【2022年カタールへ期待の選手vol.53】個人昇格でセレッソの救世主に。ロティーナの絶大な信頼を受け、右サイドを徹底的に打開/坂元達裕(セレッソ大阪/MF)
2020.09.09 17:45 Wed
「今季は若くクオリティのあるウイングの選手がどんどん出てきている。それは日本サッカー界にとって素晴らしいこと。そういう選手が出てくるのはそんなに簡単なことではない。そういう中で我々が幸運なのは、タツがこのチームにいるということ。彼は非常に重要な役割を担っています」今季J1で首位・川崎フロンターレ追走の一番手となっているセレッソ大阪。指揮を執るロティーナ監督がキーマンの1人に指名しているのが、右サイドを担う23歳の快足ドリブラー・坂元達裕だ。
清武弘嗣や柿谷曜一朗でも果たせていない攻撃陣唯一のJ1全試合出場を誇る彼はモンテディオ山形からの移籍組。東洋大学を出て1年で個人昇格を果たした。
開幕直後は「Jはレベルが一段階上がりますし、雰囲気も違うので少し緊張する場面もありました」と遠慮がちに話していたが、新型コロナウイルス感染症による4カ月の中断を経て再開された7月以降は俄然、鋭さを増している。7月26日のサガン鳥栖戦で待望のJ1初ゴールを決めると、8月9日のFC東京戦では2~3人がかりの徹底マークを受けるに至った。
実は坂元はFC東京のジュニアユース出身。だが、ユース昇格見送りとなり、前橋育英に進んだ苦い過去がある。
その後、8月23日のベガルタ仙台戦で今季2点目をゲット。さらに存在感を高めていく。セレッソはそこから3連勝中。坂元が先発しなかったJリーグルヴァンカップ・柏レイソル戦を0-3で落としたことを考えても、ロティーナ監督が絶大な信頼を寄せる通り、この男抜きには攻撃の組み立ては考えられないのだ。
「坂元は1対1になれば瞬間的にはがせる力があるし、個人戦術で相手をはがすのが大きな役割。ドリブラーの仕事は(相手に)取られる取られないに直結するけど、チームにとっては大きな武器。『取られてもいいからどんどん仕掛けろ』とつねに言ってます。それに相手が警戒して2対1で来れば、他の味方が空く。2人に囲まれてもはがしているシーンも多いですし、どんどん行ってほしいと思います」と年長者の都倉賢が太鼓判を押していたが、それは2列目でコンビを組む清武や柿谷も同意見。シーズン開幕直後はFCバルセロナから関心を示されたスーパールーキー・西川潤の注目度が高かったが、ロティーナ戦術の中では坂元の存在価値は絶対的と言っていい。最終的に川崎から首位の座を奪うためにも、彼のゴールに直結するプレーがより一層求められるところだ。
スペインの名将に一目置かれる選手だから、海外クラブからオファーが届かないとも限らない。10月に24歳になることを考えても、欧州へチャレンジするなら今年末か来年には踏み出さなければならないだろう。それと同時に日本代表入りも見えてくるかもしれない。
ご存じの通り、現代表の右サイドは堂安律(ビーレフェルト)と伊東純也(ゲンク)がファーストチョイス。それに加えて、ビジャレアルへ移籍した久保建英、2018年ロシアワールドカップ組の原口元気(ハノーファー)も右アタッカーで十分プレーできるし、東京五輪世代・菅原由勢(AZ)も欧州の舞台で右MFと右サイドバックの両方を難なくこなしている。それだけ狭き門なのは確かだ。が、森保一監督は旬な選手を思い切って抜擢するタイプ。2019年には橋本拳人(ロストフ)や鈴木武蔵(ベールスホット)らの才能を大きく開花させている。坂元も目に留まれば、ブレイクする可能性はゼロではないのだ。
「つねにインパクトを残すプレーをしてかないとこういうレベルの高い舞台では生き残れないと思ってるんで、1試合1試合もっともっと賭ける思いっていうか、『失敗したら終わりだ』っていうくらいの思いでのぞんでいきたいと思ってます」
今季開幕時点で悲壮な覚悟を口にした坂元。そういった気持ちが全ての試合で色濃く感じられる。中学時代の挫折を糧に類まれな雑草魂でここまで這い上がってきた技巧派ドリブラーにはまだまだ伸びしろがあるはず。そういう意味でもここから先の動向が非常に楽しみだ。
