コラム

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【原ゆみこのマドリッド】この気候は辛い…

▽「来週はもうあんな思いしなくていいのね」そんな風に私がホッとしていたのは金曜日。コパ・デル・レイが行われる水曜日にはこの大寒波も和らぎ、気温が少しは上がっているのを週間天気予報で確認した時のことでした。マドリッドの両雄、ついでに言えば、火曜日に試合となる弟分のアルコルコンも揃って準々決勝2ndレグはアウェイ戦。自分は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でぬくぬくして見ていればいいんですけどね。3チームとも北方面に行くという懸念はあるものの、とりわけremontada(レモンターダ/逆転劇)が必要とされるアトレティコ以外の2チームは、少しでも暖かい方がプレーしやすいんじゃないかと思ったから。 ▽水曜日に行われた準々決勝1stレグでアルコルコンが0-2と負けてしまったのは悔しいものの、リーガ2部では18位と降格圏のすぐ上。もうコパなどで道草をしないで、早々に順位を上げることに専念するべきじゃないかって? まあ、その通りですが、奇しくも相手のアラベスはこの土曜日に、すでにミッドウィークはフリーとなっているレガネスと対戦。 ▽ここでコパをプレーしたツケが出て、マドリッドの兄弟分に7試合ぶりのリーガ勝利をプレゼント。さらにその疲れから、アルコルコンに逆転勝ち抜けを許してしまうなんていうのは、私が勝手に書いた都合のいいシナリオなんですが…。後者はともかく、なかなか16位から上昇できないレガネスにはようやくルビン・カザニから、以前はマラガで活躍していたFWサム・ガルシアも到着しましたしね。シーズン前半戦ラストとなるこの試合、何とか勝ち点3を獲得して、後半戦での残留確定に弾みをつけてほしいところです…。 ▽一方、気温零度近辺という極寒の中、私がこの水曜日、木曜日と、上下でヒートテックを重ね着してスタジアムに行ったレアル・マドリーとアトレティコのコパの試合はどうだったかというと。結果から言うと、両者の明暗は分かれてしまったんですが、天井に暖房があるため、幾分、寒さがマシだったサンティアゴ・ベルナベウにセルタを迎えたマドリーは、後でカゼミロも「La derrota de Sevilla nos ha hecho daño/ラ・デロータ・デ・セビージャ・ノス・ア・エッチョー・ダーニョ(セビージャでの敗北がボクらに打撃を与えた)」と言っていたように、日曜日のリーガ戦で40試合連続無敗が途切れたショックから抜け切れていなかった様子。 ▽ええ、キックオフからバライドスでの2ndレグを考えていたセルタはずっとスローなテンポでプレーしていたんですけどね。それに対してマドリーも「ウチは準備していたようにやらなかった。とりわけスタート時に激しいプレーをすることをね」とジダン監督も言っていましたが、相手に合わせてしまったのか、その日の彼らは目が回りそうになったセビージャ戦とはまるでスピードが別物。ベンゼマやモラタをベンチに置き、2015年1月にアトレティコに敗退して以来のコパ出場となったクリスチアーノ・ロナウドをCFにした布陣も当たらなかったか、前半は両チームとも無得点に終わることに。 ▽ゲームが動いたのは後半の半ばで、最初の45分は相手のボール回しに苦しんだというセルタが「en la segunda ajustamos el marcaje/エン・ラ・セグンダ・アフスタモス・エル・マルカヘ(後半はマークを調整した)」(ベリッソ監督)が良かったんでしょうかね。64分、左サイドを疾走したボンゴンダがクロスを入れたところ、マルセロが踵でクリアしたボールがPKマーク付近にいたイアゴ・アスパスの正面へ。ここ12試合で12得点を決めている絶好調のFWがそんなおいしいチャンスを失敗するはずもなく、そのシュートで易々セルタに先制されたとなれば、スタンドで寒さに耐えていた観客の体感温度が一気にマイナスまで下がったのは間違いない? ▽でもそんなのは序の口です。いえ、70分にはモドリッチのクロスがマジョに跳ね返されたのをマルセロがvolea(ボレア/ボレーシュート)。ボールがロンカリアの背中に当たり、汚名返上の同点ゴールとなったんですけどね。その直後、セルタのキックオフからほとんど間を置かず、ルーカス・バスケスがアスパスにボールを奪われてしまったから、さあ大変!「Era una contra, tenía que elegir entre seguir o dársela a Jonny, y vi que Ramos dudó/エラ・ウナ・コントラ、テニア・ケ・エレヒル・エントレ・セギール・オ・ダールセラ・ア・ジョニー、イ・ビ・ケ・ラモス・ドゥド(カウンターで、自分はそのまま行くか、ジョニーにパスするか選ばないといけなかったんだけど、ラモスが迷うのを見てね)」という当人は後者を選択。小柄な左SBの一撃が勝ち越しゴールとなってしまった日には、勇気を振り絞って、家から出て来たファンも後悔していたかも。 ▽いやあ、その後も同点ゴールを求めてジダン監督がダニーロをベンゼマと交代したところ、ブラジル人右SBの働きに不満だったスタンドからpito(ピト/ブーイング)は飛ぶわ、セビージャ戦で相手の決勝点のキッカケとなるボールロストをしたFWはゴール前からのシュートを天高く撃ち上げてしまうわ、もう散々だったんですけどね。結局、引き分けることもできずに1-2で負けて、マドリーが2連敗とはまったく珍しいこともあるじゃないですか。 ▽ただ問題は、セビージャに負けてもリーガ首位の座に影響はなかった彼らですが、コパの2試合制の対戦で1stレグにホームでこのスコアで負けた場合、これまで逆転勝ち抜けしたことがないということで、いえ、ベリッソ監督も「Tendremos que jugar en Vigo mejor que hoy/テンドレモス・ケ・フガール・エン・ビーゴ・メホール・ケ・オイ(ビーゴでは今日よりいいプレーをしないといけないだろう)。どんな大差の結果でもマドリー相手には落ち着いてはいられないのだから」と、あまり強気ではありませんでしたけどね。 ▽その上、昨季もセルタはアトレティコを準々決勝で破り、久々の快挙に沸いたものの、準決勝ではセビージャにあっさり負けてしまったなんてこともあったため、「Si eliminamos al Madrid, pensaremos en el título/シー・エリミナモス・アル・マドリッド、ペンサレモス・エン・エル・ティトゥロ(マドリーを敗退させたら、タイトルのことを考えるよ)」(ボンゴンダ)という訳にもいかないのは百も承知でしょうが、ここに来て、マドリーにはカルバハルが太ももの負傷で3、4週間の離脱という逆境も発覚。ジダン監督は「ベルナベウのファンは誰でもブーイングするが、マスコミの書いていることは公平じゃない。No estoy al 100%, sino al 1.000% con Danilo/ノー・エストイ・アル・シエン・ポル・シエントー、シノ・アル・ミル・ポル・シエントー・コン・ダニーロ(自分は100%でなく、1000%ダニーロの味方)」と言っていましたけど、現実的には辛い面もありそうな。 ▽とはいえ、すぐ次の試合はリーガのマラガ戦ですからね。昨年最後の日程が終わった後、ファンデ・ラモス監督を解任、“ガトー”・ロメロ監督が率いて2戦目となる彼らはデミチェリスが出戻りでエスパニョールから加入したものの、まだ調子が上向いてきた兆しは感じられず。順当ならば、土曜日午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのベルナベウでは、キックオフ時間がコパより早い恩恵もあって、ファンもずっと気分良く過ごせるのでは? 幸い、セルタ戦で右手をロンカリアに踏まれ、痛みで途中交代したアセンシオも骨折はなく、無事回復したようですし、ロナウドだってそうそう、不調が続く訳でもないでしょうから、水曜日のレモンターダに向けて、勢いがつくゲームができればいいですね。 ▽そして翌木曜日、ビセンテ・カルデロンに暖房がないことを鑑みて、裏起毛160デニールタイツをボトムに追加した私が観戦したエイバル戦は、プレー的には決してアトレティコが上手になったとは言えないんですけどね。凍えるピッチで足がかじかんでいたか、またしてもパスミスは多かったんですが、どうやら相性のいいチームだったのが良かったよう。そう、エイバルのメンディリバル監督も「アトレティコは敵のミスを誘い、それを利用する。En Liga pasó lo mismo/エン・リーガ・パソ・ロ・ミスモ(リーガでも同じことが起きた)」と言っていましたが、リーガ2節前の対戦同様、最後は快勝のスコアになってしまったから、何ともありがたいじゃないですか。 ▽いえ、私も19分まで、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)の応援団が来季からのクラブ紋章のデザイン変更に反対する抗議行動で、ただでさえ、観客の少なかったスタジアム中に静けさが漂っていた時はどうなることやらと気が気ではなかったですけどね。24分にコケのFKから入ったサビッチのゴールがオフサイドで取り消された3分後、今度は同様のFKからヒメネスがヘッド。これに飛び出したGKジョエルのミスを突いて、グリーズマンが頭でゴールをゲットしてくれます。後半は後半で、第2FWとして先発したカラスコが59分に疾走、ゴール左前まで来ていざシュートとなった時、ガルベスとピニャに軌道を塞がれて、2度も失敗していたのには呆れましたが、こぼれ球をコレアが素早く押し込んでくれたため、無事に2点目もゲットすることに。 ▽さらに67分にはまたしてもセットプレーが成功したんですが、この時はコケのCKをヒメネス、グリーズマンと頭で繋いで、最後はコレアから代わったガメイロがやはりヘッドでフィニッシュ。これでもう3-0ですからね。ヒメネスなどは「No está cerrado, cualquier equipo en LaLiga te puede hacer tres goles/ノー・エスタ・セラードー、クアルキエル・エキポ・エン・ラ・リーガ・テ・プエデ・アセール・トレス・ゴーレス(まだ勝負はついていない。リーガのどのチームでもウチから3点取れるんだから)」なんて、ちょっと情けないことを言っていましたが、シメオネ監督はもう十分と踏んだんでしょう。 ▽その後はカラスコやガイタンに代え、ガビやゴディンをピッチに入れて、通常以上に攻撃的だった布陣を引き締めていましたが、アウェイゴールを与えなかったのは大正解。おかげで乾貴士選手は出ていたものの、負傷者が多く、あまり反撃に人員をかけられなかったメンディリバル監督も「Es muy difícil hacerles un gol, más, tres/エス・ムイ・デフィシル・アセールレス・ウン・ゴル、マス、トレス(彼らから1点を取るのは大変、まして3点なら)」とどこか、諦めモードになってくれていましたし、彼らには週末にバルサ戦も控えていますからね。イプルア(エイバルのホーム)での2ndレグは、あまりアトレティコが体力を使う必要ない試合になってくれる? ▽だって、この日曜日にはサン・マメスでアスレティックに挑まないといけないシメオネ監督のチームなんですよ。しかもミッドウィーク中は努めて忘れるようにしてはいますが、現状は首位のお隣さんと、消化試合が1つ多い状態で勝ち点差6の4位。2位のバルサとも5差、3位のセビージャとも4差、その上、5位には2差でレアル・ソシエダ、6位には3差でビジャレアルが迫っているとなれば、決して落ち着いていられる事態ではないのは明白でしょう。うーん、木曜日にコパ1stレグでバルサに0-1で負けたソシエダはメッシに2枚目のイエローカードが出なかったことなどもあって、2ndレグでのリベンジに燃えているでしょうから、セルタと当たる今節は気にしなくてもいいかもしれませんけどね。 ▽プランデッリ監督が昨年末、いきなり辞めてしまった後、再び暫定監督を務めていた、本職、チーム付き役員のボロ氏が正式にシーズン末まで引き継ぐと決まったバレンシアと対戦するビジャレアルは勝つかもしれませんし、それより何より、アスレティックは今週、試合をしていませんからね。たとえ、エースのアドゥリスと司令塔のベニャトが出場停止でも、決して軽視していい相手ではないかと。そんなアスレティックvsアトレティコ戦は日曜日午後4時15分キックオフ。金曜日のレサマ(アスレティックの練習場)は雪に覆われて、チームも室内トレーニングしかしていませんでしたが、この週末もまだ寒波が続くスペイン。積雪で延期になる試合がないといいのですが。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.01.21 12:55 Sat
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【倉井史也のJリーグ】なんかすでに心配なチームあるんですけど大丈夫? あそこじゃないよ?! の巻

▽なんかさぁ、もう1月も3週間が過ぎようとしてるわけでしょ? だから各チームとも始動してて、入団選手も大体固まって、いよいよ新シーズンだなって感じじゃないですか。だけど、まだ開幕までは1カ月もあるんですよね。 ▽むちゃ活発な選手の移籍があったし、1シーズン制に戻るし、いろんな戦い方が変わるんだろうなぁなんて思いつつ、やっぱゲーム、しかも真剣勝負が見られないとつまらなぃよぉと思っているアナタ! 実はもう2週間ちょっとで見られるんですよ! ▽2月7日19時、吹田スタジアムでG大阪vsバンコク・ユナイテッドかジョホール・ダルル・タクジムという、ACL東地区プレーオフが開催されるんです。で、G大阪の急ピッチでの仕上げってちょっと心配じゃないですか? ▽え〜、プレーオフって普通に勝ちそうじゃん、と思っているアナタ! いやいやG大阪の現在進行形ドラマって、そらもう大変なことになってないスか。 ▽G大阪って去年はちょっと悲劇で、パトリックはケガするし、宇佐美貴史は移籍するしってFWの2枚看板が欠けながら、よくぞ年間4位まで持ってきた! でもって12月24日の天皇杯準々決勝まで勝ち残ってたんだから、あんまり休みもない! ▽だけど、今季もここまでド級ストライカーの加入はなし。つか、阿部浩之と大森晃太郎はいなくなっちゃったんですけど。それなのに長谷川健太監督は文句も言ってないし、やっぱり肝が据わってるというか。 ▽ま、そんな意味で今年のG大阪は要注目なのであります。だって、去年プレーオフに出たFC東京はシーズン途中で監督代わっちゃったし、2015年はシーズン後に吉田達磨監督辞めちゃったし、このままじゃ3年連続監督のせいにされて……。汗。 ▽ところで、1月15日にJリーグの父親の1人、木之本興三さんがお亡くなりになりました。この方の偉大な功績は申すまでもないところ。謹んでご冥福をお祈りいたします。どうや安らかにお休みください。【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2017.01.19 17:01 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】2017J1リーグ展望①

▽昨シーズンのACL王者の全北現代(韓国)のスカウト担当者が、審判に賄賂を贈って八百長を工作したとして、AFC(アジアサッカー連盟)は今シーズンのACLの出場権を剥奪すると発表した。疑惑は今から4年間の2013年だったが、あれだけの強豪チームが八百長を仕掛けるとは何とも理解できない。チームはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服を申し立てるとしているが、果たして結果はどう出るのか注目されるところだ。 ▽さてJリーグは多くのチームが先週末に始動を迎え、早くもキャンプに突入している。今シーズンから優勝チームには多額のボーナスが出るものの、オフの移籍市場は穏やかで、これといった“目玉”はなかったのは残念だ。鳥栖がGKブッフォンの獲得を表明したものの実現せず、あとは神戸がオファーを出している元ドイツ代表FWのルーカス・ポドルスキが来るのかどうか。神戸は柏からFW田中順也、FC東京からMF高橋秀人、仙台からDF渡部博文と即戦力を補強。FWペドロ・ジュニオールを鹿島に引き抜かれたのは痛手だが、あとはレアンドロとコンビを組む新外国人を補強できれば面白い存在になりそうだ。 ▽その補強で相変わらずの“手堅さ”を感じたのがJリーグ王者の鹿島だ。FW金崎夢生というエースストライカーに加え、前線にはFW赤崎秀平、FW土居聖真やFW鈴木優磨とタレントはいるものの、神戸からペドロ・ジュニオールを引き抜いた。ACLとのターンオーバーを見据えつつ、金崎がシーズンを通じてフル稼働できない可能性もあるため、その保険も兼ねているのだろう。MF柴崎岳の海外移籍が噂されているが、ミスター新潟とも言えるレオ・シルバを獲得と抜かりはない。唯一の不安はCBファン・ソッコの抜けた穴だが、そこはDF植田直道の成長に期待したい。 ▽このJリーグ王者に挑むのが年間勝点1位の浦和ということになるのだろうが、即戦力候補は新潟から獲得したFWラファエル・シルバくらいだろう。千葉から獲得したFWオナイウ阿道やレンタルバックのMF長澤和輝、岡山からレンタルバックのMF矢島慎也らは将来的な若返りを見据えてのことだろう。それだけスタメンはほぼ決まっている。逆に不安材料を上げるとすれば、固定されたスタメンと6年目を迎えるペトロヴィッチ監督の“マンネリ感”ではないだろうか。2月25日、鹿島とのゼロックス杯は今シーズンの浦和を占う意味でも注目したい。 ▽移籍市場で大胆な動きを見せたのがFC東京だ。川崎FからベテランFWの大久保嘉人、J2に降格した名古屋からFW永井謙佑、フィテッセから左SB太田宏介、GKに鳥栖から林彰洋と代表クラスを獲得するなど、1月15日のチーム始動日には約2000人のファンが練習場に集まり、期待の高さをうかがわせた。さらにFCソウルのブラジル人MFの獲得を狙っているとの噂もある。問題は、新加入選手により出場機会を争うことになるFW前田遼一やMF河野広貴、阿部拓馬、DF徳永悠平といった“功労者”のメンタル・マネジメントだろう。昨シーズンと違いACLはないだけに、リーグ戦に集中できるとはいえ豊富な戦力をどうコントロールするのか。篠田善之監督の手腕が問われることになる。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.19 15:45 Thu
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【原ゆみこのマドリッド】熱いプレーで勝つのが最高だけど…

