コラム

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【日本サッカー見聞録】リオ五輪のこぼれ話

▽リオ五輪も残すは3位決定戦と決勝戦のみとなった。その決勝は、ブラジルvsドイツという因縁の好カード。ブラジルとしては2年前のW杯で1-7と惨敗した屈辱を晴らす、またとない絶好の機会でもある。まさに「舞台は整った」と言えよう。 ▽五輪の取材は2008年の北京以来だが、北京でのサッカー会場は天津や遼寧といった北京近郊の都市だったし、北京にも滞在したためメインメディアセンターにも何回か足を運んだので、五輪の雰囲気を楽しむことができた。しかし“リオ五輪”とは言うものの、日本の試合会場はマナウス、サルバドールの2会場だったし、グループリーグを2位で突破した場合のサンパウロにも滞在したが、五輪の雰囲気はまるで感じられなかった。 ▽それらの3都市ではサッカーしか行われないから当然と言えば当然だし、五輪のサッカー競技は各グループとも同日に行われるため、日本以外の試合をテレビで見られる機会はない。W杯ならグループリーグ期間中は連日のように試合があるため、他国の試合をテレビ観戦することができる。ここらあたりも、五輪は都市開催、W杯は国開催の違いといったところだろう。 ▽やはり五輪の雰囲気を満喫するには、リオに行くしか方法はないようだ。そのリオだが、連日のように強盗などの被害がニュースになっている。「五輪に行く」と言うと、多くの知人・友人から温かい忠告を頂いたが、マナウスは田舎のためか身の危険を感じることはほとんどなかった。日本の練習取材のためにタクシーに乗ったら、運転手がICレコーダーを取り出し、「日本人の忘れもだから返して欲しい」(と言っていたと思う)と手渡された。海外取材で初めての経験でもある。 ▽さすがにサルバドールは2年前のW杯で同業者がひったくりに遭い、逃げようとして肘を骨折したことがあったため警戒せざるを得なかった。サルバドールはリオと同様、海岸沿いのビーチが美しいリゾート地。やはり観光客が集まる所は、強盗などの物騒な輩が出没するのだろう。日本食のレストランで久々の和食を堪能した帰り道、歩いてタクシーを拾おうとしたらお店のママから忠告された。 ▽彼女いわく、「2年前からブラジル経済は閣僚の汚職で悪化し、お店がどんどん潰れている。そのため強盗が増えた。彼らは拳銃を持っているので、絶対に抵抗してはいけない。抵抗したら、彼らは怖くなって撃つ。移動には必ずタクシーを使いなさい」とアドバイスしてくれ、タクシーを拾うまで炎天下で付き合ってくれた。 ▽2年前のW杯は、連日、日本の練習取材のためサンパウロ郊外(と言ってもバスで1時間かかる)のイトゥと試合会場への移動の往復のため、現地の人と触れ合う機会はほとんどなかった。五輪はW杯に比べて日程的に余裕がある。これはこれで、いいのかもしれないと思った。残念なのは、日本がグループリーグで敗退したことだった。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.08.18 19:20 Thu
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【日本サッカー見聞録】手倉森監督の指摘した2つの課題

▽日中の陽射しは刺すように痛かったマナウス、初夏の気候を思わせる爽やかな風の吹いていたサルバドール、そして待ちゆく人々はダウンやレザーのジャケットを着ている冬のサンパウロ。同じ国でありながら、こうも気候が違い、改めて国土の広さを痛感させるのがブラジルだ。 ▽残念ながら手倉森ジャパンは1勝1敗1分けでグループリーグ敗退を余儀なくされた。試合を重ねるごとに駆け引きの妙を見せつつあっただけに、せめてあと1試合くらいは見たかったというのが正直な気持ちだ。すべては初戦のナイジェリア戦の“打ち合い”が誤算だったが、それについて手倉森監督は計算外だったことを明かした。 ▽アジアではボールポゼッションで対戦相手を上回れるものの、逆にカウンターの餌食になりやすい。ところが世界に出れば、日本のストロングポイントであるボールポゼッションは通じない。それはザック・ジャパンが2年前に身を持って体験した。そこで手倉森監督は、アジアの戦いからボールポゼッションを半ば捨て、ショートカウンターに活路を求め、アジアでは成功を収めた。この発想はハリルホジッチ監督に通じるものがある。 ▽ところがナイジェリア戦では、相手の素早い仕掛けに後手に回った。アジアと比べて“個の強さ”も違った。「前からプレスに行けば」と悔やんだものの後の祭り。大会前にアフリカ勢と2試合を行ったが、所詮はテストマッチに過ぎず、効果はほとんどなかったと言える。ただ、こうした経験の積み重ねをいかに今後に生かし、共有していくか。そのことを試合後に手倉森監督が指摘していたのは興味深い。こちらは霜田NTDを含め、技術委員会の今後の課題となる。 ▽そしてもう一つ見逃せないのが、アジア最終予選と今大会を含め、手倉森監督は選手のコンディションについて自信を持っていたことだ。それは早川コンディションングコーチの存在を抜きにして語れない。2000年シドニー五輪以来、A代表と五輪チームを掛け持ちで見続けてきた早川氏は、アテネ五輪の山本ジャパン、南アW杯の岡田ジャパンでも陰でチームを支えてきた。 ▽そんな早川氏について、手倉森監督は、外国人監督だと同じく外国人フィジコを採用するため、その指導法が日本人に合っているのか疑問を呈していた。過去にはファルカン時代にフィジコのトレーニングがハード過ぎて、選手が悲鳴を上げ、ブラジル人と日本人では骨格や筋肉の質が違うため、指導法に疑問の声が上がったこともある。現状は、外国人フィジコと早川氏がコミュニケーションを取りながら指導しているものの、イニシアチブは外国人フィジコが握っているように映る。 ▽選手とのコミュニケーションを考えれば、早川フィジコの方が選手も安心して練習しやすいだろうし、違和感を覚えてもすぐに相談できる。そうした利点も含めて、経験豊富な早川フィジコを手倉森監督は全面的に信頼していたからこそ、選手のコンディションには自信を持っていた。スタミナと早いリカバリーは日本の武器の1つでもある。それを支えるフィジコについても一石を投じた手倉森監督。このことも、技術委員会にはしっかり検証し、今後の代表強化に生かしてもらいたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.08.13 11:30 Sat
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【日本サッカー見聞録】久保の招集を断念。当てにならない約束より現実的な判断を歓迎

▽4日に開幕するリオ五輪男子サッカーで、マナウスで調整中のU-23日本代表の手倉森監督は現地時間2日20時30分過ぎに、FW久保(ヤングボーイズ)の招集を断念し、バックアップメンバーからFW鈴木を18名に登録することを明らかにした。鈴木の代わりにはFWオナイウ阿道を追加招集する。 ▽ヤングボーイズのGMと日本サッカー協会(JFA)との交渉は、最後まで平行線を辿った。当初はチームのFWが負傷したため久保の招集を拒否したヤングボーイズだったものの、急きょ霜田NTDが現地入りして交渉した結果、3日のCL(チャンピオンズリーグ)予備戦後は久保の招集に柔軟な姿勢を見せた。 ▽日本サイドとしては、4日のナイジェリア戦は物理的に間に合わないものの、3日のCL戦後にスイスを発ちマナウスに向かえば、4日の試合中には合流できる可能性が出てきた。このため3日の試合後は必ず久保をリリースして飛行機に乗せることの確約を求めた。選手を入れ替えるタイムリミットをFIFA(国際サッカー連盟)とIOC(国際オリンピック委員会)に確認したところ、2日に手続きをしないと間に合わないことが判明したからだ。選手を入れ替えない場合、初戦は久保が不在となるが、第2戦以降の主力として期待できる。 ▽そこで2日昼過ぎに最終決断を下すとして粘り強く交渉したものの、ヤングボーイズの結論は「3日の試合が終わらないと久保を出せるかどうかの判断はできない」というものだった。3日以降では選手の入れ替えができないため、もしも3日の試合後にノーという返事が来たら、日本は17名の選手で五輪に臨まなければならない。ヤングボーイズが3日の試合後に久保をマナウスに向かわせるという確約が得られない以上、久保の招集を断念せざるを得ない苦渋の決断を手倉森監督は下した。 ▽手倉森監督は「縁というのは良いバランスがあってこそ結ばれるもの。自分が、彼は海外組であり、この世代のエースと思い過ぎたことで縁がなくなってしまったのかな」と自戒を込めて久保の離脱を残念がった。そして18名の登録枠に滑り込んだ鈴木は「久保の思いを考えると、あいつの分もやらないといけない。複雑な気持ちでもあるが、せっかく来たチャンスなのでモノにしたい」と、久保を気遣いながらも意欲を見せていた。 ▽正直なところ、今回の決断は正解だったと思う。それというのも、例え「3日の試合後は久保をリリースする」とヤングボーイズが確約しても、その約束にどこまで拘束力があるのか不明だからだ。「やっぱり出せない」とか「ケガをしたので出せない」と言われたら、それまでのような気がする。当てにならない約束なら、現実的な判断をした方が被害も少なくてすむ。久保にはロシアW杯や東京五輪のOA枠を目指してもらい、チャンスをもらった鈴木にはマナウスで爆発して欲しい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.08.04 00:05 Thu
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【日本サッカー見聞録】パフォーム社との放映権契約(2)

▽今週は先週に引き続き、来シーズンからJリーグはパフォーム社と放映権契約を結んだが、スマホやタブレットでJリーグの試合をファンがライブ観戦できるメリットにどんなものがあるのか紹介しよう。 ▽そもそもの発想はアメリカのMLBを参考にしている。MLBでは球場内のwi-fi環境を整備し、複数台のカメラでベンチだけを撮影したり、ファンだけを撮影したりしている。Jリーグもそうしたマルチ映像に加え、プレーバック機能を使ってゴールシーンをリプレイしたり、解説者のオリジナル分析を聞いたりするなど、目の前で繰り広げられる熱戦に加え、様々な情報をリアルタイムで選択して視聴できることで、観戦スタイルの幅が大きく広がることが予想される。 ▽さらに放映権料の増加(年間50億円が4倍強の210億円になり、さらに地上波とBS放送権料の増加も見込まれる)により、各クラブへの分配金を増やし、大物外国人選手の獲得をJリーグが資金的にサポートしたり、経営基盤の強化につなげたりするメリットもある。これまでJFA(日本サッカー協会)と比較して放映権料やスポンサー契約、入場料収入で脆弱だったJリーグだが、これでやっと対等な立場になったと言えるかもしれない。 ▽この契約に関してJリーグの村井チェアマンは「日本のスポーツ界初と言える長期大型の放映権契約であり、日本のスポーツ産業が有力なコンテンツとして、海外から投資対象と認識いただけたものと考えております」とコメント。先駆者的な役割を果たすところは、元リクルート社出身だけにフットワークの軽さと大胆な決断のなせる技だろう。一方、パフォーム社はサッカーをきっかけに、今後は野球、テニス、バスケット、ラグビー、モータースポーツ、総合格闘技でも同じようなサービスを展開する予定でいる。 ▽「DAZN(ダ・ゾーン)」が提供するサービスの概要(値段や加入方法など)は今年の夏に発表する予定でいる。月額の値段が幾らになるのか、そしてどんなサービスが受けられるのかで加入者は判断するだけに、サービス概要は気にかかるところだ。そしてもう1点、気になるのがパフォーム社とソフトバンクが争っていた今年2月頃の噂である。そもそもパフォーム社は英国で「ウォッチ&ベット(Watch&Bet)」という、オンライン・ブックメーカー向けの動画配信サービスを展開したことで急成長した。 ▽スポーツ中継をライブ配信しながら、ベット(賭け)を促すサービスは、提携するブックメーカーにとっては口座獲得の窓口にもなる。英国ではスポーツが賭けの対象になっているからこそできたサービスだ。しかし日本にはtotoがあるものの、あくまで“サッカーくじ”として賭けのイメージを排除している。ギャンブルという言葉にはネガティブなイメージがつきまとい、抵抗感があるからだろう。このため一時はソフトバンクとの契約を望む声も多かった。それが最後は契約金の高さでパフォーム社に決まったが、その背景にはベット(賭け)に関する懸念もクリアできた公算が高い。果たしてオリジナルの動画配信により顧客数増で、どれだけ動画広告収入が伸びるのか。サービスの概要ともども気になるところだ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.07.27 17:30 Wed
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【日本サッカー見聞録】Jリーグはパフォーム社と放映権で破格の契約を締結

