いよいよW杯予選最終節がやって来た…/原ゆみこのマドリッド

2021.11.14 19:15 Sun
©︎RFEF
「今回は水曜試合が最後なのね」そんな風に私がホッとしていたのは土曜日、スペイン代表はもう翌日のスウェーデン戦でお開きとなることもあり、マドリッドのクラブから選手が行っている他の代表の日程をチェックしていた時のことでした。いやあ、9月10月の各国代表戦はとりわけ3試合開催となったW杯南米予選の最終戦が木曜になったため、参加した選手たちの帰りが遅くなり、リーガも翌週火曜にCLグループリーグを控えるチームの試合を延期。計4カードが未消化となったりしたんですが、今年最後の各国代表戦はようやく通常モードに復帰することに。

早期終了組のスペインにはコケ(アトレティコ)とカルバハル(レアル・マドリー)以外、マドリッド勢はいないものの、ヨーロッパの代表戦の最終日は火曜。フィンランド戦に挑むフランスからはグリーズマン(アトレティコ)、ベンゼマ(マドリー)が、トルコ戦があるモンテネグロからはサビッチ(アトレティコ)が、ウェールズvsベルギー戦では前者からベイル、後者からアザールと双方、これまであまりマドリーの力にはなれていない2人、更にGKクルトワ(マドリー)、カラスコ(アトレティコ)が、水曜にはクラブの練習に戻って来られるんですよ。
片や、南米の各国代表選手たちも2試合目のボリビア戦が火曜にあるウルグアイから、ルイス・スアレス、ヒメネス(アトレティコ)、アランバリ、ダミアン(ヘタフェ)が、水曜のアルゼンチンvsブラジル戦では前者からデ・パウル、コレア(アトレティコ)、後者からはクーニャ(アトレティコ)、1試合目のウルグアイ戦で累積警告となったカセミロを除いた、ビニシウス、ミリトンらのマドリー勢も木曜夜には到着できるはず。となれば、週末土曜のアトレティコvsオサスナ戦、日曜のヘタフェvsカディス戦、グラナダvsマドリー戦には何の問題もないかと。加えて、その頃には今週から、マハダオンダ(マドリッド近郊)やバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドで徐々にチーム練習に加わり始めたマルコス・ジョレンテやレマル、バルベルデやマリアーノも実戦復帰の用意が整いそうですしね。

どちらにしろ、paron(パロン/リーガの停止期間)直前、マドリーとの兄弟分ダービーで全治1カ月のケガを太ももに負ったファルカオはコロンビア代表にも行けず、リーガもしばらくお休み。9月に負傷して以来、とうとう今週木曜にはグラウンドでのトレーニングを始めたという久保建英選手はまだ来られないと思いますが、月曜にマジョルカをエスタディオ・バジェカスに迎える試合をラージョがエース不在で戦わないのは変わりませんしね。とりあえず、今のところはマドリッド勢の各国代表選手がケガをしたという報は入っていないんですが、12月19日の週末後に始まる待望のクリスマス休暇まであとひと踏ん張り。あまりケガ人が増えず、今年最後の連戦を越えられるといいんですが。

え、それより来年3月のrepesca(レペスカ/プレーオフ)に回るか、グループ1位をスウェーデンから奪還して、W杯出場権を年内にゲットするかが懸かっていたスペイン代表のギリシャ戦はどうだったのかって?いやあ、それがアテナのオリンピック・スタジアムでの開催だったため、またスタンドがbengala(ベンガラ/発煙筒)祭りになるんじゃないかと私も恐れていたんですけどね。蓋を開けてみれば、コロナ規制のため、当局が4万人に限定した観客どころか、噂によると、15ユーロ(約2000円)のチケットが高すぎるとかで、7000人しか、スタジアムには来ず。最近では珍しい程、淋しいガラガラ状態だったんですが、それもスペインにはありがたかったのかも。
おまけにその試合の前にはジョージアvsスウェーデン戦がすでに終わっていたんですが、予期せぬ波乱が起きていたんですよ。というのもイサク(レアル・ソシエダ)とイブラヒモビッチ(ミラン)のツートップで挑みながら、後半にクバラツヘリア(ルビン・カサン)に2ゴールを許し、スウェーデンが2-0で負けてしまったからで、これにはスペインの選手たちもビックリしたのでは?それと今回、負傷したアンス・ファティ(バルサ)の代わりに初招集となったRdTこと、ラウール・デ・トマス(エスパニョール)がルイス・エンリケ監督から先発指名。「No me esperaba ser titular/ノー・メ・エスペラバ・セル・ティトゥラル(スタメンに入るとは思ってなかった)」という当人のショック度のどちらが大きかったかはわかりませんが、試合は彼とモラタ(ユベントス)、サラビア(スポルティングCP)の前線でスタートします。

とはいえ、先制点のキッカケとなったのはセットプレーで、前半7分にマソウラス(オリンピアコス)のゴールがオフサイドで認められないドッキリがあった後の24分、スペインはCKでイニゴ・マルティネス(アスレティック)がヤヌリス(ノリッジ・シティ)に倒され、PKをゲット。これを「Ya habíamos hablado dentro que si había un penalti lo tiraba/ジャー・アビアモス・アブラードー・デントロ・ケ・シー・アビア・ウン・ペナルティ・ロ・ティラバ(もう内輪で話し合っていて、もしPKがあったら、ボクが蹴ることになっていた)」というサラビアが決め、スペインはリードを奪うことに。

いやあ、何せPKに関してはこのところ、ツイていないスペインで、セルヒオ・ラモス(PSG)が1試合で2回、昨夏のユーロ2020前、ブスケツ(バルサ)のコロナ陽性で親善試合ができなくなった際、U21メンバーでA代表を名乗ってプレーしたリトアニア戦ではアベル・ルイス(スポルティング・ブラガ)、そしてユーロでもジェラール・モレノ(ビジャレアル)、モラタと5回連続PKを失敗していましたからね。おまけにイタリアとのユーロ準決勝のPK戦でも最後はモラタが止められて、決勝行きを逃していたため、ちょっとドキドキしたんですが、この日は入ってくれて本当に良かったかと。

だってえ、後半11分にはサラビア、RdTがダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ロドリゴ・モレノ(リーズ)に交代。敵に顔をはたかれ、「No quería salir, estaba mareado, veía doble/ノー・ケリア・サリール、エスタバ・マレアードー、ベイア・ドブレ(物が二重に見えて、気持ち悪くなっていたのに出たがらなかった)」(ルイス・エンリケ監督)という、 17才ながら、最近、代表レギュラーに定着したようなガビ(バルサ)をブスケツに代えた20分にはモラタも下がり、フォルナルス(ウェストハム)投入と前線の3人を一新したにも関わらず、スペインは最後まで追加点を奪えなかったんですよ。0-1でも勝ち点3なのは同じですし、この日、勝たないと2位でプレーオフ参加の可能性もなくなるギリシャがシャカリキになって攻めてくるということもなかったため、別にいいんですが、そんな後半はちょっと単調だったかもしれませんね。

この結果、スペインはスウェーデンを抜いて、勝ち点差1でグループ首位に復帰したんですが、まだW杯出場は確定せず。というのも、この日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの予選最終節でスウェーデンとの直接対決が控えているからで、うーん、一応、引分けても1位のままなんですけどね。ギリシャ戦の翌日、アテナでセッションを行った後、夜には開催地のセビージャ(スペイン南部)に移動したチームは土曜の夕方にカルトゥーハで前日練習となりました。

ちなみにこちらは私も代表のオフィシャルツィッター(@SeFutbol)のライブストリーミングで、冒頭15分を見ていたんですが、先に練習したスウエーデン代表のアンデルソン監督が芝を守るため、ゴール前に日照灯が置かれてピッチの一部が使えなくなっているのに激怒。チームを置いてけぼりにして、ロッカールームに帰ってしまったというのはともかく、スペインも公開部分はほとんどロンド(輪の中の選手がボールを奪うゲーム)ばかりで、とても先発予想ができるようなものじゃないですしね。

よって今度はギリシャ戦で次戦出場停止となるイエローカードをもらうのを避けるため、ジョルディ・アルバ(バルサ)と共に控えに回ったブスケツがイニエスタ(ヴィッセル神戸)に1差をつけ、歴代単独4位となった代表戦出場試合数133を更新。奇しくも代表戦後にはバルサの監督として再会することになる、先輩チャビと並ぶ3位になれるのかはわかりませんが、実は彼、2009-10シーズンにはイブラヒモビッチともチームメートだったという経験が。

試合前の記者会見ではその点を訊かれ、「彼がまだサッカーを楽しめて、体とメンタルがそうさせてくれるならパーフェクトだよ。Jugar con 40 años no es fácil y él lo está haciendo/フガール・コン・クアレンタ・アーニョス・ノー・エス・ファシル・イ・エル・ロ・エスタ・アシエンドー(40才でプレーするのは簡単じゃないのに彼はやっている)」と言っていましたが、まあそういう当人ももう33才。今年の3月以来、35才のラモスがケガ続きで代表に呼ばれなくなってからは最年長者になっていたって、気づいていますか?