▽「そうか、もうコパがないのは楽よね」そんな風に私が納得していたのは月曜日。週末のリーガが終わった後、世間がこぞって優勝候補に祭り上げていたセビージャの先の予定を見ていた時のことでした。いやあ、確かに順位表の上では首位と勝ち点1差になったとて、レアル・マドリーはクラブW杯参加で延期したバレンシア戦が未消化のため、実質4ポイントあるようなものなんですけどね。この2週間~4週間もリーガの上位4チーム中、セビージャだけがミッドウィークを休めることに。その上次は最下位のオサスナと対戦となれば、今週末の日曜日からの7日間で3度もバスク(スペイン北部)遠征に駆り出されるアトレティコなど、どんどん差をつけられてしまう危険すらある? ▽ファン心理では、ビルバオ近辺でミニキャンプでも張って、アウェイへの移動時間を節約し、最近のパッとしない試合内容を改善する練習をしてほしいのですが…。選手たちだって、1週間も家族の待つ自宅に帰れないのは辛いだろうと、シメオネ監督は2日おきに3往復、計2344キロメートルを走破することを決定。おまけに良いんだか、悪いんだか、このところ勝つだけは勝っているため、今以上の努力は必要ないと思ってしまうのも人情なんですが…。ただ、このままセビージャに突っ走られたら、目標の3位フィニッシュが危うくなってしまうかも。 ▽まあ、その辺はまだ心配するには早いので今は置いておいて。先週末のマドリッド勢がどうだったかをお伝えしないといけません。土曜日は午後1時からの早い時間帯でマドリッドの新弟分、レガネスがブタルケにアスレティックを迎えたんですが、ベネズエラ人MFのマチスが4回程、GKイライソスと1対1のチャンスを掴みながら、その全てに失敗。おかげで最後まで点を取ることはできなかったのですが、相手も水曜日のコパ16強2ndレグでバルサに逆転負けを喫したショックがあったかのか、そのまま最後はスコアレスドローで終わることに。 ▽いえ、それでもアスレティックのエース、アドゥリスと司令塔のベニャトにイエローカードを出させて、次のアトレティコ戦に累積警告で出場停止という貢献はしてくれたんですけどね。結局、これで昇格1年目の今季前半はレガネスのホームで1勝止まり。降格圏との差は勝ち点5差になったものの、すぐ下の17位につけているバレンシアとはたったの1差になっていまいましたっけ。 ▽そして同日の夕方にはビセンテ・カルデロンに向かった私でしたが、その間にバルサがラス・パルマスに5-0と大勝。それだけに、8分にこぼれ球を拾ったガイタンの足から先制点が生まれた時には場内のファンも大いに沸いたんですけどね。以降はただただ、気温の低下に合わせるように冷え込んでいくばかり。だって、アトレティコはほとんどチャンスを作れないどころか、時間が経つにつれてパスさえまっとうに繋がらなくなっていくんですよ。後半など、もうほとんど最初から1点差での逃げ切りを考えているように、プレーのリズムが落ちていく一方で、シュートなど、ガイタンと交代したカラスコがGKアダンの正面を突いた1本ぐらいだったかと。 ▽幸い相手のベティスに決定力がなく、数日前に髪をプラチナブロンドに染めたセバージョスは活発だったものの、ルーベン・カストロの数度に渡るシュートはGKモヤが処理して失点は免れていました。ただ、どんどん消極的になっていくホームチームには、とうとうpito(ピト/ブーイング)もスタンドからチラホラ聞こえるように。その件に関してシメオネ監督は、「とりわけ89分のコケのプレーだろう。敵エリア前でゴールに向かわず、クロスを上げないでボールをキープすることを選んだ。Me parecio fantastico/メ・パレシオ・ファンタスティコ(私には素晴らしく思えたね)」と言っていましたけどね。時間稼ぎのため、アディショナルタイムにグリーズマンをヒメネスに代えていた辺りからも、今のアトレティコは上位ではないチームが相手でさえ、なりふり構わずいかないと勝てないというのはちょっと悲しかったかと。 ▽そのおかげもあって1-0で試合は終了。リーガ3連勝とした彼らでしたが、どうやら開き直ってしまったようで、アトレティコの不遇時代にも詳しいキャプテンのガビなど、「A la gente le gusta que juguemos bien, pero sobre todo que ganemos/ア・ラ・ヘンテ・レ・グスタ・ケ・フゲモス・ビエン、ペロ・ソブレ・トードー・ケ・ガネモス(ファンはボクらがいいプレーをするのが好きだが、何より勝つのが好きなんだ)。2回続けてパスをミスると、イライラしたファンからブーイングも受けるけど、自分たちは慣れているよ」とコメント。 ▽いや、そこはパスミスに慣れたらダメでしょと、私も突っ込みたくなったんですけどね。「Lo más importante es ganar, el fútbol lindo ya llegará/ロ・マス・インポルタンテ・エス・ガナール、エル・フトボル・リンドー・ジャー・ジェガラ(一番大事なのは勝つこと。美しいサッカーもそのうちできるさ)」と言う、すでにアトレティコ2年目でスペイン語がペラペラになったモンテネグロ人のサビッチのように、楽観的に考えることも必要ですよね。 ▽そして翌日、シメオネ監督の「Alguna duda de que lo que importan son los resultados? Mira quién gana el Balón de Oro/アルグーナ・ドゥーダ・デ・ケ・ロ・ケ・インポルタン・ソン・ロス・レスルタードス?ミラ・キエン・ガナ・エル・バロン・デ・オロ(結果が大事だということに何か疑問があるかい? 誰がバロンドールを獲ったか、見てみればいい)」という言葉ももっともだなという思いに駆られました。というのも、この1月にコパ16強の2試合に続いての同カードとなったお隣さんのセビージャ戦を見たせいで…。最初は「Nos sorprendió la línea de tres de ellos/ノス・ソルプレンディオ・ラ・リネア・デ・トレス・デ・エジョス(相手の3人のラインにウチは驚かされた)」というサンパオリ監督同様、私もスタメンを知って、呆気に取られたんですけどね。 ▽そう、ジダン監督は「Había que cambiar después de jugar tres partidos en 10 días/アビア・ケ・カンビアール・デスプエス・デ・フガール・トレス・パルティードス・エン・ディエス・ディアス(10日間で3度目の対戦だから、変える必要があった)」と、今季はリーガでも多くのチームで見られるCB3人プラスSBのDF5人体制を採用。うーん、そこまで4人DFでコパ1stレグ3-0、2ndレグ3-3と負けていないのですから、素人目には別にヴァラン、セルヒオ・ラモス、ナチョを並べるまでもないかと思ったんですけどね。それにも関わらず、前半のマドリーの動きは美しかったことと言ったらもう。 ▽どの選手もワンタッチでスムースにボールを繋いでいくのに、私が前日の誰かさんのお寒いサッカーとは雲泥の差を感じてしまったのはともかく…。逆に「CBを1人減らし、ボランチを増やして、中盤の人数的優位を狙った」サンパオリ監督のセビージャも、「Increíble. En mitad de la cancha fue un pulpo tanto para recuperar como para jugar/インクレイブレ。エン・ミタッド・デ・ラ・カンチャ・フエ・ウンプウポ・タントー・パラ・レウペラール・コモ・パラ・フガール(信じられないほどだ。ピッチの真ん中ではボールを取り戻すのにもプレーを組み立てるにもタコのようだった)」とお褒めの言葉を賜ったエンゾンジを中心に、レベル的に負けていなかったのは凄いんですが。どちらも得点チャンスにはあまり結び付けられずにハーフタイムを迎えることに。そういう意味では、マドリーにはルーカス・バスケスが、セビージャにはCFがいないのが響いていたのかもしれません。 ▽後半もしばらくは同じ展開だったのですが、形勢がマドリーに傾いたのは65分のこと。エスクデーロのミスからボールを奪ったカルバハルがエリア内に突入したところ、GKセルヒオ・リコが彼を倒してPKを宣告されてしまったから、セビージャの選手はもとより、サンチェス・ピスファンのスタンドがどんなに抗議したことか…。そのPKをラモスではなく、その日はもちろんクリスチアーノ・ロナウドが蹴る前に、「ちょっとバランスを崩してやろうと思って」と、ビトロがPKマークの辺りの芝を足で荒らしていたため、怒ったロナウドがボールを相手の背中にぶつけるという珍しい光景もあったんですが、当人への心理的に影響はまったくなし。キックはしっかり決まって、マドリーが先制点を奪ったんです…。 ▽でも、本当にこの試合は“逆”という言葉が相応しい出来事が多かったんですよ。木曜日のコパでは3-1にされても諦めなかったのはマドリーでしたが、その日の彼らは「después del gol nos hemos relajado/デスプエス・デル・ゴル・ノス・エモス・レラハードー(ゴールの後、ウチは気を緩めてしまった)」(マルセロ)ようで。中には「no hemos sabido menejar los tiempos del partido/ノー・エモス・サビードー・マネハル・ロス・ティエンポス・デル・パルティードー(ボクらは試合の時間をコントロールすることを知らなかった)」(ラモス)という意見もありますけどね。そこは天下のマドリーですから、恥ずかし気もなく1点を守り倒すお隣さんとは心構えが違っていても仕方ない? ▽実際、それ以上に失点にも気落ちせず、ヨベティッチ、サラビアとアタッカーをつぎ込んだサンパオリ監督のチームの熱意が勝ったとも言えますが、85分には先日の試合で同じような時間帯に物議を醸すPKゴールを決めたラモスが再び得点。ただし、この日は方向が逆で、サラビアのFKを小柄なイェデルに先んじてヒットしようと、ヴァランを押しのけてジャンプした弾みにGKケイロル・ナバスを破ってしまったから、さあ大変! いやもう、キックオフ前から悪口のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)やブーイングを彼に浴びせるのに余念のなかったセビージャファンたちも、これには拍手喝采するしかなかったかと。 ▽そしてさらにマドリーの専売特許である奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)はアディショナルタイム2分のことですよ。今度はカルバハルからスローインを受け取ったベンゼマが、ビトロにボールを奪われそのパスがヨベティッチの下へ。するとエリア外から撃ったシュートがナバスの手を弾いてネットに突き刺さり、土壇場でセビージャに決勝点が入るなんて!! いや、マドリーがそれをやるのは私も見慣れているんですけどね。まさか、逆に敵にやられる日が来るなんて、思ってもみませんでしたっけ。 ▽うーん、確かに2-1で負けてしまえば、せっかくの無敗試合もスペイン新記録となった40となった途端に終わりですし、あれだけいいプレーをしたのも意味なく思えてしまえなくはないんですけどね。マドリーに「Le ha faltado cinco minutos/レ・エ・ファルタードー・シンコ・ミヌートス(足りなかったのは5分間)」というジダン監督は、「Sabíamos que iba a pasar un día de estos/サビアモス・ケ・イバ・ア・パサール・ウン・ディア・デ・エストス(こういう日の1つでは起こるだろうことはわかっていた)」と、記録が途絶えたことには達観していたものの、せっかくベンチにはルーカス・バスケス、モラタ、アセンシオ、マリアーノと強力なアタッカーが揃っていながら、クロースをコバチッチに代えただけで、交代枠を使い切らなかったのにはちょっと後悔が残るかと。 ▽まあ、彼らにはあまり悔やんでいる時間もないんですけどね。というのもこの水曜日午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)にはコパ準々決勝1stレグのセルタ戦が控えているからで、相手もこの週末はアラベスを1-0で破り、コパ16強対決のバレンシア戦含め、今年になっての4試合全勝中と好調を維持。昨季など、うっかり者のマドリッドのライバルが同じ準々決勝で後れを取ったなんて前例もあるため、絶対的に彼らの方が格上だとしても油断は禁物です。ただ、月曜日のバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習では、前節のグラナダ戦で打撲を受けてこのセビージャ2連戦にはお休みしたイスコも合流していたようですし、ローテーション好きのジダン監督はまた前線のメンバーを変えてくるかもしれませんね。 ▽一方、木曜日午後7時15分(日本時間翌午前3時15分)から、同じコパでエイバルをカルデロンに迎えるアトレティコも日曜日を休養日にした後、月曜日の夕方から練習を再開。しかしセッション開始から20分でマハダオンダ(マドリッド近郊)の施設がapagon(アパゴン/停電)に見舞われるという逆境が…。その後、数分だけ復旧したようですが、またグラウンドの灯りが消え、ジムも同様だったため、選手たちは真っ暗なロッカールームで着替えて、家路をたどることになったとか。うーん、これでまた、火曜日と水曜日の練習だけでやはり、前節はスポルティングに2-3と勝利。セルタに続く9位と、そこそこのところに付けているチームを相手にするのは気が重いんですが、今は辛抱の時。いくら寒いスタンドで彼らのプレーを見るとますます寒くなっても、何とか勝ってくれれば、応援する甲斐はあるってもんですよ。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.01.17 13:20 Tue
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【東本貢司のFCUK!】真のフットボール人、その死

▽1994年はワールドカップ本大会の舞台が史上初めてヨーロッパ・南米から飛び出した、いわば、その後のグルーバリゼイションの先駆けとなった歴史的大会だった。しかし、ワールドカップ通の記憶に最も色濃く刻まれているのは、ひょっとするとヨーロッパ予選が見た予想外のドラマの方だったかもしれない。確かに、カントナ、パパンら時代を席捲する精鋭を揃えて前評判の高かったフランスが、最終戦終盤、ブルガリアの奇襲に逆転負けを喫した事件は鮮烈だった。そしてそれ以上にショッキングだったのが、“母国”イングランドの無残な予選敗退。なんとなれば、世にいうヘイゼルの悲劇の“後遺症”で長らく国際舞台からの撤退を余儀なくされ、それが解けたばかりの前回イタリア大会で堂々のベスト4、PK戦にもつれ込んだ準決勝・西ドイツ戦の死闘は今も語り種、かつ、超新星ポール・ガスコインが流した涙が、停滞模様のイングリッシュフットボール再生の象徴ともなった。そんな復権の希望が、アメリカ大会予選でものの見事に吹き飛んでしまったのだ。 ▽そんな失意のスリーライオンズを率いていたのが、この12日、72歳で急逝したグレアム・テイラーである。おかげで、テイラーには「史上最悪のイングランド代表監督」なるレッテルがつきまとうことになってしまったのだが、その一方で彼ほどブリテン島で愛され、敬意を集めた指導者もそうはいない。そもそも代表監督に抜擢された所以というのが、1977年から指揮を執ったワトフォードにおいて、わずか5年で4部から1部(=現在のプレミアリーグ)準優勝まで駆け上った功績、さらにその後アストン・ヴィラに転身してここでもミッドランズの名門を2部からの復活に導いたことにあった。ワトフォードとヴィラはともに、彼が現役時代を過ごしたクラブであり、この土曜日(14日)、ミドゥルズブラを迎えたホーム、ヴィカレッジ・ロードは「クラブ史上最高の監督」テイラーの追悼一色だった。愛着の深い、てしおにかけて育て上げたクラブチームでの成功が、寄せ集めの精鋭をほんの一時手なずけるだけの代表での仕事には“そぐわない”典型だとも言える。 ▽筆者もよく知らなかったが、テイラーに対する敬愛の念は、単にワトフォードやヴィラのファン層にとどまってはいなかったようだ。その根拠は、彼のフットボールに対する深甚な愛情や博識のみならず、彼の知己を得た誰もがほだされてしまう人間的魅力にあったという。ワトフォード時代、同僚およびコーチとして長年付き添ったジョン・マレイが「できることなら彼に成り代わりたかった」と証言するほどに。「温厚で人懐こく気取りのまったくない」テイラーはまた、話好きで、誰彼分け隔てなく年来の友人同然に交流し、何ら隠し事もせず、裏表の一切ない愛すべき人格の持ち主だった。マレイによると、一面識もなかったテイラーの妻子について、いつの間にか長年家族ぐるみの付き合いをしてきたかのような錯覚に陥ったほどだという。代表監督としての失敗後、大手TV局のコメンテイターとして招かれたテイラーは、その溢れんばかりの愛情と博識、的確な分析でもって、一躍評論家として人気を博した。それもこれも、策士たるイメージの強い監督像とは一線を置く“人間味にあふれた指導者”として皆から敬愛されてきた証ではなかったろうか。 ▽彼が無類のフットボール好きだった一つのエピソードを、前出のマレイが明かしてくれている。「TVの仕事を何度か断ってまで、彼は3部、4部のゲームに自費でアテンドしていたが、その様子は本当に熱心で頭が下がる思いだった。それが、当時のスリーライオンズそれぞれのエゴやプライドを御し切れなかった真の理由だったのかもしれない」。また、ワトフォードでは副チェアマン(後にチェアマン)を任じていたエルトン・ジョンも「あれほどの人物はめったにいない。生涯で一、二の親友を亡くしたことはわが身のように辛い」と漏らしている。思うに、生き馬の目を抜くプロフットボール界が、90年代以降カネ太りの商業化を加速させていったことに、テイラーは内心、喜びながらも忸怩たる思いだったのではなかろうか。それこそ今、中国発のあられもない“爆買い”ブームには、苦い思いに苛まれつつ、「良き時代遠かりし」と黄昏れ、自らの命が消えてゆくのを悟っていたのではないかとの感傷にとらわれたりもする。「人間グレアム・テイラー」の喪失は、真の意味で一時代の終わりを象徴しているのだろうか。心からその死を悼んでやまない。 ▽そう思うと、ワトフォードファンの万感の思いが込められたボロ(ミドゥルズブラの通称)戦がスコアレスドローに終わったのは、あの世のテイラーにとっては納得ずくの「しかるべく」だったかもしれない。とどのつまりは勝ちも負けも時の運、双方力を尽くしての結果に愚痴も言葉も何も要らない―――そんなつぶやきが、あの人懐こい微笑から聞こえてくるような気がすると言えばいがかだろうか。何を甘ったるいことを? いいやそれは、何かと言えば、不振に監督交代を叫ぶファンや、投機狙いで参入してくる外資オーナーシップ、あるいはいかにもこれ見よがしに「わが身優先」でダダをこねるプレーヤーたちこそが、今一度立ち返って噛みしめるべき、一つの指標、その拠り所になり得ないだろうか。テイラーの時代以前に、古き良きフットボールに肌で触れる機会をたまたま得た身にとっては、わずかなりとも昨今の現実にその名残を見出したいという詮無い感傷だとしても、また新たにその思い、願いが湧き上がってくるのである。さあ、目を覚ませ、とばかりに。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.15 17:31 Sun
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【原ゆみこのマドリッド】ヒヤヒヤさせられたものの…