▽Jリーグは7月20日、2017年から10年間に及ぶ放映権を英国のパフォーム社と締結したと発表した。放映権の総額は2100億円で、無料視聴の地上波テレビとBS放送を除く、国内の有料放送が対象となる。パフォーム社はインターネットを使い、スポーツ映像やデータといったデジタルコンテンツを世界的に展開している大手企業で、新たなスポーツ生中継サービスとして「DAZN(ダ・ゾーン)」を日本で開始することを6月に発表していた。 ▽それにしても突然の発表だった。前日19日には第7回のJリーグ理事会があり、村井チェアマンは1時間前倒しで始めた3時間に及ぶ会議は放映権の議論がメインだったと明かした。しかし具体的な内容については「事務手続きは契約事項なのでケアしないといけない。事務方の整理をしてから発表の日時を決めるので、今日はお話しできません。ただ、来シーズンのことなので時間はかけたくない。迅速に進めたいと思います」と話していた。それが一転、翌日の午前に会見なのだから驚かされた。 ▽かねてから噂のあったパフォーム社だが、これまでJリーグは、スカパー! とNHKの2社と2012年から2016年までの5年契約を結んでいて、スカパー! は年間推定40億円、NHKは年間推定10億円と言われていた。2017年からの新規契約にはパフォーム社と、スペインリーグやイングランド・プレミアリーグの放送権を獲得したソフトバンクもJリーグに興味を示していたものの、金額面で上回ったパフォーム社が権利を獲得した。 ▽今回の契約ではNTTも技術提供やインフラ整備の形で参画し、J1、J2、J3、CS(チャンピオンシップ)、J1昇格プレーオフ、J2・J3入替戦の全試合をライブで配信し、スタジアムに行けないファンはもちろん、スタジアムで観戦しているファンにもスマホやタブレットで視聴できるようにするのが目玉だ。そのため全国のスタジアムのwi-fi環境の整備が急務となる。 ▽では、スマホやタブレットでJリーグの試合をファンがライブ観戦できるメリットはどこにあるのか疑問に思う読者もいることだろう。この続きは次週で紹介したい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.07.21 13:15 Thu
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【日本サッカー見聞録】EUROとJを見比べて感じた疑問

▽今週10日にポルトガルの初優勝で終わったEUROだが、ポゼッションサッカーで一時代を築いたスペインは、主力の高齢化もあり決勝トーナメント1回戦でイタリアに敗れた。W杯を制し、EUROでも連覇を果たした“無敵艦隊”も、一つの時代が終わったと言える。スペイン同様、準決勝ではポゼッションでフランスを圧倒したドイツも敗れ、決勝では終始試合を支配したフランスが延長戦でポルトガルに屈した。 ▽W杯やEUROのような長期間に渡る大会でジャイアントキリングを起こすには、アイスランドのような堅守速攻型しか方法がないことは、過去にもギリシャが証明している。世界のトレンドとして、このままポゼッションサッカーは衰退していくのだろうか。 ▽と言ったところでJリーグである。第2ステージの第3節を消化したばかりだが、3連勝を飾った川崎F、横浜FM、浦和、そして4位につけるG大阪にはいずれも共通点がある。それは中盤に違いを生み出せるパサーがいることだ。中村憲、中村俊、柏木、遠藤らベテランのプレーメーカーがチームを牽引し、横浜FM以外はポゼッションサッカーで優勝争いを演じている。第1ステージ覇者の鹿島にも小笠原と柴崎というプレーメーカーを擁している。 ▽ほんの10年くらい前の日本は、プレーメーカーの宝庫だった。小野、中田英、中村俊、稲本ら中盤にはきらめくようなタレントがいた。しかし現在は香川を筆頭に原口、宇佐美、南野らサイドアタッカーが海外移籍を果たし、リオ五輪日本代表にもプレーメーカーは見当たらない。これはこれでトレンドなのかもしれないが、日本のトップレベルであるJ1リーグで優勝争いを演じているのは、いずれもプレーメーカーを擁したポゼッションサッカーという点にギャップを感じてしまう。そしてACLでのJリーグ勢の凋落が追い打ちを掛ける。Jリーグは世界のトレンドと逆行しているのではないかという疑問である。 ▽ただし、やむを得ない事情もある。日本は欧州やアフリカ勢はもちろん、韓国や中国と比較しても190センチ台の巨漢CBやストライカーはいないし、今後も出て来る可能性は低い。このためアジリティとスキルで勝負するしかなく、必然的にポゼッションサッカーにならざるを得ない。そこで気になるのが、プレーメーカーの後継者だ。いまだ中村憲、中村俊が輝きを放っている一方、彼らの系譜を継ぐ選手がすぐに思い浮かばない。可能性を秘めているのは大島くらいだが、前任者に比べると“小粒感”は否めない。 ▽大型CBとストライカーの育成は日本サッカーの課題であるが、本田や柏木の後継者の発掘と育成も急務なのではないだろうか。1カ月近く、EUROとJリーグを交互に見比べて感じた素朴な疑問だった。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.07.14 15:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】望月三起也さんを偲ぶ会に思う

▽7月7日の七夕の日、午後7時から今年4月3日に亡くなられた漫画家の「望月三起也氏を偲ぶ会」が横浜市内のホテルで開催されたので、末席に参加した。会の発起人は漫画家の九里一平氏、さいとう・たかを氏、ちばてつや氏、森田拳次氏、サッカー界からは川淵三郎・元Jリーグチェアマン、杉山隆一・元ヤマハ発動機監督、田嶋幸三・JFA会長など錚々たる方々が名前を連ねた。 ▽望月さんが亡くなられたのは77歳、そして偲ぶ会も7月7日の午後7時ということに、同氏の代表作であるワイルド『7』を偲んでの会であることに間違いはないだろう。最後まで『7』にこだわった偲ぶ会だった。 ▽会には「ゴルゴ13」で有名なさいとう・たかを氏、お別れの言葉を述べた「ロボタン」などのギャグ漫画を描いた森田拳次氏を始め、サッカー界からは付き合いの深かった三菱サッカー部の監督の二宮寛氏や、杉山隆一氏、森健兒氏、田口光久氏の他、三起也さんのサッカーチーム「ミイラ」に縁のある奥寺康彦氏、早野宏氏、前田秀樹氏、木村和司氏、水沼貴史氏を始め、芸能界からも多くの方々が列席し、別れを惜しんでいた。 ▽三起也さんと、いつ親しくなったのかと言われても、正直記憶にない。取材はしたが、たぶんJSL(日本サッカーリーグ)時代に試合会場で顔見知りになり、親しく話しをさせてもらったのだろう。その後も三起也さんとは、三起也さん率いるサッカーチーム「ザ・ミイラ」とメディアの混成チーム「ピンボケズ」や落語家のチーム「マンダラーズ」といった素人チームで「字絵(Jのもじり)リーグ」を立ち上げて対戦し、親交を深めたものだ。 ▽そんな三起也さんは、サッカーの話になると目を輝かせていつまでも話し続けるエピソードを参加したゲストが次々に披露した。サッカー好きとは誰とでも仲良くなってしまう三起也さんの生前がうかがえるエピソードだ。サッカー好き=同士という感覚に近いかもしれない。かつて日本サッカーの父と言われたD・クラマーは「サッカーは少年を大人に、大人を紳士にする」と言った。 ▽三起也さんに当てはめるなら、「サッカーは大人を子供にする」と言えるのではないだろうか。それだけ純真にサッカーの喜びを誰とでも共有しようとしていた。弔辞を呼んだミイラのメンバーで俳優の宮下直紀氏は、「宮本征勝さん(初代の鹿島監督)、ジャンルカ富樫さん(サッカージャーナリスト)、ヨハン・クライフとボールを蹴っていてください。僕らも、いつかそちらに行きます」と述べていた。 ▽会場には老若男女を合わせて300人以上が参加した。一般ファンを受け入れたらその数は倍以上になっただろう。それだけ愛されたサッカー人だと思う。改めて故人のご冥福を祈りたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.07.08 11:50 Fri
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【日本サッカー見聞録】五輪代表18名が発表

▽リオ五輪に臨む日本代表18名が7月1日に発表された。6月29日の南アフリカ戦のスタメンでメンバーから漏れたのはCB中谷(柏)とMF野津田(新潟)の2人で、彼らはバックアップメンバーとして8月1日から13日までチームに帯同する。南ア戦は国内最後の試合なので、ケガから復帰したSB室屋とFW中島(いずれもFC東京)は回復具合をチェックするテストの場だと思っていた。結果的に2人とも90分間フル出場したため、最終メンバー入りは確実だと思った。 ▽意外だったのはMFの大島(川崎F)と井手口(G大阪)だ。日本が30分にPKから失点すると、手倉森監督はベンチにいる原川(川崎F)と橋本(FC東京)にウォームアップを命じた。屈強なフィジカルの南アに対し、170センチ前後の大島と井手口がどこまでやれるのかテストしているのだろうと思ったものだ。 ▽そしてハーフタイムに井手口は原川と、大島も51分に橋本と交代した。原川も橋本も複数のポジションでプレーできるポリバレントな選手のためリオ行きは確実で、ボランチでゲームをコントロールしても守備力に不安のある大島か井手口のどちらかが「託される側」に回ると思った。 ▽しかし実際には手倉森監督も認めたように、OA枠を除けば1月のアジア最終予選で戦ったメンバーに落ち着いた。意外だったのはトゥーロン国際大会の初戦で左膝を負傷して、まだ実戦に復帰できていないCB岩波(神戸)を「予測での計算でしかない」ものの、「来週には復帰して、7月9日の試合には出られそう」と見切り発車で招集したことだ。 ▽DF陣の構成は右SBに室屋と塩谷、左SBに亀川(福岡)と藤春、そしてCBに植田(鹿島)と岩波の各コンビによる6人。岩波の保険として塩谷とボランチの遠藤(浦和)はCBもできるとはいえ、もしも岩波に何かあったら中谷と入れ替える予定なのだろう。それならいっそ、遠藤の代わりにボランチもでき、右SBと両サイドのMFでプレーできる橋本をあらかじめ18名に招集し、岩波をバックアップメンバーに入れておいた方が18名の枠をフルに使えるのではないだろうか。 ▽たぶん手倉森監督は、そうしたあらゆる可能性を探った上で、「昨日の深夜、寝る前に」18人のメンバーを決めたのだろう。会見では目標を聞かれて、「金メダルを目指さないと銅にも引っかからない。“どう”にもこうにもならない」とか、キャプテンが誰になるか聞かれると、「遠藤のままでリオに“わたり”ます」と得意のダジャレを連発するなど、大役を果たし終えた解放感からか、終始リラックスした様子だった。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.07.01 18:30 Fri
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【日本サッカー見聞録】五輪代表の18人を予想

