コラム

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【六川亨の日本サッカー見聞録】気になるUAE戦の主審

▽3月23日から始まるロシアW杯アジア最終予選のUAE戦とタイ戦(28日)に臨む日本代表25名が16日に発表された。すでにメンバーとハリルホジッチ監督のコメントはニュースで掲載されているので割愛するが、興味深かったのは指揮官が会見の冒頭と終わりに、3回もレフェリーについて言及していたことだ。 ▽最初は「選手たちは誰も第1戦(昨年9月のUAE戦、1-2で敗戦)を忘れていないと思う。われわれにとってリベンジの機会でもある。W杯の出場権は誰もプレゼントしてくれない。もしかしたら暴力的なことや挑発もあるかもしれないし、フィジカル的な戦いもあるだろう」とした上で、「そのような中でもスポーツマンシップに則って、ルールに則って戦うことができればと思うし、適正なレフェリングを期待している」と、やんわり牽制した。 ▽そして終わりの頃には「たとえば初戦、私は思い出すと39度くらい熱が上がるのであまり思い出さないが、内容は悪くはなかった。守備でも攻撃でも興味深い点があった。少し細かいミスがあったが、それにプラスしてレフェリー影響があり、受け入れがたい試合だった。だからこそリベンジしたい」と語り、最後には「レフェリーに厳正な判定を期待したい」と締めくくった。 ▽終わりの頃の2つの発言は、記者の質問に答えているうちに、話が脱線してレフェリーに話題が及んだものだ。ハリルホジッチ監督は、よほどカタール人レフェリーのアル・ジャシム主審のジャッジに腹が据えかねているようだ。1点目につながったDF吉田麻也の反則は、相手の腕に軽く触れただけで吉田にはイエローカードが出て、FKを与えてしまった。デュエルを求めるなら流してもいいプレーだ。 ▽決勝点は3人で囲みながら、MF大島僚太が足を引っ掛けたとしてPKを取られた。このプレーについて、昨年のW杯予選サウジ戦かCSか、記憶は定かではないが、元審判委員長の上川徹とエレベーターの中でご一緒したので、PKかどうか質問したことがある。上川氏の答えは「足が掛かっていたのでPKでしょう」というものだった。 ▽しかし、すぐに我ながら愚問だと気付いた。PKというジャッジが下された以上、審判経験者が「あれは誤審です」と言うはずがない。立場上、下されたジャッジは認めざるを得ないのが上川氏でもあるからだ。さらに、FW浅野拓磨のゴールも認められなかった。これではハリルホジッチ監督に限らず、レフェリーに文句を言いたくなるものだ。 ▽昨年のACL決勝はアル・アインと全北現代が対戦した。全北現代は韓国らしいフィジカルを前面に押し出したサッカーで、アル・アインのエース、MFオマル・アブドゥルラフマンに何も仕事をさせなかった。アウェイではあるが、日本もデュエルを前面に押し出して戦えば、UAEは決して怖がらなければならないような存在ではない。ただし、問題はどの国のレフェリーが主審を務めるかだ。 ▽まだAFCの公式ホームページに試合のデータはアップされていないため確かめようがないが、できれば中東でも極東でもない第3国となるオーストラリアの審判団を期待したいものだ。23日はUAE対日本戦の3時間30分前に、タイがホームでサウジと対戦する。タイはホームでオーストラリアと引き分けただけに、こちらもサプライズを期待したい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.03.16 23:30 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】U-20でも遜色ない久保の凄さ

▽3月8日、小平市にあるFC東京の練習場には100人を超す報道陣と600人以上のファンが集結した。お目当ては、FC東京とU-20日本代表候補のトレーニングマッチに、15歳の久保建英(たけふさ)が招集されたからだ。45分ハーフの試合で久保は後半から登場すると、51分にボールを受けて反転すると、DF2人を次々に抜き去り左足でシュート。これはバーを越えたが、53分には原輝綺(新潟)のドリブル突破から岩崎悠人(京都)がつないだボールをワントラップ後に左足で突き刺して追加点を奪った。 ▽ゴールシーンについて久保は「ただ決めるだけの簡単なゴール。あそこは決めなきゃいけなかった」と冷静沈着に振り返っていた。ピッチでは簡単にフリーになってパスを受けると、いともたやすくマーカーを抜き去る。しかし、いま目の前で話しをしているのは、黒い詰襟の(ちょっと汚れたような)学生服を着た、正真正銘の中学生だ。他の選手が所属するJクラブのスーツを着ているのと比べ、そのギャップに違和感を覚えずにはいられない。 ▽もしも今年5月に韓国で開幕するU-20W杯に出場すれば、2世代飛び級の快挙となる。なぜなら本来なら久保は、2021年に開催される同大会の資格保持者だからだ。もしも2019年と2021年のアジア予選を突破して本大会出場を決めれば、3大会連続出場という記録更新の可能性もある。過去にはメッシ(2005年に18歳で出場して得点王とMVPを受賞)や、日本なら平山相太ら2大会連続出場のケースはあるが、さすが3大会連続はない。 ▽そんな久保のプレーで何がすごいのか。当日はカメラで彼のプレーを追ったことで分かったことがある。例えばカズや香川は“またぎフェイント”、いわゆるシザースフェイントを使うが、久保にはこれといったフェイントはない。しかし、対戦相手の体重移動、つま先立ちならタックルの足を出せるが、カカトが地面に着いていると咄嗟に足を出すことができない。それを本能的に察知して、ちょっとした体の向きで相手を誘い、ひらりとかわしているように見えた。ここらあたりも和製メッシと言われるゆえんだろう。 ▽3月15日には韓国で本大会の抽選会が行われる。果たして日本はどのグループに入るのか。そして久保は最終メンバーにエントリーされるのか。久保自身はU-20W杯について、「世界トップレベルで活躍している選手もいると思うので、どのくらいの力なのか比べたいし、将来的に避けて通れない人たちだと思うので挑戦したい」と、気負うことなく抱負を語る。学生服に身を包んだ中学生が、こんなにも堂々としたコメントを発信する。驚かされるのはプレーだけではない、日本サッカー界の宝と言っていいだろう。 ▽蛇足だが、3月15日の抽選会を日本から取材に訪れようとしたあるメディアは、10日に朴槿恵大統領の弾劾訴追に関する決定を宣告することに加え、北朝鮮の金正男氏が殺害された事件の影響で、取材を拒否されたそうだ。今月28日からはアジアカップ最終予選がスタートするが、平壌での試合は安全が確保されないとして、マレーシアサッカー協会はAFCに対し中立的な第3国に変更するよう要請している。こちらの成り行きも気になるところだ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.03.09 15:05 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】ACLで勝負弱いFCソウルに失望

▽AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の第2節が2月28日と3月1日に行われ、浦和はFCソウルを5-2で葬って2連勝と首位をキープしたものの、鹿島は後半アディショナルタイムの失点でムアントンに1-2と敗れ2位に後退。そして川崎Fは香港のイースタンSCに1-1のドローで3位、G大阪も済州ユナイテッドに1-4と大敗して3位と明暗を分ける形になった。 ▽グループEではダークホースと見られるタイのムアントンだが、代表選手を数多く揃え、ホームでは圧倒的な強さを発揮し首位に躍り出た。鹿島の次の相手はブリスベン・ロアーで、蔚山現代は6-0で勝っているだけに、鹿島としては大量点での勝利が期待される。グループGの川崎Fは、アウェイとはいえ広州恒大が7-0と圧勝したイースタンSCから勝点3を奪えなかったのは痛い。次節はアウェイで首位の広州恒大との対戦だけに、グループステージ突破を左右する一戦になる。そしてグループHのG大阪はホームでまさかの1-4。次節はホームに2連勝中の江蘇蘇寧を迎えるため、首位に一泡吹かせたいところだ。 ▽といったところで、2月28日は埼スタでの浦和vsFCソウル戦を取材したが、結果は浦和が5-2で圧勝したものの、これほど“勝負弱い”FCソウルを見たのは初めてだった。予想スタメンのCBキム・ドンウが負傷ためかメンバー外となり、代わりにCBに起用されたのが、FC東京が獲得を狙っていた巧ボランチのスペイン出身のオスマール。しかし彼は、李忠成や興梠が下がってボールを受けるとマン・マークにつかずフリーにしてしまい、簡単にポストプレーを許して攻撃の起点を作らせてしまった。 ▽“緩い”のは彼だけではない。FCソウルといえば、チェ・ヨンス前監督の激しい気性を受け継ぎ、ロングボールとフィジカルコンタクトを前面に押し出したタフなスタイルが特徴だった。2月に宮崎で行われたFC東京とのプレマッチでも、あわや乱闘寸前の肉弾戦を展開した。しかし浦和戦では、ボールロスト後の“攻から守”への切り替えが遅いため、李忠成や関根、興梠、武藤に簡単にドリブル突破を許し、カウンターから失点を重ねた。 ▽昨年6月から指揮を執るファン・ソンホン監督は、前任のチェ・ヨンス監督同様Jリーグでのプレー経験があり、C大阪時代は得点王にも輝いた。チェ・ヨンス監督が激情派とするなら、ファン・ソンホン監督は知的派のため、チーム作りにも方向転換があったのかもしれない。試合後の会見では「連敗によりグループステージの通過は難しくなったが、来シーズンに向けて2試合を分析したい。リーグ開幕に向けよい準備をしたい」と語っていた。 ▽FCソウルはACL初戦で上海上港に0-1で敗れているため、ファン・ソンホン監督は目標を3月4日に開幕するKリーグに切り替えたのか。そのためにデヤン・ダムヤノビッチやマウリーニョといったストライカーをベンチに温存したのか。真相は不明だが、これだけ覇気の感じられない韓国勢を目の当たりにすると、逆に気がかりになってしまう。唯一の救いは、元代表のパク・チュヨンがFKから鮮やかな一撃を決めて健在をアピールしたことだった。 ▽浦和の次節の相手は勝点6で並び、得失点差で2位につける上海上港だ。ブラジル代表MFオスカルとFWフッキを擁する難敵だ。3月15日と4月11日に行われる頂上対決が楽しみだが、グループFはこの2強が飛び抜けているため、2試合ともドローに終わる可能性も否定できない。それともペトロヴィッチ監督は、攻撃的なサッカーで勝利を目指すのか。指揮官の采配にも注目が集まる一戦だ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.03.02 17:50 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】今シーズンの判定基準で難しいのはホールディングの判断

▽日本サッカー協会(JFA)は、毎年恒例となっているレフェリング・カンファレンスを2月22日にJFAハウスで開催した。これは、新シーズンのレフェリング基準をJ1からJ3までの54クラブとJFL16クラブに伝えた後にメディアへも公開してきた。 ▽昨シーズンの傾向として、ラフプレーによるイエローカードが増えたこと、昨年夏に導入されたPKの際に、守備側がボールへのアタックから反則を犯した場合は、これまではレッドカードだったのがイエローカードに変更されたものの、GKは認識していたがフィールドプレーヤーは認識が不十分な選手がいたこと、ヘディングの際に手を使う選手が増えたので今シーズンは注意した、とのことだった。ヘディングの際は両手を上げてジャンプしがちだが、フリーの時は手を上げてもいいが、競り合いなどで手を上げて相手の顔と接触した場合は反則を取るということだった。 ▽ジャッジで難しいのが、CKやFK時のホールディングだ。守備側がホールディングで攻撃側の選手を倒せばPKで、ボールのないところでのプレーならカードは出さず、ボールのあるところでの反則にはイエローカードというのがこれまでの解釈だった。ところが昨シーズンは、反則を受けた攻撃側の選手が、守備側の選手のホールディングを利用して、相手の手をつかんだまま倒れてPKをもらうといったプレーが増えたこと。上川副委員長は「大事なのはどちらが先にホールドしたか」と判定基準を話していたが、密集地帯での瞬時の判断はかなり難しいだろう。 ▽そして新シーズンの新たな取り組みとして、試合後にクラブ関係者(実行委員か強化担当者)と審判アセッサー(審判のレフェリングを評価する人)で意見交換をする。クラブによるレフェリングに関するフィードバック・レポート(クラブから見た評価)の提出。メディア関係者へのレフェリング説明会の頻度を上げ、定期的に開催しオープンに伝えて相互理解を図る、ことなどを実施することになった。 ▽クラブ関係者と審判アセッサーではなく、主審と両チームの監督が直接話し合った方が、より具体的な話ができるのではと上川副委員長に質問したところ、「それでは生々しすぎて話し合いにはならないかも」と危惧していた。残念ながらこの話し合いはメディアには公表しないとのこと。 ▽カンファレンスでは昨シーズンの試合中のプレーをピックアップし、イエローカードかレッドカードかの判断基準なども解説していた。こちらは「激しいプレーを続けて行こう。Jリーグを変えて行こう。メディア、サポーターも含めて変えて行こう。基準を共有したい(原Jリーグ副チェアマン)」ということで、JリーグのHPでも『2017シーズン競技規則スタンダード映像』として公開されている。興味のある方はHPでチェックして下さい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.02.24 11:00 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】久保の過保護にひと言!

