今度はどんなサッカーを見せてくれるのだろう…/原ゆみこのマドリッド

2023.03.25 19:30 Sat
4年ぶりにスペイン代表復帰のDFナチョ[写真=原ゆみこ]
4年ぶりにスペイン代表復帰のDFナチョ[写真=原ゆみこ]
「今は休むが勝ちよね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、W杯以来のparon(パロン/リーガの休止期間)を迎えた今週末のアトレティコが土日月と練習をしないと知った時のことでした。いやあ、この3月のインターナショナルマッチウィークは代表常連だったコケ、マルコス・ジョレンテ(スペイン)、ビッツェル(ベルギー)、ヒメネス(ウルグアイ、W杯最後のガーナ戦での騒動で4試合の出場停止処分)がお留守番に。1月末にコパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに敗退して以来、ずっと週1ペースでしか試合をしていない彼らだけに却って、代表戦に行った選手たちの方が運動不足にならずにいいんじゃないかとも思ったんですけどね。

週中にはバリオスがスペインU21に、控えGKのゲルビッチもクロアチアに追加招集されたため、ここ数日は前述の4人に加え、サウール、レマル、エルモーソの7人と大量のカンテラーノ(下部組織の選手)たち、そしてピッチの隅で細々とリハビリを続けるレギロンといった陣容でマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションは進行。おそらくシメオネ監督が週末に三男ジュリアーノのプレーするサラゴサ(2部)の試合を見に行きたかったとか、リーガ残り12試合で勝ち点差5あるレアル・マドリーに追いついて、2位にのし上がる計画の詳細を詰めたかったとか、3連休の理由はその辺にあるのかもしれませんが、まあ、見れば、弟分のラージョ、ヘタフェも金土日とお休みしていますしね。
各国代表選手はファルカオ(コロンビア)、ディミトリエフスキ(北マケドニア)、バリウ(アルバニア)、カメージョ(スペインU21)、シス(セネガル)と5人だけの前者には来週末のバレンシア戦に勝って、またヨーロッパの大会出場圏である7位以上に戻りたいという野望がありますし、出向中のエネス・ウナル(トルコ)、ジェネ(トーゴ)、アルデレテ(ポルトガル)抜きで木曜にはレアル・ハエン(RFEF3部/実質5部)と親善試合。マタの2ゴールとラタサの得点で2-3と勝利した後者もようやく、前節のセビージャ戦勝利で13位とジャンプアップしたものの、まだ降格圏とは勝ち点3差だけで残留への闘いはまだ道半ばなんですけどね。それでも皆、3連休にするんですから、別にいいかと思いますが、日曜のクラシコ(伝統の一戦)でバルサに負け、首位との差が勝ち点12に拡大。

リーガ逆転優勝がほぼ不可能となってしまったマドリーだけは土曜も練習するようなのはちょっと不思議なんですが、何せ、アンチェロッティ監督にはDecima(デシマ/CL優勝10回目)を達成した翌年、リーガ、コパ・デル・レイ、CLのメインタイトルを1つも獲れず、解任されたという、第1期2年目の悪夢の再来が迫っていますからね。もちろん当面は4月5日のコパ準決勝クラシコ2ndレグでremontada(レモンターダ/逆転劇)を果たし、オサスナかアスレティックと当たる決勝も制して、まさに当人の下で2014年に優勝して以来、ご無沙汰しているタイトルを獲るのも大切ですが、スペインのビッグ2ではあまりコパは高い評価をされないという傾向も。

よって、契約2年目をまっとうするにはCL2連覇、Decimoquinta/デシモキンタ(15回目のCL優勝)を達成するしかないんですが、それにはまず、4月12日、18日の準々決勝チェルシー戦で勝ち抜ける必要が。次の準決勝でもマンチェスター・シティかバイエルンと当たりますから、全然、楽な戦いではないんですけどね。折しも今はビニシウス、ロドリゴ、ミリトンがブラジル代表に参加中というのもあってか、チッチ監督がW杯後に退任してから、まだ正式な指揮官のいない同代表にアンチェロッティ監督が招聘されるのではないかという噂もチラホラと。それはそれとして、当面はフランス代表を引退したベンゼマ、スペイン代表に呼ばれなかったアセンシオ、その他、メンディ、リュディガー(オーストリア代表をお休み)、ルーカス・バスケスらをしっかり鍛えて、11人の各国代表選手たちがケガをせずに戻って来るのを祈るばかりじゃないでしょうか。
え、それで新監督を迎えたスペイン代表はどうしているのかって?いやあ、昨年のW杯16強対決ではモロッコにPK戦3人連続失敗で敗退して、ルイス・エンリケ監督の契約が延長されず。後任として2013年からU19代表、U21代表を率い、銀メダルを獲った2021年東京五輪の指揮も執ったルイス・デ・ラ・フエンテ監督に選ばれたA代表チームはユーロ2024の予選に備え、月曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会本部で合宿入りしたんですけどね。すでに最初の招集リストからは日曜のクラシコにも回復が間に合わなかったペドリ(バルサ)、オサスナ戦でまたしても負傷してしまったジェラール・モレノ(ビジャレアル)が落ちて、代わりにボルハ・イグレシア(ベティス)、U21に出戻りする予定だったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)を追加招集で補った総勢26人はその日の夕方、施設のメイングランドでもう3年ぶりぐらいになる一般公開練習を行うことに。

もちろん私も張り切って見に行ったんですが、開始時間の10分前ぐらいに着いた時には入口に長蛇の列が。聞くと、すでに500人座れるスタンドが満員となり、入場制限がかかっていたそうで、いえ、幸い私はプレス用ゲートから入れもらえて助かったんですけどね。さすがにこれだけ大勢のファンが見学できなかったとなると、世間体が悪いと協会も考えたか、最後は彼らもゴール裏の壁の上に鈴なりになって立ち見するのを許されたんですが、コロナ禍と重なったのもあって、ルイス・エンリケ監督時代には昔は恒例だった初日の公開練習がなくなっていましたからね。

おまけにW杯から16人も選手が入れ替わっていたため、ファンもちょっと戸惑ったんじゃないかと思いますが、え?ブスケツ(バルサ)が代表引退、同僚のジョルディ・アルバも呼ばれずと、2008年から2012年までユーロ、W杯、ユーロとビッグタイトルを3連覇したスペイン黄金期を経験した選手がとうとう消滅。更に代表73キャップ、カタール大会ではキャプテンの1人にもなっていたコケ(アトレティコ)も落選し、1人参加となったモラタがメンバー最多の66キャップで新キャプテンになっていたのはビックリじゃないかって?

そうですね、スペイン代表のキャプテンは出場試合の多い順で決まるんですが、今回の副キャプテンなんか、39キャップのロドリ(マンチェスター・シティ)、同33のカルバハル(マドリー)とかなり少なめ。第4キャプテンのオジャルサバル(レアル・ソシエダ)だけはダニ・オルモ(ライプツィヒ、29キャップ)、4年ぶりの代表復帰となるナチョ(マドリー、同22)を差し置いて、デ・ラ・フエンテ監督が指名したんですが、まあ、スビメンディ、ミケル・メリーノと選手を3人出しているのは、セバージョスも呼ばれたマドリーとレアル・ソシエダだけなので、クラブでもキャプテンを務めているオジャルサバルは結構、妥当な人選なのかもしれません。

ちなみに初日の練習で注目を浴びていたのは折しも前夜、カンプ・ノウでの試合でカルバハルにcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞い、ボールがあるのとは全然違うところにいたセバージョスを後ろからド突くなど大暴れ。それでもイエローカードさえ受けず、「Esa jugada es de la roja clara/エサ・フガーダ・エス・デ・ラ・ロハ・クラーラ(あのプレーは明らかにレッドカードだ)」(セバージョス)と批判されていたガビとマドリー勢の関係だったんですが、もしや、他の選手たちがアップやロンド(輪の中に入った選手がボールを奪うゲーム)している間、ガビとバルデ、バルサのティーンエイジャー2人だけが自転車漕ぎだったのは用心のためだった?

ただ、セバージョスによると、「監督はボクらの間にイザコザがあったことを知っていて、nos dijo que lo habláramos/ノス・ディホ・ケ・ロ・アブララモス(話し合うように言われた)」そうで、実は彼らはどちらもセビージャに近い村の出身。「Ya sabéis como somos en el sur. Somos muy calientes/ジャー・サベイス・コモ・ソモス・エン・エル・スール。ソモス・ムイ・カリエンテス(南部出身者がどんなだか知っているだろう。とても熱いんだ)」という訳のわかったような、わからないような理由で和解したそうですけどね。

以前、モウリーニョ監督率いるマドリーとグァルディオラ監督のバルサがクラシコ祭りになった時もプジョルやチャビ(現バルサ監督)、イニエスタ(ヴィッセル神戸)らとカシージャス、シャビ・アロンソ(現レバークーゼン監督)、セルヒオ・ラモス(PSG)らが代表にも険悪な雰囲気を引きずって、デル・ボスケ監督が仲立ちに一役買ったなんて話があったのを思い出しますが、大丈夫。選手たちが土曜試合組と日曜試合組に分かれ、後者が軽いランニングに入ったところからはガビとバルデも合流し、マドリー勢の横には行かなかったものの、これといったイザコザは起こりませんでしたっけ。

そして1時間ぐらいで公開セッションは終わったんですが、ファンにとって嬉しかったのはこの日は選手たちが全員、スタンドに近づいて、サインや写真に応じてくれたこと。逆に意外だったのは2月にデ・ラ・フエンテ監督から電話をもらい、「パフォーマンスとは無関係に自分を当てにしていないし、これからも当てにすることはないと言われた」ため、代表引退声明を出したラモスを惜しむ声がまったく上がっていなかったことなんですが、いやまあ、彼は36才という年齢差別を仄めかしていたんですけどね。今回は35才のイアゴ・アスパス(セルタ)や33才のナチョも再招集されていますし、やはり年とは関係なく、招集リスト発表時の記者会見ではただの電話ではなく、ビデオ電話だったと強調していたデ・ラ・フエンテ監督がまったく新しい代表チームを作りたかっただけ?