一方、ギリシャ戦の後にファンの後押しを頼んだのが効いたか、前日には5万7619枚のチケットが完売。カルトゥーハではキャパが40%ほどだったユーロ2020グループリーグ以上の応援が受けられることになったせいか、機嫌の良かったルイス・エンリケ監督は「El plan no ha cambiado nada/エル・プラン・ノー・ア・カンビアドー・ナーダ(プランは何も変わっていない)。11月は2試合共、勝たないといけないと考えてきて、それを続けるだけだ」と言っていましたが、まあ確かに。何せ、そのユーロ初戦はまさにスウェーデンとのスコアレスドローでスタート。その後もポーランドと1-1、ようやくスロバキアに0-5で勝って、グループ突破したという過去がありますからね。

更に9月のW杯予選アウェイ戦ではイサクとクラエソン(クラスノダール)のゴールで2-1とスウェーデンに負けているとなると、引分けでもOKだからなんて、油断したらヤケドする?まあ、その辺はルイス・エンリケ監督も選手たちに口を酸っぱくして言っていると思いますが、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で合宿が始まった当初はラジオのインタビューで、「Estar en el Mundial no es una obligación/エスタル・エン・エル・ムンディアル・ノー・エス・ウナ・オブリガシオン(W杯に出るのは義務じゃない)」と口を滑らせ、炎上したロドリ(マンチェスター・シティ)のようなうっかり者もいましたからね。

一応、アトレティコの先輩カンテラーノ(Bチーム出身の選手)として、コケなどが「Para nosotros es una responsabilidad estar en el Mundial/パラ・ノソトロス・エス・ウナ・レスポンサビリダッド・エスタル・エン・エル・ムンディアル(ボクらにはW杯に出場する責任がある)」とフォローしてあげていたんですが、とにかくここは必勝を目指すことが大事。下手してプレーオフなどに行ったら、今回は2チームと対決して勝ち抜くという難行になりますしね。それどころか、もしW杯に行けないようなことになったら、いえ、まだリーガの予定は出ていないんですが、2022年は大会開催の11月21日のしばらく前から、12月18日まで、スペイン人選手たちはバケーション?それも恐ろしいような気がするため、モラタでもサラビアでもダニ・オルモでもゴールを挙げて、スウェーデンに勝ってくれるといいのですが…。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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マドリッドのクラブサッカー最後の週末はお祝い三昧…/原ゆみこのマドリッド

「そうか、優勝だもんね」そんな風に私が早合点を後悔していたのは月曜日、お昼のニュースで2部のマドリッドの弟分、レガネスの選手たちがブタルケのピッチや彼らのお祝い事の定点、同市のエスパーニャ広場でトロフィーを誇らしげに掲げている映像を見た時のことでした。いやあ、日曜は私も彼らの1部昇格を見るため、エルチェ戦に足を運んだんですけどね。試合の方は前半早々から、ミゲール・デ・ラ・フエンテのゴールで先制したボルハ・ヒメネス監督のチームが、ロスタイムにもファン・クルスのシュートで2点目をゲット。相手が前節に昇格プレーオフ入りがなくなり、消化試合モードだったおかげもあって、2-0のまま、後半が終わる前から、ファンは4年ぶりの1部昇格祝いを満喫することに。 ただ、これは「Campeones, campeones/カンペオネス(チャンピオン)」と皆が歌っているのをレガネスの優勝と結び付けなかった私の浅はかさもあって、ええ、同時進行だった、勝ち点3差で直接昇格の2位を奪われる可能性が僅かにあった3位のエイバルのオビエド戦は時々、経過を伺っていたんですけどね。レガネスの勝利により、昇格条件だった勝ち点1奪取を満たしたため、他は気にしていなかったところ、何と前節、今季29節の間、首位をキープしていたレガネスを出し抜いて、一足先に1部復帰を決めたバジャドリーがテネリフェに負けていたんですよ。 そのおかげで最終節に再び首位に返り咲いた彼らは2部王者として、トロフィー授与されたんですが、そこまで頭が回らなかったのが運の尽き。後はもう、ファンとお祝いするだけだろうと、チームが場内一周を始めた時点でスタジアムを出ることに。いえ、午後6時から始まったTDP(スペイン国営放送のスポーツチャンネル)のDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝)祝勝行事追っかけ生中継を試合中もスマホで流しっぱなしにしていたため、レアル・マドリーがアルムデナ大聖堂、続いてアジュソ州知事がブタルケに駆けつける約束をキャンセルして、チームを迎えた州庁舎訪問とプエルタ・デル・ソル(マドリッドの中心にある広場)を埋め尽くすファンへのバルコニーからの挨拶。 更にシベレス噴水広場にある市庁舎訪問という、リーガ優勝時とほぼ同じ行程に例年通り、遅れが出ていたため、あと30分ぐらいはブタルケにいても、午後10時スタート予定だったサンティアゴ・ベルナベウでのフィエスタには間に合いそうだったんですけどね。それが、前日のCL決勝パブリックビューイングに行った時、普段のマッチデー以上の混雑に巻き込まれてしまってねえ。サンティアゴ・ベルナベウ駅で人を捌ききれず、メトロも1駅前のヌエボス・ミニステリオスから歩かされたため、ええ、だって、このカンカン照りの暑さの中、5、6時間もの間、何千人もののファンが選手たちを見ようと待機していたシベレスのステージでのお祝いの後、マドリーのオープンデッキバスがベルナベウに到着する時間に重なったら、大変じゃないですか。 それこそ、バスを走って追うようなファンが多数いるぐらいですから、フィエスタの始まる前、スタジアム周辺が到着を待つ群衆で身動きできなるのは火を見るよりも明らか。そこで早めにブタルケを切り上げ、セルカニアス(国鉄近郊路線)に乗ることにしたんですが、いやあ、今季をスタートした時はまったく、目標に入ってなかった1部再昇格を果たしたレガネスのはじけっぷりも半端ないよう。すでに日曜夜には選手たちが行っていたにも関わらず、月曜にはオープンデッキバスに乗っての市内パレード。その後、またエスパーニャ広場で、今度はステージを組んで、お祝いをしていましたが、更に水曜午後9時にはブタルケのピッチで選手たちを囲んで、軽食をつまむイベントを入場料65ユーロ(1万2000円)で開催。うーん、今は皆、1部に上がるにはあと3週間、プレーオフで戦わないといけないエイバル、エスパニョール、スポルティング、オビエドの4チームを尻目に、少しでも早く、バカンスに行きたいんじゃないですかね。 そんなことはともかく、先週末のビッグイベントだったCL決勝ドルトムント戦がどんなだったかもお話ししていかないと。7万5000人の満員御礼となったベルナベウのピッチは、突貫工事でテイラー・スウィフトのコンサート舞台を撤去し、中央に巨大スクリーンを設置。これは2014年のDecima(10回目のCL優勝)以来、必ず、翌日は優勝祝いにも使われるお便利設備なんですが、加えて、天井から吊り下がった360度大型スクリーンにもTV中継の映像だけでなく、時間や交代選手の名前が出たため、試合の見やすいことといったら、もう。 実況もしてくれる上に、マドリーの得点時など、普通の試合のように盛大なゴールコールで盛り上がることができたんですが、それは後半の話。そう、前半は、うーん、開始30秒でウェンブリーのピッチに3人も乱入者が現れて、2分近くもゲームが止まっていたのが影響したんですかね。前半23分にはフュルクルクのシュートがゴールポストを直撃し、オフサイドだったのにホッとさせられたり、アデイェミには2度も肝を冷やされる始末。更にはサビッツァーの強烈シュートを弾くなど、マドリッドから当日移動して、その日のベンチにいたインフル明けのルーニンの代わりに決勝の舞台に立った、GKクルトワの正当性を証明するシーンのオンパレードだったんですよ。 いやあ、これにはアンチェロッティ監督も「En la primera parte hemos sido un poco vagos/エン・ラ・プリメーラ・パルテ・エモス・シドー・ウン・ポコ・バゴス(前半のウチはちょっと怠け者だった)。ボールロストが多くて、相手のしたいようにされてしまった」と反省していたんですけどね。