▽いよいよ今週土曜の18日に、鹿島対浦和のゼロックス・スーパーカップで2017シーズンが開幕する。その前座試合として10時30分から高校選抜対U-18Jリーグ選抜の試合があるが、おかしなメールがJリーグから届いた。 ▽「また、1点ご連絡です。NEXTGENERATION MATCH U―18Jリーグ選抜のメンバーである久久保建英選手(FC東京U-18)への取材に関しまして、Jリーグとクラブで協議した結果、チームに合流する試合前々日から試合当日(ミックスゾーン含む)まで一切の取材をお受けいたしかねますので、予めご了承頂きますようお願い申し上げます」 ▽久保といえば、U-17日本代表の主軸であるだけでなく、昨年末はU-20日本代表のアルゼンチン遠征にも招集され、U-20日本代表の内山監督も今年5月から6月にかけて韓国で開催されるU-20W杯への参加を希望する日本サッカー界の期待の星だ。将来を嘱望される逸材だけに、大切に育てたいという気持ちは分かる。 ▽しかし、それだからこそ久保はこれまで“飛び級”で、レベルの高いステージで戦ってきた。昨年11月5日には15歳5カ月でFC東京U-23の一員として、長野戦でJ3リーグのデビューを果たし、J3最年少出場記録を飾った。試合後は異例とも言える多くの報道陣に囲まれながらも、「緊張したけど身体はいつも通りに動きました。でも、何もできずに時間ばかり過ぎたけど、途中からは試合に入っていけました」と語り、デビュー戦と自身の出来については「順調と言えば順調ですけど、自分的には早かったかな。記録とかは意識していません。あまりゴールに絡めずミスも多かったので、10点か15点。今後は1人で局面を打開できるプレーヤーになりたい」と抱負を述べていた。 ▽中学3年生にもかかわらず、多くの報道陣、彼にしてみれば見ず知らずのオジサンたちに囲まれながら、言いよどむことなくはっきりと受け答えするのを見て、正直驚かされた。自分が中学3年生だったとしても、これほど理路整然と答えることはできなかっただろう。バルセロナに留学していただけに、精神的な自立も早いのではと感心したものだ。 ▽能力の高い選手は、より高いレベルでプレーさせた方がいいというのは常識だろう。久保に関して、「身体のできていない中学生を、高校年代や大学年代と試合をさせて、ケガをしたら取り返しのつかないことになる」とい危惧する声も聞こえた。しかし久保は、上の年代とのフィジカルコンタクトも苦にすることなく、巧みなドリブルとステップでかわしていった。危惧する声は、いまのところ杞憂に終わっている。 ▽だからこそ、プレー同様に若いころからメディアとも接して、社会性を身につけさせるべきだと思う。ピッチでは成長を促しながら、ピッチ外では周囲の大人が過保護になっていると感じられてならない。久保の、選手としての成長を見守るなら、“普通”に接するのが一番だとも思う。もしも久保が韓国でのU-20W杯で活躍したら、「試合当日(ミックスゾーン含む)まで一切の取材をお受けいたしかねます」という言葉が通用するとは思えない。国際的なスタンダードを身につけさせるためにも、関係者には再考を求めたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.02.16 15:05 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】Jリーグの「強化分配金」の金額が決定。リーグ連覇すれば2年で30億円の強化費

▽Jリーグは2月9日、優勝賞金の変更と同時に「強化分配金」を新設し、その金額を明らかにした。今シーズンからイギリスの大手動画配信会社のパフォーム社(映像配信はダ・ゾーン)と、10年で約2100億円の大型契約を結んだが、これらの原資が「強化分配金」に充てられる。 ▽まず優勝賞金は、年間1位が1億円から3億円に、以下2位は2000万円から1億2千万円に、3位は2000万円から6000万円に引き上げられた。そして「強化分配金」は、1位が翌年に10億円、2年目は4億円、3年目は1億5000万円と分割して計15・5億円が支払われる。2位は翌年が4億円、2年目が2億円、3年目が1億円の計7億円。3位は翌年が2億円、2年目は1億5000万円、3年目はなし。4位が翌年は1億8000万円で、2年目と3年目はなしとなっている。 ▽単純計算で今シーズンの優勝チームは来シーズンに13億円を手にすることができる。そしてリーグ連覇を達成すれば、翌年には優勝賞金3億円に加え2年目の4億円と1位の10億円の計17億円、2年間合計で30億円もの巨費を獲得できるのだ。ただし、「強化分配金」を受け取るには、①Jリーグの理念・活動方針に沿った目的に拠出しているか、②クラブライセンスにおいて当該年度のJ1ライセンスを保有しており、かつ当年度のリーグ戦に参戦していること、③当年度の配分金予算執行に関して理事会において決議されており、かつJリーグ内で支払い決議が下りていること、が配分条件とされている。 ▽要は、「強化分配金」がクラブ運営の補填費用などではなく、クラブの「強化」に使われる予定かどうか。それをクラブ側も明確にしなければならないということだ。金額を明かす必要はないが、どのような「強化」に使うのか、クラブは使途をファン・サポーターに説明して欲しい。 ▽今シーズンは優勝した鹿島がGKクォン・スンテ、MFレオ・シルバ、FWペドロ・ジュニオール、MFレアンドロを始めとした大型補強を敢行。FC東京はGK林彰洋、DF太田宏介、MF高萩洋次郎、FW永井謙佑、FW大久保嘉人とこちらも即戦力を獲得した。その他にもMF中村俊輔とMF家長昭博はそれぞれ磐田と川崎Fに新天地を求めるなど、これまでチームの“顔"だった大物選手が移籍市場を賑わせ、近年になり活況を呈した。 ▽巨額の「強化分配金」を想定しての移籍ではなく、たまたま契約が切れるなどのタイミングが重なったり、家庭の事情等もあったりしたのだろう。それでも当該チームのファン・サポーターにしてみれば、2月25日の開幕戦を楽しみにしていると思う。“新鮮力"がなければチームはマンネリ化するだけに、こうした活発な移籍は歓迎したいし、中国のCリーグに及ばないまでも、「強化分配金」を有効活用してヨーロッパで活躍するスター性のある選手を獲得して欲しい。 ▽2月25日は大型補強同士の鹿島とFC東京が激突するし、家長の抜けた大宮が、家長を獲得した川崎Fと対戦する因縁のカードも組まれている。個人的に残念なのは、試合をライブ配信するダゾーンは録画できないということ。現状では「見逃し配信」に頼るしかなさそうだ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.02.09 10:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】Jリーグに戻った高萩への期待

▽Jリーグは各チームとも沖縄や九州でのキャンプでテストマッチを重ねている。といったところで、今シーズンは大型補強を敢行したFC東京の練習を小平グラウンドで取材した。お目当ての選手は、1月中旬に急きょ加入したMFの高萩洋次郎だ。広島時代はクラブ史上初のプロの高校生Jリーガーとしてデビュー。2012年は広島の初優勝に貢献すると、活躍を海外に移しAリーグ(オーストラリアリーグ)のウェスタン・シドニーやKリーグ(韓国)のFCソウルで活躍。トップ下のファンタジスタとしてKリーグ優勝にも貢献した。 ▽FC東京にしてみれば、昨シーズンはボランチの米本と橋本が相次いで負傷。シーズン終盤は負傷を抱える梶山と、田辺をコンバートしてなんとかしのいだ。しかし橋本は1月31日にやっと全体練習に合流したものの、米本の復帰にはまだ時間がかかる。そこで、FCソウルではトップ下でプレーしていた高萩をボランチ候補として獲得したという訳だ。 ▽183センチの長身にもかかわらず、しなやかなプレースタイルから長短のパスで攻撃を組み立てる高萩は、個人的には現代サッカーでは希少種と言ってもいいクラシカルなファンタジスタだと思うし、正直好みのタイプだ。ただし、攻守に運動量が求められる現代サッカーで生き残る場所があるのかどうか。それは指揮官が求める、あるいは“許す”役割によって替わってくるだろう。高萩と同じことは磐田に移籍した中村俊や、スペインリーグ2部のテネリフェへ移籍した柴崎にも当てはまる。R・バッジョを外した歴代監督が示すように、ファンタジスタが生息できる場所は年々減少している。 ▽そんな状況にもかかわらず、高萩は「日本のJリーグとは違うプレースタイルや激しさを肌で感じてきた」とAリーグやKリーグでの体験を元に、「このチーム(FC東京)でも引き続き厳しさを持って、チームにいい影響を与えたい。攻撃の起点になるパスや、1本でゴールにつながるパスをゲームで出して行きたい」とファンタジスタ宣言をした。 ▽歌舞伎役者の中村獅童に似た風貌(と個人的に思っている)の高萩が、3シーズン振りのJリーグでどんな活躍をするのか。そしてFC東京に復帰した太田やC大阪への移籍が決まった清武など、今シーズンは海外から逆流入した選手に注目したいと思う。彼らが海外でどれだけの経験値を重ねたのか。それがJリーグに活性化につながれば言うことはない。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.02.02 17:15 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】J1移籍&戦力展望②

