コラム

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【日本代表コラム】“世界”で戦うために必要なもの

▽ブラジル代表に続き、世界トップクラスの力を持つベルギー代表を相手に善戦した日本代表。「大きなライオンを倒すところまでいった」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督が語ったように、ブラジル戦に比べれば前半から戦えていた。 ▽しかし、欧州遠征2試合を見れば2連敗。仮にこれがワールドカップの本大会だったとするならば、日本のグループステージでの敗退は限りなく濃厚になったと言える。運良く3チームが1勝ずつで並ぶ可能性はなくはないが、厳しい状況には変わらない。手放しでは喜べない結果だ。 ◆前半からハイプレスが機能Getty Images▽ブラジル戦は前半から押し込まれる展開となり、「蛇に睨まれた蛙」とでも表現できるパフォーマンスだった。気がつけば3失点と試合の大勢を決められてしまった。 ▽しかし、ベルギー戦は立ち上がりからプレスがハマり、決定機も作れていた。失点シーンはシュートを警戒しすぎたのか、ボックス付近で簡単に突破を許してしまったが、それ以外は水際で体を張ってブロックするなど、守備面での改善は見られた。 ▽特にメンタル面で崩れることが少なく、「選手たちはブラジル戦の後、ブラジルと対等とまではいかないが、戦えるということに気付いた」とハリルホジッチ監督が明かしたように、最後まで戦う姿勢を見せていた。 ▽1試合を通してのハイプレスは難しいが、プレス強度をベルギー戦では使い分けていた。しかし、選手の距離感はまだ怪しい部分も多い。さらに、先発したメンバーと途中出場のメンバーでは、プレスのクオリティに大きな差が出たように感じた。ハイレベルの相手との試合では、途中から試合に入る難しさはあるだろう。しかし、その力は本大会で必ず必要になるだけに、守備面での意思統一はこの先も強化しなければいけない。 ◆一瞬の隙が命取りにGetty Images▽前半を何とか無失点で終え、後半も無失点で試合を進めていたが、一瞬の隙を突いてやられた。ボックス手前でボールを持ったシャドゥリが一気にスペースを突いて4人を置き去りに。クロスに対し、ルカクが飛び込んで先制点を許した。 ▽シュートを打たれる意識があったからか、このシーンではプレスがかかっていなかった。突破されても…という考えがあったのかは分からないが、深くえぐられてのクロス。そして決め切るルカク。一瞬の判断ミスが、失点を招いた。 ▽DF槙野智章を中心に、守備面で粘り強さを見せられていただけに、もったいない失点でもあった。ただし、W杯になれば一瞬でも隙を見せると命取りになる。そのことをこの2試合で体感できたことは、少なからずプラス材料だろう。 ◆足りないのは「スピード」Getty Images▽その他にも気になったポイントは横パスだ。1点ビハインドとなってから、日本は選手交代も含めてギアチェンジ。全体的に攻撃に比重をかけていく。ベルギーは自陣に引いて守備をする場面もあったが、横パスや緩いパスを常に狙い続け、インターセプトから一気にゴール前まで持ち込むシーンも見られた。 ▽また、交代直後のFW杉本健勇が粘って独走し、シュートまで持ち込んだシーンも同様だ。抜け出しまでは良かったものの、最後のところでのスピードアップができなかった。そして、ストライカーとしてシュートの判断は悪くなかったが、より判断のスピードが上がれば、並走していた原口元気も見えたはずだ。W杯本大会ではより少なくなる可能性がある決定機。それを逸することの大きさを感じただろう。 ▽Jリーグが悪い、レベルが低いという訳ではない。しかし、ヨーロッパのトップリーグと比べれば、1つ1つのプレーのスピード、判断のスピード、局面が展開するスピードは大きく違う。「普段なら問題ないプレー」がW杯で戦うのであれば、「問題あり」になってしまう。様々な面で、日本サッカー界全体としての「スピードアップ」はこの先の大きな課題だろう。 ◆12月は世界で戦える選手の選考Getty Images▽「この12月の中で国内組から代表に入るかどうかの決断をする」とハリルホジッチ監督は試合後に語った。12月に国内で開催されるEAFF E-1サッカー大会。国内組で構成される日本代表は、本当の意味でのサバイバルになる。 ▽ハリルホジッチ監督の下で合宿を経験している選手、国内組として常に代表に招集されている選手、そして日本代表としては未知数な選手…。Jリーグでのパフォーマンスを下に、新たな顔ぶれも少なくは無いはずだ。しかし、そこで求められるのは“世界”で戦えるかどうか。国内だけで通用する選手では、本大会のメンバー入りは難しいかもしれない。 ▽今回の欧州遠征には、これまで日本代表を支えてきたMF香川真司やFW岡崎慎司、MF本田圭佑は招集されなかった。ある程度計算できる部分もありながら、満足行くパフォーマンスでないことはそれぞれの選手も理解しているだろう。 ▽しかし、ヨーロッパのトップリーグでの経験値は高い。フィジカル面、テクニック面もさることながら、メンタル面ではより“世界”で戦えるはずだ。その部分も上回れる選手が国内組から現れるならば、日本代表としては本大会に向けて明るい材料になるだろう。基準は“世界”。その点を踏まえ、12月の大会を楽しみに待ちたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.11.15 21:45 Wed
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【日本代表コラム】痛感させられた差、ブラジルが見せた日本に必要なもの

▽結果を見れば1-3と敗戦。内容を見ても、レベルの差を痛感させられた一戦となったブラジル代表戦。しかし、日本代表にとって意味のない試合だったかと言われれば、それは大きな間違いだ。 ◆流れを断ったVARだが…Getty Images▽日本は前半に流れを寸断されるVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の判定により、PKが与えられ、ネイマールに先制ゴールを許した。レッドカードに相当するシーンや、得点に直接関与するシーンの判定で用いられることが通例だったが、時間をおいてのビデオ判定。そして、吉田麻也にはイエローカードが提示され、PKもブラジルに与えられた。出鼻をくじかれた感は否めない。 ▽しかし、VARは今後さらに導入され、こういった場面は増えてくるだろう。時には、理不尽な使われ方が起きる可能性もある。しかし、それでも対応していかなくてはいけない。日本代表の選手の心情に“揺らぎ”が生まれ、浮き足立ってしまったのは残念だった。 ▽それは守備面で特に見られた。この試合は、立ち上がりから相手陣内も含めて日本はプレスの強度を高めた。しかし、ブラジルの選手はそのプレスを回避。レベル差を感じさせられる場面は多かったが、日本がプレス強度をより強めれば、ファウルとなった。その結果、2度目のPKを献上。これはGK川島永嗣が見事に防いだが、その流れのCKから最後はマルセロに強烈なミドルシュートを叩き込まれ、あっという間にリードを2点に広げられた。浮き足立つことの恐ろしさを、選手たちは体感したはずだ。しかし、ここで体感できたことはプラスだと考えられる。 ◆バランス、チームとしての規律Getty Images▽日本が苦しめられた点を他にも挙げるなら、前線の強力なパワーもあるが、最も差を感じたのはバランス感覚だ。フェルナンジーニョ、カゼミロ、ジュリアーノの3枚で構成されたブラジルの中盤、マルセロ、ダニーロの両サイドバックは特にだ。攻守におけるブラジルのバランス感覚、そして規律を持ったプレーは、日本を苦しめた。 ▽カゼミロがアンカーのポジションでバイタルエリアを封鎖すれば、フェルナンジーニョとジュリアーノは機を見て前線の3枚と絡み、日本のボックス内にまで侵入した。両サイドバックも左のマルセロが攻撃に比重を置く中、ダニーロは守備を重点に。前線の3枚も流動的に動き、日本を翻弄した。 ▽ブラジルは個人技に優れている部分が目立ち、実際にペースを落とした後半は日本が主導権を握る場面も多く見られるようになった。しかし、チッチ監督によりチームが規律を持ち、ブラジルらしからぬ守り方も前半は見せていた。個に頼る部分が随所に残されているものの、規律まで身につけられてしまっては歯が立たなくなってしまう。 ◆お手本のようなサッカーGetty Images▽もう1つ挙げるとすれば、ブラジルが日本のやりたいことを体現している場面が多く見られたことだ。プレス回避の仕方、中盤のバランスの取り方、そして後方からの追い越し…攻守の切り替え、そして縦に早いサッカーが見られた。 ▽長谷部誠、山口蛍、井手口陽介とボールを奪え、攻撃に転じられる3枚で中盤を構成した。しかし、ブラジルは井手口、山口のプレスを上手くいなし、それによりできたスペースを使った。その後の攻撃は、後方の選手が前線を追い越し、数的有利を作って日本ゴールを脅かした。日本も本来であれば、中盤の高い位置でボールを奪い、後方から追い越す縦に早い攻撃を仕掛けたいはず。しかし、ブラジルに見事にやられてしまった。 ▽特に3点目のガブリエウ・ジェズスのゴールが良い例だろう。左サイドから中央にパス。そのまま右サイドに展開されると、ダイレクトのクロスをファーサイドに走りこんだガブリエウ・ジェズスに決められた。日本も似たようなシーンを作ることは多いが、枚数の不足や展開の遅さ、クロス精度の低さなど基礎能力の面での差も大きい。フィニッシュの部分は、やはり精度を上げなくてはいけない。 ▽前半は攻守の切り替えを早くすれば精度が落ち、精度を上げれようとスピードを落とせばすぐに対処されるというシーンが続いた。両方を一度に上げることは簡単ではないが、ハリルホジッチ監督が当初から掲げていたスタイルは、世界で戦う上では必要だということをまざまざと見せつけられていた。 ◆後半には収穫もGetty Images▽前半は苦戦した日本だったが、後半は手応えを感じられるシーンが増えた。ブラジルが3点リードしたことでパフォーマンスが落ちたことは大いにあるが、スペースを使い、サイドをずらし、危険なシーンを何度も作った。 ▽浅野拓磨が後半開始から起用されると、マルセロの裏のスペースを活用。右サイドから崩しにかかったが、ネイマールとの対峙に奔走していた酒井宏樹のサポートが少なかったこと、アタッキングサードでの精度が低かったことでゴールが生まれなかった。 ▽また、途中から起用された乾貴士、森岡亮太は違いを見せた。2人が入ることで中盤と前線の連動性がより高まり、ブラジルのバランスを崩すことができた。攻撃センスの高い両選手は結果こそ出せなかったものの、光るものは見せた。 ▽特に後半アディショナルタイムのワンプレーは見事。森岡が中盤でダイレクトスルーパスを送ると、高い位置を取っていた酒井宏樹に渡り、深い位置からの折り返しがフリーの浅野に。ゴールには繋がらなかったが、崩しという点ではこの試合で1番の出来だった。浅野に冷静さが加われば、後方に構えた乾がダイレクトで…というタラレバはあるが、ポジショニング、スピード、そしてイメージの共有があれば、ブラジル相手でも崩すことが可能であるという一面を見せられたことは大きい。 ◆ベルギー戦でもチャレンジをGetty Images▽日本がアジアとの対戦で見せるプレーとは異なっていた試合。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が求める“デュエル”の勝率こそ高くなかったが、チーム全体としてボールホルダーへのプレスの強度は悪くなかった。しかし、バランスが崩れたこと、そしてブラジルが何枚も上手だったことで、今回の結果に繋がったと思う。 ▽ワールドカップは格上の相手ばかり。日本が戦えないことはないが、戦い方を間違えれば大敗もあり得る。しかし、相手に対しての有効な策を見出すことができれば、十分に勝機はあるのも事実だ。それだけに、“デュエル”と“縦に早いサッカー”というハリルホジッチ監督が掲げるものは残りの8カ月で高めなくてはいけない。 ▽次の相手は格上であるベルギー。ホームでの開催であり、現チーム初となるブルージュでの試合となる。川島、森岡、久保裕也とベルギーとも関わりある選手が居る日本代表。これまでの対戦成績では勝ち越しているが、今のベルギーは別物だ。目標はワールドカップで勝ち上がること。そのためにも、ブラジル戦を生かし、現在地をしっかりと測る試合をしてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.11.11 12:57 Sat
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【日本代表コラム】欧州遠征に呼ぶべき4選手…日本代表へのススメ

▽31日、欧州遠征に臨む日本代表メンバーが発表される。今回の欧州遠征では、最新のFIFAランキング(10月16日発表)で2位につけるブラジル代表と、5位につけるベルギー代表と対戦。どちらもロシア・ワールドカップ(W杯)に出場することが決定しており、日本にとっては現在地を測るためにはこの上ない相手となる。 ▽W杯では、4カ国が1つのグループに割り振られるが、基本的に南米+欧州、または欧州の2カ国と同居することになる。ブラジルとベルギーはFIFAランキングでトップ8に入っているため、本大会で同居することはないが、同等レベルの国との対戦は避けられないため、このタイミングでのマッチメイク、さらにアウェイの地で試合が行えることはプラスと考えられる。 ▽そんな日本代表は、ケガの影響もあったMF長谷部誠(フランクフルト)やFW岡崎慎司(レスター・シティ)、MF本田圭佑(パチューカ)ら海外組の一部選手を10月の2試合に招集しなかった。上記の3選手ともにクラブチームでは結果を残しており、今回の欧州遠征には復帰する可能性も高いだろう。 ▽一方で、ここまでのマッチメイクが今後行えることは考えにくく、12月のEAFF E-1東アジアサッカー選手権のあとは、3月まで試合が行われない予定だ。そうなれば、本大会に向けた選手選考の場が限られている上に、実戦で試す場も限られている。そこで、今後のスケジュールも考え、今回の欧州遠征に招集すべき4選手をピックアップする。 ◆MF森岡亮太(ベベレン/ベルギー)Getty Images▽まず1人目は、今シーズンからベルギー・ジュピラーリーグに所属するMF森岡亮太だ。今シーズンの森岡は、加入1年目ながらすでにチームの中心として活躍。リーグ戦ではここまで全13試合に出場すると、6ゴール8アシストを記録。チームは9位と振るわない位置にいるが、気を吐いている状況だ。 ▽ヴィッセル神戸時代から武器にしていた仕掛けや攻撃センスに加え、得点力にも磨きをかけている森岡。日本代表ではMF香川真司やMF倉田秋が現在の代表では同じポジションになると考えられ、MF清武弘嗣も入る可能性があり、割って入れるかに期待が懸かる。 ▽森岡はハビエル・アギーレ監督時代の2014年に代表招集を経験し、ブラジル代表とも対戦している。ベルギーで行われる試合ということを考えれば、3年ぶりの日本代表復帰に期待したい。 ◆MF長澤和輝(浦和レッズ)Getty Images▽2人目は、ここに来て持ち味を発揮し出色のパフォーマンスを続けている浦和レッズのMF長澤和輝だ。ジェフユナイテッド千葉への期限付き移籍から復帰した今シーズン、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下では出場機会が得られなかったが、堀孝史監督の下で出場機会を得ると、水を得た魚のように好パフォーマンスを継続している。 ▽持ち前の攻撃力に加え、ハリルホジッチ監督が求める“デュエル”の強さを発揮。アグレッシブなプレースタイルも踏まえれば、日本代表のインサイドハーフとしてプレーしているのを見たくなる。12月の国内組で臨むEAFF E-1東アジアサッカー選手権の招集はあり得るが、浦和がAFCチャンピオンズリーグで優勝した場合はクラブ・ワールドカップが控えており、招集は見送られるはずだ。そうなれば、長澤を見る機会がなくなるため、このタイミングでの招集がベストだと考える。 ▽専修大学からケルンへ加入し、欧州のサッカーも経験。少し遠回りになったかもしれないが、日本代表としてもキーマンになれる可能性を秘めている。 ◆MF中島翔哉(ポルティモネンセ)Getty Images▽3人目は、リオ・デ・ジャネイロ オリンピック代表でもあり、今シーズンからポルティモネンセに移籍したMF中島翔哉だ。FC東京から海を渡った中島は、当初フィジカル面の問題が危惧されていた。しかし、蓋を開けてみると持ち前の得点力を発揮。ポルトガル・プリメイラリーガで6試合に出場し、4ゴールを記録している。 ▽U-23日本代表時代にも見せていたドリブル突破、仕掛けの部分はトップクラス。激化している左ウイングのポジション争いに名乗り上げるのに十分だ。将来性を考えても、本大会に起用したい世代。欧州遠征という貴重な機会にメンバー入りしてもらいたいところだ。 ◆MF南野拓実(ザルツブルク)Getty Images▽そして最後は、ザルツブルクで奮闘するFW南野拓実だ。今シーズンはケガもあり、ここまでオーストリア・ブンデスリーガで7試合の出場で1ゴール。過去2シーズンのパフォーマンスを考えると、まだまだ物足りない印象だ。 ▽しかし、持ち合わせているポテンシャルの高さは知られた通り。右ウイングに本田を呼ばないのであれば、南野を見たいところだ。ハリルホジッチ監督の下では2015年11月に招集を受けており、2年ぶりの代表復帰に期待したい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.10.31 12:50 Tue
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【日本代表コラム】「バランス」、「新戦力」に不安…深刻な“3番手”不足

