すんなりとは終わらなかった…/原ゆみこのマドリッド

2020.07.22 18:30 Wed
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「最後の最後で躓いたわね」そんな風に私が残念がっていたのは火曜日、日曜のリーガ1部に続き、2部も月曜には全節終了するはずだったにも関わらず、この後に及んで、新型コロナウィルス感染により、初めて試合が延期された翌日のことでした。いやあ、まだスペイン全土が警戒事態の中、5月に各チームが練習を再開したばかりの頃は選手や関係者らの検査がよく話題になったものでしたけどね。さすがに2カ月以上も経過すると、世間もあまり関心示さないようになったんですが、どこも試合48時間前のPCR検査はずっと続けていたようで、実は土曜のテストでマドリッド2部の弟分、フエンラブラダから陽性者が1人発生。

それはまあ仕方ないんですが、日曜にも関係者に3人、見つかったチームは月曜朝にも検査を繰り返し、その結果が出るのを待たずにラ・コルーニャ(スペイン北西部のビーチリゾート都市)に移動。午後5時半には更に7人の選手に陽性反応が現れたと連絡を受け、ラ・リーガやスペイン・サッカー協会が協議した結果、夜9時に統一されていた11試合中、デポルティーボvsフエンラブラダ戦のみ延期という決断がなされたんですが、その後、幾つもクラブが巻き込まれる騒動に発展したのは、このカードが降格と昇格プレーオフ出場順位の両方に関わっていたから。
え、でも元々、19位の降格圏にいたデポルティーボはたとえ、フエンラに勝っても残留できるか、わからなかったんだろうって?その通りで、この日は勝ち点差1上にいたアルバセテがカディスに勝ち、2部優勝のトロフィーを岡崎慎司選手のいるウエスカに贈ったのはともかく、ルーゴもミランデスに勝利。サラゴサに負けたポンフェラディーナが18位に落ちたんですが、デポルティーボの勝ち点が3増えて並んでも、直接対決のゴールアベレージで負けているため、最後の試合を戦わずして2部B降格が決定することに。

これではフェルナンド・バスケス監督から、「ウチがプレーしていてれば、アルバセテもルーゴも試合中のプレッシャーが違ったはず」と抗議が出るのも当然ですが、デポルティーボは最終節全部のやり直し、もしくは24チームでの来季開催を求め、そうでなければ、現在、ラ・コルーニャの滞在先ホテルで隔離中のフエンラが規定の期間を経た後、とりあえず30日にリスケジュールされた試合を放棄するとラ・リーガに宣言。ええ、そりゃそうでしょう。すでに降格決定済みとなれば、柴崎岳選手だって、さっさと日本に戻りたいのでは?

実際、大ごとなのはフエンラの関わる昇格プレーオフ順位決定の方も同じで、いえ、同じ2部弟分仲間のラージョはすでに降格しているラシングを下したものの、エルチェがオビエドに勝ったため、7位で届かず。アルコルコンもプレーオフ出場が確定していたジローナをサント・ドミンゴで2-0と破り、有終の美を飾ったんですが、10位とかなり離れているのでまあ、関係ないんですが、フエンラとエルチェは勝ち点差1しかないんですよ。つまりフエンラがデポルティーボ戦で引き分け以上となれば、6位に上がって、3位のサラゴサとプレーオフ準決勝を戦う権利を得られるんですが、本来なら今週木曜からのはずだったプレーオフの予定もおかげで8月までずれ込む始末。
要はエルチェにしたって、万が一に備えてバケーションに入ることはできませんし、サラゴサの香川真司選手だって、相手が決まるまで待たないといけないとなれば、もうただでさえ、paron(パロン/リーガの中断期間)のせいで終了が大幅に遅れている今季。プレーオフ準決勝のもう1戦、アルメリアとジローナだって、1部昇格が決まる決勝が8月開催となったら、チームは休めませんしね。今のところ、ラス・パルマスに勝ちながら、18位で降格が決まったヌマンシア、大会の整合性がなくなるからプレーしたくないと言ったものの、ラ・リーガに勝ち点3はく奪を示唆されたというラージョなどを含め、影響を受けた複数のクラブが訴えを起こすと言っているため、先行きが何とも不透明なんですが、リーガ再開が100点満点で終わらなかったのは本当に残念だったかと。

え、それより1部の最終節がどうだったのかの方が気になるって?いやあ、実はこちらも弟分には悲しい結果になってしまったんですが、ブタルケでは前節、リーガ優勝が決まったレアル・マドリーをレガネスがpasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)を作ってお出迎え。またしても私がパソコンの画面を分割して見ていたワンダ・メトロポリターノでは、今季限りでシメオネ監督と袂を分かち、自身でチームを率いることを発表していた”モノ”・ブルゴス第2監督へのお別れセレモニーが行われていましたが、前半、先手を取ったのはどちらもすでに目標を達成していたチームの方でした。

そう、速攻だったのはマドリーで9分、イスコのFKをセルヒオ・ラモスが頭でゴールに。マークしていたレガネスのキャプテン、ブスティンサへのファールも疑われたんですが、元々、今季はセットプレーからの失点で大打撃を受けている彼らですからね。大体、これでクラブ公式戦100得点目となる、頭自慢のラモスに小柄なブスティンサが付いていたところから、間違っていたような気がしますが、粘って最終節まで2部降格を回避してきたとなれば、レガネスの選手たちもこんなところでギブアップはできません。ええ、その日はカルバハルに代わり、ルーカス・バスケスが右SBとして入ったサイドを執拗に狙い、ハーフタイムに入る直前、ジョナタン・シウバのスルーパスから、ブライアン・ヒルがGKアレオラを破り、同点に追いつけたため、後半に望みを繋げることに。

ただねえ、やっぱりレガネスの守備には難があって、後半7分にはイスコが送ったパスをアセンシオが決めて、再びリードを許してしまったんですよ。アギーレ監督はようやくケガが治ったらしいオスカル、そしてゲレロを後半頭から投入したのに続き、ロケ・メサとアサレも入れて反撃。33分にはそのアサレが再び、ジョナタン・シルバのアシストで同点弾を放ったんですが、いやあ。その2分後の絶好機にも彼がシュートを決めてくれていれば、もしくは38分のCKでヨビッチの手にボールが当たったのがVAR(ビデオ審判)でペナルティに取ってもらえていれば、もしくは普段は3部のレガネスBでプレーしているアビレスのゴール前からのvolea(ボレア/ボレーシュート)が変なところに飛ばなければ、レガネスが勝ち越し点を奪うのも可能だったはずなんですが…。

17位のセルタも一時はエンバルバにゴールを決められて、エスパニョールに負けかねなかったんですけどね。それもVARで認められず、最後は0-0で分けたんですが、どちらにしろ、レガネスは自身が勝ち点3を獲得する他に残留の道がなかったのが災い。普通でしたら、エン・ネシリ(セビージャに移籍)もブライトワイテ(同バルサ)もいない中、兄貴分のマドリー相手に2-2の引き分けたのは立派の一言とはいえ、「問題はこの90分じゃない。その前の26試合にある」(アギーレ監督)というのが全てでした。ええ、1節前にベティスに勝って、残留を確定したアラベスがその日はバルサに0-5とコテンパンにのされながら、ムニス監督が笑顔だったのがその証拠です。

そして選手たちが涙で4シーズンの1部生活に別れを告げ、翌月曜にはアギーレ監督の退団も発表されたレガネスなんですが、大丈夫。ラージョなんて何度も落ちては上がってきていますし、ヘタフェだって3年前には最速Uターンしてきているんですから、また彼らに1部で会える日も来ますって。一方、再開後11連勝は逃したものの、無敗を保ったマドリーはジダン監督も「Ahora toca descansar, no vacaciones, pero sí desconectar/アオラ・トカ・デスカンサール、ノー・バカシオネス、ペロ・シー・デスコネクタル(今は休む時。バケーションではないが、離れないと)」と言っていた通り、翌日から1週間、練習はお休みに。何せ、8月7日にはマンチェスター・シティとのCL16強対決2ndレグが待っていますからね。1-2で敗戦という1stレグの結果を覆すため、また猛暑のマドリッドでのトレーニングになりますが、ホント、熱中症が心配ですよね。

一方、前半30分、トリッピアーのクロスから始まったプレーでエレラが頭でボールを落とし、ジエゴ・コスタのシュートが逸れてモラタに渡ったところ、その後ろ蹴りでラストパスを受けたコケがゴールを挙げ、この日ものらりくらりとリードを守ってしまいそうだったお隣さんはというと。いやあ、相性のいいヘタフェにはそれで良かったんですが、この日のライバルはレアル・ソシエダ。リーガ中断前までCL出場圏の4位にいながら、再開後は調子を落とし、EL出場権を最終節で争わないとならなくなったため、必死でしたからね。

「En el descanso, les he dicho a los jugadores que lo íbamos a conseguir/エン・エル・デスカンソ、レス・エ・ディッチョー・ア・ロス・フガドーレス・ケ・ロ・イバモス・ア・コンセギール(ハーフタイム、選手たちにウチは目標を達成すると言った)。80分にもそう言って、最後は86分だった」とイマノル監督も後で語っていた通り、後半41分、ヤヌザイが右サイドからFKを放ったところ、敵と味方の動きに幻惑されたんでしょうかね。GKオブラクが止め損ね、同点ゴールを奪われてしまったから、さあ大変!

いや、大変なのは実はアトレティコではなく、同じ時間、アリカンテ(スペイン南部)のラ・ヌシアでレバンテと戦っていたヘタフェで、グラナダがアスレティックに4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝っていたこともあり、0-0だった彼らはこの瞬間、EL出場圏外の8位に落ちてしまうことに。それまでも思いっきり不運の塊のような展開で、前半にはマタがオフサイド、アンヘルがGKへのファールと、どちらもゴールをVARで取り消されてしまうとは如何に。まあ、レバンテもロジェールのゴールが認められませんでしたが、後半、ようやくゲットしたPKまで、25回連続で成功させていたマタがゴールポストに当ててしまうとは一体、どこまで呪われている?