▽先週のコラムではJ1リーグの簡単な展望を紹介した。神戸に加入の噂があるルーカス・ポドルスキについては進展がなく、2月25日の開幕戦に間に合わないという報道も出てきた。移籍話が表面化したことで、ドイツメディア『エクスプレス』によると、神戸は移籍金300万ユーロ(約3億6000万円)を提示したものの、ガラタサライは400~500万ユーロ(約4億8000万~6億円)もの上乗せを求めているという。ここらあたりが移籍交渉の難しいところでだろう。 ▽逆にFC東京は、FCソウルから元日本代表MFの高萩洋次郎を完全移籍で獲得した。石井強化部長は「攻守のバランスを考えるとMFの補強を、より高いレベルの選手を考えている」と話していた通り、これで大型補強は完了したようだ。ただ、高萩はFCソウルではトップ下でプレーしていた。FC東京にはMF東慶悟という昨シーズンはトップ下にコンバートされたことで復活した選手がいる。高萩と東を併用するのか。それともケガを抱えながらプレーしているボランチ梶山陽平のバックアッパーとなるのか。改めて篠田監督の手腕が注目される。 ▽といったところで、J1リーグの開幕カードが決定した。注目カードは、昨シーズンは年間5位と躍進しながら、主力のMF家長昭博と泉澤仁の抜けた大宮が、同じく得点源のFM大久保嘉人を失った川崎Fとの一戦だ。家長の移籍先が川崎Fということもあって注目を集める開幕戦だが、家長は大久保のような純粋なストライカーではない。このためFW小林悠にかかる負担は増すだけに、今後はFW齋藤学(横浜FM)を獲得できるかどうかも焦点になる。 ▽対する大宮は清水からFW大前元紀を、湘南からMF長谷川アーリアジャスール、柏からMF茨田陽生を補強したものの、家長のキープ力と泉澤の突破力を補えたかといえば疑問が残る。FWドラガン・ムルジャの残留は好材料とはいえ、彼が生きたのも家長がいたからこそ。大宮は川崎Fに続き、大型補強を敢行したFC東京、MF中村俊輔とFW川又堅碁を獲得した磐田と対戦する。この3連戦をいかに乗り切るかで今シーズンの行方を占うことができるだろう。 ▽次に注目したいのが、MF中村俊輔やDFファビオとDF小林祐三を失った横浜FMだ。DF陣には新潟から松原健、柏から山中亮輔を補強し、前線にはレッドスターからFWウーゴ・ヴィエイラを獲得した。しかしながら、これで中村の穴が埋まったとは思えない。モンバエルツ監督が選手任せのサッカーから進化しなければ、J1残留争いに巻き込まれる可能性もある。 ▽開幕まではまだ1カ月近くあるため、今後もアッと驚く移籍があるかもしれない。キャンプ地でのテストマッチも含め、面白い話題があったら紹介したいと思う。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.26 10:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】2017J1リーグ展望①

▽昨シーズンのACL王者の全北現代(韓国)のスカウト担当者が、審判に賄賂を贈って八百長を工作したとして、AFC(アジアサッカー連盟)は今シーズンのACLの出場権を剥奪すると発表した。疑惑は今から4年間の2013年だったが、あれだけの強豪チームが八百長を仕掛けるとは何とも理解できない。チームはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服を申し立てるとしているが、果たして結果はどう出るのか注目されるところだ。 ▽さてJリーグは多くのチームが先週末に始動を迎え、早くもキャンプに突入している。今シーズンから優勝チームには多額のボーナスが出るものの、オフの移籍市場は穏やかで、これといった“目玉”はなかったのは残念だ。鳥栖がGKブッフォンの獲得を表明したものの実現せず、あとは神戸がオファーを出している元ドイツ代表FWのルーカス・ポドルスキが来るのかどうか。神戸は柏からFW田中順也、FC東京からMF高橋秀人、仙台からDF渡部博文と即戦力を補強。FWペドロ・ジュニオールを鹿島に引き抜かれたのは痛手だが、あとはレアンドロとコンビを組む新外国人を補強できれば面白い存在になりそうだ。 ▽その補強で相変わらずの“手堅さ”を感じたのがJリーグ王者の鹿島だ。FW金崎夢生というエースストライカーに加え、前線にはFW赤崎秀平、FW土居聖真やFW鈴木優磨とタレントはいるものの、神戸からペドロ・ジュニオールを引き抜いた。ACLとのターンオーバーを見据えつつ、金崎がシーズンを通じてフル稼働できない可能性もあるため、その保険も兼ねているのだろう。MF柴崎岳の海外移籍が噂されているが、ミスター新潟とも言えるレオ・シルバを獲得と抜かりはない。唯一の不安はCBファン・ソッコの抜けた穴だが、そこはDF植田直道の成長に期待したい。 ▽このJリーグ王者に挑むのが年間勝点1位の浦和ということになるのだろうが、即戦力候補は新潟から獲得したFWラファエル・シルバくらいだろう。千葉から獲得したFWオナイウ阿道やレンタルバックのMF長澤和輝、岡山からレンタルバックのMF矢島慎也らは将来的な若返りを見据えてのことだろう。それだけスタメンはほぼ決まっている。逆に不安材料を上げるとすれば、固定されたスタメンと6年目を迎えるペトロヴィッチ監督の“マンネリ感”ではないだろうか。2月25日、鹿島とのゼロックス杯は今シーズンの浦和を占う意味でも注目したい。 ▽移籍市場で大胆な動きを見せたのがFC東京だ。川崎FからベテランFWの大久保嘉人、J2に降格した名古屋からFW永井謙佑、フィテッセから左SB太田宏介、GKに鳥栖から林彰洋と代表クラスを獲得するなど、1月15日のチーム始動日には約2000人のファンが練習場に集まり、期待の高さをうかがわせた。さらにFCソウルのブラジル人MFの獲得を狙っているとの噂もある。問題は、新加入選手により出場機会を争うことになるFW前田遼一やMF河野広貴、阿部拓馬、DF徳永悠平といった“功労者”のメンタル・マネジメントだろう。昨シーズンと違いACLはないだけに、リーグ戦に集中できるとはいえ豊富な戦力をどうコントロールするのか。篠田善之監督の手腕が問われることになる。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.19 15:45 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】W杯の増枠は疑問

▽今月9日のことだったと思う。元日本代表の中田英寿氏がFIFAのFootball Advisory Panel(サッカー諮問委員)の一員として、W杯の参加国数の増加について好意的な意見を述べていた。正直、将来的な展望と想っていたところ、FIFAのインファンティノ会長は2026年のW杯から、現行の32チームから48チームに出場枠を拡大することを決定したのには驚かされた。 ▽狙いは単純。選手の負担を考慮して、1次リーグは3チームによるリーグ戦と試合数を減らし、その後はトーナメント戦にするものの、門戸の拡大によりトータルの試合数は現行の64から80に増える。開催国は入場料収入が増え、FIFAはテレビ放映権料の増加や、クラブW杯のスポンサーになった中国のアリババ・グループなど新たなスポンサーの獲得にもつながるメリットが予想される。 ▽それに対し、早くもヨーロッパからは否定的な声が出ている。それもそうだろう。選手の年俸を負担して生計を支えているのは各クラブだからだ。決勝戦まで勝ち進んだ場合の試合数は変わらないものの、そのしわ寄せは日程に来ることが予想される。そもそも、48チームに拡大する必要性がどこにあるのか、その必然性が分からない。 ▽2020年に東京五輪を控え、大会をコンパクトにし、必要経費を削減することが東京のテーマとして議論されている。IOCにしてみれば、経費の膨張は立候補国の減少につながるだけに死活問題と捉えているのではないだろうか。同じことはW杯にも当てはまる。決勝まで勝ち進んだチームの試合数こそ変わらないとはいえ、同じ期間で64試合から80試合を消化するためには、FIFAの規格に適合したスタジアムが必要になる。 ▽問題はスタジアムだけではない。48チームの練習場の確保。48チームのファン・サポーターが訪れた際の宿泊施設(ホテル)の確保など、課題は山積だ。日本より広大な面積のブラジルでさえ、W杯の際はホテルが不足して通常の5倍から(リオは)10倍の値段に高騰した。W杯は都市開催ではなく国開催だと言われるのは、それだけ五輪よりも規模が大きい大会だからでもある。 ▽すでにW杯は2018年のロシア、2022年のカタール開催と決まっている。その次の2026年は北米が有力だが、逆説的にも48チームを受け入れられるのはアメリカしかないだろう。同じことは2030年にも言えて、W杯が48チームで開催されるなら、招致できる国も限られる。W杯の共催は日韓両国で実績があるとはいえ、欧州選手権の共催は必ずしも成功したとは限らない。もはや限られた国しか開催できないW杯にする参加国増の今回の決定だ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.12 15:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】選手権の持つ役割

▽全国高校選手権は1月5日に準々決勝4試合が行われ、夏冬連覇を逃した市立船橋に続き、大会連覇を狙った東福岡も敗れる波乱があった。ベスト4に駒を進めたのは東福岡を破った東海大仰星、佐野日大、青森山田、前橋育英で、どこが勝っても初優勝となる。何が起こるか分からない一発勝負のトーナメントならではのベスト4と言えるだろう。 ▽今大会では、卒業後に川崎Fへ加入する桐光学園の左SBタビナス・ジェファーソンや、正智深谷のベスト8進出に貢献したオナイウ阿道(千葉から浦和へ移籍)の弟の、オナイウ情滋らハーフの選手が大会を彩った。タビナス・ジェファーソンはガーナ人の父とフィリピン人の母、オナイウ兄弟はナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた。しかし、高校サッカー通の知人によると、ハーフの選手が活躍するのも今年で最後だろうと予測する。 ▽それというのも、彼らの両親のいずれかは、日本経済がバブル絶頂期に日本に仕事を求めて来たものの、その後はバブル崩壊により日本を訪れる機会が減ったからだという。バブルがスタートしたのは1986年と言われ、1985年当時は1ドル250円だったのが、同年のプラザ合意により急激な円高が進み、1988年には1ドル120円まで高騰した。その後1993年頃からバブル景気に陰りが見られ、1998年には大手金融機関が破たんするなどバブル景気は崩壊した。 ▽イラン人の父と日本人の母の間に生まれた大リーガーのダルビッシュ有は1986年生まれ。ジャマイカ人の父と日本人の母の間に生まれた鈴木武蔵は1994年生まれだし、オナイウ阿道は1995年生まれ、タビナス・ジェファーソンは1998年生まれと、偶然の一致かもしれないが、知人の指摘にも一理あるようだ。 ▽そういえば、2005年にドイツW杯予選でイランのテヘランを訪れた時のことだった。アリ・ダエイの兄が経営しているサッカーショップの近くにある食料品店で買い物をした際、店主は10年間、千葉県の館山市で働いてお金を貯めたと流暢な日本語で話していた。イスラム教徒には禁じられているお酒と女性も楽しんだそうだ。またタクシーの運転手は宇都宮で働いたがお金を貯めることはできなかったと、こちらも日本語で話しかけてきたし、街中で出会ったイラン人男性は神奈川県の追浜で働いていたという。いずれもバブル最盛期に日本へ仕事を求めて来た人々だ。 ▽前述の鈴木武蔵やオナイウ阿道と情滋、タビナス・ジェファーソンは日本国籍を取得し、すでに鈴木とオナイウ阿道はU-23日本代表に選出され、近い将来は日本代表を目指している。プロへの登竜門――これも高校選手権の持つ役割の1つであり、彼らの活躍が、後進への道を開くことにつながるよう願わずにはいられない。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.05 20:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】天皇杯決勝は好対称なチームの激突に

