コラム

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【東本貢司のFCUK!】ドイツに「追いつけ追い越せ」?

▽日本語で「司令塔」、英語なら「プレーメイカー」。この“肩書”に相当するプレーヤーが複数いる、それもポジションを問わず4人、5人もーーーこの4、5年、主にヨーロッパのクラブフットボールシーンを俯瞰してきて、これこそが現代フットボールの最も顕著な特徴ではないかと思っている。つまり、攻撃態勢に入る際などでほぼ決まってボールが集まる“起点プレーヤー”が、大げさに言えばフィールドのあちこちにいて敵に息つく暇を与えない。先ほど終了したコンフェデレーションカップ、チリ対ドイツを見届けて、そのことを改めて再確認する思いだ。それぞれ攻守の“性格的”スタイルは違うとしても、誰が、どこから、キラー効果満点の攻撃の起点を演じるのか、高見の視点(放送メインカメラの位置)からでも、予測がつきにくい。無論、ここではショート、ロング、いずれのパスワークに主体を置くなどという“悠長”な議論は通じない。文字通りの臨機応変。それを効率よく使い分けられなくてはもはや時代遅れの感も。それでこそ「チーム一体、一丸」が充当する。当然「体力、走力が落ちる落ちない」などの外野解説も時代遅れなのだ。 ▽さすがは二期連続南米チャンピオンと世界チャンピオンーーーと形容するのは当たり前のようでいて、実は「二流、いや素人解説の象徴的文言」にすら聞こえてしまうのは、ドイツがこの大会にぶつけた陣容が「え?」と思うくらい「若い」から・・・・ではない。相手にサンチェスがいるのだから、エジルやメルテザッカーがいたら面白い(解説の際の話ネタにもなる)のに、というのもピント外れ。確かにヨアヒム・レーヴは明らかに「若返り、世代交代」を意識しているように見えるが、ゲームをじっくり追っていけば、いかにこの「若い」チームの組織力とコミュニケーションの習熟度が高いかがよくわかるはずだ。一つ気づいたこと。中盤の運動量の多さと目まぐるしいポジションチェンジ(これは“百戦錬磨”のチリも同じ)のせいで見極めにくいかもしれないが、ドイツは実に柔軟な「3バック」を敷いているように受け取れたのだがどうだろうか。思えば、このドイツに(インスピレーションの点で見劣りするとしても)通じるパフォーマンスで、結果はともかく善戦中のニュージーランドも3バックなのだが、ひょっとしてこれは静かなブームなのか? ▽ふと、今年、足並みがよれかけたシーズン半ば過ぎから3バックに切り替えて復調気運に乗ったアーセナルのことが頭をよぎる。それに確か、プレミアの半数近いチームでも同じ“傾向と対策”が見え隠れしていた。しかも、そこには従来の「中盤を厚くする」とかの数的理論を超えた何か(の新機軸)を感じる。物理的には、足の速い両サイドバック(→ウィングバック)の攻撃参加を生かし、アンカー(中盤の底のいわゆるホールディングプレーヤー)が3バックディフェンスの“前面の盾”を役割をより意識する、という筋になりそうだ。戦術理論的にはそんな辺りなのだろうが、いずれにせよ、より柔軟に幅広くどこからでも、という、攻守のオプション増幅効果が念頭にあるのだと思う。そうなると、快速両ウイングバックとポジションにとらわれないスキルを持つアンカーがいるといないとで違いが歴然としてくるだろう。その点で、現在のチリと“若返った”ドイツはなるほど、一日の長がありそうだ。裏を返せば、彼らに対抗するには「どこをどう」強化すべきかも見えてくる。かなり短絡的見方になるが、突出したタレントの豊富なアルゼンチンがもう一つ突き抜けられないのは、やはり個人技主体のチーム構成になっているからでは? ▽話を少々巻き戻す。これだけ“次世代型”ドイツが急速に完成に近づいているとしたとき、我らがイングランドの場合はどうなのか。折しも、U21ワールドカップで歴史的優勝を遂げ、同時期に行われていたU20トゥーロントーナメントでも優勝、さらに現在進行中のU21ユーロでラスト4(準決勝)進出しているからには、十分に対抗し得る? 以前にも述べたように、U21代表監督のギャレス・サウスゲイトを昇格させた辺りにも、FA(イングランド協会)の明らかなヴィジョンがうかがえることだし? あえて(贔屓目の)結論から言えば、少なくとも希望はある、いや、膨らむ。無論、がらりと入れ替えるのは無謀だろうし、詳細は後に譲るが欠点もまだ見える。が、チームの一体感、“ツーカー度”を重視するべきなら、二人や三人程度の“抜擢”ではおそらく逆効果。ドイツだって来夏の本番では当然、エジルやノイアー、ケディーラ辺りを外すはずもなかろう。ならイングランドも・・・・おや、存在が怪しくなってきたルーニーを除けば、すでに相当若返っているじゃないか。ケイン、アリ、ダイアー、スターリング、ラシュフォード、ストーンズそしてひょっとしたらピックフォード! これはしたり。どうやらドイツの先を行っている? ▽ところが、哀しいかな、さきほど目撃したドイツほどの底力はまだ感じられない、もしくは、証明されるまでに至っていない。なぜか。上にあげた中の数名を除いて、肝心のリーグで必ずしも定位置を確保していないからだ。言うまでもなく、U21世界王者のメンバーから繰り上げられる誰かがいたとしても、経験はもっと浅い。その点を、母国の識者はこぞって指摘し、不安視する。有力外国人に頼らず“彼ら”をもっと実戦に起用せよ、と叫んでみたところで、現実的に“聞く耳”はまだまだか細い。スパーズの台頭が少しは刺激になった節もなくはないが、U21世代を確実なトップ戦力とみなす傾向が見えてきているのは、有力クラブではそのスパーズとエヴァートンくらい。皮肉なことに、ドイツの若手台頭を陰に陽に肌で感じてきているはずのユルゲン・クロップには、現時点ではまだ希望的観測ではあるが、リヴァプールに国産の若い血を吹き込もうとする“意気”のようなものを感じはするのだが・・・・。とどのつまりはサウスゲイトの決断次第。この際、ロシアW杯を「テスト」と割り切るくらいの冒険をしてみる価値はあるはずだ、2020年を照準に!【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.23 10:14 Fri
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【東本貢司のFCUK!】プロアスリートの熱き友情

▽済州-浦和戦終了直後の“事件”がまだ尾を引いている。ただ、奇跡的という飾り文句がつく逆転劇といえばあのバルセロナ-パリSG戦がまだ記憶に新しいところだが、そこで何等かの“穏やかならざる醜態”が演じられたわけでもない。それよりも“数字的に見劣りする”このゲームの結末に際して、予期せぬ異常なヒートアップと激高した暴力が噴出してしまった裏には、やはり歴史的な“民族敵対”の意識がなかったとはいえまい。似たような感情の迸りは、ロイ・キーンが現役時代のマン・ユナイテッドとアーセナルの間にもあったが、こちらはもちろん民族云々とは別次元の話である。そもそも、当事者のプレーヤー同士が我を忘れたように試合直後に怒りと悔しさをぶつけ合うことなど、言われるほど多くはない。ラグビーでいう「ノーサイド」の精神はフットボールとて本質的に違いはない。特に同じスポーツのピッチにおいて切磋琢磨する個人間の敬意、友情、仲間意識は、敵味方を問わず強く深い。それが嘘偽りのない(特に)プロアスリートの真実である。 ▽例えば、ジョーイ・バートン。これまで数々の“悪名”を轟かせてきたイングランド有数の悪童だが、実はプレーヤー仲間の世界では意外なほど人望があるらしい。最近のエピソードで印象深いのは、後輩のロス・バークリーに対するいかにもプロらしい思いやりと接し方だ。ひょっとしてご存知ない方もいるだろうか、あるリヴァプールのベテランジャーナリストが唐突にバークリーの血筋に絡んで悪質な人種差別的揶揄記事を書いた事件。父型の祖父がナイジェリア人だというだけで、この記者はバークリーを「ゴリラ」と同類に扱い、プレーヤーとしても下劣だと言わんばかりにこきおろしたのだ。無論のこと、多方面から批判が相次ぎ、しばらくして当のジャーナリストは所属メディアから解雇された。バートンも口汚く罵りの言葉をツイッターにアップしたが、そこから先が一味違う。奇しくもそれからまもなく巡ってきたエヴァートン-バーンリー戦で、バートンはバークリーの厳しいマンマークに徹し、反発の闘志を掻き立てさせるかのごとく、プロとしての“激励”を施したのである。筆者はそれを見て本心で感動した。おそらくはバークリー本人も。 ▽実に残念なことに、このことに気づいて指摘した記事は筆者の知る限りどこにもなかった。なぜだろうか。おそらくは、バークリーが被った謂れのない侮辱を蒸し返すこともない、と自粛したのかもしれない。そして、バートンのプレーもポジション柄、珍しくもないとスルーした・・・・。だが筆者の感触は少々違う。つまり、ジョーイ・バートンという人格を多くの人がまだ(ジャーナリズム界を含めて)誤解したままなのではないか、と。平たく言えば、バートンは“嫌われ者”で彼を美化したような記事やコメントをものするのに、多くの人々がためらいを感じている・・・・。以前にも別の機会に触れたことだが、バートンは知られざる努力家であり、その範囲は実際のプレーやスキルに限られていない。数年前のオフには大学の講義を受講したりしながら、フットボール理論の研究に努め、同時にコーチングライセンス取得の勉強も始めている。あの面構えで類を見ないインテリ志向なのだ。このような範疇の出来事について、かの国ではその途上でむやみに持ち上げたりしない。“成果”もしくはその現実的兆候を確認してから評価の素材として取り上げる。もちろんジョーイ・バートンという男の性格もあろう。が、筆者は期待していいと思っている。 ▽どんな世界、業界でもそうだが、人間関係において「性格」が及ぼす効果は非常に大きい。端的に言えば「とにかく気に入らない、虫の好かないヤツ」は、どんなに成果を上げ、他人のために尽くしても、評価される度合いが、あるいは“スピード”が落ちてしまう。もちろん、そうなってしまうのは不幸なことであり、我々もそうあってはならないと肝に銘じるべきだ。逆に、俗にいう「気のいいヤツ」はそれだけでぐんと得をする。性別を問わず「愛される人格」とは、一緒にいるだけで和み、前向きにさせてくれる。先日、中国スーパーリーグ2部のクラブに所属する、元ニューカッスルなどでプレーしたコートジヴォワール代表、シャイク・ティオテが練習中に昏倒して急死した。この世界でごくまれに起きる予期せぬ不幸だったが、その死は想像を絶するレベルで悲しみの輪を広げた。その理由は、ティオテがまれにみる「いいヤツ」だったからである。事実、数多の同輩、特に彼と一度でも“同じ釜の飯を食った”経験のある元同僚から発せられた悲嘆と追悼と言葉は、若くして逝った者に対して通常捧げられる“決まり文句”にはない、真実の響きを感じる。 ▽ベルギー、アンデルレヒトでチームメイトだったヴァンサン・コンパニー(マン・シティー)は「これまで出会った中で最高に気立てが良く、最高にタフな友人を失ってしまった」と天を仰ぎ、ニューカッスルで肩を並べてプレーしたパピス・シセは「おやすみ、兄弟。もう会えないなんて信じられない」と言葉を失った。他にも、現レスターのダニー・シンプソン:「本当に辛い。君と知り合えたことを神に感謝する」、現ニューカッスル監督のラファ・ベニテス:「本物のプロにして常に全力を惜しまなかった以上に、人としてすばらしい男だった」、オランダのトゥウェンテでティオテを擁して史上初のリーグ優勝を遂げたスティーヴ・マクラーレン:「シェイク・ティオテの笑顔は、フットボール界一すばらしかった」、同チームメイトだったシエム・デ・ヨンク:「ドレッシングルームで彼と一緒にいるだけで楽しい気分になれた。友よ、安らかに眠れ」と、枚挙の暇もない。もちろん中国のチームメイトも彼の大ファンだったとか。すでに近く彼の追悼試合が行われることも決まっている。史上有数の「いいヤツ」の魂に捧げんために。ただ、よりによってそんな「いいヤツ」が早逝してしまう、残酷な理不尽さも恨めしく思わずにはいられない。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.16 13:16 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ヤングライオンズ2017年夏の乱

▽韓国で行われているU20ワールドカップにて、イングランドは同大会史上初めて決勝に進出した。昨夜の準決勝でイタリアを下した戦いぶりには、少なからず近い将来をまぶしく照らす手応えと興奮がにじみ出ていたようで、ギャリー・リネカー、フィリップ・ネヴィルらから届いた賞賛のコメントも、いつになく“簡潔で控え目”な、どこか込み上げてくる喜びをあえてぐっと抑えつけているような響きを感じてしまう。まだ「新たな黄金世代」と持ち上げるのは気が早すぎるとしても、きっと単なる快勝で終わらない底深い印象をもたらしたからだろう。チームメンバーの現所属をざっと眺めて目立つのは、エヴァートン、チェルシー、ニューカッスル、リヴァプール。クーマンの積極的な若手起用が進むエヴァートンや、晴れて復活昇格を果たしたニューカッスルの来シーズン、彼らがプレミアで躍動する機会もそこそこ期待できそうだが、大物感で突出して一気のブレークにありそうなのは大会直前にチェルシーからリヴァプールへの移籍が内定したドミニク・ソランキーだ。 ▽「ソランキー」と書いたがこれは英語読み。フルネームはドミニク・アヨデレ・「ソランケ」=ミッチェル、身長185センチのFW。チェルシー監督時代に彼を見止めたジョゼ・モウリーニョは「ドミニクは間違いなく将来のイングランド代表、それもエースに育つめったにない逸材」と褒めちぎっていたらしい。そんなホープをチェルシーが手放してしまったのは、アントニオ・コンテにそこまで見極める余裕がなかったからなのか・・・・。また、モウリーニョはモウリーニョで、この突然のリヴァプール移籍に舌打ちしている? そして、ユルゲン・クロップの、イングランドにおけるリクルートネットワークは想像を越えて目敏いのかも・・・・。いやいや、まだ煽り立てるのはそれこそ気が早い。当面はクロップの腹一つ、エヴァートンのトム・デイヴィーズばりに使われてこそである。とはいえ、このU20W杯がソランキーの株を上げたのは紛れもない事実で、準々決勝では貴重なアシスト、イタリア戦では面目躍如の2ゴール(同点弾と勝ち越し)、存在感は他を圧している。俊足でスキルも柔軟、左右ウイング、トップ下もできるモダンアタッカーの資質も十分だ。 ▽ソランキーの話ばかりでは礼を失するというもの。せめてあと二人くらいは持ち上げておこう。まずはアデモラ・ルックマン。チャールトンのアカデミー出身。すでに先シーズン、エヴァートンのファーストチーム入りして数試合出場を経験している。デビュー戦、マン・シティーを4-0で粉砕したメモリアルゲームで4点目を決めたのはまだ記憶に新しい。もう一人のリヴァプール所属シェイ・オジョは、ミルトン・キーンズ・ドンズのアカデミーを経て2011年11月11日(!)、チェルシーを含む有力クラブ入り乱れての争奪戦を制したリヴァプールの一員となり、昨年3月にプレミアデビューを果たしている。順調に運べば、いつの日かこの19歳トリオが居並ぶスリーライオンズの前線は、ちょっとした見ものとして衆目を集めるに違いない。U20チームの監督、ポール・シンプソン(マン・シティー、ダービーなどでウインガー)は「あいつらが(今大会の)優勝トロフィーを掲げる様子が今から目に浮かぶよう。それだけの実力とオーラがある」とやや浮かれすぎ気味に「これほどの素材が揃ったのはかつて記憶にない。とんでもなく楽しみだ」と手放しだ。 ▽実はこれに先立って、現在開催中のトゥーロン・トーナメントでも、イングランドは首尾よく決勝にコマを進めている。明日10日に対決するのは準決勝でチェコを退けたアフリカの雄、アイヴォリーコースト。ヤングライオンズのエースはレスター所属のハーヴィー・バーンズで、同僚のジョージ・ハーストと仲良くここまで4得点をマーク。この二人も今後、要注目だ。ちなみに、日本も参加していて同じグループAに入り、キューバ、アンゴラと引き分け、イングランドに1-2で敗れた。また、“開催国”のフランスはアイヴォリーコーストと同じグループBで3位敗退、もう一つのグループCではブラジルがスコットランドに敗れ、そのスコットランドをイングランドが準決勝で下している。各国の詳しい状況がもう一つ定かでないため、実力および将来性などを測るわけにはいかないが、現21歳以下レベルでの戦力層と勝負強さにおいて、ヤングライオンズは少なくとも世界トップクラスにあると言えるだろう。そこからどれだけ“成長”が望めるのか楽しみにしたい。 ▽なお、最新のニューズによると、マン・ユナイテッドがズラタン・イブラヒモヴィッチとの契約更新を見送る公算大とか。こうなるといよいよ、レアルのアラヴァロ・モラタ獲得へまっしぐら? また、レスターではクレイグ・シェイクスピアの正式監督就任が発表された。マーレズ(アーセナル?)に続いてヴァーディー(エヴァートン?)の退団も噂されているが、チルウェルや上記のバーンズを中心にあえて若手主軸に切り替えていくのか、それとも、あっと驚く大物リクルートに乗り出すか(チャンピオンズ参入で資金の方はそこそこ“がんばれる”)。意外に、オフの台風の目の役割はレスター辺りが演じることになるのかもしれない。あとはムバッパとラカゼットの仏大物ストライカーコンビ、その行方、はたまたルカクはやはりチェルシー入りなのか、バークリーはどうする、そしてルーニーの去就・・・・気になること満載の2017年夏の乱。うまく収まればいいのだが・・・・。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.09 11:40 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ヴェンゲル:Time For Change

▽彼ははっきりと岐路に立っている。ウェイン・ルーニーはジョゼ・モウリーニョととっくり話し合う必要がある。それもできるだけ早く。このまま出番の増える見込みがなかろうと「ユナイテッドのルーニー」でキャリアを終えるのか、それとも改めてレギュラーポジションを争える新天地でもう一花咲かせるか―――腹を決めるために。サウスゲイト・イングランド代表監督は事実上、後者を明瞭に推奨している。その場合、自ら示唆した「他に選択肢はあり得ない」候補地、エヴァートンのクーマン監督は、早くから歓迎の意を表している。シーズン最終戦、ユナイテッドのキャプテンマークをつけて先発したルーニーに全盛期の面影などなく、動きに精彩を欠き、それどころかキック一つにももどかしいほど力強さが感じられなかった。ゲーム終了間近、16歳の超新星アンヘル・ゴメスと交代した瞬間は、切ないほど映画のワンシーンさながらに目に焼き付いた。筆者はそれをモウリーニョの大いなる親心、メッセージと受け取ったのだが・・・・「さあどうする、残りたいのならそれでいい。あるいはこれを引き時のサインと受け止めるどうかはすべて君次第だ」 ▽もう一つの重大な「to be or not to be」は、筆者の予想通りに一昨日30日、決着した。アーセン・ヴェンゲル、アーセナル監督として続投の契約更新。「2年」は諸々の状況を考えて妥当な線だろう(正式発表は昨日)。ただ、この件については一言申し添えておきたい。なにゆえ、ヴェンゲルは自らの去就問題をシーズン最終戦(FAカップ決勝)後まで引き延ばしたのか。自身、その「不確かさ」がチームパフォーマンスにも影響してきたと認めながらもである。対チェルシー・FAカップ決勝の前日、彼はいささか唐突に不快感を口にした。「礼を失してはいないか」。もちろん、それが直接向かう先はこの数か月間“WEXIT”(英国のEU脱退:BREXITにちなんだ「ヴェンゲルの退場」)を盛んにアジテートしてきた一部サポーターたちだったろう。悲しかった。“彼ら”は何もわかってくれていなかった、アーセン・ヴェンゲルという指導者がそれまでのアーセナルをいかに変え、ひいては、いかにイングランドのフットボール全体に“革命”をもたらしたかについて。ヴェンゲルは今一度“彼ら”にそれを思い起こしてほしかったに違いない。 ▽「革命」とは何か。こう問われてすぐに思い当たる人は相当のプレミア通・・・・というよりも、ヴェンゲル到来以前から少なくとも今世紀に入って数年を経るまで“観続けて”きた人でなければ、明確に答えを導き出せないかもしれない。今回はあえて「じっくり考えていただくため」に答えを差し控えよう。ヒントをいくつか。当初よく言われてきた「フィットネス強化のための新機軸、特に食餌法」などではない。それならすでにアリーゴ・サッキらを中心にセリエAで実践されてきた、すなわちヴェンゲル・オリジナルでも何でもないからだ。決め手となるヒントは、ちょうどあの「インヴィンシブルズ(シーズン無敗優勝を達成したチーム)」の直前に、ハイベリー(当時のアーセナル本拠地)にやってきたプレーヤーたちにある。彼らがそれまでどんなプレーヤーだったか、ヴェンゲルが彼らに期待して誘導していったか。その具体的手法と、それがもたらした果実、言い換えれば戦術上の新コンセプト。いかが? 戦術論がメシよりも好きな(?)方々ならわからないはずはないのだが・・・・それとも今や事実上当たり前になってしまって気が付かないかも? ▽さて、もしもアーセナルがFAカップ決勝で“失敗”していたら、アーセン・ヴェンゲルの契約更新はなかったかもという疑問も、まだ少しは引っかかっているかもしれない。筆者はそもそも、少なくともアーセナル内部に限ればその懸念などなかったと信じているが、「Time For Change(この際心機一転)」に傾いていた一部(主にサポーターの)セクションでなら多分に現実的な展望だったはず。実は、晴れてFAカップを手にした今でさえ、「大変なのはこれから。2年の猶予が短縮されてしかるべき可能性は十分にある」との冷めた声は燻っている。サポーターではないがその代表格となる不安と提言をものしているのが、ギャリー・リネカーその人だ。「アーセナルははるかに後手に回っている。ヴェンゲルの方針が今後も続くようなら、いつまで経ってもチェルシーやシティー、ユナイテッドらに追いつけないだろう」要するに補強戦略が“甘い”と言いたいのだろう。チェルシーらに匹敵する散財をして世界的スーパースター級を狩り集めるのでなければ、現状維持が精いっぱいだというのだ。現状では哀しいかな正論かもしれない。しかし、筆者にはどうしてもそこに根源的な違和感を覚えてしまう。おそらくはヴェンゲルも同じだろう。 ▽アーセナルの現筆頭株主、アメリカンスポーツの大君のひとり、スタン・クローンキーは、一途なほどヴェンゲルの手腕に最大級の賛辞を絶やすことはない。一時“業を煮やしかけた”ナンバー2株主、ウズベキスタン出身のアライシャー・ユスマノフも、ヴェンゲルに対する信頼度はクローンキーに負けず劣らず、全面的支援を改めて約束している。いざとなれば“そこそこのカネ”は引き出せる態勢にはあるということだ。だが、肝心のヴェンゲル自身がどれをどこまで受け容れて“活用”するかとなると・・・・あるいはそこのところで「Time For Change」の合言葉が働くのか。だとしたら・・・・? インヴィンシブルの元メンバー、マーティン・キーオンは、現二大エースのアレクシス・サンチェスとメスート・エジルを「甘やかされている」と断じ、この際“売却”してより将来的にヴェンゲル・アーセナルを支えるに足る若い逸材を、と提唱している。例えば、リヨンのアレクサンドル・ラカゼット、そしてモナコのワンダーボーイ“アンリの再来”キリアン・ムバッパ。それでFFP問題(収支の黒字化)も対処できる。あくまでも「例えば」だが、いずれにせよ、このオフ、アーセナル周辺は忙しくなること必至だ。ちなみに現在、移籍志願を表明したレスターのマーレズの名が早速俎上に上がっている。ヴェンゲルが腹をくくって主導実践する(かもしれない) Time For Change。楽しみではあるが、さて鬼が出るか蛇が出るか。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.01 12:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】多すぎるイベントが孕む不安

