たせてくれると助かるんですが、果たしてどうなるんでしょうか。 そして日曜の続く時間帯にメスタジャでバレンシア戦となったラージョは、最後までGKママルダシビリに阻まれて、ゴールを入れることができず。スコアレスドローの痛み分けだったんですが、こちらは水曜のグラナダ戦でカディスとの勝ち点差を6のまま保てれば、いよいよ残留確定となるよう。いえ、先日はすでに降格していたアルメリアにエスタディオ・バジェカスで0-1と負けた彼らだけに、同じ身分となったばかりのグラナダ相手に勝てる保証はまったくないんですけどね。とはいえ、このままズルズル白星がないまま、シーズンを終えるのもファンにしてみれば、つまらないでしょうし、ここは「Vida de pirata/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」をスタンドが唱和して終われる結果になってくれることを願っています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.14 21:00 Tue
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