▽「監督になって最悪の試合」「本当に謝罪したい」──ハイチ戦を引き分けた後の記者会見で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は繰り返し、この言葉を発していた。 ▽豊田スタジアムで行われたニュージーランド代表戦を2-1で勝利した日本は、その試合からDF長友佑都(インテル)、DF槙野智章(浦和レッズ)以外の9名を変更。フレッシュな顔ぶれが並び、ハイチ戦がスタートした。果たして「バランス」、「新戦力」、「結果」はどうだったのか。 ◆崩れたバランス…カギは「アンカー」Getty Images▽倉田秋(ガンバ大阪)の2戦連発弾、杉本健勇(セレッソ大阪)の代表初ゴールで幸先良く2点のリードを奪った日本。しかし、2点目を獲って以降は決定機を生かすことができず、その後に逆転される事態となった。 ▽この日は中盤から前が初めて組むメンバーが多く、攻撃も単調に終わる場面が散見された。さらに、意思の疎通が取れていないようなプレーも見られ、徐々に歯車が噛み合わなくなっていった。 ▽特に気になったのは、アンカーの位置に入った遠藤航(浦和レッズ)だ。インサイドハーフに小林祐希(ヘーレンフェーン)、倉田秋(ガンバ大阪)を配置したことで、守備面での貢献が求められた遠藤。序盤は鋭い出足でボールを奪う場面も見られたが、徐々に立ち位置が不安定になっていった。 ▽クラブでプレーするポジションとは違うという点もあるが、U-23日本代表ではプレーしていたポジション。しかし、小林や倉田との息が合わないプレーが目立ち、ピッチ上で檄を飛ばされるような場面も。安定感をもたらせられなかったことで、徐々にハイチにペースを握られてしまった。 ▽遠藤だけでなくメンバーを多く入れ替えたことで、チームを立て直すことができない部分も多く見られた。レギュラーと考えられる15名程度の選手と比べ、全体的にチグハグさが目立った印象だ。原口元気は「自分よりチームのバラバラ感が強かった」と試合後にコメントするほどだった。 ◆新戦力は多く起用も、目に留まった選手はなしGetty Images▽前述のとおり、普段試合にあまり出ていない選手が多く出場したこの試合。結果を見ても分かる通り、チームに違いを見せていた選手は少なかった。杉本が初ゴールを決めたことや、ニュージーランド戦で途中出場ながら決勝ゴールを決めた倉田が2戦連続でゴールを奪ったことなどは高材料だ。 ▽また、代表デビューとなった車屋紳太郎(川崎フロンターレ)が左利きの左サイドバックらしさを発揮し、決勝点に絡むプレーを披露。久々の出場となった酒井高徳(ハンブルガーSV)が積極的に攻め上がり、同点ゴールを呼ぶシュートを放つなど、好材料がなかったわけではない。 ▽しかし、改めてレギュラー組との差を感じさせられ、底上げが急務となるポジションがいくつかあることも浮き彫りとなった。「何人かの選手の弱さ、脆さに、ちょっとガッカリしている」とハリルホジッチ監督が語ったように、ポイントである“デュエル”で負けているシーンも多く見られた。 ▽残された期間は8カ月。国内外の選手が集まれるチャンスはそう多くない状況で、このような試合をしてしまったことは、チーム強化に“ストップ”をかけられてしまった感覚だろう。しかし、改めて問題点を明確にされたことをプラスに捉えることもできる。「全ての面でトレーニングしなければいけないことが、たくさんある」とハリルホジッチ監督も語った通り、レベルアップが各個人に求められる。 ◆土壇場でなんとかドローに持ち込むGetty Images▽2点差をひっくり返されてしまった日本は、大迫勇也(ケルン)、香川真司(ドルトムント)を続けて投入。攻勢に出る采配を振るい、その香川が最後にゴールを決めた。 ▽失点を喫してからというもの、チグハグさが消えなかった日本だったが、徐々に既存の選手を起用することで安定感が増し、終盤は押し込み続けていた。決して褒められる結果ではないが、敗戦を回避し、追いついたという部分はプラスにも考えられる。しかし、結果を残したのが既存のメンバーだったことは、テストという点では物足りなかった。 ◆浮き彫りになった“3番手”不足Getty Images▽キリンチャレンジカップサッカー2017の2試合を通じて、多くの選手を起用したハリルホジッチ監督。しかし、改めてレギュラー組と控え組の差が浮き彫りになった印象だ。特に、“3番手”の選手が不足している感が否めない。 ▽例えば、センターバック。吉田麻也(サウサンプトン)が不動の1番手であり、昌子源(鹿島アントラーズ)が2番手に付ける格好だ。しかし、それまでは森重真人(FC東京)が吉田をコンビを組んでいたこともあり、現状での3番手が不透明だ。2試合フル出場を果たした槙野は、まずまずのパフォーマンスだったが、特にハイチ戦は満足していい内容ではなかった。植田は出場の機会がないまま終わり、依然として“3番手”が決まらない。 ▽アンカーも同様だ。ニュージーランド戦でアンカーを務めた山口蛍(セレッソ大阪)、さらにヒザのケガの影響も考慮して招集外となった長谷部誠(フランクフルト)は安定したパフォーマンスを見せている。ダブルボランチでもアンカーでも起用できる2人。しかし、ここも“3番手”が不在だ。遠藤のパフォーマンスは追試の対象となるだろう。新たな戦力がこのポジションに割って入る可能性も十二分にあるだろう。 ▽センターフォワードも同じことが言える。今回は招集外となった岡崎慎司(レスター・シティ)、ニュージーランド戦で先発し、ハイチ戦も途中出場した大迫は軸に成り得る。しかし、杉本は不慣れな1トップの動きを体現できていない。Jリーグでゴールを量産しているだけに、日本代表のやり方をモノにできればいいが、現時点ではテストを続けることになるはずだ。 ▽「私には13人から15人、しっかりプレーしてほしい選手がいる」とハイチ戦の前日会見でハリルホジッチ監督はコメントしていた。つまり、11人の先発と交代で起用する可能性のある選手は目処を立てているということの表れでもある。15人と考えれば、残る枠は8名。“3番手”に成り得る選手、または1番手、2番手を追い越す選手が現れることが、日本のベースアップにつながるだろう。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.10.11 23:15 Wed
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【日本代表コラム】サバイバルがスタート、NZ戦で見えた可能性と課題

▽大粒の雨が降りしきる中、日本代表はキリンチャレンジカップ2017でニュージーランド代表を相手に、2-1で辛勝した。決してレベルの高い試合だったとは言えないが、試合前に提示した3つの注目ポイントである「バランス」、「新戦力」、「結果」に対しては、一定の評価を下せる内容だった。 ◆久々の出場で結果を残した槙野智章(C)CWS Brains,LTD.▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ニュージーランド戦の先発メンバーに3名のフレッシュな選手を起用した。1人は2年ぶりの先発出場となったFW武藤嘉紀(マインツ)、1人はセンターバックとして2015年11月以来の出場となったDF槙野智章(浦和レッズ)、そして4試合ぶりの出場となったMF香川真司(ドルトムント)だ。 ▽3選手ともに日本代表には招集されているため、目新しさはないもの、スターティングメンバーとして名を連ねるのは久々。槙野はフル出場を果たし、勝利に貢献していた。 ▽DF吉田麻也(サウサンプトン)とのコンビは、前述の2015年11月17日に行われた、ロシア・ワールドカップ アジア2次予選のカンボジア代表戦以来。久々のコンビとなったが、1失点は喫したものの安定した守備を90分間見せていた。 ▽槙野は「ゲームに入る前からずっと(吉田)麻也と話していたし、練習でもずっと組んでいた」と試合後にコメント。自身のプレーも「良い準備ができた中で、良いプレーができたと思う」と手応えを感じていたようだ。 ▽コンビを組んだ吉田も「全体的にすごく良かったと思う」と槙野のプレーを評価。これまで左サイドバックとして呼ばれていた槙野にとって、久々の出場で結果を示せたことは大きい。センターバックは、吉田、DF昌子源(鹿島アントラーズ)が軸になることが想定され、DF植田直通(鹿島アントラーズ)やDF三浦弦太(ガンバ大阪)ら若手も控えている。槙野としては、本大会を見据えユーティリティ性の高いディフェンダーとしてポジションを掴んでもらいたい。 ◆守備のバランス○、攻撃のバランス△(C)CWS Brains,LTD.▽最終予選の終盤で固定されていたDF酒井宏樹(マルセイユ)、吉田、長友佑都(インテル)の3人に槙野が加わったディフェンスライン。フィジカルに優れるニュージーランド相手にもしっかりと連携して対応し、最少失点で90分間を終えた。失点シーンは警戒していた形だっただけに、ワールドカップを考えれば、避けなければいけないものだったが、バランスの取り方も含めて大きな問題はなかった。 ▽一方、右に久保裕也(ヘント)、左に武藤、中央に大迫勇也(ケルン)を配し、トップ下に香川を起用した攻撃陣だったが、バランスに関してはあまり良いものではなかった。中央で構える大迫に対し、久保、武藤はサイドへの意識が強く、大迫のポストプレーを生かす場面はあまり見られなかった。 (C)CWS Brains,LTD.▽また、サイドでのデュエルという点でも、相手を崩し切る場面は少なく、中央では香川を含めてポジションがかぶるなど、前半はちぐはぐな攻撃に終始した。また、久保や武藤は決定機を逸するなど、シュート精度も欠いており、久々のテストとしては合格点は得られないパフォーマンスとなった。 (C)CWS Brains,LTD.▽一方で、後半から投入されて左サイドに入ったFW乾貴士(エイバル)、香川に代わって入ったMF小林祐希(ヘーレンフェーン)、右サイドに入ったFW浅野拓磨(シュツットガルト)は、チームを活性化。特に乾は長友とともに左サイドを圧倒し、決勝点を演出した。 (C)CWS Brains,LTD.▽乾は長友とのコンビについて「あれだけ良いタイミングで上がってもらえると、僕は本当にパスを出すだけ」と手応えを感じており、長友も「連携が良かった」と手応えを口にしている。両サイドともにサバイバルは激化しており、残り試合、そしてクラブでどこまでパフォーマンスを上げられるか。前後半で明暗が分かれたサイドは、FW本田圭佑(パチューカ)やケガで欠場したFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)もいるだけに、ポジション争いとともにレベルアップが楽しみだ。 ◆結果を手繰り寄せた倉田秋の動き(C)CWS Brains,LTD.▽ニュージーランドを相手に苦戦を強いられながらも、なんとか勝利を収めた日本。「このチームが見せられる最高のレベルからはまだ遠い」とハリルホジッチ監督が試合後に語ったように、決して満足の行く内容ではなかった。それでも、同点に追いつかれながら勝ち越して勝利。この結果は、今の日本代表にとって大きなものと言える。 ▽途中出場で入った倉田は、2列目からの飛び出しを繰り返し、ボールに絡んで行く姿勢が強く見られた。所属のガンバ大阪でも見せるボックス付近での攻撃センスは、この試合でも発揮。左サイドからの崩しが流れるも、右からの折り返しにダイビングヘッドで合わせた。 ▽杉本は前線で効果的な動きができていなかったが、囮になる動きはもともと得意とする選手。ニュージーランドの守備陣は杉本に気を奪われ、その隙を突いて倉田が飛び込んだ。2列目からの飛び出しは、ハリルホジッチ監督が目指す縦に早いサッカーには必要なもの。結果で示した倉田は、今後もテスト対象として追跡されることは間違いない。 ◆ハイチ戦ではさらなる新戦力のテストへ(C)CWS Brains,LTD.▽ニュージーランドに勝利した日本は、10日にハイチ代表との一戦を控える。「今年はたくさんの選手を見て、それぞれが何をできるかを見極めていきたいと思う」とハリルホジッチ監督が語った通り、植田やDF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、GK中村航輔(柏レイソル)、MF遠藤航(浦和レッズ)など、出場機会が少ない選手やキャップ数がない選手も起用される可能性が高い。 ▽一気にチーム構成を変えてしまってはテストにならないため、ニュージーランド戦のスタメン11人を全て変えることはないかもしれない。しかし、今はテスト期間。試しながら結果を求めて行くこと大事であり、トライすることこそが、最も重要なことだと思う。どのようなメンバーでどのような戦術を選択するのか。10日の試合でも、3つのポイントに引き続き注目していきたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.10.07 20:30 Sat
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【日本代表コラム】サバイバルの始まり…底上げと経験値の積み上げに絡むべき選手

▽28日、10月に行われるキリンチャレンジカップ2017のニュージーランド代表戦、ハイチ代表戦に向けた日本代表メンバーが発表される。9月に行われたロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で無事に6大会連続6度目のW杯出場を決めた日本。残り約9カ月では、チームの熟成と強化、底上げが求められる。 ▽国際親善試合に位置付けられている今回のキリンチャレンジカップ。W杯の出場が決定した日本にとっては、第3章の始まりとなる。本大会で世界の強豪国と対戦することを考えれば、9カ月という期間は時間があるとは言えない状況だ。 ▽来年のW杯本大会を見据えれば、今の日本に必要なのは、選手の底上げ、控え選手の経験値アップだ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「コンディション」と「パフォーマンス」を優先して選手を選び続け、最初の目的であったW杯の出場権を見事に獲得した。しかし、主力選手の大半は固定されており、合宿や試合に招集されても選手を試すことはあまりできていなかった。特に、中盤から後ろのポジションに関しては、選手の底上げが必要となる。 ◆守護神の選定Getty Images▽アジア最終予選がスタートした際は、西川周作(浦和レッズ)が正守護神を務めていた。しかし、今年3月にアウェイで行われたUAE戦以降、川島永嗣(メス)が正守護神に君臨し続けている。控えGKとしては東口順昭(ガンバ大阪)、中村航輔(柏レイソル)が招集されているものの、アジア最終予選での出番はなかった。ニュージーランド戦、ハイチ戦は両選手が1試合ずつ出場することで、経験を積ませたい。また、権田修一(サガン鳥栖)や林彰洋(FC東京)ら日本代表経験者も控えている。バックアッパーにはなるが、不慮のケガなども考えれば、経験を積ませたいポジションだ。 ◆サイドバックに不安 ▽最終ラインに関して、吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島アントラーズ)、酒井宏樹(マルセイユ)、長友佑都(インテル)は、経験値やパフォーマンスを見ても問題はない。しかし、バックアッパーとなると酒井高徳(ハンブルガーSV)以外は、圧倒的に経験が少なくなる。 Getty Images▽サイドバックでは、内田篤人(ウニオン・ベルリン)の復帰が待ち遠しい。試合には出場しはじめているが、ヒザの状態は慎重にならざるを得ない。日本にとって内田が復帰するかどうかは大きな違いだが、期待ばかりしていると危険だ。アジア最終予選では酒井宏、長友、酒井高、槙野智章(浦和レッズ)しか出場しておらず、底上げが必要となる。 Getty Images▽右サイドバックでは、U-23で代表を経験している室屋成(FC東京)、松原健(横浜F・マリノス)がチームでも出場機会を得ている。その他、今シーズンから柏レイソルでプレーする小池龍太も面白い存在だ。酒井宏、酒井高の次に続く選手の選定は早急に進めたいところだろう。 Getty Images▽左サイドバックでは、太田宏介(FC東京)や藤春廣輝(ガンバ大阪)といった日本代表経験者も居るが、新戦力も試したいところだ。U-23日本代表経験者の山中亮輔(横浜F・マリノス)や松原后(清水エスパルス)は、今シーズン良いパフォーマンスを見せている。また、サガン鳥栖の左サイドを支える吉田豊も、長友のバックアッパーと考えるとハマりそうだ。川崎フロンターレの車屋紳太郎も左利きであり気になる存在だ。酒井高や槙野も左サイドバックでプレーできるだけに、右サイドバックよりは不安定さは少ないが、バックアップの人選は進める必要がある。 ◆センターバックは経験値 ▽センターバックに関しては、吉田、昌子のコンビが軸となっていくだろう。現在は負傷離脱している森重真人(FC東京)も最終予選でプレーしており、3枚は計算が立つ。しかし、4枚目のメンバーに関しては、日本代表としての経験が皆無に等しい状況だ。しっかりと経験を積ませる必要がある。 Getty Images▽直近の日本代表に選出されている植田直通(鹿島アントラーズ)、三浦弦太(ガンバ大阪)はU-23でもプレーしており、Jリーグでも経験を積んでいるだけに、A代表での経験値を積ませたいところだ。 ▽日本代表に新たに推薦したい選手では、中谷進之介、中山雄太の柏レイソルのCBコンビや、攻撃でも力を発揮できる高橋祥平(ジュビロ磐田)、ボランチやCBでプレー可能な谷口彰吾(川崎フロンターレ)だろう。いずれもアンダー世代の代表を経験し、谷口は日本代表に選出された経験もある。植田、三浦だけでなく、可能性がある選手には経験を積ませていきたい。 ◆カギはインサイドハーフか ▽中盤も新たなメンバーを試したいポジションだ。長谷部誠(フランクフルト)、山口蛍(セレッソ大阪)、井手口陽介(ガンバ大阪)の3選手に関しては、パフォーマンスも安定し結果も残している。しかし、アンカーを務められるのは長谷部、山口となっており、ケガや出場停止などを考えれば、新たな選手に出てきてもらいたい。 (C)J.LEAGUE PHOTOS▽前回招集されたメンバーでは、アンカーとしては高萩洋次郎(FC東京)が考えられるだろう。また、遠藤航(浦和レッズ)も最終予選でアンカーとしてプレーしており、大きな問題とはならなそうだ。バランスを取れる選手としては大谷秀和(柏レイソル)も気になる存在だ。 ▽一方で、インサイドハーフには新戦力を試してもらいたい。クラブで出色のパフォーマンスを見せていた柴崎岳(ヘタフェ)は負傷離脱してしまったが、新天地に活躍の場を移した森岡亮太(ベベレン)は久々に日本代表でもプレーがみたいところ。また、前回も招集されていた小林祐希(ヘーレンフェーン)も試合でパフォーマンスを見たい選手だ。 ▽国内組では、川辺駿(ジュビロ磐田)や山村和也(セレッソ大阪)、武富孝介(柏レイソル)、原川力、福田晃斗(ともにサガン鳥栖)といった所属クラブで結果を出している選手もいる。このポジションには出場機会が限られている香川真司(ドルトムント)や、戦列を離れている清武弘嗣(セレッソ大阪)が居るが、幅を持って考え、最終的なメンバーを絞ってもらいたいところだ。 ◆両ウイングにも新たな風を ▽3トップを考えた際、両ウイングが激戦区となるだろう。右は本田圭佑(パチューカ)、久保裕也(ヘント)、浅野拓磨(シュツットガルト)、左は原口元気(ヘルタ・ベルリン)、乾貴士(エイバル)、武藤嘉紀(マインツ)がメインとなっている。 Getty Images▽しかし、右には堂安律(フローニンヘン)、左には中島翔哉(ポルティモネンセ)と所属クラブでも結果を残し始めている選手も控えている。デュッセルドルフへと移籍した宇佐美貴史もここ3試合で2ゴールと気を吐いている。国内組では右には伊東純也(柏レイソル)、江坂任(大宮アルディージャ)、左には阿部浩之(川崎フロンターレ)など、結果を残している選手もいる。攻撃陣はコンディションと調子、そして結果が重要視されるため、多くのカードを手元に置くことが重要になるだろう。 ◆1トップの3番手は ▽1トップには大迫勇也(ケルン)が軸として入り、岡崎慎司(レスター・シティ)も今シーズンはゴールという結果を残している。しかし、3番手がなかなか出てこないのが現状だ。 (C)J.LEAGUE PHOTOS▽サウジアラビア戦でデビューを果たし、J1での得点ランキングでも2位につける杉本健勇(セレッソ大阪)、しばらく代表から離れているもののクラブでは結果を残している金崎夢生(鹿島アントラーズ)が有力候補だろう。その他、川又堅碁(ジュビロ磐田)、小林悠(川崎フロンターレ)といった今シーズン調子が良い選手も、再び代表でプレーする可能性はあるだろう。 ▽いずれにしても前線でタメを作るポストプレーができ、コンビネーションでゴールが奪える選手が求められることは間違いない。手元に置いて、チェックする必要はあるだろう。 ◆ここからはサバイバル ▽11月も国際親善試合が控えているが、欧州遠征という話も浮上している。12月にはEAFF E-1 東アジアサッカー選手権2017が日本で行われる。12月の大会では「最後に残るであろう選手を見極める大会となる。(ロシアW杯アジア)最終予選を突破した我々にとって、国内組を試す良い機会になる。本当に最後の最後までチームに残ることができるかどうか。そういった候補の選手を探す場として、この大会を位置付けたい」とハリルホジッチ監督もコメントした。 ▽クラブでの活躍が、日本代表に招集されることにつながり、W杯出場に近づくことになる。メンバー入りを果たすためには、各選手の活躍が必要になるが、日本代表としてもそういった選手が出てくることを待ちわびているだろう。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.09.28 14:30 Thu
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【日本代表コラム】周到なサウジに敗れた日本、改めて感じた強化ポイント