結局、不甲斐ない兄貴分はそのまま1-1で引き分け、バレンシアに勝ったセビージャに勝ち点で並ばれたものの、ゴールアベレージで定位置の3位を確保。勝ち点1ゲットのレアル・ソシエダがまるで優勝したみたいにピッチで喜び、更にはロッカールームでも大騒ぎしているのを尻目に、「Mala suerte por el empate/マラ・スエルテ・ポル・エル・エンパテ(ドローだったのは運が悪かったね)」とコケが飄々と話していたのも何ですけどね。数々のVAR判定で試合が長引いていたヘタフェの方はワンタからの報に落胆したか、ロスタイム8分にはジェネが弾いたボールがレバンテのコケに当たり、土壇場で1-0の負け、2年連続のEL出場を逃すという最悪の結果になってしまいましたっけ。

うーん、ボルダラス監督に言わせると、「Un octavo puesto para un conjunto como el nuestro es una buena clasificación/ウン・オクタボ・プエストー・パラ・ウン・コンフントー・コモ・エル・ヌエストロ・エs・ウナ・ブエナ・クラシフィカシオン(ウチのようなチームにとって、8位というのはいい順位だ)」そうですが、何せリーガ中断前が前でしたからね。「Después del parón no hemos reaccionado/デスプエス・デル・パロン・ノー・エモス・レアクシオナードー(ボクらは中断期間が終わった後、リアクションできなかった)。11試合で1つしか勝てなくてはヨーロッパの大会に行けないのも当然」(アンヘル)とはいえ、ファンの期待も高かっただけに悔しいところかと。

そんなヘタフェには8月5日のEL16強対決インテル戦一発勝負が残っているんですが、今の状態を見ると、とてもELに優勝すれば、来季はCLに出られるなんて夢物語は口にできないですよね。とりあえず、ここ数日休んだら、練習再開だそうですが、気分的には中断直前、リバプールを破り、すでにCL準々決勝進出を決定。8月13日のライプツイヒ戦に向け、来週からは毎年、真夏の地獄キャンプが行われるロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)で合宿に入るアトレティコの方が何倍も良さそう。

いえ、レアル・ソシエダ戦で交代を頼んだトマスがミニ肉離れで全治3週間という懸念もあるんですけどね。7月にロス・アンヘレスへ行くのは選手たちも慣れていますし、試合が近づく頃にはリスボンにあるベンフィカのトレーニング施設で練習とこれもまた、ジョアン・フェリックスが古巣に戻り、アトレティコが昨夏、大枚1憶2700万ユーロ(約160億円)の移籍金を払った理由を思い出してくれるキッカケになるかもしれないのは吉でしょうか。