▽リオ五輪のOA(オーバーエイジ)枠の3人目に、興梠の招集が明らかになった。これでOA枠の3人は藤春と塩谷に決定。そして来週の29日には最後のテストマッチとなるU-23南アフリカ戦が控えている。その試合の招集メンバー21日が今週初めに発表された。 ▽GKは鹿島の櫛引と柏の中村。櫛引は鹿島では出場機会に恵まれていないものの、リオ五輪の代表はこの2人で決まりだろう。問題は残りのフィールドプレーヤーだ。DF7人、MF8人、FW4人が招集され、手倉森監督は「これまで活動にずっと参加している選手、アジア最終予選からケガで離脱した選手、そして改めてもう1回手元に置いて見てみたい選手」を呼んだと明言した。 ▽この言葉から推測すると、DF陣で「ずっと参加している選手」はCBの植田、MF陣なら遠藤、大島、原川、矢島、FW陣は浅野、オナイウ阿道ということになる。そして「ケガで離脱した選手は」はDF陣の松原、室屋、亀川、MF陣は豊川、FW陣は鈴木、中島だろう。ここで改めてOA枠の人選を考えると、左SBの藤春はレギュラーとして、その控えに亀川がどこまで負傷から復帰できたのかが南ア戦でのテストとなる。右SBは同じく負傷からの復帰組として松原と室屋の争いで、ここにOA枠の塩谷もいるため、どちらか1人がリオ行きの切符をつかむことになる。そしてCBは植田の相棒に三浦か中谷ということになる。きわめて分かりやすい競争の図式だ。 ▽難しいのがMF陣と言える。6人が登録されると想定し、ボランチ候補の遠藤、今回はDF登録ながら複数のポジションができる橋本、同じくポリバレントな背番号10を任された矢島、「ずっと参加」してケガもない原川と大島、そして海外組の南野を入れると、伊東、野津田、豊川、井手口の入る枠はない。唯一の可能性として、試合を落ち着かせる大島の代わりに野津田のような攻撃的な選手をチョイスするかどうかが南ア戦の見どころになるのかもしれない。 ▽最後にFW陣だが、興梠と久保の招集が可能なら、残る枠は2つしかない。とはいえ浅野は当確なため、残り1枠をケガから癒えた鈴木と中島、さらには今回招集されていない富樫の3人で争うことになる。フィジカルに長けた鈴木、スキルフルな中島、オールラウンダーな富樫と三人三様の長所がある。さらにオナイウはトゥーロンで活躍した。 ▽手倉森ジャパンは4-4-2か4-2-3-1を基本システムにしている。もしも興梠をFW陣の核に据えるなら、彼はシャドーストライカーでもあるため、一番のベストチョイスはポストプレーもできる久保になる。そして浅野はジョーカーという位置付けとして欠かせない。となると、残る1枠は……誰を選んでもおかしくないという結論になってしまう。 ▽もしも4-2-3-1を採用するなら、トップ下に中島というFW登録ながらMFとしても使える選択肢もある。今回招集されたフィールドプレーヤーは19人。リオ五輪の登録枠はフィールドプレーヤー16人のため(GK2人と想定して)、3人に加えOA枠の3人の計6人が篩に掛けられる狭き門でもある。こうして原稿を書いていると、なんとなくバックアップに回る選手が見えてきたような気もするが、ケガなども含めて予断は禁物だ。とりあえずは29日の南ア戦を待ちたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.06.23 16:10 Thu
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【日本サッカー見聞録】浦和の脱落に見るリーグ戦の価値観

▽J1リーグ1stステージは15日にACLのため延期となっていた2試合を行い、FC東京と広島は1-1のドロー、G大阪vs 浦和は宇佐美のゴールでG大阪が3試合ぶりの勝利を飾った。この結果、浦和(勝点27)は首位の川崎F(同34)や2位の鹿島(同33)と1試合消化は少ないものの、川崎Fとの勝点を詰めることができず7差のまま。浦和が残り3試合を全勝しても勝点は36のため、第16節で川崎Fが勝ち、鹿島が敗れれば川崎Fの第1ステージ優勝が決まる。 ▽浦和が優勝するためには、未消化の2試合を連勝して川崎Fに勝点1差に詰め寄る必要があった。しかし、そんな浦和の前に立ちふさがったのが、“天敵”とも言えるG大阪だった。昨シーズンのCS準決勝でも延長戦の末に1-3と敗れ、年間順位3位に後退したのは記憶に新しいところ。一昨シーズンも手中に収めかけたリーグタイトルを奪われている。 ▽今シーズンのG大阪は遠藤の起用法に逡巡が見られ、一時期ほどの爆発的な攻撃力はない。実際、試合はアウェイの浦和が主導権を握っていたものの、カウンターから失点するのもこれまでの敗戦パターンと同じだった。G大阪に敗れたこともさることながら、4試合連続の無得点にこそ失速の直接の原因があるとも言えるだろう。 ▽毎年のように補強を重ね、今年は湘南から遠藤、京都から駒井と即戦力を獲得し、特に遠藤は那須の代役としてDF陣の安定に貢献。14試合で9失点は鹿島と並ぶ最少失点でもある。にもかかわらず第1ステージの優勝は絶望的になった。フロントやファン・サポーターは「第2ステージがある」とか「年間チャンピオンになればいい」とすんなり頭を切り替えて、現体制を維持するのかどうか。 ▽これは余談だが、リオ五輪のOA枠にG大阪のDF藤春と広島のDF塩谷の招集が発表された。残り1枠は興梠が候補に挙げられているものの、未だにイエスかノーの正式発表はない。もしかしたら、第1ステージで優勝できたら興梠を送り出す方向で調整していたのではないだろうか。リオ五輪期間中は事前キャンプも含めると第2ステージを5試合ほど欠場することになる。リーグ戦の約3分の1に当たるためエースストライカーの離脱は痛手だ。このため、もしかしたら興梠の招集を浦和は拒否する可能性もあるだろう。 ▽話を本題に戻そう。この浦和に限らず、昨シーズンの上位4チームはいずれも優勝争いから脱落している。やはりACLの影響からか、浦和以外の3チームはACL後のリーグ戦で苦戦している。リーグとACLのダブル・タイトル獲得のためターンオーバー制を採用しても、攻守の主力戦は出場せざるを得ないため、肉体的な負担もかなりなものだろう。逆に優勝争いを演じている川崎Fと鹿島はACLの負担がなく、ナビスコ杯もベストメンバーで戦ってはいないためグループリーグで敗退している。価値観をどこに置くかはチームの方針と言ってしまえばそれまでだが、ちょっと不公平感も感じずにはいられない。 ▽まだ第1ステージの途中ではあるが、リーグとリーグカップ、ACLの位置付けをもう一度整理する必要があるのではないだろうか。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.06.16 16:59 Thu
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【日本サッカー見聞録】五輪OA枠5人の候補を絞ってみた

▽今日のスポーツ紙でリオ五輪OA(オーバーエイジ)枠の候補5人の名前が取り上げられていた。G大阪のDF藤春、広島のDF塩谷、川崎FのFW大久保、ハノーファー96からセビージャへの移籍が噂されるMF清武、そしてFCケルンのFW大迫だ。 ▽藤春と塩谷の招集理由は簡単だ。トゥーロン国際大会で左SB亀川(福岡)が負傷。本大会には間に合うというものの、まだJリーグに復帰できていないだけに不安がつきまとう。このための藤春招集だろう。そして右SBの松原(新潟)は5月29日の仙台戦で復帰こそ果たしたものの、万全のコンディションか疑わしい。さらにCB奈良(川崎F)はJリーグで骨折、CB岩波(神戸)もトゥーロン国際大会で左膝を傷めて、本大会に間に合うかは微妙だ。そこで右SBもCBもできる塩谷という人選になったのだろう。 ▽23歳以下ではMF遠藤(浦和)とMF橋本(FC東京)もCBや右SBでプレーできるものの、やはり彼らはボランチで起用したいというチーム事情もありそうだ。そこでDF陣は松原、植田、三浦(か岩波)、亀川の4人に加え、OA枠として藤春と塩谷の6人という顔ぶれになる。最終予選では主力として活躍した右SB室屋(FC東京)は、チームの全体練習に部分合流しているので、彼の回復次第では松原との競争になりそうだ。 ▽MF陣は遠藤、橋本に手倉森ジャパンの常連である矢島(岡山)、南野(ザルツブルク)の4人は当確。FW陣も浅野(広島)、富樫(横浜FM)、久保(ヤングボーイズ)の3人は決まりだろう。残る枠はMF陣が2人、FW陣が1人ということになる。MF枠の候補は大島(川崎F)や野津田(新潟)がいるし、FW枠にはこちらも復帰組の鈴木(新潟)がいるし、オナイウ阿道(千葉)もトゥーロン国際大会では活躍した。ここに残り1枠のOA枠をどちらで使うかということになる。 ▽大迫の去就は未定だが、海外組にとって事前キャンプの始まる7月中旬は新シーズンに向けて準備を始める時期だけに、コンディション調整に問題はないだろう。逆に34歳の大久保は、梅雨明けの蒸し暑い時期を過ごした後での調整となるだけに、体力的な不安がつきまとう。3人ともブラジルW杯のメンバーだったため、黄熱病の予防接種をする必要がないのは利点だが、手倉森監督も最後の最後までラスト1枠で頭を悩ませるのではないだろうか。 ▽個人的には、遠藤と橋本のダブル・ボランチに、MF陣は右から野津田、清武、南野と並べ、久保の1トップがベスト布陣ではないだろうか。このため最後のOA枠は、リオ五輪出場が可能であれば清武を推したい。キリンカップを見た後では、余計にその印象が強くなったのも事実である。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.06.09 20:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】キリン杯初戦で本田不在でも成長を示したハリル・ジャパン