▽「またお客が集まらなさそうな対戦になって可哀想」そんな風に私が同情していたのは金曜日、コパ・デル・レイ準々決勝の組み合わせ抽選の結果を知った時のことでした。いえ、今年は珍しく、この段階になってもマドリーダービーもクラシコ(伝統の一戦、レアル・マドリーvsバルサ戦のこと)も生まれず、4試合のどれもビッグマッチとは言えないんですけどね。12月には1部のエスパニョールを破って16強に進出したマドリッドの2部の弟分、アルコルコンは先週の1stレグでスコアレスドローだった後、この水曜にはアウェイで2-1と同じカテゴリーのコルドバを破って、初の8強入りという大手柄を達成。次こそ、人気チームをサント・ドミンゴ(マドリッド近郊にあるアルコルコンのホーム)に迎えてチケット完売と、フロントも意気込んでいたはずなんですけどね。 ▽それが今回もクジ運に見放されたか、昨季まで一緒に1部昇格を争っていたアラベスと当たってしまうとは、いえ、その分、突破の可能性は高まったのは決して否定しませんよ。と言ったって、他の組み合わせがレアル・ソシエダvsバルサ、マドリーvsセルタ、アトレティコvsエイバルとなれば、一発勝負の決勝はともかく、それこそマドリーと当たって、アルコルコナソ(2009年のコパ32強対決でペレグリーニ監督率いるマドリーを総合スコア4-1でアルコルコンが破った大番狂わせのこと)の再現でもあれば別ですが、ほとんど準決勝を勝ち抜ける可能性はないかと。だったら、ファンも選手も望んでいたであろう、スター選手たちと対戦ができた方が良かったんじゃないかと思ったんですが、なかなか上手い具合にはいってくれないようです。 ▽まあ、それは来週の話なので、今は置いておくことにして、先にマドリー2強の16強対決2ndレグがどうだったかをお伝えしておかないと。先週に続き、火曜に試合をしたのはアトレティコで、実を言うと、こちらも1stレグで0-2と勝っていたせいもあったのか、ビセンテ・カルデロンのスタンドはかなり寂しい様相を呈すことに。ただ、ゲームの方は前半こそ地味だったものの、後半はかなり忙しい展開で、いえ、4分にガイタンがエリア内右奥から出したラストパスをグリースマンがシュート、本人3試合連続となるゴールを決めた時には完全に勝負がついたと誰もが思ったんですけどね。 ▽12分にリバヤにゴディンが後れを取り、同点ゴールを入れられても、その4分後にはコレアがGKとの1対1を制して2点目ゲットと、順調だったアトレティコでしたが、試合終了間際に事態が急変。ええ、すでに勝負の行方が見えていたせいで、選手たちが油断してしまったのもいけなかったんですが、残り1分にリバヤが自身2点目を挙げたラス・パルマスはロスタイムにもビエラのクロスをマテオが決め、その試合のスコアを2-3に。おかげでステイン監督も「si llegamos a evitar los suyos podía haber estado más abierto/シー・ジェガモス・ア・エビタル・ロス・スジョス・ポディア・アベール・エスタードー・マス・アビエルト(相手のゴールを避けられていたら、もっと可能性があったろう)」と後で嘆くことになったんですが、何はともあれ、結果を引っくり返される前に審判が終わりの笛を吹いてくれたのは助かりましたっけ(総合スコア4-3)。 ▽え、それでもシメオネ監督は「Es mas positivo estar en cuartos que lo negativo de la derrota/エス・マス・ポシティボ・エスタル・エンクアルトス・ケ・ロ・ネガティボ・デ・ラ・デロータ(準々決勝にいられることの方が、敗戦によるネガティブな面よりポジティブ)」と、あまり失点を気にしていなかったようじゃないかって?そうですね、途中、左SBで先発したルーカスが太ももの筋肉痛で交代を余儀なくされ、ガビを入れて、中盤の右サイドでスタートしたファンフランを回すといったアクシデントもありましたしね。ゴディンやこの日はCBに戻ったヒメネスらの守備ミスもあったものの、とりあえず、ここを凌いだことで、準々決勝ではリーガの前節で0-2と勝ったばかりのエイバルが相手となりましたし、今週末もリーガの相手はベティスと、それ程の難敵ではなし。 ▽更にその土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からの試合では、このコパ2ndレグを風邪で欠場したガメイロやアキレス腱の負傷がようやく治ったカラスコも戻ってきますし、最近はガイタンもいい働きを見せてくれますからね。トマスがアフリカ・ネーションズカップのために不在、チアゴもまだヒザを故障中と中盤の人材が不足しているのは変わりませんが、せっかく先週末は4位まで上がったリーガですから、ベティス戦でも手堅く勝ち点3を稼いで、3位のバルサにこれ以上、離されないようにしてもらいたいものです。 ▽そして木曜にはお隣さんの試合だったんですが、1stレグではマドリーが3-0で勝っていたものの、興奮度ではこちらの方が遥かに上だったかと。だってえ、サンチェス・ピスファンを満員にしたファンを背に、前半9分にはもうセビージャが1点目を入れているんですよ。実はそれってオウンゴールで、サラビアのクロスをイボラの前でクリアしようとしたダニーロが見事なヘディングで決めたんですが、その後もまったく敵は攻撃の手を緩めず。1-0のままでハーフタイムに入ったのが奇跡のようでしたが、大丈夫、後半開始すぐにセビージャのCKから、GKカシージャのパンチングを拾ったアセンシオが敵エリアまで83メートルを13秒で疾走。最後は1人、追いついたビエットもかわし、そのシュートがGKソリアに当たって同点ゴールになってくれるのですから、有難いじゃないですか。 ▽相手にとっては致命的なマドリーのアウェイゴールでしたが、その日のセビージャは後ろを振り返らないことに決めていたんでしょうかね。9分にはエスクデーロがクロスを上げると、前半終了間際に負傷交代したホアキン・コレアの代わりにピッチに送り込まれた、インテル・ミラノからレンタル移籍してきたばかりのヨベティッチがvolea(ボレア/ボレーシュート)でゴールに。夢のようなデビューを飾りましたが、32分にも彼らはイェデルのシュートをカシージャがこぼしたところをイボラが押し込んで、スコアが3-1になったから、こちらも緊張したの何のって。 ▽だってえ、その日のマドリーは先週の結果に自信を持ったか、クリスチアーノ・ロナウドとモドリッチを連れて来ず、ハメス・ロドリゲスやイスコもケガでお休みだったんですよ。そのすぐ前に、パッとしなかったモラタに代わってベンゼマが入っていたとて、サンパオリ監督も後で「Tuvimos entre 13 y 15 ocasiones claras de gol/トゥビモス・エントレ・トレセ・イ・キンセ・オカシオネス・クラーラス・デ・ゴル(ウチには13から15回のはっきりしたゴールチャンスがあった)」と言っていたように、セビージャの勢いがこのまま続けば、あと2点ぐらい平気で取っちゃうかもしれないじゃないですか。 ▽その最悪のケースに到った場合、誰が逆転のゴールを決めてくれるんだと心配になったんですが、いえいえ、他の選手たちも侮ってはいけません。まず38分には、ビエット同様、アトレティコからレンタルでセビージャにお世話になっているクラネビテルがエリア内でカセミロを倒し、PKを献上。うーん、この時、セルヒオ・ラモスがベンゼマからボールをもらっていたのには、ロナウドもベイルも、ハメスすらいないのをいいことに、またキャプテン権限で主役を張るつもりなのかなと思った私でしたけどね。 ▽どうやら当人にはそれ以上の思惑があったようで、パネンカ風のPKを決めた後のパフォーマンスの凄かったことといったら、もう!ええ、ゴールを入れた側に陣取るビリス(セビージャのウルトラグループ)に向かって、自分の背中のネームを指したり、耳に手を当てて挑発したかと思えば、他の方向には両手を頭上で合わせてお詫びのポーズ。ラモスによると、「En ningún momento falté respeto a la afición/エン・ニングン・モメントー・ファウテ・レスペト・ア・ラ・アフィシオン(ファンに対しては一瞬もリスペクトを欠いていない)。実際、正面席とゴール裏南側には謝った。ボクを侮辱したり、もめたりしない人たちだからね」というのが、そのジェスチャーの理由だったそうですが、何ともややこしかったせいでしょうかね。正直、セビージャファンの大部分は怒っていたように見えましたよ。 ▽それでもビリスのスタンドから、飛んできたペットボトルが彼に当たらなかったのは幸いでしたが、どうやら同じビッグクラブへの移籍組ながら、ラモスには「A Rakitic o Alves se le reciben como dioses. Conmigo, insultan a mi madre/ア・ラキティッチ・オ・アラベス・セ・レ・レシベン・コモ・ディオセス。コンミーゴ・インスルタン・ア・ミ・マドレ(ラキティッチやダニエウ・アウベスはまるで神様のように迎えられるのに、ボクは母親を侮辱される)」という不満もあったよう。うーん、ラモスの時は当時のデル・ニド会長に悪く言われたり、契約破棄金額を払っての移籍だったりしたのもありますが、アウベスとラキティッチはセビージャにタイトルをもたらしてからの栄転だったという背景もありますからね。 ▽自分だけが悪役にされているという被害者意識もいかがなものかとは思いますが、優しいジダン監督は「No estoy contento y Ramos tampoco, no es agradable que te insulten/ノー・エストイ・コンテントー・イ・ラモス・タンポコ、ノー・エス・アグラダブレ・ケ・テ・インスルテン(自分もラモスも満足はしていない。侮辱されるのは気分のいいものではないよ)」と部下をフォロー。ただ、こうなると心配なのはこの日曜、リーガでのセビージャ戦で、マドリーはまたサンチェス・ピスファンに来ないといけませんからねえ。ラモスも毎回、ゴールを入れる訳ではないですが、イボラも「Lo bueno es que dentro de tres días hay revancha/ロ・ブエノ・エス・ケ・デントロ・デ・トレス・ディアス・イ・レバンチャ(3日後にはリベンジできるのはいいことだ)」と言っていたように、きっとまた激しいブーイングに耐えないといけないんでしょうね。 ▽え、この時点で試合のスコアは3-2、総合スコアでは勝っているけど、マドリーの無敗記録は39試合で途絶えてしまったのかって?いやあ、それがあのチームの凄いところで、remontada(レモンターダ/逆転劇)の主役の常連、ラモスはPKパフォーマンスで満足したか、その後は静かだったんですが、ロスタイム2分にベンゼマが得点。それもマルセロとtaconazo(タコナソ/ヒールキック)ワンツーをして、エリア内に持ち込むと、最後はやはり、この日セビージャデビューをしたCBレングレに当たって軌道が変るシュートで同点ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。 ▽ええ、これでスコアは3-3。そのまま試合が終了したため、ジダン監督は40試合の連続無敗スペイン新記録を達成することに。いやあ、まったくその辺は伝統のレモンターダ根性はダテではないというか、アトレティコに比べて、しっかりしているというか、感心するしかないんですけどね。日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの試合では、今度はロナウドを含めたベストメンバーで挑むことになると思いますが、果たしてこの記録、どこまで伸びるのやら。うーん、セビージャもお休みしたエンゾンジやマリアーノ、”ムード”・バスケスらが出て来るはずですが、常識的には消化試合のはずだったコパでさえ、このエキサイトぶりとなると、勝ち点差は4ながら、1位と2位のガチンコ対決となるリーガ戦はどんな凄い有様になるのか、誰にもわからないかと。 ▽何だか、私も見るのが怖くなってきますが、順位的にはコパは敗退済みで、今週はずっと練習に励むことができたレガネスがアスレティックをブタルケに迎える土曜の試合もかなり重要。というのも、前節で引き分けたバレンシアが勝ち点3に迫っていて、下手をすると、レガネスは降格圏ギリギリの17位まで落ちてしまう恐れがあるから。いえ、相手は水曜にカンプ・ノウでバルサとコパ16強対戦の2ndレグを戦い、しかも3-1で負けて、総合スコア3-4の逆転敗退という精神的ショックも受けているんですけどね。とはいえ、エースのアドゥリスは後半まで温存されていましたし、まだそんなに冬期市場での補強が進んでおらず、得点力の低いマドリッドの弟分には厳しい戦いになるかと。 ▽それでも彼らは幸いGKだけは獲得していて、12月に緊急加入したエレリンがレンタル元との契約条項で出場できなくても、前節のベティス戦に続いて、これが2試合目となるアルゼンチンから来たシャンパネが頑張ってくれるはずですが、いい結果が出せるかどうか。何せ、あと2試合でシーズン前半戦もお終いですからね。できれば、今週こそ、1部でのホームゲーム2勝目を挙げて、なるたけ危険なゾーンから離れた位置で折り返してくれると、私も嬉しいんですが…。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.01.14 09:30 Sat
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【倉井史也のJリーグ】ここはいっそのこと世界規模のお祭り騒ぎにしちゃおう?!の巻

▽え〜、今週もやって来ました、サッカーニュースのコーナーです。またまたいろいろありましたね。では最初のニュース、行ってみましょう。「FIFA、ワールドカップ出場数を48チームに拡大」から。 ▽なんか、すごいことになってきましたね。1次リーグは3チームで上位2チームがトーナメントに進むなんて、日程的に不利なチームも出てくるし、1試合負けたらほぼ終わりだし、南米とヨーロッパに挟まれたチームは常に死の組だし、ま、それが面白いっちゃあ面白いのですが。でも中途半端! ▽だって、200ちょっとの国と地域から構成されるFIFAで、その四分の一が出場できるんですよ。アジアで言うと、あれ? 2次予選が終わったらもう本大会出場っぽい? 的な。ドーハの悲劇って、アジア枠が2チームしかなかったから起きたドラマで、本大会出場できるチームが増えたら、日本ではもう予選にドラマなんて生まれそうにないんですよ。 ▽だったら、いっそのこと全部でやっちゃう!! 半年ぐらいかけてトーナメントで絞り込んでいくってのはどうでしょ? 負けた国の人から帰ってって、自分のチームのリーグ戦、みたいな。4年に1回、それくらい見られればもうお腹いっぱいでしょ。文字通り世界中の人と会えるから、世界平和間違いなしだし。というか、全世界規模で民族の大移動が起きて、地球の重心がずれて時空がゆがむんじゃないかと心配してるんですけど。 ▽いやいや、そんな冗長な試合が増えても困るって気持ちはよくわかります。よし! だったら、各大陸から1チームずつ! でもって開催国を加えて……。うむむ。それもいろいろドラマはありそうだけど、問題もありそうな。 ▽おっと、もう時間が無くなってしまいました。このへんで……え? 中村俊輔の磐田移籍のニュースを無視するのかって? いやいや、そんな気持ちはないのですが、ここは立場ってもんがあるんで、長いコメントは控えておきますが、最後に一言だけ。 ▽ヨーロッパのサポーターの言葉に「我がクラブは決して敗れず。ただ時折、自ら足を滑らせるのみ」という言葉があるんですけど、マジで日本で2年連続でずっこけるところ見るなんて思いませんでしたね。日本の根幹産業、大丈夫なんですかね? とういことで、また来週!! 【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2017.01.12 22:50 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】W杯の増枠は疑問

▽今月9日のことだったと思う。元日本代表の中田英寿氏がFIFAのFootball Advisory Panel(サッカー諮問委員)の一員として、W杯の参加国数の増加について好意的な意見を述べていた。正直、将来的な展望と想っていたところ、FIFAのインファンティノ会長は2026年のW杯から、現行の32チームから48チームに出場枠を拡大することを決定したのには驚かされた。 ▽狙いは単純。選手の負担を考慮して、1次リーグは3チームによるリーグ戦と試合数を減らし、その後はトーナメント戦にするものの、門戸の拡大によりトータルの試合数は現行の64から80に増える。開催国は入場料収入が増え、FIFAはテレビ放映権料の増加や、クラブW杯のスポンサーになった中国のアリババ・グループなど新たなスポンサーの獲得にもつながるメリットが予想される。 ▽それに対し、早くもヨーロッパからは否定的な声が出ている。それもそうだろう。選手の年俸を負担して生計を支えているのは各クラブだからだ。決勝戦まで勝ち進んだ場合の試合数は変わらないものの、そのしわ寄せは日程に来ることが予想される。そもそも、48チームに拡大する必要性がどこにあるのか、その必然性が分からない。 ▽2020年に東京五輪を控え、大会をコンパクトにし、必要経費を削減することが東京のテーマとして議論されている。IOCにしてみれば、経費の膨張は立候補国の減少につながるだけに死活問題と捉えているのではないだろうか。同じことはW杯にも当てはまる。決勝まで勝ち進んだチームの試合数こそ変わらないとはいえ、同じ期間で64試合から80試合を消化するためには、FIFAの規格に適合したスタジアムが必要になる。 ▽問題はスタジアムだけではない。48チームの練習場の確保。48チームのファン・サポーターが訪れた際の宿泊施設(ホテル)の確保など、課題は山積だ。日本より広大な面積のブラジルでさえ、W杯の際はホテルが不足して通常の5倍から(リオは)10倍の値段に高騰した。W杯は都市開催ではなく国開催だと言われるのは、それだけ五輪よりも規模が大きい大会だからでもある。 ▽すでにW杯は2018年のロシア、2022年のカタール開催と決まっている。その次の2026年は北米が有力だが、逆説的にも48チームを受け入れられるのはアメリカしかないだろう。同じことは2030年にも言えて、W杯が48チームで開催されるなら、招致できる国も限られる。W杯の共催は日韓両国で実績があるとはいえ、欧州選手権の共催は必ずしも成功したとは限らない。もはや限られた国しか開催できないW杯にする参加国増の今回の決定だ。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.12 15:00 Thu
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【原ゆみこのマドリッド】今は地道に勝っていくしかない…

▽「このまま独走されたら、たまらないなあ」そんな風に私が愚痴っていたのは月曜日、リーガ第17節後の順位表を見てのことでした。いやあ、クラブW杯のせいでバレンシア戦を延期したレアル・マドリー以外、全ての上位チームが白星で揃い踏みした去年最後の節とは違い、先週末はレアル・ソシエダやビジャレアルが勝てなかったため、アトレティコも何とかヨーロッパリーグ出場圏の6位から、CLのプレーオフに出られる4位まで上がることができたんですけどね。首位に君臨しているお隣さんもしっかり勝ったため、結局、消化試合が1つ多い状態で勝ち点差9という根本はまったく変わりがないんですから、ちょっと私が空しくなってしまっても仕方ない? ▽とはいえ、そのマドリーが珍しく午後1時という、昼間の時間帯に当たった土曜の試合の相手は降格圏にいるグラナダでしたからねえ。ちょうどその前日はDia de los Reyes Magos(ディア・デ・ロス・レジェス・マゴス/東方三賢人の日、スペインでは子供たちがプレゼントをもらう習慣がある)だったため、サンティアゴ・ベルナベウを訪れた家族連れも選手たちが贈り物をしてくれるのを期待していたかと思いますが、お愉しみはキックオフ前にクリスチアーノ・ロナウドが昨年、受賞したバロンドールのトロフィーを披露しただけに留まらず。ジダン監督も先週ミッドウィークのコパ・デル・レイ16強対戦1stレグと打って変わって、ロナウドとベンゼマを惜しげもなく先発で起用したんですが、ただし、前半13分に先制点で早くもスタンドを沸かせてくれたのは、BBCの負傷メンバー、ベイルの代わりに前線に入ったイスコでした。 ▽ええ、ベンゼマからパスを受けて、エリア内から撃ったシュートがGKオチョアを破ったんですが、これなどはまだ序の口すぎず、続いて21分にも、今度はモドリッチのシュートが弾かれたところをベンゼマが押し込んで2点目をゲット。更に27分にはマルセロのクロスをロナウドがヘッドで叩き込んだかと思えば、それから4分後には再びイスコがモドリッチのキラーパスにゴール前で合わせ、気が付けば、30分強で4点差のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)になっているとなれば、2シーズン前、やはりお昼の試合で9-1の大敗を喫した悪夢を思い出していたグラナダ関係者も多かったかも。 ▽それでもハーフタイムの後は、グラナダが「Los segundos 45 minutos teniamos que competir como si fueramos 0-0/ロス・セグンドス・クアレンテアイシンコ・ミヌートス・テニアモス・ケ・コンペティール・コモ・シ・フエラモス・セロ・ア・セロ(後半45分間、ウチは0-0であるかのように競わなければならなかった)」と意地を見せたため、追加点は13分、クロースと交代で後半から出場したハメス・ロドリゲスの蹴ったFKをカセミロが決めた1点だけに留まったんですが、最終スコアは5-0ですからね。おかげで昨年から続いている公式戦無敗も39試合となり、ルイス・エンリケ監督がバルサで作ったスペイン最長記録に並んだとなれば、ジダン監督が「Es nuestro mejor momento desde que soy entrenador/エス・ヌエストロ・メホール・モメントー・デスデ・ケ・ソイ・エントレナドール(自分が監督となって以来、ウチの最高の瞬間)」と喜んでいたのも当然だったかと。 ▽え、先日のコパ・デル・レイ16強対戦1stレグ、セビージャ戦もそうだったけど、今年のマドリーは前半から、随分、飛ばすようになったじゃないかって?そうですね、「El mister nos pide que presionemos arriba y como estamos bien fisicamente podemos/ル・ミステル・ノス・ピデ・ケ・プレシオネモス・アリバ・イ・コモ・エスタモス・ビエン・フィシカメンテ・ポデモス(監督は高い位置でのプレスを頼んでいて、ボクらもフィジカルがいい状態だから、それができるんだ)」とモドリッチも言っていたように、クリスマスのバケーション後、ミニプレシーズンとして、ピントゥス・フィジカルコーチに課された体力アップメニューがいい結果を出しているのだとか。 ▽それだけでなく、そのセビージャ戦で2ゴールを挙げたハメス・ロドリゲスに続き、この日も同じ控え組のイスコが2得点と、どちらもベイルの長期離脱で回ってきたチャンスをしっかり生かしてくれているとなれば、ジダン監督も笑いが止まらないかと思いますが、次に控えているのは木曜にはコパの2ndレグ、そして日曜にはリーガでサンチェス・ピスファンに乗り込むセビージャ2連戦。何せ、相手は年明け最初の試合で3-0とマドリーに一蹴された悔しさをバネにしたか、同じ土曜にはレアル・ソシエダを0-4で粉砕。実のところ、彼らは昨年12月からハットトリックラッシュで、イボラ、ビトロと続いた後、3部のフォメンテラとのコパ32強対決2ndレグでビトロと共に3得点を挙げたイェデルがソシエダ戦でまたハットと、固め撃っているため、カシージャ、ケイロル・ナバスの両GKも決して油断はできないかと。 ▽そこへ加えて、日曜にはバルサがビジャレアルとメッシのFKゴールで1-1と引き分けるのに留まったため、セビージャがリーガ2位に上昇し、勝ち点差は4あるものの、今やマドリーに一番近いライバルとなったとなれば、日曜は大いに盛り上がること間違いなしなんですが、まあ、木曜午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)キックオフのコパ2ndレグはねえ。よっぽどのことがない限り、1stレグの3点差が引っくり返されることはないはずですし、どちらもリーガの決戦に備えての予行演習みたいになるかもしれませんね。 ▽一方、そのマドリーの次の時間帯でエイバルに挑んだアトレティコはどうだったかというと。うーん、こちらもまだ日の出ているうちの試合だったんですが、スペイン北部のためか、イプルアのピッチが半分凍結。それは元々、ボール扱いに長けている訳ではないアトレティコの選手たちには関係なかったようですが、前半は地の利のある相手に圧倒されてしまうことに。このところ、シメオネ監督が実験を続けていたヒメネスがボランチとして先発デビューしたため、実質、CB3人状態となり、何とか失点こそ免れていましたが、この日、ガメイロに代わってCFに入ったフェルナンド・トーレスもチャンスには恵まれず、両チーム無得点のまま、ハーフタイムに入ります。 ▽後半の頭からは、「Veia que Inui estaba bien/ベイア・ケ・イヌイ・エスタバ・ビエン(乾選手が良かった)し、イエローカードをもらっていたから、退場で選手を失う危険を犯したくなかった」(シメオネ監督)という理由でブルサリコをファンフランに代えたアトレティコでしたが、ようやく8分には先制点を奪うのに成功。そう、コケの蹴った短いCKから、フィリペ・ルイスが上げたクロスをサウルがヘッドしてゴールに。リプレーではオフサイドの位置にいた彼ですが、線審に見咎められなかったため、スコアボードに上がってくれたのは幸運でしたっけ。 ▽おかげで少し余裕のできたアトレティコは29分にもカウンターから、グリースマンがトーレスの代わりに入ったガメイロとの連携で2点目を追加。先日のコパ16強対戦1stレグ、ラス・パルマス戦に続いての得点ですが、これでリーガでも去年の10月2日以来となるゴール日照りから脱却となれば、試合後、「Dependemos mucho del estado de forma de Griezmann/デペンデモス・ムーチョ・デル・エスタード・デ・フォルマ・デ・グリースマン(ウチはグリースマンの状態に大きく頼っている)」と認めていたシメオネ監督もどんなに安心したことか。 ▽結局、そのまま失点はせず、0-2で手堅く勝利したアトレティコは目標の3位まであと一歩と迫ったんですが、2017年を1分け1敗で始めたバルサもそうそう、不調のままではいないでしょうからね。勝ち点差も4あるため、ここを逆転するには少々、時間がかかるかもしれませんが、まあ、こればっかりは気長に勝ち続けていくしか、手立てはありません。何にせよ、今週はまず、火曜の午後9時15分からラス・パルマスとのコパ16強対戦2ndレグが控えている彼らなので、先週、0-2で勝利した1stレグの成果をムダにせず、しっかり準々決勝進出を決めてもらいたいものです。 ▽そして週末には土曜にベティスをビセンテ・カルデロンに迎えて、再びリーガ順位の改善を目指す彼らですが、残念なことに、今季のカレンダーでは常に兄貴分の相手に先んじて当たるレガネスは日曜の試合で2-0と負けてしまうことに。いえ、出場停止のエレリンの代わりに移籍早々、スタメンに入ったGKチャンパネはまずまずの出来だったんですけどね。後半にルーベン・カストロとピッチーニにゴールを浴び、味方の反撃も実らなかったため、デビュー戦を白星で飾ることはできませんでしたっけ。ただ、彼らはマドリッドの先輩たちと違い、すでにコパの重荷からは解放されているため、次の試合は土曜のアスレティック戦。 ▽世間の目がコパに向いているミッドウィークを心おきなく練習に費やせますし、相手は水曜にバルサとのコパ16強2ndレグ、しかも1stレグで2-1と勝利しているため、突破を決めようとカンプ・ノウで全精力を使い果たすはずですから、ホームで彼らを迎え撃つレガネスにも勝つチャンスはあるかも。何せ、現在16位で降格圏の外にいる彼らとはいえ、勝ち点差は4と、それ程余裕がある訳ではありませんからね。昨年中はブタルケで1勝しかできず、初のリーガ1部の晴れ舞台に張り切って応援に駆けつけているファンをあまり喜ばせてあげられなかったのも気の毒ですし、この新しい年は何とか運気が変ってくれるといいですよね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.01.10 12:30 Tue
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【原ゆみこのマドリッド】忙しい月が始まった…