ちなみにレアル・ソシエダ戦の後、「ウチはリーガ終盤、最高の仕事をして7勝4分け、マドリーは10勝1分けだった。我々は全ての大会に勝利を義務付けられている2チームと争っている。Estamos buscando siempre nuestro espacio y lugar y vamos a insistir hasta que tengamos nuestra oportunidad/エスタモス・ブスカンドー・シエンプレ・ヌエストロ・エスパシオ・イ・ルガール・イ・バモス・ア・インシスティル・アスタ・ケ・テンガモス・ヌエストラ・オポルトゥニダッド(自分たちの居場所を探して、ウチはチャンスを掴むまで戦い続けるよ)」とはシメオネ監督の言葉。いや本当に、お隣さんもバルサもまだ準々決勝進出が決まっていない、この異例のシーズンが念願のCL優勝に繋がってくれるといいですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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「トロフィーはミュージアムに35個もあるから、きっと大丈夫なのよ」そんな風に私が結論づけていたのは月曜日、先週末の34節でリーガ優勝が確定したレアル・マドリーへのトロフィー授与が来週火曜、サンティアゴ・ベルナベウでのアラベス戦の日になると知った時のことでした。いやあ、最初はアウェイではあるものの、次節土曜のグラナダ戦でと、スペイン・サッカー協会に通達されていたみたいなんですけどね。それをクラブが、まさに降格決定の可能性が限りなく高く、実際、決まれば、悲しみのどん底に浸っているであろうヌエボ・ロス・カルメネスのファンの前で、選手たちがトロフィーを掲げて、優勝を祝うのもどうかと変更を頼んだところ、協会はそれを受諾。 ただし、今週末はすでに全面改装がほぼ完了したベルナベウで初コンサートが開催予定。よって、スタジアムでのお祝いはできないものの、午前11時にリーガ優勝報告のマドリッド州庁舎、市庁舎への表敬訪問、続いて午後1時から、恒例の祝賀行事があると聞いていたため、市内をオープンデッキバスでパレードする時やシベレス噴水広場の特設ステージに上がる時、トロフェーが手元になかったら、ちょっと格好がつかないんじゃないかと思ったんですけどね。そこはスペイン1部リーグ最多優勝回数を誇るマドリーとあって、近年、トロフィーのデザインが変わったなんて話も聞かないため、2021-22シーズンのやつでも持って行けば、沿道から見るファンにも気がつかれないのでは? まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を順にお伝えしていくことにすると、金曜にはヘタフェがコリセウムでアスレティックと対戦。前節にはアルメリアにアウェイで勝って、相手の2部降格と引き換えに1部残留確定を手に入れたボルダラス監督のチームだったんですが、それでもう、安心しちゃったんですかね。5月5日のスペインの母の日にちなんで、選手たちが自身の母親や妻を伴って入場するイベントは微笑ましかったものの、前半27分には、ニコ・ウィリアムスのパスから、イニャキ・ウィリアムスにエリア前から撃たれて、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)で失点。 後半6分にも兄弟の連携プレーが炸裂し、今度はカウンターから、ニコがドリブルで上がり、最後はイニャキが決めて、0-2とされてしまったんですが、実はその後、アスレティックは9人なったにも関わらず、ヘタフェは1点も取れなかったんですよ。そう、13分にはジェライがハンドで、34分にはパレデスがイエローカード2枚で退場して、おまけに38分にはルイス・ミジャのクロスがエリア内でラウール・ガルシアの腕に当たり、いえ、その時、バルベルデ監督が抗議で退席処分となったのはあまり関係ありませんでしたけどね。 PKまでもらったヘタフェだったにも関わらず、この日のGKウナイ・シモンが絶好調だったのが運の尽き。「Durante la semana tira penaltis, no falla prácticamente ninguno/ドゥランテ・ラ・セマーナ・ティラ・ペナルティス、ノー・ファジャ・プラクティカメンテ・ニングーノ(週中、練習でPKを蹴っているが、実質的に1本も失敗しない)」(ボルダラス監督)という、グリーンウッドがPKを弾かれてしまったのなんてもう、おまけのようなもんだったかと。 だってえ、この試合、ヘタフェはシュートを29本も放ち、うち9本は枠内だったのに全部、止められているんですよ。後半ロスタイムの9分間など、アスレティックをエリア内に囲い込んで攻めていたんですが、そのまま、0-2で試合は終了。ボルダラス監督が、「ボルハ(ヒザの靭帯断裂)やウナル(1月にボーンマスに移籍)がいたら、負けなかっただろう」と言い訳するのもわかりますが、これじゃ、せっかく前節の直接対決で勝ち点差を6に広げた兄貴分、アトレティコへの援護射撃にも何にもなりませんって。 いえまあ、ただでさえ、CB不足のバルベルデ監督のチームから、最後に残っていたジェライとパレデスを次節出場停止にしてくれたのは有難いですけどね。どちらにしろ、10位では、7位のコンフェレンスリーグ出場圏を目指す意欲も薄かったか、6差だったベティスとの差が9に開いても構わなかったようですが、次節のカディス戦ではアルメリアに続き、再びヘタフェが相手に引導を渡す役目を果たすことになりそうなのは奇遇。でもねえ、すでに2部降格が決まったチームと対戦するのが弟分仲間に楽勝をプレゼントすることになったかというと、まったくそんなことはなく、ええ、日曜の夜試合でラージョはアルメリアの前に撃沈しちゃったんですよ。 というのもあと1勝すれば残留確定に王手の懸かったイニゴ・ペレス監督のチームだったんですが、エスタディオ・バジェカスでの試合では、うーん、キックオフと同時に雨が凄い勢いで降り始めたのも気を散らしたんですかね。今季初先発のファルカオを筆頭に、序盤からシュートを5、6本撃って、優勢に進めていた前半30分、チャバリアがスローインを古巣訪問となったエンバルバに送ってしまうという、大ポカが発生。そのボールが1月までヘタフェにいたチョコ・ロサーノに繋がり、GKディミトリエフスキが破られてしまったのはともかく、まさかラージョまで、撃っても撃っても入らない病にかかっていたとは! 実際、こちらも前後半合わせて計27本(うち枠内10本)のシュートを放ちながら、残留の争いから解放されたGKマクシミアーノが今季最高のパフォーマンスを披露。途中出場したRdT(ラウール・デ・トマス)も止められ、最後のプレーではベベの直接FKも弾かれて、そのまま0-1で負けてしまったんですが、幸い前日、兄貴分がカディスに勝ってくれたため、17位との勝ち点8差は変わりませんでしたからね。もうここまでくると、日照り続きのFW陣がいきなり目を覚ますとは思えませんし、あとは残り4試合が3試合に、そして2試合となって、タイムアップで残留が確定するのをラージョは待つしかないのかも。 え、それでマドリーがリーガ優勝を確定する元となった、そのカディス戦はどんな試合だったんだって?いやあ、これまた、前節レアル・ソシエダ戦同様、CL準決勝バイエルン戦を考えての大規模ローテーション試合で、アンチェロッティ監督が先週火曜の1stレグから、リピートした選手はナチョだけだったんですけどね。そんな中、注目を集めていたのはGKクルトワの実戦復帰で、ええ、彼は昨夏のプレシーズンにヒザの靭帯を断裂。復帰目前だった3月には反対側のヒザの半月板を痛めて手術という不運があったせいで、今まで戻って来られなかったんですが、ようやく屋根の閉まったサンティアゴ・ベルナベウのピッチで驚異的な音響効果を実感できることに。 いやもう、その凄まじさといったら、8階のプレス席はスピーカーが近いのか、試合中はいいんですが、BGMが流れるキックオフ前やハーフタイム中など、大音量に頭が痛くなる程で、私など、次回は絶対に耳栓を持っていこうと決意したぐらいだったんですけどね。