▽渡航の予定はない。それでも思わず背筋に冷たいものが走った。実にいたましく、かつ悩ましいことである。このタイミングで発生したマンチェスターのテロ事件。ターミナルのヴィクトリア駅前にある「マンチェスター・アリーナ」は、音楽コンサートだけでなく、テニスなどのスポーツイベントも催される屋内多目的施設だ。ISがバックにいようが何だろうが、何か荒っぽい“リハーサル”もあるいは“警告”の臭いもする。すぐにウェンブリーでFAカップ決勝が行われるし、チャンピオンズ決勝はカーディフのミレニアムが舞台だ。と思わせておいてヨーロッパリーグ決勝の地、ストックホルムを標的にする可能性もある。たった一人の自爆でも、イベント終了後に観客がどっとあふれる場外を狙われてはたまらない。多数の死者を出したテロ事件発生の報を受けて即、ウェンブリーのセキュリティー強化を打ち出したのは当然。あの、パリ同時多発テロ、サン・ドニ事件を思い出す。ドルトムント一行のバスに災禍を見舞った“模倣犯”の心配もしなければならない。 ▽そんな中、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドはシーズンを締めくくる“重要きわまりないラストマッチ”に臨む。両者はともに“すでに”ヨーロッパリーグ出場権を確保している。FAカップのアーセナルは勝っても負けても“収穫”に変化が生じない。だが、悩ましいのはアーセン・ヴェンゲルの、あたかもタイトルを獲れなければ身を引くと言わんばかりの宣言、「カップファイナル後に“結論”を出す」。そして「たとえ(アヤックスに)敗れても失敗のシーズンだったとは思わない」という、ジョゼ・モウリーニョの“自己評価”。ユナイテッドの勝ち負けには、この世界では“天地”の違いほどに相当する“十字架”がかかっているとはいえ、両者がともに失意を引きずる羽目になった場合、来シーズンに向けての展望、強化に甚大な影響を及ぼすのは、ほぼ衆目の一致するところだからだ。だからこそ、もし、ゲームに、プレーに集中できなくなるかもしれない脅威が漂っているこの状況が実に悩ましい。逆に“言い訳”の端くれにはなる? 冗談じゃない。すでにアンダーエイジの大会も始まっている。“標的”の行く先は予測すらつかないのだ。 ▽不安ばかりにとらわれていても仕方がない。冷静に状況を“斟酌(「忖度」じゃない!)”する立場を再確認しよう。アーセナルとユナイテッドはともに「勝つ」。希望的観測ではない。かかっているものの重みが違うからだ。ユナイテッドのクラブ・シーズン最優秀プレーヤーに選ばれたばかりのアンデル・エレーラは言う。「勝ってこそだ。それで我々は前を向ける。もしそうならなかったら、なんて考える余裕はあり得ない」。それはチームメイトの誰しもが同じ思いだろう。負傷中のイブラヒモヴィッチも何くれとチームの意識向上に余念がないという。チャンピオンズ“復帰”が叶わなくなった場合、ハメス・ロドリゲスやアントワン・グリーズマンが来てくれないかもしれない、などという心配など、ただ周辺が騒いでいるだけにすぎない。いい加減にしろ、である。あえて言うならば、ジョゼのためですらない、ジョシュ・ハロップ、アンヘル・ゴメスら次代のホープのために、彼らは「勝つ」のである。新星たちの出番はまずありえない。しかし、たとえストックホルムに帯同せずとも、ハートとスピリットはともにある。それがチームというものなのだ。 ▽アーセナルについても、傍であれこれ言うほど“心配”はしていない。彼らはヴェンゲルのためにではなく、クラブの明日のために「勝つ」。仮にも、サンチェスの、エジルの心に何等かの躊躇、「もし」の腹積もりがあるのだとしたら、すでに彼らはガナーズの一員でも何でもなくなっている。そもそも、プロではない。コシェルニーの出場不能もむしろ団結と必勝の気概の掛け替えのない力になる。例えば、リーグ最終戦、退団するジョン・テリーの「26分の交代」が、賭け絡みの“出来レース”ではなかったかという“冷やかし”など、間違っても真に受けてはならない。せいぜい、ブリティッシュ流ジョークで笑って済ませればいい。「言霊」とか「事前の禁句」というものは、日本人以外には一切通用しない。あえて今回はエモーショナルな物言いをしているが、それはとりもなおさず、このスポーツが「個(の力)」で成り立っているのではない、ということを再確認してもらいたいからだ。誰が抜けて誰が入ってこようと、些末な問題でしかない。どうか、ファンを自負する皆さんには、知ったかぶりの他人事めいた評論に惑わされないでいただきたい。 ▽しかし、それにしても気が付くと、フットボールイベントがやたらと多すぎはしないだろうか。プレーヤーたちにしてもそうだが、ファン(観客/観覧者)にしたところでほとんど目が移り、それこそ目が回る。派生する問題も少なくないIT業界に比べて、世界に冠たる優良で商業的うまみも大きい業界だからこそ、統括/運営母体はもう少し冷静に足元を見直してもらいたいと思うのだが・・・・。独り勝ちになってしまわない配慮を、必要以上にでも“斟酌”していってもらえないのかと危惧するのは筆者だけなのだろうか。グローバル・テロリズムの標的になりやすい状況について、今こそ立ち止まって見つめ直すべきではないのか。ならば、例えば、W杯、ユーロ、ヨーロッパ交流リーグなどの国際大会の拡大ではなく「縮小」こそ、その確たるメッセージになりえないだろうか。まるでゲーム感覚さながらに、戦術やスキルや移籍金の額やクラブの資産価値やらを語る風潮が、実は最近とみに鬱陶しくなってきてはいないか。マンチェスター・アリーナの悲惨で許しがたい事件を耳にした今、そのことに改めて強い疑問が湧き上がる思いである。是非に善処を。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.05.24 12:05 Wed
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【東本貢司のFCUK!】ロマンティストとリアリスト

▽「freak」。「気まぐれ」もしくは「気まぐれな行為、いたずら」を意味する英語。文脈によっては「風向きが変わること」を指すこともある。13日土曜日のマンチェスター・シティー-レスター戦で見た「マーレズのPK失敗」は、まさに「運命のいたずら」と解され、それより前の「オフサイド疑惑」(シティー、シルヴァの先制ゴールが決まった際、オフサイドポジションにいたスターリングがそのシュートに触れようとしたかに見えた一件)ともども、ゲームの「風向き」を大いに左右しかねない「フリーク」な事件だった。あるいは2点のビハインドからストークがもぎ取った追撃のゴールの際、クラウチの頭よりも先に手に当たったように見える誤審疑惑もその一つに数えていいかもしれない。もっとも、こちらは幸いにもゲームの帰趨にさほどの影響は与えなくて済んだようだ。しかし、何よりも「フリーク」な印象を禁じ得ないのは、ついにプレミアのタイトル奪回に成功したチェルシーの新・名物マネージャー、アントニオ・コンテの人となりではなかろうか。 ▽コンテの就任が公表されたとき、その火傷をしそうな熱血キャラと当時まだ燻っていた不祥事疑惑から、本コラムでコンテを「劇薬」と形容したことを覚えておられるだろうか。決め手となったのは、アンドレア・ピルロの“証言”「あの人といると気の休まる暇がまったくない」だったのだが、此度首尾よくデビューシーズン優勝を果たした直後から、コンテの意外な「気配りの才」が現地メディアで語られ始めたのには、正直“目からウロコが落ち”、なるほどと膝を打ったものである。背景を振り返ればその“劇的効果”がものの見事に「良薬」として機能したことに思い当たる。帰ってきた英雄「スペシャル・ワン」によってもたらされたタイトル奪還と、その後にやってきた思わぬ転落ーーーすべてはジョゼ・モウリーニョという、唯我独尊を絵にかいたような究極のリアリストが招いた天国と地獄・・・・スタンフォード・ブリッジに忍び込んだような失意と割り切れなさの“ウィルス”は、傍から見ても駆除するのにしばらく苦労するのではと思わせたものだった。つまり、コンテは格好のクリーニングアプリだったのだ。呆れるほどのきめ細やかさでもって。 ▽彼はオフの間から(すなわち、イタリア代表監督としてユーロに参戦する合間を縫って)、チェルシーの隅々に至るまで、気配りと人心掌握と“ローラー作戦”を実行していたという。コブハムのトレーニング施設を足しげく訪ね、その責任者、スタッフと濃密な会話を重ねる一方で、オーナーとも影のように付き添って“クリーニング作戦”の種を掘り起こし、慎重かつ丁寧にそれを蒔いて芽が吹くお膳立てを施した。プレーヤー個々との聞き取り、話し合い、アドバイスのやりとりを通して、現状の理解および必要な手立てを模索し、話の分かる兄貴分としての自身を売り込んだ。あの、サイドラインで演じてみせる度肝を抜くような熱血アクション、記者会見間場で記者用に用意されたケーキを“つまみ食い”してみせる茶目っ気、質問に答える際の噛みしめるようなトーンと冷めた鋭い目つき・・・・それらすべてが、“演技”ではない、アントニオ・コンテの素のままの発露だったとすれば、モウリーニョ・ショックで白けかけていたムードを払拭する何よりのカンフル剤だったと、今では思えてくる。ならばあえてこう称したくなる。「稀有なるロマンティスト」 ▽あくまでも対比だ。“脱・リアリスト”に対するロマンティスト。切り替えも潔く迅速だった。アーセナルに3-0で敗れて8位まで転落、首位マンチェスター・シティーに大きくみずをあけられたとき、コンテはやおら3バックを敷いて目先を変えた。それも、奇策でも何でもなく、必然の“二の矢”のごとく。戦術論偏向者にはいろいろと語る種になったようだが、ユヴェントス時代からコンテを観察し続けてきた某識者によると、コンテには戦術志向が薄いという。臨機応変、直感で迷わず善後策の手を打つ、いわば「フリーク」志向の気が強いという。そして、それがチェルシーの現メンバーにぴたりフィットして機能した。モーゼズを再生させ、アスピリクエタの新境地を開き、ケイヒルをキャプテンに据えて新しい“芯”を築き、問題児のコスタを巧みに手なずけた。ときにはピエロのようにふるまいつつ、沈着で冷徹な本質を垣間見せ、夢と現実を巧妙に融合させた。そんな意味での「ロマンティスト」、絵空事や独善ではない「ロマン」の提唱者を、“飾らない地のまま”の言動で演じて見せた。その、開けっぴろげさに、誰もがほだされ身を預けた。 ▽片やリアリストのモウリーニョは、良くも悪くも「信念の人」である。その信念にわずかなりとも異議を申し立てられることを好まない。どこか衝動的にも映るエキセントリックな言動も、必ずその裏には信念に基づいている。そして、それは今、ヨーロッパリーグ制覇にほぼ全面的にフォーカスされている。ある意味での天王山となったアーセナル戦に向けて「主力休養」を匂わせ、セルタをなんとか退けて“計算成就”を目前にした後も「たとえ(アヤックスとの)決勝に敗れて(チャンピオンズ出場を絶たれて)も「(ユナイテッド初年度采配の)成功と言ってはばからない」とうそぶく。ロマンティストは迷わず手を変え品を変え、リアリストは慌てず騒がず我が道を行く。前者は他人の評価など意に介さず(もしくは、そのフリを見せず)、後者は他人の評価の先を読んで利用しようとする。ただし、そんなモウリーニョ流がユナイテッドに“合う”かどうかは・・・・未解決の謎だ。すでに「石橋をたたいて渡る」その守備寄りの考え方は“合わない”と憂慮する声も出ている。多分“答え”はチャンピオンズ復活以降に見えてくるのだろう。さてその成果は?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.05.14 13:35 Sun
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【東本貢司のFCUK!】サンダランド、明日への降格

▽しかるべくしてサンダランドの降格は決まった。シーズン第二戦、昇格組のミドゥルズブラに敗れた直後、デイヴィッド・モイーズが“予言”した「残留争いに明け暮れる見通し」がほんの一時でさえ覆される予感すら見せないままに。思えば大胆極まりない“賭け”だった。仮に、そのネガティヴなヴィジョンがプレーヤーたちの反骨を誘うと期待したとしてもである。しばし時計を巻き戻してみよう。2011年以降、このノースイーストの名門がたどってきた綱渡りの軌跡を。2012年、プレミア創設以来の最高位に当たる10位に導いた“功労者”スティーヴ・ブルースの“威光”をもってしても、降格の瀬戸際に追い込まれたブラック・キャッツはそのブルースを見切ってマーティン・オニールを招き、残留にこぎつけた。だが翌2012-13シーズンも同様の末路をたどり、パオロ・ディカニオへの乗り換えで降格を阻止するも、まるでこのスクランブル修復が定番と化したかのように、ディカニオ→ポジェ、ポジェ→アドフォカート、アドフォカート→アラダイスと、実に5季連続で“リフレッシュ式”監督交代作戦によって薄氷を踏む生き残りを果たしてきたのだ。 ▽さて、監督/マネージャーの力量・手腕がチーム成績に重大な影響を及ぼすという理屈が、いかに当てにならないかはもはや明白だろう。いまだにそんな“幻想”をまことしやかに語る向きがいること自体、信じられないのだが、ここでいったん、イングランド代表監督に指名されたアラダイスを継いだモイーズの“思い”を推し量ってみたい。過去5年間のサンダランドの“うんざりするような綱渡り”を踏まえて、モイーズは就任に際して「確約」を要求したに違いない。たとえ「シーズンを通して残留争いに明け暮れる」事態が続こうと、仮にも(実際にそうなってしまったように)降格に甘んじる結果になろうと、身分を脅かされることのなきように! そう、3年なら3年、じっくりこのチームを作り上げていく保証を求めたうえでの就任に違いなかった(と、筆者は確信する)。クラブ側も、エヴァートンでの11年間で証明して見せたモイーズの実績を踏まえて「得たり、そのためにあなたを呼んだ」と諸手をあげたはずだ。だが、そんな相思相愛も、モイーズが期待した補強体制にクラブが応えられなかったために、不安でいっぱいの見切り発車を強いられ、その鬱屈が、ミドゥルズブラ戦敗退後のネガティヴな発言を引き出してしまったのだろう。 ▽だとしても、今更ながらに取り返しのつかない失言だったと認めざるを得ない。サポーターは何事かと目を剥いただろう。それ以上に、プレーヤーたちはがっかりしたはずだ。開幕してわずか2戦を消化したに過ぎないのに? いや、それでも好意的に受け止めてみようじゃないか、エヴァートンの11年間を、ユナイテッドとソシエダードの我慢の無さを。モイーズはそもそも補強に慎重で、名前ばかりを追って無闇にカネをばらまくリクルーターではなかった。ティム・ケイヒル、フィル・ジャギエルカ、ジョリオン・レスコット、ミケル・アルテータらは、今なら考えられないような安値で仕入れてみせ、プレミア有数の戦士に仕立て上げたではないか。きっと、サンダランドでもその“眼力”を発揮してくれるに違いない、ならばたった1年や2年で実りがないのも覚悟しなくては。クラブはもとより、現有戦力もサポーターも、そう腹をくくる気になったはず・・・・が、何かが違った。しばらく離れていたプレミアに肌で触れて、ひと昔前のエヴァートン時代とは勝手が違うことを体感したのかもしれない。サンダランドのアカデミーの実態に世を儚んだのかも? ▽先日、あるインタヴューに応えたモイーズの口ぶりと表情を目にした、かつての教え子、リオン・オズマンが証言する。「あんなに憔悴して打ちひしがれた彼を見た記憶がない。まるで解任されたかのように」果たしてそれは、奇しくもあの2戦目後の“失言”を引き出すきっかけになったミドゥルズブラに再び敗れて(4月26日)降格に王手がかかってしまったときだったからなのだろうか。「エヴァートン時代のデイヴィッドは真性のファイターだった。燃え上がる炎のオーラを常にまとい、その両眼からも発散させていた。それが今は・・・・見る影もない」。とはいいつつも、もはやモイーズは後には引けない崖っぷちの心境だろう。ここで身を引けば、それは“完全敗北”を意味し、あの性格からして引退を決意する可能性すらある。いかなる事情、経緯にせよ、ユナイテッド、ソシエダードで失格の烙印を押されて、今また・・・・では、彼を引き受けるクラブなど(少なくともしばらくは)どこを見渡しても覚束ないだろう。ここで踏ん張るしか道はない(と、筆者は推察する)。むろん、その崖っぷちのプライドと決意がサンダランドに通じるかは不透明だが。 ▽もっとも、どう転んでも茨の道は同じだ。ボーンマスとワトフォードの躍進、善戦を前にしては、言い訳の種は一切、間違っても拾えない。プレーヤーたちのヴァイタリティーに差があったと言われても仕方がない。そして、その責任は監督が負うことになる。一つ、忘れないように付記しておくなら、早くからオーナー権譲渡の希望を公言していたアメリカ人のエリス・ショートにも多きに責任がある。そして、ショートはそのことを認め、先日謝罪もし、善処(“再考(=資金の自己調達)”なのか、良き買い取り先の選択なのかはまだわからない)を確約した。モイーズ解任については一切、ほのめかしすらしていない。ファンの方も、少なくともヴェンゲルに対するアーセナルファンほどには、モイーズ不信をあからさまに叫んではいない。あらゆる事象が「再起」を望み、指示しているのだ。サンダランド降格決定とほぼ時を同じくして、宿敵ニューカッスルがプレミア復帰を確定させた。そのことも「ここでモイーズのクビを叫んでいる場合ではない」前向きな反骨に火をつけた節がある。めげるなモイーズ、そしてサンダランド。今こそ“そのとき”だ。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.05.03 18:07 Wed
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【東本貢司のFCUK!】4月最終週ミッドウイークの乱