▽大観衆が集まる完全なるアウェイ、過酷な気候・環境、そして死に物狂いで勝利を目指して向かってくるサウジアラビア代表──全てが日本代表の前に立ちはだかり、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のラストゲームで黒星を喫した。 ▽すでにW杯出場を決めていた日本にとって、第3章のスタートと位置づけていた一戦。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、テストを行うとともに、最後も勝利を目指すメンバーをピッチに送り出した。 ◆本気の相手を前にした確認とテストGetty Images▽オーストラリア戦から、ケガの影響でチームを離脱したMF長谷部誠(フランクフルト)、メンバー外となったFW大迫勇也(ケルン)、FW乾貴士(エイバル)、FW浅野拓磨(シュツットガルト)が先発を外れ、FW本田圭佑(パチューカ)、FW岡崎慎司(レスター・シティ)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が先発。また、約2年ぶりの招集となったMF柴崎岳(ヘタフェ)を先発で起用した。 ▽ハリルホジッチ監督は、GK、最終ライン、そして中盤の2名を継続して起用することで、サウジアラビア戦でもしっかりと勝利を目指す姿勢を見せた。DF吉田麻也(サウサンプトン)、DF昌子源(鹿島アントラーズ)と本大会に向けて軸となるであろうCBコンビ、そしてGKを含めた最終ラインの連携向上を実行した。 ▽中盤はMF山口蛍(セレッソ大阪)をアンカーに、オーストラリア戦で代表初ゴールを記録したMF井手口陽介(ガンバ大阪)を柴崎とともにインサイドハーフで起用した。ヒザの状態が懸念される長谷部不在の状況を考えた中盤起用。この先の軸となる選手を見出す必要がある。 ▽一方で、テストも実施している。「トップコンディションではないことはわかっていた」とハリルホジッチ監督が試合後に語ったのは右ウイングで先発した本田のこと。「リズムやゲーム勘の部分でトップレベルではない」と、これまで日本代表で不動の地位を確立していた本田に対し、公式の場ではっきりと苦言を呈した。 ▽また、オーストラリア戦で貴重な先制点を決めた浅野、日本代表初招集のFW杉本健勇(セレッソ大阪)を途中起用。終盤にはFW久保裕也(ヘント)を投入し、得点奪い、勝ちに行く姿勢を示した。結果は最終予選で初の無得点で敗戦。課題が多く見えた。 ◆サウジアラビアの周到な準備Getty Images▽サウジアラビアについても触れなくてはいけないことがある。まずは、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子がチケットを買い占め、多くのファンを無料でスタジアムに招待した。勝たなければいけなかったサウジアラビア代表の選手たちにとっては、この上ない後押しとなったはずだ。 ▽もちろん、評価すべきはそこだけではない。日本に勝利するため、サウジアラビアのファン・マルバイク監督は戦略、戦術をしっかりと準備した。まずは、前半のゲームプラン。サウジアラビアはポゼッションを高めたののも、思い切った攻撃には出ず。セットプレーやカウンターなど手数をかけずにゴールを目指していた。後半動きが良くなったことを考えると、気候や環境を考慮して前半をセーブしていたともとれる。 ▽より周到だと感じさせられたのは、攻撃の組み立てだ。日本の中盤3枚のプレスを掻い潜るかのように、プレス回避を実施。間を突いてパスを通せば、特に左サイドを起点とした攻撃を発動。前線が連動し、シュートチャンスを生み出していた。日本のストロングポイントを消しに行った戦い方をサウジアラビアは選択した。 ▽後半、途中投入されたファハドが左サイドで躍動。センターバックのズレを見逃さず、待望の先制点をもたらせた。そこからのサウジアラビアは無理に得点を狙わず、確実で固いサッカーを展開。最後まで日本にゴールを与えることなく、目的を完遂。3大会ぶり5回目のW杯出場を決めた。 ◆改めて感じた3つの強化ポジションGetty Images▽この試合で改めて感じさせられた強化すべきポジションが3つある。それは、センターバック、アンカー、そして右ウイングだ。この試合では、センターバックに吉田と昌子、アンカーに山口、右ウイングに本田が先発したが、この3ポジションは特に残り9カ月で変化が必要に感じる。 ▽まずはセンターバック。6月のシリア戦から4試合連続でコンビを組んだ吉田と昌子。この2人の組み合わせには異論はない。しかし、3枚目のセンターバックが確立されていないことが、この先の日本の課題だ。今回センターバックとして招集されたのは、上述の2人の他にDF植田直通(鹿島アントラーズ)とDF三浦弦太(ガンバ大阪)だ。しかし、両選手はプレー機会が訪れなかった。この先の親善試合や12月の東アジアカップでチャンスが訪れるとは思うが、吉田や昌子が不測の事態に陥る可能性を考えれば、残り9カ月でしっかりと強化することが不可欠となるだろう。 ▽そして右ウイングだ。この試合に先発した本田は、攻守において精細を欠き、特にプレスからのショートカウンターを武器としている日本にとって、この試合の本田の守備は問題点ばかりだった。所属のパチューカで試合に出場し、しっかりとパフォーマンスを取り戻せば問題はないと思うが、現時点では厳しい状況だ。オーストラリア戦でゴールを決めた浅野、2試合連続で途中投入された久保も正直物足りない。今シーズンは3名ともクラブで結果を出せておらず、このままシーズンが過ぎるようでは右ウイングは厳しい状態となる。ハリルホジッチ監督は、個々に特徴が異なる3名を招集しているだけに、現在呼ばれていない選手がハマる可能性も少なくない。右ウイングで組み立てができるプレーメーカーが、W杯では必要になるだろう。 ▽最後にアンカー。ここが一番の懸念点となる。サウジアラビアに突かれたポイントも、これまでは長谷部がカバーしていた。オーストラリア戦でも前半こそ動きに精彩を欠いたが、後半は“読み”の部分が戻り、バイタルエリアでフィルターをかけていた。ヒザの状態は一進一退であり、本大会を万全な状態で迎えられるかは定かではない。長谷部、山口、井手口というユニットを見出しはしたが、長谷部を欠くことになれば一から作り直しとなる。長谷部に代わるアンカーを見出すことは、日本が目指すスタイルには不可欠となるだろう。 ◆残された時間は9カ月Getty Images▽初戦と最終戦で黒星を喫したものの、6勝2分け2敗で首位突破を決めた日本。ここまでの約1年間で徐々に強化を進めながら、第一の目標であったW杯出場を決めたハリルホジッチ監督には、やはり本大会でも指揮を執ってもらいたいと思う。残り9カ月、誰よりも日本のサッカーをチェックしている指揮官であれば、新たな戦力の発掘、そして各個人のレベルアップに向けたアドバイスを与えられるはずだ。そして、勝利にこだわるスピリットは、選手のコメントからも強まっていることを感じる。 ▽9カ月後には、世界の予選を勝ち抜いた強豪国との対戦が待っているが、今の日本では2014年と同じ結果になる可能性もある。しかし、これまでの積み上げと変化を考えれば、ここからの9カ月でレベルアップできる可能性もある。コンディションとパフォーマンスを重視するハリルホジッチ監督だけに、各選手はまずはクラブでしっかりと結果を残すこと。10月の2試合ではどんなメンバーが名を連ねるのか楽しみだ。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.09.07 11:00 Thu
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サウジ戦を控える日本…累積リーチは5人、ファウルトラブルを避けるためのスタメンとは!?

▽6大会連続6度目のワールドカップ(W杯)出場を決めた日本代表。5日の深夜には、長く厳しい戦いが続いたロシアW杯アジア最終予選の最終節、サウジアラビア代表戦が行われる。 ▽既に本大会出場を決めている日本代表にとっては、勝敗はW杯出場には関係ないものの、サウジアラビアにとっては死活問題。オーストラリア代表が最終節でタイ代表に2-1で勝利しため、日本に勝利しない限りは3位に転落し、グループA3位とのプレーオフに回ることとなる。 ▽日本にとって最も避けたいのは選手の負傷だ。サウジアラビアが激しく来ることを考えれば、負傷というリスクが伴う可能性がある。そして次に気をつけたいのが、選手の警告だ。 ▽ロシアW杯アジア最終予選では、2度の警告で1試合の出場停止となる。日本では、DF酒井宏樹(マルセイユ)が2度の警告を受けて、第4節のオーストラリア戦で出場停止処分となっていた。 ◆前回大会は予選の出場停止は持ち越し ▽サウジアラビア戦で日本のW杯予選は終了となるため、最終節が終わった段階で警告が累積した場合は、2014年のブラジルW杯と同じルールであれば、本大会の初戦でプレーできないこととなる。実際に、ブラジルW杯ではクロアチア代表FWマリオ・マンジュキッチやコロンビア代表MFフレディ・グアリンは、予選最終節で退場処分となり、初戦を欠場している。 ▽現時点で、日本代表選手で警告を受けているのは7名。今回招集されているメンバーでは5名が警告を受けており、サウジアラビア戦では2枚目のイエローカードをもらわないことが重要となる。警告を受けている選手は以下のとおり。 DF吉田麻也(第1戦:UAE) DF酒井宏樹(第5戦:サウジアラビア) DF槙野智章(第4戦:オーストラリア) FW久保裕也(第6戦:UAE) FW大迫勇也(第9戦:オーストラリア) ▽この他に、GK西川周作(浦和レッズ)とDF森重真人(FC東京)が警告を受けているもの、今回のメンバーには招集されていないためリセット。また、FW大迫勇也(ケルン)もメンバー外になるとみられるため、リセットとなる。ちなみに、予選での警告は本大会に持ち越されないため、その他の選手がサウジアラビア戦で警告を受けても、リセットされる。もちろん、2度の警告や退場処分となれば、その出場停止は持ち越される。 ▽そうなると、吉田、酒井宏、槙野、久保が警告を受けた場合、出場停止となってしまう。本大会の初戦を考えると、不動のセンターバックである吉田、右サイドバックのレギュラーである酒井宏が警告を受けることは避けたい。また、右ウイングでポジション争い中の久保、センターバック、サイドバックをこなせる貴重なバックアッパーとなっている槙野も警告は避けたいところだ。 ▽チームの成熟度アップと、底上げを図っていきたい日本にとって、吉田と酒井宏を先発で起用する可能性は高いだろう。しかし、この件を踏まえると、リスクを回避するために出場させないことも考えられる。そうなった場合のスターティングメンバーは、以下のメンバーになる可能性が高いのではないだろうか。 ◆日本代表予想スタメン (C)CWS Brains,LTD.GK:川島永嗣 DF:酒井高徳、植田直通、昌子源、長友佑都 MF:柴崎岳、山口蛍、井手口陽介 FW:本田圭佑、岡崎慎司、原口元気 ▽DF三浦弦太(ガンバ大阪)もメンバーから外れるとみられており、鹿島アントラーズを支えるセンターバックコンビが日本代表で実現する可能性がある。また、右サイドには酒井宏に代わって酒井高徳(ハンブルガーSV)を起用できるだろう。 ▽センターバックを植田と昌子の鹿島コンビにする場合は、GKは川島永嗣(メス)となるだろう。GK東口順昭(ガンバ大阪)やGK中村航輔(柏レイソル)のプレーも観たいが、大幅な変更は経験値の積み上げにもなりにくい。左サイドバックも槙野を起用しないと考えるならDF長友佑都(インテル)になるだろう。 ▽中盤はMF長谷部誠(フランクフルト)、MF香川真司(ドルトムント)が離脱したため、選択肢は減る。連携面と経験を考えるとMF山口蛍(セレッソ大阪)、MF井手口陽介(ガンバ大阪)の2人は継続して起用したい。残る1枚はMF柴崎岳(ヘタフェ)を使いたいところだ。MF小林祐希(ヘーレンフェーン)、MF高萩洋次郎(FC東京)は展開によって起用か。 ▽前線は総入れ替えとなると予想。大迫がメンバー外になるとみられ、久保は累積が心配だ。オーストラリア戦で先発したFW乾貴士(エイバル)、FW浅野拓磨(シュツットガルト)を起用しないとなれば、選択肢は限られる。右はMF本田圭佑(パチューカ)、センターはFW岡崎慎司(レスター・シティ)と予想。FW杉本健勇(セレッソ大阪)は戦術の落とし込みが十分ではなく、先発は考えにくい。 ▽いずれにしても、本大会を見据えた戦いをスタートさせる日本。チームとしての成熟度アップ、新たな戦力の発掘、スタイルの浸透など課題は多い。それでも、本大会へのリスク回避という点では、激しい戦いになると予想されるサウジアラビア戦での累積警告だけは避けたいところだ。26時30分と深い時間のキックオフとなるが、そのあたりに注目するのもいいのではないだろうか。 2017.09.05 21:30 Tue
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【日本代表コラム】指揮官の狙いが的中、世代の“融合”で歴史を塗り替える