試合の方はカディスが最初から、勝利を諦めていたようだったにも関わらず、前半はミリトン、ギュレル、ホセルらのシュートはあったものの、スコアは動かないままに。 それが後半になっていきなり盛り上がったからビックリで、始まりは4分、ドリブルで上がってきたクリス・ラモスの1対1のシュートをクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)。ブランクがあっても衰えない神通力を見せつけた直後、ブライムがエリア前からのシュートでGKレデスマを破ってくれたんですよ。更に20分にはアンチェロッティ監督が、「Quería piernas frescas y, sobre todo, ganar el partido/ケリア・ピエルナス・フレスカス・イ、ソブレ・トードー、ガナール・エル・パルティードー(フレッシュな足が欲しかったのと、とにかく勝ちたかった)」という理由でギュレルをベリンガムに交代。その彼が、ピッチに入って3分後にはブライムのアシストで今季リーガ18得点目を挙げ、2点差になったとなれば、もう勝負はついたってもんです。 その後、ブライムに代わって入ったビニシウスもミリトンにrabona(ラボナ/利き足を軸足の後ろに回して蹴る技)でクロスを挙げ、残念ながら、そのヘッドはレデスマに弾かれてしまったものの、大喝采を浴びていましたしね。そのまま2-0で終わってもファンは満足したかと思いますが、ロスタイム3分にはビニシウスのスルーパスで上がったナチョがエリア内から、ホセルにラストパスを送り、マドリーは3点目もゲット。3-0の完勝でカディスの儚い望みを打ち砕き、選手たちも応援団の前で飛び跳ねて、勝利を祝っていたんですが…。 何せ、この時の状態ではまだ、優勝確定までに勝ち点1が足りませんでしたからね。次の時間帯のジローナ戦でバルサが勝った場合、次節持ち越しの可能性もあったため、それ以上、ピッチで大々的なお祝いもできなかったのは仕方なかったかと。一応、選手たちはまさかの際に備え、誰1人、ミックスゾーンに姿を現わさず、ロッカールームで試合を見ていたんですが、いやあ、そのまさかが起こるとは! そう、早い時間のクリステンセンの先制点をドブビクのヘッドで帳消しにされながら、前半ロスタイムにはレバンドフスキのPKゴールで1-2とリードして終えたバルサだったものの、後半に全てが崩壊。20分過ぎにはポルトゥとミゲール・グティエレスの連続ゴールで逆転されると、更に再びポルトゥに止めを刺され、4-2で負けたとなれば、いえ、その頃にはすでにシベレス噴水広場は、市当局が交通止めをしなかったため、歩道にしかいられないにも関わらず、何千人ものマドリーファンで溢れ返っていたんですけどね。 ジローナが来季のCL出場権を確定し、バルサを抜いて2位に上がった後、レアル・マドリーTVでのアンチェロッティ監督のコメントで、私もシベレスでの祝賀イベントが日曜にあることを知ったんですが、ベルナベルのパルコ(貴賓席)前ホールで内輪の優勝祝いをした選手たちが、その時も喜びの頂点にいられるかは微妙。というのも、この水曜午後9時(日本時間翌午前4時)にはバイエルン戦2ndレグが控えているからで、ええ、1stレグは2-2のドローと、まったくイーブンでの対戦になりますからね。 ただ、マドリーは1981年にCL決勝で負けて以来、8回連続で優勝しているため、この準決勝の関門を越えさえすれば、たとえ、相手がPSGになろうが、ドルトムントになろうが、ウェンブリーでの一発勝負でDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)を達成するのは堅い気がするんですけどね。1stレグでのバイエルンが予想以上に手ごわかったのも事実。すでにレバークーゼンの優勝が決まっているブンデスリーガでは同じ土曜、6人スタメンローテーションして、シュツットガルトに3-1と負けていましたが、ベルナベウでの対戦はどうなることやら。このビッグマッチ、ハリー・ケーンやザネ、ムシアラ、ナブリからマドリーのゴールを守るのは、カディス戦で休養したGKルーニンの役目になりますが、CL決勝でのクルトワとのポジション争いも見据えて、頑張ってくれることを期待しています。 そして土曜の夜はアトレティコもマジョルカに挑んだんですが、いやあ、もう近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で彼らのアウェイ戦を見るのは今季、ほとんど苦行と化していたため、午後9時のキックオフ直後はスマホでTVのスポーツニュースを見ながら、シベレスが賑わう様子に気を取られていた私も悪いんですけどね。ふと気づくと、開始5分にはアトレティコが先制ゴールを挙げていて、それもアスピリクエタのスローインをナスタシッチがヘッドクリアしたボールを拾ったリケルメの技ありの一発だったから、意表を突かれたの何のって。 そう、ゴールを背にしていたのをヒールキックでボールを後ろに送り、振り向き様、蹴ったところ、敵DF2人の間を通って、GKライコビッチを破ったんですが、これはもしかして、前節アスレティック戦前日に居残りシュート練習。まんまと3点目のオウンゴールを引き起こしたサムエル・リノの二匹目のドジョウを狙って、コレア、バリオスと一緒に特訓した甲斐があった? とはいえ、この日のアトレティコのゴールはこれだけで、いえまあ、後半にはコレアからラストパスをもらったジョレンテがコントロールに失敗し、撃ち上げてしまう惜しいチャンスもあったにはあったんですけどね。グリーズマンが出場停止、モラタもここ16試合でたった1得点だけの日照りまくりとあって、それ以上は望むべくもなかったんですが、違ったのは選手たちの心構え。後でリケルメも「Sabíamos que teníamos que tomárnoslo como una final por los malos resultados fuera/サビアモス・ケ・テニアモス・ケ・トマールノスロ・コモ・ウナ・フィナル・ポル・ロス・マロス・レスルタードス・フエラ(アウェイでの悪い結果のせいで、ボクらは決勝のようにこの試合に挑まないといけなかった)」と言っていたように、しっかり守った彼らは最後まで失点せず、0-1で勝利をものにできたんですよ。 うーん、この試合の前日、今季16試合の半分が黒星という、超悲惨なアウェイ弱者ぶりの原因を尋ねられたシメオネ監督が、「Sé lo que pasa pero no te lo puedo decir/セ・ロ・ケ・パサ・ペロ・ノー・テ・ロ・プエド・デシール(何が起きているのかはわかっているが、言うことはできない)」と答えているのを聞いて、原因がわかっているなら、何で手を打たないのかと、私も呆れていたぐらいだったんですけどね。確かにこの日はグリーズマン不在で5-4-1という後ろに比重を置いたシステムを使い、ここ2年、ムリキのゴールで負けていたサン・モイシュでの試合で守備に穴を開けなかったのは立派ですが、全てのタイトルの可能性を失った後になって、選手たちがようやく改心するって…。 何にせよ、もうアトレティコには4位を死守して、ここ12年間、連続出場しているCLに来季も出ることしか、目標がないんですが、この日曜の次節はマジカル・メトロポリターノでプレーできますからね。相手もビジャレアルに勝ったことで、ラージョ同様、あとはグラナダ、カディスが落ちるのを待つばかりと、ほぼほぼ残留が確定しているセルタとあって、あまり心配しないで済むのは助かりますが…その日はマドリーのシベレス祝賀イベントの日とあって、カディス戦、バレンシア戦をプレーする弟分共々、彼らがどんなにいい試合をしても、あまりマスコミに取り上げられてもらえなさそうなのは淋しいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.07 22:30 Tue

