【東本貢司のFCUK!】オプション豊富なイングランド
2016.03.30 14:00 Wed
▽先日の代表フレンドリー「ドイツ対イングランド」は実に示唆に富んだ一戦だった。まずは、母国が敵地で2-0から華麗にひっくり返してみせたという事実。無論、これで勝った方が「↑」でもう一方が「↓」などと早合点するわけではない。一つ間違いないのは、ともに世代交代を視野に入れた布陣をぶつけてきた事情の上で、現時点ではイングランドが一歩先んじている、ということだろう。ジョー・ハートのマイナーな故障で繰り上げ出場となったジャック・バトランドの「ユーロ絶望」は大誤算だったが、バック4と中盤の思い切った若返り策、もしくはその“テスト”に関しては、後半の大攻勢~逆転勝利が示すように、高いスピリットと二枚腰が期待できる仕上がりと見た。まだ“石橋をたたく”可能性はもちろんある(例えば、ジャギエルカ、ミルナーらの起用)が、アリやダイアーに使える目途が立った上に、バークリーやドリンクウォーターを控えに回せる“余裕”も。
▽裏を返せば、まだベストメンバーを固定しづらい状況ということにもなるのだが、ここはあえて、ユーロそのものを一種の試運転の機会ととらえて見切り発車し、照準を2年後のロシアに据えるという青写真も見えてこないではない。ロイ・ホジソンのポストマッチコメントには、この勝利(敵地でW杯チャンピオンに逆転で勝った)で今回のイレヴンを構成した若手がノッていけるという、手ごたえのようなものを感じる。つまり、仮にユーロで思ったほどでもない結果が出なかったとしても、その先の二の矢、三の矢がホジソンの頭の中で組みあがりつつあるということではないか。その「最大のポイント」が、キャプテン、ウェイン・ルーニーに関するホジソンのメッセージだ。「ウェインは今でもわたしのプランの欠かせないピース」と、一気に噴出した「ルーニー不要論」を悠然と一笑に付した件が、何よりも印象的。となると“新生”スリーライオンズは幾通りものオプションを繰り出せる寸法になる。識者の中にはヴァーディーをスタメンから外す案も出るほどだ。
▽一例をあげると、ワントップにケイン、中盤をトップ下にアリ、両サイドはララーナとスターリング(もしくはウェルベック)、ダブルアンカーにダイアーとヘンダソンを据える変則ダイアモンド型中盤。実際、筆者もこれには驚いた。今シーズン前半を休養に充てた格好のヘンダソンやウェルベック、スターリングがどうして優先されるのか。しかも、バークリーが軽視されていることもさることながら、ルーニーもヴァーディーも控え要員とは! 言うまでもないことだが、ホジソンの起用ポリシーには「調子のいい者を優先」する節もない。ならば、これは一種の敵をかく乱する意味でのブラフか?(お断りしておくが、この予想布陣はホジソンの“意思”を反映するものでも何でもなく、一部メディアの独断的視点にすぎない)。そこで一応、筆者の現時点でのベスト想定プラン(中盤~前線)を挙げておく。ワントップのケインを手前に見て、上がり目の右にヴァーディー、左にはバークリー。トップ下がルーニーで、ダブルアンカーがアリとヘンダソン(ダイアー)。
▽あくまでも(少々個人的好みも混じった)構成ではあるが、たぶん、一番のカンどころはその後ろ、バック4との兼ね合いだ。今回のドイツ戦はスモーリングとケイヒルだったが、ここにジャギエルカとストーンズを入れるか、あるいは組み合わせるかどうか。おそらく、ホジソンはその辺りの相性やカヴァーセンスの良し悪しを考慮中だと思われるのだが、いかがだろうか。両SBがクライン、ローズの若手抜擢のままで行くのかどうかも、そこに絡んでくるはずだが、ここに限って識者の見解になぜかブレがない。クライン、ローズで問題なし、というのである。その成否はまだ判断のつけようもないと思うのだが、ふと筆者にはひょんな方向からひらめきが飛びこんできた。さて皆さん、シリア戦の日本のバック4をどう見たか。GKの好セーヴをやたらと持ち上げる論調が多かったが、実際はシリアのシュートがほぼ正面に来たというのが真実ではなかったか。いや、そんなことよりも、あれほどあわやと思わせるシュートを打たせた日本のDFにこそ問題があったのでは?