▽三日間で5試合、すべてキックオフからファイナルホイッスルまでみっちり見届けたのは久しぶりのことだ。それだけ、それぞれが重要なカードであり、またそれがゆえに結果のみが“残った”とも言える。無論、この期に及んで“スペクタクルな好ゲーム”を期待する方が欲をかいている。昨シーズンを例にとると、4月最終週のミッドウイーク時点で、各チーム残り3試合。今季はばらつきもあるが平均してその倍を残している。アーセナルにいたっては26日のレスター戦を含んで7試合。そのうえ、FAカップ決勝も控えている。ヴェンゲルの去就、頼みのサンチェス、エジルのはっきりしない行く末も絡んで、息つく暇もない。だからこそ、オウンゴールであれ何であれ、終了間際にもぎ取った虎の子の1点の価値は千金どころではない。ヴェンゲルは言う。「自分(が残るか去るか)のことなど二の次。クラブが残す、手にする結果がすべてだ」・・・・自らへの不満分子をなだめすかす意味もあるとすれば、ファンも目を開かねばならない。何を最優先すべきなのかを。 ▽スパーズことトテナム・ホットスパーは目に見えて強かに成長している。ちょうど1年前の今頃、ウェスト・ブロムの痛恨のドローを強いられ、ミラクル・レスター追撃の芽を摘まれたのみならず、“持病”のごとく最後の追い込みでずるずると星を落として結局3位で終えた二の舞はもうなさそうだ。つい先日、ヤング部門で年間最優秀プレーヤーに選出され、シティーからレアル、バルサまで熱い視線を送るデレ・アリがさほど目立たなくとも、エリクセンやソン・フンミンが十分すぎるほどカバーしてくれる。チェルシーも最後まで気を抜けそうにない。その意味でも、チェルシーやアーセナルに一泡吹かせてきたばかりのクリスタル・パレスに挑んだ一戦は注目の試金石だったが、苦戦しながらも勝ち切ってみせた。アーセナル-レスター戦が総体的に流れの悪い消耗戦だったのに引き換え、同じ最終スコアでも、パレスとの一戦は見応え十分だった。そんなこんなを感じ取ったバルサやレアルが、ポチェッティーノ略奪に色目を使っているとかには笑止千万。いまだに監督が変われば何やらと考える短絡思考にはうんざりする。プレーヤーをもっと信じよだ。 ▽今では忘れている、というよりも、そもそも気が付いていない人も多いようだが、ミラクル・レスターの真の“メンター”は、一昨シーズン終了後になぜか電撃解任されたナイジェル・ピアソンなのだ。そして、クラウディオ・ラニエリの第一の功績は、そのピアソンが築いたベースをほぼ損なうことなく、いや、そのまま継続して“敬意”を示し続けた点にある。しかも、“第三の男”クレイグ・シェイクスピアも、成功に行き着いた色気なのか欲目なのか、ラニエリが少しばかりいじりかけた感のある戦術的変更を、今一度原点(=ピアソン流)に立ち返って再び勝ち運を呼び込んだのである。監督が変わって何かが変わったのではない。プレーヤーたちへの信頼を今一度確かめ、その信頼にプレーヤーたちが迷いを吹っ切ることができたからに相違ない。おそらく、ヴェンゲルはそのことを感知して「プレーヤー・ファースト」にこだわっているのだと考えられる。なにしろ、彼らのほとんどが、自らの目で見極め鍛え上げた秘蔵っ子たちなのだ。カネにあかせて揃えたオレ様たちの寄せ集め軍団ではない。そこに、アントニオ・コンテの皮肉がエコーする。 ▽グアルディオラが「チェルシーだって・・・・」と反論したくなる気持ちもわからないではないが、冷静に振り返ってみればコンテの言い分はほぼ「正当」だと思う。中国マネーに走ったラミレスやオスカーも、ファブレガスも実体はアタッカー志向。回転軸となる不動のアンカーがどうしても欲しかった。そこでカンテを獲った。さらに、テリーの衰えを看て取ってダヴィド・ルイスを“呼び戻した”。意外な掘り出し物の“ディフェンダー”アロンソはそれまでほぼ無名の存在。つまり、カネがかかるかどうかは二の次の“結果論”で、ピンポイントで必要な補強を名前よりも実力本位で施した。イングランド史上最も成功した指導者、サー・アレックス・ファーガソンの手法そのものではないか。何度でも繰り返したくなるが、たとえ大半がアカデミー上がりであろうと、グアルディオラが率いたバルサはその時点で世界的スターがひしめいていた。そこから移ったバイエルンはそれこそ、“強奪”同然に狩り集めた国際的スターの巣窟。シティーはそれ以上にふんだんにカネを使ってきたうえに、出入りも激しい。“戦術”だけで何かを変えるという話は通じそうにない。意地の悪い(?)メディアも早速クサしている。ペジェグリーニは偉大だった、と。 ▽そしてそして、ユナイテッドはまだまだ修復途上。ファン・ハール時代のツケ、というよりもデイヴィッド・モイーズをたった10か月で見限ったツケから、大変な無駄遣いを続けてきて、いまだ先行きは不透明。ラシュフォード、リンガードの登場、成長で“兆し”は見えてきたが、ルーニーの処遇も含めて、少なくともモウリーニョ体制2年目の帰趨を見極めてからでないと何とも言い難い。個人的にはポグバ獲得は余計だったのではないかと思っている。幸い、エレーラが一本立ちした様子で、あとはミヒタリアンとバイリーが定着すれば落ち着いて戦えるベースはできるだろう。ヴァレンシアとフェライニをあえて重用して成果まずまずなのは、さすがはジョゼ君。アシュリー・ヤングを干したままにしない方針も好感が持てる。グリーズマン獲得にあまりこだわらない方がいいかとも思うが、少なくとも大型補強はそこでいったん打ち止めとするのがベター。新顔導入が続くとチームは地に足がつかないのは、十分に懲りたはず。リーグカップ獲得で一応の顔は立った。ヨーロッパリーグ制覇に的を絞ってじっくりと改造を進める。ヴェンゲル式、レスター式、あるいはコンテ流に学ぶべし。願わくば、アカデミーの充実を改めて土台とする再認識を。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.04.28 12:10 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ミラクルの看板、いまだ健在

▽かくてレスターのヨーロピアン・アドヴェンチャーはひとまず終止符が打たれた。とはいえ、天晴の賛辞を贈っても罰は当たるまい。そもそも、ファーストレッグのPK(グリーズマン)は誤審だった。ホームでのリターンマッチでも先制ゴールを奪われ、もはや希望の火もふっつりと消えたも同然の中、逆襲の同点弾をかっさらい、最後の1分まであきらめず攻め続けた。今大会、ホームゲームをただの一度も落とさずに乗り切ってきた事実だけをとっても、ファイナルホイッスル後、キング・パワーの観衆が万雷の拍手と総スタンディングオヴェーションの喝采を贈ったのは当然だった。何よりも、敵将ディエゴ・シメオネが(あの、シメオネが!)、レスターイレヴンの一人ひとりを健闘をたたえる熱っぽいハグで労ったことがすべてを物語っている。おそらく、このアトレティコ以下、レスターと戦ったヨーロッパのチームの全メンバーも同じ思いに違いない。自分たちは確かにイングランドのチャンピオンを相手にした、あのミラクルは決してフロックではなかったと。 ▽以前にも書いた。チャンピオン・レスターが(皮肉なことにラニエリ解任直前まで)すっかり勝てなくなった理由。「ミラクル」の大パレードを席捲させるにまかせてしまったビッグクラブの意地、二匹目のドジョウはさすがに甘くないぞと引き締めた気が落としどころを見つけられないまま道に迷ってしまった自縛の罠、レスターができたのなら我々だってと目の敵にしてかかってきた“同輩”のチームの気迫。それらが混然となって、彼らに立ち直りのきっかけすら許さなかったがため・・・・。言っておくが、今でもラニエリ解任は世紀の大失態だったと断じたい。しかし、何度でも繰り返すが、皮肉にも、その世紀の大失態が「自縛の罠」から抜け出す引き金になった。それも、ある意味ではミラクルだ。つまり、ミラクル・レスターの看板は健在、少々趣を変えて凛として誇り高く掲げられている。ホームのアトレティコ戦の観戦者なら覚えているはずだ。ゴール裏に広げられたどでかいバナーの中で爛々と敵を射すくめるキツネの両眼を。そして、クレイグ・シェイクスピアの「これは手始め、改めての挑戦を目指す。今はまずはプレミア残留確保」の意気を。 ▽なんとなれば「敗れてもなお強し、その誇りは見紛うことなし」以上に、ファンをときめかせるものはない。「勝てばすべて良し」はその場限りの慰撫、感傷でしかなく、気が付けば明日への不安を掻き立てる要因にもなる。例えば「半分以下のパフォーマンス」(アーセン・ヴェンゲル)で、辛うじて降格ゾーンのミドゥルズブラを退けたアーセナルのファンは、まさにそのレスターとのゲームを目前にして今、戦々恐々としているかもしれない。無論、セヴィージャをうっちゃり、アトレティコを苦しめたレスターに完勝でもすれば、トップ4フィニッシュへの首の皮一枚が二枚に格上げされる期待の方を膨らませるべきなのだが、筆者の目にもやはり「不安」の二文字がちらついて消えそうにない。肝心の二枚看板、エジルとサンチェスについてである。直近のボロ戦でも、一つ前の完敗を喫したクリスタル・パレス戦でも、二人に絡む連携がどうもぎこちなく見えて仕方がないからだ。いや、その前の(スコア上は快勝の)ワトフォード戦ですら、スコアラー3名のゴール直後の表情は冴えなかった。それは単にパフォーマンスの内容だけのゆえなのだろうか? ▽彼らの胸の裡にも「不安」の種が芽を吹いているからではないのか、シーズン終了直後からの“見えない将来の闇”にとらわれてはいないか? ならば、不肖の身で恐縮至極ながら、あえて提案しよう。ムッシュー、もとい、ミスター・ヴェンゲル、もはや躊躇うことはない、今こそ契約延長更新に首を縦に振ろうではないか。それで“彼ら”にも一つの踏ん切りがつく。ファンの“もやもや”にもはや“忖度”することはない。たとえ不遜と謗られようが続投を宣言すべきではないのか。仮にその結果、オフに誰彼が移籍を申し入れようがかまわないではないか。それはそれで、大手を振って補強市場に乗り出す正当な口実にもなる。あるいは、むしろヴェンゲルの方から“粛清”を決行したっていい。「粛清」とは“役立たず”を追放することにあらず。クラブのため、当該プレーヤーの将来のための、つまりは前向きな「改善策」としてだ。今一度、自身の原点に立ち返って「改造」に着手する。それに首をかしげるガナーズファンなどいないはず。そう、例えば“心機一転”を画策中のルカクや、それこそ宙に浮いているルーニーに目を向けてもいいではないか。 ▽可能不可能の問題ではない。すでに“できる”ことが証明されているプレーヤーに新たなチャンスを与え、ヴェンゲル・アーセナル流の術を施す。そこで、敢然と「ネオ・インヴィンシブルズの再現」を掲げ、意気に感じる勇者たちを、有名無名を問わず、呼び寄せるのだ。それでこそ不満をかこつファンも目を開く、わくわくする。そのうえで、いくつか具体的な提案をしよう。狙うべきは、まず古巣モナコの人呼んで「アンリの再来」キリアン・ムバッパ。ただし、モナコとの交渉において「一年間の“Uターン”ローン貸出し」を提示して相手にウンと言わせる。その一方で、即戦力として期待したい“隠れた逸材”ワトフォードでプレーするミラン所属のムバイェ・ニアンを獲る。まだ22歳、粗削りだが大化けする可能性を秘めていると見る。ヴェンゲルの薫陶を受けて鍛えられ自信をもてば、ひょっとすればこちらもアンリ並みの戦力にならないとも限らない。もう一人は(エヴァトニアンの端くれとして内心は辛いのだが)エヴァートンのシュネデルラン(現地プレミア解説陣は概ね「シュナイデリン」と発音)。このスタイリッシュで視野の広いフランス人なら必ずや「新・ミスターアーセナル」として攻守の軸となってくれるはず。いかが? 2017.04.20 12:50 Thu
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【東本貢司のFCUK!】胸騒ぎのミステリー/3題

▽ミステリー・アライジング。いよいよレスターが大敵アトレティコとの決戦に臨もうとするこのタイミングで飛び出した、クラウディオ・ラニエリの“問題発言”、「クラブのある人物がわたしを追い出す後押しをした」。実名をあぶり出すのは本意ではない。ラニエリ本人も明かすことを拒否し「言いたいことがあれば直接本人と差しで話をする」。つまり、彼には“当たり”がついている。気になるのは、その人物がレスターFC内のどんな地位、役職にいるかだ。推理小説でいう「最も得をする誰か」・・・・という線はもう一つぴんとこない。実際“後釜”に座ったクレイグ・シェイクスピア? あくまでもつなぎであって昇格に至る保証はどこにもない。解任直後に可能性を取り沙汰された後継候補(たとえば、元イングランド代表監督、ロイ・ホジソン)の誰かと“利益を共有する”人物がクラブ内にいるという説も論外だろう。となると、それは「ラニエリの成功を快く思わない誰か」に容疑の目が・・・・だとすれば由々しき問題ではないか。その人物は今もクラブにいるはずなのだから。プレーヤーたちの胸にどす黒い疑心暗鬼が淀むことがないと切に願う。 ▽ユヴェントスが“鬼門”のはずのバルセロナをホームで大破したのをあえてミステリーとは呼ばない。しかし、ドルトムント-モナコの開催を延期させたバス爆破事件の方は実に怪しい、いや大問題と言うべきだろう。仮に、ごくありきたりに一部の過激なモナコファンの仕業だと疑ってみるのは多分筋違いだろう。速報のニュースからその節が浮かんでこない。地元警察の初動捜査によると「サポーターによる攻撃の証拠はどこにも見られなかった」という。ふと頭をよぎるのは「テロ」だ。2年前の11月に発生したあのパリ同時多発テロ事件(パリ市街および郊外サン・ドニのスタッド・ドゥ・フランス)、および、昨年クリスマスのベルリンで起こったトラック暴走テロ事件。サン・ドニ事件の標的になったのは「フランス-ドイツ」の親善試合だった。フランスとドイツ、モナコとドルトムント。“符号”はぴったり当てはまる。元バルサのマルク・バルトラが手を負傷しただけで済んだとはいえ「3発の爆破物」(警察調べ)は大惨事もあり得た。シリア空爆問題で騒然となっている国際情勢の中、搦め手からの“(テロの)ジャブ”という線は十分にある。 ▽ミステリー、というよりも“行く末”が気が気でない案件といえば、われらがアーセン・ヴェンゲルの“近未来”。まさかの対クリスタル・パレス惨敗は、せっかく5日前にウェスト・ハムを沈めて少しは鎮火したはずのヴェンゲル批判論を、また一気にぶり返させる憂鬱の“蕾”となってしまった。なぜなら・・・・問題の根っこにあるのは、クラブ側がすでに提示している「2年契約更新」に対して、ヴェンゲルが返事を保留している事実だからだ。つまり「言い訳の利かない状況」になってしまった場合、ヴェンゲルは自ら身を引く覚悟を温めている可能性がある(と察せられる)のだ。「言い訳の利かない状況」とは、唯一残ったタイトルのFAカップ、そして、チャンピオンズリーグ出場権がかかるトップ4フィニッシュを取り逃がしてしまう事態。それでも「アーセナルの監督を続ける」と言い張ることは、さすがにファンを納得させられるものではない、いや、そもそも彼自身のプライドが許さないに違いない。パレス戦敗退はその後者に著しく現実味を帯びさせることになった。文字通りの崖っぷち。だが、その“背水の陣”は吉を呼び寄せられるのか。 ▽最大の不安がそこにある。パレス戦は言うに及ばずだが、実はスコアこそ3-0の快勝に見えるウェスト・ハム戦すら、ガナーズイレヴンのパフォーマンスは決して褒められた内容ではなかった。実際、メディアの評価も負けチーム並みに低く、相前後して伝えられた元プレーヤーたちも重い疑問が引きも切らない。一言でいえば「覇気が感じられない」とばっさりなのである。ウェスト・ハム戦をご覧になった方ならきっと思い起こすはずだ。苦戦の中でようやくもぎ取った先制ゴール、そして“ダメ押し”の3点目・・・・いずれもファインゴールに数えていいはずのそれぞれのスコアラー、エジルとジルーの、見るからに喜びも半ば以下と言わんばかりの、浮かない表情を。まるで、だめだこんなことじゃ、きっといずれ“しっぺ返し”を食らうんじゃないかとの不安をぬぐえない・・・・。そして、それは“すぐ”に(パレス戦で)現実化した。ムードは最悪、しかも、不倶戴天の仇敵スパーズが、トップ4争いではるか彼方の優位にあり、FAカップでも勝ち残っている。その若きエース、デル・アリはデータ上からも史上最高クラスのMFとしてもてはやされ・・・・。 ▽いや、逆風ばかり憂いていても何もならない。まだ“可能性”が残っている限り、首を垂れていても仕方がない。“修正点”、巻き返しへの課題克服は、パレスにしてやられたゲームから学べるはずだ。パレスのサム・アラダイスが「してやったり」と自慢した対アーセナル対策を教訓として逆手に取るのである。ボールを速く、何よりも「前」に動かす。「横」にではなく、そして、あえてポゼッションに安住しないこと。ある元プレーヤーはいみじくもこう述べた。「アーセナルのプレーヤーたちはヴェンゲルのポリシー、指示を実践していない」。もし、この指摘にエジル以下が今後もどうやっても「応えられない」のだとすれば話は“早い”。ヴェンゲルが去るか、エジルたちが去るか、二つに一つ。いや、最悪「両方」ということも? いずれにせよ、そのときはアーセナルが良くも悪くも根底から生まれ変わる運命に直面しなければなるまい。そんな「一寸先の闇」に、クラブは、サポーターたちははたして耐えられるのか。少なくとも運命の残り8試合、エジルたちが死力を尽くす「覇気」を示さなければ、「闇」が晴れる日などいつまでたっても・・・・。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.04.12 13:35 Wed
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【東本貢司のFCUK!】「地獄の4月」はまだ終わらない

▽全チーム6試合のすし詰めスケジュール、曰く、プレミアリーグ2016-17「地獄のエイプリル」。しかも、現実的に勝ち負けがほとんど“響かない”ウェスト・ブロムを除いて、決して大げさではなく“天国か地獄か”の切羽詰まった状況。ヨーロッパで勝ち残っているレスターとマンチェスター・ユナイテッドには、さらに2試合多くのしかかってくるわけだから、気の遠くなる強行軍となる。ちなみに、FAカップ準決勝組(アーセナル、マン・シティー、チェルシー、スパーズ)については、それぞれ当初予定のリーグ戦が後回し開催にされるため、試合数の増減はない。いずれにせよ、常日頃以上に気の抜けない、一試合一試合が“カップファイナル”・・・・そのせいか、このミッドウィークに行われたゲームはどれをとっても火の出るような激戦続出となった。ファンにとってはこたえられない? いいや、プレーヤーたちの体が、バックラッシュが、来シーズンが思いやられる。 ▽それにしても、ネット視聴のおかげでほぼ全試合をライヴでザッピングできるのはいいが、無論、それではゲームの機微をじっくり見極められず、痛しかゆしの考え物。だからだろうか、このミッドウィーク最大の目玉、チェルシー-シティー戦が一等“胸が騒がない”展開と結果に見えた。序盤に全得点が記録されたこともあったろうし、いつもより厳しいチェックでかかってきたシティーと、ボール支配にこだわらない効率とめりはりで受けて立ったホーム、チェルシーのコントラストが、なぜかつまらないものにさえ思えたほどだ。試合前日、シティーのグアルディオラは、「コンテは最高の指揮官かもしれない」などと、褒め殺しにも聞こえる“マインドゲーム”を仕掛けたものだが、蓋を開けてみればそんな“ベストチーム”に真っ向から挑戦するかのごとき、シティーイレヴンの覇気と熱気を目の当たりにできたにもかかわらず、にだ。ひょっとしたら、今シーズン屈指のゲームと評価すべきかもしれない。これは改めて後ほどリプレーでじっくりおさらいする必要がある。 ▽それはさておき、最もドラマティックな展開になったのはスウォンジー-スパーズで、フットボールの醍醐味を十二分に見せつけてくれたのはサウサンプトン-クリスタル・パレス、内容の妙味の点で唸らされたのがアーセナル-ウェスト・ハム、というのが、5日水曜日(日本時間では6日深夜)に行われた6試合の個人的“総括”。ああ、それにリヴァプールにミソをつけたボーンマスの、どこかとらえどころの難しい二枚腰も忘れてはいけない。まだまだ実質的に残留争いの渦中にいるボーンマスだが、ここまでスコアに関わらず、ほぼ全試合、侮りがたい、かつ、味のあるゲーム運びで出色のチームと言ってはばからない。少々先走りすぎるが、たとえ運悪く降格の憂き目に遭ったとしても、2016-17プレミアシップの「チーム・オヴ・ザ・シーズン」として記憶にとどめたいくらいだ。主というべきか、その名もジョシュア・“キング”と、笑顔が憎めないベキク・アフォベの前線コンビは意外性の塊、左ウィングバックのチャーリー・ダニエルズの迸る汗も頼もしい。実に好ましい集団、ジャック・ウィルシャーが「ここにいたい」とほだされるわけだ ?! ▽ホームでしびれるような終盤のゴール連発で快勝したサウサンプトンも、日に日に好感度が増してきた感十分。このパレス戦、前半2度のPK疑惑を見過ごされても萎むことなく攻守に粘り抜いたチームの一体感は、圧巻の一言に尽きた。筆者のマン・オヴ・ザ・マッチ、ネイサン・レドモンド以下、ファイターの粒も揃って容易に腰を割らない。勝ち越しゴールがなぜかゴール前ファーポストに居残っていた吉田麻也から、というのはおまけ・・・・と言っては可哀そうか(笑)。自身今シーズン初ゴールがよほどうれしかったのか、パフォーマンスも堂に入って、今や決して格も名前負け(?)もしないセインツのキャプテン。一時、これは戦力外に向かうかとさえ思われたにしては、よく這い上がってこれたと思う。フォンテの移籍という運があったにせよ、与えられたチャンスを不足なく務めて、クロード・ピュエルの信頼を勝ち取った恰好。今のところ、史上最高の日本人プレミアリーガーと称しても言い過ぎではなさそうではないか。代表ではちと物足りないとはしても。 ▽今回の締めに、レスターについて少々。現地メディアが「蘇った、生まれ変わった」とまで誉めそやすほどに、すっかり昨シーズン並みのエッジが随所に見られるようになった。最下位サンダランドが相手だったとはいえ(サンダランドも前半は善戦した)、主役たちがきっちり役どころを発揮して快勝で片を付けるところが、再生、復活の所以。孫と遊園地に行ったりして命の洗濯中のクラウディオおじさんも、さぞかし誇らしく、かつ胸をなでおろしていることだろう。司令ドリンクウォーターと左の“槍”フークスの本領発揮が大きい。何度も言うが、思わぬミラクル優勝とチャンピオンズ参戦で、フォクシーズはつい、何かを見失って“借り物”状態になってしまっていたのだろう。ラニエリ解任は痛恨の極みだったが、それが原点に戻る格好の引き金に(結果的に)なったのだ。ひょっとしたら、凱旋復帰だってなくはない? それはともかく、ますますチャンピオンズが楽しみになってきた。是非、戦々恐々となっている(?)アトレティコを青ざめさせてやってくれ!【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.04.06 11:35 Thu
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【東本貢司のFCUK!】平和で玉虫色の報道ワールド

