【2022年カタールへ期待の選手vol.90】勝負の11月ベトナム、オマーンのアウェー2連戦。日本の秘密兵器はズバリこの男!/三笘薫(サン=ジロワーズ/FW)
2021.10.30 19:25 Sat
10月12日のオーストラリア戦(埼玉)を2-1で辛勝し、安堵したのもつかの間、11月には絶対に落とせないアウェー2連戦がやってくる。2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選B組で目下、4位に沈む日本にとって、最下位・ベトナム、3位・オマーンは確実に6ポイントを手にしなければならない相手。ここで躓くようなことがあれば、本大会ストレートインの2位以内はおろか、プレーオフ圏内の3位すら危うくなりかねないからだ。
9月は欧州視察に出向いていた森保一監督は目下、日本に残ってJリーグや福島で開催されたAFC・U-23選手権に足を運んでいる。その一方で、横内昭展・斉藤俊秀両コーチは欧州で目ぼしい人材のチェックに奔走中だ。
その筆頭が三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)。東京五輪の後、イングランド・プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンに完全移籍し、英国労働ビザの関係もあってベルギー1部のユニオン・サン=ジロワーズにレンタルされたが、9月12日のデビュー以降、試合をこなすごとに存在感を高めているのだ。
とりわけ、インパクトが大きかったのが、10月16日のRFCセラン戦だ。後半2分に出場してハットトリックの離れ業を達成。「サン=ジロワーズに三笘薫あり」をサポーターに力強く示したのである。続く23日のKASオイペン戦では加入後初先発のチャンスをつかみ、先制PKにつながるドリブル突破で見る者を魅了。さらには3点目の起点になるパス出しも披露した。
こういう絶好調の人間を呼んで使うことが、停滞中の日本代表の活性化につながるのは明らかだ。過去の実績や経験値に固執しがちな森保監督だが、崖っぷちに追い込まれたオーストラリア戦でついに[4-3-3]の新布陣を採用し、田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタクララ)を中盤に抜擢した。11月シリーズで4-3-3をそのまま使うか、[4-2-3-1]に戻すのかは対戦相手との噛み合わせを見てからだろうが、三笘は田中碧や守田との共存は問題なくできる。川崎やサン=ジロワーズでの起用法を見ていても分かる通り、先発でもサブでも柔軟に対応できるところも魅力だ。
長年、絶対的1トップと位置づけられてきた大迫勇也(神戸)が負傷離脱中で11月シリーズに間に合う保証がないだけに、南野拓実(リバプール)が最前線に上がる可能性も大いにある。古橋亨梧(セルティック)もゴールにより近いポジションで使った方が怖さを発揮できる。となれば、左サイド要員は手薄になる。原口元気(ウニオン・ベルリン)や浅野拓磨(ボーフム)もいないわけではないが、敵を欺く意味でもA代表実績ゼロの三笘は大きなサプライズになる。ここは思い切って呼んで使うべきだ。
本人も不完全燃焼に終わった東京五輪の悔しさを晴らすチャンスが巡ってくるのを待ち望んでいるに違いない。
「五輪を迎える年が24歳というのは、決して若くない。五輪がW杯に続く大きな大会だと認識してますし、人生の大きな転換点になるとも思ってます。でも五輪に選ばれることがゴールではない。大学からプロに入った遠回りした選手でも活躍できることを示さないといけない」と東京五輪前にも語気を強めていたが、ベルギーに渡ったことで「今、結果を出さなければ埋もれてしまう」という危機感はより強まったことだろう。
確かに世界のサッカー界で見れば、24歳という年齢は中堅。2010年南アフリカW杯で日本をベスト16へと導いた本田圭佑(スドゥーヴァ kjl)が24歳だったのだから、今からA代表のキャリアを始めるというのは、少しスタートが遅いのも事実だ。しかしながら、川崎の偉大なレジェンド・中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)のように25歳で初キャップを記録し、30代まで日の丸を背負い続けた選手もいる。大卒の三笘は同じような軌跡を辿れるだけのポテンシャルがある。遅咲きでも大成できることを自らの実力で証明してほしいのだ。
「自分の特徴は1人はがすところだったり、アイディアのあるプレー。評価されやすくて評価されやすいですけど、批判もされやすいところ。そこは難しい部分ではありますけど、『日本に貢献したいって気持ち』がプレーに出ると思う。つねにそういう意識を持ったプレーを見せたいです」
三笘はこうも話している。単にドリブル突破でチャンスメークをするだけでなく、チームの勝利のために献身的な守備はハードワークを厭わないという強い覚悟を持って戦っているのだ。そういうメンタリティがあれば、必ずA代表でも役に立てる。