そんなスペイン代表の練習は水曜のマスコミ向け15分限定公開セッションでも見ることができたんですが、やっぱりこの部分だけでは一体、誰が先発候補なのかとか、フォーメーションはどうなるのかとかいった辺りはまったくわからず。いえ、サッカー協会の施設は外に出されても、マハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場のように周りをシートで覆われている訳ではないので、遠めながらグラウンドが見えるんですけどね。

それでわかったのかどうかは不明ですが、AS(スポーツ紙)などは木曜にスタメン予想を掲載。GKは負傷中のウナイ・シモン(アスレティック)の代わりに再招集となったケパ(チェルシー)、DFはカルバハル、ラポール(マンチェスター・シティ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、そしてW杯開幕前に足首ネンザで涙の代表離脱したガヤ(バレンシア)、ボランチとしてロドリ、スビメンディ、その前にセバージョス、アスパス、ガビ、そしてモラタのワントップの4-2-3-1となっていたんですが、もしやそのせいでしょうか。

木曜にブライアン・ヒル(セビージャ)がケガで代表離脱した後、金曜にはユーロ2024予選1節のノルウェー戦が行われるマラガにチームは移動。ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)での前日練習の方は以前のように一般公開せず、デ・ラ・フエンテ監督は「プライバシーの必要なセッションをするから」と言っていたんですが、月曜からマルベージャ(マラガに近いビーチリゾート都市)で合宿していた相手もスペインマスコミはシャットアウトしていたようですしね。このグループはその他、スコットランド、キプロス、ジョージアという5チーム編成で、うち上位2チームが本大会に行けるという、またしても甘目の予選とはいえ、その辺は真剣勝負の公式戦っぽい?

ちなみに今回、ノルウェーの目玉だったエースのハーランド(マンチェスター・シティ)は足の付け根のケガの回復が間に合わないことが判明して、火曜にはイギリスに帰還。彼を見るにはマドリーのCL準決勝まで待たないといけないことになったのは、私も残念なんですけどね。あとは2015年にマドリーに16才の若さで入団しながら、結局、定着できずに現在はアーセナルで活躍しているウーデゴールぐらいしか、楽しみがないのは何ですが、新生スペインのスタートとなるノルウェー戦は土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)キックオフ。今度はただボールを持っているだけでなく、効率的に攻めていけるスペインになっていてくれたらと思います。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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もう逆転には驚かなくなった…/原ゆみこのマドリッド

「差が激しいわね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、今週末のメトロポリターノは「Fin de Semana del Nino/フィン・デ・セマーナ・デル・ニーニョ(子供の週末)」と銘打って、スタジアム周辺がキッズパークに化すと知った時のことでした。いやあ、確かに日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にはセルタ戦もあって、家族連れには嬉しい企画なんでしょうが、折しもその日はレアル・マドリーのリーガ優勝祝勝行事の日。 午前10時半にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でトロフィーをもらった後、マドリッド州庁舎、マドリッド市庁舎を表敬訪問して、午後1時頃からは交通止めしたシベレス噴水広場のステージでファンとお祝いというスケジュールになっているんですが、その間、アトレティコファンはキッズパークで遊んでいろとでも?まあ、お祝いの様子はレアル・マドリーTVが生中継してくれるため、日本にいるファンも楽しめそうな時間で良かったと思いますが、ええ、水曜にCL決勝進出も決まっただけに、選手たちも一片の憂いもなく、ハジケられますからね。 それと比べ、とうにCLから敗退、来季の出場権もまだ確定せず、未だに4位争いという、お隣さんとは次元の違う闘いに明け暮れているのがアトレティコなんですが、え?もし何かの間違いでもあって、準々決勝でドルトムントを破っていれば、準決勝の相手、PSGはエムバペがまったく存在感を示せず。2連敗で敗退したぐらいなんだから、彼らだって、ウェンブリーでの決勝に行けたんじゃないかって?うーん、そう思うと、私もますます悔しくなるんですが、物は考えよう。 だってえ、木曜にはロンドンへの航空券が800ユーロ(約14万円)近くに高騰しているんですよ。それもお隣さんと当たるとなれば、いくら今季、マドリーが唯一、負けた2試合がアトレティコ戦だとはいえ、CLに関しては異次元の力が働くみたいですからね。2014年、2016年の決勝の二の舞になるのはほぼ間違いなく、アトレティコファンが涙して帰って来る運命にあるとすれば、6月1日は360度大型スクリーンもすでに稼働済み。おかげでピッチに置かれたスクリーンを見るより、ずっと快適に観戦できるようになったサンティアゴ・ベルナベウでのパブリックビューイングで、ドルトムントとの決勝を楽しむのも悪くはないかと思うことにしているんですが…。 まあ、そんなことはともかく、水曜のCL準決勝バイエルン戦2ndレグがどうだったかもお伝えしていかないと。1週間前の1stレグではミュンヘンで2-2とイーブンの結果だったため、特に今回はremontada(レモンターダ/逆転突破)と気合を入れる必要はなかったんですが、この日も忠実なマドリーファンたちは午後7時から、ベルナベウ周辺に集まって、4000人以上がチームバスをお出迎え。そのほとんどは試合のチケットを持っていないため、ええ、丁度、キックオフ1時間半前に私が家を出て、いつもTV観戦する近所のバル(喫茶店兼バー)にコーヒーを飲みに入ったところ、すでにテーブル席を確保して待機しているファンが何人もいましたからね。 チームバスがスタジアムに入った後、座れるバルを見つけるのは難しいんじゃないかと思ったんですが、それはそれ。4200人のバイエルンファンも駆けつけ、超満員になったベルナベウでの一戦はアリアンツ・アレナとは真逆のスタートに。ええ、あちらでは鬼のように攻めてきたトゥーヘル監督のチームに前半15分までに5、6本もシュートを撃たれ、クロースの神パスから、ビニシウスのゴールで先制したのが、冗談みたいでしたけどね。そこはやっぱり、スタンド全面を覆うモザイクで迎えてくれたファンの前で、防戦一方の姿は見せられませんって。 早くも12分にはビニシウスのシュートがGKノイアーが触った後にポストに当たり、そのボールを撃ったロドリゴも止められてしまうという、ビッグチャンスがあったんですが、残念ながら、最初の45分、観客はゴールを祝うことはできなかったんですよ。その脇で27分には1stレグでは控えだったナブリがケガを再発。このところ、マドリー移籍の噂が出たり、消えたりしている左SBのデイビスがピッチに入り、ハリー・ケイン、ムシアラ、ザネと合わせ、アタッカー4人を並べたトゥーヘル監督の攻撃的人員起用が頓挫してしまったなんてこともあったんですが、そのまま、試合は0-0で入ることに。 後半も序盤はシュートをバイエルンより、多く撃っていたマドリーだったんですが、GKノイアーを破ることはできず、うーん、ドルトムント戦で30本以上シュートを撃って無得点だったPSGはともかく、先週末には私もヘタフェやラージョが撃っても撃ってもゴールが入らない病にかかっているのを目の辺りにしたばかりでしたからね。これはもしやマドリーもと、眉をひそめかけた矢先の23分、バイエルンがカウンターを発動。