代表戦はあまり慰めにならない…/原ゆみこのマドリッド
2019.03.25 13:30 Mon
「悪くはなかったけどねえ」そんな風に私が感動薄く過ごしていたのは日曜日、スペイン代表のユーロ予選初戦が終わった翌日のことでした。いやあ、この代表戦週間では一足早く、金曜にグリーズマンがモルドバ戦でフランスの先制点をゲット。それがまあ、アトレティコでここ6試合、無得点だったのがウソように、ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)のアシストを流し込んだ見事なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)だったんですけどね。おまけに先週中は代表に呼ばれていないジエゴ・コスタとコケがマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で2014年リーガ優勝シーズンのゴールデンコンビ復活を目指し、特訓に励んでいるなどとも聞いたものの、覆水盆に返らず。
だってえ、今更ゴールが戻ってきたとて、トリノでユベントスに3-0で負けてCL16強で逆転敗退したのも、サン・マメスでアスレティックに2-0と遅れを取り、首位バルサとの差が勝ち点10に開いてリーガ優勝が絶望的になったのも変わらないんですよ。おかげでグリーズマンなど、バルサ移籍の噂が再燃して、いえ、木曜にネットフリックスで公開になったドキュメンタリー、" Antoine Griezmann: Campeon del Mundo/アントワン・グリーズマン:カンペオン・デル・ムンド(世界の王者)"の中で当人は、「Amo al Atleti, amo a mis companeros de equipo y amo al Cholo/アモ・アル・アトレティ、アモ・ア・ミス・コンパネロス・デ・エキポ・イ・アモ・アル・チョロ(ボクはアトレティコ、チームメートたち、そしてシメオネ監督を愛している)」と語っていたんですけどね。
それがCL敗退後に撮影されたという保証はないため、まあ、去年の夏、あの時はピケの所有するプロダクションの制作でアトレティコ残留を決意するドキュメンタリーを公開され、思いっきり顔に泥を塗られたバルサがいくら、7月にはグリーズマンの契約破棄金額が2億ユーロ(約250億円)から、1億2000万ユーロ(約150億円)に下がるからといって、諸手を広げて迎えてくれるとは思えないんですけどね。かといって、逆に彼が残ってくれても年棒が2000万ユーロ(約25億円)と破格なため、来季もアトレティコは少数精鋭体制を継続。
ようやくリュカとフィリペ・ルイスのケガが治り、paron(パロン/リーガの停止期間)明けには戻って来られるといっても、今季のようにケガ人が多発すれば、同様の状況に陥ってしまう可能性もある訳で…そう、こんな話ばかりになってしまうから、ジダン監督が復帰したとはいえ、同じく今季は終わった身分のお隣さんが来季の補強はアザール(チェルシー)だ、エムパベ(PSG)だ、ポグバだと浮かれているのもありますし、何だか最近の私は憂鬱なんですよ。
まあ、そんなことはともかく、金曜にはワンダ・メトロポリターノでもアルゼンチンとベネズエラの国際親善試合が行われ、先週は月曜以外、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でのスペイン代表の練習もpuerta cerrada/プエルタ・セラーダ(非公開)ばかりだったため、あまり外出していなかった私もちょっと、覗きに行ってみることに。普段とは違い、外環が青にライトアップされたスタジアムはいいとして、マドリッドには両国出身の移民が多いにも関わらず、観客2万8000人と半入り程度だったのには驚いたんですが、試合が始まると更なるサプライズが起こります。
結局、前半終了間際にはメッシのクロスをヘッドしたラウタロウ(インテル)が外してしまい、逆に44分にはムリージョ(トンデラ)に2点目を奪われて折り返したアルゼンチンでしたが、後半14分にはようやくメッシのパスをロ・チェルソ(ベティス)が繋ぎ、ラウタロウが1点を返すことに。予定ではフル出場はしないことになっていたメッシもずっとピッチに残り、FKなどで同点を狙ったものの、最後は30分、PKからホセフ・マルティネス(アタランタ)に3点目を決められてしまうとは!いやあ、1-3で予想外の快勝をしたベネズエラの選手たちはおそらく、現在母国がひどい経済危機に襲われ、辛い思いをしている中、わざわざ応援に駆けつけてくれたファンに相当感謝していたんでしょうね。