▽キリンカップサッカー2016の準決勝2試合が6月3日に愛知県の豊田スタジアムで開催され、第1試合はボスニア・ヘルツェゴビナが2-2からのPK戦を4-3で制してデンマークに競り勝ち、第2試合は日本がブルガリアを7-2の大差で下して決勝に進出した。今年のキリン杯はFIFA国際Aマッチデーが2日しかないため、4チームによるトーナメント戦となっている。 ▽準決勝で日本はブルガリアと対戦したわけだが、よく考えられたマッチメイクだと感心した。準決勝の第1試合はボスニア・ヘルツェゴビナvsデンマーク。ボスニア・ヘルツェゴビナはハリルホジッチ監督の祖国だし、デンマークにはレスターで岡崎のチームメイトであるGKシュマイケルがいる。どちらが勝っても、日本とは多少の因縁がある対戦相手となるだけに、決勝戦か3位決定戦はメディア的に盛り上げやすいというわけだ。 ▽第1試合のボスニア・ヘルツェゴビナvsデンマークは前半にデンマークが2点を先制したものの、後半は退場者を出したボスニア・ヘルツェゴビナが198センチの長身FWミラン・ジュリッチが2ゴールを上げる活躍で同点に追いつくと、PK戦では最初のシュートこそGKシュマイケルにストップされたものの、その後は4人が連続してシュートを決めて競り勝った。 ▽ボスニア・ヘルツェゴビナはスピード豊かなサイドアタッカーのハリス・ドゥリュビッチ、攻撃参加を得意とする左DFセアド・コラシナツにコントロールタワーのハリス・メドゥニャニンらくせ者揃いの好チーム。東欧勢特有の個人技も健在で、日本との試合は好ゲームが期待できそうだ。 ▽その日本だが、第1戦は本田が左ヒザの炎症で欠場したものの、本田の不在を感じさせない前半だった。本田の武器は屈強なフィジカルを生かした“タメ”と決定力の高さにあることは周知の通り。しかし、その“タメ”が時として攻撃のスピードダウンを招いてしまうこともある。しかしブルガリア戦は香川と清武のハーモニーに柏木が絡み、ワンタッチによるパス交換から流れるような攻撃を見せた。 ▽6月3日は午前中になでしこジャパンvsアメリカの試合をテレビ観戦したが、4-4-2システムから大儀見や大野の2トップに川澄のドリブル突破と、両サイドDFの攻撃参加を武器にした佐々木前監督に比べ、高倉新監督は4-2-3-1システムから岩渕をトップに据え、大儀見を左FWに起用していた。すると選手間の距離が近くなったため、岩渕のキープ力が生き、ゴール前の攻撃が多彩になった。 ▽なでしこジャパンが奪った3ゴールは、いずれも名GKソロにとってノーチャンスの鮮やかなシュート。ただ、アメリカのゴールは先制点と3点目は防げたと思うだけに、残念な引き分けでもあった。それでもロスタイムに横山がゴール前のパス交換から奪った同点弾は、相手の足が止まっていたとはいえ、佐々木前監督時代にはあまりお目に掛かれなかった得点シーンだった。 ▽話をハリル・ジャパンに戻そう。後半は6枚の攻撃カードを切ったために守備に混乱が生じて2点を失った。それでも23歳の遠藤や浅野に、代表歴1試合の昌子をピッチに送り込むなど経験を積ませた。大量リードがあったからこそできた交代ではあるが、浅野はPKを獲得する粘りを見せるなど、チームの若返りにも着々と着手している。果たしてボスニア・ヘルツェゴビナ戦ではどのような選手がテストされるのか。ハリルホジッチ監督のチームマネジメントに注目したい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.06.04 14:36 Sat
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【日本サッカー見聞録】ACL敗退と日本代表の小粒感

▽ACL(アジアチャンピオンズ・リーグ)は24日のFC東京に続き、25日は浦和もアウェイでFCソウルにPK戦で敗れ、日本勢はラウンド16で全滅した。ベスト8には山東と上海の中国勢2チーム、FCソウルと全北現代の韓国勢2チーム、そして中東勢はアルアイン(UAE)、アルジャイシュ(カタール)、アルナスル(サウジアラビア)に、中央アジアからタシケント(ウズベキスタン)が勝ち進んだ。 ▽全滅した地域は日本勢とオーストラリア勢で、26日にキリンカップサッカーに臨む日本代表メンバーを発表したハリルホジッチ監督も、Jリーグ勢の不甲斐なさに、すぐにでも敗因分析をしないと取り残されると警鐘を鳴らしていた。どのチームもリトリートして守備を固めるスタイルにも苦言を呈し、前線からアグレッシブにプレスをかける川崎Fのサッカーを高く評価していたが、果たして川崎Fがアジアでベスト8に入れるかどうかは正直言って疑問だ。 ▽なぜなら、この日発表された代表メンバーの“国内組”で攻撃的なポジションの柏木(浦和)、小林(磐田)、大島(川崎F)、小林(川崎F)、宇佐美(G大阪)、浅野(広島)らは、ハリルホジッチ監督の求める“デュエル”で見劣りしてしまう。辛うじて対抗できそうなのが遠藤(浦和)と金崎(鹿島)くらい。それ以外の選手はいずれも“海外組”だ。 ▽選手の海外流出により国内リーグの空洞化を指摘されて久しい。さらにコストダウンにより中国Cリーグのような“大物助っ人”も獲得できていないのが現状だ。川崎Fのサッカーは美しいものの、韓国や中国の激しさに対抗できるレベルのスキルかと問われれば、即答できないのが正直なところだ ▽JリーグはACLでの躍進を後押しするため金銭的な支援と人的支援を強化、さらには日程調整で協力したものの、基本的なチーム力向上には結びついていない。まだ“焼け石に水”という範囲にとどまっているということなのだろう。今年は広州恒大(中国)がグループステージで敗退したように、巨額の資金を投じれば結果が出るとは限らないものの、Jリーグの“じり貧”感は否めない。ここらあたりが、Jリーグのプレミア化によりJ1のチーム数を限定し、有力選手と資金を集中させ、「強くて魅力あるチーム作り」で結果を残し、ファンをスタジアムに呼ぼうという意見が出て来る所以だろう。 ▽代表メンバーの発表では小林(磐田)と大島(川崎F)が初招集され、小林(川崎F)と浅野(広島)も復帰した。とはいえビッグサプライズの選出とは言えず、ここでも“小粒感”は否めない。それだけ急成長した選手がいない裏返しだ。大久保(川崎F)を呼ばない理由をハリルホジッチ監督は「16㍍(ペナルティエリア内)」で躍動する選手であり、ビルドアップや守備で貢献できないと想定し、過去の日本代表でも結果を残していないと指摘したが、その通りだと思う。大久保は川崎Fのポゼッション・サッカーで復活、もしくは覚醒したストライカーだからだ。 ▽ハリルホジッチ監督は将来を見据えて浅野を高く評価し、宮市(ザンクトパウリ)についても注目していることを明かしたが、「ゴールゲッターがいない国は高い位置には行けない。だから今はゴールゲッターを探している。ビッグクラブだけでなく、小さなクラブでも探している」と話していた。これこそが、日本代表の課題であり、Jリーグ勢がアジアで勝てない理由であることは明白だろう。 ▽ACLでJリーグ勢が優勝争いを演じるには、Jリーグがスポンサーを見つけて出場4チームに強力助っ人をレンタルで加入させるのが手っ取り早いと思うが、それはそれで根本的な問題の解決につながらないのが悩ましいところでもある。 ▽昨夜はU-23日本代表がやっと初勝利をあげたが、FC東京と浦和の悔しい敗退により、フラストレーションの溜まった1週間の始まりだった。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.05.26 21:38 Thu
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【日本サッカー見聞録】奈良と久保が離脱。OA枠も考えざるをえないか?

▽先週のコラムでは、11日のガーナ戦を振り返りながら、ケガ人が続出しても動じない手倉森監督の懐の広さについて触れた。チームは現在、21日から始まるトゥーロン国際大会に備えているが、メンバー発表後のDF奈良(川崎F)がタックルに行った“自爆”から左脛骨の骨折でリオ五輪出場は絶望的となった。さらにFW久保(ヤングボーイズ)も下半身の違和感のためトゥーロン国際大会を辞退と、相変わらずケガ人に見舞われている。 ▽正直、奈良の離脱は痛手だ。CBには屈強なフィジカルの植田(鹿島)と岩波(神戸)がいるものの、彼らのビルドアップ能力は消して高くない。その点、奈良は、かつては無謀なアタックから反則を犯していたが、川崎Fに加入後は悪癖も減り、なりよりもビルドアップ能力でU-23日本代表では攻撃の起点になっていた。ガーナ戦だけでなく清水とのテストマッチでも、日本の攻撃は左サイドが起点になることが多かった。 ▽奈良はガーナ戦でハーフタイムに岩波と交代し、その後は植田が積極的にロングフィードを試みたものの、精度はいま一つ。リオ五輪ではカウンターが日本の武器となるだけに、奈良の負傷離脱は攻守に渡って大きな痛手だろう。代わりに招集された三浦(清水)がどこまで代役を務められるかも未知数のため不安は尽きない。 ▽こうなると浮上するのがOA枠でのCB候補だ。植田とコンビを組む昌子(鹿島)という選択もあるが、右SB伊東(鹿島)はガーナ戦で好クロスを配球してアピールしただけに、DF3人の招集は鹿島の石井監督にとっても簡単には認められないだろう。日本代表クラスのCBとなると、フィードの正確な森重や、奈良と同じレフティーの丸山が候補となるが、いずれもFC東京のレギュラーCBだ。FC東京には彼ら以外にも橋本や小川、さらに負傷中ではあるが中島、室屋といった最終予選に出場したメンバーもいる。1チーム3人という制限がある中で、6人の中から誰を選択するか。そして、それを城福監督が認めるのかどうかという問題もある。 ▽久保の代わりにはオナイウ阿道(千葉)が追加招集された。これまでも常連だけに、チームに溶け込むのは難しくない。問題は久保のコンディションである。ヤングボーイズはCL予備選の3回戦から出場するため、その試合を終えてからチームに合流する予定となっているが、日程は決まっていない。問題となるのは、夏とはいえ過ごしやすい気候のスイスから熱帯地域のマナウスに移動することで、暑熱対策が間に合うかどうかという点である。日本にいれば梅雨の蒸し暑さを経験し、暑くなる夏を迎えてのマナウス入りだけに暑熱対策は大きな問題にはならないだろう。 ▽今から2カ月以上も後のことを心配しても仕方ないが、とりあえず、もうこれ以上ケガ人が増えないことを願わずにはいられない。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.05.19 13:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】手倉森ジャパンは逆境を力に変える不思議なチーム

