パラグアイ戦は強化になるのか疑問/六川亨の日本サッカーの歩み
2022.04.25 22:00 Mon
日本代表は6月のIMD(インターナショナル・マッチデー)4試合のうち、6月2日に札幌で開催されるキリンカップ・チャレンジでパラグアイと対戦することが決まっている。残る6日のキリンチャレンジカップと、10日と14日のキリンカップサッカーは対戦相手が未定だが、ブラジルの来日が噂されている。
そしてパラグアイである。FIFAランク50位で、W杯南米予選は8位で終えて出場権を逃している。そんなチームが果たして日本の強化に役立つのか疑問である。
もちろん皆さんもご存じのように、ネーションズリーグが誕生したおかげで日本はIMDでヨーロッパのチームを呼べなくなった。同じようにW杯プレーオフに進出するコスタリカが所属する北中米カリブ海は、ヨーロッパと同様にネーションズリーグが開幕するためメキシコやアメリカ、カナダを呼ぶことはできない。
さらに、20年のヨーロッパ遠征で対戦したコートジボワールやカメルーンといったアフリカ勢も5月31日から23年のアフリカ選手権の予選が始まるため招聘することはできない。この結果、呼べるのは南米勢かアジア勢に限られてしまうのが現状だ。
パラグアイとは過去4勝4分け2敗と勝ち越しているものの、勝ったのはいずれも日本国内の試合だった。これはパラグアイに限ったことではなく、他の南米勢やヨーロッパ勢にも当てはまるが、オフシーズンに来日するチームは「本気」で試合をすることはまずない(ドイツやイングランドは来日していないので不明)。
トルシエ・ジャパン時代の99年のことだ。日本は6月6日のキリンカップでペルーと対戦して0-0で引き分けた。しかし6月29日、パラグアイで開催されたコパ・アメリカに初めて招待され、アスンシオンで再戦したときのペルーはまったく別のチームだった。
ホームである南米で、それもタイトルのかかった大会である。彼らからすれば負けるわけにはいかなかったのだろう。試合は点の取り合いからペルーが3-2で逃げ切った(ちなみに主審は日韓W杯で物議を醸すことになるエクアドルのバイロン・モレノ氏だった)。
続く第2戦は地元パラグアイ。トルシエ監督得意の「フラット3」がラインを下げて守っていると見るや、パラグアイは積極的にミドルシュートやロングシュートで次々に日本ゴールへ襲いかかり、ロケ・サンタクルスの2ゴールなどで日本を4-0と粉砕した。これほど強いパラグアイを見たのはこのときが最初で最後だった。
試合中、アフター気味のタックを仕掛けて相手を倒した日本人選手に対し、別の選手が主審の見ていないところで意図的にエルボーを顔面に見舞った。こうした激しさやずる賢さは、日本国内でのテストマッチではお目にかかれない。
強化を考えれば、やはりアウェーでのマッチメイクがベターだ。しかし南米まで遠征に行くのは、選手のコンディションを考えると難しい。さらにJFA(日本サッカー協会)も新型コロナウイルスの影響で財政難が続いている。国内の4試合による入場料収入や放映権、スポンサー料、グッズ販売などは貴重な財源である(新しいユニホームは販売されるのだろうか?)。
かくして話は堂々巡りになり、“強化試合”が強化にどれだけ結びついているか。日本だけでなく、アジア勢全体がジレンマに陥っている。7月には日本でEAFF E-1選手権が開催されるが、こちらは国内組での試合になるためベテラン選手の見極めがテーマになる可能性が高い。となると9月のIMDしか強化試合は期待できないのが現状でもある。果たしてそれで万全の準備ができるのだろうか……。
【文・六川亨】
そしてパラグアイである。FIFAランク50位で、W杯南米予選は8位で終えて出場権を逃している。そんなチームが果たして日本の強化に役立つのか疑問である。
さらに、20年のヨーロッパ遠征で対戦したコートジボワールやカメルーンといったアフリカ勢も5月31日から23年のアフリカ選手権の予選が始まるため招聘することはできない。この結果、呼べるのは南米勢かアジア勢に限られてしまうのが現状だ。
パラグアイとは過去4勝4分け2敗と勝ち越しているものの、勝ったのはいずれも日本国内の試合だった。これはパラグアイに限ったことではなく、他の南米勢やヨーロッパ勢にも当てはまるが、オフシーズンに来日するチームは「本気」で試合をすることはまずない(ドイツやイングランドは来日していないので不明)。
逆に南米勢はブラジルを除くほとんどのチームが“遊び半分”の外貨稼ぎに来ることが多い。
トルシエ・ジャパン時代の99年のことだ。日本は6月6日のキリンカップでペルーと対戦して0-0で引き分けた。しかし6月29日、パラグアイで開催されたコパ・アメリカに初めて招待され、アスンシオンで再戦したときのペルーはまったく別のチームだった。
ホームである南米で、それもタイトルのかかった大会である。彼らからすれば負けるわけにはいかなかったのだろう。試合は点の取り合いからペルーが3-2で逃げ切った(ちなみに主審は日韓W杯で物議を醸すことになるエクアドルのバイロン・モレノ氏だった)。
続く第2戦は地元パラグアイ。トルシエ監督得意の「フラット3」がラインを下げて守っていると見るや、パラグアイは積極的にミドルシュートやロングシュートで次々に日本ゴールへ襲いかかり、ロケ・サンタクルスの2ゴールなどで日本を4-0と粉砕した。これほど強いパラグアイを見たのはこのときが最初で最後だった。
試合中、アフター気味のタックを仕掛けて相手を倒した日本人選手に対し、別の選手が主審の見ていないところで意図的にエルボーを顔面に見舞った。こうした激しさやずる賢さは、日本国内でのテストマッチではお目にかかれない。
強化を考えれば、やはりアウェーでのマッチメイクがベターだ。しかし南米まで遠征に行くのは、選手のコンディションを考えると難しい。さらにJFA(日本サッカー協会)も新型コロナウイルスの影響で財政難が続いている。国内の4試合による入場料収入や放映権、スポンサー料、グッズ販売などは貴重な財源である(新しいユニホームは販売されるのだろうか?)。
かくして話は堂々巡りになり、“強化試合”が強化にどれだけ結びついているか。日本だけでなく、アジア勢全体がジレンマに陥っている。7月には日本でEAFF E-1選手権が開催されるが、こちらは国内組での試合になるためベテラン選手の見極めがテーマになる可能性が高い。となると9月のIMDしか強化試合は期待できないのが現状でもある。果たしてそれで万全の準備ができるのだろうか……。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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