▽「主力が揃い踏みすればいいってもんでもないらしい」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日。コパ・デル・レイ16強対戦1stレグの結果を眺めていた時のことでした。いやあ、ようやく2週間のクリスマス休暇が終わり、年明け最初の試合ではどのチームの選手も体力気力が十分に回復。元気満々で挑むものと思ったんですけどね。意外だったのは、年末最後のコパ32強対戦2ndレグ前からお休み入りしていたMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)プラス、ピケを並べて、サン・マメスでアスレティックと対戦したバルサで、ラウール・ガルシアとイトゥラスペの退場で9人となった相手にアドゥリス、ウィリアムスに先制された2点を最後まで返せず。メッシのFKゴールによる1点だけで、2-1と負けてしまうとは一体、どうしたことしょう。 ▽それと対照的だったのはレアル・マドリーで、長期離脱中のベイルはともかく、ジダン監督は元気なBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)のメンバーも温存。こちらはライバルが現在、リーガ3位と好調なセビージャですし、去年の公式戦は12月18日のクラブW杯決勝で終了。そこから即休暇入りと、他のチームより日数が空いていたため、titular(ティトゥラル/レギュラー)を並べても全然、おかしくはなかったんですが、前線をsuplente(スプレンテ/控え)だけで構成してもまったく差し障りがないのが、今のマドリーの凄いところかと。 ▽ええ、この結果なら、来週の2ndレグでも主力は次の週末、しかもそれがまた、サンチェス・ピスファンでのセビージャ戦というのは皮肉ですが、リーガの試合に向けてお休みさせることができますし、今週末の彼らは降格圏19位にいるグラナダと対戦ですからね。となると、昨季バルサが作ったスペイン勢の公式戦無敗記録39試合を抜いても、まだ当分、記録更新となりそうですが、もしかしたら、まだ対戦相手がわからないコパの準々決勝が山場になる? うーん、と言ってもまだ突破が確実そうなのはマドリー以外、1stレグでボロ暫定監督率いるバレンシアに1-4で勝ったセルタ、オサスナを0-3で破ってカパロス監督の解任を引き起こしたエイバルぐらいなんですけどね。ここにバルサとアトレティコが混じれるかは来週、ミッドウィークの試合を待たないといけないんですが…。 ▽え、それでもアトレティコはラス・パルマス戦の1stレグにベストメンバーを並べて、そこそこ満足いく結果を出しただろうって? まあ、その通りで、火曜日の一戦では24分にベルサリコのクロスを敵DFにクリアされたボールをコケがシュート、混雑したエリア内を通り抜けて決まった1点で先制。50分にはそのコケが起点となって、センターから放ったロングパスがブルサリコに届き、そのクロスをガメイロ、グリーズマンが頭で繋いで2点目を挙げてくれます。コケも後で「Nos ha venido muy bien este paron, a mi y a todos, para descansar/ノス・ア・ベニードー・ムイ・ビエン・エステ・パロン、ア・ミー・イ・ア・トードス、パラ・デスカンサール(ボクにも皆にも休息を取るのに、このお休みはとても良かった)」と言っていたように、これでようやく、去年の11月23日から続くグリーズマンのゴール日照りが解消されたのはありがたかったんですが、中にはガメイロのように相変わらず、チャンスをムダにし続けているFWもいたのはちょっと心配だったかと。 ▽それでも2週間前のリーガでの対戦同様、相手が「al final toda esa posesion no la hemos convertido en acciones de peligro/アル・フィナウ・トーダ・エサ・ポセシオン・ノー・ラ・エモス・コンベルティードー・エン・アクシオネス・デ・ペリグロ(結局、このボールポゼッションの全てをウチは敵に危険なプレーに繋げられなかった)」(ステイン監督)ため、前回よりは少しだけ進歩した0-2で勝利を収めたアトレティコでしたが、点を取った後もあまり気を緩めずに、「El equipo ha vuelto a ser solido, intenso/エル・エキポ・ア・ブエルトー・ア・セル・ソリドー、インテンソ(チームに堅固さとプレーの激しさが戻った)」(フィリペ・ルイス)のは褒めてあげないといけません。 ▽実際、昨年のコパ32強対決ギフエロ戦2ndレグや12月30日のサウジアラビアのアル・イテハドとの親善試合から、シメオネ監督が始めたファンフランを右中盤に上げ、右SBのブルサリコと併用、CBヒメネスの守備的ボランチとしての起用といった実験的布陣も上手くいっているようですしね。この調子でグリーズマンにゴールが戻ってきてくれれば、とりあえず来週火曜日の16強対戦2ndレグは無事乗り切れる? ちなみにそんなアトレティコは翌水曜日にビセンテ・カルデロンで公開練習を実施。スタンドに駆けつけた5000人のファンに胸を張って新年の挨拶をしたんですが、この週末には再び、厳しい現実を突きつけられることに。 ▽ええ、クリスマス期間は努めて忘れるようにしていましたが、現在彼らのリーガ順位はヨーロッパリーグ出場権しかもらえない6位。首位のお隣さんとは消化試合が1つ多い状態で勝ち点9差、2位のバルサとも6差ですからね。この土曜日午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのエイバル戦でも総力を挙げて、勝ち点3を獲っていかないといけないんですが、今のところ、まだアキレス腱を痛めて別メニューで調整しているカラスコは復帰できるか不明のよう。その他ではガメイロの代わりにフェルナンド・トーレスが先発CFとして入りそうですが、相手はコパのオサスナ戦でローテーションをかけているだけに、体力満々で出てくるだろうペドロ・レオンや乾貴士選手には気をつけないといけませんよね。 ▽そして水曜日の夜にはマドリーがサンティアゴ・ベルナベウにセビージャを迎えたんですが、最初にお話ししたようにロナウドは招集外、ベンゼマもベンチで待機させて、ジダン監督はモラタ、ハメス・ロドリゲス、アセンシオの3人のアタッカーで試合をスタート。それでも先制点を挙げるのに大して時間はかからず、開始10分にはカゼミロがエリア前でエンゾンジから取り戻したボールをハメスがゴール左端に決めて、あっさりゴールを奪ったかと思えば、その4分後にはモドリッチのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)がポストを直撃する惜しいチャンスも生まれることに。 ▽更にこの日は今週になって左ふくらはぎを痛めたペペに加え、セルヒオ・ラモスもクラブW杯決勝こそ、無理をして出場したものの、その前から痛めていた筋肉の負傷のため、休んでいたんですが、29分にはクロースのCKをヴァランが頭で叩き込み、攻守両面でキャプテンの不在を感じさせない働きをしてくれたとなれば、続く絶好のチャンスでモラタがGKセルヒオ・リコに弾かれてしまったとて一体、何の不足がある? ▽逆に「En el primer tiempo fuimos sorprendidos por la intensa presión del Madrid/エン・エル・プリメール・ティンポ・フイモス・ソルプレンディードス・ポル・ラ・インテンサ・プレシオン・デル・マドリッド(前半、ウチはマドリーの強烈なプレスに驚かされた)」(サンパオリ監督)というセビージャはイボラやビトロのシュートが決まらず、ハーフタイム直前にはマリアーノがモドリッチをエリア内で倒してPKまで献上。これもハメスが決めて、3-0としたため、ジダン監督曰く、「Hicimos un partido casi perfecto, 45 minutos espectaculares/イシモス・ウン・パルティードー・カシー・ペルフェクトー、クアレンタイシンコ・ミヌートス・エスペクタクラーレス(ほぼ完ぺきな試合をした。スペクタクルな45分だった)」前半で、ほとんど勝負がついてしまいましたっけ。 ▽え、前線にはベイルがケガをして以来、代役を務めていたルーカス・バルケスも負傷していたため、あまりプレー時間の多い選手はいなかったものの、これは中盤をクロース、モドリッチ、カゼミロのベストトリオで固めたジダン監督の作戦勝ちだったんじゃないかって? そうですね、結局、セビージャは後半もチャンスは作ったものの点を取ることはできず、試合はそのままのスコアで終わったんですが、まだ年明け1戦目のため、「Hicimos uno de los mejores partidos del año/イシモス・ウノ・デ・ロス・メホーレス・パルティードス・デル・アーニョ(今年最高の試合の1つだった)」(カゼミロ)というのはちょっと気が早いような気がしますが、やはりこの3人が揃っていいプレーをしてくれたのは大きかったかと。 ▽ただ、この一戦で誰よりアピールに成功したのはハメスで、いえ、当人がピッチに出る機会のなかったクラブW杯決勝後に移籍を仄めかすようなコメントをしたため、元から注目の的ではあったんですけどね。それでもdoblete(ドブレテ/2得点のこと)で気分を良くしたか、試合後には「No, no, me quedo, me quedo/ノー、メ・ケド(いや、自分は残る)」とこの冬の退団を強く否定。「今のボクはいい感じだし、誰だって悪い時を過ごすことはあるさ。Pero es un año nuevo y una nueva vida/ペロ・エス・ウン・アーニョ・ヌエボ・イ・ウナ・ヌエバ・ビダ(でも今は新しい年だし、新しい人生だ)」とのことですが、そうですね。ジダン監督のローテーション政策を見る限り、コパの続く1月はプレー機会が増えそうですし、ハメスも不満を溜めることはないかも。 ▽それも土曜日午後1時(日本時間午後9時)からのグラナダ戦から、先発復帰を指揮官に保証されたロナウドやベンゼマ、すでにボールを使った練習を始めているルーカス・バルケスらが戻って来て、再びベンチ生活が続くとまた、その気がどう変わるかわからないんですが、FIFA処分のせいでこの冬の移籍市場では選手の新規登録ができないマドリーですからね。これから負傷者が増える可能性もありますし、まだ先の長いシーズン後半、今いる選手たちにはやる気を失わずに続けてもらうことが肝心。そういう点においても上手くチームを操縦しているジダン監督の手腕は評価されるべきですよね。 ▽そして新弟分のレガネスがベティスとアウェイ戦で日曜日に対戦して、マドリッド勢の年明け最初のリーガ戦が終わるんですが、コパでは32強対戦でバレンシアに敗退して、これが今年最初の試合となるアシエル・ガリターノ監督のチームには新年早々、新しいGKが加わるという朗報が。ええ、去年最後のエイバル戦でエレリンが退場となり、このベティス戦に出られないのがずっと懸念されていたんですが、正GKセランテスの長期離脱でアスレティックから緊急レンタルとなった彼同様、アルゼンチン1部リーグのオリンポ・デ・バイア・ブランカから加わった31歳のチャンパンもこの週末、到着早々のデビューとなるようです。現在、16位とまだ降格圏に近いレガネスですが、この試合に勝てば、14位の相手を追い抜くことも可能ですからね。幸先いい1年を始めるためにも白星を掴めるといいんですが…。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2017.01.07 08:45 Sat
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【六川亨の日本サッカー見聞録】選手権の持つ役割

▽全国高校選手権は1月5日に準々決勝4試合が行われ、夏冬連覇を逃した市立船橋に続き、大会連覇を狙った東福岡も敗れる波乱があった。ベスト4に駒を進めたのは東福岡を破った東海大仰星、佐野日大、青森山田、前橋育英で、どこが勝っても初優勝となる。何が起こるか分からない一発勝負のトーナメントならではのベスト4と言えるだろう。 ▽今大会では、卒業後に川崎Fへ加入する桐光学園の左SBタビナス・ジェファーソンや、正智深谷のベスト8進出に貢献したオナイウ阿道(千葉から浦和へ移籍)の弟の、オナイウ情滋らハーフの選手が大会を彩った。タビナス・ジェファーソンはガーナ人の父とフィリピン人の母、オナイウ兄弟はナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた。しかし、高校サッカー通の知人によると、ハーフの選手が活躍するのも今年で最後だろうと予測する。 ▽それというのも、彼らの両親のいずれかは、日本経済がバブル絶頂期に日本に仕事を求めて来たものの、その後はバブル崩壊により日本を訪れる機会が減ったからだという。バブルがスタートしたのは1986年と言われ、1985年当時は1ドル250円だったのが、同年のプラザ合意により急激な円高が進み、1988年には1ドル120円まで高騰した。その後1993年頃からバブル景気に陰りが見られ、1998年には大手金融機関が破たんするなどバブル景気は崩壊した。 ▽イラン人の父と日本人の母の間に生まれた大リーガーのダルビッシュ有は1986年生まれ。ジャマイカ人の父と日本人の母の間に生まれた鈴木武蔵は1994年生まれだし、オナイウ阿道は1995年生まれ、タビナス・ジェファーソンは1998年生まれと、偶然の一致かもしれないが、知人の指摘にも一理あるようだ。 ▽そういえば、2005年にドイツW杯予選でイランのテヘランを訪れた時のことだった。アリ・ダエイの兄が経営しているサッカーショップの近くにある食料品店で買い物をした際、店主は10年間、千葉県の館山市で働いてお金を貯めたと流暢な日本語で話していた。イスラム教徒には禁じられているお酒と女性も楽しんだそうだ。またタクシーの運転手は宇都宮で働いたがお金を貯めることはできなかったと、こちらも日本語で話しかけてきたし、街中で出会ったイラン人男性は神奈川県の追浜で働いていたという。いずれもバブル最盛期に日本へ仕事を求めて来た人々だ。 ▽前述の鈴木武蔵やオナイウ阿道と情滋、タビナス・ジェファーソンは日本国籍を取得し、すでに鈴木とオナイウ阿道はU-23日本代表に選出され、近い将来は日本代表を目指している。プロへの登竜門――これも高校選手権の持つ役割の1つであり、彼らの活躍が、後進への道を開くことにつながるよう願わずにはいられない。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.01.05 20:00 Thu
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【倉井史也のJリーグ】“念頭”ですから今一番願ってることを発表しちゃいます?! の巻

▽え~もう仕事が始まってから時間経ってますけどね。せめて今週中くらいはお正月気分でいたいじゃないですか。だって他のサービス業の人たちと同じで、まだ全然正月休み取ってないんですもん。このまま行ったら正月セールが終わったころにお休み? ▽ま、そんなボヤキから始まっちゃいましたけど、とりあえず新年おめでとうございます。うまくいけばね、今年は1ステージ制に戻って、豊富な資金を使ってリーグが盛り上がる年だし、うまくいけばワールドカップ出場も決まるし、12月に開催される東アジアサッカー選手権では新戦力も台頭してくるし。いいことづくめの年になるはずですよ。 ▽そんな明るい年ですから一つ、明るい結末を願っていることを! それはラモス瑠偉さんの回復! 去年12月29日に脳溢血で倒れたラモスさんですが、早く元通りに復帰してほしい! ってことです! ▽なんか、気合いと根性の人のように思われてますけど、実際の指導を見に行ったらそんなことなかったんですよ。割と丁寧? というか斬新? な考え方も多くて。起用方法も各ポジションに3人いたら、順番を付けていて、決定的なミスをしたら1番の選手が外されて2番、2番だったら3番、みたいな。 ▽この3番目にチャンスがあるって実は重要で、普通は1番から2番になって、また1番に戻る感じで、3番の若手にはなかなかチャンスが来ないんです。だけどラモスさんのチームでは3番の選手が一生懸命やってたら出場機会が来るっていう。 ▽キャラクターが濃いと、どうしてもそっちの印象が強くなっちゃうんですけど、しっかり練習見てるとおもしろいという、そんな監督やってる姿をまた見せてほしいなと。 ▽ただ、一つあるとすると、選手に気を遣いすぎ。そんな気の優しいところがストレスになったんじゃないかと思うんです。 ▽前園真聖さんも謹慎期間中にラモスさんが仕事を代わってくれて、しかもその報酬を渡してくれたとテレビで言ってました。けど、ラモスさんがそうやって人のフォローをしたという話、僕が知ってるだけでもまだまだ複数ありますからね。 ▽19歳で日本に来て以来、ずっと忙しかったでしょうから、ここでちょっと休んでいただいて。で、この明るい未来が待ってそうな年に、ぜひ復活してください!! ▽ということで、今年もよろしくお願いします。はい。 【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2017.01.05 17:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】初夢は「伝統の一騎打ち」