▽第96回天皇杯決勝は、6大会ぶり5度目の優勝を狙う鹿島と、初のファイナリストになった川崎Fとの顔合わせになった。準決勝の鹿島対横浜FM、川崎F対大宮の準決勝2試合は、いずれも後者が試合の主導権を握ったものの、勝ち残ったのは前者という皮肉な結果になった。 ▽横浜FMは前半30分過ぎまでに齋藤のドリブル突破などから決定機をつかんだものの、前田のシュートはGK曽ヶ端に阻まれ、富樫のシュートは枠を捉えられずに好機を生かせない。齋藤は鹿島にとって脅威になっていただけに、彼にボールを集めるのは当然の策だが、それを利用するあたり、試合巧者の鹿島らしい。 ▽鹿島は41分に齋藤へのパスをカットした永木から赤崎、柴崎と素早くつなぐカウンターから、最後は土居が頭で押し込んで先制した。横浜FMは後半に中村を投入して反撃を試みるも、後半28分にDF新井がビルドアップのパスを痛恨のミスで永木にプレゼント。これを柴崎、鈴木とつながれて追加点を奪われた。その2分前には金井が同点弾を決めながら、オフサイドの判定で取り消されたのも痛かった。 ▽大宮は今季リーグ5位の躍進につながった攻から守への素早い切り替えと、囲い込む守備で川崎Fにサッカーをやらせなかった。それは大島が投入されても変わらず、ポストを叩いた泉澤のシュートか、フリーにもかかわらずゴール枠を捉えられなかったムルジャのシュートが決まっていれば勝てたかもしれない試合だった。 ▽終了間際に右CKからのこぼれ球を、最後は谷口が押し込んで決勝点としたが、これだけ攻撃に精彩を欠き、何もできない川崎Fを見るのは初めて。それほど、大宮のサッカーは素晴らしかった。 ▽ただ、決勝戦の顔合わせとしては、堅守速攻の鹿島対パスサッカーによる攻撃的な川崎Fという対照的なチーム同士の激突の方が面白いかもしれない。両者はCS準決勝でも対戦し、金崎の決勝ヘッドで鹿島が勝ち進んだが、ボールポゼッションで川崎Fが上回りながらも、決定機の数は互角だった。今シーズンでチームを離れる風間監督とFW大久保が初タイトルを置き土産にできるか。それとも鹿島が天皇杯の優勝回数を伸ばして東京VやG大阪と並ぶのか。決勝戦は元日の14時に吹田スタジアムでキックオフとなる。 ▽最後に個人的なことだが、天皇杯の決勝は大学生の4年間と社会人になってからの36年間、計40年間にわたりスタジアムで観戦・取材してきた。さすがに今回は元日に吹田まで日帰り取材するのは断念して、テレビ観戦の予定だが、改めて国立競技場のロスト感を覚えずにはいられない。 ▽今年のコラムもこれが最後になります。1年間お世話になり、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。それでは良いお正月をお過ごしください。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.29 19:30 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】危機感を覚えたJリーグアウォーズ

▽今シーズンのJ1リーグのMVPは川崎Fの中村が初受賞した。チームの年間2位に貢献し、9ゴール11アシストと結果も残しただけに、納得できる結果でもある。リーグ優勝を果たした鹿島からベストイレブンに選出されたのは西と昌子の2人だけ。これはCS(チャンピオンシップ)が始まる前の11月18日に優秀選手がノミネートされたため、CSの結果は反映されなかったからだ。第2ステージの鹿島は11位と低迷していただけに、当然の結果と言える。 ▽その一方で、年間勝点1位の浦和からは8人の選手が優秀選手に選出されながら、ベストイレブンに選ばれたのは西川と槙野、阿部、柏木の4人だけ。興梠と武藤はゴールという結果で小林(川崎F)やレアンドロに及ばなかったため選外となったのだろう。 ▽興味深いのはベストイレブンのDF陣だ。昌子と槙野は当然として、6位の広島から塩谷、9位のFC東京から森重が選ばれたのはちょっと意外だった。チームの成績に関係なく、プレーが評価されての受賞だろうが、ベストイレブンに選ばれた4人は、いずれもCBタイプの選手ということ。昌子と森重は4バックのセンターだし、槙野と塩谷は3バックのサイドで果敢な攻撃参加を見せるものの、純粋なサイドバックではない。 ▽ノミネートされた選手には4バックのサイドを務める川崎Fのエウシーニョと車屋、G大阪の藤春もいたが、槙野や塩谷を上回るだけのインパクトを残せなかったということなのだろう。日本代表でもサイドバックは酒井宏と酒井高、長友が長らくレギュラーとしてプレーしている。それだけ“国内組”にはサイドバックの台頭が滞っていることの裏返しと言えるかもしれない。 ▽塩谷と、今回は受賞を逃した藤春は、手倉森監督が「代表に来て欲しい」と期待を込めてリオ五輪のOA枠で招集した選手でもある。ただし、塩谷と藤春はすでに28歳と、もう若手の域を過ぎている。大型CBだけではなく、サイドバックの育成も急務と言っていいだろう。ベストイレブンを見ても、25歳以下での選出は昌子1人だけ。浦和の遠藤や川崎Fの大島、ベストヤングプレーヤー賞を受賞したG大阪の井手口がベストイレブンの選外になったのは残念だったが、若手選手の有望株は浅野や久保、南野のように海外へ流出して、Jリーグそのものが高齢化している証拠かもしれない。 ▽中村のMVPは当然だと思うが、36歳での受賞は過去最年長となる。その彼が、投票で断トツだったことにも危機感を覚えてしまう、今年のJリーグアウォーズだった。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.22 13:15 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】ビデオ判定によるPKに違和感

▽FIFAクラブワールドカップ(W杯)で、開催国枠で出場した鹿島が準決勝でナシオナル・メデジン(コロンビア)を3-0の大差で下し、アジア勢としては初となる決勝進出を果たした。 ▽鹿島は1次ラウンドでオークランド・シティ(ニュージーランド)に先制点を許したが、交代出場の赤崎と金崎の連続ゴールで逆転。準々決勝のマメロディ・サンダウンズ(南アフリカ)、準決勝のナシオナル・メデジン戦はいずれも前半から押し込まれたが、持ち味である堅守とGK曽ヶ端のファインセーブなどで無失点に切り抜ける。そしてマメロディ・サンダウンズ戦では遠藤と金崎のゴールで2-0、ナシオナル・メデジン戦は土居のPKと遠藤、鈴木の追加点で3-0と快勝した。 ▽この2試合でゴールをマークした金崎と鈴木はいずれも交代で入った選手。1次ラウンドに続き石井監督の采配もズバリ的中したと言える。堅守速攻をベースに試合巧者の鹿島が、これまでは、なぜかACLで結果を残すことができずに不思議に思っていた。しかしクラブW杯というグレードアップした大会で結果を出したことで、来シーズンのACLにも期待が持てそうだ。 ▽ただ、ナシオナル・メデジン戦では違和感も覚えた。前半26分過ぎ、ナシオナル・メデジンのスローインでプレー再開という時に、主審がストップをかけたまま試合は数分間、中断された。FIFA主催の大会で初めて試験導入されたビデオ判定が適用されたものの、スタンドで観戦していたファンには何が起こったか分からなかったと思う。 ▽ビデオ判定の結果、鹿島のミドルサード左でのFKで、柴崎のクロスに対しゴール前ファーサイドに飛び込んだ西が足を引っ掛けられて転倒したとして、鹿島にPKが与えられた。VTRで繰り返し見たが、故意に足を引っ掛けたというよりも、身体を寄せた際に引っ掛かってしまったという印象を受けた。CKやFKの守備では、相手をフリーでプレーさせないため、身体を寄せるのは常套手段だ。その際に、ボールと直接かかわるプレーではないものの、ホールディングは今シーズンから厳しくジャッジすることになった。しかし西への反則はホールディングではない。 ▽幸いにもビデオ判定はこの1シーンだけだったが、「試合中に何度も繰り返されるようなら、流れが途切れてしまう」と石井監督が試合後に語ったのも頷ける。PKかどうかの判断も含めて、ジャッジは人間が下すから、例えそれがミスジャッジであっても受け入れるところに様々なドラマが生じると思う。ビデオ判定はゴールかどうかの判定だけにとどめた方が、選手もファンもすっきりするのではないだろうか【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.15 17:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】クラブW杯初戦のMVP永木は当然の選出だった

▽昨日8日に開幕したFIFAクラブW杯の準々決勝プレーオフで、開催国枠出場の鹿島は金崎の逆転ゴールでオークランド・シティを2-1で下し、初戦を突破した。試合のMVPに選ばれたのは金崎ではなく、同点弾をアシストした永木だったが、納得できる選出だった。 ▽というのも、試合は立ち上がりから鹿島ペースで、ボールポゼッション率でもオークランドを圧倒したものの、言葉は悪いが「ボールを回しているだけ」の攻撃だった。石井監督が「なかなかギアが上がらない展開。CSの疲れからか、前半は全体的に身体が重かった」と言えば、永木も「立ち上がり、フワッと入ってしまった。過密日程と優勝した余韻に浸った気分があったのかな」と振り返っていたが、苦戦した原因は引いた相手に対し、足元から足元へとつなぐパスが多かったことだ。 ▽トラップしてからのパスは相手も予測しやすい。逆説的に言うと、ワンタッチ(ダイレクト)のパスでの突破がなかったのは、スペースへ走り込む選手がいなかったということにつながる。ここらあたりの動き出しの少なさを、石井監督は「身体重かった」と指摘したのかもしれない。 ▽引いて守りを固めるオークランドを攻めあぐねた小笠原は、何度もサイドチェンジを繰り返しては“幅”のある攻撃で揺さぶろうとした。しかし、最後の突破となるタテへの仕掛けではスペースがないため、遠藤や西、山本へのパスはゴールラインを割ることが多かった。 ▽流れが変わったのは、63分に小笠原に代わって金崎が投入されてからだった。この交代で、それまで左サイドハーフだった柴崎がボランチに入り、2トップだった土居を左サイドハーフにコンバートして、金崎と赤崎の2トップにした。すると柴崎は、サイドチェンジという“幅”を使った攻撃に加え、バイタルエリアの2トップへタテパスを入れる“深さ”を使った攻撃でオークランドDF陣をおびき出した。 ▽そしてもう一つの変化は、小笠原が司令塔の役を務める時はアンカーとして守備に回る永木が、柴崎がボランチに入ると果敢に前線へと飛び出したことだ。67分の赤崎の同点ゴールは、右サイドで永木が遠藤とのパス交換からスペースへ抜け出し、絶妙のクロスを送ったことで生まれた。突進すると見せて後方に戻りながら、自身の前にシュートスペースを作った赤崎のプレーも秀逸だったことも付け加えておこう。 ▽そして思ったのは、やはり柴崎はサイドに置くよりもボランチの方が生きるということ。小笠原とのコンビで攻撃力は確実に増す。しかし永木の攻守における貢献度も捨てがたい。ここらあたりが石井監督も頭を悩ますところだろう。 ▽最後に、CS第2戦の2ゴールに続き、この日も決勝点を決めて“神ってる”金崎を、ハリルホジッチ監督はどう評価するのだろうか。次の代表招集はまだ先のことなので、それまで金崎が好調を持続しているかどうか分からないが、ちょっと気になるところでもある。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.09 15:56 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】痛ましい墜落事故に思ったこと

▽また痛ましい墜落事故が起きてしまった。もうすでにテレビや新聞、ネットでも報道されたように、11月28日午後10時過ぎ、南米クラブ選手権(コパ・スダメリカーナ)決勝に出場するためコロンビアのメデジンに向かっていたブラジル1部リーグのシャペコエンセの選手やクラブ関係者の乗っていたチャーター機がメデジン空港近くで墜落。奇跡的に救助された3選手をのぞき、22人のメンバーを含め、クラブ関係者や記者など70人が命を落としたという。 ▽哀しい事故により初めてチーム名を知ったが、犠牲者には元神戸のカイオ・ジュニオール監督や千葉でJ2得点王にもなったケンペスや、柏でプレーしたクレーベルら元Jリーガー5人が含まれているだけに、各クラブの関係者、ファン・サポーターも心を痛めていることだろう。HPで哀悼の意を表したり、練習前に黙とうをしたりしてかつてのチームメイトを偲んだクラブもある。 ▽かつては1949年に、当時絶頂期にあったトリノの選手が乗った飛行機がトリノ郊外に墜落して選手全員が死亡した「スペルガ(墜落地)の悲劇」や、1958年にチャンピオンズリーグの帰途、西ドイツのミュンヘン空港で離陸に失敗して選手の大半を亡くした「ミュンヘンの悲劇」と言われる惨事があった。近年では1993年に、W杯予選に出場するため移動中だったザンビア代表の搭乗機がガボン沖合に墜落して乗客全員が死亡したり、1987年にはペルーの名門チーム、アリアンサ・リマの選手が搭乗した飛行機が太平洋に墜落して43人が死亡したりした、痛ましい事故があった。 ▽事故の原因は燃料切れという説と、電気系統のトラブルという説があるが、まだ正確なことは分かっていない。日本と違いヨーロッパや南米、アフリカは広大な大陸ため、移動手段に飛行機は欠かせない。そしてブラジルW杯や今夏のリオ五輪取材時に実感したのは、マナウスからサルヴァドールやサンパウロへ移動するのに直行便はないため、ブラジリアでの乗り換えを余儀なくされ、改めてブラジルの国土は広いということだった。今回のチャーター機も、サンパウロからボリビアのサンタクルスを経由してメデジンに向かった。どちらが墜落の原因であっても、納得せざるを得ない気がしてならない。 ▽ここで話しは大きく変わるが、韓国では朴槿恵大統領の退陣を求める大規模なデモが連日のように行われている。何十万という人々が光化門広場に集まり声なき声をあげている。ドイツのミュンヘンなら市庁舎広場前、ウクライナだったら首都キエフにあるソフィア広場、フランスだとパリのシャンゼリゼ大通り、イタリアではミラノのドゥオーモ広場、メキシコではメキシコシティの独立記念塔、アルゼンチンならブエノスアイレスの独立記念塔といった具合に、嬉しい時や悲しい時、あるいは抗議をするために人々が集える広場がある。 ▽もしも日本にもそうした広場があれば、今回のような痛ましい出来事に、サッカーファンが集って哀悼の意を捧げたと思うが、残念ながら日本にはそうした広場がない。渋谷のスクランブル交差点や大阪の道頓堀ではなく、人々が自然発生的に集える広場が欲しいとの思いを新たにせずにはいられなかった。最後に、亡くなられたすべての方々のご冥福をお祈りいたします。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.01 16:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】CS準決勝で名言を残した風間監督