ケインからボールをもらったデイビスがマドリーエリア内までドリブルで上がり、先制点を挙げてしまったから、さあ大変! いえ、大変なのはバイエルンの方ですよ。というのも、この0-1という逆境がマドリーのレモンターダ魂を刺激するのは火を見るよりも明らかだったから。実際、即座にアンチェロッティ監督がクロースとチュアメニをモドリッチとカマビンガに代えた後、26分にはモドリッチの蹴ったCKから、バルベルデが撃ったボールがデイビスに当たってオウンゴールとなったんですが、この時はナチョがキミッヒの顔をど突いて倒したとして、VAR(ビデオ審判)注進を受けた主審がモニターをチェック。結果、ファールでノーゴールとなったんですが、何よりマズかったのは、バイエルンが残り時間を計算せずに先制してしまったことでしょうか。 何せ私なんか、マドリーダービーがある度、アトレティコが逆転されずに済むには残り10分?いや、ロスタイム入り直前に得点すれば、逃げ切れるかもしれないと考えている口ですからね。それなのに、トゥーヘル監督が31分にはザネをCBのキム・ミンジュに、40分にはもう大丈夫だろうと大黒柱のケインとムシアラをチュポ・モティングとミュラーに代えてしまったのは早計もいいところ。いえまあ、後で当人はどの選手も身体的トラブルで交代を余儀なくされたと言っていたんですけどね。 さすがに無得点のまま、アンチェロッティ監督が35分にロドリゴとバルベルデを下げ、ホセルとブライムを入れた時には、ええ、2021-22シーズンの奇跡のレモンターダラッシュの決勝トーナメント、奇しくもトゥーヘル監督が率いていたチェルシーとの準々決勝2ndレグやマンチェスター・シティとの準決勝2ndレグで終盤に口火を切ったのはロドリゴでしたからね。これは如何なものかと思ったものの、大丈夫。もう、このチームのレモンターダ根性はどの選手がどうとか言うレベルのもんじゃないんですよ。 それが起こったのはいよいよ大詰め43分、バイエルンのエリアを囲んでの長いプレーで、ビニシウスが撃ったシュートをノイアーがキャッチできず。当人によると、「ボールは胸の辺りに来ると予想していたんだが、芝でイレギュラーに跳ねて、少し上に来た」そうなんですが、こぼれたボールにホセルが脱兎のごとく駆けつけたんですよ。そのまま押し込んで同点ゴールをゲットしてしまうとはまさにシナリオ通り。おまけに1-1では延長戦でまた帰りが遅くなるのが嫌だった私の願いを叶えるがごとく、46分には再びホセルが今度はリュディガーのラストパスから決めて、勝ち越し点を挙げてくれたから、もう場内は興奮の坩堝と化すことに。 いやあ、元はマドリーのカンテラーノ(RMカスティージャの選手)だったものの、その後はクラブを転々。2年前にはアラベスでプレーしていたホセルは、奥さん同士が姉妹という縁で義兄弟となったカルバハルのつてで、パリでのCL決勝リバプール戦を現地観戦していたんですけどね。それが昨季は2部に降格したエスパニョールで16得点挙げ、サラ(スペイン人の得点王)を獲ったこともあり、マドリーにレンタル移籍で来ることになったのも何ですが、まさか、CL準決勝でマドリーのレモンターダの主役となるとは、当人も想像すらしていなかったのでは? え、それでも最初は9分、それがホセルの2点目のVARオフサイド判定などにも時間がかかって、延々と続いたロスタイムの13分には、バイエルンもデ・リフトがゴールを決めていなかったかって?まあ、そうなんですが、その際、線審が先走って、リュディガーがエリア内に落ちてきたボールをヘッドした段階でオフサイドの旗を上げてしまい、主審も笛を吹いたため、マドリーの選手たちはプレーを停止。その状態で入ったゴールは認められず、同点にはならなかったのはラッキーだったかと。 もちろん、バイエルンサイドは猛抗議。そのまま試合が2-1と終わった後も「現代のサッカールールに反している」(トゥーヘル監督)、「オフサイドが明確でない時はプレーを続けさせなければいけない。線審はボクにミスだと謝っていた」(デ・リフト)と不満を爆発させていたんですけどね。といっても、たとえ同点になって、延長戦入りしたとて、「Esto es el Real Madrid, siempre creemos en nosotros y ha pasado una vez más/エストー・エス・エル・レアル・マドリッド、シエンプレ・クレエモス・エン・ノソトロス・ア・パサードー・ウナ・ベス・マス(これがレアル・マドリーだ。いつもボクらは自身を信じていて、また同じことが起きた)」(ビニシウス)という、彼らが勝っていたんじゃないかと思うのはきっと、私だけではない? うーん、さすがに2年ぶりの決勝進出だけに、ピッチで「A por la 15/ア・ポル・ラ・デシモキンタ(15回目のCL優勝を目指して)」と書かれたユニを身に着けた選手たちが場内一周。往復ダイブなどで盛大に祝った後、会見に出てきたアンチェロッティ監督も「Es algo mágico y no tiene ninguna explicación/エス・アルゴ・マヒコ・イ・ノー・ティエネ・ニングーナ・エクスプリカシオン(これはマジックのようもの。全然、説明できない)」と、尋常ではないレモンターダ体質がどうして発現するのか、わからないようなんですけどね。こればっかりは、2014年からの10年間にCL優勝を5回もしているという事実という共に、もうマドリーはこういうチームなんだと思うしかないんですが、となると、おそらく今季の決勝も勝つのは…。 そんなマドリーも、日曜にはリーガ優勝祝賀行事を行うとはいえ、この3週間はリーガの残り4試合をプレーしないとならず、土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)にはアウェイでグラナダ戦に挑むことに。ファンにしてみれば、CL決勝まで間がありすぎて、じれったく感じられるかもしれませんが、アンチェロッティ監督とっては、「Estos partidos nos van a ayudar a preparar la final/エストス・パルティードス・ノス・バン・ア・アジュダール・ア・プレパラール・ラ・フィナル(これらの試合は決勝の準備をするのに役立つ)。ローテーションはするが、全員がプレーする」のだそう。 その中には先週末のカディス戦でプレシーズンにヒザの靭帯を断裂して以来、ようやく復帰を遂げたGKクルトワと、その少し前に同じケガから戻ったミリトンに実戦のリズムを取り戻させる目的もあるようで、いや、シーズン後、ブラジル代表でコパ・アメリカが控えている後者はわかりますけどね。ベルギー代表の前者は今年のユーロに行かないと予め宣言。となれば、調子を上げる必要があるとしたら、ルーニンに代わって、CL決勝でプレーしてもらう下心があるんじゃないかと穿ってしまうんですが、果たして如何に。 それより、気の毒なことになりそうなのはグラナの方で、ええ、19位の彼らは土曜の先の時間でプレーするマジョルカがラス・パルマスに負けない限り、たとえ、マドリーに勝っても今節で2部降格が決定。いえまあ、日曜にホームにマドリッドの弟分、ヘタフェを迎える17位カディスも負けると、セルタ、ラージョ、マジョルカの結果如何によって、降格が決まってしまうかもしれないんですけどね。逆に3チームが確定すると、やはり日曜にアウェイでバレンシア戦となる16位のラージョが助かるという面もあるんですが、この辺はいかにも世知辛い。 一方、木曜にはメトロポリターノでセルタ戦に向けた練習をしていたアトレティコはというと、こちらも土曜のアスレティックvsオサスナ戦の結果次第ではまた、5位との差が勝ち点3になってしまいますからね。ヒメネスが今季7度目の負傷をして、出場できないとはいえ、この試合には前節、出場停止だったグリーズマンも戻って来る上、極楽浄土のホームゲームとなれば、そんなに心配する必要はないはずですが…来週のミッドウィークリーガではコリセウムでの兄弟分ダービー、最終節はサン・セバスティアンでのレアル・ソシエダ戦とまだ2試合も超苦手のアウェイゲームが残っているのが、何か嫌ですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.11 22:00 Sat