▽昨年末、本稿から数えて3本前の末尾で、柄にもなく(?)アーセナルへの“希望”に触れた。開幕戦でリヴァプールに敗れて以来、あの「インヴィンシブル(=無敵)2003-2004(無敗優勝)」を彷彿とさせる快進撃で「これは」と思わせ、ところが12月に入ってエヴァートン、マン・シティーに連敗・・・・つまり、柄にもなく(繰り返す)同情してしまったガナーズへのエール。そして2016年最後のゲームを1-0(対ウェスト・ブロム)で締めくくり、元日にはクリスタル・パレスをきれいに片づけたそのとき、筆者はついひとりごちたものだった。試練(対エヴァートン、シティーの連敗)は絶妙のタイミングで訪れたのかもしれない、ここからアーセナルはトップギアを入れて突っ走る、そのためには、ホーム連戦を乗り切った今、中一日で迎えるアウェイのボーンマス戦こそが、いずれ今シーズンの軌跡を振り返るときのハイライトになるはずだ、と。ただし、その前日(2日)、アーセン・ヴェンゲルがつぶやいた“愚痴”に一瞬、不吉なものを感じてしまったのだが。 ▽「過去20年間で最も不公平なクリスマス期間だった。大金を投じている衛星放送テレビに(スケジュールをいじる)特権があるのは仕方がない。が、これほど(チームによってゲームとゲームの間に差にばらつきがあるのは)とはさすがにひどい」・・・・。「中一日」がよほど腹に据えかねたのだろうか。確かに、ホームのボーンマスは上位のライバルたちに匹敵する厄介な相手だ。多分、その辺りをぜ~んぶひっくるめての“アラーム信号”だったのだろう。フォックスとプレミアリーグに対する嫌味に“託して”、ボーンマス戦に臨むプレーヤーたちへの「ぬかるなよ!」という警告と激励ーーー。果たして、三が日の浮ついた気分を振り払いながら、その首尾のほどを見届けようと勇んでいたところが・・・・あれは逆効果だったのかと、呆れ半分で気が沈むばかり。開始から1時間が経ってスコアは3-0、ホームサイド快勝、いや圧勝で、ガナーズの命運も・・・・と、実はそのとき、モニタースクリーンの前を離れ、どうしようか、このまま一寝入りしてしまおうか、“仕事”はそれから気を取り直して筋立てを練り直すのがよかろう、とまで思い悩んだのである。 ▽ひとまず、お湯を沸かしてお茶を淹れている間、ふとぼんやりモニターに目をやる・・・・70分、サンチェスのダイヴィングヘダーが決まって「おやっ?」と、マグカップ片手に座り直す・・・・5分後、60分過ぎに交代でピッチに出たルーカス・ペレスが左足のボレーで1点差ーーー「これはひょっとしたら?」そして・・・・終了間際、タイムにして90+2分、ジルーのヘディングゴールが炸裂して・・・・さすがに大逆転とまではいかなかったが、これはもう勝利に等しい勝ち点1をもぎ取ってみせたのだ。ボーンマスのサイモン・フランシスが一発レッドで退場(63分:キッチンでお茶の用意をしていて見逃した)、一人多いアドバンテージも利いたようだった。3点目献上までのちぐはぐさと生ぬるさは十分に反省の余地はあろうが、逆境を跳ね返したこの底力は今後にも大いに糧として生きてくるだろう。かくて、昨年末の予感(予言?)も息を吹き返した。格別ガナーズファンでもない筆者が覚えた、そんな衝動が“実を結ぶ”保証はまだどこにもないが、チェルシーがこのまま負けないという保証もない。ライバルはざっと5チーム。前途はつとに厳しい。しかし・・・・。 ▽少なくとも、プレミア創設以来、最も激烈なタイトルレースが繰り広げられることは必至。そして、アーセナルが最後まで食いついて希望をつなぐ図も、今なら描けそうだ。プレミアファンにとってはなんと喜ばしい、すばらしい近未来図ではないか。チャンピオンズリーグ、FAおよびリーグカップの「あるなし」はこの際、勘定に入らない、いや、入れたくない。願わくば、このまま6強が僅差のまま最後の、そう、残り5試合前後まで鎬を削っていって欲しい。それでこそ、最後に笑うどこかの価値も輝き渡る。そして、今、視界を過るその勝者は、あくまでもただの直感に過ぎないが、赤と白の染め分けシャツのような気がするのだ。おわかりいただけると思う。あの「インヴィンシブル」に導いた頃から、変わっていたいのは、アーセン・ヴェンゲルただ一人なのだから。贔屓目は一切抜きの、一種の初夢のようなものだと思っていただきたい。それに、なぜか最後に立ちはだかる最大の強敵は「インヴィンシブル」時代以前からの宿敵、6連勝中のユナイテッドになる予感もする。6強のうちどこが優勝したってかまわない。が、こうなったら最後の最後で“オールド・ライバル”同士の歴史的一騎打ちを見てみたい。さて、この初夢、当たるかな?【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.01.04 09:45 Wed
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【原ゆみこのマドリッド】ようやく休暇が終わった…

▽「まったく年の瀬だっていうのに忙しい」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、バレンシのプランデッリ監督辞任の報を知った時のことでした。いやあ、クリスマスのparon(パロン/休止期間)が始まって早々にはマラガのファンデ・ラモス監督が、コパ・デル・レイ32強対戦で2部のコルドバに2連敗、総合スコア3-6で敗退してしまったせいだったんでしょうかね。いきなりアル・タニ会長からツィッターで別れを告げられた後、この木曜には後任が同監督のスタッフを務めていたマラガOBでもある”ガトー”・ロメロ氏に決まったというニュースにも驚かされたんですけどね。 ▽予算的に期待通りの補強が叶わないと見て、ピーター・リン会長に辞表を出したプランデッリ監督の方はいよいよ、バケーションも終わってチームが練習を再開する直前の話だったとなれば、年明けは心機一転、レガネスを倒して進出したコパ・デル・レイ16強のセルタ戦1stレグも3日には控えていますしね。現在降格圏落ちをギリギリで免れているリーガ順位も改善しようと意気込んで、パテルナ(バレンシア郊外にある練習場)に出勤するつもりだった選手たちもどんなにショックだったことか。 ▽いえ、今季、4節でアジェスタラン監督が解任された時も中継ぎ役を務め、今回も後釜が決まるまで、緊急出動することになった本職、チーム付き役員のボロ監督は前回、担当した3試合を2勝1敗で乗り切り、過去にも同様の状況で常にいい成績を残しているため、再び彼が戻ってきてくれて、ファンがホッとしている面もあるはあるんですけどね。 ▽ただ、今季は早くも2度目の監督交代となったバレンシアは極端としても、グラナダ(パコ・ヘメスからルーカス・アルカラス)、オサスナ(エンリケ・マルティンからカパロス)、ベティス(グスアボ・ポジェからビクトル・サンチェス)、そしてマラガとまだシーズンも折り返していないのに、指揮官の首をすげ替えるチームはすでに5つ越え。私もようやくTV映像などで顔なじみなった頃、いつの間にか違う監督になっているのには当惑させられたりもしたものですが、未だにグラナダやオサスナが降格圏から脱出できてないように、上が代わったとて、選手たちは同じですし、なかなか即成績向上という訳にはいかないのは気の毒ですよね。 ▽まあ、そんなことはともかく、今週はマドリッド勢も休暇が終わり、火曜からは先陣を切ってレアル・マドリーがバルデベバス(バラハス空港の近く)でセッションをスタート。バケーション前最後の試合が18日のクラブW杯決勝鹿島アントラーズ戦と、その次のミッドウィークにコパ32強対戦2ndレグを戦ったアトレティコやレガネスより早かったためですが、選手たちの中には、足首の手術をして、復帰予定が2月のベイルは当然としても、ペペやルーカス・バスケス、コバチッチら、まだ休暇前からの負傷が治りきっていないメンバーもいたとか。 ▽とりわけ後者2人は全治に2週間程かかるそうで、年明け4日の水曜日午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)、リーガの上位陣対決となったセビージャとのコパ16強対決1stレグには間に合わないのが確定。まあ、といってもベイルの代わりのアタッカーにはイスコやアセンシオ、ハメス・ロドリゲスら、中盤も今はモドリッチ、クロース、カセミロが戻っているため、人材には事欠いていないマドリーですからね。2016年はCLとユーロ大会で優勝、バロンドールも受賞して最高の年になったと認めているクリスチアーノ・ロナウドも、自身のインスタグラムにクリスマソングをセミヌードで歌う姿を掲載(https://www.instagram.com/p/BOp9PdXAF9R/?taken-by=cristiano&hl=ja)したりして、相変わらずご機嫌なようですし、ジダン監督の無敗記録更新にはそれ程、支障ないような。 ▽ちなみに金曜の彼らは恒例のクリスマス期間に行う年1回の公開練習を実施して、バルデベバスの敷地内にあるアルフレド・ディ・ステファノ・スタジアムに5000人のソシオ(協賛会員)を招待。ピッチにジダン監督が獲得した3つのトロフィー(CL、UEFAスーパーカップ、クラブW杯)を展示したり、選手たちもスタンドにボールを投げ込むなど、ファンサービスに努めていたようですが、セッション後は全員がサンティアゴ・ベルナベウに移動すると、今季は日本行きがあったせいでしょうかね。例年より遅めのComida de Navidad(コミーダ・デ・ナビダッド/クリスマス昼食会)に参加することに。 ▽そしてクラブ幹部、マドリーのバスケットチームメンバーらも参加したパルコ(貴賓席)前ホールでのランチの後にはジダン監督、ラソ監督を始め、各選手が市内の病院を訪問し、病気の子供たちにプレゼントを配っていましたが、練習は大晦日も続行。ここ毎年そうなんですが、年明けすぐに試合があるため、元旦こそお休みしても、それ以外はずっとトレーニングというのは、コパを勝ち上がっていくと、1月中全てのミッドウィークが潰れるハードスケジュールに備えるためとはいえ、本当に大変ですよね。 ▽え、それで水曜夕方からマハダオンダ(マドリッド近郊)で練習を始めたアトレティコの方は何をやっているのかって?実はこちらは早くも試合をしていて、いえ、その28日はDia de Inocente(ディア・デ・イノセンテ/スペインのエイプリルフール)ということで、グリースマンがRNE(スペイン国営ラジオ)のドッキリ番組の犠牲者になったなんてこともあったんですけどね。おまけにアトレティコはマドリッド州政府のinocentada(イノセンターダ/嘘)の対象にもされ、「新スタジアムへの引っ越し手続き認定が間に合わず、来季はサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーと交代でホームゲームを行う」なんて公告がまことしやかにアップされていたりしたんですが、どうやらワンダ・メトロポリターノ・スタジアムから一番近いメトロ(地下鉄)の駅、7番線のエスタディオ・オリンピコ駅がエスタディオ・メトロポリターノ駅に8月から改名されるというのは本当のよう。 ▽それはともかく、翌木曜にも練習を続けた彼らは夜にはサウジアラビアに向けて出発。ジッダのキング・アブドゥラー・スタジアムを満員にして、創設90周年記念を祝うアル・イテハドと金曜に親善試合を行ったんですが、この休み明けの足慣らしではチームのいいところと悪いところがくっきり現れてしまうことに。 ▽ええ、バケーション入り直前のコパ、ギフエロ(2部B)戦に続き、再び右の中盤に入ったファンフランが前半23分、ガビのループパスを右足外側で浮かせてシュート。2試合連続のゴールで先制点を挙げてくれたのは、「Ha jugado toda la vida ahí/ア・フガードー・トーダ・ラ・ビダ・アイー(彼はずっとあそこでプレーしていた)し、常に攻撃的にいい選択肢を与えてくれる。今のブルサリコの好調と共にウチの右サイドに新しい可能性が生まれた」とシメオネ監督が言う通りなんですが、その1点で安心してしまうという、ここ最近のチームの悪癖は変わらず。 ▽うーん、年明けの連戦を鑑みて、ゴディンをこの遠征に連れて来なかったのも悪かったのかもしれませんけどね。前半終了直前、ケガから復帰したフィリペ・ルイスを含めて、ヒメネス、サビッチのCBコンビが敵に後れを取り、モハムド、アカイチに連続ゴールを許してしまうんですから、たまったもんじゃありません。それでも6人を入れ替えた後半には、今度はポジションをボランチに移したヒメネスが発奮。18分にはエリア内で敵のハンドを誘い、フェルナンド・トーレスのPKゴールのお膳立てをしたかと思いきや、26分にはコレアの放ったFKに頭で合わせ、とうとう逆転ゴールを奪ってくれたとなれば、シメオネ監督の実験も悪い結果ばかりではなかった? ▽結局、これで2-3として勝ったアトレティコでしたが、気になるのはこの日もグリースマンのゴールは見られなかったことで、もう無得点が2カ月近く続いていますからね。年明けには運気が変わって、また以前のようにガンガン、ゴールを入れてくれるようになるといいんですが、こればっかりはわかないのが辛いところかと。試合後、すぐ帰りの飛行機に乗ったチームは5時間のフライトを経て、早朝5時にバラハス空港に到着。大晦日も練習して、3日午後9時45分(日本時間翌午前5時45分)からのコパ16強対決、アウェイでのラス・パルマス戦1stレグに備えることになりますが、ジッダといい、カナリア諸島といい、暖かいところでの試合が続くのは、選手たちもちょっと嬉しいかもしれませんね。 ▽そして最後にコパの重荷から逃げることがマドリッドの新弟分、レガネスなんですが、こちらは年明け最初の試合が8日のリーガ、ベティス戦ということで、練習再開も木曜と遅め。ただその間もフロントは活発に動いていたようで、金曜にはオリンピアコスからレンタルで28歳のギリシャ人CBシオバスを獲得しています。更にGKの補強にも動いているようで、何せヒザの靭帯断裂で今季絶望となってしまった正GKセランテスの代わりに、12月にはアスレティックから来てくれたエレリンが年内最終節のエイバル戦で退場。ベティス戦は出場停止となってしまうばかりか、その次のアスレティック戦も契約条項でプレーできないんですよ。 ▽そのため、控えがリーガ1部初体験のバリオスだけでは不安ということでしょうが、まあ、それを言ったら、昇格組のレガネスだけにキリがないですからね。ここまでの戦いを見る限り、FWや攻撃的MFを増やして、課題の得点力も上げておきたいところですが、予算も限られているクラブだけにどうなることやら。幸い、年越えは降格圏から嬉しい勝ち点差4でできたことですし、何とかこのまま残留を勝ち取ってもらいたいものですが、2017年は彼らにとって、果たしてどんな年になるのでしょうか。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.01.01 09:44 Sun
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【東本貢司のFCUK!】爆買いの魔の手を振り払え

▽なるほど中国人は爆買いがお好きなようだ。いや、こちらの爆買いが真正か。さて、湯水のごとく湧き出ずるカネまたカネの出所はいずこか。かつて(それとも今でも?)レアル・マドリードはマドリード市の“ヒモつき”だと言われたものだが、ひょっとしてこちらの方にも“同じ事情”が当てはまるのだろうか。さんざ気を持たせ迷いに迷った(ふり?)カルロス・テヴェスも、ついにその軍門に下った。上海申花がクビを縦に振った移籍金総額こそ、オスカー(25歳)の6000万ポンドに遠く及ばない4000万だが、テヴェス自身の懐には「週給で31万ポンド」が入り、一気に(たぶん)世界最高給取りになる見込み。ふ~ん、上海ファンならいざ知らず、欲の張った(失礼)チャイニーズ小市民がはたして屈託もなくテヴェスのプレーにわくわくするものだろうか、などと勝手な心配をしてしまう。いや、そんなことよりこんな途方もない“価格逆破壊”がもたらす害の方が・・・・。 ▽習近平はことのほかフットボールがお好きなんだそうだ。国庫からの援助のあるなしは脇においても、一説には「法外な免税措置」でバックアップしているのは間違いないのだとか。どうやら本気で「世界最高峰のリーグ」を目指しているらしい。なにせ、イングランドきってのレフェリー、マーク・クラッテンバーグの引き抜きまで画策しているというのだから。上海のボスはグル・ポジェ、スコラーリにエリクソンにカンナヴァーロに、と戦力充実のマグネット工作は着々と進んでいる。こういう状況は当然、来月解禁になるヨーロッパの移籍市場にも少なからず影響する。“彼ら”は「いくらでも出す」の看板を掲げて、殴り込み同然に割り込んでくる。公平に見て抗いようがない。当のプレーヤーも売り手側のクラブも潤うレベルが格段に上がる。ゆえに、逡巡する。ライバルチームに獲られるくらいなら、という思惑もちらつく。唯一の防波堤はプレーヤー個々のプライド。MLSならまだしもと都落ちを頑として拒否するプロフェッショナルの自負がある限りは・・・・。 ▽しかし、真の問題点は、本来の地に足の着いたチーム作り、戦力要請が、さらにしにくくなってしまうことである。シーズン半ばの補強というものは、原則、即戦力の確保だが、そこに中国からの魔の手を念頭に、必然的にその新戦力には事実上レギュラーを保証する“脅迫観念”が芽生える。かといって「明日のスター候補」を即起用できる台所事情など、それがリーグ優勝争いをしているチームなら、なおさら考えにくい。結局、せっかく獲得してもローンに出す羽目になり、必然的に当人が低いレベルで実戦を積むうちに“逸材度”もあいまいになって、気が付けばプレミア昇格を目指すチームの主力になっていたりする。どだい、プレーヤーというものはクラブの思惑通りには動いてくれないものだ。例えば、夏に勇んで入団したまではいいが、クリスマスを迎える頃に監督が解任され、新任に冷遇されなどした日には、それこそさっさと割り切って、中国マネーでも何でもなびいてしまうだろう。そんなことにはならないように慎重な補強戦略を立てるはずなのだが・・・・。 ▽そこであえて提案させてもらうならば、現在“ぎりぎり”の6位(ユナイテッド)までの上位陣は、この1月の補強にこだわらない方がいいかもしれない。一応は各チームが抱える“弱点”のほぼ一本釣りに狙いを絞り、獲れなければそれでよし。現有戦力への信頼のメッセージにもなるはずだし、主力の故障を心配したところで何も始まらない。そもそもチームにうまく溶け込めるかどうかわからない新顔を抜擢しても、プラスに働く可能性は五分、いや三分以下。所詮はギャンブルなのだ。折しも、ジョゼ・モウリーニョは狙い定めたリンドロフ(ベンフィカ)の獲得を撤回した。復活したジョーンズとロホのCBコンビが思いの外好調で、わざわざ波風を立てる補強は理も利もないと判断したからだという。英断だと思う。その他、コンテ、クロップ、ペップ、ヴェンゲル、ポチェッティーノにも動く気配は現時点で見えない。ネタが欲しいメディアが周りで騒いでいるだけだ。仮に動いても、ほとんど競合しない筋、手持ちスカウトの目を信じた上でのものになるだろう。 ▽それもこれも、運営上層部が各監督にとことん信頼を置いているかどうかにかかってくる。オーナーサイド、それもイングリッシュフットボールをよく理解していないビジネス志向寄りがしゃしゃり出てくると、それ自体が問題の種になってしまう。このほど、スウォンジーがボブ・ブラッドリーをたったの85日で解任してしまった件も、まさにその悪例。同胞の元アメリカ代表監督を盲目的に信じようとしたアメリカ人オーナーグループに、何らヴィジョンがなかったことをさらけ出してしまった。外資オーナーシップブームがここまで進んでも、教訓が生かされない恐れはこの先も十分にある。是非、この一件を教訓にしてもらいたいものである。というわけで2016年はここまで。明年もどうぞよろしく。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.30 10:59 Fri
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【倉井史也のJリーグ】選手にこんなツイートを飛ばすのは止めよう?! の巻

