【日本サッカー見聞録】アジアカップ総括
2015.02.02 19:07 Mon
▽オーストラリアで開催されたアジアカップは1月31日に決勝戦を行い、地元オーストラリアが粘る韓国を延長戦の末に退け初優勝を果たした。2006年にオセアニア連盟から転籍したオーストラリアは、2007年と2011年のアジアカップでいずれも日本相手に敗退していただけに、日本がUAEに敗れたことで運も味方したと言えよう。
▽決勝戦で目を引いたのは、両国とも“地上戦”にこだわっていたことだ。これは昨年のオーストラリア戦でも顕著に表れていた。アジアでは空中戦で圧倒的な強さを誇るオーストラリアと韓国だが、W杯では通用しなかったために路線変更を余儀なくされたのだろう。それでも試行錯誤しながら結果を出したのは見事と言える。
▽それでもケーヒルは攻守において空中戦で圧倒的な強さを発揮したし、韓国は日本戦に限ればロングボール主体の空中戦を挑んで来ることは明白なだけに、彼らの変化を手放しで歓迎はできない。改めて空中戦の強化は、A代表に限らず日本サッカー全体のテーマであることに変わりはない。
▽さて、UAE戦後のコラムで柴崎の発見が今大会の収穫だと書いた。ポスト遠藤として、まだまだ守備への貢献や運動量など課題はあるものの、「試合を作れる選手」として将来が期待できると思った。しかしUAE対イラクの3位決定戦や決勝戦を見て、その考えが甘いことを痛感させられた。
▽決勝戦でオーストラリアの先制点を決めたルオンゴは22歳、韓国の同点ゴールのソン・フンミンも22歳と、いずれも柴崎と同年齢だ。ソン・フンミンはウズベキスタンとの準々決勝でも延長戦で2ゴールを決めるなど、韓国の中心選手としてチームを牽引した。他にもUAEの技巧派司令塔のオマル・アブドゥルラフマンは23歳、俊足2トップのアリ・マブフートは24歳、アーメド・ハリルは23歳の若さでチームの中心選手となっている。
▽22歳の武藤も出場機会を与えられたが、スタメンをアピールするまでには至らなかった。初めての大舞台に委縮したのか、持ち味であるスピードで勝負した場面は数えるほどだった。交代出場だからこそ活きる自分の武器をもっと活用するべきだった。
▽今回ベスト4に勝ち進んだ各国は、世代交代を進めつつ結果も残した。このためベスト8で敗退した日本は、ロシアW杯へ向けて世代交代を加速しなければならない。しかしロンドン五輪のメンバーで今回のアジアカップに出場したのは酒井と清武だけ。今後はケガが治れば山口あたりも招集されそうだが、攻撃陣のバックアップは明らかに人材不足だし、両サイドバックも内田と長友ら北京五輪世代に頼ってばかりもいられない。
▽アジアカップでの予期せぬ敗退にアギーレ監督や技術委員会の責任を問う声もチラホラ聞こえてくるが、そんなことに時間を浪費している暇はない。早急な若返りと育成に着手しないと、W杯予選で取り返しのつかない事態を招きかねない。まずは3月の五輪予選をしっかり勝ち切ること。技術委員会は2月3日にミーティングを開いてアジアカップの総括をする予定だが、その反省点を手倉森ジャパンにしっかりバトンタッチして欲しい。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽決勝戦で目を引いたのは、両国とも“地上戦”にこだわっていたことだ。これは昨年のオーストラリア戦でも顕著に表れていた。アジアでは空中戦で圧倒的な強さを誇るオーストラリアと韓国だが、W杯では通用しなかったために路線変更を余儀なくされたのだろう。それでも試行錯誤しながら結果を出したのは見事と言える。
▽さて、UAE戦後のコラムで柴崎の発見が今大会の収穫だと書いた。ポスト遠藤として、まだまだ守備への貢献や運動量など課題はあるものの、「試合を作れる選手」として将来が期待できると思った。しかしUAE対イラクの3位決定戦や決勝戦を見て、その考えが甘いことを痛感させられた。
▽決勝戦でオーストラリアの先制点を決めたルオンゴは22歳、韓国の同点ゴールのソン・フンミンも22歳と、いずれも柴崎と同年齢だ。ソン・フンミンはウズベキスタンとの準々決勝でも延長戦で2ゴールを決めるなど、韓国の中心選手としてチームを牽引した。他にもUAEの技巧派司令塔のオマル・アブドゥルラフマンは23歳、俊足2トップのアリ・マブフートは24歳、アーメド・ハリルは23歳の若さでチームの中心選手となっている。
▽翻って日本はというと、23歳の酒井は4試合にスタメンでフル出場したものの、内田がいれば出番はなかっただろう。一生懸命、頑張っているのは分かるし、プレーから必死さは伝わってくる。しかし安定感に欠け、試合中の凡ミスも多い。UAE戦では相手のクリアミスからこぼれ球を拾ったものの、クロスは精度を欠いていた。
▽22歳の武藤も出場機会を与えられたが、スタメンをアピールするまでには至らなかった。初めての大舞台に委縮したのか、持ち味であるスピードで勝負した場面は数えるほどだった。交代出場だからこそ活きる自分の武器をもっと活用するべきだった。
▽今回ベスト4に勝ち進んだ各国は、世代交代を進めつつ結果も残した。このためベスト8で敗退した日本は、ロシアW杯へ向けて世代交代を加速しなければならない。しかしロンドン五輪のメンバーで今回のアジアカップに出場したのは酒井と清武だけ。今後はケガが治れば山口あたりも招集されそうだが、攻撃陣のバックアップは明らかに人材不足だし、両サイドバックも内田と長友ら北京五輪世代に頼ってばかりもいられない。
▽アジアカップでの予期せぬ敗退にアギーレ監督や技術委員会の責任を問う声もチラホラ聞こえてくるが、そんなことに時間を浪費している暇はない。早急な若返りと育成に着手しないと、W杯予選で取り返しのつかない事態を招きかねない。まずは3月の五輪予選をしっかり勝ち切ること。技術委員会は2月3日にミーティングを開いてアジアカップの総括をする予定だが、その反省点を手倉森ジャパンにしっかりバトンタッチして欲しい。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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