リーガ優勝は決まったけど…/原ゆみこのマドリッド

「トロフィーはミュージアムに35個もあるから、きっと大丈夫なのよ」そんな風に私が結論づけていたのは月曜日、先週末の34節でリーガ優勝が確定したレアル・マドリーへのトロフィー授与が来週火曜、サンティアゴ・ベルナベウでのアラベス戦の日になると知った時のことでした。いやあ、最初はアウェイではあるものの、次節土曜のグラナダ戦でと、スペイン・サッカー協会に通達されていたみたいなんですけどね。それをクラブが、まさに降格決定の可能性が限りなく高く、実際、決まれば、悲しみのどん底に浸っているであろうヌエボ・ロス・カルメネスのファンの前で、選手たちがトロフィーを掲げて、優勝を祝うのもどうかと変更を頼んだところ、協会はそれを受諾。 ただし、今週末はすでに全面改装がほぼ完了したベルナベウで初コンサートが開催予定。よって、スタジアムでのお祝いはできないものの、午前11時にリーガ優勝報告のマドリッド州庁舎、市庁舎への表敬訪問、続いて午後1時から、恒例の祝賀行事があると聞いていたため、市内をオープンデッキバスでパレードする時やシベレス噴水広場の特設ステージに上がる時、トロフェーが手元になかったら、ちょっと格好がつかないんじゃないかと思ったんですけどね。そこはスペイン1部リーグ最多優勝回数を誇るマドリーとあって、近年、トロフィーのデザインが変わったなんて話も聞かないため、2021-22シーズンのやつでも持って行けば、沿道から見るファンにも気がつかれないのでは? まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を順にお伝えしていくことにすると、金曜にはヘタフェがコリセウムでアスレティックと対戦。前節にはアルメリアにアウェイで勝って、相手の2部降格と引き換えに1部残留確定を手に入れたボルダラス監督のチームだったんですが、それでもう、安心しちゃったんですかね。5月5日のスペインの母の日にちなんで、選手たちが自身の母親や妻を伴って入場するイベントは微笑ましかったものの、前半27分には、ニコ・ウィリアムスのパスから、イニャキ・ウィリアムスにエリア前から撃たれて、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)で失点。 後半6分にも兄弟の連携プレーが炸裂し、今度はカウンターから、ニコがドリブルで上がり、最後はイニャキが決めて、0-2とされてしまったんですが、実はその後、アスレティックは9人なったにも関わらず、ヘタフェは1点も取れなかったんですよ。そう、13分にはジェライがハンドで、34分にはパレデスがイエローカード2枚で退場して、おまけに38分にはルイス・ミジャのクロスがエリア内でラウール・ガルシアの腕に当たり、いえ、その時、バルベルデ監督が抗議で退席処分となったのはあまり関係ありませんでしたけどね。 PKまでもらったヘタフェだったにも関わらず、この日のGKウナイ・シモンが絶好調だったのが運の尽き。「Durante la semana tira penaltis, no falla prácticamente ninguno/ドゥランテ・ラ・セマーナ・ティラ・ペナルティス、ノー・ファジャ・プラクティカメンテ・ニングーノ(週中、練習でPKを蹴っているが、実質的に1本も失敗しない)」(ボルダラス監督)という、グリーンウッドがPKを弾かれてしまったのなんてもう、おまけのようなもんだったかと。 だってえ、この試合、ヘタフェはシュートを29本も放ち、うち9本は枠内だったのに全部、止められているんですよ。後半ロスタイムの9分間など、アスレティックをエリア内に囲い込んで攻めていたんですが、そのまま、0-2で試合は終了。ボルダラス監督が、「ボルハ(ヒザの靭帯断裂)やウナル(1月にボーンマスに移籍)がいたら、負けなかっただろう」と言い訳するのもわかりますが、これじゃ、せっかく前節の直接対決で勝ち点差を6に広げた兄貴分、アトレティコへの援護射撃にも何にもなりませんって。 いえまあ、ただでさえ、CB不足のバルベルデ監督のチームから、最後に残っていたジェライとパレデスを次節出場停止にしてくれたのは有難いですけどね。どちらにしろ、10位では、7位のコンフェレンスリーグ出場圏を目指す意欲も薄かったか、6差だったベティスとの差が9に開いても構わなかったようですが、次節のカディス戦ではアルメリアに続き、再びヘタフェが相手に引導を渡す役目を果たすことになりそうなのは奇遇。でもねえ、すでに2部降格が決まったチームと対戦するのが弟分仲間に楽勝をプレゼントすることになったかというと、まったくそんなことはなく、ええ、日曜の夜試合でラージョはアルメリアの前に撃沈しちゃったんですよ。 というのもあと1勝すれば残留確定に王手の懸かったイニゴ・ペレス監督のチームだったんですが、エスタディオ・バジェカスでの試合では、うーん、キックオフと同時に雨が凄い勢いで降り始めたのも気を散らしたんですかね。今季初先発のファルカオを筆頭に、序盤からシュートを5、6本撃って、優勢に進めていた前半30分、チャバリアがスローインを古巣訪問となったエンバルバに送ってしまうという、大ポカが発生。そのボールが1月までヘタフェにいたチョコ・ロサーノに繋がり、GKディミトリエフスキが破られてしまったのはともかく、まさかラージョまで、撃っても撃っても入らない病にかかっていたとは! 実際、こちらも前後半合わせて計27本(うち枠内10本)のシュートを放ちながら、残留の争いから解放されたGKマクシミアーノが今季最高のパフォーマンスを披露。途中出場したRdT(ラウール・デ・トマス)も止められ、最後のプレーではベベの直接FKも弾かれて、そのまま0-1で負けてしまったんですが、幸い前日、兄貴分がカディスに勝ってくれたため、17位との勝ち点8差は変わりませんでしたからね。もうここまでくると、日照り続きのFW陣がいきなり目を覚ますとは思えませんし、あとは残り4試合が3試合に、そして2試合となって、タイムアップで残留が確定するのをラージョは待つしかないのかも。 え、それでマドリーがリーガ優勝を確定する元となった、そのカディス戦はどんな試合だったんだって?いやあ、これまた、前節レアル・ソシエダ戦同様、CL準決勝バイエルン戦を考えての大規模ローテーション試合で、アンチェロッティ監督が先週火曜の1stレグから、リピートした選手はナチョだけだったんですけどね。そんな中、注目を集めていたのはGKクルトワの実戦復帰で、ええ、彼は昨夏のプレシーズンにヒザの靭帯を断裂。復帰目前だった3月には反対側のヒザの半月板を痛めて手術という不運があったせいで、今まで戻って来られなかったんですが、ようやく屋根の閉まったサンティアゴ・ベルナベウのピッチで驚異的な音響効果を実感できることに。 いやもう、その凄まじさといったら、8階のプレス席はスピーカーが近いのか、試合中はいいんですが、BGMが流れるキックオフ前やハーフタイム中など、大音量に頭が痛くなる程で、私など、次回は絶対に耳栓を持っていこうと決意したぐらいだったんですけどね。試合の方はカディスが最初から、勝利を諦めていたようだったにも関わらず、前半はミリトン、ギュレル、ホセルらのシュートはあったものの、スコアは動かないままに。 それが後半になっていきなり盛り上がったからビックリで、始まりは4分、ドリブルで上がってきたクリス・ラモスの1対1のシュートをクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)。ブランクがあっても衰えない神通力を見せつけた直後、ブライムがエリア前からのシュートでGKレデスマを破ってくれたんですよ。更に20分にはアンチェロッティ監督が、「Quería piernas frescas y, sobre todo, ganar el partido/ケリア・ピエルナス・フレスカス・イ、ソブレ・トードー、ガナール・エル・パルティードー(フレッシュな足が欲しかったのと、とにかく勝ちたかった)」という理由でギュレルをベリンガムに交代。その彼が、ピッチに入って3分後にはブライムのアシストで今季リーガ18得点目を挙げ、2点差になったとなれば、もう勝負はついたってもんです。 その後、ブライムに代わって入ったビニシウスもミリトンにrabona(ラボナ/利き足を軸足の後ろに回して蹴る技)でクロスを挙げ、残念ながら、そのヘッドはレデスマに弾かれてしまったものの、大喝采を浴びていましたしね。そのまま2-0で終わってもファンは満足したかと思いますが、ロスタイム3分にはビニシウスのスルーパスで上がったナチョがエリア内から、ホセルにラストパスを送り、マドリーは3点目もゲット。3-0の完勝でカディスの儚い望みを打ち砕き、選手たちも応援団の前で飛び跳ねて、勝利を祝っていたんですが…。 何せ、この時の状態ではまだ、優勝確定までに勝ち点1が足りませんでしたからね。次の時間帯のジローナ戦でバルサが勝った場合、次節持ち越しの可能性もあったため、それ以上、ピッチで大々的なお祝いもできなかったのは仕方なかったかと。一応、選手たちはまさかの際に備え、誰1人、ミックスゾーンに姿を現わさず、ロッカールームで試合を見ていたんですが、いやあ、そのまさかが起こるとは! そう、早い時間のクリステンセンの先制点をドブビクのヘッドで帳消しにされながら、前半ロスタイムにはレバンドフスキのPKゴールで1-2とリードして終えたバルサだったものの、後半に全てが崩壊。20分過ぎにはポルトゥとミゲール・グティエレスの連続ゴールで逆転されると、更に再びポルトゥに止めを刺され、4-2で負けたとなれば、いえ、その頃にはすでにシベレス噴水広場は、市当局が交通止めをしなかったため、歩道にしかいられないにも関わらず、何千人ものマドリーファンで溢れ返っていたんですけどね。 ジローナが来季のCL出場権を確定し、バルサを抜いて2位に上がった後、レアル・マドリーTVでのアンチェロッティ監督のコメントで、私もシベレスでの祝賀イベントが日曜にあることを知ったんですが、ベルナベルのパルコ(貴賓席)前ホールで内輪の優勝祝いをした選手たちが、その時も喜びの頂点にいられるかは微妙。というのも、この水曜午後9時(日本時間翌午前4時)にはバイエルン戦2ndレグが控えているからで、ええ、1stレグは2-2のドローと、まったくイーブンでの対戦になりますからね。 ただ、マドリーは1981年にCL決勝で負けて以来、8回連続で優勝しているため、この準決勝の関門を越えさえすれば、たとえ、相手がPSGになろうが、ドルトムントになろうが、ウェンブリーでの一発勝負でDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)を達成するのは堅い気がするんですけどね。1stレグでのバイエルンが予想以上に手ごわかったのも事実。すでにレバークーゼンの優勝が決まっているブンデスリーガでは同じ土曜、6人スタメンローテーションして、シュツットガルトに3-1と負けていましたが、ベルナベウでの対戦はどうなることやら。このビッグマッチ、ハリー・ケーンやザネ、ムシアラ、ナブリからマドリーのゴールを守るのは、カディス戦で休養したGKルーニンの役目になりますが、CL決勝でのクルトワとのポジション争いも見据えて、頑張ってくれることを期待しています。 そして土曜の夜はアトレティコもマジョルカに挑んだんですが、いやあ、もう近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で彼らのアウェイ戦を見るのは今季、ほとんど苦行と化していたため、午後9時のキックオフ直後はスマホでTVのスポーツニュースを見ながら、シベレスが賑わう様子に気を取られていた私も悪いんですけどね。ふと気づくと、開始5分にはアトレティコが先制ゴールを挙げていて、それもアスピリクエタのスローインをナスタシッチがヘッドクリアしたボールを拾ったリケルメの技ありの一発だったから、意表を突かれたの何のって。 そう、ゴールを背にしていたのをヒールキックでボールを後ろに送り、振り向き様、蹴ったところ、敵DF2人の間を通って、GKライコビッチを破ったんですが、これはもしかして、前節アスレティック戦前日に居残りシュート練習。まんまと3点目のオウンゴールを引き起こしたサムエル・リノの二匹目のドジョウを狙って、コレア、バリオスと一緒に特訓した甲斐があった? とはいえ、この日のアトレティコのゴールはこれだけで、いえまあ、後半にはコレアからラストパスをもらったジョレンテがコントロールに失敗し、撃ち上げてしまう惜しいチャンスもあったにはあったんですけどね。グリーズマンが出場停止、モラタもここ16試合でたった1得点だけの日照りまくりとあって、それ以上は望むべくもなかったんですが、違ったのは選手たちの心構え。後でリケルメも「Sabíamos que teníamos que tomárnoslo como una final por los malos resultados fuera/サビアモス・ケ・テニアモス・ケ・トマールノスロ・コモ・ウナ・フィナル・ポル・ロス・マロス・レスルタードス・フエラ(アウェイでの悪い結果のせいで、ボクらは決勝のようにこの試合に挑まないといけなかった)」と言っていたように、しっかり守った彼らは最後まで失点せず、0-1で勝利をものにできたんですよ。 うーん、この試合の前日、今季16試合の半分が黒星という、超悲惨なアウェイ弱者ぶりの原因を尋ねられたシメオネ監督が、「Sé lo que pasa pero no te lo puedo decir/セ・ロ・ケ・パサ・ペロ・ノー・テ・ロ・プエド・デシール(何が起きているのかはわかっているが、言うことはできない)」と答えているのを聞いて、原因がわかっているなら、何で手を打たないのかと、私も呆れていたぐらいだったんですけどね。確かにこの日はグリーズマン不在で5-4-1という後ろに比重を置いたシステムを使い、ここ2年、ムリキのゴールで負けていたサン・モイシュでの試合で守備に穴を開けなかったのは立派ですが、全てのタイトルの可能性を失った後になって、選手たちがようやく改心するって…。 何にせよ、もうアトレティコには4位を死守して、ここ12年間、連続出場しているCLに来季も出ることしか、目標がないんですが、この日曜の次節はマジカル・メトロポリターノでプレーできますからね。相手もビジャレアルに勝ったことで、ラージョ同様、あとはグラナダ、カディスが落ちるのを待つばかりと、ほぼほぼ残留が確定しているセルタとあって、あまり心配しないで済むのは助かりますが…その日はマドリーのシベレス祝賀イベントの日とあって、カディス戦、バレンシア戦をプレーする弟分共々、彼らがどんなにいい試合をしても、あまりマスコミに取り上げられてもらえなさそうなのは淋しいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.07 22:30 Tue