▽U-23日本代表は、5月11日に佐賀県のベストアメニティスタジアムで開催された『九州 熊本震災復興支援チャリティマッチ』でガーナ代表と対戦し、矢島の2ゴールと富樫の代表初ゴールにより3-0と快勝した。代表とはいえガーナは国内リーグの若手を中心としたチームで、スタメンには19歳の選手が4人など平均年齢も21.3歳と日本よりも若い。GKリチャード・オフォリとMFサミュエル・テッテーの2人はフル代表に名を連ねているものの、国内リーグが終わったばかりとあってコンディションも万全ではなかったようだ。 ▽日本は立ち上がりからガーナの高いDFラインの背後にある広大なスペースを利用して、縦パスから浅野が抜け出しては果敢にシュートを放つ。試合前、霜田技術委員は「高温多湿のマナウスではどのチームもスローペースの試合展開で、引いて守りを固めて来るだろう。そこで日本もカウンターがカギになる」と予想していたが、浅野の俊足は大きな武器になるだけに、後半途中のジョーカーとして起用するのではなく、スタメン起用が効果的と感じさせる立ち上がりだった。 ▽前半11分と15分の矢島のゴールは、右利きの矢島を左MFに、左利きの野津田を右MFに起用して、彼らのカットインからスペースを作り、サイドバックの亀川や伊東の攻撃参加を引き出したプランが的中した。「ガーナ(の守備)はボールサイドにブロックを作ってスライドしてくる。日本の悪い癖は攻撃を切り返すが、ラストパスを早いタイミングで狙って行け」という手倉森監督のスカウティングも功を奏した。 ▽1点目は中央突破のこぼれ球を左サイドの矢島が右足のコントロールシュートでGKの頭上を破った技ありのゴール。そして2点目は素早いリスタートから伊東のクロスをファーサイドでフリーになった矢島が豪快なボレーで決めた。 ▽これが代表2試合目となる伊東は、このアシストだけでなく、再三にわたり質の高いクロスを供給。ゴール前の選手に合わせて高低やタイミングを考えたクロスで、シュートの精度が高ければもう2点くらいはアシストしていただろう。この伊東だけでなく、代表初スタメンの冨樫は「空中戦はもう少し勝ちたかった」と反省したものの、ゴール前で存在感を示し、30分にはGKの出際を浮かす技巧的なシュートで初ゴールを決める。そして同じく初スタメンの橋本もボランチとして落ち着き払ったプレーで攻守に安定感をもたらしていた。 ▽リオ五輪のアジア最終予選後、主力選手にケガ人が続出し、チーム作りを不安視される手倉森ジャパンだが、特定の選手に頼るのではなく「レギュラーがいない」(手倉森監督)チーム作りが、今回も好結果をもたらした不思議なチームでもある。ただ、相手の実力を考えると手放しでは喜べない。その意味でも18日から始まるトゥーロン国際大会は、ポルトガルら強敵が集うだけに、リオ五輪へ向けて格好の試金石となるだろう。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.05.12 10:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】J1第1ステージ前半戦の総括

▽みどりの日の4日は、J1リーグにACLと昼から夜までサッカー三昧の一日だった。J1リーグはACL出場チームと対戦相手を除く10チームが折り返しである第1ステージ第10節を消化。首位の浦和を追う2位の川崎Fは仙台に先制される苦しい試合展開から、なんとか引き分けに持ち込んだものの、未消化の浦和が勝利したと仮定すると勝点差は4ということになる。前節では3位の鹿島が圧倒的に攻めながら、大宮の粘りに引き分けるなど足踏み状態から勝点を落として後退している。 ▽どうやらACLでもベスト16に進出した浦和が、昨シーズンに続き第1ステージの覇者となりそうだ。前節の名古屋戦、首位攻防となった川崎F戦でもスキのない試合運びで確実に勝点3を獲得。鹿島との直接対決を残しているとはいえ、浦和の優位は動かないだろう。逆にし烈なのがCS出場権を巡る2位争いで、川崎F、鹿島以外にも柏と大宮が迫っている。 ▽柏は開幕3戦未勝利でメンデス監督が辞任。ヘッドコーチの下平が監督に昇格すると、その後は負け知らずで、第6節のFC東京戦から5連勝で4位に浮上した。吉田前監督のポゼッション・スタイルを継承しつつ、フィニッシュの意識が高まったことと、トラッキングデータでチーム平均3位という豊富な運動量が躍進の原動力だろう。この柏に限らず甲府や湘南に加え昇格組の大宮、磐田ら下位候補と目されていたチームがダークホースとなっているのが今シーズンの特徴かもしれない。 ▽湘南が横浜FMを破って初勝利をあげた試合は素直に感動したし、第3節で仙台が鹿島を破った試合も“魂”を感じた一戦だった。上位で健闘している柏、大宮、磐田には失礼だが、「あの戦力でよくその順位にいるな」と思ってしまう。監督の手腕と選手の奮戦には頭が下がるばかりだ。 ▽その反面、今シーズンは上位が予想されたディフェンディング・チャンピオンの広島は7位、G大阪は11位と出遅れ、ACLでもグループリーグ敗退が決定した。FC東京は辛うじてベスト16に進出したものの、リーグ戦は13位に沈んでいる。広島はピーター・ウタカ、G大阪はアデミウソンをシーズン前に、FC東京もシーズン中ではあるがムリキと、いずれも即戦力の外国人選手を補強したにもかかわらず、結果には結びついていない。 ▽ちょっと早いが今シーズンの第1ステージを総括するなら、『戦力で劣るチームが戦略を90分間遂行する決意と努力』でジャイアント・キリングを起こし、ダークホースになっているのではないだろうか。このため順位で相手を判断すると、上位でも痛い目に遭うことが判明した。残り8試合(9試合)、浦和も含めてどのチームも対戦相手を舐めてかかることはないだろう。上位も下位も、ここから第1ステージは本当の正念場を迎えると言える。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.05.05 13:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】高倉監督就任も女子代表の監督育成に不安あり

▽JFA(日本サッカー協会)は4月27日、「なでしこジャパン」の監督にU-20日本代表監督の高倉麻子氏が就任したと発表した。女性がフル代表の監督に就任するのは男女を通じて初めてのこととなる。高倉監督は2014年にU-17女子日本代表を率いてW杯を制覇するなど実績も十分。今後は「ヤングなでしこ(U-20女子日本代表)」と「なでしこジャパン」の監督を兼任し、2020年の東京五輪でメダルを目指すことになる。 ▽U-17女子日本代表を率いてW杯を制した高倉監督の、「なでしこジャパン」監督就任は既定路線だった。問題は、どのタイミングで就任するかにあった。前監督の佐々木氏の任期は昨年8月に中国で開催された東アジアカップまで。この大会を若手中心に臨んだ日本だったが、1勝2敗で3位に沈む。他国がフル代表を送り込んできたため、佐々木監督もそれほど結果には悲観していなかった。「なでしこジャパン」なら間違いなく勝てると思ったことは想像に難くない。 ▽その大会期間中、関係者と話したところ、なかなか若返りが進まない「なでしこジャパン」に危機感を抱きつつも、「高倉は日本の切り札なので、万が一、監督に就任してリオ五輪予選で敗退したら傷をつけることになるし、辞任に追い込まれるだろう」と危惧していた。佐々木監督の続投が決まったのは9月に入ってから。その間、どのような綱引きがあったのかは不明だが、結果的に関係者の不安は的中し、「なでしこジャパン」はリオ五輪の出場権を逃してしまった。 ▽こうして誕生した高倉ジャパンではあるが、不安材料もある。それは、彼女に続く人材が見当たらない点だ。例えば男子のフル代表の場合、オフト監督以降は外国人監督の時代が長いものの、加茂氏や岡田氏ら日本人監督が指揮した時代もあった。最近ではJリーグで結果を残した森保監督や長谷川監督を推す声もある。しかし女子の場合は、なでしこリーグでいくら結果を残しても、それが代表監督にはつながらない。リーグでの手腕と代表監督はリンクしていないのだ。 ▽かつて日テレ・ベレーザやINAC神戸で黄金時代を築いた星川監督も、寂しそうにそのことを指摘していた。前任の佐々木監督も女子リーグの監督経験はなく、女子日本代表のコーチやU-17女子代表の監督からキャリアをスタートさせ、「なでしこジャパン」で頂点を極めている。こうした構造が変わらない限り、女子日本代表のスタッフは慢性的に人材不足に陥らないかと不安を抱かざるをえない。 ▽高倉監督の誕生は喜ばしい限りだし、期待もしている。だからこそ、次を見据えた人材育成を今井女子委員長や田嶋JFA会長には期待したい。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.04.28 14:06 Thu
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【日本サッカー見聞録】ACLに見る今季の東アジアの勢力図

▽ACL(AFCチャンピオンズリーグ)は4月19日と20日に第5週を行い、各グループとも明暗が分かれた。グループFはFCソウルと山東魯能の決勝トーナメント進出が決定し、広島とブリーラムの敗退が決定。同じくグループHはシドニーFCと浦和の16強進出と広州恒大と浦項の敗退が確定した。グループGは上海上港の決勝トーナメント進出とG大阪の敗退が決まり、残る1枠を水原三星とメルボルン・ビクトリーが最終週で争う。 ▽そしてグループEはビン・ズオンの脱落が決まったものの、決勝トーナメント進出は全北現代、江蘇蘇寧、FC東京の3チームに可能性が残っていて、5月4日の最終戦で決まる。20日の試合に勝てば決勝トーナメント進出の確定するFC東京だったが、ホームで全北現代に0-3と完敗。しかし最終週はすでに敗退の決まっているビン・ズオン戦で、アウェイとはいえ勝てばベスト16に進出できる状況だ。 ▽近年のアジアの勢力図、選手の流れは韓国Kリーグ→Jリーグ→中東→“爆買い”中国Cリーグという図式になっていた。しかし昨シーズンの覇者である広州恒大はシドニーと浦和の後塵を拝し早々と敗退。今シーズンを前に125億円の補強を敢行した江蘇蘇寧もFC東京には1分け1敗と、必ずしも“爆買い”が結果に結びつかないことを露呈した。対照的に今シーズンは健闘しているのが韓国Kリーグ勢と言えるだろう。浦項の敗退こそ決まったものの、最終週の結果次第では3チームが決勝トーナメントに進出する可能性がある。 ▽早々と決勝トーナメント進出を決めたFCソウルは、前線にデヤン・ダムヤノビッチ(モンテネグロ)という187センチの長身ストライカーと、3バックの左にはオスマル(スペイン)という192センチの長身選手がいて、攻守に手堅いサッカーをする。トップ下には元広島の高萩や、ロンドン五輪銅メダリストのパク・チュヨンを擁しているものの、基本的にはロングボールによる肉弾戦という、クラシカルな韓国スタイルのチームだ。監督が千葉や磐田で活躍したストライカー崔龍洙だけに、分かりやすいと言えば分りやすいサッカーだが、このクラシカルなスタイルは一発勝負には強いし、日本勢が最も苦手とするスタイルだろう。 ▽対照的にKリーグを連覇中の全北現代は、ボールポゼッションからのパスサッカーで国内リーグでは結果を残してきた。しかし過去Jクラブを相手にしたACLでの対戦成績は6勝6分け14敗と大きく負け越している。似たようなスタイルでは分が悪いということだろう。ところが4月20日のFC東京戦では、予想を覆してポゼッションサッカーではなく自陣に引いて守備を固め、カウンターに徹して勝点3を奪った。選手の流出は日本以上に活発だが、イ・ドングッや長身FWキム・シヌク、FC東京戦ではMOMに選ばれたキム・ボギュンなど元代表が健在なのもKリーグ勢の特徴と言える。 ▽JリーグはACLでの躍進をサポートするため、財政的な支援の増加やスタッフの派遣などで各クラブをバックアップしたものの、J1リーグ覇者の広島と天皇杯優勝のG大阪が早々と敗退した。過密日程なら天皇杯準優勝の浦和も同じなだけに、言い訳にはならないだろう。敗因はどこにあったのか、しっかり検証して来季に生かしてもらいたいものだ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.04.21 16:35 Thu
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【日本サッカー見聞録】リオ五輪は最悪のグループB