▽想像を超えてきたというのが正直な感想だ。勝てば6大会連続のワールドカップ(W杯)出場権を獲得できる一戦。相手は最終予選でこれまで勝ったことがないオーストラリア代表だった。結果は2-0で勝利。歴史を変える勝利を挙げ、見事にホームの大観衆の前で結果を残した。 ▽運命を握る大一番、スターティングメンバーとしてピッチに立つメンバーを見たときに関心させられた。中盤の一角にMF井手口陽介(ガンバ大阪)、右ウイングにFW浅野拓磨(シュツットガルト)を起用。メンバー発表会見で語った「その時点でベストだと思える選手を使うのが、私のサッカーの見方」の言葉通り、経験よりも調子の良さ、勝つためのポイントを重視したメンバー構成となった。 ▽井手口は6月に行われたアウェイのイラク代表戦で先発出場を果たしており、この試合が最終予選で2度目の先発出場。リオ・デ・ジャネイロ五輪を経験しているとはいえ、大一番で起用するにはリスクを考えることもあったはずだ。しかし、所属のG大阪での調子の良さ、そして攻守にわたって広くプレーできる井手口のポテンシャルを考えた結果の決断と言えるだろう。また、それはオーストラリアの戦い方にも影響したようにも思う。 ▽浅野は2016年9月に行われたタイ代表とのW杯最終予選以来の先発出場。FW本田圭佑(パチューカ)やFW久保裕也(ヘント)がいる中で、W杯最終予選ではここ4試合出番なし。しかし、大事な一戦で実に1年ぶりにスターティングメンバーとしてピッチに立った。 ◆オーストラリア対策を考えての起用 ▽井手口、浅野の先発起用に関しては、両選手のパフォーマンスだけでなく、オーストラリアの戦い方も影響したように思う。「フィジカルの強さ、空中戦の強さ」がイメージとして先行しがちなオーストラリアだが、現在はシステムを3バックに変更。さらに、パスをつなぐ地上戦での戦いを試している状況だ。 ▽コンフェデレーションズカップでは、ドイツ代表やチリ代表を相手にもゲームコントロールを重視した戦いをみせ、自分たちで試合を作る方向にシフトしていたが、オーストラリアにとっても大一番である日本戦でもその姿勢は崩さなかった。 ▽この戦い方を考えれば、中盤でのボール奪取能力が高く、攻撃面でも大きく貢献できる井手口の起用は納得だ。MF長谷部誠(フランクフルト)、MF山口蛍(セレッソ大阪)と守備に重きを置ける2人と中盤を構成することで、井手口の特徴でもある攻撃面が出せる状況に。攻守にわたってキーマンになれる可能性が高かった。また、浅野に関しても同様だ。3バックの脇、ウイングバックの裏を突くという点では、抜群のスピードを誇る浅野の起用は納得。日本はウィークポイントを、チームとして、そして個人としてストロングポイントで上回ろうと考えたのだろう。その采配は見事に的中した。 ◆普段通りの力を出した井手口陽介Getty Images▽まずは、この試合のMVPとも言える活躍を見せた井手口だ。G大阪でも見せる、攻守に絡むプレーをこの試合でも発揮。前半から精力的に動き回ると、地上戦を挑んできたオーストラリアのパスを何度もカット。ショートカウンターの形を何度も作り出していた。そして、守備だけでなく攻撃力も発揮。ゴール、ボールに絡みに行く姿勢は、Jリーグで見せるものと同じだった。 ▽日本代表として3試合目の出場。2度目の先発と確かに経験値は低いと言えるかもしれないが、物怖じしない性格と、G大阪やU-23日本代表として戦ってきた経験が大一番で発揮された。そして、日本としてこれまで足りなかった追加点を奪う活躍。そのほかにも随所に良さを見せ、代表初ゴールのオマケ付きで日本をW杯に導いた。 ◆特徴を発揮した浅野拓磨Getty Images▽先制ゴールを記録した浅野も、久々に自身の特徴を生かせたと言っていいだろう。3バックの脇、ウイングバックの裏でボールを受ける回数が多く、ボールが回ってくれば積極的に仕掛ける姿勢も多く見られた。自身に課せられたタスクをしっかりとこなす中で、特徴でもあるスピードを発揮。オーストラリアの最終ラインにとって脅威となり続けた。 ▽得点シーンも浅野らしさが発揮された。左サイドからDF長友佑都(インテル)が上げたクロスに対し、抜群のタイミングでの飛び出し。サンフレッチェ広島で共にプレーしてきたFW佐藤寿人を彷彿とさせ、自身も得意とする形でのゴール。らしさを見せることで、しっかりと結果を残すことに成功した。 ◆忘れてはいけない経験者の支えGetty Images▽ゴールを奪った2人の若手にフォーカスが集まっているが、その裏にある経験者のパフォーマンスの高さについても触れないわけにはいけない。GK川島永嗣(メス)はピンチこそ少なかったものの、冷静な判断と安定したセービングでクリーンシートを達成。長谷部は前半こそ浮き足立ったプレーが散見され、バックパスをカットされたりボールロストする場面が見られたが、後半は安定感を取り戻した。 ▽1アシストを記録した長友も、オーストラリアのカギを握ると見られたマシュー・レッキーを封じた。DF酒井宏樹(マルセイユ)もクラブでのパフォーマスの良さを継続。守備面での貢献は特に高く、相手の決定機でもしっかりと体を寄せて無失点に貢献した。 ▽FW大迫勇也(ケルン)は前線で体を張り、FW乾貴士(エイバル)は緩急をつけた攻撃、粘り強い守備で貢献。途中出場のFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)も、ディエルで強さを見せて井手口のゴールに繋げた。攻守にわたり、ピッチに送り出された“サムライ”たちが、しっかりと自分のタスクをこなし、歴史を変える結果を掴んだ。 ◆ここからは強化スタートも…Getty Images▽無事に6大会連続6度目のW杯出場を決めたことで、この先はチームの強化、ベースアップに力を入れることができる。オーストラリア戦では、これまで代表を牽引してきたMF香川真司(ドルトムント)、本田をベンチに置いての勝利。“世代交代”ではなく、“融合”に向けての一歩を踏み出すことができたと言える。 ▽しかし、試合後に予期せぬ知らせが。ハリルホジッチ監督が「実は私はプライベートの方で大きな問題を抱えている。この試合前に帰ろうかと思うほどの大きな問題だった」と明かした。詳細は明かされていないが、大きな決断を下さなければいけない事態であることは間違いない。サウジアラビア戦では指揮を執る予定だが、10月のキリンチャレンジカップ2017やその先については不透明な状況だ。 ▽最終予選を戦いながらも新戦力をチームに取り込み、国内、海外とプレーする場に関係なく選手たちをチェックしているハリルホジッチ監督。オーストラリア相手に最終予選で初勝利を収めただけでなく、最終予選の初戦で敗れたらW杯に出られないという負のジンクスさえも塗り替えることができた。日本代表がW杯で残しているベスト16という過去の結果を塗り替えるためには、勝利にこだわりながらもチームを育めるハリルホジッチ監督の力が必要となる。 ▽去就に関しては協会や指揮官の決断を待つことしかできないが、ここまで日本代表が見せた変化を考えれば、ハリルホジッチ監督が率いるチームをW杯で観たいというのが率直な気持ちだ。このチームがこの先どのような変化を遂げていくのか。そして、その先の本大会で日本がどのような結果を出すのか。残り9カ月を見守っていきたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.09.01 09:30 Fri
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【日本代表コラム】結果はドローも、新世代のプレーに見えた光明

▽灼熱のピッチ、ケガ人に悩まされるスクランブル状態の中、日本代表はロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のイラク代表戦に臨んだ。残り2試合の相手がオーストラリア代表(グループ3位)、サウジアラビア代表(グループ2位)ということを考えれば、勝ち点3を持ち帰りたかったはずだ。しかし、結果は1-1のドロー。最低限の勝ち点1を持ち帰るに留まった。 ▽この試合に向けては、7日に行われたシリア代表とのキリンチャレンジカップ2017で左肩を脱臼したMF香川真司(ドルトムント/ドイツ)を始め、追加招集されたFW宇佐美貴史(アウグスブルク/ドイツ)が離脱。さらに、シリア戦で負傷したMF山口蛍(セレッソ大阪)が全体メニューをこなせないなど、ケガに悩まされた。 ▽その結果、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は3月のUAE代表戦やシリア戦で試した[4-3-3]ではなく、[4-2-3-1]を採用。システムの変更だけでなく、ダブルボランチにMF遠藤航(浦和レッズ)、MF井手口陽介(ガンバ大阪)のリオ・デジャネイロ五輪コンビを起用。トップ下にFW原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)を配置し、右にFW本田圭佑(ミラン/イタリア)、左にFW久保裕也(ヘント/ベルギー)、1トップにFW大迫勇也(ケルン/ドイツ)を配置した。 ▽厳しい環境に加え、新たな布陣を試した日本代表。試合中にも負傷者が続出するエクスキューズもあり、引き分けに終わったことは残念ではあるが、光明も見えたように思う。 ◆本来のパフォーマンスを見せた昌子源 ▽シリア戦では久々の代表戦、DF吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)との初コンビなど、イレギュラーな要素もあり不安定な立ち上がりとなったDF昌子源(鹿島アントラーズ)。しかし、イラク戦では鹿島で見せているパフォーマンスに近いものを発揮することができていた。 ▽持ち味である一対一の強さは試合中に何度も見せ、ロングボールで裏を狙ってくるイラクに対し、しっかりと対応していた。また、同サイドのDF長友佑都(インテル/イタリア)や久保、そしてボランチの遠藤、井手口に対しても試合中に声をかけ、ポジショニングの修正を図っていた。まだまだ代表キャップは少ないものの、今回招集外となったDF森重真人(FC東京)のポジションを脅かす存在になることは間違いないだろう。センターバックの序列が変わる可能性を感じさせた。 ◆ダブルボランチを務めた遠藤航&井手口陽介のリオコンビ ▽今回のメンバーには遠藤、井手口、さらにGK中村航輔(柏レイソル)、FW浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)とリオ五輪メンバーが招集。また、同世代のDF三浦弦太(ガンバ大阪)も招集されており、新たな世代がA代表に関わるようになった。 ▽遠藤は、2006年6月のキリンカップサッカーのボスニア・ヘルツェゴビナ代表戦以来1年ぶりの出場。井手口はシリア戦に続き出場となり、初先発を果たしたが、両選手が見せたパフォーマンスは結果以上にポジティブに捉えても良いだろう。 ▽互いに守備を意識した入りとなり、遠藤は後方に構えてバランスを、井手口は豊富な運動量でボールを奪いにピッチを走り回った。序盤は2人のポジショニングが安定せず、バイタルエリアを空けてしまうシーンも見られたが、徐々にアジャスト。井手口が攻撃面でも良いプレーを見せ始めた矢先に、脳震とうで交代となってしまったことは残念だった。遠藤は失点シーンでパスを回されてしまった部分はあったものの、90分戦い切ったことは評価していいだろう。 ▽チームの安定剤だったMF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)がケガで戦列を離れ、2番手だった山口も負傷欠場。MF今野泰幸(ガンバ大阪)も負傷離脱から復帰したばかりと、ボランチのポジションが手薄となっていた。そんな中での2人のプレーぶりは、世代交代を含めてこの先の日本代表にとっては光明と言えるだろう。 ◆2カ月半後の決戦へGetty Images▽昌子、遠藤、井手口と新たな世代に起用の目処が立ったものの、残り2戦は総力戦で臨むことが必須だ。2カ月半後ともなれば、選手の状態やパフォーマンスなどは全く想像できない。海外組は移籍している選手も居るだろうし、国内組でも海外移籍を実現させている選手がいるかもしれない。ケガから復帰する選手もいれば、ケガをしている選手がいるかもしれない。どんな状況が待っているかは分からないが、新たな選手が計算できることはプラスだ。あとはハリルホジッチ監督がどの様な判断を下すのか。オーストラリア戦までの選手の状態を把握し、ロシアW杯出場権を掴むためにもしっかりとした決断を下してもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.06.14 19:15 Wed
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【日本代表コラム】新たな可能性を見出した“テストマッチ”

▽約3カ月ぶりの代表活動となり、アウェイでのイラク代表とのロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を前にしたテストマッチで、日本代表はシリア代表と1-1の引き分けに終わった。「ドローで終わったことは、我々にとって警告を意味するものとなったと思う」と試合後にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が語った通り、勝てなかったことで気を引き締めなくてはならない状況になった。しかし、それも大きな収穫と言えるのではないだろうか。 ▽シリア戦に限らず「勝つこと」にこだわるハリルホジッチ監督にとって、この一戦で勝利を挙げられなかったことは計算外だったはずだ。しかし、「テストマッチ」という位置付けで考えれば、結果以外の部分では多くのことをテストし、確認、把握することができた試合でもあったように思う。 ◆インサイドハーフの本田圭佑Getty Images▽この試合で一番大きな収穫と言っても過言ではないのは、FW本田圭佑(ミラン/イタリア)のインサイドハーフ起用だろう。これまでは右ウイングで起用され、直近の試合はFW久保裕也(ヘント/ベルギー)に先発の座を譲っていた本田。シリア戦でもベンチスタートとなったが、後半頭から出場すると、前線でボールを収め、攻撃にタメを作る動きで流れを生み出していた。 ▽63分にMF今野泰幸(ガンバ大阪)に代わってFW浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)が入ったことで、インサイドハーフへとポジションを下げた本田。すると、ボールキープ力に加え、持ち前の展開力を発揮。さらに、ゴール前にも顔を出し、2度の決定機を作るなど、インサイドハーフとしての役割を十分に果たしていた。 ▽MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)が左肩を脱臼し、日本代表からの離脱が発表されたことは、ハリルホジッチ監督にとっては計算外だったはずだ。これまでトップ下でプレーしてきた本田を右サイドで一貫して起用してきたハリルホジッチ監督としては、香川離脱を考えての起用だったかもしれない。大事なイラク戦に向けて、“本田のインサイドハーフ”は良いテストになったと言えるだろう。 ◆井手口陽介の可能性Getty Images▽本田とともにインパクトを残したのは、A代表デビューを果たしたMF井手口陽介(ガンバ大阪)だ。これまでもポテンシャルを評価され、ハリルホジッチ監督も目をつけていた井手口。53分にMF山口蛍(セレッソ大阪)に代わって出場すると、持ち前のボール奪取力を発揮。攻撃参加の回数は少なかったが、アンカーとして粘り強い守備を見せ、シリアの攻撃を寸断していた。 ▽山口がシリア戦で足を負傷しており、ここで井手口をプレーさせたことは、この先の戦いで生きてくるだろう。MF遠藤航(浦和レッズ)、今野以外の選択肢を作れたことは、プラスになった。 ◆乾貴士のポテンシャルGetty Images▽所属クラブのエイバルでコンスタントにプレーし、シーズン最終戦となったバルセロナ戦で2ゴールと大活躍を見せていたFW乾貴士(エイバル/スパイン)には、多くの期待が寄せられていた。足の状態が不安視される中、後半途中から出場すると、持ち前のテクニックをいきなり発揮。77分にはロングフィードをしっかりと収めると、ドリブルで切れ込みボックス内に侵入。そのままシュートを放つプレーを見せた。 ▽相手の運動量が落ちてきたタイミングではあったものの、乾の確かなスキルを確認できたことはプラス。周囲との連係が上がってくれば、得点も生まれるだろう。イラク戦はジョーカーとしての起用となりそうだが、攻撃に変化をもたらせるカードとしては申し分ないと言える。 ◆経験が必要な昌子源Getty Images▽一方で、パフォーマンスの問題で招集外となったDF森重真人(FC東京)の代役を担ったDF昌子源(鹿島アントラーズ)は、経験を積む必要がありそうだ。立ち上がりは緊張からか地に足がつかないプレーがあり、初コンビを組むDF吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)との位置関係も不安定だった。しかし、時間が経つにつれプレーも安定し、一対一の局面などでは鹿島で見せるプレーに戻りつつあった。 ▽後半の失点シーンでは、目測を誤ってしまった感は否めないが、それ以外には大きなミスも見られなかった。いきなりの出場ではなく、イラク戦を前に吉田とのコンビを経験できたことは大きいだろう。これから日本代表として国際舞台での経験を積むことで、センターバックの序列に変化をもたらせる可能性は感じさせた。イラク戦までにどうアジャストしていくのかに注目だ。 ◆不安要素は新戦術と組み合わせGetty Images▽確認という点では、[4-3-3]に慣れていない選手がいること、そしてピッチ内での組み合わせでパフォーマンスが大きく変わることをシリア戦で把握できたのは大きかったと言える。新たな戦術としての[4-3-3]では、サイドの選手と中盤の選手の関わりが大きく影響する。香川がアクシデントで急きょピッチを去った影響は少なくなく、代わりに入ったMF倉田秋(ガンバ大阪)はゲームに入るまで時間がかかっていた。 ▽左サイドで先発したFW原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、右サイドで先発した久保もゴールへ向かう姿勢は見せたが、周囲との呼吸が合わず効果的な攻撃を見せることができなかった。負けられないイラク戦に向けて、イランでの調整でコンディションを上げる必要があるだろう。 ◆本番はイラク戦 ▽今回のシリア戦はあくまでも親善試合。最も重要なのは、13日に行われるイラク戦だ。そのための準備として海外組合宿を行い、国内組は合流して間もない状況であった。その中で、新たな発見もあり、また問題も見つかったということは、「テストマッチ」という位置付けのシリア戦はポジティブに考えられる。しかし、それもイラク戦で結果を残してこそ。ハリルホジッチ監督がどの様なチョイスをするのか、13日の決戦を待ちたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.06.08 21:00 Thu
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【U-20日本代表コラム】適応能力の高さを見せた守備の要・冨安健洋の伸び代

▽5大会ぶりにU-20W杯に出場を果たしたU-20日本代表。東京オリンピック世代ということ、そして2世代を超えて招集されたFW久保建英(FC東京 U-18)の招集もあり、これまで以上にも大きな期待が寄せられている中、初戦となったU-20南アフリカ代表戦を1-2で制した。 ▽長年に渡り、この世代でのアジア予選を勝ち抜くことができなかった日本だったが、昨年行われたAFC U-19選手権を無失点、無敗で初制覇。2007年以来の本大会出場を決めた。 ▽予選を無失点で終えていた日本だったが、南アフリカ戦では先手を奪われる。7分、一瞬の隙を突かれると、マージマンが最終ラインのズレを生かして裏に抜け、そのままゴールを奪い切った。思わぬ先制点を許してしまった日本。「予測以上の個々のスピードがあった」と試合後に内山篤監督が語ったように、想定を超える瞬発力の前に、ディフェンスラインを突破されてしまった。 ▽前半は最終ライン裏へのロングボールに苦労し、全体をコンパクトに保ちたい日本としては、厄介な相手となった。ラインを高く設定しても、長い距離のスプリントで勝つことができず、ボックス付近まで簡単にボールを運ばれていた。 ▽チャンスこそ多く作られていた日本だったが、徐々に南アフリカのスピードにも慣れが見えてくる。ロングフィードに対するカバーリング、サイドバックの絞りなどが時間の経過とともに改善され、南アフリカに攻め込まれるものの、1ゴールに抑えた。 ▽この試合で特筆すべきは、センターバックでDF中山雄太(柏レイソル)とコンビを組んだDF冨安健洋(アビスパ福岡)の2人だ。冨安は試合が進むごとにレベルアップしている印象さえ受けた。内山監督も「修正能力が非常に高い」と評価したように、失点以降は南アフリカのエースであるシング相手にも臆することなく対応。ゴールを許さず、封じ込めることに成功した。 ▽確かに、これまでのアジアでの戦いとは違い、裏を取られるシーンが多かった。エコパスタジアムで行われたU-20ホンジュラス代表との親善試合での失敗も生きたように思う。日本でプレーしているだけでは感じにくい足の伸びや、出足の早さ、瞬発力…前半の南アフリカは日本を大きく上回っていた。 ▽後半の中盤にも南アフリカに押し込まれる時間帯が続いた。右サイドバックのDF初瀬亮(ガンバ大阪)が積極的に攻め上がる一方で、南アフリカは裏のスペースにロングボールを蹴り、アフリカユース選手権で得点王にも輝いたエースのシングを走らせた。しかし、冨安は前半とは違いしっかりとこれに対応。身体の寄せ方や、相手との間合い、スペースのケアなどが改善されていた。 ▽冨安は「試合の中で相手のスピードにも慣れて対応できる部分はあった」と語っており、前半はバタつく印象があった相手の攻撃への対応も、後半は安定感を見せていた。南アフリカのロングボールに関しては、J1に比べてロングボールが多いJ2で戦っている経験も生きたかもしれない。 ▽さらに、守備だけでなく繋ぐ意識もしっかりと持ち、ビルドアップにも貢献。相手に囲まれながらも、蹴り出す場面は少なかった。後半は、ボランチとしてもプレーできる冨安の良さを随所に見ることができた。 ▽初戦の勝利は、U-20日本代表のチームとってはもちろん、各選手にとっても大きな経験となったはずだ。そして、未知数の南アフリカのスピードにしっかりと適応できた冨安にとっても大きな経験となったはず。「もっと早く対応できれば良かった」とさらなる成長を口にしたことを考えても、未来は明るい。 ▽この先は、ウルグアイ、イタリアとさらにレベルが高い相手との対戦が待っている。初戦での逆転勝利も去ることながら、世界との対戦で大きな伸び代を見せてくれた冨安。今大会中にどれだけ大きく成長するのかワクワクが止まらない。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.05.22 23:00 Mon
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【日本代表コラム】結果は満足、内容は不安…再確認できたウィークポイント