ドイツ勢のリーグ順位は信用ならない…/原ゆみこのマドリッド

「何かイラッとするわよね」そんな風に私が首を振っていたのは木曜日、前日の午後、TVで流し見していたテニスのマドリード・オープン準々決勝、カルロス・アルカラスvsルブレフ戦のボックス席にコケいたような気がしたのが、本当に当人だったと、スポーツ紙の写真で確認できた時のことでした。いやあ、お隣さんと違って、CL準々決勝で敗退したアトレティコは今週、心おきなくミッドウィークフリーを楽しんでいるんですけどね。おかげで火曜の午後もデ・パウルをアルカラスの16強対決戦で見かけたと思えば、夜10時からのラファ・ナダルvsレヘチカ戦にはシメオネ監督もカハ・マヒカ(マドリッド市南部にある総合競技場)へ。 現役引退を見据えて、これがマドリッドでプレーする最後の大会と言っていたナダルが、ええ、当人も熱烈なファンであるレアル・マドリーのCL準決勝バイエルン戦1stレグと時間が被るのを残念がっていたんですけどね。ミュンヘンでの試合が終わった後、日付が変わる頃にストレート負けで敗退してしまうのをシメオネ監督は見届けたんですが、ええ、彼にはもうCL決勝に備えて、ライバルを見張っている必要はなし。 それでももし、アトレティコがドルトムント戦2ndレグであんなことにならず、準決勝に進出できていれば、水曜はコケもメトロポリターノにPSGを迎えるべく、ホテルに缶詰め。ビジャ、ラウール、そしてまさに早朝にマドリッドに戻ったモドリッチらと同じボックス席で、腕に故障を抱えたアルカラスが2日連続で挑んだ試合で敗退。マドリッド・オープンからスペイン人選手が全滅するところをノホホンと見ているなんて、ありえなかったと思うと、ちょっと複雑な気分になったのはきっと、私だけではなかったかと。 といっても、PSGもアトレティコが4-2とやられてしまったジグナル・イドゥナ・パルクでの準決勝1stレグに1-0と負けていたため、ブンデスリーガ5位のドルトムントは世間で言われていた程、弱いチームではなかったようなんですけどね。おかげで少しはアトレティコの顔も立ったかと思いますが、ルイス・エンリケ監督のチームが来週、準々決勝バルサ戦同様、パリでの2ndレグで逆転突破できるかどうかはともかく、マドリーもサンティアゴ・ベルナベウではマンチェスター・シティ戦2ndレグ同様、ゼロからスタートすることに。何故かというと…。 その火曜のバイエルン戦1stレグでは、シティ戦での失敗に学び、キックオフ1時間15分前に近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入ったため、今度は視界を遮る立ち見客がいないテーブル席を確保できた私だったんですけどね。まさか、開始1分もしないうち、ザネに至近距離からシュートを撃たれ、GKルーニンに救われるという、ドッキリに見舞われるとは!その後も立て続けにハリー・ケーン、ミュラー、ムシアラと前半15分までに8本も撃たれ、店内のファンたちを真っ青にさせていたんですが、それが何と、24分にはマドリーが先制点を奪っていたから、ビックリしたの何のって。 そう、後でムシアラなども「マドリーは何もないところから、チャンスを作る力がある」と言っていたんですが、クロースがその慧眼でビニシウスへスルーパスを放ち、キム・ミンジュを置き去りにした彼がGKノイアーの前でシュート。それが決まったんですが、いえ、お手柄の当人は「Toni siempre hace todo muy fácil y me ha regalado un gol/トニ・シエンプレ・アセ・トードー・ムイ・ファシル・イ・メ・ア・レガラードー・ウン・ゴル(クロースは常に何でも簡単にしてくれて、ボクにゴールを贈ってくれた)」と、まだ6月切れるマドリーとの契約を延長するかどうか、決めていないドイツ人MFのアシストを手放しで褒めていたんですけどね。 逆にクロースに言わせると、「El pase al final no ha sido tan especial, lo ha sido el movimiento/エル・パセ・アル・フィナル・ノー・ア・シードー・タン・エスペシアル、ロ・ア・シードー・エル・モビミエントー(結局のところ、パスはそんなに特別なものじゃなくて、彼の動きが上手かった)。ビニシウスは素早いだけでなく、賢くて、いつ動かないといけないか知っている」そうなんですが、ただその時だけだったんですよ、マドリーが攻めに行ったのは。0-1となった後も前半は守っているだけだったため、これはギュレルの一発で勝ったリーガ前節のレアル・ソシエダ戦展開になるかと思いきや、そこは天下のバイエルン。 トゥーヘル監督がゴレツカをゲレイロと入れ替えた後半には、うーん、序盤にはノイアーにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたクロースの一撃もあり、アンチェロッティ監督もゲームをコントロールできているフェーズだったと認めていたんですけどね。何と8分にはムシアラとサイドを変えて、右からドリブルでエリア内に入ったザネに同点ゴールを決められてしまうんですから、いくらブンデスリーガで今季、レバークーゼンに大差でタイトルを持っていかれたといっても、決してヨーロッパの名門の底力を侮ってはいけない? 実際、その4分後には、出場停止のカルバハルの代わりに先発したルーカス・バスケスがエリア内でムシアラを倒し、PKを献上。イングランド代表で同僚のベリンガムがキャプテンの気を散らしに話しかけにいったのも何のその、ケーンが危なげなく決めて、とうとう2-1と逆転しちゃいましたからね。ただその時の私は2ndレグはサンティアゴ・ベルナベウだし、CLではマドリーの根性のremontada(レモンターダ)精神が発現し易いため、僅差で負けた方が却って、来週水曜の試合が盛り上がっていいんじゃないかなんて思っていたのも事実。 それもあって、アンチェロッティ監督がチームにエネルギーを注ぎ込むため、ナチョをカマビンガに、クロース、ベリンガムをモドリッチ、ブライムに代えていくのを淡々と見守っていたんですが、38分、またしてもビニシウスがやってくれるとは!そう、今度は彼からのパスをもらったロドリゴがエリア内でキム・ミンジュに倒され、PKを獲得すると、それを決めて、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成。2-2の同点で1stレグを終わらせたとなれば、もうウェンブリーでの決勝の切符はゲットできたも同然? いえまあ、クロースも「Lo que se vio en los primeros 15 minutos hoy no es el plan/ロ・ケ・セ・ビオ・エン・ロス・プリメーロス・キンセ・ミヌートス・オイ・ノー・エス・エル・プラン(今日、最初の15分に見せたのはプランとは違った)」と言っていたように、この日はシティ戦2ndレグのように守り倒すつもりはなかったのか、いささか守備に強度が足りず。バイエルンに11本(うち5本が枠内)もシュートを撃たれていたのは気になりますけどね。アンチェロッティ監督も「Mostró su mejor versión y nosotros no/モストロ・ス・メホール・ベルシオン・イ・ノソトロス・ノー(相手は最高のバージョンを披露して、ウチは違った)。水曜まで改善する時間はある」と反省していましたが、何はなくとも、彼らの強みは、トゥーヘル監督も「2度のチャンスで2ゴール。もう前にもやっている」と認めていたように突極の効率性。 それを2ndレグで忌憚なく発揮できれば、大丈夫かと思いますが、またしても何千人というマドリーファンがチームバスのお出迎えをするであろう、そのビッグマッチの前に、マドリーにはベルナベウでリーガ戦が入っていて、それは土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)のカディス戦。実はこの試合に勝って、次の時間帯でジローナ戦をプレーする2位のバルサが引分け以下で終わるといよいよ、リーガ優勝が数字的にも決まるんですよ。ただ、ライバルの試合の決着がつくまで、2時間もロッカールームで待機しないといけないこともあってか、優勝した場合でもその夜、シベレス噴水広場へチームがお祝いをしに出向くことはないのだとか。 うーん、2年前にリーガとCLの2冠を達成したシーズンも同じような巡り合わせになって、リーガ優勝が週末に決まった後、翌週に準決勝シティ戦2ndレグが控えていた時は行っているんですけどね。今回は自重して、バイエルンとの決戦に全集中したいということなのか、え?でもソシエダ戦同様、スタメン大規模ローテーションをかけるマドリーにカディスが負けると決まっている訳じゃないんだろうって?まあ、そうなんですが、ペジェグリーノ監督のチームは降格圏の18位ですしね。アンチェロッティ監督もそれを考えてか、プレシーズンにヒザの靭帯を断裂。3月にも反対側のヒザの半月板部分損傷で復帰が遅れたGKクルトワの今季初先発を予告しているぐらいなんですが、いや、もしやこれはCL決勝を睨んでの布石ということも。 それだと何か、ここまで頑張ってきたルーニンが気の毒になってしまいますが、とりあえず、カディスはマドリーに負けてもまだ、降格が決定することはなく、勝ち点5上にいるセルタが日曜にビジャレアルに、そして6上にいるマジョルカが負けることに期待するばかりなんですが…そのアギーレ監督のチームは土曜午後9時(日本時間翌午前4時)にアトレティコをホームに迎えますからねえ。ご存知、今季はアウェイ絶対弱者と化している彼らはここ2試合、マジョルカ島で連敗していて、おまけに前節アスレィック戦で5枚目のイエローカードをもらったグリーズマンが累積警告で出場停止に。 未だにレマルとメンフィス・デパイのリハビリも終わらないため、今週のシメオネ監督はマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでスタメン選びに試行錯誤していたようで、最初はコレアとモラタの2トップだったのも、木曜にはコレアの1トップに変更。まあ、あれだけアウェイでダメダメな姿を見せ続けられているだけに、いくらスポーツ紙のアトレティコ番が、チームは3位奪取を諦めていないと大風呂敷を広げても、私はもう、あまり期待していないんですけどね。それだけにこの34節、大事になってくるのは先週末、メトロポリターノマジックのおかげで勝ち点差を6に広げることができた5位アスレティックと金曜に対戦する弟分の援護射撃な訳で…。 ただ、コリセウムにアスレティックを迎えるヘタフェも丁度、前節のアルメリア戦で1部残留が確定しましたからね。折しも1年前の今頃、ボルダラス監督がキケ・サンチェス・フローレス監督を引き継ぎ、辛うじて最終節に残留が決まった昨季とは隔世の感がありますが、かといって、10位の彼らが勝ち点6差ある7位のコンフェレンスリーグ出場圏を目指すのかは微妙。実際、ボルダラス監督も「Vamos a ver hasta dónde somos capaces de llegar, no tenemos objetivo/バモス・ア・ベル・アスタ・ドンデ・ソモス・カパセス・デ・ジェガール、ノー・テネモス・オブヘティーボ(ウチがどこまで行けるのか、見てみよう。特に目標はない)」と言っていましたしね。 それでもきっと、勝利でホームのファンを喜ばせようという意欲は選手たちにあるはずなので、コパ・デル・レイ優勝以来、3試合、白星から遠ざかっているアスレティック相手に善戦してくれると嬉しいんですが、さて。一応、朗報なのは負傷でここ数試合、出られなかったアレニャが戻ってこられることですが、とにかくマジョラル、アランバリ、ドゥアルテ、ファン・イグレシアスと、もう今季はプレーできない選手が多いヘタフェですからね。アルメリア戦では2ゴール挙げたグリーンウッドも毎試合、得点してくれるFWではないため、その試合で3点目を挙げ、マヌ・デル・モラルの持つクラブ最多得点記録37に並んだマタ辺りが頑張ってくれればと思います。 そしてまた1チームだけ、日曜試合となったラージョはエスタディオ・バジェカスにヘタフェに負けて、降格が決まったばかりのアルメリアを迎えるんですが、何せ彼らは3-0でコロッとビジャレアルにやられてしまった前節のイメージが悪すぎましたからね。降格圏とは勝ち点8差あるとはいえ、まだこちらは残留が確定していませんし、ここは相手にやる気がなくなっているところを利用して、一気に3ポイントを稼げれば、もうあまり心配することもなくなるんですが…どちらにしろ、このオフシーズンはゴールを挙げられるFWを獲得するのが、ラージョはマストになりそうです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.03 22:00 Fri