▽マデイラ島プロジェクトによるクリスティアーノ・ロナウドの「胸像」がちょっとした話題になっている。制作者のエマヌエル・サントスによると「けっこう苦心した。完成に15日間かかった。本人(ロナウド)からメッセージが来て、気に入ったそうだ。もう少し若く見えるようにシワなど手を入れてもらえると嬉しいなる“意見”が添えられていだけ」なんだそうだ。“意見”とはいっても要するに「感激」をジョークめかして表現したにすぎない。32歳の現役アスリートのために胸像彫刻が制作され、故郷の空港名にまでまつりあげられたのだから、こんな名誉なことはあるまい。なにしろ、唯一の先例、ベルファスト空港の「ジョージ・ベスト空港」改名は、ベストの死後だったのだから。世界遺産にもなっている洋上の島ならではの“特権”だろうか。むろん「どちらかといえば、元アイルランド代表のナイアル・クインの方に似てる」などという揶揄も、他愛のないジョークだ。 ▽こんな“ほほえましい”ニューズも出たせいかどうかはともかく、インタナショナル・ウィーク(代表戦期間)がひとまず閉幕して、世は概ね平穏至極。マルセル・デュシャンは「玉虫色の判定齟齬」でスペインに敗れた一件をいやに鷹揚に受け止めているし、ギャレス・サウスゲイトの事実上の初陣采配も前向きな評価が大勢を占めている。ウェールズ-アイルランド戦で、クリス・コールマンの骨折を引き起こしたニール・テイラーにも、同情する気運が先行している。ウェールズのキャプテン、アシュリー・ウィリアムズの現所属が、コールマンと同じエヴァートンであり、両者を気遣う彼の言葉も不穏な感情の抑制に一役買っているようだ。そう言えば、このタイミングでミシェル・プラティニがかつての盟友、ヨーゼフ・ブラッターに愚痴の一刺しを漏らしたのも、なんとも平和だなぁと妙にほっこり。ちなみに、ブラッターの“謹慎期間”は8年、プラティニのそれは当初の8年から6年、さらに仲裁委員会によって4年に短縮されている。これも“玉虫色”だよな。 ▽そうだ、もう一つ、アーセナルをめぐる“変化の予感”についても。退団(移籍)の可能性が取り沙汰されているエース、アレクシス・サンチェスの「ロンドンが好き」発言も、その中身をよく読むと“長閑”な印象でしかない。「ロンドンが好きで引っ越しはしたくない。ただ、ウィニング・メンタリティーに優れたチームで働きたい」などと宣ったものだから、週刊文春ばりの(?)ゴシップメディアが「そうか、あいつはチェルシー移籍に傾きかけてるんだ」と、“ジョーク”でまぜっかえす。ディエゴ・コスタとアントニオ・コンテの“絶えない不仲説”を引き合いに出す。およそ現実的とは思えないことは、“彼ら”自身がわかっている。もし仮にアーセナルがサンチェスを手放すとしても、よもやチェルシー(や、まさかのスパーズ)に差し出すはずがない。英国のゴシップ文化はジョークと切っても切れない日常的伝統、もとい、伝統的日常なのだ。もちろん、間違ってその瓢箪から駒が出たら出たで儲けもの。多分何事も起こらないだろうなと高をくくっている。 ▽アーセン・ヴェンゲルの辞任説についてもしかり。ヴェンゲルの契約はもうすぐ切れる、エジルとサンチェスの移籍の噂が飛び交う中、そのエジルは遠まわしにヴェンゲル続投がカギだとほのめかす、新進FWイウォビは「ヴェンゲルは偉人」と声を上げ、不成績の責任はひとえに自分たちプレーヤーにあると強調する。一方のヴェンゲルは「エジルとサンチェスはアーセナル残留を望んでいる」と断言し、自らの去就だけは言葉を濁す。要するに、大勢は何も変わらない、もしくは、変わる気配がない。ヴェンゲルが現時点で続投希望を明確にしないのは、おそらく、不満を隠せないファンに対する一種の礼儀だと考えられる。ちなみに、イウォビ他によると「アーセナルはヴェンゲルの解任などまったく考えていない」。“変化もあり、必要”と口にするのは、お騒がせメディアと元プレーヤーも含めた“パンディット(=評論家)”たちくらいだ。そりゃそうだろう、彼らは“先を読む”のが商売。“あれやこれや”を俯瞰した物言いで“玉虫色”にしてキャリアを守る! ▽ニューズなんて所詮「話半分」である。「こういう話がありますよ」とアピールしている程度に思っておいた方がいい。要するに「ケムリを立てる」。つまり、そこでは大なり小なり何等かの意思が働いている。「モリトモ-アキエフジン」騒動の相反する報道内容を垣間見てもそれがよくわかる。いわゆるチャイナマネーが“自粛”の方向にあり、プレーヤー爆買いから大会スポンサーシップ(フットボールのみならず、バスケット、ラグビー他にまで)へ“劇的”にシフトしつつあるというニューズも、慎重に受け止める必要がある。ただ、それで法外にバカげたカネが動く流出(その実態は「孫の代まで裕福に暮らすため」の都落ち?)に歯止めがかかれば、それに越したことはない。ゆえに、少々先走りになってしまうが、この夏の「へえ」と驚く変化はほとんど期待できない。ニューズメディアが“仕事”を掘り起こそうとする、それに慣れたファンがインスタントな変化に飛びついて大騒ぎする。平和、である。本田圭祐がMLSに行くとか何とかの憶測のように。 2017.03.31 12:30 Fri
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【東本貢司のFCUK!】見えてきた“サウスゲイト式”

▽オランダがブルガリアに敗れた以外は平穏なW杯ヨーロッパ予選だった。実力伯仲のアイルランド-ウェールズのドローも“順当”、北アイルランドには底力が備わってきた。崖っぷち寸前のスコットランドは、終了間際の決勝ゴールで望みをつなぎ、その勝利はイングランドの後押しにもなった。ハイライトといえば、やはりそのイングランド。約3年半ぶりに代表復帰したジャーメイン・デフォーが話題をさらった。ハリー・ケインの負傷欠場さまさまだったとしても、きっちり先制ゴールをたたき出した事実は、ニューズネタとしても大きい。ポドルスキの“独り舞台”が既定路線だった対ドイツ・フレンドリーも、特に悲観すべき点は見当たらなかった。予選は順調でも本番でコケる最近の悪いクセを考えれば、楽観も悲観もないところだが、ギャレス・サウスゲイトの更迭論が出る余地もないだけで良しとすべきだろう。そのうえで、今後の課題についていくつか気になることを。 ▽現実的ではないという見方もあろうが、サウスゲイト・イングランドはこの対リトアニア勝利の余韻を大切にしていくべきだと思う。実績、経験、その他の“ありきたり”な尺度にあえてこだわらず、この布陣を基本路線に定めていくということだ。大筋はほぼ見えてきている。司令塔アリ、エースチャンスメイカーはララーナ、守りの軸はストーンズ。アンカーのダイアーについては、前回ユーロから個人的に物足りない部分も感じるが、穴になるというわけでもない。スターリングもパフォーマンスが安定してきて戦力としての“独り立ち”が見込める。両サイドバックはウォーカー(右)がマストになるが、オプションは豊富。ディフェンス面に不安が残るショーは、ドイツ戦でとった3バックシステムのウィングバックに使う方が生きそうだ。つまり「Bプラン要員」。中盤を5人で組む場合、底にダイアー、中央にアリとバークリー(格下で守備的な相手ならオクスレイド=チェンバレンなど)、両ワイドにララーナとスターリング。トップはケインでヴァーディーとデフォーがサブ、もしくは状況次第でいずれかがケインのパートナーに。ではルーニーは? ▽それは後回しにして、一番の考えどころがディフェンスセンター。ここほどパートナーシップが要なところもない。とっかえひっかえではサマにならない。やはり、最後はジャギエルカの経験に頼ることになるのか・・・・? とりあえず現状での「理想論」を。まず、めっきりグアルディオラの信頼を勝ち取りつつあるストーンズを軸とする。相方には心境著しいマイケル・キーン。この、若いコンビを主戦と位置付ける。ジャギエルカはいざというときの“最後の砦”として(相手次第で)起用する。あえてダメもとという言い方をするが、こうした方が先の希望が開けるはず。つまり、思い切って若返りの早期実現を“謳う”のだ。筆者はこの“謳う”メッセージこそ、スリーライオンズ復活の真の決め手になると信じている。いわば、オープン・セサミ、開けゴマ。そして、サウスゲイト自身もきっと同じことを考えていると思う。アンダーエイジで好成績を上げてきた彼だからこその説得力もある。というか、それこそがサウスゲイト指名の最大の根拠に違いないからだ。 ▽そこで、ルーニー。サウスゲイトは「まだやれる、必要」と言い切っている。そのココロ、もしくは“条件”は(おそらく)こうだ。「あまり動きすぎるな」。ルーニーが(クラブでも代表でも)しっくりこなくなっている理由は、彼自ら役割の多様性をもたらしている諸刃の剣。そもそもがストライカー由来なのに、妙に責任感が強いせいで、あれもこれも自分が、という逸る気持ちが出すぎて、かえってチームプレーをぎくしゃくさせている。モウリーニョが使い辛くなっているのもその点にあるはず。どんと構えればいい。トップ下に入ればディフェンスは他に任せる、引いた位置ならそれこそ周りの回転軸になるポジションを死守する。本人が納得するかどうかだが、筆者はあえてアンカーに固定してみてはどうかと考えている。つまり、ダイアーの代わりだ(その場合、ダイアーはセンターバックに使える)。攻撃の組み立て、お膳立てはアリとバークリーに託して、むやみにファイナルサードには立ち入らないと肝に銘じるのだ。ひょっとしたら、このルーニーの“世紀の決断”こそが、イングランドが世界の頂点に挑戦するためのキモではないだろうか。 ▽総体的にぐっと若返り、ぐっと肝が据わって“動かない”ルーニーが名実ともに柱石の姿勢を堅持すれば、きっと相手は勝手が違って面食らう。むろん、そのための十分な練習とコミュニケーションは欠かせないが、こういうチームが淀みなく一丸となり、あらゆる状況に対処できるようになれば、けっこう「負けないチーム」になっていく気がする。その点、参考にすべきなのが最近の北アイルランドだ。“国際的知名度”は薄くとも、どこか得体のしれない粒ぞろいの印象と、実際に当たってみて歯ごたえの凄さで、徐々に主導権をもぎ取っていく。劣勢になっても、さして変わらず黙々とかかってくる。これもまた、強力なメッセージになるだろう。ユーロで対戦したチームは総じてそれを痛感したのではなかったか。言うまでもなく、上記にざっと組んでみた“新生”スリーライオンズには、北アイルランドよりもずっと才能の前提があるはずだ。そして、サウスゲイトは必ずやその線に基づいてチーム改造(→醸成)を目論んでいるに違いない。楽しみになってきた。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.27 11:53 Mon
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【東本貢司のFCUK!】クラブレジェンドの“貫目”

▽ンゴロ・カンテについて、フランク・ランパードが「現役世界最高のミッドフィールダー」だと言ったらしい。納得するファンも多かろう、少なくとも「当たらずとも遠からず」といったところだろう。しかし、ちょっと待った。カンテがもしチェルシーのプレーヤーじゃなかったら? ランパードがわざわざそこまで声を上げて褒めちぎっただろうか。素直な感想にケチをつけるつもりは毛頭ないが、ひいき目の要素は押さえておくべきではないか。なぜなら、先のFAカップ戦でスタンフォード・ブリッジのファンがジョゼ・モウリーニョに対して冷やかし/侮蔑的なやじを飛ばした事実に思い至るからだ。二度の解任の際の後味の悪さや“口の悪さ”という瑕疵(?)は確かにあるにしろ、モウリーニョはチェルシーが果たした1部優勝5回のうち3つに導いた、史上最高の指導者ではないか。どうせならランパードもそのことに触れて「哀しい」とくらいは言ってほしかったが・・・・・。 ▽実際に、その“哀しみ”を口にした人物がいる。モウリーニョ・チェルシー時代に副官を任じたこともあり、クラブ史に名を残すレジェンドの一人、レイ・ウィルキンズだ。付け加えておくと、ウィルキンズは80年代のイングランド代表でキャプテンを務めたトッププレーヤーであり、そのうえ他ならぬマンチェスター・ユナイテッドに籍を置いていたこともある。彼曰く「チェルシーを最も輝かせてくれた男にそんな仕打ちをするとは恥ずかしい。もっと敬意を示すべきだろう」。そうなのだ。例えば、ジョージ・グレアム。ヴェンゲル到来の少し前、アーセナルに「ダブル」(リーグ&FAカップ)をもたらした名将に対し、リーズおよびスパーズの監督として彼がハイベリー(当時)に帰ってきたとき、ガナーズファンは万雷の拍手で迎えたものである。アーセナルから追われた理由が、北欧のプレーヤー2名獲得の際の「収賄(疑惑)」だったにもかかわらず。それは90年代に入ったばかりのことだった。まさか、チェルシーファンは忘れっぽいなんてことはあるまい? ▽それにひきかえ、レスターのサポーターは(まだ「間もない」とはいえ)ラニエリへの恩を熱く語り「哀しんで」いる。そこには決して、後を引き取ったクレイグ・シェイクスピアを腐す意味合いはなく、シェイクスピア自身もしっかりと敬意と“慕情”を隠さない。なぜ、ラニエリ解任後のレスターに快進撃が蘇ったのか。短絡な脳は「だから、ラニエリがダメだったってことだろう」と片付けるかもしれないが、それはまったく逆だ。ラニエリを去らせてしまった責任を感じて、シュマイケル、ヴァーディー以下が奮起したのであり、何よりもシェイクスピアが昨シーズン花開いた“ラニエリ流”の原点に戻った采配に徹しているからだ。間違っても、アーセナルをねじ伏せたリヴァプールが「不調」だったとは言わせない。レッズもハルも気圧されたのだ、レスター・イレヴンのラニエリに捧ぐ“回帰”の熱気と気迫に。セヴィージャも間の悪いときに乗り込んできたものである。ひょっとしたら「ラニエリ監督のままだったらよかったのに」と嘆いているかもしれない? ▽昨シーズンとはまるで人が変わったように、凡プレーを連発していたドリンクウォーターとフークスが、なぜか“直後”のリヴァプール戦から“復活”した。カンテの抜けた穴をまったく感じさせない、全軍躍動のオールコート・ディフェンスがさく裂する。急に得点感覚を取り戻したヴァーディーには“(移籍)価格”高騰の噂すら飛び交っている。ならば、なぜそれが“息をひそめて”いたのか。そう、彼らは予想外のチャンピオンになってしまった“重荷”に、奇妙な“とってつけのプライド”を身にまとおうとしたのではなかったか。恥ずかしいゲームはできない、相手は目の敵にして立ち向かってくるだろう、そのためには何かプラスαがなければ・・・・とか何とかの強迫観念に(無意識のうちに)とらわれていたのだろう。それが証拠に、チャンピオンズでは無心に「自分たちのプレーができて」(おや? どこかで聞いたセリフ)悠々と勝ち進んできたではないか。言葉は悪いが「負けてもともと」の肩の力が抜けた彼らの本領が“初体験の土俵”で生きたのだろう。 ▽だからこそ、ブッフォンは真っ先に「一番当たりたくないチーム」とレスター警戒を口にした。少しはプレミアを知るアンチェロッティも遠からずの気持ちかもしれない。奇跡の逆転劇の直後、まさかの対デポルティーヴォ敗戦に肩を落としているはずのルイス・エンリケには、レスターの「レ」の字も関係ないか。逆に、レスターが一番避けたい相手はモナコかもしれない。モナコにもプレッシャーに(良い意味で)鈍感なあっけらかんさを感じる(のは筆者だけ?)からだ。それを言えば、嗚呼、堅調に戻ったはずのシティーの不甲斐なさよ。あんな、マークの甘さでホームのモナコを黙らせることができると思ったのだろうか。グアルディオラもさぞやため息を・・・・その一方で、内心、あの“かっ飛び”核弾頭のムバッペをマジで獲りにいこうか、などと考えているかもしれない。おっと待った、せっかく、クラブレジェンド・アンリの「再来」といわれるからにはアーセナルに行ってもらわないとね。それがヴェンゲル続投のまたとない説得力になるやもしれないし・・・・!【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.16 11:15 Thu
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【東本貢司のFCUK!】ヴェンゲル放逐の大いなる罪

▽数字は正直だ。確かに、アウェイのファーストレッグと寸分違わない最終スコアは屈辱的だろう。だが、その(合計)「2-10」の“字面”にとらわれすぎてはいないか? 一部の“比較的まともな”メディアは、同点ゴール(レヴァンドフスキのPK)が決まった直後から、アーセナルイレヴンの戦意がみるみる萎んでいった結果、「17分間」に立て続けに4ゴールを失ったと“分析”している。要するに、ガナーズの面々のプレーぶりは明らかに(哀しむべきことに)投げやりになってしまっていたということだ。さらに、ヴェンゲル自身「(それまでは)台頭以上に戦っていた」と述べ、敵将アンチェロッティもそれを認めている。ならば、この大敗の責任は誰でもない、プレーヤーたちにこそあるはずだ。ところが、メディアも、大半のアーセナル・フェイスフル(=忠実なサポーター)も、口を揃え、さも当然のように「ヴェンゲルのクビ」を声高に叫ぶ。批判や揚げ足取りが仕事のメディアはともかく、ファンまで即物的なシロウトよろしく“背を向ける”とは驚いた。 ▽百歩譲って、この期に及んでは「リフレッシュ」、もしくはある元プレーヤー曰く「クレンジング」つまり「洗い清める」ための、監督交代要望も一つの手ではあろう。たまたまにしろ(?)、ラニエリを切った直後のレスターが蘇ったかのように連勝を収めた事例を見たばかりでもある。嗚呼、しかし、なんと思慮の浅きことだろうか。たとえ、もしも仮にここでヴェンゲルにご退場いただき、誰が引き継ごうと(おそらく、暫定的にスティーヴ・ボウルド辺りになるのだろう)、そして残り10戦あまりのリーグ戦で“快進撃”を続け、唯一の希望となったFAカップを制してみせたところで、ではそのあとはどうする? アレグリ? まさかとは思うが、彼をコンテの“二番煎じ”と錯覚はしていまいか? 少々うんざりした気分で「探索」してみた。そしてやっと見つけた。「現実」を最も正しく理解していると思われる意見を。アーセナル・レイディーズ(アーセナル女子チーム)の前キャプテン、レイチェル・ヤンキー。「ヴェンゲルを切って、それで誰が? 誰をつれてくるというの? 彼以外にこの逆風を受けて立つことができる人がどこにいると? ▽そして、何よりの“証明”は他でもない、アーセナル・ディフェンス陣からの“叫び”、「すべては自分たちの落ち度。我々は全員、アーセンを今までと変わらず、信頼し支持している」。なぜ、彼らがそう主張するのか。これもたまたまだが、拙訳『インヴィンシブル~アーセナルの奇跡』を読めば、その意味がわかるはずだ(これ、決して本の宣伝ではありません、念のため)。アーセン・ヴェンゲルという人物が、いかに優れた異能の指導者、メンターなのかを、彼らは誰よりも肌身をもって知っているからだ。では、なぜあの2003-04シーズンを最後に、ヴェンゲルのアーセナルがリーグ優勝に届かないままでいるのか。ロマン・アブラモヴィッチの登場がリーグの地平をそっくり変えてしまったからだ。誤解のないように言っておこう。決して、ラニアリ(!)が、ジョゼ・モウリーニョが、アンチェロッティ(!)が、監督としてヴェンゲルよりも優れていたからではない。決して彼らの“戦術(論)”がヴェンゲルのそれよりも優れていたからでもない。この単純明快な事実がわからない(ふりをしている?)評論家やメディアは「ヘボ」である。 ▽と、ここまで書き進めて、ふと「どうなったかな」とニューズサイトを覗いてみると・・・・とんでもないドラマの結末が飛び込んできた。終了2分前(正規タイム)からの3得点でバルセロナ、奇跡的な逆転勝利! 大したものだが、パリSGのディフェンスも何やってんだかと思う一方で、これじゃアーセナルへの風当たりもさらに・・・・? いいや、むしろ現実がもっとあからさまに明白になったと考えたい。先制点がスアレス、崖っぷちからの起死回生の2ゴール(うち1点はPK)がネイマール。いざとなった局面で“不可能”を何とか可能にしてしまう、名前も実績も、そして何より動いたカネも桁違いのプレーヤーの(それも複数の)存在・・・・。ヴェンゲルがそのポリシーにおいて決して良しとしない、出来上がった大物プレーヤーの大挙補強が、やはり最後にモノを言う“味気ない”時代。なるほど、グアルディオラがメッシを喉から手の出るほど欲しがるはずだ、ユナイテッドがロナウドを買い戻したくなるはず、それらをチェルシーが虎視眈々横取りを狙うはず? ▽だが、そんな阿漕な“物量作戦”がいつまでもまかり通っていいはずがない。もうお忘れか。“手作りミラクル”レスターの快挙をもろ手で喧伝した大はしゃぎぶりを、アカデミー上がり主体で長く牙城を守り抜いたファーギー・ユナイテッド、そのハイライトとしてドイツ中の精鋭を揃えたバイエルン(!)を劇的にうっちゃってみせて果たしたトレブルのしびれるような快感を、0-3から大豪ミランをイスタンブールに葬ったリヴァプールの気骨を、ほぼ「未完」と「無名」で始まったヴェンゲル・アーセナルの歴史的“インヴィンシブル”をーーー。そう、チェルシー、シティーにレアル、バルサ、パリSGに倣ったカネ太りチームを作って、それでヨーロッパを制したところで何か誇れるものがあるだろうか。以前にも述べたように、名前が入れ替わってもおかしくも何ともないチームばかりがチャンピオンズの歴代覇者に名を連ねて、何が名誉か。そのためにも、アーセン・ヴェンゲルにはその信念と信義を貫いてもらいたい。願わくば引き続き・・・・エミレイツにて。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.09 11:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】ミラクル・レスター“異聞”