▽平日でありながら、ホームである埼玉スタジアム2002には59003人の観客が集まった。大観衆の前で勝たなくてはいけないプレッシャーの中でのタイ代表戦で日本代表は最終予選で最多となる4得点を奪っての勝利。選手や監督、スタッフは勝利を喜び、観衆は笑顔でスタジアムを去ることとなった。 ▽最下位のタイが相手だったとはいえ、最終予選最多の4得点を奪い、無失点で試合を終えられたことは素直に評価すべきことだと思う。残りが3試合になった時点で、得失点差で上回られていたサウジアラビア代表を抜き、初めてグループ首位に立つことができた。結果が全ての最終予選においては、ひとまず賞賛して良いことだ。 ▽しかし、結果が重要とは言いながらも、やはり課題を残しての勝利は素直に喜べないものだろう。試合後の記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は開口一番「素晴らしい勝利だった」と賞賛した一方で、「不満を抱く点もあった」とすぐさまクギを刺した。監督の言う通り、4-0と勝利したタイ戦の結果は評価できるが、ウィークポイントを改めて気付かされた試合でもあった。 ▽この試合で特に不安定さを露呈したのは、MF山口蛍、MF酒井高徳が並んだボランチのポジションだ。本来であればMF長谷部誠と山口がコンビを組むポジションだが、長谷部がヒザの負傷で離脱。2-0で勝利したUAE戦ではMF今野泰幸をインサイドハーフに置き、山口をアンカーとして起用。守備時には今野がボランチの位置に下がってプレーするなど、試合中に流動的にプレーしていた。 ▽1得点を決め、攻守に貢献した今野だったが、こちらも骨折が判明し負傷離脱。久々の代表招集となっていたMF高萩洋次郎も骨折が発覚して離脱したことで、ボランチを本職としている選手は山口だけに。MF遠藤航を追加招集したものの、ハリルホジッチ監督のチョイスは酒井高だった。 ▽本来はサイドバックを主戦場としていた酒井高だが、所属のハンブルガーSVではボランチを務めている。日本代表ではサイドバックでしかプレーしていないが、ハリルホジッチ監督は山口と酒井高を並べた。これは、いくつかの“ソリューション”の中での守備的な選択だったと考える。崖っぷちに立たされているタイを考えれば、前がかりに攻撃に比重を置く可能性も残されていたからだ。 ▽しかし、蓋を開けてみると、ボランチコンビは機能したとは言い難い内容だった。香川、FW岡崎慎司が幸先よく2点を先行したから良かったものの、前半の終盤にはMFチャナティップ・ソングラシンにはバイタルエリアを使われ、プレスをかけてもかわされるなど好き放題にやられていた。 ▽守備面を期待されたはずの2人だったが、連動性に乏しく、バイタルエリアをあけるシーンも多く見られた。さらに課題として浮上したのが攻撃面。ビルドアップした回数は数える程で、最終ラインからのパスを受ける動きも少なく、DF吉田麻也、DF森重真人がロングボールを蹴るシーンも見られた。攻撃面でも、やりたかったことを実現できたとは言えない内容だった。 Getty Images▽UAE戦ではボランチを本職とする今野が、今シーズンのガンバ大阪での起用法と同じインサイドハーフに入った。前線からのプレス、MFオマル・アブルドゥルラフマンのマーク、バイタルエリアのケアと守備面で貢献すれば、前線への飛び出し、ボール奪取からのフリーランなど攻撃面でも活躍。長谷部の穴を埋めるに止まらず、自身の特徴を最大限に発揮していた。 ▽山口、酒井高のパフォーマンスが良くなかった点もあり、また初コンビということで連携面も良くなかったというエクスキューズはある。しかし、今回の選択によって、ハリルホジッチ監督は“個人の能力”ではなく、“組み合わせ”の確認をすることができたはずだ。 ▽今回のコンビの役割についてハリルホジッチ監督は「クラブでは守備的な役割でプレーしている。ただ、代表ではボールの回収とビルドアップの役割を担っている」と酒井高について語り、山口には「攻撃面でさらに期待している」とコメントしていた。つまり、守備的なチョイスとは言え、山口に攻撃を、酒井高は守備+攻撃を求めていたことがわかる。 ▽しかし、山口はどちらかと言えば引いて守備に終始し、酒井高は前線にボールを取りに行くなど要求されていたプレーはしていたように感じた。どちらが良い悪いということではなく、この2人を並べた場合は、攻撃面で求めている役割がこなせないという結果が見えた。ボールを受ける動き、ポジショニング、前線への効果的なパスなどだ。 Getty Images▽最終予選での日本代表のボランチ起用は、長谷部、山口、MF柏木陽介、MF大島僚太、酒井高の5名。インサイドハーフで起用した今野も入れれば6名だ。しかし、今回の2試合以外は長谷部が軸となり、大島が1回、柏木が2回、山口が2回コンビを組んでいる。長谷部がバランスを見ることで、攻守ともに崩れる場面が少なかったが、長期離脱が確定。6月の最終予選も難しいだろう。 ▽今野が復帰となれば、再びインサイドハーフでの起用も考えられるが、ボランチでプレーする日本人選手にとってはある種チャンスとも言える。あと2カ月の間にリーグ戦で良いパフォーマンスを見せれば、メンバー入りも不可能ではない。 ▽ハリルホジッチ監督には、新たな中盤の構成を考える理由が見つかった試合となった。特にダブルボランチを起用する際のコンビをどうするかは、しばらく悩みの種になるかもしれない。そういった意味では、結果を含めて、テストもできたタイ戦はプラスだったとも言えるだろう。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.03.30 00:00 Thu
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【日本代表コラム】“経験”と“勢い”の融合が見せたモノ

▽約4カ月ぶりの代表活動、そして後半戦を迎えるロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選。日本にとってはこの上ない勝利だったと言える。勝ち点3という結果、そして収穫も多かった。 ▽試合前に最も驚いたのは、所属クラブのミランで出場機会に恵まれないFW本田圭佑、レスター・シティで再びポジションを掴んだFW岡崎慎司がベンチに座ったことではなく、守護神にGK川島永嗣を起用したことだった。「経験がたくさん必要な試合になる」と前日会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督が語っていたが、それはセカンドチームでプレーする川島にも当てはまることだったことがうかがえた。 ▽試合後の会見でハリルホジッチ監督は「メンタル的に落ち着いた選手が必要だった」と川島の起用についてコメント。得点を与えないことはもちろんのこと、時間の使い方、最後尾からの精神的な支柱という意味でも川島の起用に踏み切ったのだろう。ゲームキャプテンを務めたDF吉田麻也のパフォーマンスが安定していたことにも影響はあるはず。兼ねてから川島の姿勢を評価して代表に招集していたことも、ここに来て生きたと言える。 ▽そして、攻守に躍動し1ゴールを記録したMF今野泰幸も経験をチームにもたらしていた。「ほぼ完ぺきなプレーをして、ボールを奪いながら点も決めてくれた」とハリルホジッチ監督が評価したとおり、厳しい試合での日本の勝利に大きく貢献した。4度目のW杯最終予選ともなれば、中東での戦い方も心得ていることがうかがえる。そして、ガンバ大阪ですでに3ゴールを決めている調子の良さも遺憾なく発揮した。 ▽一方で、昨年11月のサウジアラビア代表戦に続き右ウイングのポジションに入ったFW久保裕也は出色の出来だった。13分には右サイドバックのDF酒井宏樹からのスルーパスを引き出すと、相手DFを振り切りダイレクトシュート。狭いニアサイドを打ち抜いて代表初ゴールを記録した。また、51分には右サイドでキープすると、走り込んだFW原口元気ではなくファーサイドに左足でクロス。今野をめがけたピンポイントクロスでアシストを記録した。 ▽冬にベルギーのヘントへと移籍すると、環境の変化にも適応しゴールを量産。すでにチームの中心選手として活躍をしている。スイスで磨いたゴールへの意識は、ベルギーで開花。そして、日本代表としても結果を残した。クラブでの調子の良さを、結果として代表チームに還元できたことは大きな収穫だ。 ▽また、ケルンで高い評価を得ているFW大迫勇也も1トップとして仕事をこなした。身体の強さを生かしたキープや競り合いでも強さを発揮。ゴールこそ生まれなかったが、可能性のあるシュートも放った。終盤にヒザを痛めたことは気がかりだが、久保同様にクラブでの好調ぶりを見せてくれた。守備での貢献度が高かったFW原口元気も同様。前線での攻守への貢献は高く、クラブでの調子の良さをしっかりと発揮できたことは収穫と言える。 ▽クラブで結果を残し、勢いに乗っている選手、そしてこれまで数多くの激闘を経験している選手がしっかりと融合でき、結果も残せたUAE戦はハリルホジッチ監督が目指しているものに少し近づいた様に思う。 ▽ベンチスタートとなった本田や岡崎は経験値も高く、UAE戦では強力なオプションとなっていた。岡崎は大迫の負傷で急遽の出場となったが、ファーストプレーでCKを得意の頭で合わせた。終盤にはビッグチャンスを生かせなかった場面があったが、頼れる経験者がベンチに控えていることは、観ていても頼もしかった。 ▽本田はクラブで試合出場がほとんどないために試合勘不足は否めないが、コンディションや調子が悪いとは思えないプレーだった。MF倉田秋やMF山口蛍とも良い距離感を保ち、本田がボールを持つことで原口やDF長友佑都など逆サイドの選手も積極的に動き出していた。やはりこのチームには欠かせない存在であることを、短時間でも証明してくれた。 ▽失意の敗戦でスタートしたW杯アジア最終予選だったが、ここに来てハリルホジッチ監督が目指していたものが、形になりかけている様子がうかがえる。若手とベテラン、勢いと経験───これらの融合が進むことで、日本代表は1つステージを上げることができるはずだ。チームとしてのバランスを考えた選手選考、そしてしっかりと結果を残した日本代表。その歩みを止めないためにも、28日のタイ代表戦はより完璧な試合を見せてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.03.24 15:00 Fri
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【日本代表コラム】大きな収穫はなくとも、前進は見せたオマーン戦

▽収穫があったと言って良い試合だろう。キリンチャレンジカップという親善試合であることを加味しても、手にした収穫がわずかであったとしても、前には進んでいると言えるだろう。11日に行われたオマーン代表との一戦では、結果、内容以上の収穫を見て取れた。 ▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は試合前の会見で「テストであり調整の場」であると語った。しかし、だからと言って、全てを変えて臨むとも言わず、「サウジアラビア戦に向けた準備をしなければいけない」と強調した。 ▽スターティングメンバーに名を連ねた11名のうち、GK西川周作、DF酒井宏樹、DF吉田麻也、DF酒井高徳、MF山口蛍、MF清武弘嗣、FW本田圭佑の7名は、おそらくサウジアラビア戦に向けたテストだろう。特に、MF清武弘嗣、FW本田圭佑は、所属クラブでの出場機会がないため、試合でのコンディションチェック、そして調整の場として使ったはずだ。 ▽ご存知の通り、清武はFW大迫勇也の2ゴールをアシストし、後半はFW浅野拓磨が得たPKをしっかりと決め、3得点に絡んだ。10番を背負い、不動のトップ下としてここまでプレーしてきたMF香川真司が負傷の影響で欠場したとは言え、ポジションを獲るためのプレーを見せ、結果を残した。ロンドン五輪世代としてU-23日本代表で長らくプレーしていた2人の関係性は良く、呼吸が合っている様子を見せた。 ▽一方で、本田は明らかにコンディションが良くなかった。身体の重さを感じさせただけでなく、試合を行っていないことによるキレのなさを感じた。しかし、その事が分かったことはプラスに捉えられる。中3日で行われるサウジアラビア戦。そこまでにどこまでコンディションを上げられるかだが、難しい可能性も把握できた。これはハリルホジッチ監督にとっては大きかったはずだ。 ▽また、DF丸山祐市、MF永木亮太、FW齋藤学、FW大迫勇也と、ここまでプレー機会がなかった4選手を先発させた。丸山以外は今回のW杯最終予選での出場機会はなく、丸山も普段とは異なるポジションでのワンポイント起用だったのでゼロに等しい。新戦力の発掘、そしてチームとしてのベースアップと考えられる。 ▽3トップの中央で先発した大迫は、慣れ親しんだ県立カシマサッカースタジアムで凱旋の2ゴール。ケルンでの調子の良さを窺わせた。齋藤は硬さが見られたものの、何度か得意とする仕掛けを見せ、タイミングの良いクロスも見せていた。オプションとして起用される可能性は高く、チームにフィットすれば相手によっては先発もあるだろう。代表デビューとなった永木は、そつのないプレーを見せた。ボール奪取からの展開という点では物足りなかっただけに、さらなるレベルアップは求められるだろう。丸山も細かい判断ミス、マークの甘さなど経験不足を感じさせたが、最低限のパフォーマンスだったと思う。 ▽また、途中出場ではMF小林祐希、FW久保裕也、FW浅野拓磨と出場機会が少ない、または初起用の選手を選択した。小林は最後にダメ押しゴールを奪い、久保はシュートへの意識を高く持っていた。浅野はスペースが少なく飛び出すことができなかったが、PKを奪取。満足はできないが、テストはできた。FW岡崎慎司、FW原口元気、DF森重真人に関しても、サウジアラビア戦での起用を見据えての試運転といったところだろう。調整はできたといえる。 ▽MF井手口陽介、DF植田直通に関しても、起用できるチャンスはあったはずだ。しかし、チームのバランスを崩すことはしないのがハリルホジッチ監督。まだチーム戦術の理解が足りていないという評価なのだろう。それでも、ポテンシャルは評価されているため、来年3月の試合に出場できるように努力を積むことが必要だ。いずれ、出場機会は巡ってくると考える。 ▽今回のオマーン戦に関しては、あくまでもサウジアラビア戦に向けた調整試合であり、テストの場であった。結果として4-0で勝利。新戦力がプレーしたということは、主力だけでなく、控えメンバーに大きな影響を与えたはずだ。日本代表が1つのチームとして成長するために、この時期にテストできたことは大きい。来年3月までの目標も個々に持てたはずだ。 ▽15日に行われる、W杯アジア最終予選でグループ首位に立つサウジアラビア戦への舞台は整った。2016年最後の試合に向けて、そしてその先にあるロシアW杯出場に向けての準備は、一歩ずつ着々と進んでいるように感じさせたオマーン戦だった。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.11.13 20:00 Sun
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【日本代表コラム】ハリルホジッチに導かれる日本代表が進む道

▽グループ首位に立つオーストラリア代表のホームで試合に臨んだ日本代表。既に最終予選で1敗を喫していることを考えれば、ここでの敗戦は避けたかった。結果は1-1のドロー。結果以上に、日本代表には手応えを感じた。 ▽オーストラリア戦後の記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「後悔は全くしていない」と試合の感想を述べた。ここまでの最終予選3試合に比べ、日本は落ち着いた試合の入りを見せ、前線から最終ラインに至るまで、特に中盤では強度を強め、オーストラリアを自由にさせなかった。 ▽その流れの中で迎えた5分、自陣に戻ったFW原口元気がボールをカット。MF長谷部誠がボールを拾うと、少し貯めを作って1トップに入ったFW本田圭佑に縦パス。それと同時に原口は走り出し、本田からの絶妙なタイミングで出されたパスに抜け出て先制点を奪い切った。 ▽『縦に早いサッカー』とハリルホジッチ監督が常に口にするが、このシーンはまさにその言葉を体現したものだった。この試合は右サイドにFW小林悠を置き、トップ下にMF香川真司、ボランチの一角にはMF山口蛍を起用した。さらに、ケガ人により選択肢が狭まった左サイドバックには、攻撃を得意とするDF太田宏介ではなくDF槙野智章を起用。指揮官の狙いは明白だった。 ▽これまでの空中戦に頼った戦い方から変貌を遂げているオーストラリアに対し、日本は中央を固める作戦に出た。長谷部、山口のボランチに加え、サイドに入った原口、小林が献身的な守備対応を見せることで、オーストラリアの推進力を奪った。サイドバックのDF酒井高徳、槙野も落ち着いた対応を見せていた。まさに、『デュエル』の部分で負けなかった証だろう。 ▽ゴールシーンに繋がった守備以外にも、オーストラリアのホールホルダーに対する寄せの早さや、前を向かれた際のDF吉田麻也、DF森重真人の守備対応はほぼ完璧だったと言える。さらに、奪ってからのボール運びも、この3試合とは異なり、縦の関係を上手く利用したダイレクトパス交換などが随所に見られた。オーストラリアの決定機はほぼゼロ。細かなミスは起こっていたが、前半は見違える出来だった。 ▽後半に入り、オーストラリアのスイッチが入ったことで立ち上がりに圧力をかけられた。それでもしっかりと守っていた日本だったが、PKからゴールを献上した。妥当なPKだったが、原口のチャレンジは悪いものではなかったと思う。 ▽試合を通してブロックを作り、カウンター狙いに徹した日本は、小林のヘディングシュートなど追加点を奪うチャンスも作っていた。勝利が欲しかった試合内容ではあるが、オーストラリアとアウェイで戦っている以上、勝ち点1でも問題なかった。むしろ、試合内容としては、最終予選の4試合でベストだったのではないだろうか。 ▽個人的に最も評価したい部分は、“アウェイ”での戦い方を見せたことだ。日本はこれまで“アウェイ”での戦い方を得意とせず、ホームでもアウェイでも変わらない戦い方を見せていた。もちろん、それで結果を出せればいいのだが、そうでないことの方が多かった。世界で戦うには時にはリアリストになることも重要であり、それはユーロ2016を見ても分かる通り。守ってカウンターという戦い方で結果を残した国はご存知のとおりだ。 ▽もちろん、手放しで喜んでいるわけではない。攻撃の組み立て方、フィニッシュの精度、クロスの精度…課題は数多いだろう。しかし、ハリルホジッチ監督がチームを作り上げている過渡期と考えれば、一定の結果をオーストラリア相手に示せただろう。そして、進んでいる道は間違っていないことを感じさせてくれたように思う。 ▽采配についても多くの意見が見られるが、目指していたものを考えれば妥当とも言える。最後のカードとして先制ゴールの原口に代えてDF丸山祐市を選択した。確かに、勝利を目指すためには、FW齋藤学という選択肢もあっただろう。しかし、あの時間帯で目指したのは、守備のリスクを軽減することだったはず。試合を通して集中した守備を築いてきた中で、得点を目指すためにバランスを崩すプランはなかったはずだ。浅野のカウンターで一発という狙いはあったが、人数をかけて崩す前に、オーストラリアに逆転ゴールを奪われていたかもしれない。ハリルホジッチ監督は、プラン通り勝ち点1を獲りに行ったのだろう。 ▽主力を負傷や出場停止で欠き、普段とは違うゲームプランでオーストラリア戦に臨んだ日本代表。勝ち点があと2つ取れていれば言うことなしだったが、試合の流れから決めたプランを遂行できたことは大きいだろう。当然、ホームでのオーストラリア戦は同じゲームにはならない。きっと、ハリルホジッチ監督は勝利を目指して戦うはずだ。 ▽来月のサウジアラビア代表戦で最終予選は折り返すこととなる。このオーストラリア戦での戦いを無駄にしないためにも、1カ月後のホームゲームまでチームとして同じ道を進み、勝利を掴むためにしっかりと準備をしてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.10.12 18:00 Wed
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【日本代表コラム】ターニングポイントになり得る勝ち点3