私もその光景には、ええ、準々決勝2ndレグではアトレティコがまさにこのドルトムントに4点も奪われ、逆転敗退していただけに、このままじゃ、絶対、ゴールを入れられる。いや、マドリーのことだから、却って、先制された方が根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神に火がついていいのかもとか、あれこれ考えさせられることに。 幸運にも0-0のまま、始まった後半もしばらく相手の優勢が続いたんですが、そこはCLの権化と言っていいマドリー。それはドルトムントがアデイェミから、2013年には同じウェンブリーでのCL決勝でクロースのいたバイエルンに負け、奇しくも同様に今季限りで引退するマルコ・ロイスを投入したすぐ後の29分のことでした。何と、クロースの蹴ったCKに身長173cmのカルバハルが189cmのフュルクルクより高く跳び、ヘッドで先制ゴールを挙げたから、それまで欲求不満の塊だったベルナベウのファンたちがどんなに沸いたことか。 いやあ、このゴールついて、「今季はCKの時に自分も上がるようになったんだけど、大事なのは決意を持って挑むことだ。Se me fue una arriba y la segunda la tenía que enchufar/セ・メ・フエ・ウナ・アリーバ・イ・ラ・セグンダ・ラ・テニア・ケ・エンチュファール(1つ目は上に行ってしまったから、2度目は入れないと)」と当人は言っていたんですけどね。本当にマドリーの怖いところは、後でアンチェロッティ監督も「Otra vez la tactica del muerto/(オトラ・ベス・ラ・タクティカ・デル・ムエルトー(また死人の振り作戦))」と茶化していたそうですが、どんな劣勢にある試合でも、一瞬で状況を引っくり返せる力があること。 実際、今季の決勝トーナメントでは16強対決ライプツィヒ戦、準々決勝マンチェスター・シティ戦、準決勝バイエルン戦でも、え?と思うような場面で得点していましたからね。それこそ、テルジッチ監督も「チャンスを沢山、作りながら、ゴールにできなかったのが肝だった」と言っていたんですが、まあ、それも慣れない決勝ではありうることかと。大体がして、あんなにポンポン、ゴールを決められたアトレティコが愚かだっただけで、しかも相手がCL絶対王者となれば…。 結局、マレン、ハラーとFWを総動員しながら、その1点を返せなかったドルトムントは総攻撃態勢に入っていた38分、ベリンガムのラストパスからビニシウスに2点目を奪われて、最後は0-2で敗北。マドリーの優勝が決まった途端、ベルナベウには「We are the Champions」が鳴り響き、表彰式を待つ間、場内はカンペオネスやマドリーのクラブ歌などを延々と合唱することに。 そしていよいよ、「La voy a levantar lo más alto que pueda, es la más especial como capitán/ラ・ボイ・ア・レバンタール・ロ・マス・アルトー・エ・プエダ、エス・ラ・マス・エスペシアル・コモ・カピタン(できる限り、高く上げるよ。キャプテンとして、最高のCL優勝だ)」というナチョがチームメートの待つ壇上でトロフィーを掲げた瞬間、巨大スクリーンのボックスから紙吹雪が飛び出し、レーザー光線ショーも始まるといった具合で、もうそれだけで、翌日の祝賀イベントのバージョンアップ予告には十分だった? それにしたって凄いのはもちろん、これでマドリーはCL優勝回数ダントツの15回に到達、しかもうち6回はここ10年で達成というのもそうなんですが、指揮官として、5回目のCL優勝となったアンチェロッティ監督の選手たちへの信頼ぶり。ええ、「Estábamos tranquilos pese a todo/エスタバモス・トランキーロス・ペセ・ア・トードー(何があっても私たちは落ち着いていた)。ちょっと変えるだけで良かったよ。ドルトムントはウチを生かしておいてくれたし」と、ええ、彼もCLマッチでは幾度も土壇場で奇跡が起きるのを見てきましたからね。 ナチョ、カルバハル、モドリッチと共にCL優勝6回となり、マドリーのレジェンド、ヘントに並んだクロースなども「La primera parte no ha salido bien pero da igual, este equipo siempre sigue/ラ・プリメーラ・パルテ・ノー・ア・サリードー・ビエン・ペロ・ダ・イグアル、エステ・エキポ・シエンプレ・シゲ(前半は上手くいかなかったけど、構わない。このチームは常に進み続ける)」と言っていましたが、ホント、マドリーのCL神話は度し難い。ウェンブリーのピッチで思う存分、お祝いをしたチームは翌日早朝にマドリッドに帰還。そして翌日も6時間以上、マラソン祝賀行事に取り組むだけの体力が選手たちに残っていたんですが…。 だってえ、シベレスからオープンデッキバスがベルナベウに着いたのは午後10時45分近くだったんですよ。ピッチの巨大スクリーンがイベントスタートを告げる1回目から15回目のハイライトを映し始めたのが11時過ぎで、いやもう、これはそのうち、30回とか、40回になったら、できなくなるんでしょうけどね。アンチェロッティ監督を筆頭に選手が1人ひとり、紹介されながら、登場したのは11時10分頃からで、巨大スクリーンのボックス屋上のステージに全員が揃ったのが40分頃。ナチョが再び、トロフィーを掲げると、屋内で花火が上がったのにはビックリさせられましたが、これは前回まで、場外からの打ち上げ花火の大爆音が怖くて仕方なかった私には嬉しい変更だったかと。 まあ、さすがコンサート会場機能を強化すべく、大改装を行ったおかげで、またしても満員となった場内を彩る光のショーや音響など、見事なものではありましたけどね。マイクを握ったモドリッチが「Nos vemos la temporada que viene/ノス・ベモス・ラ・テンポラーダ・ケ・ビエネ(来季にまた会おう)」と言ったため、契約延長が確実なのもわかりましたし、実はいつの間にか、ベリンガムのスペイン語力もかなりアップしていたよう。「Como no te voy a querer/コモ・ノー・テ・ボイ・ア・ケレール(どうして君を好きにならずにいられようか)」の定番応援歌を歌い出して、驚かせてくれましたが、トロフィーを持っての場内一周が終わり、ピッチに選手たちの家族が登場。キッズパークと化して、ようやくお開きとなったのは日付の変わった0時15分過ぎでしたっけ。 まあ、こんな感じのベルナベウでの2夜だったんですが、マドリーファンのための今季はこれで店仕舞いとはいえ、さすがにエリート揃いのチームだけあって、このままバケーション入りできる選手は少数派。ええ、月曜夕方に入団が公式発表されたエムバペ(PSGと契約終了)やエンドリッキ(パルメイラスから移籍)らを含め、18人もがユーロ、コパ・アメリカに出場する各国代表のお勤めに出ることに。折しもCL決勝の日にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で合宿を始めたスペイン代表にはホセル、ナチョ、カルバハルの3人が招集されているんですが、こちらは木曜からの合流が予定されています。 実際のところ、スペインの合宿開始は遅い方で、ユーロのグループリーグで当たるクロアチア、イタリア、アルバニアはとっくに練習を始めているみたいですけどね。ただ、私もCL決勝のせいで、土曜の公開セッションに行けずに生配信で我慢するしかなかったため、まだあまり、今回の代表の情報を仕入れていないんですが、ちなみに初日は29人の招集選手中、マドリー勢、サルジアラビア杯決勝のせいでまだ来ていないラポール(アル・ナスル)、自身の結婚式と被ったミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、兄イニャキの結婚式があったニコ・ウィリアムス(アスレティック)らを除く、23人が参加。45分程の練習の後、彼らは施設のスタンドを埋めたファンのサインやセルフィーのリクエストにせっせと応えることに。 早くも水曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からはバダホス(スペイン南部)で強化親善試合のアンドラ戦も控えているため、早いところ、私もモードをスペイン代表に切り替えないといけないんですが…とりあえず、最初の焦点は最初の招集リストから、落ちる3人がどの選手になるかという辺りでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.06.04 20:00 Tue