貪欲に泥臭くボールを追い、相手をつぶし、そのうえでドリブルからゴールを奪う…。タフさを増した三笘薫が救世主となる11月シリーズをぜひ見てみたい。
【文・元川悦子】
その筆頭が三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)。東京五輪の後、イングランド・プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンに完全移籍し、英国労働ビザの関係もあってベルギー1部のユニオン・サン=ジロワーズにレンタルされたが、9月12日のデビュー以降、試合をこなすごとに存在感を高めているのだ。
とりわけ、インパクトが大きかったのが、10月16日のRFCセラン戦だ。後半2分に出場してハットトリックの離れ業を達成。「サン=ジロワーズに三笘薫あり」をサポーターに力強く示したのである。続く23日のKASオイペン戦では加入後初先発のチャンスをつかみ、先制PKにつながるドリブル突破で見る者を魅了。さらには3点目の起点になるパス出しも披露した。
ルーキーイヤーだった2020年の川崎フロンターレで見せていた緩急自在の「ヌルヌルドリブル」は異国でも健在。屈強で大柄な相手DFを次々とかわしてゴール前に侵入していく姿はまさに痛快というしかない。本人も「やれる」という手ごたえを深めているはずだ。
こういう絶好調の人間を呼んで使うことが、停滞中の日本代表の活性化につながるのは明らかだ。過去の実績や経験値に固執しがちな森保監督だが、崖っぷちに追い込まれたオーストラリア戦でついに[4-3-3]の新布陣を採用し、田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタクララ)を中盤に抜擢した。11月シリーズで4-3-3をそのまま使うか、[4-2-3-1]に戻すのかは対戦相手との噛み合わせを見てからだろうが、三笘は田中碧や守田との共存は問題なくできる。川崎やサン=ジロワーズでの起用法を見ていても分かる通り、先発でもサブでも柔軟に対応できるところも魅力だ。
長年、絶対的1トップと位置づけられてきた大迫勇也(神戸)が負傷離脱中で11月シリーズに間に合う保証がないだけに、南野拓実(リバプール)が最前線に上がる可能性も大いにある。古橋亨梧(セルティック)もゴールにより近いポジションで使った方が怖さを発揮できる。となれば、左サイド要員は手薄になる。原口元気(ウニオン・ベルリン)や浅野拓磨(ボーフム)もいないわけではないが、敵を欺く意味でもA代表実績ゼロの三笘は大きなサプライズになる。ここは思い切って呼んで使うべきだ。
本人も不完全燃焼に終わった東京五輪の悔しさを晴らすチャンスが巡ってくるのを待ち望んでいるに違いない。
「五輪を迎える年が24歳というのは、決して若くない。五輪がW杯に続く大きな大会だと認識してますし、人生の大きな転換点になるとも思ってます。でも五輪に選ばれることがゴールではない。大学からプロに入った遠回りした選手でも活躍できることを示さないといけない」と東京五輪前にも語気を強めていたが、ベルギーに渡ったことで「今、結果を出さなければ埋もれてしまう」という危機感はより強まったことだろう。
確かに世界のサッカー界で見れば、24歳という年齢は中堅。2010年南アフリカW杯で日本をベスト16へと導いた本田圭佑(スドゥーヴァ kjl)が24歳だったのだから、今からA代表のキャリアを始めるというのは、少しスタートが遅いのも事実だ。しかしながら、川崎の偉大なレジェンド・中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)のように25歳で初キャップを記録し、30代まで日の丸を背負い続けた選手もいる。大卒の三笘は同じような軌跡を辿れるだけのポテンシャルがある。遅咲きでも大成できることを自らの実力で証明してほしいのだ。
「自分の特徴は1人はがすところだったり、アイディアのあるプレー。評価されやすくて評価されやすいですけど、批判もされやすいところ。そこは難しい部分ではありますけど、『日本に貢献したいって気持ち』がプレーに出ると思う。つねにそういう意識を持ったプレーを見せたいです」
三笘はこうも話している。単にドリブル突破でチャンスメークをするだけでなく、チームの勝利のために献身的な守備はハードワークを厭わないという強い覚悟を持って戦っているのだ。そういうメンタリティがあれば、必ずA代表でも役に立てる。
貪欲に泥臭くボールを追い、相手をつぶし、そのうえでドリブルからゴールを奪う…。タフさを増した三笘薫が救世主となる11月シリーズをぜひ見てみたい。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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