▽熊本を襲った震度7の地震には驚いた。犠牲になられた方のご冥福を祈るとともに、復興に向けて自分に何ができるのか考えたい。 ▽さて、リオ五輪の組分けである。最悪の結果となった(かもしれない)。もしもグループBなら取材に行くのを断念しようと思っていたくらいだ。ナイジェリアはアトランタ五輪で対戦した因縁の相手であり、当時は金メダルを獲得。コロンビアもブラジルW杯で痛い目に遭っている。とはいってもU-23代表だけに“名前”で評価する必要はない。スウェーデンは23歳の選手が多数予選に参加したため、リオではガラリと顔ぶれが変わっているはずだ。 ▽何が最悪かというと、グループBは初戦のナイジェリア戦と第2戦のコロンビア戦をアマゾン地域のマナウスで戦い、第3戦のスウェーデン戦は2600キロ離れた、ブラジルW杯では同業者がひったくりの被害に遭い肘を骨折した治安の悪いサルバドルという点だ。高温多湿のマナウスは、8月の平均気温は32度を超え、湿度も80パーセントを上回る。ホテルの数も少ないため、値段の高騰が予想されるし、ジャングル地帯特有のスコールもあり、いま話題になっているジカ熱だけでなくデング熱に感染するリスクも高い。そして中2日となるスウェーデン戦は4組の中で最も移動距離が長い(飛行機で5時間。日本なら石垣島から札幌に移動する感じか)。 ▽グループDだったら初戦と第2戦をリオで戦い、第3戦も首都ブラジリアと近距離(飛行機で2時間)で、平均気温も20度前後と過ごしやすかったので期待していたのだが、悪い予感は的中するものだ。ただ、冒頭に「最悪の結果(かもしれない)」と書いたように、高温多湿の悪条件が日本にとって追い風になる可能性もある。ご存じのように日本は東南アジアでの戦いには慣れている。スタミナとスタッフによるリカバリーの早さがマナウスでの戦いにはアドバンテージとなるかもしれないのだ。 ▽ドーハでのアジア最終予選では、血液検査や尿検査に加え、唾液を使った疲労チェックなどでコンディションを調べ、西シェフによる日本料理の提供などで気分転換を図り優勝という結果を残した。決まったものは変えようがないので、ここは前向きにとらえて万全の準備をするしかない。まだ事前キャンプ地の情報は入ってこないが、まさかブラジルW杯で使ったサンパウロ近郊のイトゥになることはないだろう。 ▽ブラジルW杯では、スタッフが2日前の移動と、試合当日夜のイトゥ移動をザッケローニ監督に進言したものの、指揮官は前日の移動と、試合後は現地に宿泊して食事を摂ることを選択。結果的にほとんどのチームが2日前の会場入りと当日のキャンプ地戻りだったため、ザッケローニ監督の選択には疑問符が投げかけられた。幸い田嶋新会長になり、技術委員長も西野氏に代わったが、霜田氏は技術委員として残ったため、同じ過ちは繰り返さないだろう。どんな準備でリオ五輪に臨むのか、霜田技術委員の手腕に注目したい。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.04.15 22:30 Fri
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【日本サッカー見聞録】中国の爆買いに陰りの見えたACL

▽ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)は第4節を終了し、日本勢はグループEのFC東京とグループHの浦和がそれぞれ1位と2位をキープする活躍を見せている。この両チームに共通しているのは、各グループでライバルと目される中国勢の江蘇蘇寧と広州恒大に1勝1分けと勝ち越している点だ。一昨日は浦和が武藤の決勝点で広州恒大に1-0、昨日はFC東京が森重の2ゴールで江蘇蘇寧を下した。 ▽近年のACLは広州恒大の“爆買い”が注目を集め、昨シーズンは見事にアジアを制覇した。その広州恒大に続けとばかりに、江蘇蘇寧はジョー、A・テイシェイラ、ラミレスのブラジル人トリオを総額125億円もの巨費を投じて獲得した。 ▽つい先日、2013年に広州恒大のアジア制覇に貢献したブラジル人FWのムリキをFC東京は補強したが、6年前に広州恒大が彼を獲得する際に払った額は約4億円。これは、当時の中国国内でも最高額だったが、たった3年で江蘇蘇寧は、チェルシーからブラジル代表MFラミレスを中国史上最高額となる約36億円で獲得。そして、その1週間後には広州恒大がアトレティコ・マドリーから約54億6000万円でコロンビア代表FWジャクソン・マルティネスを獲得し、2日後には江蘇蘇寧がシャフタール・ドネツクのブラジル代表MFアレックス・テイシェイラを約65億円で獲得して、再び記録を塗り替えてしまった。 ▽まさに中国得意の“爆買い”である。しかし現在のACLを見るとその効果が表れているとは言い難いし、いたずらに助っ人の年俸を“高騰させている”としか思えない。かつてはJクラブもビッグネームに高額の年俸を払いながら、ほとんど活躍しないまま日本を去った選手も数知れない。そこから学んだことは、ヨーロッパから直接獲得するのではなく、例えば南米の選手なら他国でプレーして順応力があるかどうかを確認してから補強することだった。 ▽その結果、多くのブラジル人や韓国人がJリーグで活躍し、J経由で中東やヨーロッパに移籍して行ったし、近年は逆パターンも増えている。投資に見合った成績を残せなくても、観客動員増による収支がプラスになればいいという見方もあるが、彼らの“爆買い”は常軌を逸していると言ってもいいだろう。ACLで江蘇蘇寧は現在3位、広州恒大は最下位という現実から、移籍市場が適正価格に戻ることを願わずにはいられない。そのためにも日本と、しゃくではあるが韓国勢の躍進に期待したいところだ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.04.07 19:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】アジア2次予選総括

▽日本はロシアW杯アジア2次予選の最終戦でシリアを5-0で下し、最終予選進出に華を添えた。初戦でシンガポールを相手に拙攻から無得点に終わり、続く東アジア杯でも結果を残せず不安視されたハリル・ジャパンだが、終わってみれば6試合を無失点での完勝劇。チームの若返りという課題は残ったままだが、これはハリルホジッチ監督に限らず、誰が監督を務めても変わらぬ課題のため、指揮官の手腕は讃えるべきだろう。 ▽ハリルホジッチ監督を招聘した一番の理由は、W杯でジャイアント・キリングを実践するためだ。そのため、アジアの戦いでは自陣に引きこもって守りを固める相手からゴールを奪うことは副次的な課題でもある。ジャイアント・キリングのためには、まずは失点しないこと。でなければゲームプランそのものが崩れてしまう。ただ2次予選の相手はいずれも格下だったため、守備のトライアルとなる試合は結果的にホームのシリア戦しかなかった。 ▽3月29日の試合、開始から30分間の日本は完璧な試合運びだった。唯一の欠点は決定機を決められなかったことだが、サイド攻撃から相手ゴールを脅かし、ボールをロストしても素早い攻守の切り替えと高い位置からのプレスで奪い返しては波状攻撃を仕掛けた。これを90分間続けることは不可能だと試合後のハリルホジッチ監督は正直に告白したものの、相手に与えるダメージは効果的。たぶん本音を言えば、その間にあった決定機を決めていれば、試合の趨勢も決まっていたということだろう。ここらあたりが日本の課題でもある。 ▽それよりもシリア戦で顕著だったのは、守備意識の高さである。GK西川が2度のファインセーブで決定機を阻止しただけでなく、29分と83分にはカウンターのピンチに森重や長谷部が身体を張った守備でシリアの決定機を阻止した。相手が格下のシリア、それもW杯2次予選の消化試合にも関わらず、ゴールを死守した彼らのプレーには、ブラジルW杯のアルジェリアの奮闘を思い出さずにはいられなかった。 ▽守備の意識と前線からのオーガニゼーションは確実に進歩している。となると、ジャイアント・キリングのためには少ない決定機を確実にモノにする必要があるが、これは前述したようにまだまだ改善の余地がある。本田や香川には奮起を期待しつつ、楽しみなのがハリルホジッチ監督の選手起用だ。今回はアフガニスタン戦で久しぶりの招集となったハーフナーと小林を投入した。これまでも岡田監督やザッケローニ監督はニューフェイスを招集しながら、実戦で起用することはほとんどなかった。 ▽彼らがピッチに立つ実力があるのかどうか、練習も非公開のため判断のしようがなかった。しかしハリルホジッチ監督が分かりやすいのは、呼んだ選手は使うという点にある。小林は“持ってない”のか負傷してメンバー外になってしまったものの、ハーフナーはアシストという結果の残したため、シリア戦前日のミックスゾーンでも饒舌だった。競争意識を煽る意味でも、こうした選手起用の妙も見逃せない。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.03.31 13:58 Thu
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【日本サッカー見聞録】大勝の中で特筆すべき岡崎と原口~アフガニスタン戦レビュー~