▽JリーグのCS(チャンピオンシップ)準決勝は、昨年に続き年間勝点3位の鹿島が、金崎の決勝点で年間勝点2位の川崎Fを下して決勝戦に進出した。試合そのものは、両チームともイージーミスの少ない、パスをていねいにつなぐサッカーで、年間順位にふさわしい内容だった。ただ、敗れた川崎Fのファン・サポーターにしてみれば、年間勝点で13もの差がある2位と3位だけに、割り切れない思いもあったのではないだろうか。 ▽加えて川崎FはFW小林、MF大島といった主力に加え、武岡、奈良、井川といったDF陣も負傷などでメンバー外となり、MFの田坂を3バックにコンバートする苦しい布陣。リザーブのDFも登里1人のため、19歳のMF板倉と三好をスタメン起用しなければならなかった。さらに21分にはMF長谷川が負傷し、中村と交代を余儀なくされるなど、風間監督にすれば誤算続きだっただろう。 ▽その点について風間監督は、「それは誤算というか、そんなにいい計算はしていないです。90分なので。生き物なので、覚悟するしかない。別に初めからプラン通りにいく試合なんてそうあるわけではない」と割り切っていたのはさすがだ。そして印象的だったのが、試合後の風間監督のコメントだった。今シーズンでチームを去るに当たり、次のような言葉を残した。 ▽「1つは考え方です。もう1つは技術。選手が本気になれば、必ずトップにいられる。それを信じること。それプラス、技術というのは絶対に裏切らない。そこを突き詰めることをやってきた。この2つで初めて、自信であったり強気にできたりする。その考え方を柔らかくして、色んな引き出しを作ってほしい。まだ技術は伸びる。この2つをやっていけば必ず強いチームになる」と持論を披露した。 ▽試合は、川崎Fにもチャンスがなかったわけではない。後半は中村のFKや登里のドリブル突破、アディショナルタイムには谷口がフリーとなってのヘッドなど決定機を迎えた。しかしGK曽ヶ端の好セーブやDF陣のシュートストップなどに遭い、なかなか鹿島ゴールをこじ開けられない。風間監督は「一言でいえば、入らない時は入らないという試合」と振り返り、大久保は「球しか動いていなかった。(DF陣の)間に入ってディフェンダーを動かさないから」と反省点を口にした。 ▽2人のコメントは的を射ていると思う。と同時に、シーズン中にもかかわらず、川崎Fの躍進に貢献した指揮官とエースストライカーが早々に離脱することを表明したことで、チームは求心力を欠いたのではないかという思いも拭えない。風間監督は名古屋へ、大久保は東京Fへの移籍が決まっていて、小林にも鳥栖をはじめ数チームからオファーが届いているという。チームとしてまとまるのは難しい状況だったのではないだろうか。 ▽記者会見の最後を風間監督は「試合を支配するのは個人個人のつながったチーム。試合を決めるのは個人です」という名言を残して締めくくった。その個人個人が、様々な思いによりつながりきれなかったとしたら残念でならないCS準決勝だった。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.11.24 18:30 Thu
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【日本サッカー見聞録】サウジ戦での原口の成長

▽W杯アジア最終予選で日本代表は、グループB首位のサウジアラビアを2-1で下し、オーストラリアがタイと2-2で引き分けたため、サウジと同勝点の2位に浮上した。正直な感想としては、サウジもオーストラリアも「たいしたことはないチーム」という印象だ。むしろイラクに勝ってオーストラリアと同勝点で4位UAEの、オマル・アブドゥルラフマン(背番号10)と、日本戦ではFKとPKから2得点のアハメド・ハリル(背番号11)の方が、「個の強さ」による脅威を感じた。 ▽といったところでサウジ戦である。ハリルホジッチ監督は本田と香川、岡崎をスタメンから外し、久保と大迫、清武をスタメンに起用した。ベンチスタートとなったこれまでの主力を、「ジョーカー」と表現して起用したことは、いままでになかった発想だけに面白い。そしてサウジ戦では原口の決勝点で逃げ切ったが、試合後に原口の発言を聞いて、「やっとチームになった」と感じたものだ。 ▽ザッケローニ監督からアギーレ監督、そしてハリルホジッチ監督になっても、日本代表の攻撃陣は、ほぼ決まった顔ぶれだった。右MFは本田、トップ下は香川か清武、1トップは岡崎だ。唯一、ピースがハマらないのが左MFだった。 ▽遡ること2013年、ザッケローニ監督は東アジア・カップで左MFに原口、大迫、工藤、齋藤らをテストしてきた。その後も歴代監督は宇佐美や乾を同じポジションで起用したため、ポジション争いの無風な右MFやトップ下、1トップと違い、左MFは激戦区となった。その弊害として、左MFに起用された選手は結果を残そうと得点を求めるあまり、個人プレーに走っていた印象が強い。 ▽ジーコ・ジャパン時代から続く、日本代表のレギュラーになるためには「海外でプレーしなければいけない」という呪縛の悪弊だ。ようやくハリルホジッチ監督は、海外組に「試合に出られるチーム」への移籍を推奨したが、これも日本の実情を経験したからの発言だろう。 ▽話を原口に戻そう。東アジア・カップ以降、左MFに起用された選手は、誰もが結果を残そうと自身のゴールにこだわった。チーム内の競争は歓迎すべきところだが、その結果、パスを出していればというシーンでもエゴイストになりチャンスを潰していた。これはチーム作りの難しさでもある。 ▽そんな左MFに、今予選では原口がハマった。W杯の最終予選で4試合連続得点という記録もさることながら、サウジ戦の試合直後に「今日は勝点3が必要な試合だったので、それを達成できてよかったです。(ゴールは)コースは見えていた。ゴールはおまけなようなものです」と、自身のプレーではなくチームの勝利を優先した発言に、彼自身の成長を感じずにはいられなかった。原口の成長が日本を救ったと言っても過言ではないだろう。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.11.17 18:20 Thu
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【日本サッカー見聞録】日本vsサウジはアジアのクラシコ?

▽4-0の勝利を収めたオマーン戦から一夜明けた12日、日本代表は午前10時30分からカシマスタジアムで約2時間近く汗を流した。スタメン組はウォーキングとランニングで、1時間ほどでクールダウンを切り上げたが、途中出場した選手とサブ組はランニングとストレッチ、パス交換などで1時間ほど費やすと、そこからインテンシティの高い練習を1時間30分に渡り繰り返した。 ▽最初は10メートル四方のスクェアにミニゴールを4つ置き、1対1でのゴールの奪い合いを2分交代で繰り広げた。マッチアップしたのは岡崎対森重、原口対長友、久保対槙野、小林対井手口、浅野対植田、香川対長谷部という組み合わせ。10メートル四方という狭いスペースのため、スピードで抜くわけにはいかない。そこでフェイントをかけるわけだが、互いに代表選手だけに、そう簡単には引っ掛からない。 ▽そこでボールをキープするためスクリーンすると、守備側は腰や上半身を使ってボールを奪おうと身体を密着させて圧力をかける。同様にボール保持者も身体や手を使って押し返すため、必然的にハリルホジッチ監督の求めるデュエルが、身体のサイズに関係なく要求されることになる。この1対1が、選手のコンディションの善し悪しを見るには一番分かりやすく、香川と長友はプレーにキレ味を欠いていること、原口と小林は動きがシャープなことが一目瞭然だった。 ▽次は同じスペースでの2対2に移り、岡崎&久保対森重&槙野、小林&原口対長友&井手口、長谷部&植田対浅野&香川という守備陣と攻撃陣の攻防を2分交代で実施。その次は2タッチという制約つきでの3対3で、こちらは森重&槙野&植田対浅野&久保&岡崎、長友&長谷部&井手口対原口&小林&香川という組み合わせだった。 ▽この練習で、さすがと思ったのが香川だった。人数が増えると、味方の動きをダミーに、アウトサイドでパスを出すと見せかけて、柔らかい足首のスナップからインサイドに切り替えマーカーの逆を取る。コンディションとスキルは関係ないことを証明していた。 ▽スモールフィールドでの3対3の次は、GKを入れてペナルティエリアでの6対6の攻防で、こちらの練習もかなりハードにぶつかり合っていた。この練習を見る限り、香川と長友以外はサウジアラビア戦に向け臨戦態勢に入っていると判断してもよさそうだ。 ▽この練習を見学中に、カタールのテレビ局に務めている日本在住のシリア陣記者から逆取材を受けた。日本に来て4年目になるが、内戦が勃発して母国には戻れないでいるという。日本人記者には非公開となるサウジアラビアの練習も取材していて、FWのナセル・アル・シャムラニにインタビューしたところ、ファン・マルバイク監督とは「一言も話したことはない」と、選手と監督間でコミュニケーションはほとんど取れていないそうだ。 ▽1週間前にプライベートジェットで来日した理由は時差調整よりも気候に慣れるためで、「フィジカルの準備はできているので試合に勝つ自信はある。3点は取れるだろう」と豪語していたそうだ。日本が最後にサウジアラビアと対戦したのは2011年1月のアジアカップのグループリーグで、この時は5-0と大勝している。過去の対戦成績でも日本が7勝1分け3敗と圧倒しているものの、アジアカップに3度優勝しているからなのか、サウジアラビアの人々にとって日本戦は特別な試合であり、彼らは両国の対戦を「アジアのクラシコ」と呼んでいるのは初耳だった。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.11.12 19:30 Sat
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【日本サッカー見聞録】代わり映えしない日本代表。唯一の救いは…