▽ロンドン在住の友人に聞いてみた。「ラニエリは“プレーヤーたちの造反”でクビになった」という一部報道についてどう思う? 信憑性はあるのか? 返事は「・・・・に違いない、ってところだろうな」。つまり、メディアは昨今の“症例”に照らし合わせて「その可能性が大だと決めつけている」ということらしい。真相は今も藪の中だ。が、友人の印象はほぼ的を射ていると思う。彼はさらに言い及ぶ。「(ジェイミー)カラガーは歩く(フットボールの)辞書かもしれないが、真実を見通す感性はスッカスカだ」。カラガーはあまりにもフェアな、言い換えれば、ありきたりで平均的な考え方しかできない、と彼は言う。友人はとりたててレスターの内情に詳しいわけでも何でもないが、ラニエリ解任直後のリヴァプール戦勝利だけを取り上げても、カラガーの「不器用な見立て」は成立しないと言う。「(信用できなくなった)監督がいなくなっただけで、人が変わったように強いチームに変身するはずがない。ヤツらは怒ったんだ、捨て身でね。それがあの快勝だったのさ」 ▽なぜかほっとした。その通りだと思う。そして、遠い異国にいながらも、友人の見解を後押しする“証拠”を並べることだってできる。リヴァプール戦で昨シーズンのフォームを取り戻したかに見えるヴァーディーは言った。「間違いだらけの風評にすごく傷ついた」シュマイケルも「(ヴァーディーと一緒にラニエリ追放を直訴したと囁かれて)冗談じゃないと思った」と反論した。何よりも、暫定で指揮を執ることになったクレイグ・シェイクスピアが「ドレッシングルームにもどこにもそんな(ラニアリを嫌う)雰囲気は一切なかった」と証言している。今更、彼らが嘘をつく理由などあるだろうか。すべては“自分たち”のせいだ、“自分たち”の不甲斐なさがラニエリをスケープゴートにしてしまった、このままおめおめと降格してしまおうものなら、それこそラニエリの業績と名誉を汚すことになる・・・・だから「捨て身」で怒りをプレーにぶつけた、それ以外に世間の「間違った悪意」を雪ぐすべはない。クロップ自身が嘆いたように、リヴァプールはそれこそ不甲斐ない試合ぶりだったが、おそらくそれもヴァーディー以下の怒りに気圧されたからだろう。 ▽出る杭は打たれる。それも“ミラクル”の看板付きの“ぽっと出”なら“打つ”勢いも半端じゃなくなる。今シーズンが始まった頃から、それは感じられた。“まぐれ”のチャンピオンならばこそ、さあて、どんな“化けのはがれ方”を見せてくれるんだろうか、どうせなら・・・・そう、筆者は密に心配していた。メディアの意地悪な“目論見”を、おいしい(かつ、ウキウキするような)ヘッドラインと特集記事の青写真を。プレミア始まって以来の「チャンピオン、一転して降格へ」。困ったものだ。およそあり得ない(はずの)成功を、羨み、嫉妬し、足の引っ張りどころばかりを探しつつ、目の敵にする人の世の習い。もし、優勝ではなく、準優勝もしくはチャンピオンズ参戦程度で収まっていたら、天晴あっぱれ、たとえ翌シーズンに失速しようとも、ずっとこの先も好意の目で包み込んであげたのに? リヴァプール戦快勝の直後、元アーセナルのマーティン・キーオンは、そんな虚しさを込めてか、逆説的な笑えないジョークをもらした。「これをクラウディオ(ラニエリ)がイタリアで見ていたら、テレビに飛び蹴りを食らわしたい気分になったかも」 ▽あえて、あえて前向きなとらえ方をしてみようか。ラニエリ解任は、あわよくばこうなることを願ってのショック療法だった。プレーヤーたちの憤りと反発を引き出そうと、ラニエリには悪いが、禁断の最後の手段に出た。それが裏目に出たなら、つまり、何も起こらなければ、降格もやむを得まい、それだけのチームだというだけのことだ、と。ならば、プレーヤーたちは、非情なクラブ上層部を見返すためにも、それ以上の結果を目指さねばなるまい。その最大の標的はもちろん、3月14日の対セヴィージャ・リーターンマッチ。彼らは心に誓っているに違いない。“その先”までもを。そして無言の直訴をつきつける。ホジソンだろうとマンチーニだろうとごめん被る、ラニエリの分身シェイクスピアとともに突き進むのみ。そして、あわよくば・・・・新たな“ミラクル”を歴史に刻むこまんことを。「ラニエリ、逆転の復帰」! しがない物書きの笑ってしまうような「夢」である。だが、考えれば考えるほど、どこも真似のできっこない、ミラクル・レスターにはお似合いの道筋ではないか。ギャリー・リネカーなら必ずや「よくぞ言った」と喝采してくれるだろう。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.02 13:34 Thu
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【東本貢司のFCUK!】FCUKの夢、全開 ?!

▽苦境にあってもクラウディオ・ラニエリの頭は澄んでいる。むしろ、こうなることを予期して、あえて泥をかぶる心意気が透けて見える。セヴィージャの地に旅立つ直前、“ティンカーマン”はずっと胸の奥底に秘めてきた本音を告白した。「昨シーズン終了をもって辞任する道もあった」。その、ミラクルな“名声”を人々の記憶に押し付ける身勝手を良しとせず、必ずやってくる茨の道を選んだ“男気”を。だからこそ、チャンピオン転じて降格の危機に直面している最中にあっても、レスターは迷うことなくラニエリ支持を公言し、プレーヤーたちも望外の夢を見させてくれた恩義に報いて愚痴の一つも漏らさなかった。ここには、昨今の“目先の損得勘定”でやっつけの措置に走る(もしくは、それが当然とばかりにうるさく暴言をまき散らすファンやメディアに惑わされる)愚挙など、一切跳ね返す、クラブの意地、いや、本来の姿、ステイタスがある。ヴェンゲルのクビをしどけなく叫ぶファンの皮をかぶった似非ファンには爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだ。 ▽その意気に(「この対セヴィージャ・ファーストレッグが我々のターニングポイントになるかもしれない」と述べたラニエリの決意とメッセージに)、プレーヤーたちは応えてみせた。スコアは2-1、ゲーム単体では敗れたが、貴重な、この上なく値千金のアウェイゴールをもぎとってみせた。それも、今シーズンここまですっかり冴えを失っていたドリンクウォーターのスルーパスから、シンボルエースのヴァーディーが蘇ったようにシャープな身のこなしから決めた。あとは、どこぞの国で“ホワイトデイ”とか称する奇妙な習慣が男たちを戸惑わせる「3月14日」(のホーム、セカンドレッグ)まで、“彼ら”が何をどうして“身を証明する”かにかかっている。それで、レスターの明日も見えてくる。ひとまず、ラニエリの言う「ターニングポイント」は良き方向へと舵を切った。そもそも、はらはらドキドキ胸を騒がせるのが“ミラクル・レスター”の魅力、真骨頂ならば、これはもう筋書通り。大敵セヴィージャを少しなりともがっかりさせた意義は相当にデカい。 ▽その前日、苦闘の末にホーム・ファーストレッグを勝ちで収めたマンチェスター・シティーの方はどうか。反発しての5得点は褒めてしかるべき。だが、3失点のツケは小さくない。グアルディオラの表情も「次にこちらが得点できなければ、多分終わる」と冴えない、心細い。数字以上に、レスターのアウェイゴール1は、モナコのアウェイゴール3は、天と地の差ほどに見える。なかでも、蘇ったファルカオの2ゴール以上に、ムバッペの(その時点での)勝ち越しゴールは鮮烈なメッセージだった。キリアン・ムバッペ、18歳。そう、アーセン・ヴェンゲルが「ティエリー・アンリに似たところがある」と言い切った新星。モナコがヴェンゲルの“縄張り”だったからには、その将来性に注目しないではいられない。すなわち、ムバッペの将来は、アーセナルの今後の巻き返し(プレミアおよびチャンピオンズ)にも大きく左右されるはず。アンリを大成させたヴェンゲルか、それとも、パリSG、シティー、チェルシーの“カネ”か。ムバッペという青年の気質はいかほどなのだろうか。“それでも”ユナイテッドにこだわるマーシァルほどの気骨の持ち主なのか。 ▽そのマン・ユナイテッドはめっきり安定感を増してきた。負けない手応えは現状、おそらくチェルシーをも上回る。サンテティエンヌだろうと何だろうと、隙も抜け目もなく、さも当たり前のように退ける。ひとえに勝利の質と中身にこだわるモウリーニョに、悠々落ち着いたポストマッチコメントをものさせる。おまけに、このサンテティエンヌ撃退では、ファンにとってちょっとした希望をももたらす“瑕疵”をも引き連れてきた。ミヒタリアン(とキャリック)の故障だ。目前に控えたえEFLカップ決勝(対サウサンプトン)に、ルーニー起用の目が現実的になったこと。どこかひねくれたところのあるジョゼ君のことだ、先発で使うかどうかは少々怪しまねばならないが、ちょうど中国のCSL行きが取りざたされていた最中で、ルーニーを“引き留める”(といっても本人にその気はさらさらないが)恰好の口実にはなる。レスター同様、ルーニーにとっても、これは何かが変わるきっかけになりそうだ。チャンスは誰も文句がつけようのない形で生かさねばなるまい。スタンドで観戦していたサー・アレックスもひそかに「その証明」を望んでいるだろう。 ▽ここまでをまとめてみるならば、レスターは俄然昨シーズンの光を再び取り戻して残留を確保し、少なくともセヴィージャを撃退してみせる。ルーニーはウェンブリー(のEFL決勝)で、モウリーニョの信頼を取り戻し、ユナイテッドのキャプテンたる真のステイタス奪回に力強く再生する。“アンリの再来”ムバッペはアーセナル入団の夢を語り、いずれガナーズの一人としてプレミアにお目見えする。そういえば、FAカップ準々決勝でチェルシー-ユナイテッドの大一番があるんだっけ。これは大変な(いずれの優勝云々は関係なく)ゲームになる。願わくば、それまでに(時間はあまりないが)ルーニーが掛け替えのない存在として復活していますように。“何か”をさらに実り多きものにするためにも。いやはや、希望的観測ばかりで恐縮ながら、FCUKはすべてが“叶う”ことを祈らずにはいられない。あともう一つ、アーセナルの怒涛の追い込みとヴェンゲルの契約更新。まさかと苦笑する向きもあろうが、ここからあっと驚く(?)チャンピオンズ決勝へとひた走るガナーズの“快挙”にも夢を馳せたい。いや、できないはずはないと思うのだが?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.23 12:54 Thu
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【東本貢司のFCUK!】エンリケとヴェンゲルの差

▽これはちと、ひどい。いくらなんでもリターンマッチで4点差を跳ね返すのは骨が折れるどころではない。チャンピオンズ・ラスト16。バルセロナとアーセナルのことだ。ただし、両者の問題と修復への課題には、天と地の差ほどの、つまり、まるで正反対の要因があることを見逃してはいけない。あえてこのコラムでスペインの雄を引き合いに出す意味もそこにある。バルサの蹉跌、その理由は(たぶん)誰の目にも明らかだろう。十八番の、トレードマークのポゼッションプレスよ、今いずこ。いや、それ自体は必ずしも失敗だとは言えない。方向転換(の必要性)はどんなチームにも、いつかめぐってくる。しかし、それを承知の上だとして、ルイス・エンリケが見誤ってしまった最大の失敗とは・・・・メッシ、スアレス、ネイマールの“ワンダー3”にあまりにも頼りすぎた戦術・・・・いや、それはもう戦術でさえない。いったい「個の能力任せ」のどこに戦術があろうか。筆者はいまだに首を傾げている。就任1年で「ルイス・エンリケの戦術論」本が世に出た“謎”について。 ▽パリSGの前に無残の散った試合後、セルヒオ・ブスケッツは「我々は戦術的に敗れた」と述べたそうだ。それを会見の場で伝え聞いたルイス・エンリケは「何のことか(ブスケットが何を指してそんなことを言ったのか)さっぱりわからず」、当の記者に逆切れして?みついたという。そして、その一件を伝え聞いた某評論家は「これで終わりだな」と思ったとか。ルイス・エンリケ体制の終わり。すでに後任候補の名はいくつか上がっている。最有力はセヴィージャの将、ホルヘ・サンパオーリ。バルサ上層部はスパーズのポチェッティーノやエヴァートンのクーマンも「お気に入りリスト」にアップしているといわれているそうだ。もっとも、リーガとコパ・デル・レイの優勝の目はまだ残っている。タイトルを一つは確保できればお目こぼしはあるのかも・・・・いや、その可能性は低いと、前出の評論家は断言する。ブスケッツの指摘にルイス・エンリケがカチンときたということは、プレーヤーたちに不信の輪が広がり、エンリケ自身にもきっと思い当たる節があるからだ。 ▽では、アーセナルは? エミレイツに戻ってこの、緩急自在の剛腕をまざまざと見せつけたバイエルンをひっくり返すのは至難の業。つまり、チャンピオンズはほぼ絶望、残る現実的なタイトルの目はFAカップだけだ。この数年、定番のようになった(今やイングランドでも哀しいかな価値が薄れゆく一方の)トロフィーを仮に獲ったところで、アーセン・ヴェンゲルの地位は保たれるのか? 確率でいえば「保たれる」方に、筆者なら賭ける。なんとなれば、こちらは戦術で負けたわけではないからだ。明白な力負け。つまり、敗戦の責任は一にも二にもプレーヤーたちの側にある。具体的には、ガナーズの生命線というべきペース(スピード)の点で、バイエルンにほぼ完全に競り負けた。その上、バイエルンが絶妙な間合いで差しはさむ「緩」に翻弄されてはおよそ太刀打ちできるはずがなかった。なにゆえに? 思うに、あのワトフォード戦敗退の屈辱がまだ尾を引いている。精神的に立ち直れていない。だからペースで敵を上回るヴァイタリティーを絞り出せなかった。 ▽最近、何かというと、かつての“レジェンドたち”のコメントが引き合いに出される。本人たちが何を言ったかということより、そこには、あの「インヴィンシブル」シーズンのチーム(2003-04)と比較したがっている(ゲスな)“下心”が透けて見える。無論、そんな“揶揄めいた”ことに何の意味もない。比べる基準などどこにもないからだ。ならば、さすがに無敗とはいかずとも、アーセナルが今も優勝争いの輪に踏みとどまっているのはなぜだ? 当時とまったくわけが違うのは、あの翌シーズンからチェルシーの“爆買い”が始まり、しばらくしてマン・シティーも追随したという、いわば「世界が変わってしまった」ことである。同じ尺度で測れるはずがない。そんなことよりも、今季のアーセナルはここまでを通してほぼベストメンバーを組めないで、何とかやりくりしてきた点を思い出すべきではないか。無論、今後、思い切った補強に向かうのは当然だとして、そこで立ち止まって考えてみなければならない。ヴェンゲルが去ったアーセナルにはたして、誰が、どんな大物即戦力がはせ参じるだろうか。上辺しか見ない輩にはそこがわかっていない。 ▽ルイス・エンリケには悪いが、そこに天と地ほどの差があるのは明白だろう。そう、このバイエルン戦を控えた時点でも「後継者」候補が取りざたされていた。だが、そのどれをとっても(エンリケじゃないが)さっぱり理解に苦しむ話にしか聞こえない。果ては、現在イングランド2部のニューカッスルを率いるベニテスの名前が飛び出す始末。笑ってしまうしかないが、筆者は思ったものである。どうせ“冗談の一環”なら、サー・アレックス・ファーガソンの名前くらい出してみろ、と。さもなくば、ヴェンゲルの前の前のジョージ・グレアムとか。“物理的”に現実味のある名前を出すことに、むしろ真実味が薄れるのに、誰も気づかないとは。かつてのガナーの一人、マーティン・キーオンは「まだアーセナルはヴェンゲル更迭の準備ができていない」と述べ、イェンス・レーマンは「チャンピオンズを獲ってこそ、アーセナルもヴェンゲル自身も“変化”を真剣に考えるだろう」と予言している。そう、まだ早いのだ。それに何よりも、ヴェンゲルが去って誰が来たところで、その節は多分、いやきっと、サンチェスとエジル辺りは新天地を望むだろう。そうなってからでは遅い、いや、それこそ壮大な一からの出直しになってしまうだろうから。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.16 13:25 Thu
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【東本貢司のFCUK!】歴史が培ってきたクラブカラー