大詰めがやって来た…/原ゆみこのマドリッド

「試合を皆で一緒に見るのかなあ」そんな風に私が気にしていたのは金曜日、いよいよCL決勝が翌日に迫った時のことでした。いやあ、実は同じ土曜午後1時にはスペイン代表がユーロに向けた合宿をラス・ロサス(スペイン近郊)のサッカー協会本部でスタート。もちろん、ウェンブリーでの決勝に挑む、カルバハル、ナチョ、ホセルの3人はサウジアラビア杯決勝のあるラポール(アル・ナスル)共々、遅れて合流するんですけどね。デ・ラ・フエンテ監督に選ばれた残りの25人は午後7時に今回、唯一の公開練習を行って、夜は施設内にある宿泊所で過ごすことに。 となると当然、午後9時(日本時間翌午前4時)からのレアル・マドリーvsドルトムント戦はディナーを食べながら、食堂のTVで観戦という流れになるんじゃないかと思うんですが、ええ、中には今季、まさにその2チームに負けて、CL決勝進出の夢が断たれた選手もいない訳ではなし。そう、マドリーには16強対決でダニ・オルモ(ライプツィヒ)が、準々決勝でロドリ(マンチェスター・シティ)が負け、ドルトムントにも準決勝でファビアン・ルイス(PSG)が涙を呑むことに。とりわけその前、準々決勝2ndレグ序盤に1対1の絶好機に外し、そのトラウマから立ち直れなかったモラタ(アトレティコ)など、あの黄色のユニとGKコベルを見て、再び古傷が開いてしまうのでは? いやまあ、彼が来季もアトレティコでプレーするかは毎年恒例ながら、疑問符がついているため、そこはいいんですけどね。問題はシーズン後半、当人が大殺界に見舞われたことで、1-4と惨敗した37節のオサスナ戦でのゴールで何とか、リーガ15得点となり、3月からヒザの靭帯断裂で休場しているヘタフェのボルハ・マジョラルとサラ(スペイン人得点王)を分け合ったものの、最終節にも代表チームメートのGKレミロ(レアル・ソシエダ)の前で1対1に失敗。それでもデ・ラ・フエンテ監督の厚い信頼は揺るがず、6月15日のクロアチア戦から始まるユーロでもモラタはキャプテン、それどころか、エースの扱いとなれば、とにかくゴールを取り戻してもらわないことには、スペインが困ってしまうんですよ。 そこへ滑り込み招集となったジョレンテ(アトレティコ)共々、自分たちがコロッと逆転敗退を喰らった相手に、古巣のマドリーが悠々、勝利する姿など見たら、またコンプレックスを抱いてしまうんじゃないかと。え、ホセルが2得点した準決勝バイエルン戦2ndレグのように、決勝でもゴールを挙げれば、デ・ラ・フエンテ監督も考えるんじゃないかって?うーん、そうかもしれませんが、彼はユーロ前に組まれている強化親善試合、来週水曜のアンドラ戦にはおそらく間に合わないでしょうからね。 2戦目となる6月8日の北アイルランド戦でもゴール運が続くようでしたら、ユーロ初戦のスタメンもあるかもですが、はあ。他のFWはオジャルサバル(レアル・ソシエダ)と、チームを29人から26人に絞る時に落とされそうなアジョセ(ベティス)だけとなれば、最後はやっぱり、ジャマル(バルサ)やニコ・ウィリアムス(アスレティック)ら、若輩たちにゴールを頼ることになりそうですね。 まあ、そんなことはともかく、リーガ1部が閉幕し、他のクラブがバケーションに入る中、CL決勝に向けて、黙々と練習を続けていたマドリーの様子をお伝えしていかないと。彼らが恒例のメディアデーを開いたのは月曜のことで、ええ、まさにスペイン代表の招集リスト発表と時間が被っていたため、私もバルデベバス(バラハス空港の近く)のマドリー練習場で公開セッション中、スマホでライブ配信を見ることになったんですけどね。とにかくもう、ここ10年で6回目の決勝メディアデーともなると、ちょっとマンネリ感も出て来てしまってねえ。 そのせいか、朝起きる時間を間違えて、最寄りのメトロ駅、フェリア・デ・マドリッドに着いた時にはすでにアンチェロッティ監督の記者会見開始時刻に。仕方なく、徒歩30分をタクシー5.60ユーロ(約1000円)に代えたんですが、3月にバルデベバスにブラジル代表の練習見学に行った時とは違い、ええ、あの時はいつものゲートではなく、現着してから、反対側のゲートに行かされて、1時間近く歩く破目になりましたからね。ちゃんとその日は入口がエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)のメインゲートとプレス用のメールに明示され、内部はミニバスで送ってもらえたため、記者会見にも10分程、遅れただけで間に合ったのは助かったかと。 ちなみにマドリーで3度目のCL決勝に挑むアンチェロッティ監督は、「Ellos en transiciones son muy buenos. Su bloque defensivo es fuerte. Va a ser un partido competido/エジョス・エン・トランシシオネス・ソン・ムイ・ブエノス。ス・ブロケ・デフェンシボ・エス・フエルテ。バ・ア・セル・ウン・パルティードー・コンペティードー(彼らはカウンターがとても上手い。守備のブロックも堅固だ。競った試合になるだろう)」とドルトムントにリスペクトを示していたんですが、とはいえ、マドリーの大会と言っても過言でないのがCLですからね。世間も彼らの優勝をまったく疑っていないんですが、1981年のリバプールとの決勝から続く8連勝が今更、途切れることなんてある? 記者会見が終わると、チーム練習が始まって、私も久々にアトレティコ以外のセッションをテラスから見たんですが、マドリーのエクササイブメニューには近年、まったく変化がなし。ええ、軽いアップから始まって、2組でロンド(輪の中に選手が入ってボールを奪うゲーム)。15分公開の時は大抵、ここで見学終了となるんですが、この日は小さい区画で5対5のボールの奪い合い、更にピッチの3/4を使ってのpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)まで、見せてもらえたのはラッキーだったかと。 その後は一旦、建物の外に出て、ミックスゾーンの設けられている、合宿所のある区画に移動。要は練習見学をしたテラスの奥の部分に行かされて、遠くでまだ続いていたセッションがいつ終わるか、いつ終わるかと待つことに。それでも30分ぐらいすると、選手がポツポツと現れだして、ええ、リュディガー、カマビンガ、ベリンガム、カルバハル、ホセル、ルーカス・バスケスらの話を聞くことができたんですけどね。 何せ、昨今はサンティアゴ・ベルナベウでの試合の後、ミックスゾーンに出る選手はたった1人だけ。1人も出ない日もあるため、「Imprimimos un miedo, un terror, a los rivales cuando suena este himno tremendo/インプリミモス・ウン・ミエードー、ウン・テロール、ア・ロス・リバレス・クアンドー・スエナ・エステ・イムノー・トレメンドー(CLのアンセムが響き渡る時、ボクらは相手に怯え、恐怖を植え付ける)」(カルバハル)なんてことを聞けたのは、それはそれで貴重な機会ではありましたっけ。 その後、これも恒例のバスケットボールチームが練習する体育館まで行って、軽食を頂いてから、いやあ、ツイていましたね。こちらの建物から、セルカニアス(国鉄近郊路線)のバルデベバス駅に近いゲートを使えたため、この日はほとんど歩くことなしに済んだ私だったんですが、チームはそれから、火水木と練習。2年前のパリでの決勝同様、木曜夕方にはロンドンに飛び、ウェンブリーから30km離れたワトフォードにあるザ・グローブホテルに投宿すると、金曜にはアンチェロッティ監督とナチョ、モドリッチが前日会見、そしてスタジアム練習と、全ての様子をレアル・マドリーTVとTVE(スペイン国営放送)が生中継してくれたんですが…。 いやあ、世の中にはホントに間の悪い選手もいるもんですね。それはGKルーニンで、ええ、メディアデーの日にアンチェロッティ監督が風邪でお休みしていると言っていたのが、実はB型インフルエンザだったんですよ。おかげで他の選手への感染予防のため、熱が下がっても練習に戻れず、当人は土曜の試合当日1人、ロンドンに行くことに。もう、こうなると決勝のGKはリーガ優勝まで、CLも準決勝まで責務をまっとうした彼か、5月になって、ヒザの靭帯断裂から復帰したクルトワかなんていう議論もすっ飛んじゃうってもんで、アンチェロッティ監督もとうとう、「Lunin va al banquillo, jugará Courtois/ルーニン・バ・アル・バンキージョ、フガラ・クルトワ(ルーニンはベンチ、クルトワがプレーする)」と前日会見で予告することに。 まあ、クルトワ当人も「Me siento al 100% y listo/メ・シエントー・アル・シエン・ポル・シエン・イ・リスト(自分は100%で準備できている)」と言っていましたしね。リーガの終盤、カディス、グラナダ、アラベス、ベティス戦と4試合に出て、うち2つは降格したチームとはいえ、無失点で抑えているため、あまり心配することはないのでは?大体がして、ザルザルのアトレティコと違い、マドリーの守備は堅いですし、リーガトロフィーに続き、CLトロフィーも掲げて、再び、シベレス噴水広場の女神像に旗とマフラーを結んでやろうと、キャプテンのナチョも張り切っていますからね。フュルクルクやサンチョ、サビッツァー、ブラントらに隙を見せることはないかと思いますが、こればっかりはねえ。 ちなみに金曜にロンドン入りしたドルトムントはマドリーより早く、2週間前にはブンデスリーガが終わり、逆に準備期間が長すぎるのが気になるところですが、実はウェンブリーでのCL決勝はマドリーが未経験なのに比べ、彼らの方は2度目。そう、2013年、それこそ、念願だったDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)をマドリーが達成する前年、バイエルンとのドイツ勢決勝となり、1-2で負けてしまったんですが、それでも1996年にはユベントスに勝って、優勝経験があるというのはアトレティコなどからしたら、羨ましい限りかと。 とはいえ、前回の決勝の生き残りもすでにマルコ・ロイスとフンメルスだけとなり、いえ、テルジッチ監督は「もしマドリーと10回戦うなら、難しいだろうが、一発勝負なら、何でも可能」と楽観的発言をしていたんですけどね。両チームに割り振られているチケットは2万5000枚というのに、ドルトムントからは4万人ものファンが駆けつけるみたいですし、先乗りしたマドリーファンも多く、すでに金曜からお祭り状態になっているロンドン市内の映像を見ると、私も行ってみたくなったりするものの…結果は木曜に終わったテイラー・スウィフトのメガコンサートの舞台を突貫工事で片付けて、大型スクリーンをピッチに並べるベルナベウでのパブリックビューイングで見届けることにします。 その一方で今週は弟分のラージョにもイベントがあって、それは5月29日に迎えたクラブ創設100周年を記念するチャリティマッチ。いわば、マドリーのコラソンマッチみたいなもので、ラージョのOBのレジェンドチームと他のクラブのOBのオールスターチームが対戦したんですが、これが結構、面白くてねえ。おそらくそれは、ベルナベウでは懐かしいギャラクティコ時代の選手、ジダン、フィーゴ、ラウール、カシージャスらがプレーしても米粒大にしか見えないのに対して、エスタディオ・バジェカスはピッチが近いのが売り。おかげでRMカスティージャのRFEF1部(実質3部)のシーズンが終わったラウール監督、ビジャ、ノリト、アドリアン・ロペス、ハビ・マルティネス、ファンフランらのプレーを堪能できることに。 ラージョの方はトラシュオラ、アマジャ、ピティ、ラウール・タムード、ハビ・フエゴ、デリバシッチ、マリオ・スアレスと知っている顔以外のOBは私もさっぱりだったんですが、今季はジローナを率いて3位という見事な成績を残したミチェル監督、更にパコ・ヘメス監督なども出場。うーん、現ラージョ指揮官のイニゴ・ペレス監督や昨季まで3年間務めたイラオラ監督がオールスターチームで、上が水色、下が緑、ピンクの斜めラインという、何とも言えないユニでプレーしていたのはちょっと、笑えましたけどね。 試合の方は前半早々、アルメンテイロスが66才のGKパコ・ブジョに当たって戻ってきたボールを空のゴールに決めて、ラージョが先制した後、35分には未だにゴールへのハングリー精神を忘れていなかったビジャのvaselina(バセリーガ/ループシュート)で同点に。その3分後には再び、アルメンテイロスがブジョのミスを利用して、勝ち越しゴールを挙げたものの、これもビジャのアシストからデ・ラ・レッドが決めて、前半は2-2で終わります。ガラリと選手が代わった後半終盤にはポルティージョのPKとファンフランにゴールを奪われ、ラージョは2-4で負けてしまったんですが…100周年祝いなんですから、ファンが試合後、「Vida de pirate(ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を嬉々として、唱和していたのも当然だった? そんな感じで今週はマドリッドでもまだサッカーを楽しめたんですが、ええ、この日曜のリーガ2部最終節でもあと勝ち点1で2部の弟分レガネスの1部復帰が叶うエルチェ戦がブタルケでありますからね。マドリーのCL決勝同様、こちらも幸せな結末で終わってくれるといいんですが、もうその後は完全にクラブサッカーはシーズンオフ。ユーロやコパ・アメリカに駆り出される選手たちはまだお勤めがあるものの、今季お疲れだったマドリッドの各チームにはしっかり休養を取ってもらいたいものです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.06.01 21:00 Sat