アルゼンチンの選手たちがさっさとロッカールームに戻るのを尻目に場内一周を始めてしまい、私も先日のユーベとの2ndレグに挑む前だったレガネス戦後のアトレティコ、バルサとの女子1部リーガ頂上決戦でワンダを満員にしたアトレティコ女子に続き、3回連続でvuelta de honor/ブエルタ・デ・オノール(名誉の場内一周)に立ち会うことになりましたが、これもまた珍しい経験だったかと。何はともあれ、昨年アルゼンチンが同じ舞台でスペインと親善試合をした際も負傷で出られず、チームが6-1で惨敗するのをパルコ(貴賓席)から見守っていたメッシにとって、今季のCL決勝でトロフィーを掲げるといったことでもない限り、ここはゲンのいいスタジアムではないようです。
まあ、そのメッシが恥骨炎を理由に次はモロッコで親善試合をするチームを離れ、翌日にはバルセロナに戻ってしまったのは置いておいて、そろそろ本題に入らないと。土曜にメスタジャ(バレンシアのホーム)で行われたスペインとノルウェイのユーロ予選がどうだったか、お伝えしないといけません。昨年のW杯後に就任したルイス・エンリケ監督はまだ1度も同じスタメンを使っていないんですが、この日の3トップはモラタ(アトレティコ)とご当地選手のロドリゴ(バレンシア)にアセンシオ(レアル・マドリー)。そこへ5年ぶりに招集がかかったヘスス・ナバス(セビージャ)とジョルディ・アルバ(バルサ)の両SBが積極的に上がって絡むスピードのあるサッカーで序盤から、スペインは圧倒的優位に。
実際、前半6分にはジョルディ・アルバが勝手知ったる古巣のエリア内左奥から折り返すと、ゴール前で待っていたロドリゴがvolea(ボレア/ボレーシュート)を決めて、楽勝ムードに拍車がかかったかに見えた彼らだったんですが、どうやらこの日の敵は身内にいたよう。というのもその後、何度もモラタがヘッドのチャンスをもらいながら、その4回とも全てに失敗してしまい、追加点が取れないのですから、困ったもんじゃないですか。
いえ、ルイス・エンリケ監督は後で「Ha sido el mejor partido de Morata con nosotros/ア。シードー・エル・メホール・パルティードー・デ・モラタ・コン・ノソトロロス(私たちのチームでは最高のモラタの試合だった)」とフォローしてくれていましたけどね。ただ、どうやら一番、彼が役に立ったのは「Ha sido determinante aguantando el balon cuando jugabamos largo/ア・シードー・デテルミナンテ・アグアンタンドー・エル・バロン・クアンドー・フガモス・ラルゴ(ウチがロングでプレーした時はボールをキープする決定的な働きをしてくれた)」(ルイス・エンリケ監督)ことだったようで、いや、もう最近、アトレティコではそればかりやらされていますからね。逆に肝心の決定力の方に疑問符がつくような有様ではこれから先が思いやられる?
そうこうするうち、1-0のまま始まった後半、19分にはピケが代表を引退して以来、日替わりでセルヒオ・ラモスとペアを務めていたイニゴ・マルティネス(アスレティック)がセットプレーの際、ヨハンセン(ウェスト・ブロムウィッチ)を倒したとされ、ペナルティの判定が。キング(ボーンマス)にPKを決められ、同点に追いつかれてしまったスペインでしたが、大丈夫。その5分後にはモラタが怒りの爆走、ボールを持って敵エリア内に入ったところをGKヤーステイン(ヘルタ・ベルリン)に引っくり返され、こちらも笛を吹いてもらえたんですよ。もちろんPKはクリスチアーノ・ロナウドの退団でマドリーどころか、代表でも第1キッカーとなったラモスがパレホ(バレンシア)やロドリゴ、地元のスペシャリストらを制して担当。
得意のパネンカ(GKの正面に緩く蹴るPK)風で決めると、今季はPK10本全て成功している実力を示してくれたから、助かったの何のって。いやあ、32才の当人については先週、6月15日にセビージャ(スペイン南部)のカテドラル(大聖堂)ですでに3人の息子さんがいる芸能人の彼女、41才のピラル・ルビオさんと挙式、予算100万ユーロ(約1億3000万円)の披露宴にはAC/DCやエアロスミスといった大御所を招待して演奏してもらうなんて話も読んだんですが、幸いここ3年間と異なり、今季のマドリーは6月1日のCL決勝に煩わされることはなし。
おかげで準備に専念できるということでしょうが、となると、スペインが昨年秋に行われた初めてのネイションズリーグでは連勝で好スタートしながら、最後はイングランドにもクロアチアにも3-2で連敗。6月5日から始まるファイナルフォーへの切符を逃がしたというのもスケジュール的には良かった?まあ、それはうがちすぎですが、このPKで何とかリードを取り戻したスペインはその後、ルイス・エンリケ監督にも余裕ができたんでしょうかね。まずは何度もヒザの靭帯断裂で苦しみ、ようやく28才で初招集となったカナレス(ベティス)をパレホと交代でデビューさせてあげることに。