ドイツ勢のリーグ順位は信用ならない…/原ゆみこのマドリッド

「何かイラッとするわよね」そんな風に私が首を振っていたのは木曜日、前日の午後、TVで流し見していたテニスのマドリード・オープン準々決勝、カルロス・アルカラスvsルブレフ戦のボックス席にコケいたような気がしたのが、本当に当人だったと、スポーツ紙の写真で確認できた時のことでした。いやあ、お隣さんと違って、CL準々決勝で敗退したアトレティコは今週、心おきなくミッドウィークフリーを楽しんでいるんですけどね。おかげで火曜の午後もデ・パウルをアルカラスの16強対決戦で見かけたと思えば、夜10時からのラファ・ナダルvsレヘチカ戦にはシメオネ監督もカハ・マヒカ(マドリッド市南部にある総合競技場)へ。 現役引退を見据えて、これがマドリッドでプレーする最後の大会と言っていたナダルが、ええ、当人も熱烈なファンであるレアル・マドリーのCL準決勝バイエルン戦1stレグと時間が被るのを残念がっていたんですけどね。ミュンヘンでの試合が終わった後、日付が変わる頃にストレート負けで敗退してしまうのをシメオネ監督は見届けたんですが、ええ、彼にはもうCL決勝に備えて、ライバルを見張っている必要はなし。 それでももし、アトレティコがドルトムント戦2ndレグであんなことにならず、準決勝に進出できていれば、水曜はコケもメトロポリターノにPSGを迎えるべく、ホテルに缶詰め。ビジャ、ラウール、そしてまさに早朝にマドリッドに戻ったモドリッチらと同じボックス席で、腕に故障を抱えたアルカラスが2日連続で挑んだ試合で敗退。マドリッド・オープンからスペイン人選手が全滅するところをノホホンと見ているなんて、ありえなかったと思うと、ちょっと複雑な気分になったのはきっと、私だけではなかったかと。 といっても、PSGもアトレティコが4-2とやられてしまったジグナル・イドゥナ・パルクでの準決勝1stレグに1-0と負けていたため、ブンデスリーガ5位のドルトムントは世間で言われていた程、弱いチームではなかったようなんですけどね。おかげで少しはアトレティコの顔も立ったかと思いますが、ルイス・エンリケ監督のチームが来週、準々決勝バルサ戦同様、パリでの2ndレグで逆転突破できるかどうかはともかく、マドリーもサンティアゴ・ベルナベウではマンチェスター・シティ戦2ndレグ同様、ゼロからスタートすることに。何故かというと…。 その火曜のバイエルン戦1stレグでは、シティ戦での失敗に学び、キックオフ1時間15分前に近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入ったため、今度は視界を遮る立ち見客がいないテーブル席を確保できた私だったんですけどね。まさか、開始1分もしないうち、ザネに至近距離からシュートを撃たれ、GKルーニンに救われるという、ドッキリに見舞われるとは!その後も立て続けにハリー・ケーン、ミュラー、ムシアラと前半15分までに8本も撃たれ、店内のファンたちを真っ青にさせていたんですが、それが何と、24分にはマドリーが先制点を奪っていたから、ビックリしたの何のって。 そう、後でムシアラなども「マドリーは何もないところから、チャンスを作る力がある」と言っていたんですが、クロースがその慧眼でビニシウスへスルーパスを放ち、キム・ミンジュを置き去りにした彼がGKノイアーの前でシュート。それが決まったんですが、いえ、お手柄の当人は「Toni siempre hace todo muy fácil y me ha regalado un gol/トニ・シエンプレ・アセ・トードー・ムイ・ファシル・イ・メ・ア・レガラードー・ウン・ゴル(クロースは常に何でも簡単にしてくれて、ボクにゴールを贈ってくれた)」と、まだ6月切れるマドリーとの契約を延長するかどうか、決めていないドイツ人MFのアシストを手放しで褒めていたんですけどね。 逆にクロースに言わせると、「El pase al final no ha sido tan especial, lo ha sido el movimiento/エル・パセ・アル・フィナル・ノー・ア・シードー・タン・エスペシアル、ロ・ア・シードー・エル・モビミエントー(結局のところ、パスはそんなに特別なものじゃなくて、彼の動きが上手かった)。ビニシウスは素早いだけでなく、賢くて、いつ動かないといけないか知っている」そうなんですが、ただその時だけだったんですよ、マドリーが攻めに行ったのは。0-1となった後も前半は守っているだけだったため、これはギュレルの一発で勝ったリーガ前節のレアル・ソシエダ戦展開になるかと思いきや、そこは天下のバイエルン。 トゥーヘル監督がゴレツカをゲレイロと入れ替えた後半には、うーん、序盤にはノイアーにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたクロースの一撃もあり、アンチェロッティ監督もゲームをコントロールできているフェーズだったと認めていたんですけどね。何と8分にはムシアラとサイドを変えて、右からドリブルでエリア内に入ったザネに同点ゴールを決められてしまうんですから、いくらブンデスリーガで今季、レバークーゼンに大差でタイトルを持っていかれたといっても、決してヨーロッパの名門の底力を侮ってはいけない? 実際、その4分後には、出場停止のカルバハルの代わりに先発したルーカス・バスケスがエリア内でムシアラを倒し、PKを献上。イングランド代表で同僚のベリンガムがキャプテンの気を散らしに話しかけにいったのも何のその、ケーンが危なげなく決めて、とうとう2-1と逆転しちゃいましたからね。ただその時の私は2ndレグはサンティアゴ・ベルナベウだし、CLではマドリーの根性のremontada(レモンターダ)精神が発現し易いため、僅差で負けた方が却って、来週水曜の試合が盛り上がっていいんじゃないかなんて思っていたのも事実。 それもあって、アンチェロッティ監督がチームにエネルギーを注ぎ込むため、ナチョをカマビンガに、クロース、ベリンガムをモドリッチ、ブライムに代えていくのを淡々と見守っていたんですが、38分、またしてもビニシウスがやってくれるとは!そう、今度は彼からのパスをもらったロドリゴがエリア内でキム・ミンジュに倒され、PKを獲得すると、それを決めて、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成。2-2の同点で1stレグを終わらせたとなれば、もうウェンブリーでの決勝の切符はゲットできたも同然? いえまあ、クロースも「Lo que se vio en los primeros 15 minutos hoy no es el plan/ロ・ケ・セ・ビオ・エン・ロス・プリメーロス・キンセ・ミヌートス・オイ・ノー・エス・エル・プラン(今日、最初の15分に見せたのはプランとは違った)」と言っていたように、この日はシティ戦2ndレグのように守り倒すつもりはなかったのか、いささか守備に強度が足りず。バイエルンに11本(うち5本が枠内)もシュートを撃たれていたのは気になりますけどね。アンチェロッティ監督も「Mostró su mejor versión y nosotros no/モストロ・ス・メホール・ベルシオン・イ・ノソトロス・ノー(相手は最高のバージョンを披露して、ウチは違った)。水曜まで改善する時間はある」と反省していましたが、何はなくとも、彼らの強みは、トゥーヘル監督も「2度のチャンスで2ゴール。もう前にもやっている」と認めていたように突極の効率性。 それを2ndレグで忌憚なく発揮できれば、大丈夫かと思いますが、またしても何千人というマドリーファンがチームバスのお出迎えをするであろう、そのビッグマッチの前に、マドリーにはベルナベウでリーガ戦が入っていて、それは土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)のカディス戦。実はこの試合に勝って、次の時間帯でジローナ戦をプレーする2位のバルサが引分け以下で終わるといよいよ、リーガ優勝が数字的にも決まるんですよ。ただ、ライバルの試合の決着がつくまで、2時間もロッカールームで待機しないといけないこともあってか、優勝した場合でもその夜、シベレス噴水広場へチームがお祝いをしに出向くことはないのだとか。 うーん、2年前にリーガとCLの2冠を達成したシーズンも同じような巡り合わせになって、リーガ優勝が週末に決まった後、翌週に準決勝シティ戦2ndレグが控えていた時は行っているんですけどね。今回は自重して、バイエルンとの決戦に全集中したいということなのか、え?でもソシエダ戦同様、スタメン大規模ローテーションをかけるマドリーにカディスが負けると決まっている訳じゃないんだろうって?まあ、そうなんですが、ペジェグリーノ監督のチームは降格圏の18位ですしね。アンチェロッティ監督もそれを考えてか、プレシーズンにヒザの靭帯を断裂。3月にも反対側のヒザの半月板部分損傷で復帰が遅れたGKクルトワの今季初先発を予告しているぐらいなんですが、いや、もしやこれはCL決勝を睨んでの布石ということも。 それだと何か、ここまで頑張ってきたルーニンが気の毒になってしまいますが、とりあえず、カディスはマドリーに負けてもまだ、降格が決定することはなく、勝ち点5上にいるセルタが日曜にビジャレアルに、そして6上にいるマジョルカが負けることに期待するばかりなんですが…そのアギーレ監督のチームは土曜午後9時(日本時間翌午前4時)にアトレティコをホームに迎えますからねえ。ご存知、今季はアウェイ絶対弱者と化している彼らはここ2試合、マジョルカ島で連敗していて、おまけに前節アスレィック戦で5枚目のイエローカードをもらったグリーズマンが累積警告で出場停止に。 未だにレマルとメンフィス・デパイのリハビリも終わらないため、今週のシメオネ監督はマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでスタメン選びに試行錯誤していたようで、最初はコレアとモラタの2トップだったのも、木曜にはコレアの1トップに変更。まあ、あれだけアウェイでダメダメな姿を見せ続けられているだけに、いくらスポーツ紙のアトレティコ番が、チームは3位奪取を諦めていないと大風呂敷を広げても、私はもう、あまり期待していないんですけどね。それだけにこの34節、大事になってくるのは先週末、メトロポリターノマジックのおかげで勝ち点差を6に広げることができた5位アスレティックと金曜に対戦する弟分の援護射撃な訳で…。 ただ、コリセウムにアスレティックを迎えるヘタフェも丁度、前節のアルメリア戦で1部残留が確定しましたからね。折しも1年前の今頃、ボルダラス監督がキケ・サンチェス・フローレス監督を引き継ぎ、辛うじて最終節に残留が決まった昨季とは隔世の感がありますが、かといって、10位の彼らが勝ち点6差ある7位のコンフェレンスリーグ出場圏を目指すのかは微妙。実際、ボルダラス監督も「Vamos a ver hasta dónde somos capaces de llegar, no tenemos objetivo/バモス・ア・ベル・アスタ・ドンデ・ソモス・カパセス・デ・ジェガール、ノー・テネモス・オブヘティーボ(ウチがどこまで行けるのか、見てみよう。特に目標はない)」と言っていましたしね。 それでもきっと、勝利でホームのファンを喜ばせようという意欲は選手たちにあるはずなので、コパ・デル・レイ優勝以来、3試合、白星から遠ざかっているアスレティック相手に善戦してくれると嬉しいんですが、さて。一応、朗報なのは負傷でここ数試合、出られなかったアレニャが戻ってこられることですが、とにかくマジョラル、アランバリ、ドゥアルテ、ファン・イグレシアスと、もう今季はプレーできない選手が多いヘタフェですからね。アルメリア戦では2ゴール挙げたグリーンウッドも毎試合、得点してくれるFWではないため、その試合で3点目を挙げ、マヌ・デル・モラルの持つクラブ最多得点記録37に並んだマタ辺りが頑張ってくれればと思います。 そしてまた1チームだけ、日曜試合となったラージョはエスタディオ・バジェカスにヘタフェに負けて、降格が決まったばかりのアルメリアを迎えるんですが、何せ彼らは3-0でコロッとビジャレアルにやられてしまった前節のイメージが悪すぎましたからね。降格圏とは勝ち点8差あるとはいえ、まだこちらは残留が確定していませんし、ここは相手にやる気がなくなっているところを利用して、一気に3ポイントを稼げれば、もうあまり心配することもなくなるんですが…どちらにしろ、このオフシーズンはゴールを挙げられるFWを獲得するのが、ラージョはマストになりそうです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.05.03 22:00 Fri

