大岩ジャパンの素朴な疑問/六川亨の日本サッカー見聞録
2022.03.04 20:30 Fri
パリ五輪の出場を目指す大岩ジャパンがスタートする。まずは来週の7日から3日間、千葉市内でキャンプと練習試合を実施。その後は3月23日から29日にかけてUAEで開催されるドバイ杯U-23に参加し、U-23クロアチアとU-23カタールと対戦し、順位決定戦に臨む予定だ。
五輪を目指すU-21日本代表は、例年なら夏のW杯後にチームは立ち上がり、9月のアジア大会で始動するのが常だった。このためチームの立ち上がり時はJリーグの期間中なので大学勢が中心になるケースが多かった。
しかし森保ジャパンは五輪予選を免除されていたため、今回と同じようなタイミングでスタートし、2度のU-23アジアカップを経て本大会に臨んだ(予選を兼ねた20年タイ大会はグループリーグで敗退)。
大岩ジャパンも3月のドバイ杯後は5~6月にウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップに参加後、9月には中国・杭州で開催されるアジア大会に臨む。そして今回招集されたメンバーは尚志高校のチェイス・アンリを除けば全員がJリーガーで、鈴木唯人(清水)や西尾隆矢(C大阪)のように、1月の日本代表のキャンプにトレーニーとして呼ばれた選手もいる。それだけ期待されているメンバーと言っていいだろう。
大岩剛監督も「パリ経由A代表ではなく、A代表に所属しながらパリ五輪に行くんだと伝えています」と力をこめる。
まだチームは立ち上がったばかりなので、どのようなサッカーをするのか大岩監督も「練習時間も限られていて、日にちも限られています。コンセプトは落とし込むまではいかないですが、さわりとしてチームが一体になって戦う、こう戦っていくということは伝えたい」と具体的な戦い方についての明言は避けた。
しかし、一番気になるのはどんなスタイルで戦うのかでもある。かつて指揮した鹿島のように“堅守速攻"のスタイルを採用するのか。あるいは森保ジャパンと同様に、「高い位置でボールを奪えたらショートカウンター。それができないときはボールを保持しながらパスをつなぎつつ個の力(スピード)で剥がす」のか。
継続性を求めるなら当然後者となるだろう。「A代表に所属しながらパリ五輪」という理想とも整合性がある。しかしながら、素朴な疑問もある。
森保ジャパンはまだカタールW杯の予選を突破していない。24日にはアウェーで大一番のオーストラリア戦がある。これに勝てば7大会連続のW杯出場が決まる。そして何の問題(前回大会のハリルホジッチのように)もなければ、11月から始まるカタールW杯に参加するだろう。
問題はその後だ。W杯でベスト4以上なら、森保一監督は次回大会まで続投するかもしれない。ベスト8だと微妙なところだろう。そしてベスト16以下だと前回の西野朗監督のように退任する可能性が高いのではないか。
となると、日本人(候補はまったく思いつかないが)か外国人かは別にして、新たな代表監督が就任することになる。簡単に言うとA代表の監督は今年12月までの任期に対し、大岩監督は再来年まで任期があることになる。そこでA代表と五輪代表のサッカーの整合性をどう取るのかという疑問である。
これまではA代表の監督が先で、コーチが五輪代表の監督を兼ねるパターンが多かった。ドイツW杯とアテネ五輪は山本氏、南アW杯と北京五輪は反町氏、ブラジルW杯とロンドン五輪は関塚隆氏といった具合だ(実際には1年後に五輪代表監督に専念)。カタールW杯と東京五輪は予選がないため最初から森保監督が兼務した(日韓W杯とシドニー五輪も同様)。
ところが今回は五輪の監督が先に決まっていて、あとからA代表の監督が決まるという逆転現象が起きる可能性がある。今後のプランを反町技術委員長に聞いてみたいところだが、まずは予選を突破することが前提であり、W杯が終わってみないと分からないかもしれないが……。
【文・六川亨】
五輪を目指すU-21日本代表は、例年なら夏のW杯後にチームは立ち上がり、9月のアジア大会で始動するのが常だった。このためチームの立ち上がり時はJリーグの期間中なので大学勢が中心になるケースが多かった。
大岩ジャパンも3月のドバイ杯後は5~6月にウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップに参加後、9月には中国・杭州で開催されるアジア大会に臨む。そして今回招集されたメンバーは尚志高校のチェイス・アンリを除けば全員がJリーガーで、鈴木唯人(清水)や西尾隆矢(C大阪)のように、1月の日本代表のキャンプにトレーニーとして呼ばれた選手もいる。それだけ期待されているメンバーと言っていいだろう。
大岩剛監督も「パリ経由A代表ではなく、A代表に所属しながらパリ五輪に行くんだと伝えています」と力をこめる。
かつてアテネ五輪を指揮した山本昌邦監督は「アテネ経由ドイツ行き」を目指したが、それを上回るスピードでの成長を大岩監督は期待しているのだろう。
まだチームは立ち上がったばかりなので、どのようなサッカーをするのか大岩監督も「練習時間も限られていて、日にちも限られています。コンセプトは落とし込むまではいかないですが、さわりとしてチームが一体になって戦う、こう戦っていくということは伝えたい」と具体的な戦い方についての明言は避けた。
しかし、一番気になるのはどんなスタイルで戦うのかでもある。かつて指揮した鹿島のように“堅守速攻"のスタイルを採用するのか。あるいは森保ジャパンと同様に、「高い位置でボールを奪えたらショートカウンター。それができないときはボールを保持しながらパスをつなぎつつ個の力(スピード)で剥がす」のか。
継続性を求めるなら当然後者となるだろう。「A代表に所属しながらパリ五輪」という理想とも整合性がある。しかしながら、素朴な疑問もある。
森保ジャパンはまだカタールW杯の予選を突破していない。24日にはアウェーで大一番のオーストラリア戦がある。これに勝てば7大会連続のW杯出場が決まる。そして何の問題(前回大会のハリルホジッチのように)もなければ、11月から始まるカタールW杯に参加するだろう。
問題はその後だ。W杯でベスト4以上なら、森保一監督は次回大会まで続投するかもしれない。ベスト8だと微妙なところだろう。そしてベスト16以下だと前回の西野朗監督のように退任する可能性が高いのではないか。
となると、日本人(候補はまったく思いつかないが)か外国人かは別にして、新たな代表監督が就任することになる。簡単に言うとA代表の監督は今年12月までの任期に対し、大岩監督は再来年まで任期があることになる。そこでA代表と五輪代表のサッカーの整合性をどう取るのかという疑問である。
これまではA代表の監督が先で、コーチが五輪代表の監督を兼ねるパターンが多かった。ドイツW杯とアテネ五輪は山本氏、南アW杯と北京五輪は反町氏、ブラジルW杯とロンドン五輪は関塚隆氏といった具合だ(実際には1年後に五輪代表監督に専念)。カタールW杯と東京五輪は予選がないため最初から森保監督が兼務した(日韓W杯とシドニー五輪も同様)。
ところが今回は五輪の監督が先に決まっていて、あとからA代表の監督が決まるという逆転現象が起きる可能性がある。今後のプランを反町技術委員長に聞いてみたいところだが、まずは予選を突破することが前提であり、W杯が終わってみないと分からないかもしれないが……。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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