▽はいはい、サーセン、サーセンね。先週、「決勝は横浜FM vs FC東京だ!」って原稿を出した瞬間、担当大編集者様から「年間勝ち点1~6位を全て外して穴狙いですね(笑) 。ブックメーカーなら、なかなか良い配当付きそうです(笑) 。」と、二回も笑ったお返事をいただきましたよ。でもね、みなさん憶えてますか。先週の原稿の一番最後に「来週は力の限り謝りますんで」と力強く書いていたことを!どうだ! ▽ってことでさ、ま、この件は水に流しましょうか。結局、決勝のカードが鹿島vs川崎っていうベスト8に残ったリーグ戦上位2チームだったけど、他のチームのみんな……ちょっとだけだけど夢を見たよね……。 ▽でまぁ決勝のドラマっていうか因縁というか、これがチャンピオンシップの第1戦にまで戻るわけで、引き分けでもよかった川崎が鹿島に0-1で負けて、その後鹿島の快進撃が始まったわけですよ。逆に言うと川崎にとっては悪夢の瞬間。ここで払拭しないと、またも自分たちで「肝心なところで勝てない川崎」って思い込んじゃいそうな、そんなカードじゃないですか。 ▽でもね、この勝負、また別の一面もあるんです。大宮に押されっぱなしだったけど、セットプレー一発で勝っちゃうなんて、まるで鹿島。そう言えば、川崎って昔から鹿島の選手が移籍してくる先の一つでした。あ、そんな分かりきった話はいらない? ▽だったら、もっと生々しい話を。大宮に勝った後、「今日一番うれしいこと」を語ってくれた選手がいたのです。それは「ACLのプレーオフ進出を免れた」こと。鹿島がすでにACL出場を決めていたので、川崎はこれで繰り上がったのです。代わってプレーオフ進出権を得たのはG大阪。24日の天皇杯準々決勝で負けたけど、さすが長谷川監督、持ってます。 ▽で、なんで川崎が喜ぶかというと、ACL本戦の前にプレーオフがあるから、Jクラブの中で一番始動が早くなるんです。決勝まで戦って、さらにプレーオフだと、マジ遊ぶ暇ないッスからね。 ▽え? もっと生々しい話? ふふふ。実は一部の選手は気付いているのですよ。ACL出場組の次に、調整を急ぐ必要があるチームがあるってことを。それはリーグ開幕の一週間前に開催されるゼロックススーパーカップ出場チーム。リーグ戦優勝の鹿島はもう決まりです。天皇杯決勝で川崎が勝てば、川崎が対戦相手になります。 ▽では川崎が負けた場合は? 昔は天皇杯決勝で負けたチームでした。ですが今は違います。リーグ戦2位の浦和になるのです。ここ、試験に出るので受験生は憶えておくように。 ▽ということはですよ、川崎の選手は決勝で負けるとちょっとノンビリ出来るんです。どうです? 一週間、オフが延びるって心地よい響きでしょ? ああ、何という甘い敗戦への誘(いざな)い。……ダメですよ、川崎の選手にこんな情報のツイート飛ばしちゃ。ええ、マジで。 ▽ではみなさま、よいお年を!【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.12.29 21:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】天皇杯決勝は好対称なチームの激突に

▽第96回天皇杯決勝は、6大会ぶり5度目の優勝を狙う鹿島と、初のファイナリストになった川崎Fとの顔合わせになった。準決勝の鹿島対横浜FM、川崎F対大宮の準決勝2試合は、いずれも後者が試合の主導権を握ったものの、勝ち残ったのは前者という皮肉な結果になった。 ▽横浜FMは前半30分過ぎまでに齋藤のドリブル突破などから決定機をつかんだものの、前田のシュートはGK曽ヶ端に阻まれ、富樫のシュートは枠を捉えられずに好機を生かせない。齋藤は鹿島にとって脅威になっていただけに、彼にボールを集めるのは当然の策だが、それを利用するあたり、試合巧者の鹿島らしい。 ▽鹿島は41分に齋藤へのパスをカットした永木から赤崎、柴崎と素早くつなぐカウンターから、最後は土居が頭で押し込んで先制した。横浜FMは後半に中村を投入して反撃を試みるも、後半28分にDF新井がビルドアップのパスを痛恨のミスで永木にプレゼント。これを柴崎、鈴木とつながれて追加点を奪われた。その2分前には金井が同点弾を決めながら、オフサイドの判定で取り消されたのも痛かった。 ▽大宮は今季リーグ5位の躍進につながった攻から守への素早い切り替えと、囲い込む守備で川崎Fにサッカーをやらせなかった。それは大島が投入されても変わらず、ポストを叩いた泉澤のシュートか、フリーにもかかわらずゴール枠を捉えられなかったムルジャのシュートが決まっていれば勝てたかもしれない試合だった。 ▽終了間際に右CKからのこぼれ球を、最後は谷口が押し込んで決勝点としたが、これだけ攻撃に精彩を欠き、何もできない川崎Fを見るのは初めて。それほど、大宮のサッカーは素晴らしかった。 ▽ただ、決勝戦の顔合わせとしては、堅守速攻の鹿島対パスサッカーによる攻撃的な川崎Fという対照的なチーム同士の激突の方が面白いかもしれない。両者はCS準決勝でも対戦し、金崎の決勝ヘッドで鹿島が勝ち進んだが、ボールポゼッションで川崎Fが上回りながらも、決定機の数は互角だった。今シーズンでチームを離れる風間監督とFW大久保が初タイトルを置き土産にできるか。それとも鹿島が天皇杯の優勝回数を伸ばして東京VやG大阪と並ぶのか。決勝戦は元日の14時に吹田スタジアムでキックオフとなる。 ▽最後に個人的なことだが、天皇杯の決勝は大学生の4年間と社会人になってからの36年間、計40年間にわたりスタジアムで観戦・取材してきた。さすがに今回は元日に吹田まで日帰り取材するのは断念して、テレビ観戦の予定だが、改めて国立競技場のロスト感を覚えずにはいられない。 ▽今年のコラムもこれが最後になります。1年間お世話になり、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。それでは良いお正月をお過ごしください。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.29 19:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】「ヴァーディーマスク」大作戦

▽恒例のボクシング・デイは、リヴァプール-ストーク戦、およびサウサンプトン-スパーズ戦(それぞれ、27日、28日に予定)を除く8試合が行われ、各チームの現況からしてほぼ順当な結果を見た。そう、初お目見えのチャンピオンズでは溌剌として申し分のない戦績を残しながら、プレミアではさっぱりのディフェンディングチャンピオン、レスターは、またホームで星を落とした。要のマーレズ、ドリンクウォーターをベンチに置く(いずれも後半交代出場)ショック療法も、復調気味のエヴァートンには通じず、その先制弾はゴールキーパー、ロブレスからのロングフィードをそのまま持ち込んだミラーラスのファインシュートから。つまり、控えキーパーと控えアタッカーのコンビにしてやられたという、レスターファンにとってはため息の出そうな皮肉・・・・。なんとなれば、その“めったにない”一撃が、事実上フォクシーズ(レスターの通称)に引導を渡す象徴になったからだ。それを素直に認めたクラウディオ・ラニエリは「今季は何をやっても上手くいかないね」。 ▽一つ、救いはあった。主軸クリスチャン・フークスの出場停止でチャンスを得た、期待の新人、ベン・チルウェルだ。このオフ、リヴァプールのユルゲン・クロップが獲得に乗り出したほどの逸材で、しかも、その時点ではまだレスターのファーストチーム未体験だった。的確な守備とオーバーラップでキングパワー・スタジアムの観衆も、チルウェルの成長に納得したか、声援が絶えなかった。さて、そのレスターファンだが、ゲーム開始前、スタンドには異様な光景が見られた。ホームサポーター席に陣取るほぼ全員が、ジェイミー・ヴァーディーの顔をプリントしたお面をつけていたのである。仕掛け人は他ならぬクラブで、3万枚を用意したという。言わば、ストーク戦で“両足タックル”を咎められた末の「疑惑のレッドカード」に対する、クラブ挙げての抗議の一環。すげなくアピールを却下して規定通り3試合出場停止を科したFAへの意趣返しだ。ちなみに、ヴァーディー本人も自分のマスクをつけてスタンドで観戦。だが、それも勝利には結びつかなかった。 ▽それぞれホームにボーンマス、ウェスト・ブロムを迎え撃って、チェルシーはディエゴ・コスタ抜きで破竹の12連勝(クラブレコード)、アーセナルは終了間際のジルーの一発で何とか連敗ストップ。いかにも、現在のチーム状況と勢いをそのまま映し出した格好である。サム・アラダイスの初采配ゲームとなったワトフォード-クリスタル・パレス戦は、あゝ、カバイェ26分のニートなゴールで先制したアウェイのパレスが、71分にPKで追いつかれるという、ため息ものの結末。しかし、内容的には希望の光も見え、特に過去2試合先発を外れていたアンディー・タウンゼントが、カバイェのゴールを演出した事実が挙げられよう。悔いが残るのは、1-0からクリスチャン・ベンテケがPKを決められなかったことと、やはりやや厳しすぎる感の否めないPK判定。ボックス内でセバスチャン・プロディと絡んで倒れたウィルフリード・ザハのそれが、ダイヴィングとみなされたのだ。なお、PKを決めたトロイ・ディーニーは、これがワトフォード在籍通算100ゴール目。 ▽オールド・トラッフォードでは、解任以来初めての“帰還”となったディヴィッド・モイーズ率いるサンダランドが、ファーストハーフこそ、そこそこ互角に渡り合って抵抗を示したのだったが、80分過ぎからの連続失点で力尽きた。ショウを締めくくったのは、すっかり復調したイブラヒモヴィッチと、62分から出場のヘンリク・ムヒタリアン。モウリーニョは特にムヒタリアンのインパクト(体を投げ出してのスーパーヘディングゴール)を「beauty」と褒めたたえ、今後の先発起用を仄めかしたのかと思いきや、「ベンチにムヒタリアンとマーシアルがいるのは心強い」。う~ん、まだ全幅の信頼を置くまでに至らないのか。それに、故障欠場中のルーニーのこともある。マタとエレーラが好調な以上、編成のいじりようがないのはわかるのだが・・・・。一方のブラックキャッツ(サンダランドの通称)、デフォーにボリーニ、アニチェベを加えた3ストライカーで臨むも、終わってみればシュートはわずかに6本(うち1本が、ボリーニによる終了間際のゴール)。ここまでアウェイで5得点のみというゴール欠乏症を打開しないと、残留争いから抜け出せない。 ▽モイーズのオールド・トラッフォード訪問が解任以来(2014年)初と述べたところで、意外なエピソードを一つ。モウリーニョはこのほど、サー・アレックス・ファーガソンを、キャリントンのトレーニングコンプレックスに何度か招いていたことを明らかにしたそうだが、実はこれ、モイーズにバトンを渡して勇退して以来のことだったという。つまり、それだけサー・アレックスは後任たちに気を遣ってきたということなのだろう。かつてのサー・マット・バズビーと同じ轍は踏むまいと。ただし、もちろん采配や練習に口を出すわけでは一切なく、モウリーニョによると「偉大な人間の存在をプレーヤーたちにそれとなく思い起こさせたかった」ということらしい。キャリントンの敷地内をぶらぶらしたり、ランチどきにはモウリーニョやプレーヤーたちと肩の張らないおしゃべりをする。「それは楽しくてね。そもそもここは彼の庭なんだし」と破顔一笑する“スペシャル・ワン”。唯我独尊、稀代のワンマン監督もやはり人の子、真正レジェンドには頭が上がらない?!【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.27 13:10 Tue
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【原ゆみこのマドリッド】いい結果で終われた…

▽「最後の最後でツイていたじゃない」そんな風に私が喜んでいたのは金曜日。お昼にあったコパ・デル・レイ16強対戦の抽選結果を知った時のことでした。というのもアトレティコの相手がラス・パルマスだったからで、何せ彼らにはリーガの年内最終節で1-0と勝ったばかり。もちろん贅沢を言えば限りなく、32強対決で1部のマラガを破ったコルドバ(総合スコア6-3)やエスパニョールをPK戦の末に退けた2部のマドリッド弟分であるアルコルコン(総合スコア2-2)といった、もっと格下になる可能性もなかった訳じゃないんですけどね。 ▽その2部の両者が16強で当たることになったのは、興行的にどうかという疑問も沸かなくはありませんが、その一方でお隣さんなど、水曜日にフォルメンテーラ(3部)を総合スコア14-2で粉砕したのみならず、今季はサンパオリ監督の下で一皮むけた感のあるセビージャとの対戦が決定。ええ、彼らは首位のレアル・マドリーと勝ち点4差、2位バルサとは1差のリーガ堂々3位というだけでなく、今季は前人未到のヨーロッパリーグ4連覇を諦め、CL決勝トーナメントに挑むことも決まっている絶好調なチームですからね。夏のUEFAスーパーカップでは延長戦で3-2と制したものの、そこからかなり成長していることを考えれば、ジダン監督の無敗記録が37試合で途切れてしまう恐れも十分ある? ▽おまけにバルサの相手もアスレティックとなったため、さすがにこのラウンドはMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)とピケをバケーションに行かせながらも7-0と大勝したエラクレス(2部B)戦2ndレグ程、容易には勝てないでしょう。リーガの4位と5位を占めるビジャレアルとレアル・ソシエダもどういう運命のいたずらか、ここで潰し合うことに。となると、準々決勝に残るチームは意外と手頃なメンツとなる目も出てくるため、結構、コパの先行きを期待してもいいような気もしたんですが、どちらにしろ、試合があるのは年明けの4日と11日の前後とまだ随分、先のことですからね。どのチームもクリスマスの休暇から帰ってきてみないことには、予想を立てるのが難しいといったところでしょうか。 ▽ちなみにそのアトレティコは、クラブW杯で優勝したマドリーがすでにバケーションに入っていた今週火曜日、32強対決のギフエロ戦2ndレグに挑んだんですが、試合の方での驚きも多少はあったんですけどね。それより異様だったのはギフエロのいで立ちで、アトレティコがrojiblanco(ロヒブランコ/赤と白)の第1ユニを着るビセンテ・カルデロンではさすがに、赤っぽい生ハム模様の地元名産品アピールユニは着られないだろうと安心していた私が甘かったんです! ええ、晴れの大舞台とばかりに、普段の緑色の第1ユニの左側に堂々とイベリコ豚の脚1本をプリントしてきたから、もう呆気に取られたの何のって。 ▽まあ、その奇妙キテレツさはアトレティコのオフィシャルページで試合のダイジェストが見られるので、そちらで堪能してもらえばいいんですが…。一応、どういう内容だったかお伝えしておくことにすると。1stレグで0-6と大勝していたアトレティコだったため、別段、張り切ることもなかったんですが、ありがたいことにここまで、あまりリーガで活躍できていなかった面々が発奮。ええ、17分には早速、ガイタンが先制点を決めると、22分にも彼のシュートがゴールバーを直撃。跳ね返ったボールをコレアが拾って、2点目にしてくれたから、ここしばらく、胃のキリキリするような展開しか目にしていなかったスタンドのファンもどんなに喜んだことか。 ▽更に29分には左サイドのスローインから、コレアが繋いで、最後はファンフランが3点目。もうこうなると、そのちょっと後にラウール・ルイスが2枚目のイエローカードをもらって、ギフエロが10人になる必要もまったくなかったんですが、そのおかげもあったんでしょうか。前半終了直前にはまたしてもコレアが仲介役を引き受け、フェルナンド・トーレスまで3カ月ぶりのゴールを決めてくれるんですから、やはり2部Bとは差があります。いえ、チェルチが2年ぶりにカルデロンのピッチを踏んだ79分、ピノのヘッドで不覚にもGKモヤが1点を取られてしまったなんてこともあったんですけどね。これでギフエロの選手たちも一矢を報いたと満足して、クリスマス休暇に入れるのでは(最終結果4-1)? ▽え、バケーション入りに一番、ウキウキしていたのは試合後の記者会見もすっ飛ばしてブルゴス第2監督に委任、アルゼンチン行きのフライトに間に合うよう、バラハス空港に直行していたシメオネ監督なんじゃないかって? まあ、確かにそうなんですが、その日は、グリーズマンやガビと一緒にお休みをもらったゴディンは別として、ガイタン、コレア、ヒメネスら、お勤めを果たした南米系の選手たちも大急ぎで着替えを終えて、フィジカルコーチのプロフェ・オルテガと一緒にターミナルを走っていたのが目撃されていますからね。練習再開の集合日は同じ27日でも、大西洋横断組は移動で実質の休日日数が減ってしまうため、少しでも早く出発したかった気持ちはわからなくもありませんよね。 ▽おかげで試合後、ミックスゾーンに姿を現したのも実家がフランスと近いルーカスぐらいだったんですが、当人もこのところ、フィリペ・ルイスがケガをしていたため、左SBとして連続出場できたのが嬉しかったんでしょうか。「Venimos de hacer un año increíble/ベニモス・デ・アセール・ウン・アーニョ・インクレイブレ(ボクらは信じられない1年を過ごしてきた)」と、2016年のアトレティコのパフォーマンスを絶賛。ただ突っ込むと、「ウチは昨季、リーガ優勝争いを残り2試合まで続けたし(3位)、CL決勝ではPK戦まで行ったし(マドリーにCL決勝2連敗)、コパでも戦った(準々決勝でセルタに敗退)」と、あと1歩が足らないという残念な結果ばかりなんですが、そこに加えて、今季は残り1節でグループリーグ首位突破を決めたCLはともかく、リーガが不安定で6位で年を越すという状態なのはあまり気にならない? ▽まあ、それも昔の彼らを思えば、相当進歩したと言えなくはないんですが、折しもこの23日の金曜日はシメオネ監督が来てからちょうど5年となる節目。そのため、本人は母国で家族と水入らずで過ごしていますが、休暇前に複数のメディアで取ったインタビューが公開されることに。その中では、「Va a ser difícil encontrar un equipo mejor que el Atlético en mi future/バ・ア・セル・デフィシル・エンコントラール・ウン・エキポ・メホール・ケ・エル・アトレティコ・エン・ミ・フトゥロ(将来、自分にとってアトレティコよりいいチームと出会うのは難しいだろう)」という当人の台詞が、このところ、ジェノアでプレーする長男のジョバンニや代理人をしている姉のナタリアさんから、インテル・ミラン行きをほのめかされていたこともあり、ファンにとっては一番嬉しかったかも。 ▽まあ、それも今季の成績次第というところなんでしょうが、とりあえず、アトレティコには年明けのコパでラル・パルマスを撃破、続いて7日の土曜日にはリーガのアウェイ戦でエイバルを倒して、少しずつでも順位を上げてほしいもの。そうそう、そのエイバルも水曜日には、乾貴士選手は出ていなかったものの、コパ32強対戦2ndレグでスポルティングを3-1で破り、総合スコア5-2で16強に進出。次はオサスナと当たることになっています。 ▽一方、クラブW杯に出発する前にクルトゥラル・レオネサ(2部B)を総合スコア13-2で圧倒し、コパ16強進出を決めていたマドリーを含めて、マドリッドの兄貴分たちが次ラウンドに意気揚々と挑むのとは対照的だったのはレガネスで、いえ、アシエル・ガリターノ監督も「Estamos un poco justos con mucha gente fuera del equipo/エスタモス・ウン・ポコ・フストス・コン・ムーチャ・ヘンテ・フエラ・デル・エキポ(ウチは多くの選手が戦力外でちょっと、人数的にギリギリだった)」と言っていたように、決してムリできるような状態でないことはわかっていたんですけどね。1stレグに続いて、水曜日の2ndレグでもバレンシアに2-1と負け、あっさりコパからの脱落が決定。 ▽いえ、それでもメスタジャの一戦ではロドリゴが2度のゴールポスト直撃を含む、5度のシュート失敗の後、ようやく決まった36分のゴールで先制されながら、後半早々にはマティスがゴール前の混乱から押し込んで1度は同点に。その後も惜しいチャンスを作りながら、最後は再びロドリゴに決められて沈むといった具合でなかなか、善戦はしたんですけどね。やはりない袖は振れないため、ここは1月の試合数が減ってくれたことが、現在、18位のスポルティングと同じ勝ち点でかろうじて降格圏外にいるバレンシアから、勝ち点差4でキープしている16位の座を死守する方に全力を注いだ方が賢いかと。 ▽何せ、年明け最初の日曜日、8日には同じく、総合スコア4-1でデポルティボに負け、コパを敗退。心おきなくリーガに専念できるようになったベティスと当たりますからね。前節のエイバル戦で乾選手にエリア外で激突、空中1回転させて退場になったGKエレリンが出場停止になるというハンディキャップもあるため、今元気な選手たちにはこのクリスマス休暇中、27日までは心と体を十分休めて、現在、勝ち点差2で追い越すことが可能な14位の相手を破ることができるといいのですが、さて。 ▽ちなみにFIFAによる未成年選手獲得に対する処分が、CAS(国際スポーツ仲裁裁判所)の裁定でこの冬のみの新規選手登録禁止のみに減ったマドリー、それに準じた結論が出るのを待っているアトレティコとは違い、レガネスは1月に補強ができるんですが、あまり噂が聞こえてこないのはやはり、予算が限られているせいでしょうかね。 ▽そして最後に先週日曜日の横浜で鹿島アントラーズを下して、今年3つ目のトロフィーを掲げた後、リーガの他チームに先んじて休暇に入ったマドリーに関してなんですが、やっぱり選手たちが世界中に散らばってしまったからでしょうか。CASの裁定を受けて、去年のデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)獲得失敗にも懲りず、来年の夏には同じく元アトレティコのクルトワ(チェルシー)を連れて来る算段を始めているとか、移籍を示唆したハメス・ロドリゲスは冬の市場で誰も獲れないため、絶対出さないとか、人事系以外の話題はほとんどない状態。 ▽いえ、休暇明けには30日に恒例のソシオ(協賛会員)対象公開練習をエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(バルデベバスにあるRMカスティージャのホーム)でやるとか、ジダン監督は自身がアシスタントをしていた2年前のアンチェロッティ監督時代、クラブW杯後にチームが不調に陥ったのを反省して、ハードなトレーニングメニューを用意しているとかいった程度はありましたけどね。 ▽おそらくしばらくはまたカーディフに戻り、リハビリを着々と続けているベイルのように、個々の選手がSNSで発信してくる情報で近況を探るしかないかと。そんなこんなで年内中は、私がお伝えする情報もあまりなくなってしまうかと思いますが、まだシーズンは半分以上残っていますからね。ファンが気を揉まずに済むこのクリスマス週間、私もノンビリできるのは嬉しいです。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.24 10:55 Sat
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【東本貢司のFCUK!】カラフル&フェスティヴ