「ロティーナサッカーの申し子」は今日も明日も切れ味鋭い局面打開で見る者を魅了していくに違いない。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
開幕直後は「Jはレベルが一段階上がりますし、雰囲気も違うので少し緊張する場面もありました」と遠慮がちに話していたが、新型コロナウイルス感染症による4カ月の中断を経て再開された7月以降は俄然、鋭さを増している。7月26日のサガン鳥栖戦で待望のJ1初ゴールを決めると、8月9日のFC東京戦では2~3人がかりの徹底マークを受けるに至った。
実は坂元はFC東京のジュニアユース出身。だが、ユース昇格見送りとなり、前橋育英に進んだ苦い過去がある。
「FC東京は中学の頃、お世話になったチーム。そこでユースに上がれなくて、悔しい思いを持って高校、大学とやってきた。そういう意味でFC東京戦は大きな試合。賭ける気持ちは強い。自分が成長したところをいい意味で見せつけられるようにしたいです」と本人も語気を強めていたが、右サイドを積極的に打開し続け、数多くのチャンスを演出した。決定機を逃し、得点こそなかったが、古巣から人数をかけて守られるほどになったのは成長の証。この一戦で彼はさらなる飛躍のきっかけをつかんだ。
その後、8月23日のベガルタ仙台戦で今季2点目をゲット。さらに存在感を高めていく。セレッソはそこから3連勝中。坂元が先発しなかったJリーグルヴァンカップ・柏レイソル戦を0-3で落としたことを考えても、ロティーナ監督が絶大な信頼を寄せる通り、この男抜きには攻撃の組み立ては考えられないのだ。
「坂元は1対1になれば瞬間的にはがせる力があるし、個人戦術で相手をはがすのが大きな役割。ドリブラーの仕事は(相手に)取られる取られないに直結するけど、チームにとっては大きな武器。『取られてもいいからどんどん仕掛けろ』とつねに言ってます。それに相手が警戒して2対1で来れば、他の味方が空く。2人に囲まれてもはがしているシーンも多いですし、どんどん行ってほしいと思います」と年長者の都倉賢が太鼓判を押していたが、それは2列目でコンビを組む清武や柿谷も同意見。シーズン開幕直後はFCバルセロナから関心を示されたスーパールーキー・西川潤の注目度が高かったが、ロティーナ戦術の中では坂元の存在価値は絶対的と言っていい。最終的に川崎から首位の座を奪うためにも、彼のゴールに直結するプレーがより一層求められるところだ。
スペインの名将に一目置かれる選手だから、海外クラブからオファーが届かないとも限らない。10月に24歳になることを考えても、欧州へチャレンジするなら今年末か来年には踏み出さなければならないだろう。それと同時に日本代表入りも見えてくるかもしれない。
ご存じの通り、現代表の右サイドは堂安律(ビーレフェルト)と伊東純也(ゲンク)がファーストチョイス。それに加えて、ビジャレアルへ移籍した久保建英、2018年ロシアワールドカップ組の原口元気(ハノーファー)も右アタッカーで十分プレーできるし、東京五輪世代・菅原由勢(AZ)も欧州の舞台で右MFと右サイドバックの両方を難なくこなしている。それだけ狭き門なのは確かだ。が、森保一監督は旬な選手を思い切って抜擢するタイプ。2019年には橋本拳人(ロストフ)や鈴木武蔵(ベールスホット)らの才能を大きく開花させている。坂元も目に留まれば、ブレイクする可能性はゼロではないのだ。
「つねにインパクトを残すプレーをしてかないとこういうレベルの高い舞台では生き残れないと思ってるんで、1試合1試合もっともっと賭ける思いっていうか、『失敗したら終わりだ』っていうくらいの思いでのぞんでいきたいと思ってます」
今季開幕時点で悲壮な覚悟を口にした坂元。そういった気持ちが全ての試合で色濃く感じられる。中学時代の挫折を糧に類まれな雑草魂でここまで這い上がってきた技巧派ドリブラーにはまだまだ伸びしろがあるはず。そういう意味でもここから先の動向が非常に楽しみだ。
「ロティーナサッカーの申し子」は今日も明日も切れ味鋭い局面打開で見る者を魅了していくに違いない。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
|
関連ニュース