リーガの終わりが近づいてきた…/原ゆみこのマドリッド

「でも彼らには色アレルギーはないからなあ」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、CL準決勝1stレグでレアル・マドリーをアリアンツ・アレナに迎えるバイエルンが、応援に来るファンに「Alles in Rot(全員赤で)」と呼び掛けているのを知った時のことでした。いやあ、この手は準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグ前にマドリーも「Un Bernabeu vestido de blanco/ウン・ベルナベウ・ベスティードー・デ・ブランコ(白をまとったベルナウベウ)」のスローガンの下、スタンドを真っ白に染めて、相手を圧倒するために使っていたんですけどね。 とはいえ、マドリーには、ジグナル・イドゥナ・パルクのGelbe Wand(黄色の壁)を前に準々決勝2ndレグでドルトムントに逆転負けした、お隣さんのような黄色アレルギーもアウェイ弱者ということもないため、果たして効果があるのかどうか。実際、バイエルンと最後に顔を合わせた2018年の準決勝でもマドリーはアウェイの1stレグで1-2と勝ち、ホームで2-2と引分けて決勝に進出。キエフでの決勝でリバプールを破り、Decimotercero(デシモテルセーロ/13回目のCL優勝)を達成した実績がありますしね。その前年度など、まさにアンチェロッティ監督率いるバイエルンがジダン監督のマドリーに準々決勝総合スコア3-6で敗退したなんてこともあったんですが、まあ、とりあえず、先週末のリーガから見ていくことにすると。 それこそ、そのバイエルン戦のため、金曜にリーガ33節の先陣を切ることになったマドリーなんですが、サン・セバスティアンでのレアル・ソシエダ戦は雨がザーザー降る中、昨夏に引退したダビド・シルバがクラブから金の紋章を授与されてスタート。すでに前節のクラシコ(伝統の一戦)でバルサに勝利して、ほぼ優勝が確定していただけに、アンチェロッティ監督もミュンヘンでの試合で出場停止となるカルバハル、そしてチュアメニ以外、9人を大規模スタメンローテーションする余裕ぶりだったんですけどね。そのおかげもあったか、序盤からずっと攻めていたソシエダでしたが、決定力が欠けていたのが致命的でした。 だってえ、ほとんど敵エリアに近づかなかったマドリーだったにも関わらず、29分にはチュアメニが送ったロングボールから、カルバハルがゴール前に出したラストパスをソシエダのDFたちがカットできず。反対サイドにいたギュレルがワンタッチで押し込んで、先制点をゲットしてしまったんですよ。ええ、今季、フェルネバフチェから移籍した19才はこれまで、ほんの少ししかプレー時間がもらえず、かつてのウーデゴーア(現アーセナル)の二の舞を心配されていたんですけどね。この様子なら、趨勢が決まったリーガ残り5試合ではかなり出番が増えるのは確実かと。 え、でもソシエダもその2分後、久保建英選手がゴールを挙げていなかったかって?その通りなんですが、その前にバレネチェアがチュアメニにエリア前で足払いを掛けて倒し、それで転がったボールをオジャルサバルが繋いだという経緯が。VAR(ビデオ審判)通信を受けた主審がモニターチェックした結果、ファールでノーゴールとなることに。結局、その後は両チームとも点が取れず、マドリーが0-1で勝ったため、試合後には久保選手も「バレネチェアはボールを奪いに行って、獲られたのは相手が眠っていたから。Creo que eso en la Champions no lo van a pitar/クレオ・ケ・エソ・エン・ラ・チャンピオンズ・ノー・ロ・バン・ア・ピタール(CLだったら、あのファールは取らないと思う)」と結構、きつめの批判をしていたんですけどね。 それにはイマノル監督も同意していたんですが、どちらにしろ、ソシエダのEL出場圏6位キープの戦いは、7位のベティスと勝ち点2差しかないため、当分続きそうな。翻って、やはり褒めなくてはいけないのはマンチェスター・シティ戦2ndレグでも見せたマドリーの守備力なんですが、それもヒザの靭帯断裂から復帰したミリトンなど、この日が初フル出場試合でしたからね。アンチェロッティ監督も「ギュレル、セバージョス、フラン・ガルシアら、これまでプレー時間が少なかった選手たちが大きく貢献してくれた。Tenemos un plantillón con mucha calidad y compromiso/テネモス・ウン・プランティジョン・コン・ムーチャ・カリダッド・イ・コンプロミソ(ウチには高い質と献身の心を備えた素晴らしい選手層がある)」と言っていたんですが、これはなかなか、普通のクラブでは難しいですよね。 おかげで、残念ながら、月曜にはバルサもバレンシアに4-2で勝ってしまったため、一時は14に広がった勝ち点差は11のままだったんですが、それでも次節のカディス戦ではいよいよ、マドリーのリーガ優勝本決まり可能性が。ただ、その前に貧乏暇なしとはまさに真逆で、スペイン勢で唯一、CL準決勝進出している彼らは月曜にはもう、試合に出られないカルバハル、今週末復帰予定のクルトワ、まだリハビリ真っ只中のアラバも連れて早速、ミュンヘン入り。火曜午後9時(日本時間翌午前4時)のバイエルン戦に備え、スタジアム前日練習をしたんですが、風邪でソシエダ戦を休んだロドリゴ、胃腸炎明けで温存されていたベリンガム、そしてシティ戦2ndレグから、筋肉痛だったメンディもすっかり回復しているのは良かったかと。 といってもこれはまだ1stレグですからね。相手もムシアラ、ナブリ、ザネら、土曜にハリー・ケーンの2ゴールで勝利したフランクフルト戦に出られなかった選手たちが戻っているため、おそらくアンチェロッティ監督第1期だった2014年準決勝2ndレグの0-4の大勝みたいなことにはならず、かなり拮抗した展開が見られるのではないかと思いますが、さて。今回は激込み確実のバル(スペインの喫茶店兼バー)で120分超の長丁場観戦になる心配がないだけに、私もちょっと気分が楽です。 そして土曜にはまず、午後4時15分からヘタフェがアルメリア戦をプレーしたんですが、丁度、その時間に私は2部の弟分、レガネスを応援にブタルケに。それが、ここ4試合スコアレスドローという停滞状態がなかなか破れず、ネユウの負傷交代などもあったサラゴサ戦の前半もボルハ・ヒメネス監督のチームは得点できなくてねえ。幸い、後半12分にはラバのクロスをミゲール・デ・ラ・フエンテが頭で決めて、とうとうゴールは取り戻したものの、何なんでしょう。スタンドのファンが久々に勝利のお祝いができると勢い込んでいた後半ロスタイム3分、セルヒオ・ゴンサレスの腕に敵のシュートが当たり、VARモニターチェックでハンドによるPKとされてしまったから、さあ大変! 結局、50分に決まったマイケル・メサのPKゴールで1-1と終わり、5連続ドローなれば、日曜にはバジャドリーに同じ勝ち点で並ばれてしまったのも仕方ない?うーん、それでも1位は奪われなかっただけ、マシなんでしょうが、先週末は負けてしまったとはいえ、3位のエイバルもたった勝ち点差3ですからね。うっかり3位以下に落ちてしまうと、4チーム中、1チームしか1部に上がれない厳しいプレーオフの試練が待っていますし、ここは一刻も早く、レガネスにはドロー地獄から抜け出して、直接昇格で来季1部マドリット勢5チーム体制を復活させてもらいたいものですが…最近はチームにケガ人が増えてきているのが気掛かりではあります。 その裏で私がオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の二元中継で聴いていたヘタフェの方はというと、相手がダントツ最下位のアルメリアだったいうのがラッキーでしたかね。前半27分にはモリバが敵陣でロピからボールを奪い、そのラストパスを受けたグリーンウッドが先制。41分にはエンバルバのシュートをGKダビド・ソリアが弾いたボールを1月までヘタフェにいたチョコ・ロサーノに押し込まれるという、古巣恩返し弾を浴びるなんてことあったんですが、後半3分には今度はモリバが弾かれた後、グリーンウッドが自身2点目を挙げ、更に16分にもグリーンウッドのアシストでマタが3点目をゲットしたとなれば、もう安心ですって。 1-3で勝利して、アルメリアを2部降格確定に追いやっていたんですが、何よりだったのはこれで降格圏と勝ち点17となったヘタフェの残留が完全に決まったこと。あとは勝ち点6差とちょっと距離はあるものの、コンフェレンスリーグ出場圏の7位を目指してみるのもいいかと思いますが、彼らの決意がどこにあるのか、確認できるのは金曜、コリセウムでのアスレティック戦になりましょうか。折しも兄貴分との試合で未だにコパ・デル・レイ優勝酔いが未だに覚めていないことがわかったばかりの相手となれば、もしかしたら…。 そう、土曜はブタルケからセルカニアス(国鉄近郊路線)とメトロを使って、メトロポリターノに向かった私だったんですが、午後9時からのアスレティック戦には余裕を持って間に合うことに。それにしたって、アトレティコファンは心が広いのか、アウェイでCL準々決勝ドルトムント戦2ndレグ逆転敗退、続いてメンディソローサでアラベスに2-0負けと悲惨極まる姿をさらしてきた直後だというのに、チームを変わらぬ熱気で歓迎。フェルナンド・トーレス監督率いるフベニルAのリーガ優勝祝い、今季限りで引退を発表したOBのラウール・ガルシアへのオマージュ、更には先日、73才でお亡くなりになったトーレス父への黙祷とキックオフ前のメニューも満載だったんですが、実はこの試合、もう目標が4位キープで、来季のCL出場権を獲得することしか残っていない彼らにとっては背水の陣だったんですよ。 もちろん、それはアラベスに負けた後、5位のアスレティックとの勝ち点差がたったの3になってしまったからですが、シメオネ監督のチームの立ち上がりはかなり不安定。初っ端からイニャキ・ウィリアムスにフリーでvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃たれるなど、ドッキリさせられたんですが、15分には早速、メトロポリターノマジックが発動します。ええ、ジョレンテが上げたクロスをレクエがヘッドでクリアしたところ、それが丁度、エリア前にいたデ・パウルの前に落ち、そのシュートがガラレタに当たって、GKウナイ・シモンを破ってくれるとは、まるで冗談のようじゃないですか。 ただ、リードした時の常で時間が経つにつれ、一歩後退癖が顕著になってきたアトレティコは攻められていることが多くなり、いえ、だからって、ニコ・ウィリアムスがCKを蹴る時にモンキーチャントするおバカがいていいってことにはならないんですけどね。おかげで36分には一時試合が中断し、主審が差別行為禁止の場内アナウンスをクラブ職員に命じていましたが、幸いそれ以上の大事には至らず。その愚か者も翌日には警察により、身元が判明したため、刑事処分やスタジアム出入り禁止などの罰を受けるはずなんですが、でもそのせいで、アトレティコの選手たちの気が完全に散ってしまってはねえ。 それからパスが3度と続かないという、お馴染みのダメダメ状態に陥った彼らはついに45分、よりによってグリーズマンがウィリアムス兄にバックパスをプレゼント。そこからグルセタ、ウィリアムス弟に繋がって、同点ゴールを挙げられてしまったとなれば、それまで味方だったスタンドから、pito(ピト/ブーイング)が聞こえだしたのも仕方なかった?うーん、今季はホームで無敵だったアトレティコですが、まさにアスレティックにコパ準決勝1stレグで負けた後、リーガでもバルサに叩きのめされ、不敗神話が途切れていましたからね。1-1でハーフタイムに入った時は私も嫌な予感しかしなかったんですが…。 生きていたんですよ、メトロポリターノマジックは!そう、ロッカールームでシメオネ監督に「相手はウチが弱くて、怖がりで、意気地のないチームになって、時間の経過と共にファンが神経質になるのを待っている。だから、jueguen, jueguen, con tranquilidad/フエゲン、フエゲン、コン・トランキリダッド(落ち着いてプレーするように)」と言われたもの良かったか、反省してピッチに戻ったアトレティコは後半7分、コケのパスで抜け出したコレアが早々に勝ち越し点を挙げてくれたんです!おかげでスタンドのファンもいつもの応援状態に戻ってくれたとなれば、もう大丈夫ですって。 それでも1点差ではやや心もとなかったんですけどね。イロイロ選手交代があった後の36分、金曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションで追加のシュート練習をしたというサムエル・リノがエリア内から撃ったボールがゴールポストに当たり、ウナイ・シモンの背中でオウンゴールになってくれるとはまさに神様、仏様、メトロポリターノ様ってもんじゃないですか。 いえ、リノは44分にも同じような位置からシュートを撃って、敵DFにブロックされていたため、特訓は今週も続けてもらいたいところなんですけどね。アラベス戦を顔面神経痛で欠場したモラタもベンチにいたものの、ピッチに出る必要もないまま、試合は3-1でアトレティコが勝って終了。おかげでアスレティックとの差を勝ち点6に増やすことができた彼らだったんですが、今週末は大苦手のアウェイゲームの番となれば…。 何せ、コケの「アウェイでガツンと行けなかったことは、nos tiene que servir para la temporada que viene/ノス・ティエネ・ケ・セルビル・パラ・ラ・テンポラーダ・ケ・ビエネ(来季のために役立てないといけない)」という言葉を聞く限り、もう今季は原因究明も改善も諦めたようで、土曜のマジョルカ戦にはまったく期待ができませんからね。その上、アスレティック戦の終了間際にイエローカードをもらい、グリーズマンが累積警告で出場停止なってしまったとなれば、勝ち点7差の3位の座を狙うなんていうのは夢のまた夢。後はバルベルデ監督のチームがこのまま今季終了まで、コパ酔いから覚めてくれないことを祈るしかありませんって。 そして日曜にビジャレアルとのアウェイ戦に挑んだラージョは前半にセルロートに先制されると、後半にもCKからモスケラのヘッド、更に再びセルロートに決められて、3-0とあっさり負けてしまうことに。いやあ、前節のオサスナ戦勝利でほぼ残留に近づいたイニゴ・ペレス監督のチームだっただけに、恐れていた通りになってしまいましたが、まあ、残り5試合、この週末のアルメリア戦、グラナダ戦といったエスタディオ・バジェカスでの試合に勝てば、おそらく数字的にも確定しますからね。今はホームのファンに喜んでもらえる形でシーズンを終わらせることだけを考えてくれればいいんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.30 21:00 Tue