続いてセバージョス(マドリー)がロドリ(アトレティコ)と代わると、いよいよ43分、30才の新人、ファン・マタ(ヘタフェ)がピッチに入ったんですが、こちらもまた感動のデビューです。そう、昨季バジャヤドリーで35本ゴールを挙げ、2部のピチチ(得点王)の看板を引っ提げて、マドリッドの弟分チームに迎えられた彼ですが、実は1部でプレーするのは今季が初めて。それまでは地方リーグや3部のチームに所属し、2009年など、給料不払いを抗議して、2部Bのペガソのチームメートと共に試合前にユニのパンツを下げるパフォーマンスにも加わるという苦労もしているんですが、いやまさに継続は力なり。
ヘタフェではボルダラス監督の下、更に成長し、今季13得点でサラ(スペイン人選手の得点王)レースのトップに立って現在、リーガ4位といまだかつて、弟分チームには縁のなかったCL出場権争いに貢献しているとなれば、ルイス・エンリケ監督からお声が掛かったのも不思議はなかったかと。いえ、この試合では交代の際、先日のバレンシアとのコパ準々決勝やリーガ前節で引き分けたせいか、メスタジャの観客からpito(ピト/ブーイング)が聞こえたものの、ほとんどボールに絡む機会はなかったんですけどね。日曜もサレル(バレンシア近郊)のパラドール(国営ホテル)のグラウンドで練習したスペイン代表は月曜に移動、火曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からアウェイで対戦するのはマルタですからね。
今度はかなり相手と実力差があるため、スペインの前線も先発ローテーションがあるんじゃないかと思いますが、さて。どちらにしろ、このユーロ予選は11月までと長丁場ですし、本大会はそれこそ来年6月となれば、この先もメンバー的には紆余曲折がありそうですし、マタを含め、今回初招集となったメンバーが定着できるかはまだまだわからず。うーん、2012年にユーロ優勝をして以来、タイトルとは遠ざかっているスペイン代表だけにそろそろまた、ビッグな大会で力を示せるチームに戻ってくれるといいのですが。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
だってえ、今更ゴールが戻ってきたとて、トリノでユベントスに3-0で負けてCL16強で逆転敗退したのも、サン・マメスでアスレティックに2-0と遅れを取り、首位バルサとの差が勝ち点10に開いてリーガ優勝が絶望的になったのも変わらないんですよ。おかげでグリーズマンなど、バルサ移籍の噂が再燃して、いえ、木曜にネットフリックスで公開になったドキュメンタリー、" Antoine Griezmann: Campeon del Mundo/アントワン・グリーズマン:カンペオン・デル・ムンド(世界の王者)"の中で当人は、「Amo al Atleti, amo a mis companeros de equipo y amo al Cholo/アモ・アル・アトレティ、アモ・ア・ミス・コンパネロス・デ・エキポ・イ・アモ・アル・チョロ(ボクはアトレティコ、チームメートたち、そしてシメオネ監督を愛している)」と語っていたんですけどね。
ようやくリュカとフィリペ・ルイスのケガが治り、paron(パロン/リーガの停止期間)明けには戻って来られるといっても、今季のようにケガ人が多発すれば、同様の状況に陥ってしまう可能性もある訳で…そう、こんな話ばかりになってしまうから、ジダン監督が復帰したとはいえ、同じく今季は終わった身分のお隣さんが来季の補強はアザール(チェルシー)だ、エムパベ(PSG)だ、ポグバだと浮かれているのもありますし、何だか最近の私は憂鬱なんですよ。
まあ、そんなことはともかく、金曜にはワンダ・メトロポリターノでもアルゼンチンとベネズエラの国際親善試合が行われ、先週は月曜以外、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でのスペイン代表の練習もpuerta cerrada/プエルタ・セラーダ(非公開)ばかりだったため、あまり外出していなかった私もちょっと、覗きに行ってみることに。普段とは違い、外環が青にライトアップされたスタジアムはいいとして、マドリッドには両国出身の移民が多いにも関わらず、観客2万8000人と半入り程度だったのには驚いたんですが、試合が始まると更なるサプライズが起こります。
というのも前半6分、ロサレス(エスパニョール)のロングパスを受けたロンドン(ニューキャッスル)がいきなりベネズエラの先制点を挙げてしまったせいで、何せ相手はメッシ(バルサ)が昨年夏のW杯以来、初めて復帰したアルゼンチンですからね。今回はマンチェスター・シティでゴールを入れまくっているアグエロやイグアイン(チェルシー)といった、リーガファンにお馴染みのFWが招集されていなかったり、ディ・マリア(PSG)が練習中に負傷してしまうという不運があったものの、折しもバルサの10番は前節のベティス戦でハットトリックを披露したばかり。誰もがその再現を期待していたんですが、やっぱり取り巻く選手が違うとそうそう上手くはいかない?