▽ふ~ん・・・・「ヴェンゲル解任を求めるプラカードにツイート」? アレックス・オクス=チェンバレンが“誤って”「いいね」を押したとかどうしたって? ま、メディアが「事実」を報道するのは致し方ないとしても、こんなこと日常茶飯事なんですよ、皆さん。ファンたるもの、熱ければ熱いほど、何かしなきゃという強迫観念にとらわれて、一時の激情、それも最も“過激でわかりやすい”文言を吐き散らしたくなるのが世の習い。要するに欲求不満のはけ口、その発露なのであって、それ以上でもそれ以下でもない。昨年末辺りじゃ「今シーズンこそ(優勝まで)行けるぞ」と、期待に胸を膨らませていたはずだろうから、悔しさ、やり切れなさのほどはよ~くわかる。しかし、そんな彼ら自身とて、今この現状を確実に好転させる監督交代などあり得ないことも、よ~くわかっている。仮にもしそうなってしまったら、今度は「アーセナル理事会解散」を叫び出すに違いない?! ▽「ミラクル」から一転、残留争いのアリジゴク(の穴)でもがいているレスターの上層部はこのほど、クラウディオ・ラニエリに引き続き全幅の信頼を置く、と明言した。そもそも昨シーズンが出来過ぎだったこともあるだろうが、ならばなおのこと、解任させる根拠がないからだ。初年度で望外の結果を出して次年度に揺り戻しが来たという、まともな神経の持ち主なら当然、「想定内」と受け取ってしかるべきであり、つまり、ラニエリを評価する材料など、まだ何ひとつと言っていいほど見当たらない。もし仮に、プレーヤーサイドからの“要請”なりがあれば、レスターの理事会も「動く動かない」の議論を持つだろうが、それも一切聞こえてこない。さもありなん、非のほとんどはプレーヤーたちの方にこそある。動きが緩慢、パスミス続出、何をやっても思い切りが悪い・・・・二つ三つゲームを眺めていればすぐ、それがわかる。どこぞの訳知り顔(大抵は戦術論を振りかざす輩)が「カンテがいなくなったのがね・・・・」? 失礼にもほどがある。5人6人が抜けたのならいざ知らず、たった一人のせいでプレミアを制したチームがガタつくなんてあるものか。 ▽それでも、彼らはまだチャンピオンズで生き残っている。大したものではないか。何年か前のエヴァートンに比べれば、超のつく快挙と言ってもはばからない。クラブ史上初、本人たちも夢か幻か、てな心境だったに違いないのだから。(グループリーグの)相手に恵まれた? またしても失礼千万。こういう、一握りの“常連強豪”ばかりをもてはやす通気取り(実際、こういう手合いは“それら以外”のチームについてロクに知っている節もなければ、勉強した跡すらない!)が、年々フットボール観戦の面白さを台無しにし、純粋なファンの楽しみを矮小化している・・・・違うと言い切れますか? ごくごく要約して言うなら、やることなすこと上手くいってプレミアの王者になってしまった、実にむずがゆくてどうやってもどんと構えてなどいられない重圧と、ここだけは失うもののない格下チャレンジャーとしてぶつかっていける解放感の対比が、今季のレスターなのである。だからこそ、レスターは今後もラニエリを全力でバックアップする意志をあっさり更新した。 ▽さて、ここで考えていただきたい。では、アーセナルの経営陣、理事会は、ヴェンゲル支持を改めて確認する何らかの言動をものしたか。していない。多分、今後もする“予定”はない。なぜなら、彼らはヴェンゲルの方から辞任の意思を伝えてこない限り、何もするつもりはないからだ。いや、ヴェンゲルが辞めたいと言ったとしても、全力で翻意を促すだろう。この世界には、成績が悪くなると監督のクビをすげ替えるのを当たり前と考える人々がうようよしている。クラブ経営陣のお歴々も、専任ジャーナリストも、元プレーヤーの評論家も、元プレーヤーで評論家経験も持つ監督経験者も、例外ではない。率直に言おう。そういう方々、手合いからは、歴史についてロクに(本心は「これっぽちの」と言いたいところだが)知識も、理解も、リスペクトも感じられない。ざっと10年ほど前、ある高名なコーチ経験者の評論家が、筆者に向かって「ファーガソン、まだ辞めないんですか?」と呆れ顔で問いかけたときは、正直唖然とし、内心ひどくがっかりしたものである。 ▽そして、本来なら「わかっているはずの」オーナーサイドですら、最近はしびれを切らすのが早くなったきらいがある。無論、そのほとんどが異邦の投資家グループだという事実と密接にリンクしている。つまり、クラブの歴史、言い換えれば、当クラブならではの伝統に基づくスピリット、優に百年以上をかけて培ってきた“カラー”に対する敬意など、多分、彼らはもはや何の役にも立たないと見切っている節がある。が、現実は正直だ。ファーガソン勇退後のユナイテッドがどんな行く末をたどってきたかを振り返れば、言葉を尽くす必要もないだろう。そして、アーセナルもアーセン・ヴェンゲルあっての“今そこにある”アーセナルなのである。もし、ヴェンゲルが去った日には、アーセナルもそっくり別物になり果ててしまうだろう。このざっと20年間、見続け、それなりに理解してきたアーセナルではなくなってしまうだろう。それでも「結果オーライ」なら良しとするかどうかは“彼ら”の問題だ。いや、いずれはそんな日も必ず訪れる。そして「ヴェンゲル解任」を叫んだあの熱血ファンが、いざその日が来て失望に暮れ、あのときの“暴言”を後悔するのも目に見えている。ひょっとしたら、それを“予見”してしまったからこそ、その“恐怖”に怯えたからこそ、彼は思わず“逆噴射”してしまったのだろうか・・・・。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.08 13:25 Wed
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【東本貢司のFCUK!】迫りくる「最後のチャンス ?!」

▽これは痛い! ホームでのまさかの敗戦。ワトフォードがトップフライト(1部)でアーセナルに勝ったのは1988年以来のことになるが、そんなことはこの際どうでもいい。アーセン・ヴェンゲルは敗因についてこう述べている。「前半、ことごとく一対一で敗れ、動きも総体的に緩慢だった。我々は精神的にゲームへの気構えを欠いていた」。つまり、事実上の完敗。さては3日前のFAカップ戦(対サウサンプトン)大勝のマイナス反動? だとしても、対エヴァートン、マン・シティーの連敗からすっかり立ち直ったに見えて、このセットバックには危機感に苛まれてしかるべし。よくよく振り返れば、その後の(このワトフォード戦直前まで)7戦は、どれをとってもほぼ実力的に“組しやすい"相手ばかりだった。とはいえ、この1月だけで7試合の超強行軍。12月も6試合。これで疲労のせいにはできないなどとはとても言い難い。とはいえ、それはどこも同じなのだが・・・・。 ▽某ガナーズファンは、同日後刻、首位チェルシーがリヴァプールと引き分けて「助かった」と宣った。が、本当にそうか? 確かに、チェルシーは「勝てるゲームを引き分けた」点も指摘されるかもしれない。すなわち、ディエゴ・コスタのPK失敗・・・・。ここで、リヴァプールの将、ユルゲン・クロップは、いかにもといったトーンでコスタを激賞するコメントを出して“混ぜっ返して"いる。クロップ一流の“マインドゲーム"・・・・? とか何とかはさておいて、一つ視点を変えてみれば、「助かった」のではなく「せっかくのチャンスをふいにした」とは考えられないか? 一つは、ライバルが軒並み“複数ポイント"を逸してくれた恩恵を生かせなかったこと。もう一つは、もし勝てる試合を勝てなかったのだとしたら、チェルシーは次なるゲームにまなじりを決して臨んでくるに違いないだろうこと(コンテはいつになくえらく悔しがっていた。なんとなれば、その次戦、今週土曜日の相手こそまさにアーセナルなのだ。これはとんでもない一大決戦になりそうな・・・・。 ▽そのココロとは・・・・このざっと10年前後の経緯を振り返っても、ヴェンゲル・アーセナルの十八番の一つともいえるのが「危機感に苛まれたときほど一丸となって結果を出す」ことであり、おかげで幾度となく「大逆転」あるいは悪くとも「最低限」の成果を収めてきたことだけは思い出しておきたい(是非、過去をひもといていただきたい)。つまり、だからこそ、今週末の直接対決はおそらく、後々語り種になってしかるべき今シーズン最大のイベントになること必至なのである。すなわち、コンテ・チェルシーが(幸便にもホームで)勝てば、さしもの筆者も「優勝は九分通り・・・・」と推定せざるを得なくなる。ああ、もちろん、試合はまだそこそこ残っているのだから、この“業界"の決まり文句通り「何が起きるかわからない」。だが、このめぐり合わせなのだ、ここでアーセナルの反発が実らない事態になれば、以後残りの日程で終始、ガナーズの面々の心理には拭い去りようのない“負い目"が染みついてしまう。反骨の志がどうやっても萎んでしまいかねない・・・・。 ▽とはいえ逆に(週末のチェルシー戦に)勝てば、勝ち点差6がひどく“軽く"見えてくるはずのアーセナルに比べれば、同じホームで同率最下位だったハルと引き分けたマン・ユナイテッドの“絶望感"たるや、ほぼヤケッパチになっても仕方のないレベルだろう。ジョゼ・モウリーニョが、ポストマッチ・インタヴューを途中でうっちゃってさっさと引き上げてしまったほどに。さもありなん、ユナイテッドにとってはそれこぞ「最後のかすかなチャンス」だったのだから。残り15試合で首位チェルシーとの差15は、さすがにほぼ白旗宣言。しかも、お隣のシティーが“ネイマール二世"ガブリエル・ジェススのデビューゴールで圧勝したとあっては、ここでも心理的に凹む。寝覚めが悪い。もっとも、インタヴュアーが「レフェリーの判定云々」を切り出したものだから、それがモウリーニョの癇にさわったために、ぷいっと“ウォークアウト"したのは否めなかったのだが・・・・。どうやら今後のプレミア覇権争い、各指揮官のアタマがどれだけクールダウンして“再起"にもっていけるかにかかっているような気がしなくもない・・・・。 ▽おや、ペップ殿だけは「相変わらず」他人事のような冷静さ。「トップの3人の平均年齢20歳」を自慢げに語って、どこ吹く風の「未来志向」とはまた剛毅な。よくぞ言ったものである。「ウェスト・ハムはマンチェスター・シティーにとってパーフェクトなチーム。なぜなら(いまどき?)4-4-2でやってきてくれたから、中盤で(相手を)ぶっ壊すのは楽だったよ」? ふーん、これはどうも、悪い“憑き物"でも落ちたのかな?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.02 13:58 Thu
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【東本貢司のFCUK!】モード、セリフ、ムード

▽ユルゲン・クロップの顔から笑顔が消えた。気が付けばセットバックモードに入っている。その序曲は、マン・シティーを葬った直後、中二日のサンダランド戦ドローだった。つまり「2017年」というキーワード。以後5試合、勝ったのはFAカップ3回戦(対プリマス)のみ。その、弱小相手ですら、ホームで無得点ドロー、敵地でやっと1-0の辛勝だ。とどめが、悪夢のようなスウォンジー戦の競り負け。苦悩の訳は歴然としている。サンダランド、プリマス、スウォンジー…一体、どこの誰が、この“3弱”に、チェルシー追撃の一番手を走っていたレッド・マージーサイダーズが手こずるなどと思ったろうか。そんな最中のレジェンド帰還。スティーヴン・ジェラードのお出まし、コーチ就任発表。大歓迎? それはそうだろう…いや、そうなのか? ジェラードは早速チクっと(クロップの戦術に)やったではないか。おまけに補強の目論見も思うように運んでいない。だめだクロップ、ここで弱音を吐いていては。少なくとも余裕の笑顔はキープしなきゃ。 ▽残り16試合。ディエゴ・コスタ問題がクリアになった(らしい)チェルシーのこれからをざっと俯瞰してみよう。今月末、そのリヴァプール戦がある。アウェイだ。ここで弱り目のクロップにさらに塩をなすりつけようものなら、ライバルを一つ(形而上)蹴落とせる。続いて、中三日でガナーズとの天王山。ここでも、今度はホームの地の利で乗り切れば、優勝マジック(そんなものはないが、いわば心理的な意味で)が見えてくる。3月末のストーク戦(アウェイ)は注意を要するとしても、残る目立った障壁は、4月初旬のシティー戦(ホーム)と、同中旬のユナイテッド戦(アウェイ)くらいだ。ただし、たぶんFAカップも絡んでくるだろうから、一番の敵は過密日程。ただでさえ、4月はリーグ戦だけで6試合も詰め込まれている。その締めにやってくるのが、やはりただでは済まないアウェイのエヴァートン戦。その時点でいくつかポイントを落としていた日には、プレッシャーが心身に“圧って”くる。グディソンのエヴァートンは、チェルシー最大の鬼門なのだ。 ▽そこでふと、奇妙なひらめきが頭をよぎる。もしも、コンテ・チェルシーに引導を渡す主役の座に躍り出るかもしれない、最大の敵となり得るのは、一応曲がりなりにも、いや、ぎりぎりタイトルレースにひっかかっていて、「6強」のうち最も遠いところにいるユナイテッドではなかろうか、と。一種の“魔法的”インスピレーションが、突然降って湧いたからだ。今シーズンに入ってまったくと言っていいほど沈黙を守り続けてきたサー・アレックスが、ジョゼ・モウリーニョの古巣チェルシーにはまったく縁起でもないセリフを公にしたのである。「モウリーニョはやっと“解答”を見つけたようだ」。おそらくは、ウェイン・ルーニーのクラブレコード更新について、メディアから意見を求められたついで辺りだったのだろうが、仮にお世辞めいたニュアンスが少しは含まれていたとしても、ジェラードよりどんと“格上”のレジェンドが、軽くない口調で言い切った事実は、モウリーニョの因縁渦巻くスタンフォード・ブリッジに、鬱陶しくもこだましたはずである。 ▽賢明なる読者諸兄なら、きっとひらめいたのではあるまいか。そう、これはまさに、サー・アレックス・ファーガソンの十八番の一つ、あの「マインドゲーム」(の引退後版)に違いない? いや、さしもの彼も、まさか奇跡的逆転優勝があるとは思ってもいまい。ここまでユナイテッドが何度も“喫してきた”1-1のドローゲームを「悔やんで」、「それらさえ勝ち切っていたら」などと、当たり前の算盤勘定を開陳しているくらいだから。しかし、蜂の一刺しくらいならあるぞ、と“冷やかして”いるのだ。ユナイテッドを勝ち運に乗せた最大の要因は、センターバックコンビの固定・安定。復活したフィル・ジョーンズとサイドから中に入ったロホが、思わぬ相性の良さで堅守を象徴している。ファーギーはそのことをあえて口にしてはいないが、“現役”時代の彼を振り返れば、きっとこの点に「モウリーニョが見つけた解答のキモ」を見出しているはずである。唯一の不安、ポグバのセレブ気取りさえ抑制が利いていけば、現在のユナイテッドには穴らしいものがない。心機一転のルーニーを思い切って先発から使える“本チャン・モード”もプラス要素だし。 ▽とか何とかの一方で、一番“カヤの外”ムードに落ち込みつつあるのが、開幕10連勝だったシティーとは、皮肉なものである。先日の「白旗宣言」もそうだが、ペップ・グアルディオラがめっきり(クロップよりもはるかに)弱気モードで、ほとんど目も当てられない。「自分は(シティーに、プレミアに)合っていないのかもしれない」?「自分は言うほど(監督として)良くないのかも」? この期に及んでそれを言っちゃぁおしまいだろう。それを「合わせる」のが「名将」の矜持、仕事じゃないんですか? 百歩譲って、絶対に口にしてはいけない、指揮官にあるまじきセリフ。はっきり言って、これでプレーヤーたちがシラけモードに入らないと考えるほうが不思議だ。あえて意地の悪い表現を取るならば、独りよがりの言い訳、自分ファーストの身勝手さ暴露、ではないか。案の定、ホーム・スパーズ戦の快勝ムードを台無しにする、負けに等しいドロー。これは、その前の対エヴァートン惨敗よりもタチが悪い。さあどうするペップ、このまま負け犬で去るわけじゃ?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.25 10:30 Wed
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【東本貢司のFCUK!】土壌の差、性格の差

▽果たして「名将」とは何か、その条件とは? 俗に「名プレーヤー、名将ならず」という言葉がある。例えば、フィールドの“鬼将軍”ドゥンガとロイ・キーンは名将たり得なかった。現役時代、ピッチ上であれほどチームメイトが委縮してしまわないかと心配になるほど吼え、怒鳴りつけては叱咤激励し、傍目にはそれが勝利のメンタリティーを増幅したように見えたとしても、おそらくそれは、怒鳴りつけられた相手に才と力があってこそだった。我々は、ヨハン・クライフがバルセロナで何を成したのかは知っていても、勝てないチームを勝てるようにしたのか、そのために彼が何を“変えた”のかと振り返ると、はたと答えに窮してしまうだろう。ごく普通の(知識先行の)ファン(および一部評論家すら)、「名将」といわれてすぐに指を数える名前を冷静に分析してみれば、ほぼ100%、そのチームには、優勝して何ら不思議ではないスターが揃っていたことに気が付くはずだ。 ▽だとしても、あえて「考え得る名将の条件」を思いつくままランダムに数え上げてみようか。まず「実績」は不可欠だ。それも「ありそうにない“土壌”から引き出して見せた実績」が。アレックス・ファーガソンは、辺境の弱小アバディーンを率いてグラスゴウ二大巨象の天下を打ち破って名を上げた。ジョゼ・モウリーニョの場合、多分誰でも「ポルトにトレブル制覇をもたらして・・・・」と話し出すだろうが、彼の「ありそうにない土壌」は、プレーヤーとしても指導者としてもほぼ無に等しいバックグラウンドを有していたことに尽きる。「どこの誰なんだ、この聞いたこともないポルトガル人の若僧は?」。そう、アーセン・ヴェンゲルだってそうだった。彼がアーセナルに舞い降りたそのとき、プロもアマチュアも、老いも若きも、コアなファンも一般人すらも、こぞって鼻で笑いながら首を傾げた。「アーセン・・・・誰?」。少なくとも当時の(いや多分、今も)極東の小さな、プロ化なって間もない国の「天皇杯」とかの価値どころか、名称すら覚束なかった時代なら。 ▽その辺りから引き出してみるとすると、第二の条件は「器」ということになろうか。ファーガソン、モウリーニョ、ヴェンゲル、そして多分クライフには、「名将足り得る器」があった。そこには、その器を“事前に”見抜いて登用、抜擢する誰かがいなければならなかった。ファーガソンにはボビー・チャールトン、ヴェンゲルには当時アーセナルの服チェアマン、ディヴィッド・ディーンがいた。チャールトンには、アフリカを中心に比較的後進のフットボール世界での豊富な見聞の蓄積があり、ディーンにはマニアックで近未来的フットボール観を発散する無名のフランス人に感銘するすばらしき直感が、あった。モウリーニョの場合はいささか逆説的だが、通訳身分でボビー・ロブソンのそばを片時も離れず、その、悪童ガスコインでさえ首を垂れるほどの計り知れない包容力とカリズマに打たれ、学び取ったものを自己流に法則化した。以上の分析はあくまでも筆者の“穿った要旨”だが、当たらずとも遠からずと少しは胸を張りたい。ストーリーは必ず存在するのだ。 ▽つい先日、もはやプレミア降格争いが定着したサンダランドのデイヴィッド・モイーズは「この(1月の)移籍ウィンドウでどれだけ補強できたところで、事態が劇的に好転するとはとても思えない。そもそも、それだけの資金もない」と厭世的弱音を吐いた。その通りだろう。ただし、一年前もほぼ同じ苦境に立っていたサンダランドが、2月以降、怒涛の反攻で残留を果たしたとき、助っ人マネージャーとして到来したサム・アラダイスが何をしたのかも忘れるわけにはいかない。アラダイスは悠々と、その反攻の直接の原資となった、しかも無名に等しい異邦の助っ人(ヤン・キルチョフ、ラミーン・コネ、ワハビ・ハズリ)を発掘補強し、最低限の仕事を成功させた。そう、何も名の知れた出来合いの大物を連れてくるだけが能ではない。おそらくは「見聞」と「直感」、そしてビッグ・サムならではの「思い切り」も作用したのではなかったか。せっかくのイングランド代表監督職を棒に振るほどの「おおらかな脇の甘さ」の所以・・・・それもまた、一つの「器」である。 ▽アラダイスもモイーズも、少なくともトップフライトでの優勝経験はない。だとすれば両名の差は、やはり性格の差。あえて言うならば、後者のユナイテッドとスペインで失敗を続けた負い目からくる生真面目な重さと、前者の「ま、しゃあないわな」と笑い飛ばしてしまえるほどの腰の軽さ。お忘れなきよう。ビッグ・サムはああ見えても戦術志向にけっこう辛く、グアルディオラ並とはいかずともプレーヤー管理の手綱さばきも辛いことで、知る人ぞ知る存在なのだ。どこか中途半端な印象を与えるモイーズの“正統志向”では、どこまで行っても付け焼き刃的梃入れしか望めそうにない。多分、彼自身、それに気づいている。だから、哀しきかな「少々補強できたとしても大きな違いは生まれそうにない」のだろう。もっとも、今回、アラダイスがクリスタル・パレスで同等の魔法を行使できるかどうかは神のみぞ知る。それは、モイーズほどくよくよ考え込まないタチで、アラダイスほどは呑気を気取れるとは思えない、クラウディオ・ラニエリにも同じ事が言えそうだ。 ▽ただ、レスターにはチャンピオンズ参入のおかげで少しは(少しどころじゃない?)カネがあるし、わずかながらサンダランドやパレスよりは立場に余裕がある。おそらくラニエリはすでに来シーズンを見越しているはず。それに、少なくともリーガで今、のし始めているセヴィージャと2試合できる余禄もある。ひょっとしたら“次”もあるかもしれない。失いそうなものよりも得るもの、いや、楽しめるものの方がはるかに多い。痩せても枯れてもプレミアのディフェンディングチャンピオン、腐っても鯛のオーラはさすがに捨てたものじゃない、というべきか。ところで、チャンピオンシップ(イングランド2部)では早、ニューカッスルとブライトンの一騎打ち模様。よほどのアクシデントでもない限り、いいや、3位以下の一進一退状況とを見れば、この2チームが来季のプレミアに上がってくる確率はかなり高いだろう。おや、その3位にリーズがいる。こちらこそまだまだ予断は許さないとはいえ、プレーオフ経由でやっとこさヨークシャーきっての名門の復活があるかもしれない。プレミア優勝争いよりもこちらの方が、より手に汗握ってしまいそう?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.21 13:49 Sat
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【東本貢司のFCUK!】真のフットボール人、その死