▽アフガニスタンを迎えてのロシアW杯アジア2次予選が3月24日に埼玉スタジアムで行われ、日本は岡崎や金崎のゴールなどで5-0と圧勝し、最終予選進出に王手をかけた。アウェイの試合では開始10分に香川が先制点を奪いゴールラッシュの口火を切ったが、この日のサムライ・ブルーは43分まで沈黙したまま。初戦のシンガポール戦を思い出したファンも多いだろうし、それはハリルホジッチ監督も同じだった。 ▽この試合でハリルホジッチ監督は長谷部の1ボランチに中盤は右から原口、清武、柏木を並べ、岡崎と金崎の2トップという4-1-3-2の新布陣を採用し、「新しいオーガニゼーション」(ハリルホジッチ監督)にトライした。 ▽結果は中央突破から岡崎と清武が2ゴールを奪い、酒井宏のサイド攻撃から相手OGを誘発。さらにセットプレーで吉田が、最後は交代出場のハーフナー・マイクによるパワープレーから金崎が得点するなど、様々なパターンから5得点。ないのはロングやミドルの長距離砲だけだったから、指揮官も試合後はご満悦だった。 ▽この試合で特筆すべきは2点ある。まず1点は岡崎の先制点だ。清武の縦パスを受けると反転しながら寄せてきたDFの股間を抜く技ありのプレーでフリーとなって決めた。確か先週のクリスタル・パレス戦だったと思うが、岡崎は似たようなターンから惜しいシュートを放っている。29歳になっても“進化”の止まらないストライカーがどこまで成長するのか、日本にとっては頼もしい存在でもある。 ▽そしてもう一人、“成長”を感じたのが本田の定位置に入った右MFの原口だ。ヘルタ・ベルリンでプレーの幅を広げ、この日は身体を張った守備でも貢献しつつ、酒井宏の攻撃参加を引き出すなど“黒子”に徹していた。 ▽かつての原口なら、清武のゴールに刺激を受けて自分もアピールしようと、足元にボールを要求してドリブル突破からフィニッシュを狙っていたに違いない。しかし後半の日本が清武、柏木、長友による左サイドからの攻撃が活性化すると、原口は右サイドで引き気味のポジション取りから攻守のバランサーとなっていた。 ▽ゴールという目に見える結果を出さなくとも選手は評価されることを、原口はドイツでプレーすることで知ったのかもしれない。ここらあたりが、ドイツで結果を残せなかった宇佐美との違いかもしれない。 ▽最後に、今日は悲しいかな“あの”ヨハン・クライフが68歳でこの世を去った。愛煙家であったためだろうか、死因は肺がんだったという。バルセロナの監督時代、心臓の手術をしたあとは禁煙し、ベンチでチュッパチャプスを口に加えていたものだ。それほどフィジカルに恵まれていたわけではないが、爆発的なスピードを武器に、現代サッカーに例えるならボランチとしてDFラインまで下がって攻撃を組み立てつつ、フィニッシュに顔を出していた。 ▽オランダの生んだ“巨星”については、また別の機会に書きたいと思う。そしてハリルホジッチ監督はクライフ氏の逝去について次のように今日の会見で語っていたことを紹介して終わりにしたい。 「クライフ氏は歴史上、素晴らしい選手だ。彼とプレーしたことがあるが、それは世界選抜対バルセロナで、カンプ・ノウでの世界選抜で同じチームだった。クライフ氏は素晴らしいプレーヤーで、創造者であり偉大なものをもたらした天才です。深く深く、家族にお悔やみ申し上げます」 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.03.25 07:30 Fri
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【日本サッカー見聞録】W杯予選で代表復帰のハーフナーを活かせるか

▽3月24日と29日のW杯アジア2次予選に臨むメンバー24人が3月17日に発表された。興味深いのは、ザッケローニ時代以来となるハーフナー・マイクと、招集されるたびに負傷で辞退してきた小林悠の復帰だ。小林はインフルエンザにより先週の名古屋戦は休んだだけに、またも招集を見送られるかと危ぶんだものの、どうやら快方に向かったようだ。 ▽194cmの長身FWハーフナーの“高さ”は確かに魅力的だ。しかしながら不安材料が2つある。まず1つはメンタルの弱さだ。ザッケローニ監督時代のこと。個性派揃いの代表チームにあって、つい遠慮してしまい、チームに溶け込めずに代表から外された。今季、ADOデン・ハーグで13ゴールをあげる活躍で自信を取り戻せたか注目したい。 ▽もう1つは、彼がピッチに登場しても、チームメイトはクロスを送らず“地上戦”のサッカーを展開していたためセットプレー以外は高さを活かす場面がほとんどなかった。ハリルホジッチ監督は会見でハーフナーについて次のように述べていた。 ▽「特に国内で支配したゲームで、興味深いのが彼。日本の短所はクロスでの得点が取れていないこと。この2試合ではサイドからのボールを送る。マイクの頭を狙うのは大事。組み立てで難しければ、マイクにダイレクトでボールを送る。背後に走った選手にフリックしたり、折り返してシュートを狙ったりする2つのパターンがある。こういったタイプは日本人に少ないのが現状だ。アフガン戦は恐らくブロックを敷いてくる。そこで有効になる選手かもしれない」 ▽果たしてハーフナーへのクロスからフリック・プレーが見られるのかどうか。こちらも注目したい点である。 ▽今回のメンバーは国内組が11人、海外組が13人とほぼ半数。それに比べて驚いたのがお隣の韓国代表だ。GK3人はいずれもJリーグでプレーしていて、DFのオ・ジェソクもJリーガー(G大阪)。彼ら以外にも中国のCリーグに所属している選手が4人、欧州組が8人、中東勢が4人と23人中20人が“海外組”なのだ。“国内組”はわずか3人しかいない。日本以上に選手の海外流出が進んでいる。 ▽Jリーグ経由で中国や中東へ行った選手も多く、彼らには逞しさを感じる反面、それで国内リーグが弱体化するかと言えば、近年のACLを見る限り決してレベルダウンはしていない。やはり「恐るべし韓国」である。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.03.17 21:49 Thu
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【日本サッカー見聞録】波乱含みのJFA新人事

▽リオ五輪アジア最終予選の最終日、なでしこジャパンは北朝鮮を1-0で下して3位に浮上し、全日程を終えた。1位はオーストラリア、2位が中国でこの2カ国が五輪の出場権を獲得、以下3位に日本、4位が韓国、そして5位北朝鮮、6位ベトナムという順位だ。 ▽今大会の試合内容を見る限り、順当な結果だったと思う。残念だったのは、試合の順番だ。日本は初戦でベトナム、次いで北朝鮮と格下相手に試合をすることで“試合勘”を取り戻すようにして、最終戦のオーストラリアを前に五輪切符を決めて消化試合にすることが理想的な展開だったのではないだろうか。それだけの“政治力”を発揮できないところに、女子の強化委員会の力不足を感じずにはいられない。 ▽佐々木監督の後任には、現U-20 日本代表の高倉監督の名前が早くからスポーツ紙に登場した。いわゆる“新聞辞令”というやつである。高倉監督はU-17日本代表でW杯優勝を果たすなど、それなりの実績がある。野田技術委員長も「日本の切り札」と期待していた。 ▽ただ、いきなり日本代表の監督を務めるのに荷が重くはないだろうか。まして4年後は自国開催の五輪である。せめて2年間くらいは外国人監督の下で経験を積んだ方がいいと思う。理想を言えば、なでしこジャパンのウィークポイントもストロングポイントも熟知している元アメリカのスンドハーゲ監督なのだが、現在は母国スウェーデンの監督を務めているのが惜しまれる。 ▽現段階で高倉監督が誕生するかどうかは不明で、その前に男女の技術委員長の去就が注目される。それというのも1月の会長選で田嶋JFA(日本サッカー協会)副会長の昇格が決まったからだ。新会長予定者がどんな人事を行うかに注目が集まるが、選挙戦を争った原専務理事が早くもJFAを去ることになった。 ▽原氏は専務理事から平理事への降格を田嶋会長予定者から打診されたものの、これを断りJFAを離職。村井チェアマンの誘いに応じ、新たにJリーグの副チェアマンに就任した。原氏は会長選で34票を集めただけに、専務理事にとどまるか、副会長に就任するかと思われていただけに、降格人事は多くの関係者に衝撃を与えた。 ▽これまで強化と同時に代表と国内リーグ、ACLのカレンダー整備など改革に意欲的に取り組んできただけに、原氏に代わる専務理事は誰が務めるのか。そして岡田氏が非常勤の副会長に就任することが濃厚なものの、常勤の副会長に誰を抜擢するのか。そして新ポストとなる事務総長には誰が就任するのかなどなど、人事を巡って水面下で話し合いが進められている。 ▽その余波ではないが、各種委員会の委員長も刷新される可能性は否定できない。原氏が技術委員長の時代から二人三脚で強化を担当してきた霜田技術委員長が現職を離れることもありうる。そうなればハリルホジッチ監督の去就にも影響を及ぼすだろう。 ▽田嶋会長予定者が“自分の色”を出すことは悪いことではないものの、ドラスティックな改革はかえって混乱を招くのではないかと危惧せざるを得ない。噂では、新ポストの事務総長には現事務局長の福井氏と、原専務理事を実務面でフォローしてきた鈴木副専務理事が意欲を示しているとも言われる。 ▽人事の腹案は今月のJFA常務理事会で披露される予定だが、どのような名前が噂にのぼって来るか。田嶋会長予定者にとっては“諸刃の剣”となるような人事案は避けて欲しいものだ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.03.10 18:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】代表トレーニング・キャンプのメンバーに潜む閉塞感

▽なでしこジャパンには3連勝を期待しつつ、オーストラリアも応援しなければならない、まさに“崖っぷち”状態である。流れを変えるためにも大胆な選手起用を期待したいが、メンバーを見るとカンフル剤となりそうな選手が見当たらない…。 ▽中国戦は中1日の3戦目。ここは疲れの見える宮間や大儀見を思い切ってベンチスタートさせるくらいの“ギャンブル”に出るのも一つの手かもしれない。「監督交代」という“劇薬”もあるが、それでは誰が“火中の栗”を拾うのか。まさか3度目の岡田武史監督というわけにもいかず、適任者が見当たらないのも悩ましいところである。 ▽といったところで、今日、JFA(日本サッカー協会)は7日から9日にかけて千葉県内で実施されるトレーニング・キャンプの招集メンバー26人を発表した。いずれも国内組で、初招集は川崎Fの車屋。U-23日本代表からは植田、遠藤航、浅野の3選手が招集された。 ▽24歳の車屋は、長友(30歳)、太田(29歳)のバックアップとなる左サイドバックだ。このポジションには25歳の酒井高もいるとはいえ、ハンブルガーSVでポジションを確保したとは言い難い。国内組では藤春とのポジション争いになるものの、長友や太田の後継者を早めにテストするのは悪いことではない。 ▽U-23に代表トリオも今回は将来を見据えての招集だろう。意外なところでは鹿島の遠藤康と横浜FMの齋藤で、2人ともサイドを起点にしてカットインからのフィニッシュを得意とするプレーヤーである。ただ、このポジションは海外組を視野に入れると“最激戦区”でもある。代表定着にはJリーグでスーパーな結果を残さなければならないだろう。 ▽今回のメンバー発表を見て感じたのは、なでしこジャパン同様、「またいつものメンバーか」というマンネリ感である。Jリーグで結果を出している選手、もしくは安定したパフォーマンスの選手ということになると、人選も限られてしまうということか。そして日本代表とJリーグの問題点もここに潜んでいる。 ▽例えば、リオ五輪でJリーグでの経験不足の指摘されるGKやセンターバック、手薄な両サイドバックのOA(オーバーエイジ)枠に、今回の招集メンバーから「この選手は戦力になるので入れた方がいい」という選手がいるかと問われれば、正直なところ即答できない。ご存じのようにリオ五輪は夏開催のため海外組の招集は難しい。 ▽にもかかわらず手倉森監督と霜田技術委員長はOA枠の有効活用を明言している。GK東口やDF槙野らは五輪出場に前向きな発言をしている(記者から誘導された可能性もあるかもしれない)が、果たして本当に必要な戦力か判断に迷うところだ。かつての遠藤保仁のように、国内組で「外せない選手」が見当たらないのが現状のような気がしてならない。 ▽絶対的な輝きを放っている選手。見ていてわくわくするような選手。去年なら武藤が該当したが、そうした選手はJリーグから巣立ってしまっている。これではJリーグの集客力が落ちてしまうのも必然と感じた、今回の日本代表トレーニング・キャンプのメンバー発表だった。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.03.03 18:41 Thu
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【日本サッカー見聞録】ゼロックス杯に見る誤審の意義