▽昨日3日でJ1リーグは全日程を終了し、すでに第2ステージ優勝を決めている浦和が年間総合勝点でも首位の座を守り、CS(チャンピオンシップ)決勝進出を確定した。しかしファンの最大の関心事は残留争いにあっただろう。名古屋、新潟、甲府の3チームによる争いは、3チームとも敗れた結果、得失点差で名古屋が初のJ2降格となった。 ▽これで93年に開幕したJリーグに参加した、いわゆる「オリジナル10」でJ2降格を免れているのは鹿島と横浜FMの2チームだけ。千葉(当時は市原)と東京V(同じくヴェルディ川崎)はJ2に落ちて久しいだけに、改めてトップリーグに居続けることの難しさが分かる。 ▽名古屋の久米社長は降格から一夜明けた4日に辞意を表明し、その場で受理されたという。柏や清水、名古屋で強化部長として成功を収めてきたものの、今シーズンは経験の浅い小倉監督兼GMに指揮を委ねたことが仇となったようだ。修羅場をくぐってきた久米氏が、小倉監督に固執して早い段階で手を打たないのが思議でならなかったが、1シーズンでJ1に復帰できるかどうか。選手の流出も予想されるだけに、名古屋には茨の道が待っているかもしれない。 ▽そして4日は、11日のオマーン戦と15日のサウジアラビア戦に臨む日本代表のメンバーが発表された。今回の出席者はハリルホジッチ監督だけ。そしてVTRも使わず、質疑応答は37分間という異例の早さで終わった。それというのも初招集はG大阪の井手口だけで、あとはほとんど10月のメンバーと変わらないからだろう。小林と大島(川崎F)はケガで外れたのは想定内だったが、柏木(浦和)がメンバー外だったのはちょっと意外だった。 ▽指揮官によれば、山口(C大阪)と井手口が柏木の代役のようで、永木(鹿島)は長谷部の控えという位置付けのようだ。2列目には香川や清武、小林(ヘーレンフェーン)の他にも原口や齋藤、大迫らのタレントがいる。そこで中盤の底には敢えてプレーメーカーは必要なしと判断したのかもしれない。 ▽海外組の合流日時にもよるが、ハリルホジッチ監督はオマーン戦では若い力を試すようなことも匂わせていた。テストマッチだけに、海外組に無理をさせてコンディションを崩しては元も子もないだけに、当然と言えば当然の起用法だろう。サウジは3勝1分けの勝点10でグループBの首位に立っている。勝点3差の3位につける日本としては、ホームだけに勝利が義務付けられているし、それを熟知しているだけにハリルホジッチ監督もいつものような長広舌によるエクスキューズを今回は控えたのかもしれない。 ▽これは毎回思うことだが、代わり映えしないメンバーとはいえ、「では他に誰を呼ぶのか」と聞かれたら返事に困ってしまう。それだけチームの若返りは遅々として進んでいない。ハリルホジッチ監督ならずとも、頭の痛いところだろう。それでも誰かを推薦するとしたら、GKの中村(柏)くらいで、あとは鹿島で出場機会のない植田よりは、U-19日本代表でも活躍し、柏での出場機会の多いCB中山くらいか。 ▽今回のメンバーで唯一の救いは、やっと宇佐美が外れたことだ。去年の第2ステージから、かつての輝きを失っているにもかかわらず、ハリルホジッチ監督は彼を呼び続けた。それはアウクスブルクに移籍して出番を失っても変わらなかった。宇佐美を呼ぶなら、代わりに家長(大宮)を入れた方がまだマシだと思っていただけに、やっと納得できるメンバーになった。とはいえ、そんなことくらいしか話題にできない、寂しい日本代表でもある。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.11.04 19:00 Fri
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【日本サッカー見聞録】飛び飛びで分かりにくいCSと天皇杯の日程…早すぎるオフ突入の楽しみはストーブリーグ

▽J1リーグは第2ステージも残すところあと2試合。浦和がYBCルヴァンカップに続き第2ステージも制しそうで、どうやらCS(チャンピオンシップ)は浦和と第1ステージ覇者の鹿島、そして川崎Fの出場が濃厚だ。本来なら佳境を迎えて盛り上がるはずなのに、いまひとつ盛り上がっていないような気がする。 ▽それというのも、これはあらかじめ分かっていたことだが、日程が飛び飛びになっているからだ。今年の第2ステージは11月3日に終了する。昨シーズンの11月22日に比べ、3週間近くも早い。そしてCSは3チームの出場となると準決勝は11月23日からで、こちらも3週間近く空いてしまう。そしてCSに出られず、天皇杯でも敗退しているチームは、11月3日からオフに突入し、約3カ月近くも実戦から遠ざかることになる。これだけ長いオフを経験するのは、どのチームも初めてだろう。 ▽これは11月中旬に日本代表のテストマッチとW杯予選、いわゆる“代表ウィーク”が入っていたのと、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)決勝のため、約2週間の中断期間を設けねばならなかったからだ。さらに11月9、12日には天皇杯のラウンド16の8試合が行われるが、準々決勝は1カ月以上も先の12月24日である。これは12月にクラブW杯があるためだが、CSも天皇杯もこれだけ中断期間が長いと、勝ち残ったチームのファンでない限り、いつ何の大会をやっているのか分からないだろうし、興ざめもはなはだしい。 ▽すべての原因は2ステージ制とCSにあるのだが、幸いなことに来シーズンからは従来の1シーズン制に戻るため、いくぶんはすっきりするだろう。ただし、来年も代表ウィークは続き、ACLに出場するチームはリーグ戦とリーグカップ戦、そして天皇杯もあるだけに、過密日程は避けられない。これまで何回か書いたが、天皇杯はもうアマチュアの日本一を決める大会にして、ACLの出場権はルヴァンカップの勝者に与えるべきだと思う。 ▽そのJリーグは来シーズンからパフォーム社と10年間で総額2100億円の放映権契約を結んだ。それに伴いJ1の18クラブに支給する「均等分配金」や選手に還元される「優勝賞金」も大幅に増額した。さらにACLに出場する4チームには、3年間で総額15億円の「強化分配金」も支払うことが決まっている。とはいえ、これで大物助っ人の獲得に結びつくかといえば、中国Cリーグの資金力には到底及ばないため、ビッグネームの獲得は難しいだろう。 ▽シーズンも終盤を迎え、そろそろストーブリーグも始まり、浦和は新潟のFWラファエル・シルバの獲得に動いているそうだ。まだ24歳と若く、高速ドリブルを武器にするストライカーで、けして悪い補強ではない。しかしながら、本来ならJリーグをリードするビッグクラブでなければならない浦和の、来シーズンの補強の目玉がラファエル・シルバでは、浦和のファン・サポーターの心が躍るとは思えない。川崎Fの大久保には複数のクラブが獲得に乗り出しているそうだし、同じく川崎Fの小林には神戸が興味を示していると報じられた。 ▽川崎Fのファン・サポーターにとっては、監督も交代し、その上で主力選手を引き抜かれては気が気ではないだろうが、やはり新鮮味には欠ける。それならいっそ、海外で出番に恵まれていない選手に触手を伸ばした方が新鮮味もあるというもの。まだ残留争いの渦中にいる名古屋だが、降格を免れたらGK川島、CB吉田、MF本田の3人を呼び戻した方がインパクトも強いだろう。 ▽早すぎるオフ突入で、楽しみはストーブリーグになるだけに、「あっ」と驚くようなサプライズを期待したいところだ。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.10.28 12:45 Fri
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【日本サッカー見聞録】ルヴァン杯MVPは時間が決めた?

▽今週のコラムはメルマガに引き続き、YBCルヴァンカップ決勝の話題をピックアップしよう。この試合のMVPは途中出場からファーストタッチで浦和の同点弾を決めた李忠成だった。この1点がなければ延長やPK戦にはならず、G大阪が優勝していた可能性もあるだけに、価値ある同点ゴールと言える。 ▽李忠成はPK戦でも4番手に登場し、呉屋のPK失敗に動ずることなく強シュートを右サイドに突き刺した。ただ、延長戦では2度の決定機に遭遇しながら、シュートをゴール枠に飛ばすことができなかった。どちらか1本でも決めていれば、文句なくMVPだけに惜しまれる。 ▽それでも李忠成がMVPに選ばれたのは、同点ゴールの時間帯ではないだろうか。実は取材受付でIDカードをもらう際に、私ともう一人のベテラン記者の名前に蛍光マーカーで印がつけられていた。気になったので理由を聞いたところ、「大会MVPの候補を両チームから選出して欲しい」と言われて投票用紙を渡された。恐らく新聞社や通信社、そして専門誌の記者も投票したのだろう。 ▽記者席に着くと、大会関係者が回収のための座席を確認し、「投票のリミットは後半の35分くらいです」と言う。そして試合は76分(後半31分)に李忠成の同点ゴールが生まれた。その時点ではまだ記入していなかったし、試合は1-1の同点になったため、両チームからMVP候補を選ぶのは至難の業。そこで試合終了まで待ってもらえないかと打診したところ、答えはNGとのこと。そこで仕方なく、浦和の候補は李忠成、G大阪は先制点を決めたアデミウソンがすでに交代で退いていたため、今野か井手口かで迷ったが、ニューヒーロー賞を獲得した井手口の名前を書いた。 ▽最終的には大会関係者がPK戦も含めてMVPを決めたのだろうが、個人的には李忠成のゴールにつながるCKをお膳立てし、延長後半は体力を消耗してふらつきながらも果敢にサイドアタックを仕掛けた関根をMVPに推したい。今大会で浦和の攻撃を牽引したのは、この関根や駒井、高木らサイドアタッカーの活躍があったからだ。米倉や藤春との攻防は、決勝戦にふさわしい高レベルだったことを付け加えておこう。 ▽そしてもう1点、この試合で気になったことがあった。それは84分にペナルティエリア左でボールをキープしたズラタンを、背後からマークしていた米倉が倒したものの、佐藤主審はファウルを取らずにプレー続行をうながしたことだ。ハリルホジッチ監督はデュエルを求め、村井チェアマンもタフな攻防を推奨する。それはそれで悪いことではないが、米倉のプレーはW杯予選では“アジアの笛”によりPKを取られないかと危惧したものだ。 ▽記者会見場へ移動する際に、偶然にも上川元審判委員長と遭遇したので、米倉のプレーについて聞いたところ、「たぶん」と断った上で、「ズラタンも後ろ手で米倉選手のシャツを引っ張っていたのでしょう。だから佐藤主審は笛を吹かなかったのだと思います」と解説してくれた。まだまだ見方が甘いと痛感した次第である。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.10.20 18:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】W杯予選考察による日本サッカーの曲がり角

▽W杯予選は4試合を終えて日本は2勝1分け1敗の3位につけている。初戦のUAE戦にFKとPKによる失点で逆転負けを喫したのは誤算だった。ここで勝点3を確実にモノにしていれば首位だっただけに、返す返す残念でならない。とはいえ思い通りにならないのがサッカーでもある。残念といえば、11日のオーストラリア戦も、もしもUAEに勝っていれば、もう少しアグレッシブなサッカーができただろうし、勝点3を奪えたのではないだろうか。 ▽というのも、日本と同様にオーストラリアも世代交代の端境期で、アジア王者とはいえかつての破壊力は感じられなかった。攻撃陣ではケーヒルやレッキー、クルーズは以前ほどの存在感はなく、スピラノビッチとセインズバリーの両CBも守備に不安を抱え、ビルドアップ能力にも特筆する点はなかった。それはベンチにいたマーク・ミリガンも同様だろう。キャプテンのジェディナクが最終ラインに入ってゲームを組み立てていたが、彼にプレスを掛ければオーストラリアの攻撃は手詰まりになっていた可能性も高い。 ▽ただ、そうするとオーストラリアはリスク回避のため、日本にとって嫌なロングボールでの攻撃が増えるだろう。このため最終ラインにはあまりプレスをかけず、オーストラリアが自画自賛する地上戦に持ち込んだ方が得策でもある。アウェイで勝てなかったのは残念とはいえ、オーストラリアの実力を確認できたのは収穫だった。 ▽意外なのはスタートダッシュに成功したサウジアラビアだ。格下(イラクとタイ)相手に連勝したのは組み合わせに恵まれただけと思っていたが、オーストラリアと点の取り合いから引き分け(2-2)、UAEには3-0と完勝した。“中東の雄”復活の気配が感じられるだけに、11月15日の試合は警戒が必要だろう。サウジだけでなく、UAEとイラクも若手選手が台頭してきて、簡単に勝てる相手ではないことを日本は身をもって実感した。 ▽グループAでは実力者のイランが首位に立ち、日本と同様に韓国は2勝1分け1敗の3位と出遅れている。海外組が主力の日本、韓国、オーストラリアが苦戦しているが、それは海外組のコンディションだけが問題ではないかもしれない。若年層の育成はどの国も力を入れている。しかしながら、日本を例にとるとロンドン五輪やリオ五輪の選手がすぐに日本代表の主力や中心選手になっていなのが現状だ。このタイムラグをどう解消していくか。 ▽代表監督にすべての責任を押し付けるのでは解決しないターニングポイントを、アジアのサッカー界は迎えているのかもしれない。これまでの日本は1990年代からカズ、ヒデ、俊輔、圭佑と自然発生的に代表を牽引する選手が生まれてきたが、それももう限界を迎えようとしているのかもしれない。もしもそうであるならば、日本はどのような道を選ぶべきか。代表監督のクビを挿げ替えるだけで済む問題ではないほど、根は深いと思う。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.10.13 20:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】W杯予選の醍醐味