▽“薄氷の勝利”という言葉がピッタリ当てはまる試合だった。後半アディショナルタイム5分、フリーキックのこぼれ球をMF山口蛍が豪快にボレーで沈め、イラク代表を下し、勝ち点3を獲得した。 ▽ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の初戦となった9月のUAE代表戦では、同じ埼玉スタジアム2002で1-2と逆転負け。よもやの敗戦により、一気に緊張感が増した。そして迎えたイラク戦…決して内容は褒められるものではなかったが、勝ち点3を得ることができた。 ▽この試合の目的は何だったのか。キレイなサッカーを見せることだったのか、イラクを圧倒することだったのか、スペシャルなゴールを決めることだったのか──この試合で最も重要なミッションは、勝ち点3を獲ること。それ以上でも、それ以下でもないことを考えれば、結果は100点と言えるだろう。 ▽試合後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「美しい勝利ではないが、勇気の勝利」とコメントした。そして「本当に価値の高い勝利」とも語っている。グループ最大の敵とも言われているオーストラリア代表とのアウェイ戦を控える日本にとって、勝って臨めることは大きな後ろ盾となる。 ▽ハリルホジッチ監督は、イラク戦でMF香川真司(ドルトムント)、DF長友佑都(インテル)をスターティングメンバーから外し、トップ下にMF清武弘嗣(セビージャ)、左サイドバックにはUAE戦、タイ戦に続きDF酒井高徳(ハンブルガーSV)を起用した。 ▽これまでの実績などを踏まえてメンバーを組んだUAE戦は、コンディション不良の問題を露呈。結果的に敗戦を喫することとなった。同じ轍を踏むことをしなかったことは、良い判断だったと言えるだろう。 ▽また、先制点も清武らしさから生まれたゴールだったとも言える。長い距離を走り、FW本田圭佑に選択肢を与え、FW原口元気に走り込ませる時間も作った。前線の4人が連動した見事な崩しだったと言える。 ▽しかし、試合全体を見れば、内容面では満足行くものとは言えなかった。攻撃のスイッチが入るタイミングがなく、良い形で前線にボールが入っても、周りの動きが足りずにボールをロストする場面も散見された。“フィニッシュ”というものへのこだわりは、日本がもっと持つべきもの。シュートシーンでパスを選択する場面も少なくなかった。結果的にフィニッシュの形に持ち込めないのであれば、シュートを打った方が、相手守備陣には脅威になる。現に、イラクのシュートに肝を冷やした場面は多かった。 ▽次は前半戦の山場であるオーストラリア戦。アウェイでの戦いを考えれば、今度は負けてはいけない試合になる。第3節のサウジアラビアvsオーストラリアが引き分けに終わったことで、上位2カ国との勝ち点差は1となり、次節の結果次第では日本の首位浮上もある。 ▽そういった意味でも、イラク戦の“勝利”という結果は、素直に喜ぶべきだろう。この戦いは、W杯の出場権を懸けたもの。内容ではなく、結果を残さなくてはいけない。すでにホームで1敗を喫しているのだから、なおさらだ。 ▽試合の内容はトレーニングで突き詰めることができても、勝ち点は3パターンしかない。満足行かない試合内容であっても、土壇場で最高の勝ち点を獲れたことが何よりも重要だ。ギリギリで掴んだこの勝利は、結果として、そしてメンタル面、選手の経験値としても、今予選の大きなターニングポイントになる可能性があるだろう。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.10.08 12:00 Sat
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【日本代表コラム】貴重な勝利も課題山積…10月の2戦はコンディション重視を求む

▽「非常に重要な勝利だった」というヴァイッド・ハリルホジッチ監督コメントからも分かるとおり、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の初戦で敗れていた日本代表にとっては、結果が最重要だった。 ▽UAE戦からFW岡崎慎司、MF大島僚太、MF清武弘嗣を下げ、FW浅野拓磨、MF山口蛍、FW原口元気を起用。ハリルホジッチ監督は「何人かの選手は疲労を抱えていた」とコンディション面を理由にしながらも、「経験のある選手と若い選手を少し競争させたい気持ちがある」と、今後を見据えての起用であることを明かした。 ▽起用された3選手は、それぞれが持ち味を発揮。原口は貴重な先制ゴールを決め、浅野は持ち味を出して追加戦、山口は中盤の刈り取り役を務め、守備面に安定感をもたらせた。「良いプレーをしてくれた」(ハリルホジッチ監督)と試合後に語ったように、勝利が必要な試合でしっかりと結果を残してくれた。 ▽また、初戦で大きな問題を抱えていた両サイドバックも、しっかりと修正できていたように思う。左サイドバックを努めたDF酒井高徳は、原口との連携もあり、UAE戦に比べて高い位置を取ることができていた。原口がサイドを空ければスペースに上がり、原口がサイドに張っているときは下がって守備に備えた。攻守両面で課題はまだあるものの、固さも見られたUAE戦からは改善した様に思う。 ▽一方で、右サイドバックのDF酒井宏樹も改善は見られた。同サイドのFW本田圭佑との関係も改善され、深くまでオーバーラップするシーンが格段に増えた。原口の先制点も酒井宏樹からのクロスから生まれており、UAE戦で単調に終わっていた攻撃を活性させた。バランスの取り方に課題は多いものの、一定の評価はできるだろう。 ▽新しい選手が結果を残し、初戦で課題を抱えた両サイドバックも改善の兆しを見せたが、気になるポイントも残った。それは、MF長谷部誠とMF香川真司のパフォーマンスだ。 ▽UAE戦で史上6人目の日本代表100試合出場を達成した長谷部だが、失点に繋がるボールロストをするなど低調なパフォーマンスに終わった。迎えたタイ戦でも、不用意なボールロストやパスミスが見られた。ピッチが緩いというコンディション面の問題もあったが、経験が豊富であり、キャプテンを務める長谷部の低調なパフォーマンスは気がかりだ。シーズン開幕間もないということもあるだろうが、10月の2試合では安定感のある長谷部を見せて欲しい。 ▽そして、香川も気になるところがある。UAE戦は競り合いのこぼれ球をミートできずに無得点。タイ戦はGKとの一対一を迎えるも、シュートコースが甘くGKに防がれた。2戦続けて決定機を生かせなかった香川は、コンディション不良もある中で先発起用された。ハリルホジッチ監督が中心に据えたいことは明確で、香川にもその自覚はあるはず。かねてからドルトムントと日本代表でのパフォーマンス差を指摘されがちだが、ここを乗り越える必要はあるだろう。 ▽「簡単な試合はない」という最終予選において、明暗を分けるのはディテールの部分になる。UAE戦、タイ戦でも浮き彫りとなった、決められるチャンスを作れても決めるのか、決めないのかで局面は大きく変わる。しかし、最も重要なのは選手のコンディション面だろう。メンバーを固定して戦うのではなく、コンディションが整っている選手の起用が、10月の2試合では重要になるのではないだろうか。いみじくも、9月の2試合では経験値や能力の差よりも、コンディションの差が結果を分けたのだから。選手たちにはクラブに戻ってコンディションを上げ、10月のイラク代表、オーストラリア代表との2試合で連勝できる準備をしてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.09.08 21:00 Thu
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【日本代表コラム】“チャレンジ”した監督、“チャレンジ”できなかった選手

▽「本当に心の底からガッカリしている」。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の口から最初に出てきた言葉だ。埼玉スタジアム2002に集まった58895人の観衆、テレビの前で観戦した人、スマートフォンやパソコンの前で文字情報を追っていた人──この一戦の結果を気にしていた多くの人が、同じ感想を抱いたのではないだろうか。 ▽日本の立ち上がりは悪くなかった。11分にMF清武弘嗣のFKをFW本田圭佑がヘディングで合わせ、幸先良く先制する。これで勢いに乗りたかった日本だが、ボールを握るもミスが目立ち決定機を作れず。すると20分にA・ハリルに直接FKを沈められ、同点に追いつかれる。 ▽同点ゴールを許した後もペースを握った日本だったが、MF香川真司が決定機を逸したり、細かいパスミスが目立つなどして時間が経過。同点で迎えた後半は立ち上がりにPKからA・ハリルに逆転ゴールを許し、そのまま1-2で敗れた。 ▽この試合を前に、日本はDF長友佑都、MF柏木陽介とレギュラーとしてプレーした2選手をケガで欠くこととなった。長友の代役はDF酒井高徳が濃厚とされていたが、柏木の代わりをどの選手が務めるのかに注目が集まっていた。そして、ハリルホジッチ監督は、柏木の代役に日本代表初キャップとなるMF大島僚太を選択した。 ▽ワールドカップの出場権を懸けた最終予選、そしてホームでの初戦ということを考えれば、MF山口蛍という選択肢もあっただろう。しかし、ハリルホジッチ監督は大島を選んだ。個人的には、この決断は賛成だ。経験値を考えれば山口の方が優勢だったが、川崎FやU-23日本代表で見せていた大島のゲームメイク力は、柏木が抜けた日本にとっては必要だった。 ▽前半は、UAEも香川や本田、清武、FW岡崎慎司と言ったネームバリューのある前線の選手を警戒しており、大島の前にはスペースができることが多かった。しかし、川崎FやU-23日本代表で見せた鋭い縦パスや、大きなサイドへの展開、思い切りの良いミドルシュートは見られなかった。 ▽「こういう試合で恥ずかしさを見せるところがあった」(ハリルホジッチ監督)と試合後の会見で語ったが、状況を考えれば当然かもしれない。また、リオ・デジャネイロ オリンピックから帰国したあと、インフルエンザでコンディションを落としながらもリーグ戦2試合に出場。コンディションが上がってないことも影響したはずだ。ただ、A代表に選ばれた選手と考えれば、残念に感じる部分でもあった。 ▽しかし、大島のプレーが悪かったのかと問われたら、期待通りのプレーではなかったかもしれないが、問題は別のところにあるように思う。それは、ピッチの幅を使えなかった部分だ。 ▽「縦に早いサッカー」とハリルホジッチ監督は口にする。しかし、UAE戦の攻撃はスピード感はなかった。むしろ、手数をかけ過ぎて、UAEの守備陣に余裕を与えていた印象だ。ダイレクトパスを繋いで、ボックス内に侵入したプレーがいくつあっただろうか。判断が遅く、プレーの選択肢が狭まってしまったシーンも多く見られた。 ▽また、サイドを効果的に使えなかったことが停滞した大きな要因だろう。清武、本田とサイドにポジションを取る2人が中を向いてプレーする。しかし、2人が空けた裏のスペースに両サイドバックが上る機会は少なく、上がった際もタイミングが遅い場面が散見された。攻撃時にサイドの枚数を増やせば、UAE守備陣を混乱に陥らせることはできただろう。ダイレクトパスで崩すことも可能だったはずだ。 ▽UAE戦の日本は、中央に攻撃が偏り過ぎたように見えた。しかし、警戒されていた香川にボールは収まらず、効果的な崩しはできていなかった。ハリルホジッチ監督が大島を抜擢した意図を汲み取れば、サイドバックがスペースに上がって展開する形や、2列目が裏に飛び出す動きがもう少しあっても良かっただろう。特に両サイドバックの動きは、物足りないものだった。 ▽ハリルホジッチ監督は、大島という新たな可能性を信じ、「負ければ予選突破の確率が0%」と言われる大事な一戦で起用する“チャレンジ”に出た。しかし、ピッチに立った選手たちは、監督が求めるプレーを行えず、「自分たちのサッカー」とも言える中央を遅攻で崩す形に拘った様に見えた。過去に何度も苦しんできたアジアでの戦いで、同じ手で仕掛け、失敗したように思う。新たに入った大島の特長を生かそうという“チャレンジ”は、していなかったのではないか。 ▽埼玉スタジアムの不敗神話が崩れ、W杯最終予選の初戦で敗戦。出遅れたことは事実だ。ネガティブな雰囲気が蔓延するのも当然だ。それでも、残りは9試合。悪い雰囲気を払しょくするためにも、まずは6日に行われるタイ代表との第2戦でしっかりと勝利し、10月のイラク代表、オーストラリア代表との2試合を迎えたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.09.02 21:00 Fri
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【日本代表コラム】いつも変わらない足りないもの…“ドメスティック”な選手を生まない環境へ

▽「勝って終わることは残念」とスウェーデン戦後の記者会見で語った手倉森誠監督。試合を重ねるごとにチームの戦い方が整理され、試合結果も負け、引き分け、勝ちと上がってきたことを考えれば、確かに残念な結果だ。 ▽手倉森ジャパンに“足りなかったもの”は、トレーニングでは埋めることができないもの。これは日本代表、なでしこジャパンにも共通する部分はあるだろう。日本サッカー全体に共通する部分とも言えるかもしれない。“世界基準”を測り切れないことが、“足りないもの”の根幹にあると思う。 ▽「世界を経験していない選手と監督だった」と手倉森監督が敗退後にコメントしていた通り、このメンバーで世界を知っているのはオーストリアのザルツブルクでプレーするMF南野拓実だけだ。同じく世界を知っているヤング・ボーイズのFW久保裕也が不参加となったことは、戦力以外の部分でも大きかった。 ▽手倉森ジャパンの面々は、アジアを知っていても、世界は知らない世代。トゥーロン国際大会でも、その差を感じ、大会直前のブラジル戦でもその差を感じていたはずだ。 ▽ナイジェリア戦の1失点目、コロンビア戦の1失点目は、どちらも“世界基準”を測り間違えた結果だと言える。ナイジェリア戦は、止められると思ったタイミングで仕掛けられ、失点に繋がった。コロンビア戦は、奪えると思ったタイミングでいなされ、そのまま失点に繋がった。“世界基準”を測り間違えると、失点に直結する。そのことを、リオ五輪ではより体感したはずだ。 ▽オリンピックに限らず、世界と戦い、勝つことを目標としている代表チームであれば、まずは“世界”を知る必要がある。しかし、それを経験する場を、U-20という大事な世代で10年以上作ることができていない。“世界”のレベルを知ることもできず、国際大会で戦う経験もできていない。U-20ワールドカップの出場権を4大会連続で逃しているという事実は、日本のサッカー界全体が抱える大きな問題だと言える。 ▽“世界”を知る選手をオーバーエイジで呼べば良かったという話も、大会中から耳にした。確かに、その考え方は間違っていないだろう。今回招集されたFW興梠慎三、DF塩谷司、DF藤春廣輝は、アジアでの経験はあっても、“世界”での経験はほとんどないからだ。その基準で考えれば、適任は他にも居たのかもしれない。 ▽しかし、それでは根本的な解決にはならない。オーバーエイジの選手に頼り切ってメダルを獲ることが、このチームの目的ではない。あくまでも、その世代の選手が中心となり、チームを作り上げて勝つことが重要であり、オーバーエイジは“スパイス”のようなものだと思う。 ▽リオ五輪の結果、経験、そして悔しさを、この先のキャリアでどの様に生かすのかは、選手個人にかかっている。「23歳」という年齢は、決して若くない。“世界基準”で考えれば、若手という表現も使われない。A代表の枠を争うべき年代だ。 ▽そのためにも、今後“ドメスティック”な選手になることは避けてもらいたい。そして、そのような選手を生み出さない環境を作ってもらいたい。チャンスがあるならば、“世界”を知るために、できるだけ早く海外移籍するべきだと思う。個人としても、チームとしても、“世界”を知るチャンスを逃して欲しくはない。 ▽これで五輪代表チームとしての活動は終了した。選手たちはA代表入りを目指して競争することが始まる。何を感じ、何が必要なのか。今後の選手たちの変化を見守りたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.08.13 11:00 Sat
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【日本代表コラム】“偶然”ではなく“必然”が生んだ2失点…埋め切れない世界との差

