【東本貢司のFCUK!】落ち目の王者が選んだ“劇薬”
2016.04.07 12:40 Thu
▽昨日、降って湧いたように全世界を駆け巡った「パナマ文書・流出」の波紋。現時点で明らかにされている事件の要約は次のようになる。「租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所『モサク・フォンセカ』の、過去40年分の金融取引に関する内部文書が流出。各国政府は4日、各国指導者や著名人による脱税など不正取引がなかったか調査を開始した」。流出した文書にはロシア/プーチン大統領の“友人”のほか、英国、パキスタンなどの首相の“親類”、ウクライナ大統領やアイスランド首相“本人”に関する記載があるという。『モサク・フォンセカ』によると、流出は海外サーヴァーのハッキングによるもので、公表したのは「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」・・・・いや、この、いかにも“キナ臭い”一件に踏み込むのは本コラムの趣旨にあらず。が、気になるのは、そこに新FIFA会長ジャンニ・インファンティーノに関する記載があることだ。
▽さて、『奇跡のチーム』レスターの“劇場型”優勝がさらに秒読み段階に入ったプレミアで、最も物議を醸しつつある最新のビッグニューズといえば「チェルシー来季新監督に、現イタリア代表監督アントニオ・コンテ就任内定」の報。字面だけ眺めれば「ほう、それはなかなか」。だがどっこい、そうは問屋が卸さないようなのだ。コンテにはユヴェントスのイタリア王者復興を指揮する以前、当時セリエBのシエナ監督時代に八百長関与疑惑で“推定有罪”となった前科がある(10か月の拘禁から4か月のベンチ入り禁止に免除)。しかも、実はこの一件はまだ決着がついていないらしい。現にチェルシーが就任契約内定を発表した翌日、イタリアの検察当局が6か月の拘禁要求を提出しているほどなのだ。チェルシー側はこの件について口を閉ざしているが、最終弁論と判決の予定はこの5月中旬になる見込み・・・・。それにしても、どうしてチェルシーはこんな“危険人物”に白羽の矢を立てたのか。彼の名前が候補に出始めた頃から筆者はずっと首を傾げていたのだが・・・・。
▽一つ、おそらく確実な線は、第一候補のディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)にフラれたから。その裏には、シメオネ譲渡が主力のチェルシー移籍に“感染”してはたまらないと見たアトレティコの、強硬な慰留作戦もあったろう。シメオネ自身も落ち目模様のブルーズに興味を削がれた可能性はある。では、何故にコンテが代案として浮上したのか。かつてコンテの下でプレーしたアンドレア・ピルロの“証言”がわかりやすい。「勝利確実な試合中でも平気で怒鳴りつけてくる激情肌。あの人といると気の休まる暇がない」。さて、これをざっくり解釈してみると・・・・思い当たる“先人”たちがいる。一名「瞬間湯沸かし器」サー・アレックス、些細に思える事柄にも意固地なほど妥協を許さないジョゼ君、そして破天荒に喜怒哀楽をぶつけ回すクロップ将軍。タイプは微妙に違う。が、コンテが“その流れ”に組しているのはほぼ間違いない。つまり、何が何でも覇権奪回を目指すチェルシーはあえて“劇薬”を選択した・・・・個人的には「なるほど」だが、火に油というリスクも? いや、それはそれで面白いか。何だか来季が楽しみになってきた。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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▽その詳細もあえてここでは省く。何がキナ臭いかと言えば、それがせっかく徹底浄化を旗印にインファンティーノ体制で再出発を切ったばかりのFIFAの足元を揺るがしかねないからだ。早速、スイスの検察当局が調査開始を発表したとの報道もある。例えば、このリークが、FBIの起訴で取り調べ中の「FIFA汚職理事」(の中の誰かの意を受けた)報復ではないかという憶測も出ている。あるいは、世界最大のスポーツイベント・ワールドカップに照準を合わせたダーイシュ(イスラム国)が仕掛けるサイバーテロ“序章”説も。可能性を当たればきりがないが、もしも、昨今の世界各地ではびこる社会政治経済不安に付け込んだ悪意がウラで蠢いているとすれば、何があってもおかしくはない。ITネットは友愛と共感のグローバルな共有を可能にしたが、同時に悪意も共有・増幅させる。名もない一庶民の焼身自殺が事実上の国家転覆にまで行き着いたことを考えると、各国政府筋がこの流出文書に慌てふためく今の姿は穏やかではない・・・・などと、いいや、門外漢がとやかく論じると火傷しそうだ。近く、続報などを待って必要ならば再考察してみたい。▽一つ、おそらく確実な線は、第一候補のディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)にフラれたから。その裏には、シメオネ譲渡が主力のチェルシー移籍に“感染”してはたまらないと見たアトレティコの、強硬な慰留作戦もあったろう。シメオネ自身も落ち目模様のブルーズに興味を削がれた可能性はある。では、何故にコンテが代案として浮上したのか。かつてコンテの下でプレーしたアンドレア・ピルロの“証言”がわかりやすい。「勝利確実な試合中でも平気で怒鳴りつけてくる激情肌。あの人といると気の休まる暇がない」。さて、これをざっくり解釈してみると・・・・思い当たる“先人”たちがいる。一名「瞬間湯沸かし器」サー・アレックス、些細に思える事柄にも意固地なほど妥協を許さないジョゼ君、そして破天荒に喜怒哀楽をぶつけ回すクロップ将軍。タイプは微妙に違う。が、コンテが“その流れ”に組しているのはほぼ間違いない。つまり、何が何でも覇権奪回を目指すチェルシーはあえて“劇薬”を選択した・・・・個人的には「なるほど」だが、火に油というリスクも? いや、それはそれで面白いか。何だか来季が楽しみになってきた。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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