▽先週末に行われたゼロックス・スーパーカップは広島が3-1でG大阪を下し、チームの仕上がり状態の早さをうかがわせた。(佐藤)寿人らしいワンタッチシュートで先制すると、エースナンバー10番を背負った浅野がPKから追加点。そして新加入のウタカがスーパーボレーを決めて存在感をアピールした。 ▽毎年ゼロックス杯は、そのシーズンのレフェリング基準を選手や監督に示す“お手本”の場でもある。しかしながら、毎年微妙な判定があり、今年は広島の2点目につながった丹羽のハンドが、VTRで確認すると顔面直撃だったことが判明した。 ▽そして24日には報道陣に向けたレフェリング・カンファレンスが開催され、丹羽のプレーとジャッジについても、上川審判委員長は「レフェリー(飯田主審)は左腕に当たったと判断してPKを与えたが、映像では手ではなく顔に当たったと判断できる」と誤審であることを認め、「ミスの原因はレフェリーのポジショニング」と指摘した。 ▽問題のシーンは広島がカウンターを仕掛け、左サイドから柏の上げたクロスが、スライディングタックルに入った丹羽の左腕に当たったと判断されたプレーだ。丹羽は主審に詰め寄り、ボールが当たって赤く腫れた左頬を示しながらハンドではなかったことをアピール。そして判定が覆らないと見ると、フォースオフィシャル(第4の審判)に確認しようと走り出した。 ▽その際、丹羽がレフェリーと接触。この場面を見た西村審判は「これはまずい」と思ったそうだ。副審は逆サイドのため丹羽のプレーは死角になっているので見えない。第4の審判に確認するのはいいとして、興奮状態のままだと丹羽のプレーはレフェリーに対する威嚇と受け取られかねないからだ。「丹羽は審判を欺くようなプレーをしない選手」という認識が西村主審にはあるため、レフェリーは丹羽が走り出したらコースを空けるか、あるいは逆に手で制して興奮を冷まさせた方が良かったのではと話していた。 ▽そしてレフェリーが見間違えた理由については、丹羽が「手を上げてブロックに行ったため」と話し、上川審判委員長も手を上げてのブロックに「スライディングタックルの際の(ハンドを取られる)リスクを考えてプレーして欲しい」と訴えていた。 ▽それというのも、ディフェンダーはタックルの際に、往々にして両手両足を伸ばして飛び込むことが多い。それは本能であると同時に、「意図的なハンドではないと主審が見逃してくれるケースも過去にはあった」(上川審判委員長)からだ。 ▽10年前なら意図的に手でブロックしたり、叩き落としたりしなければハンドを取らない時代もあった。しかしハンドの解釈についてFIFAは年々厳しくなり、ディフェンダーは両手を後ろに回すか、胸の前で組むなど工夫しているものの、咄嗟のプレーでは丹羽のように両手を広げてしまうケースも多々ある。 ▽それでは、どうすれば誤審を防げたのか。ハンドのプレーがあった時のレフェリーのポジションはペナルティエリア外の左後方で、このポジションはクロスが入った際にペナルティエリア内の攻防を確認するには間違っていないそうだ。しかし問題のプレーを判断するとなると、タックルの際に上げた左腕と顔とが重なり、どちらに当たったのか判別は難しいと上川審判委員長は言う。 ▽最適なポジションはペナルティエリア左横のもう少し深い位置、柏の後方当たりだが、「(レフェリーも)カウンターの際のスプリント(動き出し)が遅く、そのポジションまで行けていなかった」と上川審判委員長は分析していた。 ▽Jリーグはナビスコカップの準決勝から追加副審の試験的な導入を2月24日に決定した。UEFAはEUROやCLなどで採用していて、両ゴールラインのゴール付近に1名ずつ副審を加え、ペナルティエリア内のプレーや得点の見極めを高める狙いがある。しかし上川審判委員長は例え追加副審がいても「丹羽のプレーは難しい判断になる」と語っていた。 ▽ゴールか否かを判定するゴールライン・テクノロジーというシステムもある。しかし個人的には、「審判も人間だからミスをする」という意見に賛成だ。審判だけでなく、選手も監督もミスを犯す。それを含めてのサッカーだと思っている。 ▽審判団には失礼な言い方かもしれないが、誤審があったからこそ喧々諤々(けんけんがくがく)のコミュニケーションが生まれ、「ああ、あの時のジャッジね」と記憶に残る試合、語り継がれる試合もある。誤審は大いに結構なことではないだろうか。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.02.25 14:05 Thu
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【日本サッカー見聞録】華がないメディア・カンファレンス

▽Jリーグの開幕を告げるメディア向けの“メディア・カンファレンス”が2月18日、都内のホテルで開催された。冒頭で村井チェアマンが「2016シーズンは鹿児島を加え、全国38都道府県に53クラブで開幕を迎えます」と宣言したように、今シーズンのJ3は鹿児島初のJクラブである鹿児島ユナイテッドと、FC東京、G大阪、C大阪のU-23チームも加わり16チームのリーグ戦となる。 ▽さらにサテライトリーグも復活するため、Jリーグ関係者は早くも日程調整に頭を悩ませていた。当面、サテライトリーグは各クラブの練習グラウンドが試合会場になりそうだ。これだけクラブ数が増えれば公共のスタジアムの使用には限界がある。J3が充実することにより、行政にスタジアムの整備を粛々と訴えて行くしかないだろう。 ▽さて第1部ではJ1の18選手がステージに登壇し、広島や鹿島といったタイトルを取ったチームの開幕戦の対戦選手とのインタビューが行われた。FC東京は中島が出席する予定だったものの、クラブの都合により水沼に変更。そして川崎Fも予定された大久保がコンディション不良のため谷口に代わった。 ▽壇上に並んだ18人の選手を見て、改めてJリーグの置かれている厳しさを痛感した。なぜかというと“華”がないのだ。参加した選手には申し訳ないが、「客を呼べる選手」、ラグビー日本代表の五郎丸のような「一度は見てみたい選手」が見当たらない。 ▽日本代表は柏木(浦和)一人だけ。リオ五輪組は植田(鹿島)と鈴木(新潟)の2人。その植田もナビスコ杯決勝には出ていない。元代表が楢崎(名古屋)と渡邉(神戸)、青山(広島)の3人だった。鳥栖なら豊田か林を、広島なら今は浅野が“旬”な選手だろうし、G大阪なら宇佐美あたりを出して欲しかった。 ▽カズやジーコ、リネカー、リトバルスキーが並んだ時代とは隔世の感がある。むしろ監督インタビューで第1ステージと第2ステージの覇者に加え、昇格3チームの監督が登壇した方が“華”はあった。なぜなら名波監督(磐田)と井原監督(福岡)という往年の名選手が登壇したからだ。彼らは第2部の囲み取材の場でも多くの報道陣を集め、脚光を浴びていた。 ▽各クラブにはそれぞれ事情があるのだろうが、話題作りという点ではプロ野球に遥かに及ばない。53ものクラブがブースを作り、監督(J1クラブの6人)や選手が囲み取材に対応しても、約1時間という限られた時間では取材にも限界がある。 ▽いっそのこと、メディア・カンファレンスは2日間に分け、初日はJ1クラブだけの一点豪華主義で話題作りに専念し、2日目はJ2とJ3で地域密着の取材を受けるという方式にしてはどうだろうか。その方がJリーグ側(電通)も様々な演出が可能になるだろう。 ▽現場を預かる監督はシーズン直前の練習を優先したい気持ちはわかる。しかしプロは注目されることも仕事の内。選手も“ビッグマウス”くらいがちょうどいいと思うのだが、いかがだろうか。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.02.18 20:06 Thu
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【日本サッカー見聞録】選手名鑑の思い出

▽J1リーグの開幕を17日後に控え、今年もJリーグ選手名鑑の季節がやってきた。昨日10日にはサッカーダイジェストの増刊が発売された。J1からJ3まで全53クラブを網羅した、290ページにおよぶ“大作”。これで1000円を切る、980円という値段には拍手を贈りたい。 ▽この選手名鑑、1993年のJリーグ開幕からダイジェストとサッカーマガジンは本誌の綴じ込み付録として製作していた。当時は10チームだったので、今とは比べ物にならないほど作るのも楽だった(と思う)。そんな選手名鑑で一番苦労したのは、選手の顔写真撮影だった。 ▽当時はダイジェストとマガジンのカメラマンが10クラブを訪れ、交互に選手を撮影した。しかし、1人のカメラマンが全チームを撮影するのではなく、複数のカメラマンで手分けして撮影したため、カメラマンによって選手のトリミングがバラバラだった。あるカメラマンはアップ目だったり、別のカメラマンは引き気味だったりと、肩の切れ方やユニホームの胸元の位置に統一感がない。 ▽そこでレイアウトでアップ目のチームに統一するのだが、印刷された校正紙を見るとやはりバラバラ。再校、再再校と繰り返して指示を出すのだが、なかなか統一されることはなかった。Jリーグ開幕当時はまだフィルムだったため、拡大縮小も今のデジタルほど簡単ではなかったのも統一を難しくしていたのだろう。 ▽そしていつも頭を悩ませたのが、新外国人選手の顔写真だ。開幕直前に獲得した選手は来日していないことも多く、チームに合流していない。何とか前所属チームの顔写真を見つけると、クラブのユニホームと合成して載せたものだ。ライバル誌がそうした選手の顔写真を掲載しているかどうか、発売日には最初にチェックしていた。 ▽開幕から数年後、選手の顔写真はJリーグフォト株式会社が代表して撮影し、それをダイジェストなどマスコミ各社は購入するシステムになったため、バック紙(選手の背景にある色紙)の色も統一されるようになった。 ▽53クラブのチームデータや選手データだけでなく、過去の記録やレフェリー名鑑、解説者名鑑なども網羅した大作。これほどデータ満載のボリュームある選手名鑑は、世界各国のリーグを見回しても、Jリーグがダントツの充実度だろう。日本人のデータ好きを反映しているのかもしれない。 ▽ただ、ネックは1キロという重量で、持ち運びに難点があること。ポケットサイズも発売されるが、こちらは字が細かくて少々見にくい。というわけで、今月の第4木曜に発売される本誌の付録である簡略版も購入することになる。商売上手のダイジェストと言える。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.02.11 16:05 Thu
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