▽1994年はワールドカップ本大会の舞台が史上初めてヨーロッパ・南米から飛び出した、いわば、その後のグルーバリゼイションの先駆けとなった歴史的大会だった。しかし、ワールドカップ通の記憶に最も色濃く刻まれているのは、ひょっとするとヨーロッパ予選が見た予想外のドラマの方だったかもしれない。確かに、カントナ、パパンら時代を席捲する精鋭を揃えて前評判の高かったフランスが、最終戦終盤、ブルガリアの奇襲に逆転負けを喫した事件は鮮烈だった。そしてそれ以上にショッキングだったのが、“母国”イングランドの無残な予選敗退。なんとなれば、世にいうヘイゼルの悲劇の“後遺症”で長らく国際舞台からの撤退を余儀なくされ、それが解けたばかりの前回イタリア大会で堂々のベスト4、PK戦にもつれ込んだ準決勝・西ドイツ戦の死闘は今も語り種、かつ、超新星ポール・ガスコインが流した涙が、停滞模様のイングリッシュフットボール再生の象徴ともなった。そんな復権の希望が、アメリカ大会予選でものの見事に吹き飛んでしまったのだ。 ▽そんな失意のスリーライオンズを率いていたのが、この12日、72歳で急逝したグレアム・テイラーである。おかげで、テイラーには「史上最悪のイングランド代表監督」なるレッテルがつきまとうことになってしまったのだが、その一方で彼ほどブリテン島で愛され、敬意を集めた指導者もそうはいない。そもそも代表監督に抜擢された所以というのが、1977年から指揮を執ったワトフォードにおいて、わずか5年で4部から1部(=現在のプレミアリーグ)準優勝まで駆け上った功績、さらにその後アストン・ヴィラに転身してここでもミッドランズの名門を2部からの復活に導いたことにあった。ワトフォードとヴィラはともに、彼が現役時代を過ごしたクラブであり、この土曜日(14日)、ミドゥルズブラを迎えたホーム、ヴィカレッジ・ロードは「クラブ史上最高の監督」テイラーの追悼一色だった。愛着の深い、てしおにかけて育て上げたクラブチームでの成功が、寄せ集めの精鋭をほんの一時手なずけるだけの代表での仕事には“そぐわない”典型だとも言える。 ▽筆者もよく知らなかったが、テイラーに対する敬愛の念は、単にワトフォードやヴィラのファン層にとどまってはいなかったようだ。その根拠は、彼のフットボールに対する深甚な愛情や博識のみならず、彼の知己を得た誰もがほだされてしまう人間的魅力にあったという。ワトフォード時代、同僚およびコーチとして長年付き添ったジョン・マレイが「できることなら彼に成り代わりたかった」と証言するほどに。「温厚で人懐こく気取りのまったくない」テイラーはまた、話好きで、誰彼分け隔てなく年来の友人同然に交流し、何ら隠し事もせず、裏表の一切ない愛すべき人格の持ち主だった。マレイによると、一面識もなかったテイラーの妻子について、いつの間にか長年家族ぐるみの付き合いをしてきたかのような錯覚に陥ったほどだという。代表監督としての失敗後、大手TV局のコメンテイターとして招かれたテイラーは、その溢れんばかりの愛情と博識、的確な分析でもって、一躍評論家として人気を博した。それもこれも、策士たるイメージの強い監督像とは一線を置く“人間味にあふれた指導者”として皆から敬愛されてきた証ではなかったろうか。 ▽彼が無類のフットボール好きだった一つのエピソードを、前出のマレイが明かしてくれている。「TVの仕事を何度か断ってまで、彼は3部、4部のゲームに自費でアテンドしていたが、その様子は本当に熱心で頭が下がる思いだった。それが、当時のスリーライオンズそれぞれのエゴやプライドを御し切れなかった真の理由だったのかもしれない」。また、ワトフォードでは副チェアマン(後にチェアマン)を任じていたエルトン・ジョンも「あれほどの人物はめったにいない。生涯で一、二の親友を亡くしたことはわが身のように辛い」と漏らしている。思うに、生き馬の目を抜くプロフットボール界が、90年代以降カネ太りの商業化を加速させていったことに、テイラーは内心、喜びながらも忸怩たる思いだったのではなかろうか。それこそ今、中国発のあられもない“爆買い”ブームには、苦い思いに苛まれつつ、「良き時代遠かりし」と黄昏れ、自らの命が消えてゆくのを悟っていたのではないかとの感傷にとらわれたりもする。「人間グレアム・テイラー」の喪失は、真の意味で一時代の終わりを象徴しているのだろうか。心からその死を悼んでやまない。 ▽そう思うと、ワトフォードファンの万感の思いが込められたボロ(ミドゥルズブラの通称)戦がスコアレスドローに終わったのは、あの世のテイラーにとっては納得ずくの「しかるべく」だったかもしれない。とどのつまりは勝ちも負けも時の運、双方力を尽くしての結果に愚痴も言葉も何も要らない―――そんなつぶやきが、あの人懐こい微笑から聞こえてくるような気がすると言えばいがかだろうか。何を甘ったるいことを? いいやそれは、何かと言えば、不振に監督交代を叫ぶファンや、投機狙いで参入してくる外資オーナーシップ、あるいはいかにもこれ見よがしに「わが身優先」でダダをこねるプレーヤーたちこそが、今一度立ち返って噛みしめるべき、一つの指標、その拠り所になり得ないだろうか。テイラーの時代以前に、古き良きフットボールに肌で触れる機会をたまたま得た身にとっては、わずかなりとも昨今の現実にその名残を見出したいという詮無い感傷だとしても、また新たにその思い、願いが湧き上がってくるのである。さあ、目を覚ませ、とばかりに。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.15 17:31 Sun
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【東本貢司のFCUK!】初夢は「伝統の一騎打ち」

▽昨年末、本稿から数えて3本前の末尾で、柄にもなく(?)アーセナルへの“希望”に触れた。開幕戦でリヴァプールに敗れて以来、あの「インヴィンシブル(=無敵)2003-2004(無敗優勝)」を彷彿とさせる快進撃で「これは」と思わせ、ところが12月に入ってエヴァートン、マン・シティーに連敗・・・・つまり、柄にもなく(繰り返す)同情してしまったガナーズへのエール。そして2016年最後のゲームを1-0(対ウェスト・ブロム)で締めくくり、元日にはクリスタル・パレスをきれいに片づけたそのとき、筆者はついひとりごちたものだった。試練(対エヴァートン、シティーの連敗)は絶妙のタイミングで訪れたのかもしれない、ここからアーセナルはトップギアを入れて突っ走る、そのためには、ホーム連戦を乗り切った今、中一日で迎えるアウェイのボーンマス戦こそが、いずれ今シーズンの軌跡を振り返るときのハイライトになるはずだ、と。ただし、その前日(2日)、アーセン・ヴェンゲルがつぶやいた“愚痴”に一瞬、不吉なものを感じてしまったのだが。 ▽「過去20年間で最も不公平なクリスマス期間だった。大金を投じている衛星放送テレビに(スケジュールをいじる)特権があるのは仕方がない。が、これほど(チームによってゲームとゲームの間に差にばらつきがあるのは)とはさすがにひどい」・・・・。「中一日」がよほど腹に据えかねたのだろうか。確かに、ホームのボーンマスは上位のライバルたちに匹敵する厄介な相手だ。多分、その辺りをぜ~んぶひっくるめての“アラーム信号”だったのだろう。フォックスとプレミアリーグに対する嫌味に“託して”、ボーンマス戦に臨むプレーヤーたちへの「ぬかるなよ!」という警告と激励ーーー。果たして、三が日の浮ついた気分を振り払いながら、その首尾のほどを見届けようと勇んでいたところが・・・・あれは逆効果だったのかと、呆れ半分で気が沈むばかり。開始から1時間が経ってスコアは3-0、ホームサイド快勝、いや圧勝で、ガナーズの命運も・・・・と、実はそのとき、モニタースクリーンの前を離れ、どうしようか、このまま一寝入りしてしまおうか、“仕事”はそれから気を取り直して筋立てを練り直すのがよかろう、とまで思い悩んだのである。 ▽ひとまず、お湯を沸かしてお茶を淹れている間、ふとぼんやりモニターに目をやる・・・・70分、サンチェスのダイヴィングヘダーが決まって「おやっ?」と、マグカップ片手に座り直す・・・・5分後、60分過ぎに交代でピッチに出たルーカス・ペレスが左足のボレーで1点差ーーー「これはひょっとしたら?」そして・・・・終了間際、タイムにして90+2分、ジルーのヘディングゴールが炸裂して・・・・さすがに大逆転とまではいかなかったが、これはもう勝利に等しい勝ち点1をもぎ取ってみせたのだ。ボーンマスのサイモン・フランシスが一発レッドで退場(63分:キッチンでお茶の用意をしていて見逃した)、一人多いアドバンテージも利いたようだった。3点目献上までのちぐはぐさと生ぬるさは十分に反省の余地はあろうが、逆境を跳ね返したこの底力は今後にも大いに糧として生きてくるだろう。かくて、昨年末の予感(予言?)も息を吹き返した。格別ガナーズファンでもない筆者が覚えた、そんな衝動が“実を結ぶ”保証はまだどこにもないが、チェルシーがこのまま負けないという保証もない。ライバルはざっと5チーム。前途はつとに厳しい。しかし・・・・。 ▽少なくとも、プレミア創設以来、最も激烈なタイトルレースが繰り広げられることは必至。そして、アーセナルが最後まで食いついて希望をつなぐ図も、今なら描けそうだ。プレミアファンにとってはなんと喜ばしい、すばらしい近未来図ではないか。チャンピオンズリーグ、FAおよびリーグカップの「あるなし」はこの際、勘定に入らない、いや、入れたくない。願わくば、このまま6強が僅差のまま最後の、そう、残り5試合前後まで鎬を削っていって欲しい。それでこそ、最後に笑うどこかの価値も輝き渡る。そして、今、視界を過るその勝者は、あくまでもただの直感に過ぎないが、赤と白の染め分けシャツのような気がするのだ。おわかりいただけると思う。あの「インヴィンシブル」に導いた頃から、変わっていたいのは、アーセン・ヴェンゲルただ一人なのだから。贔屓目は一切抜きの、一種の初夢のようなものだと思っていただきたい。それに、なぜか最後に立ちはだかる最大の強敵は「インヴィンシブル」時代以前からの宿敵、6連勝中のユナイテッドになる予感もする。6強のうちどこが優勝したってかまわない。が、こうなったら最後の最後で“オールド・ライバル”同士の歴史的一騎打ちを見てみたい。さて、この初夢、当たるかな?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.04 09:45 Wed
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【東本貢司のFCUK!】爆買いの魔の手を振り払え

▽なるほど中国人は爆買いがお好きなようだ。いや、こちらの爆買いが真正か。さて、湯水のごとく湧き出ずるカネまたカネの出所はいずこか。かつて(それとも今でも?)レアル・マドリードはマドリード市の“ヒモつき”だと言われたものだが、ひょっとしてこちらの方にも“同じ事情”が当てはまるのだろうか。さんざ気を持たせ迷いに迷った(ふり?)カルロス・テヴェスも、ついにその軍門に下った。上海申花がクビを縦に振った移籍金総額こそ、オスカー(25歳)の6000万ポンドに遠く及ばない4000万だが、テヴェス自身の懐には「週給で31万ポンド」が入り、一気に(たぶん)世界最高給取りになる見込み。ふ~ん、上海ファンならいざ知らず、欲の張った(失礼)チャイニーズ小市民がはたして屈託もなくテヴェスのプレーにわくわくするものだろうか、などと勝手な心配をしてしまう。いや、そんなことよりこんな途方もない“価格逆破壊”がもたらす害の方が・・・・。 ▽習近平はことのほかフットボールがお好きなんだそうだ。国庫からの援助のあるなしは脇においても、一説には「法外な免税措置」でバックアップしているのは間違いないのだとか。どうやら本気で「世界最高峰のリーグ」を目指しているらしい。なにせ、イングランドきってのレフェリー、マーク・クラッテンバーグの引き抜きまで画策しているというのだから。上海のボスはグル・ポジェ、スコラーリにエリクソンにカンナヴァーロに、と戦力充実のマグネット工作は着々と進んでいる。こういう状況は当然、来月解禁になるヨーロッパの移籍市場にも少なからず影響する。“彼ら”は「いくらでも出す」の看板を掲げて、殴り込み同然に割り込んでくる。公平に見て抗いようがない。当のプレーヤーも売り手側のクラブも潤うレベルが格段に上がる。ゆえに、逡巡する。ライバルチームに獲られるくらいなら、という思惑もちらつく。唯一の防波堤はプレーヤー個々のプライド。MLSならまだしもと都落ちを頑として拒否するプロフェッショナルの自負がある限りは・・・・。 ▽しかし、真の問題点は、本来の地に足の着いたチーム作り、戦力要請が、さらにしにくくなってしまうことである。シーズン半ばの補強というものは、原則、即戦力の確保だが、そこに中国からの魔の手を念頭に、必然的にその新戦力には事実上レギュラーを保証する“脅迫観念”が芽生える。かといって「明日のスター候補」を即起用できる台所事情など、それがリーグ優勝争いをしているチームなら、なおさら考えにくい。結局、せっかく獲得してもローンに出す羽目になり、必然的に当人が低いレベルで実戦を積むうちに“逸材度”もあいまいになって、気が付けばプレミア昇格を目指すチームの主力になっていたりする。どだい、プレーヤーというものはクラブの思惑通りには動いてくれないものだ。例えば、夏に勇んで入団したまではいいが、クリスマスを迎える頃に監督が解任され、新任に冷遇されなどした日には、それこそさっさと割り切って、中国マネーでも何でもなびいてしまうだろう。そんなことにはならないように慎重な補強戦略を立てるはずなのだが・・・・。 ▽そこであえて提案させてもらうならば、現在“ぎりぎり”の6位(ユナイテッド)までの上位陣は、この1月の補強にこだわらない方がいいかもしれない。一応は各チームが抱える“弱点”のほぼ一本釣りに狙いを絞り、獲れなければそれでよし。現有戦力への信頼のメッセージにもなるはずだし、主力の故障を心配したところで何も始まらない。そもそもチームにうまく溶け込めるかどうかわからない新顔を抜擢しても、プラスに働く可能性は五分、いや三分以下。所詮はギャンブルなのだ。折しも、ジョゼ・モウリーニョは狙い定めたリンドロフ(ベンフィカ)の獲得を撤回した。復活したジョーンズとロホのCBコンビが思いの外好調で、わざわざ波風を立てる補強は理も利もないと判断したからだという。英断だと思う。その他、コンテ、クロップ、ペップ、ヴェンゲル、ポチェッティーノにも動く気配は現時点で見えない。ネタが欲しいメディアが周りで騒いでいるだけだ。仮に動いても、ほとんど競合しない筋、手持ちスカウトの目を信じた上でのものになるだろう。 ▽それもこれも、運営上層部が各監督にとことん信頼を置いているかどうかにかかってくる。オーナーサイド、それもイングリッシュフットボールをよく理解していないビジネス志向寄りがしゃしゃり出てくると、それ自体が問題の種になってしまう。このほど、スウォンジーがボブ・ブラッドリーをたったの85日で解任してしまった件も、まさにその悪例。同胞の元アメリカ代表監督を盲目的に信じようとしたアメリカ人オーナーグループに、何らヴィジョンがなかったことをさらけ出してしまった。外資オーナーシップブームがここまで進んでも、教訓が生かされない恐れはこの先も十分にある。是非、この一件を教訓にしてもらいたいものである。というわけで2016年はここまで。明年もどうぞよろしく。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.30 10:59 Fri
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【東本貢司のFCUK!】「ヴァーディーマスク」大作戦

▽恒例のボクシング・デイは、リヴァプール-ストーク戦、およびサウサンプトン-スパーズ戦(それぞれ、27日、28日に予定)を除く8試合が行われ、各チームの現況からしてほぼ順当な結果を見た。そう、初お目見えのチャンピオンズでは溌剌として申し分のない戦績を残しながら、プレミアではさっぱりのディフェンディングチャンピオン、レスターは、またホームで星を落とした。要のマーレズ、ドリンクウォーターをベンチに置く(いずれも後半交代出場)ショック療法も、復調気味のエヴァートンには通じず、その先制弾はゴールキーパー、ロブレスからのロングフィードをそのまま持ち込んだミラーラスのファインシュートから。つまり、控えキーパーと控えアタッカーのコンビにしてやられたという、レスターファンにとってはため息の出そうな皮肉・・・・。なんとなれば、その“めったにない”一撃が、事実上フォクシーズ(レスターの通称)に引導を渡す象徴になったからだ。それを素直に認めたクラウディオ・ラニエリは「今季は何をやっても上手くいかないね」。 ▽一つ、救いはあった。主軸クリスチャン・フークスの出場停止でチャンスを得た、期待の新人、ベン・チルウェルだ。このオフ、リヴァプールのユルゲン・クロップが獲得に乗り出したほどの逸材で、しかも、その時点ではまだレスターのファーストチーム未体験だった。的確な守備とオーバーラップでキングパワー・スタジアムの観衆も、チルウェルの成長に納得したか、声援が絶えなかった。さて、そのレスターファンだが、ゲーム開始前、スタンドには異様な光景が見られた。ホームサポーター席に陣取るほぼ全員が、ジェイミー・ヴァーディーの顔をプリントしたお面をつけていたのである。仕掛け人は他ならぬクラブで、3万枚を用意したという。言わば、ストーク戦で“両足タックル”を咎められた末の「疑惑のレッドカード」に対する、クラブ挙げての抗議の一環。すげなくアピールを却下して規定通り3試合出場停止を科したFAへの意趣返しだ。ちなみに、ヴァーディー本人も自分のマスクをつけてスタンドで観戦。だが、それも勝利には結びつかなかった。 ▽それぞれホームにボーンマス、ウェスト・ブロムを迎え撃って、チェルシーはディエゴ・コスタ抜きで破竹の12連勝(クラブレコード)、アーセナルは終了間際のジルーの一発で何とか連敗ストップ。いかにも、現在のチーム状況と勢いをそのまま映し出した格好である。サム・アラダイスの初采配ゲームとなったワトフォード-クリスタル・パレス戦は、あゝ、カバイェ26分のニートなゴールで先制したアウェイのパレスが、71分にPKで追いつかれるという、ため息ものの結末。しかし、内容的には希望の光も見え、特に過去2試合先発を外れていたアンディー・タウンゼントが、カバイェのゴールを演出した事実が挙げられよう。悔いが残るのは、1-0からクリスチャン・ベンテケがPKを決められなかったことと、やはりやや厳しすぎる感の否めないPK判定。ボックス内でセバスチャン・プロディと絡んで倒れたウィルフリード・ザハのそれが、ダイヴィングとみなされたのだ。なお、PKを決めたトロイ・ディーニーは、これがワトフォード在籍通算100ゴール目。 ▽オールド・トラッフォードでは、解任以来初めての“帰還”となったディヴィッド・モイーズ率いるサンダランドが、ファーストハーフこそ、そこそこ互角に渡り合って抵抗を示したのだったが、80分過ぎからの連続失点で力尽きた。ショウを締めくくったのは、すっかり復調したイブラヒモヴィッチと、62分から出場のヘンリク・ムヒタリアン。モウリーニョは特にムヒタリアンのインパクト(体を投げ出してのスーパーヘディングゴール)を「beauty」と褒めたたえ、今後の先発起用を仄めかしたのかと思いきや、「ベンチにムヒタリアンとマーシアルがいるのは心強い」。う~ん、まだ全幅の信頼を置くまでに至らないのか。それに、故障欠場中のルーニーのこともある。マタとエレーラが好調な以上、編成のいじりようがないのはわかるのだが・・・・。一方のブラックキャッツ(サンダランドの通称)、デフォーにボリーニ、アニチェベを加えた3ストライカーで臨むも、終わってみればシュートはわずかに6本(うち1本が、ボリーニによる終了間際のゴール)。ここまでアウェイで5得点のみというゴール欠乏症を打開しないと、残留争いから抜け出せない。 ▽モイーズのオールド・トラッフォード訪問が解任以来(2014年)初と述べたところで、意外なエピソードを一つ。モウリーニョはこのほど、サー・アレックス・ファーガソンを、キャリントンのトレーニングコンプレックスに何度か招いていたことを明らかにしたそうだが、実はこれ、モイーズにバトンを渡して勇退して以来のことだったという。つまり、それだけサー・アレックスは後任たちに気を遣ってきたということなのだろう。かつてのサー・マット・バズビーと同じ轍は踏むまいと。ただし、もちろん采配や練習に口を出すわけでは一切なく、モウリーニョによると「偉大な人間の存在をプレーヤーたちにそれとなく思い起こさせたかった」ということらしい。キャリントンの敷地内をぶらぶらしたり、ランチどきにはモウリーニョやプレーヤーたちと肩の張らないおしゃべりをする。「それは楽しくてね。そもそもここは彼の庭なんだし」と破顔一笑する“スペシャル・ワン”。唯我独尊、稀代のワンマン監督もやはり人の子、真正レジェンドには頭が上がらない?!【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.27 13:10 Tue
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【東本貢司のFCUK!】カラフル&フェスティヴ