▽この原稿は、現地時間の10月8日午後21時45分、オーストラリアはメルボルンのドックランドという地域にあるホテルで書いている。6日の日本vsイラク戦を取材後、翌日の夕方に成田を飛び立ち、バンコク経由で今日の午後2時過ぎにメルボルンへ到着。ホテルにチェックイン後、トラムで30分ほどのところにあるレイクサイド・スタジアムで午後5時30分からの練習を取材して戻り、ホテルの机に向かっている次第だ。 ▽9月のW杯初戦はUAEに逆転負けする“まさか”のスタートとなった。タイには何とか勝って初勝利を奪ったものの、10月の2連戦に招集予定の武藤嘉紀と宇佐美貴史がケガで辞退を最初のトラブルに見舞われる。武藤はともかく、海外移籍したとはいえここ1年はJリーグでも代表でもこれといった目立つパフォーマンスのない宇佐美を、なぜ続けてハリルホジッチ監督が呼んだのが不思議だっただけに、斉藤学の追加招集はうれしい出来事だった。 ▽ところが6日のイラク戦では右サイドバックの酒井宏樹が2枚目のイエローカードでオーストラリア戦が出場停止となる。ブンデスリーガでは反則にならなくても、アジアの笛は違うことをUAE戦のジャッジで学ばなかったのかと思うほど、不要なファウルが目立った。日本にとって痛手ではあるが、試合後はこれで「酒井高徳が右サイドバックに回り、左サイドバックは久々に長友佑都のプレーが見られる」と期待したものだ。 ▽ところが翌7日の練習で長友と槙野智章が激突して長友が負傷。脳震とうという診断からオーストラリアへの遠征メンバーから外れた。予想外の出来事である3度目に不運である。そして7日の国内では室内練習を続けていた岡崎慎司が、オーストラリアに来たものの、練習は最初からフィジカルコーチとマンツーマンでのストレッチに終始してロッカールームに引き上げた。イラク戦の低調なプレーを思い起こすと、単に時差や移動によるコンディション不良だけでなく、肉体的な負担も抱えていたことが予想できる。 ▽結果、武藤、宇佐美に始まり10月のW杯予選は岡崎、長友と短期間に4選手がチームを離脱することになった。時間もないため追加招集はできない。そして迎える相手はアウェイのオーストラリア戦と、今年の大一番だ。思い起こすにザッケローニ時代は選手も伸び盛りか円熟期を迎えていたのとは、あまりにも対照的なハリルホジッチ・ジャパンである。主力選手の直前の離脱に代役も限られているが、ものは考えようだ。この苦境を脱することができれば、チームも自信を取り戻せるかもしれない。 ▽なぜなら、これ以上はない最悪の状況での、アジア最大のライバルであるオーストラリアとの決戦だからだ。どんな結果になるのか、日本が崖っぷちに立たされるという状況は1997年以来と記憶するが、スリリングな状況もW杯予選の醍醐味だと思う。だからこそ11日までの3日間をハラハラドキドキしながら楽しもうではないか。ロシアへの道は一日にしてならず、である。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.10.09 00:22 Sun
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【日本サッカー見聞録】イラク戦はコンディション重視の選手起用を

▽インドのゴアで開催されているU-16アジア選手権で日本は、準決勝でイラクに逆転負けを喫した。アジア最強と言われるイラクに対し、日本は久保ら負傷者も出てベストの布陣ではなかったものの、前半こそ2-1とリードしたが、後半はイラクのエースであるタムードにPKから2点を奪われるなど2-4と試合を引っくり返された。U-17W杯の出場権を獲得した後だけに、モチベーションを保つのに難しい面もあったのかもしれない。この雪辱は来年の本大会に期待するとしよう。 ▽そして昨日はロシアW杯アジア最終予選のイラクとオーストラリアに臨む日本代表も発表された。約2時間に及ぶ会見だったようだが、今日の報道を見る限り、これといった話題は特にない。それというのも、選ばれたメンバーは9月の2試合とほとんど同じで、サプライズは鹿島MFの永木だけ。その永木にしても、実際に試合で使われるかどうか、彼が長谷部や山口に代わる選手になれるかどうかは未知数の部分が多いため、初招集に「?」を抱いた読者も多いだろう。 ▽今回招集されたメンバーを見る限り、「エクスキューズ」の人選といった印象を受けた。前回初招集でUAE戦では2失点に絡んでしまった大島は、今回呼ばなければ自信を失いかねない。柏木の後継者候補として期待しつつも、柏木の状態が万全ならイラク戦とオーストラリア戦で使われることはないだろう。同じことは海外組の所属クラブで出番のない宇佐美や香川にも当てはまる。招集しないことでメンタリティの低下を懸念したのではないだろうか。 ▽ハリルホジッチ監督は、彼らに代わる選手がJリーグにはいないこと、彼ら自身が欧州のトップレベルの選手とポジション争いをしていることを招集理由にあげていた。そして齋藤(横浜FM)や中島(FC東京)の名前を出しながら、まだ海外組からポジションを奪うほどの活躍はしていないとの見解を示した。日本代表の左MFは“最激戦区”でもある。しかし9月のパフォーマンスを見る限り、宇佐美よりは齋藤や中島の方がゴールに向かう姿勢を感じられた。 ▽同じことはトップ下の香川にも当てはまる。もういい加減10番を重用するのはやめて欲しい。香川の才能は認めるものの、現在の彼は全盛時のパフォーマンスからほど遠い。最終予選は結果が求められるだけに、いっそ予備登録の中村憲を呼んでみてはいかがだろう。とりわけインテンシティの求められるオーストラリア戦は、香川の密集地帯へのショートパスより、中村憲のスルーパスやサイドチェンジが生きるような気がする。 ▽本田や岡崎もけしてベストの状態ではないと思うが、彼らはまだピッチに立てば“ファイト”できるのが救いだ。そしてイラク戦に関しては、試合前日に合流した選手は起用しないで欲しい。コンディション優先の選手起用を指揮官には求めたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.09.30 16:45 Fri
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【日本サッカー見聞録】注目度の低い天皇杯はアマチュアの大会にすべきでは

▽昨日はバスケットボールのBリーグの開幕戦をテレビ観戦した。さほどバスケに興味がある方ではないが、これまで福利厚生を目的にした企業チームのNBLと、地域密着でプロ化を目指していたbjリーグの反目で、国際連盟から資格停止処分を受け、リオ五輪予選に出場できない危機にあったバスケ界。それを救ったのがJFA(日本サッカー協会)の最高顧問の川淵三郎氏だったからだ。 ▽川淵氏はJリーグでの成功体験をもとに、剛腕を発揮して地域密着やホームアリーナの確保を義務付け、自治体や地元企業も巻き込んだクラブ作りを指導した。Jリーグの常務理事で、クラブライセンスの基礎を作るなど経営のプロである大河正明氏を転籍させ、チェアマンに就任させた。彼以外にもJリーグからBリーグに移籍して昨日の開幕戦に尽力した知人がいるだけに、その船出が気になった。 ▽幸いにも開幕戦は盛況のうちに終了したが、Jリーグ同様、今後は継続する力が必要になるだろう。日本代表の強化と底上げにつながるかどうかも大事なポイントになる。といったところで、サッカーの話題に移ろう。Bリーグの開幕戦を見ながら、チャンネルを変えて天皇杯の3回戦も観戦したが、昨日に天皇杯が行われていることをどれだけのファンが知っているのか疑問に思わざるを得なかった。 ▽テレビはもちろん一般紙での告知も皆無だった気がする。チームの熱狂的なファンやサポーターしか、試合が行われることを知らなかったのではないだろうか。これまでもリーグ戦とリーグカップにACLと、ただでさえJ1のクラブは過密日程なのに、天皇杯が加わり、さらにクラブW杯が日本開催の時はカレンダー作りに苦労して、そのしわ寄せが選手のコンディションに影響してきた。 ▽もういい加減、天皇杯はアマチュアにとって“最高峰”の大会に規定を変えた方がいいと思う。ACLへの出場権はリーグ戦の上位3チームにルヴァンカップの優勝チームに与えると同時に、ルヴァンカップをJ1だけでなくJ2とJ3にも門戸を開く。そして大会方式もトーナメントに変えるのはいかがだろう。 ▽リーグ戦でないとホームの試合数が減り、入場料収入の減少が予想されるとはいえ、これまでのルヴァンカップのグループリーグのスタジアムは、閑古鳥が鳴いているのが現状だ。幸い、来シーズンからはCS(チャンピオンシップ)は廃止されて1シーズン制に戻るため、日程的に余裕はできる。Jリーグは各カテゴリーのリーグ戦とルヴァンカップ、ACLの3大会に専念して、JFAが主催する天皇杯とは袂を分かつ時期に来ていると思うのだが、いかがだろうか。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.09.23 12:35 Fri
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【日本サッカー見聞録】久保とU-16日本のアジア選手権に期待

▽いよいよ今日からインドのゴアで、AFC U-16アジア選手権が始まる。日本は明日、ベトナムとの初戦を迎えるが、グループリーグ3試合をCSテレ朝チャンネルがライブで、NHKのBS1が録画で放映してくれるのは楽しみなところ。チームに対する期待と同時に、やはり久保建英(FW。FC東京U-18)の存在が大きいのかもしれない。 ▽私事で恐縮だが、昨日の夕方に日本テレビから突然電話があり、久保の凄さについてコメントして欲しいという依頼が来た。今朝の6時過ぎにオンエアされたZIPという番組だったが、担当者も「待ったなし」の状況で困り、電話してきたのだろう。21時過ぎから始まった収録の際にプロデューサーから注意されたのが、「朝の番組でサッカーファン以外も見ているため、なるべく分かりやすく、サッカー用語やカタカナは使わずにお願いします」ということだった。こちらは慣れないため、何度も取り直して迷惑をかけてしまった。 ▽番組の趣旨は、今月にトップ登録されれば15歳と3カ月という史上最年少Jリーガーの誕生についてフォーカスしたもの。彼の非凡な才能について、改めて語る必要はないと思うが、VTRを見ていて感心したのは、ドリブルにしてもパスにしても、余裕を持ってプレーしていることだった。ボールコントロールに絶対の自信があるのだろう。ボールを見ることはほとんどなく、常に周囲の状況を把握してプレーを選択している。 ▽相手を見下しているといっては語弊があるかもしれないが、とにかく落ち着き払っている。例えば代表クラスのJリーガーが中学生を相手にしたら、技術的にもスピード的にも圧倒できるため、余裕を持ってプレーすることが可能だろう。しかし久保は、同学年や年長者を相手に同じプレーができる。彼の成長を促すためにも、U-18ではなくもう1ランク上のトップチームに入れた方がいいというFC東京の判断は正解だ。 ▽その久保を始め、平川怜(東京U-18)と福岡慎平(京都サンガF.C. U-18)のボランチコンビや、得点源のFW中村敬斗(三菱養和SCユース)ら、今回のU-16日本には前線から最終ラインまで豊富なタレントが揃っている。グループBの最終戦ではシード国のオーストラリアと対戦するが、まずは初戦のベトナムと第2戦のキルギスから勝点3を奪い、ベスト8進出を確実なものにしたいところだ。 ▽日本は前回大会で韓国に準々決勝で敗れて世界への道を断たれている。今回は準々決勝に勝ち上がってもシード国の韓国(グループC)と北朝鮮(グループD)とは対戦しない組み合わせ。しかしグループAには開催国でシードのインドの他に、イラン、サウジアラビア、UAEと中東勢がひしめいている。アンダーカテゴリーになると中東勢とはフィジカルの差が大きいものの、なんとかベスト8の壁を突破して、世界切符を、さらにはアジア制覇を達成して欲しいものだ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.09.15 15:00 Thu
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【日本サッカー見聞録】手倉森氏のコーチ就任を歓迎すると同時にU-19代表の強化も課題