▽「20年も同じクラブを率いる? あり得んね」(ペップ・グアルディオラ)、「ファンへのクリスマスプレゼント替わりに、シャツをスタンドに投げ入れるよう指示した」(ジョゼ・モウリーニョ)、「あのオフサイドの判定は受け入れがたい」(アーセン・ヴェンゲル)、「ギャルー・ネヴィルなんかが解説者やってるなんて信じられない」(ユルゲン・クロップ)、「わたしならあの一発レッドは誤審だと言い、マーク・ヒューズ(ストーク監督)なら妥当だと言うだろう」(クラウディオ・ラニエリ)―――。各人各様、実にキャラクタリスティック(それぞれのキャラが如実に投射されている)なコメントアラカルト。改めて、今更ながら、プレミアリーグのなんとカラフルでフェスティヴ(=お祭りっぽくにぎやか)なことか。確かに、一年で最もざわざわと忙しく、ただし、国内にじっくり集中できるまたとない時期ではある。ただ、それにつけても“主役”たちが揃いもそろって“ガイジン”ばかりとは(ヒューズはウェールズ人)、ため息を吐くのは筆者のみか。 ▽気が付けばチェルシーが走っている。元プレーヤーで評論家のダニー・マーフィーに言わせると「穴がない」。ラミーレスに続いてオスカーまでチャイナマネーになびかざるを得ない状況にあっても、戦力に充実感と余裕がにじみ出るようにあふれている。抜け落ちていたアントニオ・コンテのコメントは「中国が何とやら」だったか…いや、確か「まだうち(チェルシー)はこんなものじゃない」。もし仮にどこかで腰砕けに落っこちるとすれば、キープレーヤーの故障や“おいた”のアクシデント絡み。だが、その気配はありそうにない。しかし、そんなチェルシーにも引けを取らない堅実さとブレのなさを維持しているのがリヴァプールだ。ざっと眺め渡してみても、ロジャーズ時代からさほど“絵面とタイプのヴァラエティー"の点で代わり映えしないようなのだが…。だとすればやはりこれは、熱血クロップのカリスマが違いを源泉なのか。あゝ、またガイジン監督さまさま。 ▽などと(しつこく)嘆息しているところへ、間が悪くも(?)絶不調クリスタル・パレスからアラン・パーデュー解任の知らせが。そして、まるで予定事項のごとく、後任候補として躍り出たのが、他でもない“ビッグ”サム・アラダイスとは…。いや、もとい、これ以上のノンイングリッシュ化はごめんだからこそ、あえて歓迎しようではないか。それにお忘れなく。ビッグ・サムは何も法を犯したわけじゃない。法律などよりもはるかに威厳の薄い、あるスポーツ統括組織が独自に制定したルールの「抜け穴を知っている」とか何とかうそぶいただけだ。倫理的によろしくない、イメージが悪い、外からとやかく言われるのがウザイ、と、当の組織が自粛(末のイングランド代表監督解任)したにすぎない。ああ、そういえば、FIFAは「ポピー問題」に当たって、イングランド代表以下に罰金を科すことにしたんだっけか。それで済むなら痛くもかゆくも…。しめしをつけた側と国民的思いに準じた側の、静かなるにらみ合い。どこの世界にもよくあることである。 ▽それにしても、ジェイミー・ヴァーディーの一発レッドは「?」の二乗ものだった。つまり、クラブワールドカップ決勝の逆パターン。しかも、状況が滑稽なほどコントラストを成していた。横浜の主審は、一旦は(イエローを)出そうと思いかけたが、何かを思い出したように胸に持って行った手を諦めた。ブリタニア(スタジアム)の方のレフェリーは、一瞬たりとも迷わず、アシスタントを一顧だにせず、断固たる態度・表情でさっと赤い札を取り出した。しかし、セルヒオ・ラモスの足はボールにかすりもせず、ヴァーディーの投げ出した両足(正確には、1.5足?)の片方はぎりぎり「先に」届いていた。そしてそれぞれ、結果は“逆目”に出た。後日談はそれぞれ、「横浜の主審」が次のワールドカップで笛を吹くことはないだろう…レスターの(ヴァーディーのレッド撤回)訴えは却下されて…といった程度。できるだけそっと、速やかに、それなりに、収めるべきところは波風立てずに収めるべし。これってやはり、イエス・キリストの思し召しでしょうか。 ▽さて、わが国は天皇陛下誕生日のおかげで三連休だが、EU脱退を決めたかの国ではお馴染みボクシングデイ絡みの三連休。つまり、プロフットボーラーの“繁忙期”。当然心配されるのは故障であり、その点で不安がどこよりも覆いかぶさるのがアーセナルであり、すでに現地メディアでもそれを指摘する声がしきりである。対エヴァートン、マン・シティーの連敗劇は、およそ降って湧いた事件中の事件。今シーズンは行けるとわくわくどきどきしていたガナーズファンも、天を仰いで青ざめているに違いない。エース、サンチェスの契約更新が“カネ”で滞っているらしいのも嫌味だ。だからこそ、幸いというべきか、年内はボクシングデイ(26日)のホーム/ウェスト・ブロム戦のみ、明けて元日は(監督不在のままかもしれない)クリスタル・パレスを迎え、3日にアウェイのボーンマス戦。決して楽に乗り切れる保証などないとはいえ、あくまでも比較上計算がしやすい年末年始ではあろう。ここでマキシマムの9ポイントを稼げば胸も晴れる、先も見えてくる。昨季が“ミラクル”なら、そろそろこの辺りでヴェンゲルの会心の笑みを見たいところである。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.23 13:30 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】危機感を覚えたJリーグアウォーズ

▽今シーズンのJ1リーグのMVPは川崎Fの中村が初受賞した。チームの年間2位に貢献し、9ゴール11アシストと結果も残しただけに、納得できる結果でもある。リーグ優勝を果たした鹿島からベストイレブンに選出されたのは西と昌子の2人だけ。これはCS(チャンピオンシップ)が始まる前の11月18日に優秀選手がノミネートされたため、CSの結果は反映されなかったからだ。第2ステージの鹿島は11位と低迷していただけに、当然の結果と言える。 ▽その一方で、年間勝点1位の浦和からは8人の選手が優秀選手に選出されながら、ベストイレブンに選ばれたのは西川と槙野、阿部、柏木の4人だけ。興梠と武藤はゴールという結果で小林(川崎F)やレアンドロに及ばなかったため選外となったのだろう。 ▽興味深いのはベストイレブンのDF陣だ。昌子と槙野は当然として、6位の広島から塩谷、9位のFC東京から森重が選ばれたのはちょっと意外だった。チームの成績に関係なく、プレーが評価されての受賞だろうが、ベストイレブンに選ばれた4人は、いずれもCBタイプの選手ということ。昌子と森重は4バックのセンターだし、槙野と塩谷は3バックのサイドで果敢な攻撃参加を見せるものの、純粋なサイドバックではない。 ▽ノミネートされた選手には4バックのサイドを務める川崎Fのエウシーニョと車屋、G大阪の藤春もいたが、槙野や塩谷を上回るだけのインパクトを残せなかったということなのだろう。日本代表でもサイドバックは酒井宏と酒井高、長友が長らくレギュラーとしてプレーしている。それだけ“国内組”にはサイドバックの台頭が滞っていることの裏返しと言えるかもしれない。 ▽塩谷と、今回は受賞を逃した藤春は、手倉森監督が「代表に来て欲しい」と期待を込めてリオ五輪のOA枠で招集した選手でもある。ただし、塩谷と藤春はすでに28歳と、もう若手の域を過ぎている。大型CBだけではなく、サイドバックの育成も急務と言っていいだろう。ベストイレブンを見ても、25歳以下での選出は昌子1人だけ。浦和の遠藤や川崎Fの大島、ベストヤングプレーヤー賞を受賞したG大阪の井手口がベストイレブンの選外になったのは残念だったが、若手選手の有望株は浅野や久保、南野のように海外へ流出して、Jリーグそのものが高齢化している証拠かもしれない。 ▽中村のMVPは当然だと思うが、36歳での受賞は過去最年長となる。その彼が、投票で断トツだったことにも危機感を覚えてしまう、今年のJリーグアウォーズだった。 【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.22 13:15 Thu
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【原ゆみこのマドリッド】順位は変わらなくても…

▽「そういえば、まだいたんだっけ」そんな風に私が思い出していたのは月曜日、アトレティコ、今年最後の試合となるコパ・デル・レイ32強対決2ndレグのギフエロ(2部B)戦にチェルチが招集リスト入りしたというニュースを聞いた時のことでした。いえ、2シーズン前にトリノから期待されて入団した彼がチームカラーに馴染めず、たった半年で最初はミラン、次はジェノアとレンタルに出た後、大きなケガをして、今季はずっとマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でリハビリを続けているのは知っていましたけどね。この冬の移籍市場でボローニャに移籍する話が決まっていると言われていたため、試合には出ないんだろうと思っていたところ、もしやシメオネ監督は昨今のゴール日照りに藁にもすがりたい気になっている? ▽ただ、そういう意味ではこのギフエロ戦は選手を試すのに最適で、何せ11月末の1stレグでは相手のご当地特産品プロモーション、ハモン・イベリコ模様のユニフォームに惑わされることもなく、彼らにしては珍しい0-6というgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝っていますからねえ。一応、シメオネ監督はお疲れ気味のグリースマン、ガビ、ゴディンには休みを与えたものの、ガメイロやカラスコ、フェルナンド・トーレス、コレアといった攻撃陣には最近、照準の狂いっぱなしのシュート力に磨きをかけるいいチャンス。火曜の午後9時(日本時間翌午前5時)からという遅い時間にキックオフなこともあり、ビセンテ・カルデロンが活況を呈する見込みはないものの、せめて胃のキリキリしない、「un equipo que termina un año extraordinario/ウン・エキポ・ケ・テルミナ・ウン・アーニョ・エクストラオルディナリオ(素晴らしい1年を終えたチーム)」(シメオネ監督)にふさわしい試合を見せてくれるといいのですが…。 ▽え、それでも先週末のアトレティコはようやく、エスパニョール戦、CLバイエルン戦、ビジャレアル戦と続いた3試合連続白星なしの悪い流れをラス・パルマス戦で断ち切ったんだろうって?まあ、そうなんですが、内容自体はあまり威張れたものではなく、先発したグリースマン、ガメイロ、カラスコのFW陣は相変わらず、チャンスをモノにできず。それでも後半13分には、グリースマンのシュートが敵DFに当たって跳ね返ってきたのをサウルがエリア外から撃ち込んで、これがgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)になってくれたから、助かったの何のって! ▽ラス・パルマスが決定力に欠けているおかげもあって、1-0で逃げ切ることができましたが、実情は「Hemos logrado un 70% de posesion en el Calderon/エモス・ログラードー・ウン・セテンタ・ポル・シエントー・デ・ポセシオン・エン・エル・カルデロン(ウチはカルデロンでボールポゼッションが70%あった)」(ステイン監督)なんですから、ファンもちょっと寂しかったかと。そこへ、肩の脱臼で手術、長期離脱になってしまったオブラクの代わりに、1年以上ぶりでリーガでの先発に戻ったGKモヤに絶好機を阻まれたロケ・メサなどに、「Al Atletico ya lo conocemos, sin casi hacer nada te mete un gol/アル・アトレティコ・ジャー・ロ・コノセモス、シン・カシ・アセール・ナーダ・テ・メテ・ウン・ゴル(アトレティコのことはもうわかっている。ほとんど何もしないのにゴールを入れるんだ)」なんて言われてしまっては、もうほとんど立つ瀬がないような。 ▽それでもこの1点のおかげで、「Para nosotros el partido de hoy era una final/パラ・ノソトロス・エル・パルティードー・デ・オイ・エラ・ウナ・フィナル(ウチにとって、今日の試合は決勝のようなものだった)」(ゴディン)という、崖っぷちの状態を切り抜けることができたアトレティコですから、とりあえず結果オーライですが、週末が終わってみれば、バルサ(エスパニョールに4-1)、セビージャ(マラガに4-1)、ビジャレアル(スポルィングに1-3)、レアル・ソシエダ(グラナダに0-2)と上位陣は全て勝ち点3を獲得。リーガ6位という不本意な順位のまま、年越えすることに。 ▽まあ、自業自得と言ってしまえばそれまでですが、そんな中、最高の週末を過ごしたのはサウルで、自身がラス・パルマス戦で今季のリーガ初ゴールを挙げただけでなく、同日にはお兄さんのアーロン(テネリフェ、27歳)もマドリッドの2部チーム、アルコルコン相手に得点。翌日には長兄のジョナタン(アルコジャノ、31歳)も2部Bのバレアレス戦でゴールを挙げ、兄弟ハットトリックという珍しい記録を達成することに。うーん、傍目には、22歳で末っ子のサウルが一番いいカテゴリーでプレーしているのは、兄たちにとって、ちょっと複雑な気持ちになるんじゃないかと思ってしまうんですけどね。父親も元選手のサッカー家族だと、そういうのは実力の世界と、割り切れるもんなんでしょうか。 ▽そして、翌日曜は家でクラブW杯決勝を見た後、予想外の延長戦に時間が押し気味となりながら、セルカニアス(国鉄均衡路線)に乗って、ブタルケ(レガネスのホーム)を訪れた私でしたが、マドリッドの新弟分も出だしは良かったんですよ。ええ、前半23分にはエイバルの左SB、ルナがGKジョエルへのバックパスを誤り、ゲレロが先制点をゲットします。ところが、その2分後には大きな逆境に襲われてしまい、セランテがヒザの靭帯断裂で今季絶望になってしまったため、このところ、先発GKはアスレティックから急遽、レンタルしたエレリンが務めていたんですけどね。 ▽13分にもシュートを撃たれていたエイバルの乾貴士選手がボールを追って向かって行こうとしたところ、エリアを飛び出して相手に正面から激突。当人も「どうなったか、全然わからなかった」と後で言っていたんですが、宙で見事に一回転した彼には幸いケガはなかったものの、これでエレリンが一発退場となってしまったから、大変じゃないですか! ▽うーん、それでもレガネスは10人で一生懸命、リードを守ろうと頑張ったんですけどね。今季は2部に降格したヘタフェからエイバルに河岸を変えたペドロ・レオンもしっかり抑えていたんですが、後半30分、乾選手の代わりにピッチに入った、以前はラージョでもプレーしていたベベのシュートがアルベルト・マルティスに当たったのが運の尽き。エレリンの代役で、夢のリーガ1部デビューとなったレガネスB(3部)のGKバリオスを破り、1-1にされてしまったのは気の毒だったかと。 ▽結局、そのまま引き分けたレガネスは降格圏と勝ち点4差のまま、16位で2016年を終わることになりましたが、年内最終戦は水曜のコパ、バレンシア戦。ただ、こちらは1stレグのホームで1-3と負けていますし、今は負傷禍に襲われているため、余力がほとんどありませんからね。コパは下手に勝ち上がると、ミッドウィークが潰れて、1月が地獄のようなことになるため、リーガ1部1年生の彼らには重荷が早くなくなった方がありがたいかもしれませんね。 ▽え、ブタルケに来る前、ホテルでクラブW杯決勝を前半、ランチを取りながら、エイバルのチームメートたちと一緒に観戦、後半も自室で見ていたという乾選手は、マドリー相手に2ゴールを挙げた鹿島アントラーズの柴崎岳に感心していなかったかって?そうですね、これがキッカケになって、「スペインでプレーする夢が叶うといいね」と言っていましたが、彼の出場こそなかったものの、エイバルにも10月にサンティアゴ・ベルナベウを訪問した際には1-1で引き分けるという功績が。鹿島も「マドリーが相手をなめていたところを逆手に取った」(乾選手)おかげで90分では2-2の同点と、決して負けていませんでしたが、そこは決勝で「世界一のチーム」に当たってしまったのが不運だった? ▽ええ、リーガでは勝ち点1をゲットして、メデタシメデタシで終わるのとは違い、セルヒオ・ラモスの後半ロスタイム、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)弾こそありませんでしたが、鹿島はクリスチアーノ・ロナウドに同点PK、更に延長戦前半には勝ち越し、ダメ押し点を決めるハットトリックの活躍を許し、最後は4-2で敗北。マドリーが今年3つ目のタイトルを掲げることに。いやあ、スペインのマスコミ評では、ロナウドは最悪の試合をしながら最高の得点効率を挙げたと、もっぱら言われていたんですけどね。 ▽延長戦突入前、ラモスが金崎を倒しながら、ザンビア人のシカズウェ主審が2枚目のイエローカードを出さなかったのも批判されてはいたんですが、この時は「ya tenia ganas de que la suerte cambiara un poco de cara/ジャー・テニア・ガナス・デ・ケ・ラ・スエルテ・カンビアラ・ウン・ポコ・デ・カラ(ツキがもう変わってくれるように願っていた)」当人にラッキーな目が出たこともあり、晴れてトロフィーを受け取ることができたとなれば、2014年の大会では自分が獲ったMVPをロナウドに譲ったとしても全然、文句はないかと。いえ、そのプレーの時、最初は胸ポケットに手をやっていた同主審の後日談によると、あれは副審がカードなしのファールとイヤホンに連絡してきたのを、なしの部分を聞き漏らしたために起こった、単純なコミュニケーションミスだったそうですけどね。 ▽こういう時にこそ、FIFAが2018年W杯に向けて試験採用していたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が活躍すべきだったという意見もありますが、その辺はねえ。個人的にはたとえ、ラモスが減って10人になっていたとしても、そこはクラブの伝統として、根性のレモンターダがDNAに刷り込まれているマドリー。何だかんだで勝っていたんじゃないかと思いますが、苦労した分、優勝の喜びもひとしお大きくなったことでしょうし、始めからマジメにガンガン行っていればなんて、無粋なことは言わないに限りますって。 ▽そして試合後は、CL決勝に続いて、またしても出番のなかったハメス・ロドリゲスが、「オファーも来ているし、残留するかは確約できないよ。Estoy feliz en Madrid, pero quiero jugar mas/エストイ・フェリス・エン・マドリッド、ペロ・キエロ・フガール・マス(自分はマドリーにいて幸せだけど、もっとプレーしたい)」とぶちまけ、祝勝ムードに水を差したなんてこともありましたが、翌日にはチームもマドリッドに帰還。いえ、延長戦のせいで予定が遅れ、トロフィーと一緒の日産スタジアム場内一周にも加わらず、ダッシュでシャワーを浴びて空港へ直行、一足先にドバイでのバケーションに向かったモドリッチとコバチッチは一緒じゃなかったんですけどね。 ▽その他の選手たちは、日本にはいかず、手術後に静養していたカーディフから戻って来てから、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で父親同伴のリハビリを続けているベイル(https://www.instagram.com/p/BOM_-WFDppT/?taken-by=garethbale11)を除いて、27日までクリスマス休暇を満喫。最初に行った通り、年内最終節の結果で、後続とはそれぞれ勝ち点3ずつ縮まったマドリーですが、それでも2位のバルサとまだ勝ち点差3あるとなれば、新年からはライバルと交代でユニの胸にクラブW杯優勝のワッペンをつけてプレーできますし、気分の持ちようもかなり違うかと。 ▽一方、お隣さんは火曜のコパの後、28日までお休みですが、アトレティコには30日にサウジアラビアでアル・イティハッドと親善試合というお勤めも控えていますからね。順位のこともあって、あまりノンビリはしていられないかと思いますが、ラス・パルマス戦の後には「Intentar recuperar puntos en Liga, el partido a partido es asi, se suma tres a tres/インテンタール・レクペラール・プントス・エン・リーガ、エル・パルティードー・ア・パルティーオー・エス・アシー、セ・スマ・トレス・ア・トレス(リータでの勝ち点を取り戻す。1試合1試合ね。勝ち点3ずつ積んでいく)」(ゴディン)と、「ここ2カ月長期的な目標を見て、基本から外れていた」というガビと共に、原点回帰を誓っていたのはポジティブ。ここは心機一転、年明けから時間がかかってもCLだけでなく、リーガでも競い合うマドリッドの両雄の姿を見せてもらいたいものです。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.21 01:35 Wed
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【原ゆみこのマドリッド】今年はリーガもあと1試合…