リーガの終わりが近づいてきた…/原ゆみこのマドリッド

「でも彼らには色アレルギーはないからなあ」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、CL準決勝1stレグでレアル・マドリーをアリアンツ・アレナに迎えるバイエルンが、応援に来るファンに「Alles in Rot(全員赤で)」と呼び掛けているのを知った時のことでした。いやあ、この手は準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグ前にマドリーも「Un Bernabeu vestido de blanco/ウン・ベルナベウ・ベスティードー・デ・ブランコ(白をまとったベルナウベウ)」のスローガンの下、スタンドを真っ白に染めて、相手を圧倒するために使っていたんですけどね。 とはいえ、マドリーには、ジグナル・イドゥナ・パルクのGelbe Wand(黄色の壁)を前に準々決勝2ndレグでドルトムントに逆転負けした、お隣さんのような黄色アレルギーもアウェイ弱者ということもないため、果たして効果があるのかどうか。実際、バイエルンと最後に顔を合わせた2018年の準決勝でもマドリーはアウェイの1stレグで1-2と勝ち、ホームで2-2と引分けて決勝に進出。キエフでの決勝でリバプールを破り、Decimotercero(デシモテルセーロ/13回目のCL優勝)を達成した実績がありますしね。その前年度など、まさにアンチェロッティ監督率いるバイエルンがジダン監督のマドリーに準々決勝総合スコア3-6で敗退したなんてこともあったんですが、まあ、とりあえず、先週末のリーガから見ていくことにすると。 それこそ、そのバイエルン戦のため、金曜にリーガ33節の先陣を切ることになったマドリーなんですが、サン・セバスティアンでのレアル・ソシエダ戦は雨がザーザー降る中、昨夏に引退したダビド・シルバがクラブから金の紋章を授与されてスタート。すでに前節のクラシコ(伝統の一戦)でバルサに勝利して、ほぼ優勝が確定していただけに、アンチェロッティ監督もミュンヘンでの試合で出場停止となるカルバハル、そしてチュアメニ以外、9人を大規模スタメンローテーションする余裕ぶりだったんですけどね。そのおかげもあったか、序盤からずっと攻めていたソシエダでしたが、決定力が欠けていたのが致命的でした。 だってえ、ほとんど敵エリアに近づかなかったマドリーだったにも関わらず、29分にはチュアメニが送ったロングボールから、カルバハルがゴール前に出したラストパスをソシエダのDFたちがカットできず。反対サイドにいたギュレルがワンタッチで押し込んで、先制点をゲットしてしまったんですよ。ええ、今季、フェルネバフチェから移籍した19才はこれまで、ほんの少ししかプレー時間がもらえず、かつてのウーデゴーア(現アーセナル)の二の舞を心配されていたんですけどね。この様子なら、趨勢が決まったリーガ残り5試合ではかなり出番が増えるのは確実かと。 え、でもソシエダもその2分後、久保建英選手がゴールを挙げていなかったかって?その通りなんですが、その前にバレネチェアがチュアメニにエリア前で足払いを掛けて倒し、それで転がったボールをオジャルサバルが繋いだという経緯が。VAR(ビデオ審判)通信を受けた主審がモニターチェックした結果、ファールでノーゴールとなることに。結局、その後は両チームとも点が取れず、マドリーが0-1で勝ったため、試合後には久保選手も「バレネチェアはボールを奪いに行って、獲られたのは相手が眠っていたから。Creo que eso en la Champions no lo van a pitar/クレオ・ケ・エソ・エン・ラ・チャンピオンズ・ノー・ロ・バン・ア・ピタール(CLだったら、あのファールは取らないと思う)」と結構、きつめの批判をしていたんですけどね。 それにはイマノル監督も同意していたんですが、どちらにしろ、ソシエダのEL出場圏6位キープの戦いは、7位のベティスと勝ち点2差しかないため、当分続きそうな。翻って、やはり褒めなくてはいけないのはマンチェスター・シティ戦2ndレグでも見せたマドリーの守備力なんですが、それもヒザの靭帯断裂から復帰したミリトンなど、この日が初フル出場試合でしたからね。アンチェロッティ監督も「ギュレル、セバージョス、フラン・ガルシアら、これまでプレー時間が少なかった選手たちが大きく貢献してくれた。Tenemos un plantillón con mucha calidad y compromiso/テネモス・ウン・プランティジョン・コン・ムーチャ・カリダッド・イ・コンプロミソ(ウチには高い質と献身の心を備えた素晴らしい選手層がある)」と言っていたんですが、これはなかなか、普通のクラブでは難しいですよね。 おかげで、残念ながら、月曜にはバルサもバレンシアに4-2で勝ってしまったため、一時は14に広がった勝ち点差は11のままだったんですが、それでも次節のカディス戦ではいよいよ、マドリーのリーガ優勝本決まり可能性が。ただ、その前に貧乏暇なしとはまさに真逆で、スペイン勢で唯一、CL準決勝進出している彼らは月曜にはもう、試合に出られないカルバハル、今週末復帰予定のクルトワ、まだリハビリ真っ只中のアラバも連れて早速、ミュンヘン入り。火曜午後9時(日本時間翌午前4時)のバイエルン戦に備え、スタジアム前日練習をしたんですが、風邪でソシエダ戦を休んだロドリゴ、胃腸炎明けで温存されていたベリンガム、そしてシティ戦2ndレグから、筋肉痛だったメンディもすっかり回復しているのは良かったかと。 といってもこれはまだ1stレグですからね。相手もムシアラ、ナブリ、ザネら、土曜にハリー・ケーンの2ゴールで勝利したフランクフルト戦に出られなかった選手たちが戻っているため、おそらくアンチェロッティ監督第1期だった2014年準決勝2ndレグの0-4の大勝みたいなことにはならず、かなり拮抗した展開が見られるのではないかと思いますが、さて。今回は激込み確実のバル(スペインの喫茶店兼バー)で120分超の長丁場観戦になる心配がないだけに、私もちょっと気分が楽です。 そして土曜にはまず、午後4時15分からヘタフェがアルメリア戦をプレーしたんですが、丁度、その時間に私は2部の弟分、レガネスを応援にブタルケに。それが、ここ4試合スコアレスドローという停滞状態がなかなか破れず、ネユウの負傷交代などもあったサラゴサ戦の前半もボルハ・ヒメネス監督のチームは得点できなくてねえ。幸い、後半12分にはラバのクロスをミゲール・デ・ラ・フエンテが頭で決めて、とうとうゴールは取り戻したものの、何なんでしょう。スタンドのファンが久々に勝利のお祝いができると勢い込んでいた後半ロスタイム3分、セルヒオ・ゴンサレスの腕に敵のシュートが当たり、VARモニターチェックでハンドによるPKとされてしまったから、さあ大変! 結局、50分に決まったマイケル・メサのPKゴールで1-1と終わり、5連続ドローなれば、日曜にはバジャドリーに同じ勝ち点で並ばれてしまったのも仕方ない?うーん、それでも1位は奪われなかっただけ、マシなんでしょうが、先週末は負けてしまったとはいえ、3位のエイバルもたった勝ち点差3ですからね。うっかり3位以下に落ちてしまうと、4チーム中、1チームしか1部に上がれない厳しいプレーオフの試練が待っていますし、ここは一刻も早く、レガネスにはドロー地獄から抜け出して、直接昇格で来季1部マドリット勢5チーム体制を復活させてもらいたいものですが…最近はチームにケガ人が増えてきているのが気掛かりではあります。 