▽「ひっくり返せたゲームだった」と試合後に手倉森誠監督が語ったように、U-23コロンビア代表戦は勝ってもおかしくない試合だった。しかし、初戦のU-23ナイジェリア代表戦(5-4で敗戦)も勝てる試合だった。それでも結果は1分け1敗。第3節のU-23スウェーデン代表戦はグループステージ突破を懸けた決戦となる。 ▽コロンビア戦では、ナイジェリア戦からシステムを変更し、これまで重用して来た[4-4-2]で臨んだ。攻撃に幅を持っているコロンビアが相手ということで、守備面を考慮しダブルボランチにMF遠藤航、そして初戦は出番がなかったMF井手口陽介を起用。また、両サイドにはMF矢島慎也、MF中島翔哉を置き、2トップにFW興梠慎三とFW浅野拓磨を配置。慣れ親しんだ形で臨んだ。 ▽立ち上がりからペースを握った日本だったが、この日はフィニッシュの精度を欠いた。CKやFKなど敵陣でセットプレーも数多く獲得したが、相手の脅威となるシーンを多く生み出すことができず。ゴールレスのまま試合を折り返した。 ▽浅野は「もっと早く攻撃陣である僕らが早い時間にゴールができていれば、もっと違った戦いになっていたと思います」と試合後に語った通り、コロンビアの戦意を喪失させるだけのチャンスはあった。しかし、それを生かせないでいると、2失点という報いを受けることとなった。 ▽ミスが散見され、想像以上の5失点を喫したナイジェリア戦とは打って変わり、コロンビア戦はミスが減ったように思えた。しかし、前半同様に後半も相手ゴールに迫るシーンが続いた影響か、ダブルボランチの遠藤と井手口が前掛かりになるシーンが増え、バイタルエリアを空けてしまう時間が増えていった。 ▽その隙を突かれたのが1点目だった。FWグティエレスがボックス手前でボールを持つと、中央で待つFWレンテリアに預けリターンを受け右足一閃。ブロックに入ったDF植田直通に当たったボールがネットを揺らした。 ▽植田に関しては、しっかりとブロックに入り、GK中村航輔もあの軌道ではノーチャンスだった。しかし、グティエレスがレンテリアにボールを入れた際には、バイタルエリアが空いており、後手に回った守備が招いた失点とも言える。 ▽ナイジェリア戦では、押し込んでいる時間帯の失点に浮足立ってしまったこともあったが、常に守備が後手に回っていた。クロスや縦パスへの対応、そして相手にボールが収まる前にではなく、収まってからの対応。個の力を持ち合わせる相手との勝負でやられていたが、コロンビア戦の先制点も同じものと言えるだろう。 ▽2失点目も同様だ。中央で楔となったパボンが左のボルハへパス。ボルハのシュートはGK中村が何とかセーブしたが、DF藤春廣輝が対応を誤りオウンゴールを献上した。藤春の判断ミスはいただけないが、その前にボルハのシュートが決まっていた可能性も高い。崩しの部分での守備が後手に回った事が、結果的にオウンゴールへと繋がってしまったと言えるだろう。 ▽この2試合で感じたことは、“世界“を経験していないということだ。海外組は、実質MF南野拓実(ザルツブルク)の1名のみ。バックラインは、クラブレベルで多少の国際経験はあるが、アジアを超えた世界との経験は殆どない。バイタルエリアで相手に自由を与えたらどうなるのか。相手のボールの持ち方、身体の使い方はどうなのか。リーチの長さ、コントロールの正確さ、シュートレンジの差──世代別の代表チームとはいえ、“世界”のレベルがどれほどなのかをこの2試合で体感したはずだ。ナイジェリア戦からコロンビア戦にかけて改善が見られた理由は、1度経験していたからだと思う。 ▽一方で、浅野や中島のゴールに関しては、ナイジェリア戦同様に自分たちの形を出して得点した。攻撃面に関しては、2試合で6得点。どれも“偶然”の産物ではなく、しっかりと形を作っての得点だ。しかし、決めなくてはいけない場面で決められなかったのも事実。命取りになることは、この2試合でよく分かったはずだ。そして、得点と同様に失点もまた”偶然”の産物ではなく、“必然”なもの。中2日で対応しきれるほどのものではなかったが、先制点を許すまでは耐えていた様に思う。 ▽ナイジェリア戦と比べると内容が向上したコロンビア戦。しかし、勝利という結果を掴むことはできなかった。それでも「最終節ではもっと強さを発揮できると楽観的に考えている」と語った手倉森監督。逆境を乗り越え続けてきたU-23日本代表チームにとっては、劇的な展開でのメダル獲得に向けた筋書きと言えるかもしれない。残された1試合で勝利を掴み、まずはグループステージ突破に向けて他会場の結果を待つことができるのか。“必然”が生み出す結果を掴むために、残り2日をしっかりと過ごしてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.08.08 22:00 Mon
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【日本代表コラム】流れを決めた先制点、メンタルが影響したミス

▽あっという間の13分間──そんな印象だった。なかなか姿を見せなかったU-23ナイジェリア代表だが、キックオフ約6時間前にアメリカから到着。しかし、ブラジルへの移動とは打って変わり、キックオフからあっという間にゴールを奪っていった。 ▽試合の入りは日本の方が良かったと言って良いだろう。落ち着かないナイジェリアの隙を突くと、完全に空いた相手右サイドを突いたDF藤春廣輝がクロス。飛び込んだMF大島僚太がダイレクトで合わせるも、GKが好セーブ。直後のCKからはMF遠藤航、FW興梠慎三とボックス内で繋ぐもシュートを打ち切ることができなかった。 ▽このまま押し込む展開に持ち込めるかと思われたが、直後のプレーで失点を喫する。FWエセキエルの仕掛けを左サイドの藤春、MF中島翔哉が挟みに行ったが、個人技で突破を許し、最後はMFサディクに詰められ先制を許した。 ▽試合後に手倉森監督が「ディフェンディングサードで、対応の部分で浮足立っていた」と語ったように、先制を許した直後にFW興梠慎三のPKで同点に追いつくも、2分後にアーリークロスの対応を誤り、FWエテボに勝ち越し点を許す。再び追いつくも、前半を終えるかと思われた42分に勝ち越しを許してしまった。 ▽ナイジェリアのコンディションや、当日入りという不測の事態が起こりながらも、日本はしっかりと準備していたはずだ。しかし、先制点を許してしまったことが、この試合の全てだった様にも思う。押し込みながらの失点で、日本は自分たちの戦い方をを見失ってしまった。 ▽90分間を通して5失点。手倉森監督がチームを率いて以降、最多失点を記録した。5失点はDFラインの対応のマズさもあったが、最も大きな要因は散見されたミスだろう。技術面劣っていたというよりは、精神状態が技術面に大きく影響し、戦い方や1つ1つのプレーを普段通りに行えなかった。 ▽日本は、アジアではパスを繋ぐスタイルと、サイドを使った攻撃で勝ち上がってきたチームだったが、押し込めそうな展開での失点に浮足立ち、自分たちのスタイルを見失ってしまった印象がある。中盤でのパスは繋がらず、サイドを仕掛ける回数も少なかった。中央とサイドでのボールの出し入れも少なく感じられた。 ▽1点のビハインドで迎えた後半も、立ち上がりに微妙な判定で与えたPKから失点。2点差となったことで、焦りが増したように見られた。スピードのあるFW浅野拓磨を投入したことで、システムを[4-4-2]へと変更。これによりナイジェリアが対応に手こずる間に決定機を何度か作った。浅野の投入により縦への意識が生まれたことは良かったが、サイドを使う回数は減り、攻撃面でも焦りが見え、ミスに繋がっていった。 ▽2007年のカナダ大会を最後に、U-20のワールドカップに出場できていない日本。一方で、2013年、2015年とU-17ワールドカップで連覇を果たすなど、アンダーカテゴリーで世界と戦ってきたナイジェリア。両者の差は、大舞台で明確に出てしまった様にも思える。技術面よりも、精神面での差が勝敗を分けたとも言えるだろう。試合の立ち上がりと終わりの失点は避けるべきと言われるが、この試合ではそれを繰り返してしまった。 ▽とは言え、まだ五輪が終わってしまったわけではない。避けたかった黒星スタートとなったが、結果として4得点を奪えたことは良かっただろう。4選手が得点を奪い、得点パターンも全て違った。4得点を奪いながら勝てなかったことは悔やむべきだが、残り2戦に向けての好材料とも言えるだろう。これまで積み上げてきた自分たちのやり方に自信を持ち、しっかりとコロンビア相手に戦ってもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.08.06 14:00 Sat
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7月1日にリオ五輪メンバー発表…注目の「託す人、託される人」を考察

▽29日に、U-23南アフリカ代表との五輪前最後の国内強化試合を終えたU-23日本代表。8月3日に開幕するリオ・デ・ジャネイロ・オリンピック(リオ五輪)に向けてのメンバーが、7月1日に発表される。 ▽リオ五輪に登録できるメンバーは18名。しかし、既に内定が発表されているFW興梠慎三(浦和レッズ)、DF塩谷司(サンフレッチェ広島)、DF藤春廣輝(ガンバ大阪)の3名が入ることを考えると、15名しか選出されないと考えられる。29日に行われた南アフリカ戦に向けて招集されたメンバーは21名。さらに、AFC U-23選手権やトゥーロン国際大会に招集されてきたメンバーを含めると、15人の枠に対して倍以上の候補が居ることになる。そこで、今回は招集されるメンバー18名を考察してみた。 ◆オーバーエイジ3名は確定 Getty Images▽まず、前述の通り、FW興梠、DF塩谷、DF藤春のオーバーエイジ3名は確定と見て良いだろう。現状3選手は負傷もしておらず、クラブチームでもプレー。特に塩谷は得点力も発揮するなど好調を維持。興梠も得点を重ねている。手倉森監督も3名には期待を寄せているコメントを残しているだけに、しっかりと戦力として計算されているはずだ。 ◆これまで通りGKは2枠 Getty Images◎櫛引政敏(鹿島アントラーズ) ◎中村航輔(柏レイソル) △杉本大地(徳島ヴォルティス)▽続いて、GKだ。これまでの五輪を見ても、このポジションは2名が選出されている。世代別の日本代表で正守護神の座を守り続けてきたGK櫛引政敏は確定と見て良いだろう。五輪開催のシーズンに清水エスパルスから期限付き移籍で鹿島へと移籍したことでリーグ戦の出場機会はなかったものの、この世代でのポジションを譲ることはなさそうだ。 ▽そして、2人目にはGK中村航輔が入ると見る。昨シーズンはアビスパ福岡で守護神として躍動し、チームのJ1昇格に貢献。今シーズンは柏に復帰すると、守護神の座を掴み、持ち前の反射神経と得意のキックで大きな役割を担う。次点は、櫛引とともにこの世代で招集され続けていたGK杉本大地か。 ◆負傷者続出のディフェンスライン Getty Images◎塩谷司(サンフレッチェ広島)※ ◎藤春廣輝(ガンバ大阪)※ ◎植田直通(鹿島アントラーズ) ◎亀川諒史(アビスパ福岡) ◎室屋成(FC東京) ◯岩波拓也(ヴィッセル神戸) △松原健(アルビレックス新潟) △中谷進之介(柏レイソル) ▲三浦弦太(清水エスパルス) ▲山中亮輔(柏レイソル) ▲三丸拡(サガン鳥栖) ▲ファン・ウェルメスケルケン際(ドルトレヒト)▽AFC U-23選手権で優勝を遂げた後、ディフェンスラインにはケガ人が続出した。第3のセンターバックとして実力をつけてきたDF奈良竜樹(川崎フロンターレ)が骨折により五輪出場を断念することになった。その他、DF室屋成、DF亀川諒史、DF松原健、DF山中亮輔とサイドバックにケガ人が続出。さらに、トゥーロン国際大会では、DF岩波拓也もヒザのじん帯を負傷した。室屋、亀川、松原に関しては実戦に復帰し、29日の南アフリカ戦にも出場。一方で、岩波はトレーニングに復帰しているものの実戦復帰はできておらず、山中もまだ復帰出来ていない状態だ。 ▽手倉森監督は一貫して4バックを採用しているが、オーバーエイジ枠の塩谷はセンターバックと右サイドバック、藤春は左サイドバックとして考えられる。今シーズン、鹿島でも結果を残しているDF植田直通は当確と考えて良い。また、右サイドバックの主力であり、復帰戦でも結果を残した室屋、左サイドバックの亀川も当確と言えるだろう。 ▽焦点が当てられるのは3番手のセンターバックだ。塩谷、植田をセンターバックと考えた場合、順当であれば岩波が選出されるはずだ。トレーニングへの復帰は果たしているものの、実戦復帰はしていない。2日に開幕する明治安田生命J1リーグ・2ndステージからは出場する見込みだが、どこまでコンディションが戻るのか。岩波を予備登録にした場合は、DF中谷進之介、DF三浦弦太らが候補と見る。または、MF遠藤航を3番手のCBに置く可能性もあるだろう。 ◆中盤の残り枠は最大2つか Getty Images◎遠藤航(浦和レッズ) ◎大島僚太(川崎フロンターレ) ◎矢島慎也(ファジアーノ岡山) ◎南野拓実(ザルツブルク) ◯井手口陽介(ガンバ大阪) ◯橋本拳人(FC東京) △原川力(川崎フロンターレ) △野津田岳人(アルビレックス新潟) △豊川雄太(ファジアーノ岡山) ▲喜田拓也(横浜F・マリノス) ▲前田直輝(横浜F・マリノス) ▲伊東純也(柏レイソル)▽中盤に関しては、ほぼメンバーが固まっていると思われる。キャプテンとしてU-23日本代表をけん引してきたMF遠藤航、遠藤不在時にキャプテンを務めるMF大島僚太、10番を託されているMF矢島慎也は当確と見て良いだろう。また、飛び級ながら攻撃面での違いを見せつけているMF南野拓実も入ると見る。 ▽中盤には、ボランチとしてプレーを続けてきたMF原川力、G大阪でも欠かせない存在となり、U-23チームでも頭角を現してきたMF井手口陽介、左足からの強烈なシュートが特徴なMF野津田岳人、ジョーカー的存在で結果を残しているMF豊川雄太、そして南アフリカ戦ではDF登録され、ボランチ以外にサイドバックもこなせるユーティリティ性を持つMF橋本拳人も居る。 ▽守備面を補うのであれば、橋本や井手口、攻撃面であれば野津田、豊川、遠藤や大島の代わりと考えると原川を選びたいところだ。 ◆選考を左右するのは久保の状態次第か Getty Images◎興梠慎三(浦和レッズ)※ ◎中島翔哉(FC東京) ◎浅野拓磨(サンフレッチェ広島) ◎久保裕也(ヤング・ボーイズ) △鈴木武蔵(アルビレックス新潟) △オナイウ阿道(ジェフユナイテッド千葉) ▲富樫敬真(横浜F・マリノス)▽フォワードはオーバーエイジ枠のFW興梠慎三の他、FW浅野拓磨は当確と見る。負傷の影響が心配されたFW中島翔哉も、南アフリカ戦では違いを見せ、自身の存在を存分にアピールした。さらに、ヤング・ボーイズでプレーし、力強さと決定力を身につけたFW久保裕也も当確とする。しかし、久保に関しては負傷の影響が心配だ。久保のコンディションが難しいと判断されれば、FW鈴木武蔵、FWオナイウ阿道が候補となる。 ◆手倉森監督の判断やいかに ▽あくまでも人数に合わせ、メンバーを予想したものであり、手倉森監督がどのような判断を下すかは、1日の14時から行われるメンバー発表会見で明らかになる。「託す人と、託される人」。手倉森監督が、南アフリカ戦に向けた会見で語った言葉だ。 ▽これまで主力としてプレーしてきた選手も、ケガやコンディションの問題で外れる可能性も大いにあることが見えてきたはずだ。どの選手に“託す”のかは、手倉森監督の中にある。運命のメンバー発表は明日。リオ五輪での“メダル獲得”という目標に向けたメンバーは、14時に発表される。 ※…オーバーエイジ、◎…当確、〇…濃厚、△…可能性あり、▲…厳しいか 2016.06.30 20:00 Thu
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【日本代表コラム】“トライ”の成果と浮き彫りになった課題

▽日本代表は、いつになく積極的な立ち上がりを見せ、選手たちが流動的にポジションを変えて攻勢を強めた。アフガニスタン代表戦ではチケットが売れ残っていたものの、シリア代表戦は完売。埼玉スタジアム2002に集まった5万7000人を超す観衆に加え、テレビの前で観戦した人たちも期待感に包まれたスタートとなった。 ▽アフガニスタン代表戦(5-0)で採用した[4-4-2]から、これまでヴァイッド・ハリルホジッチ監督が採用してきた[4-3-3]へとシステムを変更。MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)やFW本田圭佑(ミラン/イタリア)、FW宇佐美貴史(ガンバ大阪)らをスターティングメンバーに戻した。 ▽これまでの予選でやり慣れた形であり、万全を期してのシリア戦だった。結果を見れば5-0で快勝。2試合連続での5得点は評価できるだろう。また、シリア戦のみならず、ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選の全8試合を通じて、一度もネットを揺らされることはなかった。しかし、この試合でも攻守にわたって課題は残された。 ▽まず、攻撃面では、2次予選で奪った27得点のうち、前半に奪ったのはわずかに7得点であり、後半の20得点との差は歴然だ。5-0で快勝したこの2試合も、前半はどちらも1得点。主導権を握り、攻勢をかけ、チャンスを作りながらも仕留め切れないシーンを何度も目にすることとなった。 ▽90分間で行われるサッカーの試合だが、その中に流れは存在する。シリア戦では得点を重ねられなかったことで、前半の終盤には押し込まれるシーンが増えた。後半も、終盤の3ゴールを奪うまでは、幾度となくピンチにさらされた。最終予選であれば、仕留められてしまった可能性が高い。また、W杯本大会であれば、チャンスが訪れる回数すら少なくなる。長年の課題である“決定力”を高める必要性は、この先も続くことになる。 ▽また、守備面では、フィジカルを使った強引な攻撃を受けた際に、ピンチを招くことが散見された。数的同数、または有利な場面でも、フィニッシュまで到達させてしまうことも課題だろう。アグレッシブに守り、イニシアチブを握っている展開では見えてこない課題も、攻め込まれる回数が増えるにつれ、ミスも増え、ピンチも増えた。 ▽特に後半は、GK西川周作(浦和レッズ)の奮闘がなければ、無失点はおろか、白星さえ逃していたかもしれない。相手のミスに助けられた部分も多くあり、決して満足行く内容ではなかった。相手のレベルが上がる最終予選では、この2試合のような展開になることは考えにくい。攻守にわたる精度を高めることが重要となるが、代表としての活動が限られるだけに、必要なのは個々人のクラブでの努力に他ならない。 ▽とは言え、この試合でも“トライ”は成功したと言える。試合後の検査の結果、鼻骨骨折、左眼窩底骨を骨折していたMF山口蛍(ハノーファー/ドイツ)の代わりにボランチの位置に入ったMF原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)は、アフガニスタン戦とは違う役割での起用となった。投入後はしっかりと守備にも参加し、アグレッシブなプレーを見せ、最後は得点まで奪ってみせた。守備面での貢献は多く期待できないが、前への推進力は間違いなく増大し、カウンターでも最前線まで飛び出すなど、3列目の選手として新たなオプションを見せてくれた。 ▽課題は残ったものの、日本が2次予選を8戦無敗で終え、無失点で突破したことは評価されるべきだろう。もちろん、過信も慢心もいけないことだが、最終予選に向けた第2段階のスタートとしては上出来と言える。最終予選スタートまで半年。今後は、代表候補となる選手の各クラブでのプレーに注目だ。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.03.30 19:30 Wed
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【日本代表コラム】“トライ”が奏功し収穫が多かった第2段階初戦