最終節は結果よりセレモニーを堪能…/原ゆみこのマドリッド

「リーガが終わったのに週末の予定に悩むなんて」そんな風に私が弱り果てていたのは月曜日、レアル・マドリー恒例のCL決勝前メディアデーの開催されたバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で公開セッションを眺めながら、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のスペイン・サッカー協会本部で行われていたスペイン代表ユーロ出場に向けた、デ・ラ・フエンテ監督のプレ招集リスト発表の配信ライブを見ていた時のことでした。いやあ、大体がして、この2つのビッグイベントを同日、同時間帯にやられるだけでも、ええ、私は1人しかいませんからね。片方を捨てないといけなかったというのに、これでもかとばかりに代表公開練習が集合日の夕方、6月1日午後7時なんですよ。 そう、ご存知、まさにその土曜の午後9時から、マドリーとドルトムントのCL決勝がキックオフとなるからで、バスで市内に戻らないといけないため、代表の練習見学をした後、サンティアゴ・ベルナベウでのパブリックビューイングに間に合わせるのはかなり厳しいことに。何せ、昨今は代表も非公開練習が多く、その日以外、モラタのアトレティコ勢1人参加を覆して、予想外の再招集。W杯カタール大会以来となるジョレンテを含む、ユーロ前合宿の29選手を見る機会は他にないかもしれませんしね。うち3人は大会前の親善2試合が終わった後、招集解除となるため、尚更、見ておきたい気がしなくもないんですが、果たしてどうしたものやら。 そして更に日曜も困ったことになりそうで、何せ、1981年にリバプールに負けたのを最後にマドリーは8回連続でCL決勝に勝利。確率的な問題で、決勝翌日の夕方はシベレス噴水広場でのDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)のお祝い、続いてベルナベウでのメガフィエスタを見に行くつもりでいたんですが、先週末で決まると思っていたレガネスの1部昇格が先延ばしになってしまってねえ。そう、日曜の2部41節統合時間帯の試合、リードしていた彼らは後半3分にラシン・フェロルにPKを決められて、2-2の引分けで終了。 メディアデーで会った顔馴染みのテレマドリッド(ローカルTV局)のレポーターなど、せっかく彼らのお祝いの定点、レガネスにあるプラサ・エスパーニャ噴水広場で待機していたのが、ムダになったと嘆いていたのはともかく、逆に土壇場にシラがPKを挙げたバジャドリーは3-2と勝利。ビジャレアルBをRFEF1部(実質3部)に追いやると同時に、1部昇格一番乗りされてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。おかげで今週末の日曜、再び統合時間帯となった午後6時30分から、レガネスはあと勝ち点1を求めて、ブタルケに前節で完全に昇格プレーオフ圏入りが消えたエルチェを迎えることになったんですが、4年越しの再昇格祝い、私だって、見られるものなら、見たいですって。 その一方でレバンテと2-2で引き分けたもう1つの2部の弟分、アルコルコンの最速RFEF1部Uターンが決まってしまったのは嘆かわしいんですが、とりあえず、今はすでに何も懸かっているものがなかった先週末のリーガ1部最終節がどうだったか、お話ししていくことにすると。先陣を切ったのはアトレティコだったんですが、彼らだけがアウェイゲームでねえ。今季は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で何度も苦い思いをしていただけに、レアル・ソシエダとの一戦をあまり期待はせずに見ていたんですが、これまた意外だったんですよ。 そう、1月にアントワープから来て、ほとんど出場時間をもらえてなかった19才のフェアメーレンがご褒美スタメン入りとなったこの試合、前半9分にはジョレンテの右側からのラストパスにゴール前に突っ込んだグリーズマンは届かなかったものの、左から来たサムエル・リノがvalea(ボレア/ボレーシュート)で決めて先制点をゲット。ハーフタイム入り直前にはセットプレーから、ジョレンテのシュートを、序盤のゴールでサモラ(リーガで失点率が一番に低いGKに与えられる賞)獲得の可能性がなくなったGKレミロにparadon(パラドン/スパーセーブ)されるなんてこともあったんですが、何よりだったのはお馴染みのザル守備が、今更ながら、改善されていたことでしょうか。 実際、メトロポリターノで今季最後となったオサスナ戦では4点も取られ、ファンからpito(ピト/ブーイング)が飛ぶやら、呆れて早帰りする客が多いやらで、ガラガラのスタンドを前にアトレティコはお別れの場内一周をする羽目に。それがサビッチ、パウリスタに代わり、ビッツェル、ヒメネスがCBに入ったレアル・アレナでは、いえ、私は次の時間帯のラージョの試合を見るため、後半が始まる前にバルを退散したんですけどね。1点差でずっと持ちこたえ、あまつさえ、後半ロスタイムにはモラタのアシストでレイニウドが2点目を挙げ、0-2で勝ってしまったから、ビックリしたの何のって。 いやあ、アリツ・エルストンドなどによると、「El Atlético nos tenía muy estudiados/エル・アトレティコ・ノス・テニア・ムイ・エストゥデイアードー(アトレティコはボクらをとても良く研究していた)」というんですけどね。それこそ、4位が確定する前から、もしくはCL準々決勝ドルトムント戦2ndレグやコパ・デル・レイ準決勝アスレティック戦前から、そういう姿勢で挑んでいてくれれば、ファンもこれ程、失望することはなかった? まさに覆水盆に返らずです。実際、この日はイマノル監督も「Es una temporada histórica/エス・ウナ・テンポラーダ・イストリカ(歴史的なシーズンだった)。5年連続でヨーロッパの大会出場を果たしただけでなく、CLでも素晴らしかったし(16強対決でPSGに敗退)、コパも決勝進出直前(準決勝でマジョルカに敗退)まで行ったのだから」と言っていたように、むしろ、6位で終わったソシエダが今季はもうやりきった感に満ちていたおかげもあったかと。 まあ、それがこの12年間でシメオネ監督が築いたCL出場皆勤のチームの期待値との差でもあるんですが、実はアトレティコがリーガ最後の6試合で5勝するというのはクラブ史で初めてのことなのだとか。あの悲惨なオサスナ戦でシーズン終盤の印象が最悪になってしまったとはいえ、シメオネ監督も今季最後の記者会見で、この夏は大幅な選手入れ替えを匂わせていましたしね。今はただ、6月はグリーズマン(フランス)、オブラク(スロベニア)、デパイ(オランダ)、デ・パウル、モリーナ、コレア(アルゼンチン)、そして代表引退を撤回したらしいビッツェル(ベルギー)らのユーロやコパ・アメリカでの活躍を楽しむことができたらと思いますが…ソシエダ戦でもレミロとの1対1でvaselina(バセリーナ/ループシュート)を失敗していたモラタはスペイン代表で再生してくれるんですかね。 そして前節、カディスが降格3席目を占めてくれたおかげで残留が決まったラージョはエスタディオ・バジェカスにアスレティックを迎えたんですが、これがもう、残留祝いに加え、クラブ創設100周年祝賀行事が始まって、キックオフ1時間前から、ファンたちが色々、演出をしていたよう。丁度、私が着いた時には全てのスタンドが大幕で覆われており、ピッチが全然、見えず、困惑したものでしたが、選手入場の際も全面モザイクが展開。いつにも増して、応援の歌声にも力が入っていたんですが、試合の方はシーズン通じてのゴール日照りに祟られることに。 