▽「20年も同じクラブを率いる? あり得んね」(ペップ・グアルディオラ)、「ファンへのクリスマスプレゼント替わりに、シャツをスタンドに投げ入れるよう指示した」(ジョゼ・モウリーニョ)、「あのオフサイドの判定は受け入れがたい」(アーセン・ヴェンゲル)、「ギャルー・ネヴィルなんかが解説者やってるなんて信じられない」(ユルゲン・クロップ)、「わたしならあの一発レッドは誤審だと言い、マーク・ヒューズ(ストーク監督)なら妥当だと言うだろう」(クラウディオ・ラニエリ)―――。各人各様、実にキャラクタリスティック(それぞれのキャラが如実に投射されている)なコメントアラカルト。改めて、今更ながら、プレミアリーグのなんとカラフルでフェスティヴ(=お祭りっぽくにぎやか)なことか。確かに、一年で最もざわざわと忙しく、ただし、国内にじっくり集中できるまたとない時期ではある。ただ、それにつけても“主役”たちが揃いもそろって“ガイジン”ばかりとは(ヒューズはウェールズ人)、ため息を吐くのは筆者のみか。 ▽気が付けばチェルシーが走っている。元プレーヤーで評論家のダニー・マーフィーに言わせると「穴がない」。ラミーレスに続いてオスカーまでチャイナマネーになびかざるを得ない状況にあっても、戦力に充実感と余裕がにじみ出るようにあふれている。抜け落ちていたアントニオ・コンテのコメントは「中国が何とやら」だったか…いや、確か「まだうち(チェルシー)はこんなものじゃない」。もし仮にどこかで腰砕けに落っこちるとすれば、キープレーヤーの故障や“おいた”のアクシデント絡み。だが、その気配はありそうにない。しかし、そんなチェルシーにも引けを取らない堅実さとブレのなさを維持しているのがリヴァプールだ。ざっと眺め渡してみても、ロジャーズ時代からさほど“絵面とタイプのヴァラエティー"の点で代わり映えしないようなのだが…。だとすればやはりこれは、熱血クロップのカリスマが違いを源泉なのか。あゝ、またガイジン監督さまさま。 ▽などと(しつこく)嘆息しているところへ、間が悪くも(?)絶不調クリスタル・パレスからアラン・パーデュー解任の知らせが。そして、まるで予定事項のごとく、後任候補として躍り出たのが、他でもない“ビッグ”サム・アラダイスとは…。いや、もとい、これ以上のノンイングリッシュ化はごめんだからこそ、あえて歓迎しようではないか。それにお忘れなく。ビッグ・サムは何も法を犯したわけじゃない。法律などよりもはるかに威厳の薄い、あるスポーツ統括組織が独自に制定したルールの「抜け穴を知っている」とか何とかうそぶいただけだ。倫理的によろしくない、イメージが悪い、外からとやかく言われるのがウザイ、と、当の組織が自粛(末のイングランド代表監督解任)したにすぎない。ああ、そういえば、FIFAは「ポピー問題」に当たって、イングランド代表以下に罰金を科すことにしたんだっけか。それで済むなら痛くもかゆくも…。しめしをつけた側と国民的思いに準じた側の、静かなるにらみ合い。どこの世界にもよくあることである。 ▽それにしても、ジェイミー・ヴァーディーの一発レッドは「?」の二乗ものだった。つまり、クラブワールドカップ決勝の逆パターン。しかも、状況が滑稽なほどコントラストを成していた。横浜の主審は、一旦は(イエローを)出そうと思いかけたが、何かを思い出したように胸に持って行った手を諦めた。ブリタニア(スタジアム)の方のレフェリーは、一瞬たりとも迷わず、アシスタントを一顧だにせず、断固たる態度・表情でさっと赤い札を取り出した。しかし、セルヒオ・ラモスの足はボールにかすりもせず、ヴァーディーの投げ出した両足(正確には、1.5足?)の片方はぎりぎり「先に」届いていた。そしてそれぞれ、結果は“逆目”に出た。後日談はそれぞれ、「横浜の主審」が次のワールドカップで笛を吹くことはないだろう…レスターの(ヴァーディーのレッド撤回)訴えは却下されて…といった程度。できるだけそっと、速やかに、それなりに、収めるべきところは波風立てずに収めるべし。これってやはり、イエス・キリストの思し召しでしょうか。 ▽さて、わが国は天皇陛下誕生日のおかげで三連休だが、EU脱退を決めたかの国ではお馴染みボクシングデイ絡みの三連休。つまり、プロフットボーラーの“繁忙期”。当然心配されるのは故障であり、その点で不安がどこよりも覆いかぶさるのがアーセナルであり、すでに現地メディアでもそれを指摘する声がしきりである。対エヴァートン、マン・シティーの連敗劇は、およそ降って湧いた事件中の事件。今シーズンは行けるとわくわくどきどきしていたガナーズファンも、天を仰いで青ざめているに違いない。エース、サンチェスの契約更新が“カネ”で滞っているらしいのも嫌味だ。だからこそ、幸いというべきか、年内はボクシングデイ(26日)のホーム/ウェスト・ブロム戦のみ、明けて元日は(監督不在のままかもしれない)クリスタル・パレスを迎え、3日にアウェイのボーンマス戦。決して楽に乗り切れる保証などないとはいえ、あくまでも比較上計算がしやすい年末年始ではあろう。ここでマキシマムの9ポイントを稼げば胸も晴れる、先も見えてくる。昨季が“ミラクル”なら、そろそろこの辺りでヴェンゲルの会心の笑みを見たいところである。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.23 13:30 Fri
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【東本貢司のFCUK!】熱血コンテがプレミアを撃つ

▽12月3日のマンチェスター・シティーvsチェルシーは、事件満載、スペクタクルだった以上に、両軍のキャラと現状を如実に見て取れた感が強く、実に興味深かった。勝負のアヤは、ファーストハーフ終了間際のギャリー・ケイヒルによるオウンゴール。これが格好の“ビンタ”となって、アウェイのチェルシーイレヴンのスピリットに火が付いたという印象だったが、逆に後半のシティー・ディフェンスに時間が経つほど目に見える生ぬるさと小さな判断ミスの連鎖をもたらしたような気がする。得点経過を見ればそれがよくわかるだろう。60分、70分、そしてオフィシャルタイム末の90分。そこに、絵に描いたようなアグエロ(ダヴィド・シルヴァ)、フェルナンジーニョ(ファブレガス)のレッドカード退場劇が続いた。コンスタントでおよそブレの見えないチェルシー、とらえどころがもう一つで、ときにストレスが負の方向に働いて自滅したような、ちぐはぐそのもののシティー。 ▽そんな印象を振り返りながら、ふと、思い当ったことがある。他でもない、両指揮官のいつになく顕著だったお馴染みの風情だ。子供じみたという形容詞すら思い起こさせる、アントニオ・コンテの派手で感情むき出しのオーバーアクションと、舞台俳優も顔負けの露骨な表情。一方のペップ・グアルディオラは思索家然として洗練された物腰こそ変わらないが、画面に抜かれるたびに物憂い表情をにじませ、振る舞いも消極的だ。泡立つような熱血を全身で表すイタリアンと、何事にも動じないフリを肝に銘じようと自制する哲学者スパニッシュ。ふと「ローマは一日にしてならず」の諺を生み出したセルバンテスの古典的大ベストセラーを思い出す。ドン・キホーテは何やら屈託を抱えながらもひたすら我が道を突き進むが、内に秘めた狂熱の理想はいつ噴出して手も付けられない事態を呼び起こすがわからない。変な理屈だが、ペップとコンテはそれぞれ、ドン・キホーテの二面性を明確に分離したキャラに見えてくる。あるいは(舞台設定から)ジキルとハイドのように。 ▽そんな“妄想”を頭の隅に残したままでゲームの振り返りに戻ろう。つまり、ピッチの上ではベンチの指揮官とは真逆のキャラが、それぞれのプレーヤーたちによって演じられていた。末尾のアグエロとフェルナンジーニョによる激した粗相が象徴するシティーイレヴンの、的を外した大立ち回りと、終始クールで敵の心の隙をあざ笑うように落ち着き払ったビジタープレーヤーたち。あの“問題児”ディエゴ・コスタが人が変わったように“大人っぽく”見え、実際に大人びたプレーで脇役を務めてみせたほどに。コンテに周到な演技プランがあるとは思えない。あのホッドブラッド・アクションは彼の紛れもない“素”だ。それがむしろ、ピッチ上の戦士たちをクールに躍らせる。そんな気がしてきたのだ。多分、それで当たらずとも遠からず。ジョゼ・モウリーニョ時代の9試合に迫る、8試合連続勝利という事実もそれを裏付けする。なにしろこの間、コンテはほとんどチームをいじっていない。無論、ヨーロッパの試合がないというプラスハンディの恩恵もあるが。 ▽このコンテ流・チーム再生術の開花には、イメージ作戦(?)のみならず、実際的根拠も散見する。一に、最近のプレミアではとんと珍しい3バックで固定し、そのあおりで(不振模様の)イヴァノヴィッチはベンチが指定席になった。卵が先か鶏が先かの論議になるが、そこで注目すべきは実力者ファブレガスも控えに回されている事実だ。そして、8月の移籍締め切りぎりぎりに獲得にこぎ着けたダヴィド・ルイスとマルコス・アロンソ。ルイスは3バックの中央にどんと居座り、アロンソは左サイドで絶妙なバランスメーキングを披露して、ヴィクター・モーゼズの左サイドコンヴァートをここまで見事に支えている。コスタの“変貌”やアザールの復調、あるいは新加入カンテとマティッチのダブルアンカーシステムがどうしても目立つのは致し方ないが、チェルシーの“クール・レヴェレーション”に欠かせない肝のキーマンは、ルイスとアロンソだと見てほぼ間違いない。ということは、コンテはオフに「3バックの補強の目玉」のプランを温めていったはずである。 ▽対リヴァプール、アーセナルの連敗は、確かにちょっとした危機感を周囲に与えたかもしれない。が、今となってはむしろ願ってもない教訓、もしくは良き反動の種になったと考えられる。そして、この迅速な立ち直りにも、コンテの本能的なオーバーアクションが必ずや寄与しているはず。勝手も負けても、勝ちゲームを引き分けに持ち込まれても、慌てず騒がずのペップ・キャラではこうはいかない・・・・のかどうかは何とも言えないが、少なくともプレーヤーに苦笑いをさせ、ファンを楽しませ、全体として微笑ましい印象すらもたらす効果は、個人的に認めたくなる。もっとも、ペップやモウリーニョが同じキャラに転じても滑稽なだけだろう。コンテならではである。うん、そういえば、リヴァプールのクロップにも通じるものがある。あの、不敵そのもののニヤニヤ笑いは、実に人なつっこく、かつ頼もしく見える。アクションも結構派手だ。これはどうやら、コンテとクロップのアクションバトルがタイトルレースを占う、番外的目安(?)になりそうな気配で。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.07 11:15 Wed
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【東本貢司のFCUK!】継続とその“理解”は力なり

▽EFLカップ準々決勝4試合の結果が出た。勝ち上がったのはハル・シティー、リヴァプール、サウサンプトン、マンチェスター・ユナイテッド。3チームはホームで勝利をものにしたが、サウサンプトンの“快勝劇”はエミレイツで演じられた。つまり、アーセナルだけがホームサポーターの失意を呼んだことになる。このセインツ戦、アーセン・ヴェンゲルはほぼ控えメンバーで固めたイレヴンを送り出して「負けるべくして」負けた。ちなみに、ユナイテッドはほぼベストの布陣で、チャルシーを下したウェスト・ハムを一蹴している。さて、ヴェンゲルはどこかでこのEFLカップを重荷に感じ、軽視していたのだろうか。ざっと調べてみても、これについての彼からのコメントは見当たらない。リヴァプールのユルゲン・クロップが「このカップ戦は非常に重要」と言い切っているのは、彼にとってのイングランド・初タイトルがかかっているからだろう。が、それにしても・・・・。 ▽かつてのイングランド代表、クリス・ワドルは、この準々決勝が始まる前から、今シーズンから「EFL」を冠することになったリーグカップの“惨状”について「ファンにとっての詐欺に等しい」と断じていた。一例をあげると、リヴァプール-スパーズ戦ではそれぞれ(直前のリーグ戦からのメンバー変更が)11名と10名に及んだ。ある集計によると、プレミア10チームの“変更総計”は71名だったという(準々決勝以前)。ある程度のアレンジ程度なら無論、今に始まったことではない。特に初期のラウンドでは下位ディヴィジョンを相手にすることも多く、トップフライト(1部=プレミア)の監督が控えないしは若手の実戦経験の場とするのはほぼ常識だ。しかし、プレミア上位同士のリヴァプール-スパーズ戦や、準決勝進出がかかった試合でのアーセナルの「ほぼ総入れ替え布陣」は、さすがに行き過ぎではなかろうか。「ファンに対する詐欺」の“真意”について、ワドルは少なくとも事前にスターティングイレヴンの発表をしておくべきだと提言している。 ▽つまり「もし、贔屓のチームが“二軍以下”のプレーイングスタッフで臨むことがわかっていれば、チケットを買うべきか否かを選択できる。特に、遠路はるばるはせ参じることになるビジターサポーターには、その選択肢を与えてしかるべきではないのか」というわけだ。しかし・・・・。以前、Jリーグがナビスコカップでメンバーを落とすことに規制をかけた事例について、筆者はひどく違和感をもったと述べたことがある。誰と誰を試合に出すかの権限はあくまでも監督にある。例えば、そのナビスコカップ戦直後のリーグ戦を絶対落としたくない場合、ある程度は主力を温存するのは理に適っている。成績が芳しくなければ、真っ先に“被害”を受けるのは監督だ。どこに力を入れ、どこで抜くかをコントロールするのも、監督の手腕の一つだと考えられる。マネージするからマネージャーというのであって、その時点での(特にファンが見なす)ベストメンバーをただ送り出すだけなら誰でもできる。監督は形だけの存在になってしまい、ましてやライセンスなど何の意味もなくなってしまう。何かボタンの掛け違えのような違和感を感じるのは筆者だけか? ▽つまり、ワドルはそのことを百も承知の上で「スタメンの事前発表」を提言しているのだろう。物見遊山やデートイベントで紛れ込んだ観客ならいざ知らず、クラブのサポーターたるもの、当の試合にかける監督の計算に気が付かないはずがない。なるほど、ホームのファンに期待の新人たちをお目見えさせる意図なんだな、チャンピオンズもFAカップもあることだし、何よりも今シーズンはプレミアのタイトル奪取も有望、となれば、アーセナルのコアなサポーターは納得する。それで負けてしまったら? もちろん悔しい、ベンチにさえ主力をほとんど置かなかった起用采配はやはりどうだったのか、とがっくり肩を落とし、多分しばらくはヴェンゲルに対して恨めしい思いを引きずってしまうだろう。そのとき、呼応するコメントが、このほど正式にイングランド代表監督に指名されたばかりのギャレス・サウスゲイトからもたらされている。「長い目でチームの成長と充実を促したい。目先の一試合で判断するのは無しに願いたい」。一過性の性格を持つ代表チームですらそうだとしたら、クラブチームはもっともっと「長い目」で判断されるべきだろう。 ▽そう、予想通り、いや、予定調和のごとく、スリーライオンズの新しい指揮官は、サウスゲイトの(アンダーエイジ代表からの)昇格就任で決着した。不協和音は今のところ一切聞こえてこない。メディア周辺で噂に上っていたユルゲン・クリンスマンは、奇しくもほんの少し前、アメリカ代表監督の座を追われていたが、その前から「ク」の字すらささやかれることはなくなっていた。当然だ。名のある大物外国人監督を招聘するブームは依然として、特に“第三世界”では健在だが、母国たるもの、もはや付け焼き刃のカンフル剤効果に期待しても仕方ないだろう。なぜなら、不祥事で身を引かざるをえなくなったとはいえ、サム・アラダイスへの期待は、外部から察するよりもはるかに大きかったからである。ならば、そこでまた“逆戻り”ではそれこそボタンの掛け違えになる。サウスゲイトの契約期間は4年。2020年のユーロまで彼に預けるということだ。成績次第だが、筆者はそれでも短いと思う。使い古された言葉だが継続は力なり。そのことは、サー・アレックスはもちろん、今や世界有数の長期政権を敷くヴェンゲルがはっきりと証明している。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.02 10:00 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ラニエリとポチェッティーノ

▽初体験のチャンピオンズリーグ、その予選リーグを4勝1分の堂々たる戦績で乗り切り、1試合を残して首位通過を果たした「イングランドチャンピオン」レスター。紛れもなく「快挙」である。相手に恵まれたグループに入ったという但し書きなど、ほとんどやっかみに等しい。なにせ、レギュラーメンバーの一人として、この舞台を経験したことがないのだ。仮に以前の所属クラブが云々の話にもっていったところで、チームスポーツの世界では何の意味もない。もしかしたら、プレミアで運が向かずにもがいているストレスが、失うもののない立場で発散できていると考えることはできる。賭けてもいいが、おそらくは始まる前から格上のプライドを持つアーセナルやマン・シティーなら、こうもスイスイとは行かなかったに違いない。スポーツの真剣勝負において、そのマッチアップを最も左右する、言い換えれば最後に「差がつく、違いがわかる」要素は「メンタル」なのだから。 ▽そこで、逆に敗退が決まってしまったトテナムの将、マウリシオ・ポチェッティーノがつぶやいた「敗軍コメント」がクロースアップされてこないか。「今シーズンが始まった頃からわたしは、我々のチャレンジはフィジカルではない、タクティカルだと言い続けてきた。土曜日に続いて火曜、水曜に試合があることへの気構えをコントロールすることだと」注目すべきなのは、「タクティカル」つまり「戦術」とは、週末の国内リーグ戦+ミッドウィークのチャンピオンズ戦への臨戦マインドを“整える"(とまあ、筆者なりに翻訳してみた)ことだと表現している点だ。これをさらに平たく解釈しようとするとくどくなってしまいそうだが、要するに、どんなに優れた理論であっても、それを生かし切るにはメンタルフィットネスが欠かせない、ということだろう。レスターの面々ほどではないとしても、スパーズのメンバーとてチャンピオンズ参戦のスケジュール調整には、いざとなると戸惑いもあるはずだからだ。だからこそ、レスターの無敗通過決定は「快挙」なのだ。 ▽なるほど、理屈は通っている。が、かく宣うポチェッティーノ自身にも“迷走”もしくは“調整失敗”のきらいも否めない。そのことは、敗退が決まったモナコ戦の先発メンバーを見れば明らかだろう。ディフェンスラインの名前を見て思わず目を疑ったのは筆者だけだったろうか。CBがケヴィン・ヴィマーとエリック・ダイアー? トビー・アルダーヴァイレルトの故障不在は致し方ないとしても、なにゆえ最も頼れるはずのジャン・ヴェルトンゲンがベンチスタートだったのか。それに、右SBがカイル・ウォーカーではなくキーラン・トリピアーとは! ここで負ければ絶望必至のあとがない状況では、少々無理をしても可能な限りベストの布陣を組んでしかるべきだった。案の定、スパーズはモナコの猛攻に為すすべもなく、敗れるべくして敗れた。そう、スカイスポーツが選んだマン・オヴ・ザ・マッチがGKロリスときては、思わず笑ってしまったほどに。つまり、もっと酷いスコアで惨敗していただろうに、という皮肉、ブラックジョークの含みがあったのでは? ▽そんなスパーズの体たらくを、解説者として観戦していたフィル・ネヴィルは「今シーズンのここまで目にした中で最悪のパフォーマンス」と酷評した。そしてこうも述べている。「プレミアでは(若手主体の変則起用などが)通用することはあっても、チャンピオンズではそうはいかない。彼ら(とポチェッティーノ)はかくて罰を受けた。良い教訓になっただろう」―――辛辣に聞こえるかもしれないが、ネヴィルはむしろ温かい目でスパーズを“思いやった"のだ。それが「経験」というものなのだ、と。現役時代、ユナイテッドで必ずしもレギュラーではなかった身でありながら、豊富な“ヨーロッパ体験”を積んだ彼ならではの言葉だと思う。無論そこには、言葉にはせずとも、サー・アレックスが幾度となく身をもって甘んじ、そしてそれを糧に栄光を築いてきた「蹉跌と成功」へのオマージュもにじみ出ているようだ。キレるだけの頭脳では壁は超えられない。負けるが勝ちの反骨のエナジーこそ、何よりも尊いのだ。挫折を知らないことほど後が怖いものはない。 ▽その点、クラウディオ・ラニエリの感想は、ごくごく素直であっけらかんとして、かつ、いかにも含蓄がある。「(あっさり通過を決めたことが)信じられない。夢のようだ。決勝トーナメントの相手がどこになろうと関係ない。いや、楽しみなくらいだ。それより、この素晴らしきパフォーマンスをプレミアでもやってもらわないとね。そっちの方が心配で頭が痛い、気が気じゃないよ」彼は開幕前から言い続けていた。チャンピオンズはあくまでもオマケ、肝心なのはプレミア―――だから歯がゆい、悔しい。チャンピオンズ5戦で4勝、ところがプレミアでは10試合以上経過してまだ3勝。敗戦の数はすでに昨シーズンのダブルスコア。確かに「目も当てられない」。ちなみに、スパーズはここまで唯一プレミアで無敗を堅持している。次なる相手は、レスターが昇格ミドゥルズブラ、スパーズは復調して絶好調のチェルシー。38試合のうちの一つではあっても、この、それぞれの結果とその内容は、今後に大きな意味を持つ。少なくともラニエリにはそれがわかっている。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.11.24 09:45 Thu
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