兄貴分チームはまだ頑張らないといけない…/原ゆみこのマドリッド

「バルセロナの記者たちは大変なのね」そんな風に私が同情していたのは水曜の夜、Gol(ゴル/スペインのサッカー専門の民放)をながら見していたところ、いやあ、バルサのチャビ監督がラポルタ会長邸に入ったのは午後7時ぐらいだったそうなんですけどね。それがようやく午後11時半近くになって、「チャビが出て来た!」と現場にずっと詰めていたリポーターから連絡が入り、中継がスタート。当人は何も言わずに車に乗って行ってしまったんですが、その後、現れたジュステ副会長に向けられたマイクの数の半端なかったことといったら、もう。 まあ、そのおかげで、「Xavi está muy ilusionado con el proyecto/チャビ・エスタ・ムイ・イルシオナードー・コン・エル・プロジェクト(チャビはこのプロジェクトにとても魅力を感じている)」と、先日のクラシコ(伝統の一戦)の後から噂になっていた、1月に当人が宣言していた今季限りから、来季も続投に変わったことが確認されたんですが、翌日にはラポルタ会長とチャビ監督の共同会見もありましたからね。そんな夜遅くまでメディアが張りつく大騒ぎになるとはさすが、スペイン2巨頭の片割れだけある? でもねえ、バルサはCL準々決勝敗退、クラシコ敗戦でリーガ優勝も絶望となったばかりで、まだ2位の座も確定しておらず。それがこの続投決定で、退団する指揮官に最後のご奉公をしようと頑張っていた選手たちの気が変わり、万が一、勝ち点2差の3位ジローナに追い越される可能性もありますからね。来季のスペイン・スーパーカップ出場権を獲れなくてもチャビ監督は安泰なのか、疑問に思ったのは私だけではなかったかと。 そんなことはともかく、リーガ20チーム中、唯一、まだミッドウィークのヨーロッパの大会で忙しくしているチームの話をすることにすると、そう、来週火曜のCL準決勝バイエルン戦1stレグを考慮して、リーガ33節の日程を繰り上げてもらったレアル・マドリーはもう、金曜午後9時(日本時間翌午前4時)にはレアル・ソシエダ戦をプレーするんですよ。何せ、日曜には2位のバルサに3-2と逆転勝利して、勝ち点差が11に拡大。ほぼほぼ、優勝が決まった彼らだけにリーガでは余裕がありますからね。 それもあって、前日会見では「Hasta que las matemáticas nos den la Liga tenemos que pelear/アスタ・ケ・ラス・マテマティカス・ノス・デン・ラ・リーガ・テネモス・ケ・ペレアル(数字的にリーガ優勝が決まるまで戦わないといけない)」と言っていたアンチェロッティ監督だったものの、大規模なローテーションを計画しているよう。その中にはクラシコの翌日、シベレス噴水広場のすぐ後ろにあるマドリッド市庁舎で開かれたローレウス・アワードに姿を現わし、年間最優秀ブレークスルー賞を受賞するのと一緒にウサイン・ボルトやルーカス・アルカラスらと親交を温めていたベリンガムも入っていて、いえ、彼は胃腸炎で木曜の練習をお休みしたため、ビッグマッチの前にムリさせたくないということみたいですけどね。 未だにCL準々決勝マンチェスター・シティ戦2ndレグの筋肉痛が治らず、クラシコにもいなかったメンディ共々、サン・セバスティアン遠征には同行しないんですが、おかげでレアル・アレーナのピッチに立つのはバイエルン戦1stレグで出場停止となるカルハバルを除き、ほぼ全員控え選手になる可能性も。とはいえ、ソシエダのイマノル監督も「Espero un Madrid potente, independientemente de quien esté en el campo/エスペロ・ウン・マドリッド・ポテンテ・、インデペンディエンテメンテ・デ・キエン・エステ・エン・エル・カンポ(誰がピッチにいるのかは別にして、強いマドリーを待っている)。彼らの選手層は凄く厚いからね」と言っていたように、エティハド・スタジアムで120分の激闘を繰り広げた後、カルバハルやナチョ、メンディが出なかったクラシコでもライバルに止めを刺していましたからね。 それもクロースによると、「ボクらが上手くプレーしていたら、4-0で勝てていたはず。でもとりわけ前半、押しが足りなくてね」という、エネルギーかつかつ状態でプレーしていたようですからね。バルサが残り全勝する前提で、あと勝ち点7を貯めれば、マドリーは優勝確定となりますし、これまで出番がほとんど回って来なかったギュレルやセバージョス、先発の機会が少ないホセルやブライムらがソシエダ戦では発奮して、いい勝負になるのでは? ちなみにマドリーには予期しない朗報もあって、ここ数日、チーム練習に加わっていたGKクルトワが来週末のカディス戦でもう復帰できるのだとか。いやあ、夏にヒザの靭帯を断裂し、ようやく回復した矢先だった3月、反対側のヒザの半月板を部分損傷。手術をしたため、今季はもう絶望と言われていた彼だったんですけどね。これはケパとのポジション争いに勝って、正GKとして定着し、CL決勝での初プレーを夢見ていたルーニンにとって、思わぬ強敵出現ですね。 一方、先週末は弟分のヘタフェと1-1と引分けたため、7位のベティスに勝ち点3差に迫られたソシエダでは、スベルディアとスビメンディが出場停止明けで復帰。更に3月に右足の中足骨を骨折したブライス・メンデスも再発の危険を覚悟で戻ってくるんですが、コリセウムでふくらはぎの肉離れを起こしたトラオレとティエルニは欠場。ここ2試合、不具合があって、途中出場だった久保建英選手も今度はスタメンに入れそうなんですが、きっと、彼とオドリオソラは古巣への恩返しに燃えているんじゃないでしょうか。 そして土曜にはまず、ヘタフェがパワーホース・スタジアムでのアルメリア戦に臨むんですが、何せ、そのソシエダ戦で彼らも勝ち点40に到達して、ほぼほぼ残留確定しちゃいましたからね。数字的にはコンフェレンスリーグ出場権のもらえる7位のベティスと勝ち点8と可能性はあるものの、昨季など、最終節まで2部降格の恐れがあったことを考えれば、もう肩の力が抜けてしまっても仕方ない?実際、チームにはボルハ・マジョラル、アランバリ、ドゥアルテ、そして先日、肩の手術をしたファン・イグレシアスと4人も今季中プレーできない選手がいて、人員が手薄になっていますからね。 ソシエダ戦でも19才のジャシンがデビューしたように、この先はボルダラス監督も来季を見据えて、カンテラーノ(ヘタフェB)の試用期間に当てたりするんじゃないかと思いますが、さて。そうそう、相手のアルメリダは今節、たとえ勝ってもセルタとマジョルカの結果次第で降格が決定。そうなるともう、主力アタッカーのラマザーニが前節での審判への暴言で出場停止5試合を喰らってしまったことなど、どうでもよさそうですが、シーズン終盤になって就任したペペ・メル監督はちょっと、気の毒ではあります。 え、それでCL準々決勝ドルトムント戦で敗退して帰国した翌日、ヒル・マリン筆頭株主がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に駆けつけ、リーガで4位となって、来季のCL出場権を獲得するのがどれ程、クラブにとって大事か、選手たちに重々説きながら、先週末のアラベス戦でもアウェイ弱者の本領を発揮。2-0で負けて、5位アスレティックとの差が勝ち点3になってしまったアトレティコはどうしているんだって?いやあ、彼らはこの土曜午後9時から、メトロポリターノでそのアスレティックとガチンコ対決するんですが、月曜にはローレウス・アワードに出席したデ・パウルが悪目立ちしていてねえ。 別に表彰された訳でもないのに一張羅でレッドカーペットを歩いていたのはいいんですが、マイクを向けられて、「En líneas generales creo que ha sido una gran temporada para el Atlético/エン・リネア・ヘネラレス・クレオ・ケ・ア・シードー・ウナ・グラン・テンポラーダ・パラ・エル・アトレティコ(一般的なラインとして、アトレティコは素晴らしいシーズンを送った)。コパ・デル・レイは準決勝、CLは準々決勝まで行ったし、CL出場圏のリーガ4位、来年のクラブW杯出場権も獲ったしね」と話していたのに神経を逆撫でされたファンは結構、多かったかと。 だってえ、それって、どの大会でもタイトルには手が届かなかったのにも関わらず、満足しているってことじゃないですか。しかも未だにファンは、あのドルトムント戦2ndレグでの情けない逆転敗退にショックを受けていて、その深度はメンディソローサでのダメダメぶりで更に倍増。これでは世間から、野心のない、現状維持で十分と思っているチームと見なされても仕方ないんですが、まあでも、アスレティック戦はアトレティコが心の拠り所とするメトロポリターノでの開催ですからね。 アラベス戦の欠場は三叉神経痛により、顔が痛かったせいと判明したモラタもゴールと共にかどうかは怪しいですが、水曜からチーム練習に復帰。メンフィス・デパイはまだケガが治っていないため、せめてグリーズマンやコレア、出場停止が明けたジョレンテらがチームの勝利を導くゴールを挙げるのに協力してくれたらと思いますが、さて如何に。ちなみにチームは木曜の練習後に決起ランチ会を開き、お肉を食べて、精をつけたそうですが、ホント、あと6試合なんですから、何とか踏ん張ってほしいものです。 そして相手のアスレティックは今週、アトレティコにも在籍したラウール・ガルシアが37才で引退発表したのに続き、31才のムニアインも退団を告知。まあ、折よく、まさにアトレティコを準決勝で破ったコパ・デル・レイで優勝して、悲願のガバラ(ビルバオの運河を走る荷物運番船)に乗っての水上パレードも40年ぶりに実現できましたからね。ベテランの選手にとってはキャリアチェンジのいい節目になったようですが、ここ2試合、祝賀酔いで引分けだった彼らもそろそろ目覚めそうなのが怖いところ。もうEL出場権は確保しているんだから、CLまで狙うのは遠慮してほしいところですが、きっとそうはいかないんでしょうね。 ちなみにもう1つの弟分、ラージョだけは日曜試合に当たっていて、こちらはラ・セラミカでのビジャレアル戦。イニゴ・ペレス監督のチームは前節、ホームでオサスナに2-1と逆転勝利して、降格圏との差が勝ち点9まで開いたんですが、15位という順位はまだ改善の余地があるかと。ビジャレアルも残留確定はしたといえ、7位まで勝ち点6差の9位と、ヨーロッパの大会出場圏を狙うのは少々、難しそうですからね。早くも消化試合の様相を醸しだしてしまわないか心配なんですが…何はともあれ、ラージョFW陣の得点数が少しでも改善してくれることを祈っています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.26 21:00 Fri