▽ロシアW杯アジア最終予選のタイ戦が終わって2日が経っても、香川を始めとした数選手のパフォーマンスや起用法に疑問の声がメディアだけでなくファンからも上がっている。これはこれで健全な議論だと思う。海外のビッグクラブでプレーしているからといって、彼らを“アンタッチャブル”な存在にするのは危険だと思うからだ。とりわけハリルホジッチ監督は宇佐美に対する期待が大きいようだが、彼は昨シーズンのJ1リーグ第2ステージ以降、パフォーマンスが低下しているだけに、過度の期待は起用法に疑問を招きかねないだろう。 ▽海外でもW杯予選に出場した選手はクラブに戻ると活躍できず、「FIFAウイルス」という言葉も生まれた。移動距離の長い日本人選手なら、その負担は増すばかりで、往復によるダメージはかなりのものだろう。W杯予選をホームの日本で戦い、次はアウェイの中東なら、ホームは国内組で戦い、アウェイは海外組と割り切って準備することも一つの手だと思うが、そこまで選手層は厚くないのが現実だけに、なんとも悩ましい問題だ。 ▽このジレンマは現行のシステムでは解決しようがないだけに、なんとも悩ましい。せめて代表選手を拘束できる時間をもう1週間確保できれば、コンディション調整にも余裕が生まれるが、そのためにはリーグ戦の日程調整が必要になる。ここらあたりはFIFAが指導力を発動して各大陸連盟に譲歩を迫るしかないものの、コトはそう簡単にはいかないだろう。 ▽そんな厳しい状況の代表チームにあって、日本に朗報がもたらされた。昨日、都内でハリルホジッチ監督と会談した手倉森・元U-23日本代表監督が、代表チームのコーチに復帰することが濃厚になったからだ。過去、山本氏(アテネ五輪)、反町氏(北京五輪)、関塚氏(ロンドン五輪)と3大会連続して五輪代表監督は、五輪終了後に兼任していた代表チームのコーチに復帰することはなく、Jクラブの監督に就任していた。 ▽兼任とはいえ五輪終了までの2年間は代表チームのコーチは名ばかりだったため、“復帰”には抵抗があったのかもしれない。このため代表チームのコーチは外国人スタッフで占められてきた。今回はハリルホジッチ監督の「日本人コーチ」という要請があったため実現したが、選手とのコミュニケーションを円滑にする意味でも、“会話力”のある同氏のコーチ就任は歓迎したい。 ▽リオ五輪終了後、移動のための空港で開いた囲み会見でも、手倉森氏はリオ五輪での経験の「継続性」や、早川コーチの「コンディショニング」の重要性を訴えていた。こうした財産をロシアに向けて役立てるためにも、手倉森氏の経験を活用しない手はない。 ▽そして、せっかく手倉森氏を再び代表スタッフに加えたなら、来月中旬からバーレーンで始まるU-19アジア選手権にも彼をスタッフの一員にしてはいかがだろう。これまでU-20日本はW杯の出場を逃し続けている。それが国際舞台の経験不足と指摘されてきた。今回も、内山監督の手腕を含め選手のクオリティからW杯出場は不安視されている。現チームは20年東京五輪のベースとなるだけに、ロシアW杯の予選突破は直近の課題ではあるが、こちらも並行して強化に着手しなければならない課題だと思うからだ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.09.09 13:00 Fri
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【日本サッカー見聞録】UAE戦レビュー

▽サッカーにミスはつきものだ。シュートミスに始まり、トラップミス、パスミスなど数え上げたらきりがない。それは審判も同じで、誤審もサッカーの試合の一部とされている。有名なところでは、1966年イングランドW杯決勝のジェフ・ハーストのバーを叩いたシュートがゴールか否か。いまでも敗れた西ドイツ国民はノーゴールと主張する。1986年のメキシコW杯では、ディエゴ・マラドーナの“神の手”がイングランドを突き放した。 ▽勝敗とは別に記憶され、語り継がれる試合があるとすれば、昨夜の日本対UAE戦も、レフェリーを務めたアブドゥルラフマン・アルジャシムという名のカタール人の名前を憶えて置いたほうがいいだろう。逆転負けを喫した悔しさから彼ら審判団を批判しているわけではないが、1点目のFKは吉田の反則とは思えないし、2点目のPKも大島が足を引っ掛けたというより相手選手のダイブに見えた。 ▽そして浅野のゴールを認められなかったのは、アルジャシム主審の判断ミスというより、適正なポジションにいて正確なジャッジのできなかった第2副審のスピード不足にある。日本はアルジャシム主審の3つの判断ミスで勝利を逃したとも言えるが、それよりも残念だったのは、接触プレーのたびに笛を吹き、不必要なイエローカードを出したことだ。 ▽W杯出場のかかった最終予選で、これほどまでにレベルの低い審判団を指名したアジアサッカー連盟(AFC)の姿勢こそ、日本サッカー協会(JFA)は糾弾すべきだろう。UAEはけして格下のチームではなかった。GKを除くスタメンの10人は2年前のアジアカップに出場したメンバーで、当時に比べ堅守からのカウンターだけでなくオープンな打ち合いでも日本をヒヤリとさせた。 ▽失点は、1点目が大島の緩いパスをカットしてのカウンターからのFK、2点目は長谷部のバックパスのミスからペナルティエリアに侵入を許し、3人で相手選手を囲いながら与えたPKと、遡れば原因はいろいろとある。とはいえ、吉田は相手がフェイントをかけてバランスを崩した時のアタックだし、大島も相手が香川と酒井宏にサンドイッチされて“死に体”になってからのボール奪取のプレーで、いずれもプレーのアドバンテージは日本サイドにあった。 ▽憂鬱なのは、これがアウェイの“中東の笛”なら諦めもつくが、ホームでこれほどレベルの低い審判団だったということだ。それは9月6日のタイ戦を始め、今後の最終予選でも続くかもしれないことだ。W杯最終予選での初戦の敗北と、埼玉スタジアムでの不敗神話の崩壊など、ネガティブな要素はあるものの、「負けていい試合はないものの、これが初戦で良かった。残り9試合、しっかり勝てばいい」(田嶋JFA会長)ことに変わりはない。 ▽UAE戦のジャッジを過去のエピソードにするためにも、アウェイのタイ戦と10月のホームのイラク戦は勝利が求められるハリルホジッチ・ジャパンと言えよう。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.09.02 18:00 Fri
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【日本サッカー見聞録】ハリルホジッチ監督の深謀遠慮

▽2018ロシアW杯のアジア最終予選、9月1日のUAE戦と5日のタイ戦に臨む日本代表24名が8月25日に発表された。今回の発表でのサプライズは次の3点と言える。まず、これまで所属チームで出番がなかったり、所属チームそのものがなかったりしたGK川島を、「手元においてコンディションを見てみたい」とケガをのぞいて招集してきたが、今回は「先発に入れなければ」正GK争いの競争には加われないと突き放したこと。 ▽過去2度のW杯に出場した守護神も33歳を迎えた。体力的な衰えは練習でカバーできたとしても、試合勘の鈍りは否定できないだろう。移籍先のFCメスは公式ホームページで川島を「第3GK」と公表しているだけに、代表への返り咲きは国内復帰も視野に入れて、まずはスタメン確保が最低条件となりそうだ。 ▽次に驚かされたのが、名前こそ出さなかったが香川と清武が負傷した場合は川崎Fの中村憲剛の招集を計画していることだ。中村憲剛をボランチではなくトップ下で使うのかという疑問は抜きにして、これまでJリーグ得点王の大久保嘉人を代表に呼ばないのかという質問に、「2年後に彼は何歳になっていますか?」と頑なまでに拒否していたのに、「私が見てきた中でも使いたい選手」と、あっさりとこれまでの発言を撤回した。 ▽そして、その理由を「W杯予選はたくさんのことを考慮しないといけない。ケガ人も予想しないといけない。この選手も予想の一環で、W杯予選はリスクを冒せない。ロシアに行くには予測もカギになる。(ケガ人に)驚いているようではロシアに行けない」と、しれっとした顔で語っていた。 ▽この言葉を聞いて、「このおっさんはヤルな」と感じずにはいられなかった。たぶん、「前は年齢を理由に大久保の招集を見送ったのに、なんで中村憲は呼ぶんだ。選手の選考基準に一貫性がない」と突っ込んでも、平然とした顔で「あの時とは状況が違う」とはねのけるだろう。日本人にありがちな、自分の発した言葉に縛られないしたたかさと、最終予選にはかなりの危機感を抱いていることが伺われた。 ▽そんなハリルホジッチ監督のことだから、例え最終予選で中村憲が活躍してW杯出場を決めたとしても、本大会に臨む23名からは年齢を理由に外しかねない。彼には“功労者”をリスペクトするという発想より、W杯では「いかにグループリーグを突破して決勝トーナメントに進むか」と目標を切り替えていることだろう。この切り替えの速さ、ドライさは川島へのコメントでも想像できる。 ▽そして最後は金崎夢生への厳しい態度だ。こちらは100パーセント金崎に非がある。自業自得とも言えるが、もしもこれが日本人監督だったら、金崎の「か」の字も言わずにスルーしていたのではないだろうか。それを、敢えて問題提起したところにハリルホジッチ監督の日本サッカーに対する愛情と、理解度の深さを感じた。 ▽就任当初はことさら規律に厳しかった。それは、これまで歴任してきたアフリカでの経験が招いたものだろうと推測した。日本人のメンタリティーなら言わなくてもいいことだと違和感も覚えた。そうして1年が過ぎ、ようやく彼も日本人の「言われたことは従順に守る」メンタリティーを理解したのではないだろうか。 ▽それでも金崎の湘南戦での態度に言及したことは、新たな問題提起につながって欲しい。なぜなら審判に対して同様の抗議をすればペナルティが科されると思うが、監督に対してはどういう裁定になるのか前例がないからだ。クラブが独自にペナルティを科すのか。いずれにせよ、マスコミ不信と言われる金崎だが、いくら激高しても監督に詰め寄る態度は許されるものではない。せっかくの才能を持ちながらセルフコントロールできないのは残念でならない。あとは、いかにして誰が、どういう形で金崎に救済の手を差し伸べるのか。ハリルホジッチ監督が問題を提起した鹿島とJリーグの判断を待ちたい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.08.25 22:30 Thu
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