「一人前の男になるために」ヘタフェに現れたもう1人のサムライ・久保建英

2021.01.31 13:10 Sun
◆課題は信頼を成長に繋げられるか
ヘタフェの新しい戦力に賛辞を惜しまないのは監督だけではない。チームメイトたちも久保のボール捌きの巧みさには舌を巻いている。相手について、まだほとんど知らないうちから、成功率の高いプレーを披露する日本人選手への信頼感もあるようだ。

チームの核の1人であるウルグアイ代表ボランチ、アランバッリもウエスカ戦の後、「タケ・クボとカルレス・アレーニャは1日目から、チームに何かポジティブなことをもたらしてくれる選手だ。彼らがヘタフェに来ることを選んでくれて、ボクらは本当に満足だよ」と語っている。この日は「クボはウチのサッカー哲学を完璧に理解している」と、ボルダラス監督も満足感を表していた。

そう、久保はヘタフェにおけるサッカー哲学を学んでいくだろう。アスレティック・ビルバオ戦で想定外の大敗はしたものの、この日本人選手に対する信頼は決して揺らいでいない。他の選手とは一味違うプレーを見せてくれるのは明らかだ。1対1の勝負を挑む、敵をドリブルでかわす、チャンスにシュートする…そして守る。右サイドを主戦場にするタケは精力的にダミアン・スアレスをヘルプ。自陣に戻り、ウルグアイ人右SBの守備に大きく協力した。これもヘタフェで要求される仕事であり、それができなければ、決してスタメンで出場することはできない。

アタッカー、それもボールを持たせれば陽気で研ぎ澄まされたプレーをする選手であるタケだが、ここに来ることに彼は恐れを抱かなかった。守備の堅固さをベースにチームプレー、とりわけ地道な仕事を要求されるヘタフェを選んだ。ここ数年、才能ある選手がコリセウムに姿を見せたこともあったが、その多くは必要な仕事を理解しなかったばかりにベンチ、いや、スタンド観戦という運命に追いやられている。

だが、久保の目標は全てを兼ね備えたフットボリスタ・トタル(トータル・フットボーラー)に変貌を遂げること。ボルダラス監督の下でなら、一人前の男になってくれるはず。まさにそれがレアル・マドリーとフロレンティーノ・ペレス会長の期待するところでもある。タケもまた、チームから自身が必要とされているという、温かい気持ちを感じているはずだ。

当てにしていると言われながら、試合では使われず、最後は出ることになったウナイ・エメリ監督のビジャレアルとは違う。まさしく正反対だ。今いるのはチームを降格から救い、成功を収めることが自分の手の内にあるチーム。いや、久保がヘタフェを再び、ヨーロッパの大会出場に導くことがないと一体、誰に言えようか。


記者紹介
文:フアンカル・ナバセラダ
1992年生まれのマドリッドのヘタフェ市出身。20才から、スペイン紙『マルカ』で働き、ヘタフェを担当。並行してスペインで唯一、ヘタフェのチーム情報を発信するラジオ、“オラ・アスローナ"を立ち上げ、8年間、放送を続けている。
翻訳:原ゆみこ
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