その裏で私がオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の二元中継で聴いていたヘタフェの方はというと、相手がダントツ最下位のアルメリアだったいうのがラッキーでしたかね。前半27分にはモリバが敵陣でロピからボールを奪い、そのラストパスを受けたグリーンウッドが先制。41分にはエンバルバのシュートをGKダビド・ソリアが弾いたボールを1月までヘタフェにいたチョコ・ロサーノに押し込まれるという、古巣恩返し弾を浴びるなんてことあったんですが、後半3分には今度はモリバが弾かれた後、グリーンウッドが自身2点目を挙げ、更に16分にもグリーンウッドのアシストでマタが3点目をゲットしたとなれば、もう安心ですって。 1-3で勝利して、アルメリアを2部降格確定に追いやっていたんですが、何よりだったのはこれで降格圏と勝ち点17となったヘタフェの残留が完全に決まったこと。あとは勝ち点6差とちょっと距離はあるものの、コンフェレンスリーグ出場圏の7位を目指してみるのもいいかと思いますが、彼らの決意がどこにあるのか、確認できるのは金曜、コリセウムでのアスレティック戦になりましょうか。折しも兄貴分との試合で未だにコパ・デル・レイ優勝酔いが未だに覚めていないことがわかったばかりの相手となれば、もしかしたら…。 そう、土曜はブタルケからセルカニアス(国鉄近郊路線)とメトロを使って、メトロポリターノに向かった私だったんですが、午後9時からのアスレティック戦には余裕を持って間に合うことに。それにしたって、アトレティコファンは心が広いのか、アウェイでCL準々決勝ドルトムント戦2ndレグ逆転敗退、続いてメンディソローサでアラベスに2-0負けと悲惨極まる姿をさらしてきた直後だというのに、チームを変わらぬ熱気で歓迎。フェルナンド・トーレス監督率いるフベニルAのリーガ優勝祝い、今季限りで引退を発表したOBのラウール・ガルシアへのオマージュ、更には先日、73才でお亡くなりになったトーレス父への黙祷とキックオフ前のメニューも満載だったんですが、実はこの試合、もう目標が4位キープで、来季のCL出場権を獲得することしか残っていない彼らにとっては背水の陣だったんですよ。 もちろん、それはアラベスに負けた後、5位のアスレティックとの勝ち点差がたったの3になってしまったからですが、シメオネ監督のチームの立ち上がりはかなり不安定。初っ端からイニャキ・ウィリアムスにフリーでvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃たれるなど、ドッキリさせられたんですが、15分には早速、メトロポリターノマジックが発動します。ええ、ジョレンテが上げたクロスをレクエがヘッドでクリアしたところ、それが丁度、エリア前にいたデ・パウルの前に落ち、そのシュートがガラレタに当たって、GKウナイ・シモンを破ってくれるとは、まるで冗談のようじゃないですか。 ただ、リードした時の常で時間が経つにつれ、一歩後退癖が顕著になってきたアトレティコは攻められていることが多くなり、いえ、だからって、ニコ・ウィリアムスがCKを蹴る時にモンキーチャントするおバカがいていいってことにはならないんですけどね。おかげで36分には一時試合が中断し、主審が差別行為禁止の場内アナウンスをクラブ職員に命じていましたが、幸いそれ以上の大事には至らず。その愚か者も翌日には警察により、身元が判明したため、刑事処分やスタジアム出入り禁止などの罰を受けるはずなんですが、でもそのせいで、アトレティコの選手たちの気が完全に散ってしまってはねえ。 それからパスが3度と続かないという、お馴染みのダメダメ状態に陥った彼らはついに45分、よりによってグリーズマンがウィリアムス兄にバックパスをプレゼント。そこからグルセタ、ウィリアムス弟に繋がって、同点ゴールを挙げられてしまったとなれば、それまで味方だったスタンドから、pito(ピト/ブーイング)が聞こえだしたのも仕方なかった?うーん、今季はホームで無敵だったアトレティコですが、まさにアスレティックにコパ準決勝1stレグで負けた後、リーガでもバルサに叩きのめされ、不敗神話が途切れていましたからね。1-1でハーフタイムに入った時は私も嫌な予感しかしなかったんですが…。 生きていたんですよ、メトロポリターノマジックは!そう、ロッカールームでシメオネ監督に「相手はウチが弱くて、怖がりで、意気地のないチームになって、時間の経過と共にファンが神経質になるのを待っている。だから、jueguen, jueguen, con tranquilidad/フエゲン、フエゲン、コン・トランキリダッド(落ち着いてプレーするように)」と言われたもの良かったか、反省してピッチに戻ったアトレティコは後半7分、コケのパスで抜け出したコレアが早々に勝ち越し点を挙げてくれたんです!おかげでスタンドのファンもいつもの応援状態に戻ってくれたとなれば、もう大丈夫ですって。 それでも1点差ではやや心もとなかったんですけどね。イロイロ選手交代があった後の36分、金曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションで追加のシュート練習をしたというサムエル・リノがエリア内から撃ったボールがゴールポストに当たり、ウナイ・シモンの背中でオウンゴールになってくれるとはまさに神様、仏様、メトロポリターノ様ってもんじゃないですか。 いえ、リノは44分にも同じような位置からシュートを撃って、敵DFにブロックされていたため、特訓は今週も続けてもらいたいところなんですけどね。アラベス戦を顔面神経痛で欠場したモラタもベンチにいたものの、ピッチに出る必要もないまま、試合は3-1でアトレティコが勝って終了。おかげでアスレティックとの差を勝ち点6に増やすことができた彼らだったんですが、今週末は大苦手のアウェイゲームの番となれば…。 何せ、コケの「アウェイでガツンと行けなかったことは、nos tiene que servir para la temporada que viene/ノス・ティエネ・ケ・セルビル・パラ・ラ・テンポラーダ・ケ・ビエネ(来季のために役立てないといけない)」という言葉を聞く限り、もう今季は原因究明も改善も諦めたようで、土曜のマジョルカ戦にはまったく期待ができませんからね。その上、アスレティック戦の終了間際にイエローカードをもらい、グリーズマンが累積警告で出場停止なってしまったとなれば、勝ち点7差の3位の座を狙うなんていうのは夢のまた夢。後はバルベルデ監督のチームがこのまま今季終了まで、コパ酔いから覚めてくれないことを祈るしかありませんって。 そして日曜にビジャレアルとのアウェイ戦に挑んだラージョは前半にセルロートに先制されると、後半にもCKからモスケラのヘッド、更に再びセルロートに決められて、3-0とあっさり負けてしまうことに。いやあ、前節のオサスナ戦勝利でほぼ残留に近づいたイニゴ・ペレス監督のチームだっただけに、恐れていた通りになってしまいましたが、まあ、残り5試合、この週末のアルメリア戦、グラナダ戦といったエスタディオ・バジェカスでの試合に勝てば、おそらく数字的にも確定しますからね。今はホームのファンに喜んでもらえる形でシーズンを終わらせることだけを考えてくれればいいんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.30 21:00 Tue