▽第2段階の第一歩を踏み出した日本代表は、アフガニスタン代表相手に後半の4ゴールなどで5-0と快勝。グループ首位をしっかりとキープした。 ▽今予選において、敵地でのアフガニスタン戦(6-0)に次ぐスコアで勝利を収めた日本は、最大の目標である勝利を挙げるとともに、様々な面で第2段階を歩み出したことを示した。 ▽これまでハリルホジッチ監督は、[4-2-3-1]をベースに、[4-3-3]、または中盤をフラットにする[4-4-2]のフォーメーションで戦ってきた。しかし、アフガニスタン戦は中盤をダイヤモンド型にする[4-4-2]でスタート。アンカーにMF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、トップ下にMF清武弘嗣(ハノーファー/ドイツ)、右にMF原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、左にMF柏木陽介(浦和レッズ)を配置した。 ▽「違うことにトライしたい」という前日会見の言葉通り、これまでに見せなかったシステムに加え、清武、原口、柏木と、これまで主力としてプレーしていなかった3選手を起用。疲労を考慮して、MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)、FW本田圭佑(ミラン/イタリア)をベンチスタートとさせたが、“トライ”した中盤は上手く機能する部分が多く見られた。 ▽特筆すべきは、トップ下に入った清武だ。ハノーファーでもチームの結果を左右する働きを見せている通り、この試合でも1ゴール2アシストと勝利に貢献。2トップに入ったFW岡崎慎司(レスター・シティ/イングランド)、FW金崎夢生(鹿島アントラーズ)との間合いを上手く取り、近くに寄ればダイレクトでのパス交換、下がって受けた際には縦パス、スルーパスを送るなど、攻撃を牽引していた。また、得意のセットプレーからも良質なボールを送り続けるなど、及第点以上の活躍を見せた。 ▽左サイドでプレーした柏木は、前半こそDF長友佑都(インテル/イタリア)との息が合わず、なかなか良い形を作ることができなかったが、後半は長友との関係が改善され、多くのチャンスを生み出していた。また、右サイドでプレーした原口は、クロスバー直撃のシュートを放つなど攻撃面でアクセントを付ける役割を担っていた一方で、守備でも奮闘。また、強引なプレーが減り、右サイドバックのDF酒井宏樹(ハノーファー/ドイツ)のサポートを行うなど、ブンデスリーガでの好調を維持したパフォーマンスを見せていた。 ▽最前線も、これまでの1トップから2トップに変更。岡崎と金崎を並べた結果、トップ下の清武を含めた3選手が近い距離でプレーすることとなった。スペースがない局面でもダイレクトパス交換を見せていた。清武の効果的な縦パスから岡崎が華麗に決めた先制ゴールや、金崎のダイレクトの浮き球を清武が決めた2点目は、3人の距離感が生んだものとも言えるだろう。 ▽新たな可能性で言えば、FWハーフナー・マイク(ADO/オランダ)も一定のパフォーマンスを見せた。左サイドからの清武のクロスを、高さを生かして落とし、金崎のゴールをアシスト。また、不安定であった相手守備陣を引き連れることもできていた。引いて守る相手にはミドルシュートが有効と言われるが、ハーフナーほどの高さがあれば、新たな武器にもなる。アジアを勝ち抜く上では、オプションとして機能できるところをシリア戦でも見せてもらいたい。 ▽なお、他グループの結果により、各組2位チームの上位4チームに入ることが確定したため、日本代表はロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選進出を決めた。ひとまず、目標は達成した。変化をもたらせ、結果を残した第2段階の日本代表。29日のシリア戦ではどの様な変化を見せてくれるのか、期待したい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.03.25 19:00 Fri
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【日本代表コラム】アピールは!?

▽シンガポール代表戦に先発したメンバーから8人を入れ替えて臨んだカンボジア代表戦。FW南野に与えられた時間は短かったが、最終的にはGKの2選手(六反と林)とDF丸山を除く20名に出場機会が与えられた2試合だった。 ▽メンバーを大幅に入れ替えることでリスクが生じる可能性も考えられるが、故にFW岡崎やMF香川に加え、シンガポール戦にも出場していたDF吉田、DF長友といった経験のある選手を起用したはずだ。なにより、それだけのメンバーを入れ替えても勝てる相手だと考えたのだろう。 ▽だからこそ、来年から始まる3次(最終)予選を前に、公式戦の中でより多くの選手を試したはず。個人的には、勝つことは当然のノルマで、あとはチャンスを与えられた選手たちがどれだけアピールできるのかという部分に注目してカンボジア戦を見ていた。 ▽そういった観点で見ると、中盤での起用となり、前半のみの出場に留まったMF遠藤にとっては、悔しい試合になったことだろう。所属クラブではセンターバックの一角を担う選手であり、カンボジアのように引いた相手よりは、より拮抗した相手との試合でこそ良さが発揮されるタイプではある。MF山口という、やや似たタイプの選手と並んでしまったという見方もあるが、もう1つ上のステップにいくには、判断力と展開力を磨いていく必要があるだろう。 ▽前述したように、所属クラブとは異なるポジションでの起用というエクスキューズはあるが、U-23代表でも基本的には中盤の低い位置で出場している。課されている役割は異なるが、判断力と展開力を磨いておいて損はない。来年1月にはリオ五輪のアジア最終予選も始まる。残された期間は短いが、ボールを受ける前の予測やイメージといった判断力の部分は十分に改善できると思う。 ▽一方、アピールに成功したのは、遠藤との交代で投入されたMF柏木。シンガポール戦でも組み立ての部分で存在感を示していたが、ボールを受けてからの素早い判断と正確な裏へのボールでカンボジアの守備を揺さぶり、攻撃のリズムを作りつつ好機を演出した。 ▽特筆すべきは、距離感だろう。ボールの出し手との距離が近すぎず、遠すぎず、良い距離を保ってボールを引き出し、良い距離感でパスを出していた。それがリズムを生みだしていたし、前線との呼吸も合っていた。そして、アピールに成功したことで、今後も継続してチャンスを得ることができるはず。あとは、球際などでより激しさが求められる最終予選でどこまで通用するのか。そこを楽しみにしたい。 《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》 2015.11.18 12:55 Wed
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【日本代表コラム】ポジティブな試合

▽新しいユニフォームに袖を通した選手たちがナショナル・スタジアムのピッチに姿を見せる。しかし、そこにはブンデスリーガで好調を維持する香川真司の姿はなく、プレミアの地で奮闘する岡崎慎司や、J2でプレーしながら、その能力を高く評価されている山口蛍の姿もなかった。その替わりに、センターフォワード、トップ下、ボランチのセンターラインには、金崎夢生、清武弘嗣、柏木陽介の3選手が起用され、ハリルホジッチ体制下での初スタメンを飾った。 ▽金崎はボックス内で存在感を示し、チームにとって貴重な先制点を記録。その金崎と良い距離感を保っていた清武も、ボックス近辺に顔を出して攻撃のアクセントとなり、2点目に絡んだ。そして柏木は期待されたビルドアップでチームに息吹を与え、守備の部分でも奮闘した。疲れの残るメンバーを休ませながら、替わりに起用された選手たちが結果を残しての勝利。チームとしての幅を広げつつ、そこに競争意識も生まれる。そういった意味では、理想的な試合だった。 ▽もちろん、チャンスの数や試合の流れを考えれば、もっと得点を奪うこともできたはずだ。イージーなミスも多かったが、ピッチコンディションや暑さといった点を考慮すれば、致し方のない部分もある。ただ、レベルの上がる3次(最終)予選などを考えれば、諸手を挙げて喜べるような内容ではなかったことも事実だ。 ▽それでも個人的には、この試合の課題だと考えていた攻撃のバリエーション、早い時間帯の得点、初先発組のアピールといった部分をポジティブに評価したい。クオリティの部分はまだまだ改善の余地はあるが、攻撃のバリエーションはこれまでの試合と比べても格段に増えていたし、その引き出しを開けたのは、清武や柏木といった初先発組だった。その結果、20分という比較的早い時間帯にゴールを挙げ、畳み掛けるように加点。ゴールレスドローに終わったホームゲームに比べると、余裕を持って試合を進めることができた。 ▽しかし、このまま3次(最終)予選に進出となれば、より厳しい戦いが待ち受けている。そこを見据えつつ、ハリルホジッチ監督には今後も状態の良い選手を起用しながらチームに刺激を与え、メンバー選考や戦い方の幅を広げていってもらいたい。17日のカンボジア代表戦は、おそらく数名のメンバーが入れ替わることだろう。出場機会の少ない選手はもちろんのこと、今回はベンチスタートとなった香川や岡崎の奮起にも期待したい。 《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》 2015.11.13 12:10 Fri
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【日本代表コラム】気になった2つのこと

▽残念ながら、試合の入り方、試合運びという面で、シリア代表戦の反省を生かすことはできなかった。キックオフ直後からバタバタしたプレーが多く、球際で強さを見せるイラン代表に苦戦を強いられる。そして、両サイドの推進力を駆使してボールを持ち上がる相手に押し込まれていった。 ▽その後、ピッチをワイドに使いながらイランの守備を広げてスペースを作り、流れを自分たちに引き寄せた時間帯もあったが、DF米倉の不用意なバックパスからDF吉田がイエローカードをもらったプレーを機に再び流れは変わった。そして前半のアディショナルタイム、足がもつれてしまったとはいえ、相手がゴールに背を向けて2対1という状況を作っていたなかでPKを献上し、先取点を与えてしまった。 ▽試合が落ち着かなかった要因の1つは、プレッシャーのかかる中でも足元でつなごうとしすぎることだと思う。正確には、何の狙いも持たずに足元へパスを出しすぎているということ。出せるところに出しているだけの状態が続いた。その結果、パスの出し手と受け手という2者間でのパス交換となり、相手にとって狙いやすい状況が生まれてしまう。そのような状況を打開するには、3人目、4人目が連動し、ワンタッチプレーなどでマークを外していくことが必要だ。要するに、意図のあるパス回しが大事になってくる。 ▽さらに気になったことがもう1つ。それは、サイドバックの使い方だ。特に後半は、ボランチのMF長谷部やMF柴崎がボールを持った際に、サイドバックがスピードに乗って裏に走り込む形が何度かあった。しかし、蹴れるタイミングでも裏のスペースにパスが送られることは少なく、相手の守備ブロックの前でパスコースを探し、横パスで逃げるシーンが多く見られた。あのような場面では、積極的にチャレンジしてもらいたい。カットされたり、ボールが長くなったりしても守備からやり直すことができ、パスが通れば相手守備陣はゴールに向かいながらの守備を強いられる。 ▽サイドバックはスペースに走り込んでパスを受けた場合にこそ、効果的なプレーが可能となるポジションだ。しかし、ここ最近の試合では相手の守備ブロックの手前でパスを受け、プレッシャーを受けてセンターバックに戻すか、ボランチにボールを預けてやり直す形が多く見られる。その選択が悪いわけではないが、時にはシンプルな裏への走り込みやワンツーを狙うべきだと思う。チャレンジしなければ何も起こらない。プレーの変化が選択肢を増やすことにもつながり、様々な状況に対応するための礎となるに違いない。 《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》 2015.10.14 11:00 Wed
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【日本代表コラム】前後半の変化

▽蒸し暑い気候、長めの芝生といった環境の中、シリア代表との首位攻防戦を制して得た勝ち点3と、グループ首位の座。中立地での試合ということを差し引いても、悪くない結果だったと言えるだろう。特に前半は予想以上にアグレッシブなシリアの出足を受け、思うように試合を進めることができなかったが、ゴールレスのまま迎えた後半に戦い方を変えて3ゴールを奪うことに成功した。 ▽内容の良くなかった前半で気になったのは、最終ラインから中盤に入るパス。比較的プレッシャーの少ない状況でボールを持つことが多かった最終ラインだったが、そこからマークを受けている中盤に縦パスを入れて、パスの出し手が再びバックパス(リターンパス)を受ける。といったプレーの繰り返しが散見された。そして、そのパスを相手に狙われてカウンターを受けそうになる場面も何度かあった。 ▽前述したように、ピンチになりかけた場面は、基本的には自分たちのミス絡みから。相手のレベルが高くないからこそ、ボールをつなぐ意識が高まった部分もあったとは思うが、レベルの高い相手であれば、致命的なプレーになっていた可能性も十分に考えられる。もちろん、これはパスの出し手の問題だけではない。暑さという考慮すべき問題もあったが、受け手の動き出しといった部分も関係してくるため、チーム全体の問題とも言える。 ▽しかし、迎えた後半に相手の出方を逆手にとって先手を奪った。54分、自陣内でボールを回収すると、素早く前を向いた長谷部が右サイドのスペースに走り込む岡崎へロングパスをフィード。相手の裏を突いてパスを受けた岡崎がボックス内で倒されて得たPKを本田が冷静に決めた。シリアは、縦パスを入れた相手には強く当たりにくるが、逆に裏を狙うボールへの対応には前半から曖昧な部分があり、そこをうまく突くことができたと言える。給水タイムなどの時間もあっただけに、前半から狙いを修正することができればベストだったかもしれないが、良くない中でも戦い方を修正して結果を残せたことは大きい。 ▽その後は、シリアの運動量が落ちたこともあり、中盤の両サイドを中央寄りでプレーさせて選手間の距離を修正した日本が主導権を握る展開が続く。そして、セットプレーの流れから香川の個人技と岡崎の動き出しによって加点。終盤には、途中出場の清武と宇佐美が本田と絡み、そこから生まれた宇佐美のゴールで勝利を決定づけた。 ▽特に攻撃面に関しては、まだまだ改善の余地はあるものの、最も重要だった“結果”を手にすることはできた。次は親善試合ながらアウェイでのイラン戦だ。最終予選を見据えた場合、ベストメンバーで試合に臨み、現時点の力を図ることもできるが、指揮官は出場機会の少ない選手を起用する可能性も示唆している。果たして、どのようなメンバーで臨むのか――。ベストメンバーであっても、そうでなくても、それぞれにとって今後に向けた試金石となることは間違いないだろう。 《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》 2015.10.09 13:00 Fri
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【日本代表コラム】改善した左と生まれた幅

▽前日会見で「2つのポジションで先発が決まっていない」と語っていたハリルホジッチ監督のコメントを受け、多くの人が宇佐美の先発を予想しただろう。そういった意味で原口の起用は驚きだったが、その意図は明白だった。そして、原口も期待に応えるパフォーマンスを披露し、結果と内容を両立させることに成功した。 ▽先日のカンボジア代表戦と今回のアフガニスタン代表戦で変わったことと言えば、まずは左サイドに原口が入ったこと。その原口は序盤からワイドに開いてボールを受け、そこからの仕掛けで攻撃の起点となった。そこが、カンボジア戦では早いタイミングでボックス内に入っていた武藤と異なるところ。件のカンボジア戦では、相手が5バックだったこともあるが、武藤や長友が早いタイミングで中に入りすぎたためにボックス内が渋滞し、クロスを簡単に跳ね返される要因の1つになっていた。 ▽しかし、今回は原口がサイドに開いてボールを受けることで相手の守備ブロックも広がり、そこからスペースの空いたバイタルエリアに侵入することで効果的な攻撃を仕掛けることができた。実際、カットインから香川とのワンツーを狙ったことで結果的にDFのマークを引きつけることになり、その原口の動きを生かした香川が素早い反転からミドルシュートを突き刺して先制した。また、原口は中にスペースがないと判断すれば逆サイドにボールを展開し、カットインばかりでなく縦にも仕掛けるなど、攻撃の幅を広げることに一役買っていた。そして2点目も、原口の縦への仕掛けによって得たCKの流れから生まれた。 ▽その他にも、カンボジア戦ではやや控えめだった森重が、積極的に持ち上がってミスを恐れずに両サイドの裏に長いボールを入れていた。精度を欠く部分もあったが、こういったボールを多用したことでアフガニスタンの守備ブロックは広がり、中央をより生かしやすい状況が生まれたように思う。もちろん、前述の2人だけでなく、2得点の香川も動きに躍動感があったし、出足の早さと球際の強さ、そして真骨頂でもある機を見た攻撃参加で得点にも絡んだ山口も存在感を示していた。 ▽また、攻撃のバリエーションという意味では、セットプレーの形にも意図が感じられた。ニアでボールをすらし、中央とファーサイドに配した選手がタイミングをずらして入っていく形や、ボックス中央にスペースを作り、その空いたスペースを生かすサインプレーなど、いくつかの形を試していた。また、試したと言えば、練習でもやったことのない原口の右サイドバック起用もあった。ただ、彼に求められている役割を考えれば、もっと高い位置をとり続けても良かったように思う。 ▽最終的に6-0という大差で勝利を収めたが、対戦国のレベルを考えれば大勝して当然の相手であり、当然の結果とも言える。やはり、問題は次のシリア代表戦。シリアはここまで3連勝で、勝ち点でも得失点差でも日本を上回っている。すでに引き分けが1つある日本としては、直接対決で優位に立たなければいけない。シリアとの過去の対戦を振り返っても楽な試合にはならないだろう。それでも、今回の一戦のようにピッチをワイドに使ってコンビネーションを交える形や、素早い攻守の切り替えを見せることができれば、結果はついてくるはずだ。 《超ワールドサッカー編集部・平野由倫》 2015.09.09 11:50 Wed
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