ええ、これがバジェカスで最後の試合となるファルカオをスタメンにして、得点を狙いにいったラージョだったんですけどね。いくらアスレティックがGKウナイ・シモンのサモラ確定に全精力を注ぎ、前半から守り固めに入っていたとて、とにかくシュートが入らなくではどうしようもありません。後半15分には、失点率計算条件の60分をクリーンシートで終え、翌日のセビージャ戦でバルサのテア・シュテーゲンが追いつけなくなったため、ウナイ・シモンはアギレサバラと交代。1970年のイリバル以来、初めてアスレティックでサモラを獲得したGKになったのを、ラージョファンまで、拍手で称えているのを見た後、またしても私はタイムアップに。次のマドリー戦に向かうため、スタジアムを出たところ…まさか、同行してくれた顔見知りのイギリス人記者とタクシーを探している間にニコ・ウィリアムスにゴールを入れられてしまうとは! それが起こったのは22分、ベレンゲルから折り返しのパスをもらった彼がその日、ディミトリエフスキに代わって入ったGKカルデナスを破ったんですが、何せ、兄のイニャキは先週、2年前のバケーション中にガラス瓶を踏み、その時以来、足の裏に埋まっていた2cmもの欠片を除去する手術をしたばかり。この試合には来てなかったにも関わらず、立派に弟がゴールゲッターの役目を果たしてくれるとは、確かにスペイン代表のデ・ラ・フエンテ監督には朗報でしたけどね。RdT(ラウール・デ・トマス)が入ろうが、ベベが入ろうが、最後までこの1点を返せなかったラージョは最終節もホームで勝利を飾ることはできませんでしたっけ。 とはいえ、その日は0-1の敗戦でも試合後、契約満了でバレンシアに移籍するらしいディミトリエフスキを胴上げするなど、選手たちもファンも負けたにも関わらず、最後は「Vida de pirate(ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って、盛大に残留をお祝い。その様子はすでにベルナベウのスタンドに到着していた午後8時半頃、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で知ることができたんですが、はあ。結局、日曜試合が終わった後には降格圏ギリギリの17位になってしまったラージョはこの水曜午後7時から、バジェカスで100周年記念試合を実施。ジローナに今季3位でCL初出場をもたらしたミチェル監督を始め、OBのレジェンドチームとダビド・ビジャ、ホアキンら、他チームの引退選手のオールスターチームと対戦する、その時ぐらいは沢山、ファンにゴールを見せてあげてくださいね。 そして土曜の最後の時間帯でマドリーvsベティス戦となったんですが、こちらもスコアレスドローだった内容より、メインイベントは今週、現役引退を発表したクロースへのお別れセレモニーの方だったかと。ええ、まずは選手入場の時にチームメート全員が背番号8のユニを着て、ベティスの選手共々、花道を作って当人を迎えたのから始まって、後半40分に彼がFKをGKビエイテスにそらされた後、セバージョスと交代する時もピッチにいる全員と抱擁を交わして、スタンドは総立ちで感謝の拍手。 自慢の360度大型スクリーンも延々、ベンチで待っていた奥さんや子供たちを抱きしめる彼の姿を映していましたしね。この時ばかりは普段は冷静なクロースも「He estado fuerte hasta que he visto a mis niños, eso me ha matado/エ・エスタード・フエルテ・アスタ・ケ・エ・ビストー・ア・ミス・ニーニョス、エソ・メ・ア・マタードー(子供たちを見るまで、しっかり気持ちを保てたんだけど、その姿にやられた)」と思わず、涙してしまったそう。まあ、こんなゆとり展開はそれこそ、ベティスも7位がすでに確定。前半にはGKクルトワのFKクリアミスに乗じて、カルドーソが決めたゴールがマルク・ロカのオフサイドで認められなかったり、後半もアジョセのゴールがウィリアム・ホセのオフサイドでスコアに上がらずともカリカリする必要がなかったおかげですが、お別れセレモニーは試合が0-0で終わった後も続くことに。 そう、チームメートによる胴上げや記念写真撮影があった後、更には子供たちを連れたクロースが先頭となり、感動に浸る場内一周となったんですが、こんな経験は彼だって、一生に一度のことですからね。この10年間の貢献がそれに十分、値するものだったということは、大勢のマドリーファンが席に残って、最後の勇姿を目に焼き付けようとしていたのからも感じとれましたが、早くも大変なのは、クロースのいなくなった後のチーム編成を効かれていたアンチェロッティ監督。 とりあえずは、「Podemos pensar que puede ser un juego más vertical/ポデモス・オンサール・ケ・プエデ・セル・ウン・フエゴ・マス・ベルティカル(もっと縦のプレーを考えることができる)。よりエネルギーある選手たちで、少しプレーのテンポを落としてね」と答えていましたが、大丈夫。CL決勝ではまだ、最高のレベルで引退することにした34才を当てにできますって。 そして翌日曜はコリセウムに向かった私だったんですが、実はこちらのマジョルカ戦も元々は6年間、ヘタフェに尽くして、今季限りで退団するマタ(契約終了)とマクシモビッチ(パナシナイコスに移籍)へのお別れセレモニーがメインだったんですが、試合中に水を差すようなアクシデントが起きてねえ。というのも、後半3分にはガストンのゴールで先制した彼らだったものの、27分にGKダビド・ソリアがラリンと正面衝突して、昏倒してしまったから、さあ大変!ピッチに救急車が入り、一時はどうなるかと心配されたんですが、幸い脳震盪から覚めた当人が歩いてピッチを出ることができたのは良かったかと。 ただ、その様子を間近で見たせいで、「泣いている選手もいて、皆怯えていた」(ボルダラス監督)というヘタフェはその後、まったく試合に集中することができず。GKをフサトに代え、12分後にプレー再開となったものの、45分にはCKから、ライジョ、ムリキとヘッドで繋がれて同点にされると、ロスタイムにはマッフェオのゴールで1-2と、マジョルカを離れることになったアギーレ監督の最終戦に花を添える逆転勝利を贈ってしまうことに。 いえまあ、こちらは随分前に残留確定していましたし、順位も12位から動きませんでしたからね。試合後、チームメート総出で花道を作って、マタとマクシモビッチを迎え、その奥さん、お子さん共々、場内一周。ベルナベウ程、ファンは残っていなかったとはいえ、応援団のカンティコを選手たちが並んで聞いているシーンも含めて、ヘタフェでは滅多に見られない、立派なお別れセレモニーをしてもらえた2人は本当に幸せ者だったかと。 惜しむらくは「Mason quedate/メイソン・ケダテ(メイソン、残って)」と一際、大きなボリュームのカンティコを歌われていたグリーンウッドがレンタル元のマンチェスター・ユナイテッドに戻ることはないものの、来季は別のチームに行ってしまうらしいことですが、まあ、こればっかりはねえ。その場には3月にヒザを靭帯断裂したボルハ・マジョラルの姿もあり、彼は3カ月間、11試合も欠場したにも関わらず、それまでの15得点にモラタに並ばれただけで、無事にサラ(スペイン人の得点王)を獲得。年内復帰を目指して、リハビリに励むモチベーションにもなりそうですしね。長かったシーズンの終わり、今はどの選手もバケーションを満喫してくれればいいんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.28 22:00 Tue