▽ジャギエルカもケイヒルも今では相当に場数を踏んできて、安定感はともかくややマンネリ気味にすら映る。またそれ以上に、二人はそれぞれの理由で今季ここまでクラブでの出場機会が極端なくらい限られてきている。それならば、進境著しいスモーリングとセンスは一級品のストーンズにあずけ、両サイドも併せてガラリの若返りをぶつけた方が、この先(2年後~)のためにも得るものが大きいのでは、とまあ、ホジソンがそんなことをつらつら考えているような気もしてくるのだが・・・・。いずれにせよ、楽しみは想像をはるかに超えて増えてきたようだ。「スイス(代表)、イタリア(インテル)時代を振り返ってみても、今のスリーライオンズほど楽しみなチームはかつてない」とうそぶくホジソンのお手並み拝見といったところだが、一つだけ、筆者の勝手なリクエストを。ヴァーディーには是非ドリンクウォーターをセットにして欲しい。これは、例えばクロースとミュラーに匹敵する(?)意外性を兼ね備えた「いざというときの」呼び物になると思うのだが。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
▽裏を返せば、まだベストメンバーを固定しづらい状況ということにもなるのだが、ここはあえて、ユーロそのものを一種の試運転の機会ととらえて見切り発車し、照準を2年後のロシアに据えるという青写真も見えてこないではない。ロイ・ホジソンのポストマッチコメントには、この勝利(敵地でW杯チャンピオンに逆転で勝った)で今回のイレヴンを構成した若手がノッていけるという、手ごたえのようなものを感じる。つまり、仮にユーロで思ったほどでもない結果が出なかったとしても、その先の二の矢、三の矢がホジソンの頭の中で組みあがりつつあるということではないか。その「最大のポイント」が、キャプテン、ウェイン・ルーニーに関するホジソンのメッセージだ。「ウェインは今でもわたしのプランの欠かせないピース」と、一気に噴出した「ルーニー不要論」を悠然と一笑に付した件が、何よりも印象的。となると“新生”スリーライオンズは幾通りものオプションを繰り出せる寸法になる。識者の中にはヴァーディーをスタメンから外す案も出るほどだ。
▽あくまでも(少々個人的好みも混じった)構成ではあるが、たぶん、一番のカンどころはその後ろ、バック4との兼ね合いだ。今回のドイツ戦はスモーリングとケイヒルだったが、ここにジャギエルカとストーンズを入れるか、あるいは組み合わせるかどうか。おそらく、ホジソンはその辺りの相性やカヴァーセンスの良し悪しを考慮中だと思われるのだが、いかがだろうか。両SBがクライン、ローズの若手抜擢のままで行くのかどうかも、そこに絡んでくるはずだが、ここに限って識者の見解になぜかブレがない。クライン、ローズで問題なし、というのである。その成否はまだ判断のつけようもないと思うのだが、ふと筆者にはひょんな方向からひらめきが飛びこんできた。さて皆さん、シリア戦の日本のバック4をどう見たか。GKの好セーヴをやたらと持ち上げる論調が多かったが、実際はシリアのシュートがほぼ正面に来たというのが真実ではなかったか。いや、そんなことよりも、あれほどあわやと思わせるシュートを打たせた日本のDFにこそ問題があったのでは?
▽ジャギエルカもケイヒルも今では相当に場数を踏んできて、安定感はともかくややマンネリ気味にすら映る。またそれ以上に、二人はそれぞれの理由で今季ここまでクラブでの出場機会が極端なくらい限られてきている。それならば、進境著しいスモーリングとセンスは一級品のストーンズにあずけ、両サイドも併せてガラリの若返りをぶつけた方が、この先(2年後~)のためにも得るものが大きいのでは、とまあ、ホジソンがそんなことをつらつら考えているような気もしてくるのだが・・・・。いずれにせよ、楽しみは想像をはるかに超えて増えてきたようだ。「スイス(代表)、イタリア(インテル)時代を振り返ってみても、今のスリーライオンズほど楽しみなチームはかつてない」とうそぶくホジソンのお手並み拝見といったところだが、一つだけ、筆者の勝手なリクエストを。ヴァーディーには是非ドリンクウォーターをセットにして欲しい。これは、例えばクロースとミュラーに匹敵する(?)意外性を兼ね備えた「いざというときの」呼び物になると思うのだが。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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