結局、前半終了間際にはメッシのクロスをヘッドしたラウタロウ(インテル)が外してしまい、逆に44分にはムリージョ(トンデラ)に2点目を奪われて折り返したアルゼンチンでしたが、後半14分にはようやくメッシのパスをロ・チェルソ(ベティス)が繋ぎ、ラウタロウが1点を返すことに。予定ではフル出場はしないことになっていたメッシもずっとピッチに残り、FKなどで同点を狙ったものの、最後は30分、PKからホセフ・マルティネス(アタランタ)に3点目を決められてしまうとは!いやあ、1-3で予想外の快勝をしたベネズエラの選手たちはおそらく、現在母国がひどい経済危機に襲われ、辛い思いをしている中、わざわざ応援に駆けつけてくれたファンに相当感謝していたんでしょうね。
アルゼンチンの選手たちがさっさとロッカールームに戻るのを尻目に場内一周を始めてしまい、私も先日のユーベとの2ndレグに挑む前だったレガネス戦後のアトレティコ、バルサとの女子1部リーガ頂上決戦でワンダを満員にしたアトレティコ女子に続き、3回連続でvuelta de honor/ブエルタ・デ・オノール(名誉の場内一周)に立ち会うことになりましたが、これもまた珍しい経験だったかと。何はともあれ、昨年アルゼンチンが同じ舞台でスペインと親善試合をした際も負傷で出られず、チームが6-1で惨敗するのをパルコ(貴賓席)から見守っていたメッシにとって、今季のCL決勝でトロフィーを掲げるといったことでもない限り、ここはゲンのいいスタジアムではないようです。
まあ、そのメッシが恥骨炎を理由に次はモロッコで親善試合をするチームを離れ、翌日にはバルセロナに戻ってしまったのは置いておいて、そろそろ本題に入らないと。土曜にメスタジャ(バレンシアのホーム)で行われたスペインとノルウェイのユーロ予選がどうだったか、お伝えしないといけません。昨年のW杯後に就任したルイス・エンリケ監督はまだ1度も同じスタメンを使っていないんですが、この日の3トップはモラタ(アトレティコ)とご当地選手のロドリゴ(バレンシア)にアセンシオ(レアル・マドリー)。そこへ5年ぶりに招集がかかったヘスス・ナバス(セビージャ)とジョルディ・アルバ(バルサ)の両SBが積極的に上がって絡むスピードのあるサッカーで序盤から、スペインは圧倒的優位に。
実際、前半6分にはジョルディ・アルバが勝手知ったる古巣のエリア内左奥から折り返すと、ゴール前で待っていたロドリゴがvolea(ボレア/ボレーシュート)を決めて、楽勝ムードに拍車がかかったかに見えた彼らだったんですが、どうやらこの日の敵は身内にいたよう。というのもその後、何度もモラタがヘッドのチャンスをもらいながら、その4回とも全てに失敗してしまい、追加点が取れないのですから、困ったもんじゃないですか。
いえ、ルイス・エンリケ監督は後で「Ha sido el mejor partido de Morata con nosotros/ア。シードー・エル・メホール・パルティードー・デ・モラタ・コン・ノソトロロス(私たちのチームでは最高のモラタの試合だった)」とフォローしてくれていましたけどね。ただ、どうやら一番、彼が役に立ったのは「Ha sido determinante aguantando el balon cuando jugabamos largo/ア・シードー・デテルミナンテ・アグアンタンドー・エル・バロン・クアンドー・フガモス・ラルゴ(ウチがロングでプレーした時はボールをキープする決定的な働きをしてくれた)」(ルイス・エンリケ監督)ことだったようで、いや、もう最近、アトレティコではそればかりやらされていますからね。逆に肝心の決定力の方に疑問符がつくような有様ではこれから先が思いやられる?