お別れの季節がやって来た…/原ゆみこのマドリッド

「ホントに解任されちゃったんだ」そんな風に私が驚いていたのは金曜日、お昼過ぎにチャビ監督の来季続投がないことを、バルサが公式に発表したのを知った時のことでした。いやあ、彼に関しては昨年中に契約を1年延長しながら、1月末のビジャレアル戦にホームで3-5と赤っ恥の逆転負け。その直後、当人が今季限りでの退団を宣言したのが功を奏してか、チームは調子を取り戻したかに見えたものの、4月半ばにはCL準々決勝PSG2ndレグで逆転敗退、続けてクラシコ(伝統の一戦)にも負けて、リーガ優勝の目がなくなることに。それが、どういう心境の変化か、チャビ監督が翻意して、来季も続投することになったという経緯があったんですけどね。 これだけでもお騒がせなクラブという印象を持ったファンも多かったんじゃないかと思いますが、うーん、口は禍の下とはまさにこのこと。5月16日のアルメリア戦前の記者会見でチャビ監督が、クラブの懐具合が厳しいせいで、レアル・マドリーやヨーロッパの強豪と競うのは難しいと話したのがラポルタ会長の逆鱗に触れちゃったんですよ。すぐさま、後任を探し始めたクラブは、この金曜にバイエルンでsextete(セクステテ/7冠優勝のこと)を達成し、ドイツ代表監督も務めたハンス・フリック氏と契約に合意。その途端、チャビ監督はお払い箱にされてしまったんですが、やっぱりスペイン2巨頭はプライドも高いよう。 だってえ、それでもバルサは前節ラージョに勝って、リーガ2位を確定させ、少なくとも来季のスペイン・スーパーカップ出場権獲得という、次善の目標は果たしているんですよ。その一方で前節はクラブの至上命題である4位がすでに確定したことに胡坐をかき、今季は奇跡の宝庫だったメトロポリターノでオサスナに1-4の惨敗。少しでも上の3位になりたいという意志をまったく、見せなかったアトレティコなど、試合後、シメオネ監督が「ウチはリーガでの位置づけをわきまえている。怪物のようなクラブと競っていることも」なんて、お隣さんに今季、勝ち点21もつけられていることを正当化するようなことを言おうとも、クラブ上層部からの批判はまったくなし。 もちろん、シメオネ監督の続投に疑問を抱く者もなく、うーん、もうちょっと頑張って、2位で終わればリーガの放映権料分配金1370万ユーロ(約24億円)+スペイン・スーパーカップ参加報酬、3位でも前者を680万ユーロ(約12億円)多くもらえていたはずなんですけどね。そんなことを気にもしない選手たちだからか、この夏、フロントはチームのかなりのメンツを入れ替える腹積もりのよう。ええ、契約1年自動延長を放棄するサビッチはオサスナ戦の後にもう、ファンにお別れしていましたしね。契約満了を迎えるエルモーソも減棒となる延長オファーを受け入れず、更に挙げれば、モラタ、メンフィス・デパイ、コレア、レマルらも売却候補なのだとか。 とりわけ年棒1500万ユーロ(約26億円)ながら、控えであるサウールには河岸を変えてもらいたいようですが、彼らの代わりとして、誰を獲るのか、名前はまだ具体的にあまり出ておらず。とにかく、昨夏入団しながら、シメオネ監督のお眼鏡に叶わず、1月にはレンタル移籍となったソユンチュ(フェネルバフチェ)やハビ・ガラン(レアル・ソシエダ)のような、意味のない投資はしないでほしいかと。 ちなみにすでに優勝、CL、EL、コンフェレンスリーグ出場権、そして降格3チームも確定し終わった、この週末のリーガ最終節ではunificacion(ウニフィカシオン/時間帯統一)も解消。アトレティコは土曜の午後4時15分(日本時間午後11時15分)にレアル・ソシエダとのアウェイ戦で幕を閉じるんですが、うーん、今季はもう彼らの姿を目にすることもないのかと、金曜には私もマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションを覗きに行ってみたんですけどね。普段はマスコミ公開15分のところ、最終日サービスだったのか、30分近く、見ていられたのは良かったものの、2人で三角コーンをどちらが速くポールに挿せるかを競うエクササイズとか、困惑させられる光景もなきにしろあらず。 まあ、勝っても負けても、どうせ順位は変わりませんし、すでにユーロやコパ・アメリカの各国代表招集のかかっている、or確実な選手たち、オブラク(スロベニア)、グリーズマン(フランス)、デパイ(オランダ)、モラタ(スペイン)、デ・パウル、モリーナ、コレア(アルゼンチン)などは、頭もそっちの方に行っているはずですしね。レアル・アレナで今更、今季のアウェイ弱者ぶりが改善されるとも思えないんですが、その試合に参加できないのは出場停止となるパウリスタ。そしてオサスナ戦でケガをしたサビッチ、リハビリ中のバリオス、モリーナとなりますが、後者2人はそれぞれ、パリ五輪、コパ・アメリアまでには回復するはずなのだとか。 対するソシエダではまさに、アトレティコからレンタル中のガランが足指骨折中で、サディクも背筋痛で欠場に。他にもアイエン、スベルディア、スビメンディ、カルロス・フェルナンデスらが出られないそうですが、イマノル監督のチームは前節、ベティスに勝って、7位と6位の順位を入れ替えることに成功。すでに4年連続ヨーロッパの大会出場は確定していたものの、コンフェレンスリーグから、ELに格上げできたことである意味、やり切った感も漂っているはずですからね。オサスナ戦で3カ月ぶりのゴールを挙げ、3月上旬にヒザの靭帯を断裂して、15本で止まっているボルハ・マジョラル(ヘタフェ)に並び、この試合では単独サラ(スペイン人の得点王)を狙っているらしいモラタ辺りが当たってくれませんかねえ。 そしていよいよ、CL決勝総合リハーサルを土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、サンティアゴ・ベルナベウでのベティス戦で行うのがマドリーなんですが、こちらは奇しくもクロースのお別れ試合も兼ねることに。そう、火曜には最高のレベルにいるうちに引退したいという持論に基づき、10年のマドリーでのキャリアに終止符を打ち、ユーロのドイツ代表戦を最後に現役から退くことを、34才の彼が発表したからですが、世間からはもったいないという声がしきり。 それについてはアンチェロッティ監督も金曜の試合前日記者会見で、「Es un alemán y es muy complicado hacerle cambiar de idea/エス・ウン・アレマン・イ・エス・ムイ・コンプリカードー・アセールレ・カンビアル・デ・イデア(ドイツ人だから、考えを変えさせるのはとても難しい)」と言っていたんですけどね。同時に「Reemplazarle es muy complicado sino imposible/レエンプラサルレ・エス・ムイ・コンプリカードー・シノ・インポシーブレ(彼を置き換えるのは非常に難しいだけでなく、不可能)」とも認めていたんですが、まあ、そこは正しく、アンチェロッティ監督が2014年に待望のDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)を達成してから、クリスチアーノ・ロナウド(アル・ナスル)、カセミロ(マンチェスター・ユナイテッド)、セルヒオ・ラモス(セビージャ)ら、中心選手を失ってもCL11回、12回、13回、14回目と勝ち続けてきたマドリー。 「このチームにはこの10年間、沢山のタイトルを獲って示してきたように、リソースがある。毎年、ピースが欠けても、選手たちがその姿勢と献身を失うことはない」(アンチェロッティ監督)という言葉通り、来季もベリンガム、バルベルデ、チュアメニ、カマビンガ、そして契約延長が近いモドリッチで上手く回してしまうか、ええ、彼らはお金にまったく困っていないクラブですからね。すでにキミッヒ(バイエルン)、ロドリ(マンチェスター・シティ)といった獲得候補の名前も挙がっているんですが…きっと、先日のCL準決勝バイエルン戦1stレグで見せた、ビニシウスへの神スルーパスみたいなクロースのプレーが見られなくなるのが淋しいファンは多いんじゃないでしょうか。 そんな訳でベティス戦はすでにチケット完売なんですが、他の予想スタメンはGKクルトワを始め、6月1日にウェンブリーでプレーする選手たち。そのクルトワのヒザの靭帯断裂を受け、昨夏、チェルシーから緊急レンタル移籍しながら、結果的にルーニンの控えとなってしまったケパも途中出場のご褒美をもらえるようです。一方、ベティスは、うーん、前節に直接ライバルだったレアル・ソシエダに負けて、7位に落ちてしまったショックもあるんでしょうかね。イスコを含む8人がケガ、2人が体調不良、そしてクリスタルパレスへの移籍が決まったシャドリもベルナベウには連れてこられないことに。 となると、マドリーが勝って、ペジェグリーニ監督が2009-10シーズンに作ったクラフのシーズン゛最多勝ち点記録96を1つ上回る可能性もかなり高い気もしますが、まあ、今の彼らにとって、一番大事なのはチュアメニ以外、もう負傷者を出さず、ドルトムント戦を迎えること。ええ、水曜のEL決勝で下馬評の低かったアタランタが、今季これまで無敗だったシャビ・アロンソ監督のレバークーゼンに3-0で勝って、優勝したなんて例もありますからね。マドリーに限って、その心配はないとは思うんですが、用心するに越したことはありませんって。 そしてマドリッドの弟分たちはラージョが土曜にアスレティックを、ヘタフェが日曜にマジョルカをホームに迎えるんですが、実は現在、16位の前者も、12位の後者もこの順位は確定ではなく、上手い具合にいけば、最大2つは這い上ることが可能。低い順位のチームはTV放映料分配金も少ないとはいえ、そうなると、どちらも130万ユーロ(約2億円)増しになりますからね。規模の小さいクラブだけに、それだけでも嬉しい収入となるはずなので、ここはそれぞれ、5位が確定、残留が確定した相手を前に、ホームのファンを喜ばせる結果となってほしいかと。 そうそう、この両者にもこの最終節で退団となることが決まっている選手がいて、エスタディオ・バジェカスのファンとお別れするのは3年間の契約が終わるファルカオ。コリセウムでは今週、お別れ会見を開いたマクシモビッチ(契約終了でパナシナイコスに移籍)、マタ(契約終了、行き先を探し中)が最後のプレーとなりますが、まあ、どちらもレンタル移籍などで来ている選手が結構、いますからね。他にも来季は戻って来ないメンツがいそうですが、とりあえず、イニゴ・ペレス監督とボルダラス監督の続投は決まっているようです。 え、1部はもうカタがついたけれど、今まさに大詰めを迎えているのが2部じゃないのかって?その通りで、残り2試合となった41節は日曜午後6時30分に統合されているんですが、いよいよ、レガネスの4年ぶりの1部再昇格が決まるかもしれないんですよ。そう、前節、スポルティングに勝って、首位を取り戻した彼らはアウェイでラシン・フェロル戦に挑むんですけどね。3位のエイバルとは勝ち点2差のため、レガネスが勝利し、エイバルがまさにその、7位でプレーオフ圏入りを狙っているスポルティングに勝てない場合は直接昇格が確定。 もちろん、それが叶わなくても、ブタルケでの最終節エルチェ戦で決めることはできるんですが、問題は今のところ、そちらも6月2日(日)に時間帯統一となっていて、そう、まさにCL決勝の翌日。是非ともレガネスの昇格祝いをその場で見たい私としては、ベルナベウでのDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝)祝いと重ならないよう、チャッチャと今週末に上がってほしいところかと。ええ、エルチェの方も今節、エルデンセに負けると、6位のオビエドが降格圏にいるアンドラに負けなければ、プレーオフ圏入りがなくなって、最終節が時間帯統一から、外れてくれることを期待しているんですが、こればっかりはねえ。 それより気の毒なのはお隣さんのアルコルコンで、今季はせっかくRFEF1部(実質3部)から、速攻で戻ったにも関わらず、今週末のレバンテ戦で最速Uターンが確定する可能性が。というのも、2021-22シーズンにはレガネスにいたナフティ監督が率いる2部の弟分はレバンテに勝っても、上にいるウエスカ、サラゴサ、ミランデス、エルデンセが勝つと、降格が決まってしまうからですが、どちらにしろ、彼らは20位とかなり分が悪いですからね。マドリッドに2部チームが1つもないのも淋しいですし、何とか奇跡が起こってくれるといいのですが。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.25 21:00 Sat