兄貴分チームはまだ頑張らないといけない…/原ゆみこのマドリッド

「バルセロナの記者たちは大変なのね」そんな風に私が同情していたのは水曜の夜、Gol(ゴル/スペインのサッカー専門の民放)をながら見していたところ、いやあ、バルサのチャビ監督がラポルタ会長邸に入ったのは午後7時ぐらいだったそうなんですけどね。それがようやく午後11時半近くになって、「チャビが出て来た!」と現場にずっと詰めていたリポーターから連絡が入り、中継がスタート。当人は何も言わずに車に乗って行ってしまったんですが、その後、現れたジュステ副会長に向けられたマイクの数の半端なかったことといったら、もう。 まあ、そのおかげで、「Xavi está muy ilusionado con el proyecto/チャビ・エスタ・ムイ・イルシオナードー・コン・エル・プロジェクト(チャビはこのプロジェクトにとても魅力を感じている)」と、先日のクラシコ(伝統の一戦)の後から噂になっていた、1月に当人が宣言していた今季限りから、来季も続投に変わったことが確認されたんですが、翌日にはラポルタ会長とチャビ監督の共同会見もありましたからね。そんな夜遅くまでメディアが張りつく大騒ぎになるとはさすが、スペイン2巨頭の片割れだけある? でもねえ、バルサはCL準々決勝敗退、クラシコ敗戦でリーガ優勝も絶望となったばかりで、まだ2位の座も確定しておらず。それがこの続投決定で、退団する指揮官に最後のご奉公をしようと頑張っていた選手たちの気が変わり、万が一、勝ち点2差の3位ジローナに追い越される可能性もありますからね。来季のスペイン・スーパーカップ出場権を獲れなくてもチャビ監督は安泰なのか、疑問に思ったのは私だけではなかったかと。 そんなことはともかく、リーガ20チーム中、唯一、まだミッドウィークのヨーロッパの大会で忙しくしているチームの話をすることにすると、そう、来週火曜のCL準決勝バイエルン戦1stレグを考慮して、リーガ33節の日程を繰り上げてもらったレアル・マドリーはもう、金曜午後9時(日本時間翌午前4時)にはレアル・ソシエダ戦をプレーするんですよ。何せ、日曜には2位のバルサに3-2と逆転勝利して、勝ち点差が11に拡大。ほぼほぼ、優勝が決まった彼らだけにリーガでは余裕がありますからね。 それもあって、前日会見では「Hasta que las matemáticas nos den la Liga tenemos que pelear/アスタ・ケ・ラス・マテマティカス・ノス・デン・ラ・リーガ・テネモス・ケ・ペレアル(数字的にリーガ優勝が決まるまで戦わないといけない)」と言っていたアンチェロッティ監督だったものの、大規模なローテーションを計画しているよう。その中にはクラシコの翌日、シベレス噴水広場のすぐ後ろにあるマドリッド市庁舎で開かれたローレウス・アワードに姿を現わし、年間最優秀ブレークスルー賞を受賞するのと一緒にウサイン・ボルトやルーカス・アルカラスらと親交を温めていたベリンガムも入っていて、いえ、彼は胃腸炎で木曜の練習をお休みしたため、ビッグマッチの前にムリさせたくないということみたいですけどね。 未だにCL準々決勝マンチェスター・シティ戦2ndレグの筋肉痛が治らず、クラシコにもいなかったメンディ共々、サン・セバスティアン遠征には同行しないんですが、おかげでレアル・アレーナのピッチに立つのはバイエルン戦1stレグで出場停止となるカルハバルを除き、ほぼ全員控え選手になる可能性も。とはいえ、ソシエダのイマノル監督も「Espero un Madrid potente, independientemente de quien esté en el campo/エスペロ・ウン・マドリッド・ポテンテ・、インデペンディエンテメンテ・デ・キエン・エステ・エン・エル・カンポ(誰がピッチにいるのかは別にして、強いマドリーを待っている)。彼らの選手層は凄く厚いからね」と言っていたように、エティハド・スタジアムで120分の激闘を繰り広げた後、カルバハルやナチョ、メンディが出なかったクラシコでもライバルに止めを刺していましたからね。 それもクロースによると、「ボクらが上手くプレーしていたら、4-0で勝てていたはず。でもとりわけ前半、押しが足りなくてね」という、エネルギーかつかつ状態でプレーしていたようですからね。バルサが残り全勝する前提で、あと勝ち点7を貯めれば、マドリーは優勝確定となりますし、これまで出番がほとんど回って来なかったギュレルやセバージョス、先発の機会が少ないホセルやブライムらがソシエダ戦では発奮して、いい勝負になるのでは? ちなみにマドリーには予期しない朗報もあって、ここ数日、チーム練習に加わっていたGKクルトワが来週末のカディス戦でもう復帰できるのだとか。いやあ、夏にヒザの靭帯を断裂し、ようやく回復した矢先だった3月、反対側のヒザの半月板を部分損傷。手術をしたため、今季はもう絶望と言われていた彼だったんですけどね。これはケパとのポジション争いに勝って、正GKとして定着し、CL決勝での初プレーを夢見ていたルーニンにとって、思わぬ強敵出現ですね。 一方、先週末は弟分のヘタフェと1-1と引分けたため、7位のベティスに勝ち点3差に迫られたソシエダでは、スベルディアとスビメンディが出場停止明けで復帰。更に3月に右足の中足骨を骨折したブライス・メンデスも再発の危険を覚悟で戻ってくるんですが、コリセウムでふくらはぎの肉離れを起こしたトラオレとティエルニは欠場。ここ2試合、不具合があって、途中出場だった久保建英選手も今度はスタメンに入れそうなんですが、きっと、彼とオドリオソラは古巣への恩返しに燃えているんじゃないでしょうか。 そして土曜にはまず、ヘタフェがパワーホース・スタジアムでのアルメリア戦に臨むんですが、何せ、そのソシエダ戦で彼らも勝ち点40に到達して、ほぼほぼ残留確定しちゃいましたからね。数字的にはコンフェレンスリーグ出場権のもらえる7位のベティスと勝ち点8と可能性はあるものの、昨季など、最終節まで2部降格の恐れがあったことを考えれば、もう肩の力が抜けてしまっても仕方ない?実際、チームにはボルハ・マジョラル、アランバリ、ドゥアルテ、そして先日、肩の手術をしたファン・イグレシアスと4人も今季中プレーできない選手がいて、人員が手薄になっていますからね。 ソシエダ戦でも19才のジャシンがデビューしたように、この先はボルダラス監督も来季を見据えて、カンテラーノ(ヘタフェB)の試用期間に当てたりするんじゃないかと思いますが、さて。そうそう、相手のアルメリダは今節、たとえ勝ってもセルタとマジョルカの結果次第で降格が決定。そうなるともう、主力アタッカーのラマザーニが前節での審判への暴言で出場停止5試合を喰らってしまったことなど、どうでもよさそうですが、シーズン終盤になって就任したペペ・メル監督はちょっと、気の毒ではあります。 え、それでCL準々決勝ドルトムント戦で敗退して帰国した翌日、ヒル・マリン筆頭株主がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に駆けつけ、リーガで4位となって、来季のCL出場権を獲得するのがどれ程、クラブにとって大事か、選手たちに重々説きながら、先週末のアラベス戦でもアウェイ弱者の本領を発揮。2-0で負けて、5位アスレティックとの差が勝ち点3になってしまったアトレティコはどうしているんだって?いやあ、彼らはこの土曜午後9時から、メトロポリターノでそのアスレティックとガチンコ対決するんですが、月曜にはローレウス・アワードに出席したデ・パウルが悪目立ちしていてねえ。 別に表彰された訳でもないのに一張羅でレッドカーペットを歩いていたのはいいんですが、マイクを向けられて、「En líneas generales creo que ha sido una gran temporada para el Atlético/エン・リネア・ヘネラレス・クレオ・ケ・ア・シードー・ウナ・グラン・テンポラーダ・パラ・エル・アトレティコ(一般的なラインとして、アトレティコは素晴らしいシーズンを送った)。コパ・デル・レイは準決勝、CLは準々決勝まで行ったし、CL出場圏のリーガ4位、来年のクラブW杯出場権も獲ったしね」と話していたのに神経を逆撫でされたファンは結構、多かったかと。 だってえ、それって、どの大会でもタイトルには手が届かなかったのにも関わらず、満足しているってことじゃないですか。しかも未だにファンは、あのドルトムント戦2ndレグでの情けない逆転敗退にショックを受けていて、その深度はメンディソローサでのダメダメぶりで更に倍増。これでは世間から、野心のない、現状維持で十分と思っているチームと見なされても仕方ないんですが、まあでも、アスレティック戦はアトレティコが心の拠り所とするメトロポリターノでの開催ですからね。 アラベス戦の欠場は三叉神経痛により、顔が痛かったせいと判明したモラタもゴールと共にかどうかは怪しいですが、水曜からチーム練習に復帰。メンフィス・デパイはまだケガが治っていないため、せめてグリーズマンやコレア、出場停止が明けたジョレンテらがチームの勝利を導くゴールを挙げるのに協力してくれたらと思いますが、さて如何に。ちなみにチームは木曜の練習後に決起ランチ会を開き、お肉を食べて、精をつけたそうですが、ホント、あと6試合なんですから、何とか踏ん張ってほしいものです。 そして相手のアスレティックは今週、アトレティコにも在籍したラウール・ガルシアが37才で引退発表したのに続き、31才のムニアインも退団を告知。まあ、折よく、まさにアトレティコを準決勝で破ったコパ・デル・レイで優勝して、悲願のガバラ(ビルバオの運河を走る荷物運番船)に乗っての水上パレードも40年ぶりに実現できましたからね。ベテランの選手にとってはキャリアチェンジのいい節目になったようですが、ここ2試合、祝賀酔いで引分けだった彼らもそろそろ目覚めそうなのが怖いところ。もうEL出場権は確保しているんだから、CLまで狙うのは遠慮してほしいところですが、きっとそうはいかないんでしょうね。 ちなみにもう1つの弟分、ラージョだけは日曜試合に当たっていて、こちらはラ・セラミカでのビジャレアル戦。イニゴ・ペレス監督のチームは前節、ホームでオサスナに2-1と逆転勝利して、降格圏との差が勝ち点9まで開いたんですが、15位という順位はまだ改善の余地があるかと。ビジャレアルも残留確定はしたといえ、7位まで勝ち点6差の9位と、ヨーロッパの大会出場圏を狙うのは少々、難しそうですからね。早くも消化試合の様相を醸しだしてしまわないか心配なんですが…何はともあれ、ラージョFW陣の得点数が少しでも改善してくれることを祈っています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.26 21:00 Fri
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