そうこうするうち、1-0のまま始まった後半、19分にはピケが代表を引退して以来、日替わりでセルヒオ・ラモスとペアを務めていたイニゴ・マルティネス(アスレティック)がセットプレーの際、ヨハンセン(ウェスト・ブロムウィッチ)を倒したとされ、ペナルティの判定が。キング(ボーンマス)にPKを決められ、同点に追いつかれてしまったスペインでしたが、大丈夫。その5分後にはモラタが怒りの爆走、ボールを持って敵エリア内に入ったところをGKヤーステイン(ヘルタ・ベルリン)に引っくり返され、こちらも笛を吹いてもらえたんですよ。もちろんPKはクリスチアーノ・ロナウドの退団でマドリーどころか、代表でも第1キッカーとなったラモスがパレホ(バレンシア)やロドリゴ、地元のスペシャリストらを制して担当。
得意のパネンカ(GKの正面に緩く蹴るPK)風で決めると、今季はPK10本全て成功している実力を示してくれたから、助かったの何のって。いやあ、32才の当人については先週、6月15日にセビージャ(スペイン南部)のカテドラル(大聖堂)ですでに3人の息子さんがいる芸能人の彼女、41才のピラル・ルビオさんと挙式、予算100万ユーロ(約1億3000万円)の披露宴にはAC/DCやエアロスミスといった大御所を招待して演奏してもらうなんて話も読んだんですが、幸いここ3年間と異なり、今季のマドリーは6月1日のCL決勝に煩わされることはなし。
おかげで準備に専念できるということでしょうが、となると、スペインが昨年秋に行われた初めてのネイションズリーグでは連勝で好スタートしながら、最後はイングランドにもクロアチアにも3-2で連敗。6月5日から始まるファイナルフォーへの切符を逃がしたというのもスケジュール的には良かった?まあ、それはうがちすぎですが、このPKで何とかリードを取り戻したスペインはその後、ルイス・エンリケ監督にも余裕ができたんでしょうかね。まずは何度もヒザの靭帯断裂で苦しみ、ようやく28才で初招集となったカナレス(ベティス)をパレホと交代でデビューさせてあげることに。
続いてセバージョス(マドリー)がロドリ(アトレティコ)と代わると、いよいよ43分、30才の新人、ファン・マタ(ヘタフェ)がピッチに入ったんですが、こちらもまた感動のデビューです。そう、昨季バジャヤドリーで35本ゴールを挙げ、2部のピチチ(得点王)の看板を引っ提げて、マドリッドの弟分チームに迎えられた彼ですが、実は1部でプレーするのは今季が初めて。それまでは地方リーグや3部のチームに所属し、2009年など、給料不払いを抗議して、2部Bのペガソのチームメートと共に試合前にユニのパンツを下げるパフォーマンスにも加わるという苦労もしているんですが、いやまさに継続は力なり。
ヘタフェではボルダラス監督の下、更に成長し、今季13得点でサラ(スペイン人選手の得点王)レースのトップに立って現在、リーガ4位といまだかつて、弟分チームには縁のなかったCL出場権争いに貢献しているとなれば、ルイス・エンリケ監督からお声が掛かったのも不思議はなかったかと。いえ、この試合では交代の際、先日のバレンシアとのコパ準々決勝やリーガ前節で引き分けたせいか、メスタジャの観客からpito(ピト/ブーイング)が聞こえたものの、ほとんどボールに絡む機会はなかったんですけどね。日曜もサレル(バレンシア近郊)のパラドール(国営ホテル)のグラウンドで練習したスペイン代表は月曜に移動、火曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からアウェイで対戦するのはマルタですからね。
今度はかなり相手と実力差があるため、スペインの前線も先発ローテーションがあるんじゃないかと思いますが、さて。どちらにしろ、このユーロ予選は11月までと長丁場ですし、本大会はそれこそ来年6月となれば、この先もメンバー的には紆余曲折がありそうですし、マタを含め、今回初招集となったメンバーが定着できるかはまだまだわからず。うーん、2012年にユーロ優勝をして以来、タイトルとは遠ざかっているスペイン代表だけにそろそろまた、ビッグな大会で力を示せるチームに戻ってくれるといいのですが。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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