最終節には何もない…/原ゆみこのマドリッド

「契約延長しないんだ」そんな風に私が驚いていたのは火曜日、レアル・マドリーのプレスオフィスから、今季いっぱいでクロースが退団するというメールが届いた時のことでした。すぐさまマルカ(スポーツ紙)のサイトを開けたところ、すでにメインページはそのニュースでいっぱいで、当人からの手紙も掲載。「Mi ambición siempre fue terminar mi carrera en la cima de mi nivel/ミ・アンビシオン・シエンプレ・フエ・テルミナール・ミ・カレラ・エン・ラ・シマ・デ・ミ・ニベル(望んでいたのは常に最高のレベルにいる時に自分のキャリアを終わらせることだった)」という理由で、この夏のユーロのドイツ代表戦を最後に引退することが分かったんですけどね。 それにしたって、この発表のタイミングは絶妙で、ええ、4節前にリーガ優勝が決まり、ここ3試合、6月1日のCL決勝に向けての調整をしていたマドリーの最終節はサンティアゴ・ベルナベウでのベティス戦。ホームで盛大にファンとのお別れができる上、チームメートだって、クロ-スの10年間のマドリー生活に最後の花を添えるべく、いえ、すでに彼は4回も経験済みなんですけどね。Decimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)達成にますます意欲が湧くはずとなれば、これぞ、まさにクロース最後のご奉公? いえまあ、34才の彼が今季もレギュラーだったにも関わらず、引退するのに対して、38才で今季はスーパーサブの位置づけに落ちてしまったモドリッチが契約延長成立間近と言われているのには、ちょっと矛盾を感じなくもないんですけどね。何はともあれ、マドリーファンはまだ、ウェブリーでのCL決勝、そこで優勝すれば再び、シベレス噴水広場やベルナベウでの祝賀行事でクロースの姿を目に焼き付けることができるため、今はそれを慰みにするばかりかと。 え、それでリーガ1部、全ての片がついた先週末の37節はどうだったのかって?いやあ、実は試合結果だけでいうと、マドリッド勢4チームは誰も勝てなかったんですよ。ただ、私がブタルケに見に行った2部の弟分、レガネスだけは4年ぶりの再昇格を後押しするファンの熱気のおかげもあって、7位のスポルティングに勝利。そう、前半17分、敵GKのパンチングミスから、ミゲール・ラ・フエンテがヘッドで入れた先制点こそ、後半8分にロサスにエリア前からシュートを決められて、帳消しにされてしまったものの、32分にはシセが決勝点を挙げて、2-1で終わることに。 おかげでアルバセテ戦に負け、27節の間、維持していた首位をバジャドリーに奪われていたのも、その相手が降格圏からの脱出がどんどん難しくなっているお隣さん、アルコルコンと1-1で引き分けたため、取り戻すことができたんですけどね。とはいっても40節は3位のエイバルもカルタヘナに勝ったため、勝ち点差が2なのは変わらず。要は直接昇格の上位2席を3チームで争っている状態なので、次節でライバルのどちらかが躓かない限り、1部昇格確定はCL決勝の1週間後にある最終節まで持ち越されることに。うっかりプレーオフの4試合を戦う破目になったりすると、レガネスファンの夢も叶わないかもしれないため、今週末のラシン・フェロル戦、続くエルチェ戦では最後のひと踏ん張りを見せてもらいたいものです。 そしてその夜は1部試合のunificacion(ウニフィカシオン/時間帯統合)から1カードだけ外れたヘタフェがメンディソローサでアラベスと対戦。それが元々、何も懸かってないところに大雨の中、プレーさせられたのも気の毒でしたが、前節、ベルナベウで5-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らった相手に1-0で負けて、憂さ晴らしされてしまってはねえ。前半12分にドゥアルテのロングボールから、カルロス・ビセンテが決めたゴールをボルダラス監督のチームは最後まで返せなかったんですが、まあ、昨季と違い、とうに残留が決まっているヘタフェはもう閉店休業状態。 せめて最終節の日曜、コリセウムにマジョルカを迎える試合では、ええ、こちらでは長年、チームに貢献してくれていたマタ(契約満了)とマクシモビッチ(パナシナイコスに移籍)のお別れイベントも予定されていますしね。有終の美を飾って、10位から12位に落ちてしまった順位をちょっとでも改善できればと。とはいえ、今更ながら、4人の長期負傷者に加えて、アラベス戦で退場したモリバス、累積警告のラタサ、ディエゴ・リコと頭数不足がいつにもまして激しいのは困っちゃいますよね。 一方、日曜午後7時の一斉キックオフを迎えたマドリッド勢3チームはというと。いやあ、願いに反して、どこもゴールが多かったため、メトロポリターノのスタンドでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の多元中継を聴いていた私も頭がクラクラしたくらいだったんですけどね。ややこしいので、1つずつ、お伝えしていくことにすると、唯一、まだ降格の可能性が薄っすらとあったラージョはモンジュイックでバルサと対戦。それが開始3分から、ジャマルのラストパスをレバンドフスキがゴール前で胸トラップ、落としたボールをそのまま蹴り込んで、早々に先制されてしまったんですよ。 その後はかなりラージョが攻めていたようなんですが、やっぱりここまで来て、いきなり慢性ゴール日照りは治りませんよね。後半になり、チャビ監督が選手のリフレッシュを行ったところ、26分にはジョアン・フェリックスがパテ・シス、エスピーノらをエリア内右奥でキリキリ舞いさせてシュート。GKディミトリエフスキが弾いたボールをペドリが決めて、2点差にすると、その4分後にもアラウホのロングボールに抜け出して、自身2点目を挙げたとなれば、もうラージョはギブアップするしかなかったかと。 ただ、バルサに2位確定を贈る、その3-0の完敗も試合終了から間もなくして、同時進行だったカディスがラス・パルマスと0-0で引分け。17位との差が勝ち点4となり、カディスが降格組の最後の一席を占めることが確定したため、ピッチに残って、結末を待っていたラージョの選手たちも心おきなく残留祝いができたんですけどね。同じ光景はマジョルカ、ラス・パルマス、セルタでも見られたんですが、おかげでマドリッド勢が最終節のガラガラドボンに巻き込まれる心配がなくなったのは朗報でしたっけ。 まあ、あとは土曜のアスレティック戦でラージョが、5位で来季はELに出場する相手に臆することなく、低空飛行が続き、辛い思いをさせたエスタディオ・バジェカスのファンにいい試合を披露。来たる5月28日のクラブ創設100周年行事の前祝いができればいいんじゃないかと思いますが、その一方で、凄まじいゴール祭りとなっていた試合もあって、それはマドリーのビジャレアル戦。この日はアンチェロッティ監督がリュディガー、バルベルデ以外、プランBの選手を大量にスタメンに入れて、スタートしたんですけどね。序盤、GKルーニンもセルトートのエリア外シュートparadon(パラドン/スーパーセーブ)した後には普段、控えのメンバーがCL決勝での途中出場枠を争うべく、猛ラッシュをかけたから、忙しないったらありません。 そう、14分にはルーカス・バスケスのラストパスを最近、出場する度にゴールを挙げているギュレルがエリア内左から決めて、先制したかと思えば、30分にもルーカス・バスケスのクロスから、ホセルがヘッドで2点目をゲット。39分にはセバージョスが右奥でモスケラにボールを奪われ、そこからセルロートに頭で1点を返されたものの、その1分後にはモドリッチ、ブライムを経て、ルーカス・バスケスが今度は自身でチームの3点目を挙げることに。更にロスタイムにもギュレルが再びGKヨルゲンセンを破り、とうとう前半だけで4点を挙げてしまったとなれば、一体、誰がマドリーの勝利を疑った? 実際、これで今季10試合出場6得点となったギュレルに関しては、試合後、アンチェロッティ監督も「Es muy eficaz, ha marcado muchos goles con pocos tiros/エス・ムイ・エフィカス、ア・マルカードー・ムーチョス・ゴーレス・コン・ポコス・ティロス(とても効率的だ。少しのシュートでゴールを沢山挙げた)」と褒めていたんですが、何せ、チーム総得点がリーガ最多の87というマドリーですからね。ゴール不足で悩んでいるチームとは違い、ギュレルをもっと早くから使っていればという声が巷から聞こえてこないのも当然だった?それが後半はまったく様相が変わって…。 ええ、折しもセビージャではベティスが前半、レアル・ソシエダに0-2と負けていて、ビジャレアルは頑張れば、最終節で7位のコンフェレンスリーグ出場権に手が届くかもしれないというのもあったんでしょうね。ハーフタイムには、「No puedes jugar con tanta falta de intensidad/ノー・プエデス・フガール・コン・タンタ・ファルタ・デ・インテンシダッド(あんな強度のなさでプレーすることはできない)」とマルセリーノ監督が選手たちを叱咤激励。後半頭から、クエンカ、アコマック、パレホをアルビオル、トラオレ、コケリンに代えたのも良かったか、再開早々3分にはジェラール・モレノのクロスから、セルロートがまたしてもヘッドで得点したんですよ。 それどころか、8分にも彼はジェラール・モレノのスルーパスで抜け出して3点目を決めると、11分にはとうとう、4点目を挙げて、ピピチ(リーガ得点王)レーストップだったドブビク(ジローナ)に2本差つけているんですから、恐ろしい。とはいえ、これでセルロートのゴールラッシュも打ち止めだったようで、ええ、後半15分には全ての失点シーンに顔を出し、CL決勝前に大きく株を下げてしまったミリトンがナチョと交代したのも影響したんでしょうね。試合はそのまま4-4で終わることに。 結局、引分けではビジャレアルが最終節に望みを託すことは叶わず、7位はベティス、そのまま勝ったレアル・ソシエダが6位でEL出場とこちらも片がついたんですが、え?ドルトムントだって、アトレティコとのCL準々決勝では4点も取っていたし、こんなにゴールを奪われるマドリーには懸念が湧かないかって?いえ、アンチェロッティ監督も「Hemos encajado más de los necesario pero no cambia nada pensando en la final/エモス・エンカハードー・マス・デ・ロス・ネセサリオ・ペロ・ノー・カンビア・ナーダ・ペンサンドー・エン・ラ・フィナル(必要以上に失点したが、決勝を考えるにあたっては何も変わらない)」と言っていたように元々、ミリトンもGKルーニンもスタメンにするつもりはなかったみたいですからね。要はウェンブリーではナチョとクルトワがプレーするため、その辺は心配することないということでしょうが、さて。 そして最後に唯一、ホームゲームでオサスナ戦をプレーしたアトレティコはというと、ホント、マスコミの「目標は3位」という言葉を信じた私がバカでしたよ。キックオフ前には12年間、フィジカルコーチとして、選手を指導したプロフェ・オルテガのお別れイベントを、オサスナ勢がピッチで退屈してしまう程、長々と開催していたのは、まあ、この日が最後の機会でしたからね。仕方ないとはいえ、どうやら、4位で来季のCL出場が確定していた彼らはすでにバケーションモードに入っていたよう。 いえ、それでもビッツェル、ヒメネスが出場停止でいなかったにも関わらず、前半は26分にFKから、パウリスタのヘッドクリアをカテナにゴール前に戻され、ラウール・ガルシアに1点取られただけで済んだんですけどね。前節のヘタフェ戦でハットトリックを挙げたグリーズマンも、うーん、また足首の痛みがぶり返した?シュートの精度はもちろん、パスもようよう味方に届けられない状態に戻っていたんですが、0-1で始まった後半には今季、散々、アウェイゲームで目撃した悲劇が襲い掛かることになるとは。 そう、早くも7分にはゴール脇でアスピリクエタがクリアしようとして、GKオブラクに当たって跳ねたボールが誰もついていなかったアイマール・オロスに渡り、2点目を入れられてしまったんですよ。ただ、その時は3分後に後半頭から、パウリスタと交代で入っていたモラタがサムエル・リノにラストパスをもらい、3ケ月ぶりとなるゴールを決めて、1点差に迫ってくれたから、まだ良かったんですけどね。交代で入ったリケルメとレイニウドがあまりにぼうっとしすぎです。19分にはエリア内右からアレソにクロスを上げられ、またしてもラウール・ガルシアに決められているって、これじゃ、オブラクから滅多に見ない程の叱責を喰らっても仕方なかった? 実際、1-3にされた後になって、今季はもう、研修生のままでいい感じになっていた19才のフェルメーレンをシメオネ監督がピッチに入れた理由もよくわかりませんでしたしね。モラタとメンフィス・デパイの2弾頭にしても、すでに残留は達成しながら、まだバケーション入り一歩手前の状態でプレーしていたオサスナの守備を崩すことはできず。最後は43分にも右サイドから、パブロ・イバニェスのクロスをトロにvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込まれ、ここ11試合、アトレティコに勝ったことのなかったアラサーテ監督のチームに1-4で負けてしまいましたっけ。 何せ、今季メトロポリターノはほぼ難攻不落の要塞で、リーガではバルサに負けただけ、引分けもヘタフェとの一戦だけと、ファンは勝利に慣れていましたからね。最後の最後になって、どうしてアウェイでのダメダメぶりをホームで見せられないといけないんだという、pito(ピト/ブーイング)がスタンドから飛んでいたのもムリはありませんが、その日はジローナもバレンシアに勝利。アトレティコとの差が5となり、最終節での3位上昇可能性が完全に消滅することに。 うーん、シメオネ監督は「Entiendo el lugar que ocupamos en Liga. Entiendo que competimos contra monstruos/エンティエンドー・エル・ルガール・ケ・オクパモス・エン・リーガ。エンティエンドー・ケ・コンペティモス・コントラ・モンストロス(ウチがリーガで占める位置はわかっている。モンスターのようなチームたちと競っているのもわかっている)」と言っていたんですけどね。その中にジローナが入るかどうかは大いに疑念の湧くところ。試合後には今季限りで退団するサビッチがファンにお別れしていたんですが、今季のここ一番で残念だったチームの姿を見る限り、そろそろ選手の大幅入れ替えを考えた方がいい?この土曜にもアトレティコにはレアル・ソシエダ戦があるんですが、今はまた、アウェイでみっともない試合をしないことを祈るばかりです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.22 20:00 Wed
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