朗報の方が多い週末だったけど…/原ゆみこのマドリッド

「もう忙しい時期は終わったのね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、CL、リーガと試合が立て込んだ2週間の後、今週はミッドウィークフリーになることに気がついた時のことでした。いやあ、レアル・マドリーだけは来週、再来週にバイエルンとのCL準決勝があるため、他のマドリッド勢のように週1試合という訳にはいかないんですけどね。要は強いがための嬉しい代償ですし、これからはほぼ優勝の決まったリーガでローテーションもできるとなれば、あまり苦にはならないかと思いますが、この直近4連戦でボロボロになったアトレティコにはこの余裕日程が有難いかも。 だってえ、コパ・デル・レイ決勝のおかげで中8日で迎えたCL準々決勝ドルトムント戦1stレグ、その次、中2日で迎えたジローナ戦までは、ええ、ホームのメトロポリターノマジックのおかげもあって、勝っていたんですけどね。再び、中2日で挑んだジグナル・イドゥナ・パルクで4-2と負け、CL敗退が決まったかと思えば、次は中4日あったにも関わらず、メンディソローサでもアラベスに負けている始末。冗談抜きで今季残りのアウェイゲーム全敗の可能性も出て来たため、うーん、兄貴分に優しいヘタフェにはコリセウムで勝てるかもしれないとはいえ、マジョルカ戦、そして相手が最終節まで、ヨーロッパの大会出場権を争っていそうなレアル・ソシエダ戦はかなりヤバいかと。 メトロポリターノでのアスレティック戦、セルタ戦、オサスナ戦に勝つだけで、来季のCL出場権をもらえる4位をキープできればいいんですが、こればっかりはねえ。幸い、今週土曜に直接対決となるアスレティックもコパ優勝酔いがまだ覚めてないようで、リーガではここ2試合、引き分けが続けているため、何とかなってほしいんですが、とりあえず、まずは先週末のマドリッド勢がどうだったか、お伝えしていくことにすると。 この32節、土曜に先陣を切ったのは弟分のラージョで、ヘタフェとの弟分ダービーが0-0に終わった前節に続いて、オサスナとのホームゲームをプレー。でもねえ、春真っ盛りの気候に誘われて、エスタディオ・バジェカスに駆けつけたファンがゴールの歓喜に湧くまでには、かなり待たないといけなかったんですよ。それどころか、29分にはラウール・ガルシアが入れたクロスをモイ・ゴメスに決められて、先制されてしまうという逆境に遭うことに。 0-1のまま、後半に入っても相変わらず、ゴール日照りが続いていたラージョは順次、カメージョをRdT(ラウール・デ・トマス)に、デ・フルートス、ウナイ・ロペスをファルカオ、ベベにと前線を強化していったものの、30分を越えても同点に追いつけず。私の前に座っていた声の大きなアボナードー(年間チケット保持者)のオジさんなど、「Inigo, vete ya!/イニゴ・ベテ・ジャー(イニゴ・ペレス監督、もう出て行け)」と叫んでいた程だったんですが、35分、とうとう、ラージョの執念が実ることに。ええ、ベベの蹴ったCKを敵DFがヘッドでクリアしたボールがエリア外で待機していたチャバリアの前に落ち、そのvolea(ボレア/ボレーシュート)が決まってくれたから、どんなにファンも盛り上がったことか。 おまけにその4分後にはイシも奮起して、エリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を叩き込み、あっという間に逆転してしまうとは珍しい日もあるものですが、まあ、オサスナも勝ち点39とほぼほぼ残留確定していて、余裕がありましたからね。ラージョも何とかリードを守りきることができたため、2-1のまま終わり、イニゴ・ペレス監督は2年前に引退するまで、オサスナで師事していたアラサーテ監督に成長ぶりを見せつけることに。これでラージョも降格圏18位のカディスと勝ち点9差となったとなれば、今季3度目となる、ファンとの「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」唱和がプレ残留確定祝いみたいになっていたのも当然だった? そして翌日曜午後2時の早い時間帯に当たったのがヘタフェで、こちらもコリセウムでレアル・ソシエダ戦だったんですが、やっぱり順位争いをしているチームは違いますよね。開始1分にはラタサ、2分にはジェネが次々と倒され、先行きが心配されたんですが、それよりマズかったのは13分、早々にベッカーのクロスから、バレネチェアのヘッドで先制されてしまったことの方。何せエネス・ウナル(現ボーンマス)の移籍とマジョラルのヒザの靭帯断裂があってからの彼らはゴールを入れてくれるCFが不在ですからね。それでもこの日はオスカル・ロドリゲスが28分、同点ゴールを挙げることになったんですが、そのプレーが少々複雑なものだったんです。 そう、マキシモビッチのヘッドをGKレミロが弾いた後、オスカルの至近距離シュートも掻き出して、一旦、エリア外に出たボールをグリーンウッドがクロス。それをラタサが頭でゴールに入れたため、その場では誰もが彼の得点だと思ったんですけどね。それがしばらくして、VAR(ビデオ審判)がすでにオスカルのシュートがゴールラインを越えていたとして、得点者名が変わったんですが、どちらにしろ、1-1になったのは同じ。当事者たちの個人成績以外にはあまり影響はなかったかと。結局、久保建英選手がピッチに入った後半はどちらのチームも追加点を挙げられず、そのまま試合は引分けで終わることに。 え、後半8分にオスカルの蹴ったFKがポストに当たり、反対サイドのライン上にいたル・ノルマンが蹴り出したプレーでゴールが認められていれば、ヘタフェは勝てていたんじゃないかって?まあ、その通りですが、ボルダラス監督も「La falta que parecía que había entrado/ラ・ファルタ・ケ・パレシア・ケ・アビア・エントラードー(あのFKはゴールに入ったように見えた)が、ゴールラインテクノロジーがないから、本当に入ったか、入らなかったかはわからない」と達観していましたしね。ただ、これはこの勝ち点1で残留確定ラインの40に到達したヘタフェだからこそ、大ごとにならなかっただけで、その夜のクラシコ(伝統の一戦)では…。 まあ、その前には午後9時のキックオフまで時間があるのを利用して、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアラベス戦を見ることにした私だったんですが、いやあ、あんなに恐ろしいアトレティコを目の辺りにすることになろうとは!うーん、前日、モラタが体調不良で遠征に同行しないことを知った時には、もしやドルトムント戦2ndレグの1対1の大失敗を気に病んで、中4日では立ち直れない程なのかと穿ってしまった私だったんですけどね。もちろん、メンフィス・デパイもまだケガが治っていませんし、ゴールが足りていないのは重々、承知だったものの、もうそんな問題じゃなかったんですよ。 そう、4分までにグリディとハビ・ロペスがイエローカードをもらうという、テンション高めのスタートを切ったアラベスにシメオネ監督のチームは怖気づいたか、前半はほとんど何もできず。すでに15分にはコケがエリアからクリアしようとしたボールが敵DFに当たり、それを拾ったベネビデスにエリア外からシュートを決められていながら、ようようパスも繋がらない状態ではねえ。いかにもダメダメの今季のアウェイゲームの典型だったんですが、45分にはアラベスのFKがアスピリクエタの腕に当たったとして、ペナルティまで宣告されてしまうドッキリまで勃発することに。 でも大丈夫。この時は幸い、VARが介入してくれて、腕に当たったのは頭に当たって落ちてきたせいとして、PKを献上せずに済んだんですが、1-0のまま、始まった後半もデ・パウルの代わりにサウールが入りながら、大して変わり映えしないのでは。アラベスでは今季、アトレティコからレンタル修行に出ているシメオネ監督の三男、ジュリアーノが、8月にグラナダからアトレティコ入りし、そのままレンタルに出されたサムをベンチに追いやって初先発。父の前でいいところを見せようと、前半から目立っていたんですが、後半6分にはモリーナに股抜きを喰らわし、エリア内に入ろうとしたところをサウールが力づくで止めているシーンなどを見せられては限界です。あと15分ぐらいはバルにいられた私だってもう絶望して、早々にベルナベウに向かっちゃいますよ。 実際、その判断は正しくて、いえ、終盤にはサムエル・リノやコレアのシュートがGKシベラにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されるなど、同点のチャンスがなくもなかったようなんですけどね。丁度、メトロの駅を出た辺りだった47分、カルロス・ビセンテのクロスから、リオハにスーパーボレーを決められて、最後は2-0で試合は終了。オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)から聞こえるピッチインタビューでオブラクが、「どこから撃たれてもゴールになるんだから、estamos en una dinámica fea, mala/エスタモス・エン・ウナ・ディナミカ・フェア、マラ(ボクらは酷い、悪い流れに入っている)」、「No hemos hecho suficiente, como tantas veces este año fuera/ノー・エモス・エッチョー・スフシエンテ、コモ・タンタス・ベセス・エステ・アーニョ・フエラ(今季の他の何回ものアウェイのように、ウチは十分なことをしなかった)」と言っているのを聞きながら、ベルナベルのゲートをくぐるのがどんなに気が重かったことか。 うーん、アラベス戦前には2回程、マハダオンダ(マドリッド近郊)でセッションがあったはずなんですけどね。ここまで守備も攻撃も崩壊しているようでは、いくらシメオネ監督が「Trabajar más que nunca/トラバハモス・マス・ケ・ヌンカ(今までにない程、練習する)」と誓おうが、これはもう、1回チームを解体して、ゼロから構築していくぐらいでないと、体力的にもサッカー的にもお隣さんとタイトルを争えるようなレベルにはならないような気がしますが…今はとにかく残り6試合、何とか乗り切ってくれることを祈るしかありません。 そしてとうとう、密閉式ベルナベウの客席上部に釣り下がっていた360度大スクリーンも稼働して、その日も大勢のファンのお出迎えを受けたマドリーがバルサを迎えるクラシコが始まったんですが、何せ、アンチェロッティ監督のチームは水曜にマンチェスター・シティと120分の死闘を繰り広げたばかりですからね。カルバハルとメンディが疲労でルーカス・バスケスとカマビンガとローテーションすることになったんですが、開始早々の6分にはエティハド・スタジアムでのPK戦で2本止めて、英雄になったGKルーニンがしくじってしまったから、さあ大変! ええ、ラフィーニャの蹴ったCKをクリアしそこね、クリステンセンにヘッドで先制点を決められてしまったからですが、助かりました。18分にはルーカス・バスケスが敵エリア内右奥で17才のクバルシに足を引っかけられ、PKをゲット。ビニシウスが決めて、すぐ同点にしてくれることに。例のゴールラインを割ったかどうかで大騒ぎになった問題のプレーが発生したのは27分のことで、ギュンドガンの蹴ったCKを16才のジャマルがゴール左前から蹴り込んだんですが、ルーニンが掻き出した位置が微妙でねえ。主審が3分程、VAR通信にかかりきりになり、プレミアリーグから来たギュンドガンなど、彼の腕時計を指して、ゴールの知らせが入ってないか、確認するように頼んでいたものの…はい、ゴールラインテクノロジーはリーガにはありません。 最後はVARが完全にボールがラインを越えている映像はないと判断したため、バルサの得点にはならなかったんですが、彼らには前半ロスタイムにデ・ヨングの足がバルベルデの足と空中で当たり、再度の捻挫で担架退場になるという不幸も。まあ、そこはすぐにペドリが入り、チャビ監督は後半頭から、本職CB、その日はボランチだったクリステンセンもフェルミンに交代。更に18分には何と、エースのレバンドフスキとラフィーニャをジョアン・フェリックスとフェラン・トーレスに代え、勝ち越し点を探しに行ったところ、またジャマルがやってくれました。そう、3月にはスペインA代表親善試合でベルナベウデビューしていた彼だったんですが、うーん、左SBがカマビンガだったせいもあったんですかね。 誰よりもいい動きを見せていたその当人が24分、エリア内から撃ったシュートはルーニンが弾いたものの、こぼれ球をフェルミンに決められているんですから、困ったもんじゃないですか。といっても、マドリーの十八番は根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)ですからね。とりわけ、シティ戦では守ってばかりでフラストレーションも溜まっていたか、28分にはビニシウスが上げたクロスをエリア内に駆け込んできたルーカス・バスケスが撃ち込んで、再びスコアは2-2に。マドリーは引分けでも良かったため、ブラジル人前線コンビはこの後、交代したんですが、そこはどっこい、古参のルーカス・バスケスが残り5分にチームメートを鼓舞したそう。 「Vamos a por el gol, vamos a ganar/バモス・ア・ポル・エル・ゴル、バモス・ア・ガナール(ゴールを取りにいこう。勝つんだ)」という言葉を有言実行し、ロスタイム1分には自らラストパスをゴール前に送ると、ホセルがスルーしたボールをベリンガムが決めたとなれば、場内がどれ程、興奮の渦に包まれたのは言う必要もないかと。そのまま、試合は3-2で終わり、とうとうマドリーとバルサの差が勝ち点11となったため、ほぼリーガ優勝は確定したようなもんですが、そのせいもありますかね。試合後のバルサからはジャマルのゴールが認められなかったことに猛抗議が起きることに。 ええ、「Es una vergüenza para el fútbol/エス・ウナ・ベルグエサ・パラ・エル・フトボル(これはサッカーとして恥ずかしい)。確認するのにいいアングルの画像がなかったとか、他のリーグにはあるテクノロジーが儲けているリーガにないとか」(テア・シュテーゲン)というのはその通りかと。とはいえ、「Todo el mundo ha visto que ha entrado la pelota/トードー・エル・ムンド・ア・ビストー・ケ・ア・エントラードー・ラ・ペロータ(誰もがボールが入ったのを見た)。ウチの方がいいプレーをしたし、チャンスも多くて、守備も良くて、勝利に値するのはバルサだ」(チャビ監督)とまでくると、それはどうかと思うんですが、だってえ、ジャマルのゴールが認められても3-3の引分けですよお。勝ち点8差は変わらないため、やっぱり、バルサの逆転優勝は絶望的だったのでは? まあ、私としては延長戦の後でも疲れを見せず、代わって入ったルーカス・バスケスやモドリッチのような選手がしっかり貢献して、最後まで勝利を求める意欲を失わないマドリーにただただ、感嘆するばかりですが、そうそう、来週はバイエルン戦1stレグがあるため、この週末のリーガ日程が変更に。1日多く休めるよう、レアル・ソシエダvsマドリー戦が金曜午後9時(日本時間翌午前4時)に前倒しされたため、他のカードも幾つか日時が変わっているんですが、リーガ優勝が正式に決まるにはあと勝ち点7が必要なのだとか。最短あと3試合ということになりますが、クラブ的にはCL決勝進出を決めてから、落ち着いて祝いたいところでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.04.23 20:00 Tue
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