▽「要は何でも良かったのね」そんな風に私が笑っていたのは金曜日、AS(スペインのスポーツ紙)のネットページに不思議な写真を見つけた時のことでした(http://futbol.as.com/futbol/2016/12/16/internacional/1481900151_429578.html)。いやあ、開けてみると、クラブW杯準決勝で勝利したレアル・マドリーに日本のマスコミが賛辞を贈っているという記事だったんですが、おやおや。適当に選んだ新聞の一面の上に写真を貼りつけたものだから、丁度、クリスチアーノ・ロナウドの頭上に「広島災害不明51人」なんて、毎日新聞の物騒な見出しがついてしまい、それも当人には気の毒だったんですが、何だか合点がいかず、目を凝らして、日付を見てみたところ、8月22日って、一体、どこから探してきたのか。 ▽うーん、隣の朝日新聞の日付は12月16日で辻馬は合ったんですが、こちらもジダン監督の横に「医療や介護 高齢者負担増」って見出しも何となく、嫌味な感じがしなくもなし。大体、これももう1つの準決勝の後、大阪から流れてきたらしいコロンビアのメディアに「ああいうのは5カ月に1回ぐらいある試合。今日また戦ったら、勝っているはずだよ。Ojalá hubiera sido una final contra Nacional, pero el fútbol es así/オハラ・ウビエラ・シードー・ウナ・フィナル・コントラ・ナシオナル、ペロ・エル・フトボル・エス・アシー(ナシオナル相手の決勝だったら良かったけど、サッカーはこういうもの)」と、母国のチームと対戦できないことをハメス・ロドリゲスも嘆いていたように、当初の目論見が外れたせい。 ▽ええ、マドリーが日曜にプレーするのがアトレティコ・ナシオナルなら、記者たちも楽だったんですが、それが急遽、鹿島アントラーズになってしまったものだから、せっかく予定していた、通訳なしで話せる対戦相手の監督や選手インタビューもいらなくなり、かといって、Jリーグのチームの情報をそんなに探し出せる訳でもないですからね。結局、鹿島は世界的に名の知れているジーコが選手や監督として在籍したクラブというぐらいの紹介しかされていないんですが、決勝相手が日本のチームとなったせいか、クラブ・アメリカ戦ではやたら空席の目立った日産スタジアムのスタンドが今度はチケット完売で埋まりそうなのは朗報でしょうか。 ▽まあ、そんなことはともかく、木曜の準決勝は私も午前11時半という奇妙な時間帯に家のTVで観戦できたんですが、選手たちにはまだ時差呆けもあったんですかね。別に敵にゴールを奪われる心配もほとんどなかったものの、ようやくクロースのスルーパスからベンゼマが決めて、マドリーに先制点が入ったのは前半ロスタイムに入ってからのこと。後半もロナウドが何度かシュートを撃ったんですが、バロンドール受賞4回目記念弾に懸ける当人の執念は、その日は筋肉痛でベンチ観戦をしたセルヒオ・ラモスが見守る中、因縁の93分を迎えるまで、実ることはありませんでしたっけ。 ▽ただ、そのゴール、ハメスからのパスをエリア内からロナウドが鋭く決めたgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)だったんですが、問題はこの時、試験的にFIFAがこの大会で使用しているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)から連絡が主審に入ったようで、一度は得点とされたゴールがオフサイドの疑いで取り消され、その後、再度認められるというゴタゴタが。いえ、鹿島vsナシオナル戦のようにプレー再開から1分以上してから、思い出したようにPKを宣告したのとは違いましたし、今回の場合は点が入っても入らなくてもマドリーが勝っていたので、そんなに怒ることもないかと思ったんですけどね。やはり試合後には不満の声が多々聞こえてくることに。 ▽ええ、この日のMVPに選ばれたモドリッチなど、「No me gusta esto del vídeoarbitraje porque crea mucha confusion/ノー・メ・グスタ・エストー・デル・ビデオアルビトラヘ・ポルケ・クレア・ムーチャ・コンフシオン(このビデオによるジャッジは好きじゃない。混乱するからね)。こういうのはサッカーじゃないよ」とはっきり言っていましたし、ジダン監督も「テクノロジーで改善したいなら、誰にとってもより明確にならないといけない」と効果の程に疑問を呈していましたが、それも当然。ゴールを喜んだり、悔しがったりと、リアクションを何度もしなければならなかったロナウドだって、これじゃカッコがつかないと思ったんじゃないでしょうか。 ▽何はともあれ、0-2で勝ったマドリーは無敗記録を36試合に伸ばして日曜午後7時半からの決勝に進出。特にまだ、ローテーションをするなどの情報は入っていないんですが、準決勝後にランニングをしていたラモスとペペがスタメンに入れるかは微妙かと。いえ、前者などは前回の2014年には大会MVPを取ったいい思い出もあるため、出場する気満々で、ただでさえ、横浜は寒いらしいのに冷水浴(https://www.instagram.com/p/BOCljv2FuF8/?taken-by=sr4oficial)までしてリハビリに努めていますし、金曜のセッションでも猛アピールしていましたけどね。 ▽鹿島の攻撃陣がどれ程、優秀なのかはジダン監督も判断に迷うところでしょうから、バランとナチョのCBコンビがリピートという可能性もあると思いますが、とりあえずこの試合が終われば、マドリーはもうクリスマスのバケーション入り。年明けは1月4日前後のコパ・デル・レイの16強対戦1stレグから始まりますが、その相手も他のチームの32強対決2ndレグが来週終わり、組み合わせ抽選があるまでわからないため、当面はゆっくりできるかと。ええ、今週末のリーガ戦を来年に延期していても、2位バルサとは現在、勝ち点差6あるため、首位で年を超えることが確定しているせいで気も楽なはずですし、後はCL、UEFAスーパーカップに続く今年3つ目のタイトルを獲得して、有終の美を飾りたいといったところでしょうか。 ▽え、その間、最近非常に心配な状態になっているお隣さんは何をしていたのかって?まあ、月曜のビジャレアル戦が終わった後はミッドウィークに試合がないのもあって、毎日マハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場でトレニーングに励んでいましたが、木曜にはアトレティコ恒例のメガクリスマスランチがロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)で、トップチームや女子チームの選手、スタッフ、従業員、選手OB、ペーニャ(ファンクラブ)代表など、総勢650人を集めて開催されることに。いえ、その前節に左肩を脱臼したGKオブラクは丁度、前日、ロンドンでベイルがお世話になったのと同じ、イギリス王室ご用達のキング・エドワード7世病院で関節鏡手術。最初の予想より短い2カ月で戻って来れそうだという朗報がありましたが、残念ながら、この食事会には出席できませでしたけどね。 ▽その代わりという訳ではないんですが、先日、ヘルニアのせいで日常生活に支障をきたすまでに至り、27歳で現役引退を表明したドミンゲス(メンヘングラッドバッハ)が招待され、古巣の仲間たちと旧交を温めていましたが、それ以外にもカラスコ、サウル、モヤ、ファンフランらはスポンサー関連のイベントに出席して、そこそこマスコミを賑わすことに。当然ながら、そんな席での質問は現在、6位まで落ちてしまったチームの不調ぶりについてだったんですけど、カラスコなどに言わせると、「para mí esto no es una crisis/パラ・ミー・エスト・ノー・エス・ウナ・クリシス(自分にとって、これは危機じゃない)」のだそう。 ▽曰く、「調子がいつより悪い時期があるのは当たり前。これまでウチはずっと高いレベルにあったんだから」だそうですが、でもねえ。たとえ、いいプレーができなくても勝てないと、とてもマドリーやバルサにはついていけないことをわかっている?一方、前節にチアゴが負傷したため、久々に先発できそうなサウルは、「ウチは堅い守備を取り戻さないといけないんだけど、敵も上手くやってくるからね」と最近、チームが大昔のように信じられないミスをして失点するようになってきた理由を説明。 ▽それでも「No bajamos los brazos y no vamos a parar hasta encontrar la solución/ノー・バハモス・ロス・ブラソス・イ・ノー・バモス・ア・パラール・アスタ・エンコントラール・ラ・ソルシオン(解決策が見つかるまで、ボクらは決して降参したりしない)」と前向きだったんですが、土曜のラス・パルマス戦ではサウルが右サイドに行って、コケがボランチに戻るらしいといった予測も。うーん、今季はシメオネ監督も何だか一貫性がないというか、あまり変えてばかりだと、サウルもコケも混乱してしまうんじゃないかとか、私にも思うところはあるんですが、こればっかりはねえ。 ▽その他、火曜に足の指を打撲したヒメネスは2日間で完治して招集リスト入り、先発ではGKがモヤ、右SBがファンフランからブルサリコにといったところが、ビジャレアル戦からの変更点ですが、コレアが累積警告で出場停止になったり、フィリペ・ルイスもまだ回復していないため、午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からの一戦はまた、ビセンテ・カルデロンのサポーターの応現頼みになるのかも。ちなみに来週には火曜のコパ32強対決2ndレグのギフエロ戦(1stレグは0-6の勝利)をプレーして、バケーションに入る彼らですが、できればその前に少しでもリーガの順位を上げて、30日のサウジアラビア遠征、アル・イティハッドとの親善試合に晴れやかな気分の臨んでもらいたいものです。 ▽そしてマドリッドの新弟分、レガネスは日曜にエイバルをブタルケに迎えるんですが、こちらもここ4試合勝利がないため、現在は降格圏と勝ち点3差の15位と少々、心もとない状況。多発しているケガ人も年内に戻って来られる選手はいないため、あまり期待はできないんですが、ただこのままのシーズン前半戦、ホームでは1勝だけとなってしまったら、1部での晴れ舞台に夢を抱いていたファンたちだって悲しいクリスマスになってしまうはず。となると、せっかく好調な乾貴士選手には悪いですが、やっぱり年内最後のリーグ戦はホームチームに花を持たせてあげたいですね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.17 14:45 Sat
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【倉井史也のJリーグ】「儲け時だ! 働け! 働け!」と言ってるかどうかはわかりませんが?!の巻

▽てかさ、もう代表選手の分類にもう1つ加えたほうがいいんじゃね? 海外組と国内組の他に鹿島組って。素晴らしすぎるっしょ、鹿島の大活躍。オークランド・シティ、マメロディ・サンダウンズ、アトレティコ・ナシオナルとぶった切って、ついに決勝進出ですよ。開催国枠のチームがあっさり負けちゃったら、「だいたいなんでこんな枠なんて必要なんだよ」って言われかねないFIFAもホッとしてることでしょう。視聴率を稼ぎたいテレビ局や、広告主へ効果増で広告代理店もホッとしていることでしょう。なにより一番ホッとしてるのはチームじゃないでしょうか。年間勝ち点で15点も差を付けられていたのにチャンピオンになったと揶揄されていたけど、これで「いやいや、やっぱ鹿島でよかったんじゃん」とみんなに思われること間違いなし! ▽そしてきっと今からホットになるのが鹿島の新戦力獲得! なにせ来季から思い切り優勝賞金が上がりますからね。噂によるとJ1優勝が21億円超! 今年と20億円差があります。ってことは、来年は十分投資の元が取れるかも! ということでただでさえ戦力争奪合戦が激しくなりそうなのに、鹿島の今月に入ってからの稼ぎっぷりの凄さ! Jリーグ優勝で1億円、現在2位以上確定で400万ドルが保証されてます。え? 400万ドルって近頃の円安のおかげで、4億7000万円ってこと?! ってことは、12月だけで鹿島は6億円近く儲けてるんですよ。この金額って小さなJクラブとおんなじぐらいじゃないですか? ▽となると鹿島がガンガン投資してくるのは間違いなし。これでまたいい選手が取れるってもんです。だけど、これまた鹿島の宿命というか、きっといい選手は海外から買い手がついちゃうんですよ。柴崎岳、金崎夢生、そしてこのコラムでイチオシの鈴木優磨なんていなくなっちゃうかも。あ、その移籍金でまたまた大補強? ▽それにしても鹿島って一般企業で言ったらブラック? 的な? だって11月頭からシーズンオフに入ってるクラブもあるのに、まだまだ働いてますよ〜。その試合も残業になってないだけまだましなんだけど。そう言えば、初戦の前に某選手に「ここで負ければ休みが増えますよ」って聞いてる選手がいて、その選手が思わず「……そうですね」と言ったのは、記者誰もが書いてない公然の秘密です。 ▽ついでに言えば、どうしてこの「鹿島組」の選手があんまり代表でプレーしてないのかしら、昌子源とか植田直通とか無茶苦茶いいんじゃなの? とオレが思ってることも秘密です。【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.12.15 17:15 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】ビデオ判定によるPKに違和感

▽FIFAクラブワールドカップ(W杯)で、開催国枠で出場した鹿島が準決勝でナシオナル・メデジン(コロンビア)を3-0の大差で下し、アジア勢としては初となる決勝進出を果たした。 ▽鹿島は1次ラウンドでオークランド・シティ(ニュージーランド)に先制点を許したが、交代出場の赤崎と金崎の連続ゴールで逆転。準々決勝のマメロディ・サンダウンズ(南アフリカ)、準決勝のナシオナル・メデジン戦はいずれも前半から押し込まれたが、持ち味である堅守とGK曽ヶ端のファインセーブなどで無失点に切り抜ける。そしてマメロディ・サンダウンズ戦では遠藤と金崎のゴールで2-0、ナシオナル・メデジン戦は土居のPKと遠藤、鈴木の追加点で3-0と快勝した。 ▽この2試合でゴールをマークした金崎と鈴木はいずれも交代で入った選手。1次ラウンドに続き石井監督の采配もズバリ的中したと言える。堅守速攻をベースに試合巧者の鹿島が、これまでは、なぜかACLで結果を残すことができずに不思議に思っていた。しかしクラブW杯というグレードアップした大会で結果を出したことで、来シーズンのACLにも期待が持てそうだ。 ▽ただ、ナシオナル・メデジン戦では違和感も覚えた。前半26分過ぎ、ナシオナル・メデジンのスローインでプレー再開という時に、主審がストップをかけたまま試合は数分間、中断された。FIFA主催の大会で初めて試験導入されたビデオ判定が適用されたものの、スタンドで観戦していたファンには何が起こったか分からなかったと思う。 ▽ビデオ判定の結果、鹿島のミドルサード左でのFKで、柴崎のクロスに対しゴール前ファーサイドに飛び込んだ西が足を引っ掛けられて転倒したとして、鹿島にPKが与えられた。VTRで繰り返し見たが、故意に足を引っ掛けたというよりも、身体を寄せた際に引っ掛かってしまったという印象を受けた。CKやFKの守備では、相手をフリーでプレーさせないため、身体を寄せるのは常套手段だ。その際に、ボールと直接かかわるプレーではないものの、ホールディングは今シーズンから厳しくジャッジすることになった。しかし西への反則はホールディングではない。 ▽幸いにもビデオ判定はこの1シーンだけだったが、「試合中に何度も繰り返されるようなら、流れが途切れてしまう」と石井監督が試合後に語ったのも頷ける。PKかどうかの判断も含めて、ジャッジは人間が下すから、例えそれがミスジャッジであっても受け入れるところに様々なドラマが生じると思う。ビデオ判定はゴールかどうかの判定だけにとどめた方が、選手もファンもすっきりするのではないだろうか【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.15 17:00 Thu
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【原ゆみこのマドリッド】差がひしひしと感じられる…

▽「へえ、日本は初めてなんだ」そんな風に私が意外に感じていたのは金曜日。横浜の三ツ沢スタジアムでの練習前に話していたマルセロの映像をTVのニュースで見た時のことでした。確かにここ3年で2度CLに優勝して、その度、クラブW杯に出ているレアル・マドリーですけどね。2014年はモロッコでの開催でしたし、その前のnovena(ノベナ/9回目のCL優勝のこと)は2002年とかなりの昔。となると、マルセロだけでなくセルヒオ・ラモスも日本未体験なのは当然で、もしや知っているのは当時現役だったジダン監督と、2008年にマンチェスター・ユナイテッドの一員としてトロフィーを掲げただけでなく、個人的な商業活動で何度も来日しているクリスチアーノ・ロナウドぐらいしかいない? ▽まあ、マドリーが月曜日の早朝に日本上陸してからのことは、こちらも大会初戦のオークランド・シティ戦で決勝点を挙げた鹿島アントラーズの金崎夢生選手のことを、ただMuとだけ表記し、一体どこの国の人なんだろうと私の首を傾げさせたAS(スペインのスポーツ紙)の帯同記者のように、どこか怪しげなスペインマスコミのフィルターを通してしかわからないため、あまり情報も伝えられないんですけどね。それより驚いたのは遠征に発つ前夜。そろそろ日付が変わるぐらいの時間でサンティアゴ・ベルナベウを出る直前に、ラジオ・マルカ(スポーツ専門局)のレポーターが「朝8時の飛行機で行く」とマイクに喋っていたのは決して私の聞き間違いではなく、選手たちがまだ真っ暗な午前5時半にはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場にスーツ着用で律儀に集合していたこと。 ▽いえ、もちろん前日のデポルティボ戦には、ジダン監督のローテーションでロナウド、ベンゼマ、モドリッチら、ベンチ入りしていない選手もいたんですけどね。それでもロナウドなど、2015年初頭にロシア人モデルのイリーナ・シャイクさんと別れて以来となる彼女連れでパルコ(貴賓席)観戦。後半ロスタイムにセルヒオ・ラモスの奇跡のremontada(レモンターダ)弾が決まるまで、21歳の元ブランドショップ店員兼モデル、ジョルジーナ・ロドリゲスさんと一緒に応援していましたし、他の2人だって試合は見ていたはずとなれば、やっぱり夜にも朝にも強くないとエリートクラブの選手にはなれないのかも。 ▽え、それより何でまた、デポルティボ相手にそんな綱渡りの試合になってしまったのかって? ベイルは長期リハビリ中なので仕方ないんですが、やはりBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)が1人もいないのは痛かったようで、前半のマドリーは得点が挙げられず。幸い、50分にはその日、先発CFのチャンスをもらったモラタがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、前日の夜にマジックショーの舞台でイタリア人モデルの彼女、アリス・カンペッロさんにプロポーズしたりして、舞い上がっているからダメなんだというファンからの批判をかわすことができたんですが、ここからデポルティボの反撃が始まったんですよ。 ▽そう、前半にもボルヘスが2度程、チャンスを掴んでいた彼らですが、RMカスティージャ出身のホセルがピッチに入ったことで、一気に形勢が逆転。63分にはカゼミロから敵エリア近くでボールを奪ったフロリン・アンドネがカルレス・ヒルに繋ぎ、彼からパスをもらって同点弾を決めたかと思えば、2分もしないうちにまたしてもフロリンからのアシストで2点目をゲットしているんですから、驚かせてくれるじゃないですか。これで試合前には、「El empate es bueno, muy bueno.../エル・エンパテ・エス・ブエノ、ムイ・ブエノ(引き分けならいい、とてもいい)」と言っていたガイスカ・ガリターノ監督の望みは叶いそうになったんですが、そこは35試合連続無敗のクラブ新記録が懸かっていたジダン監督。ルーカス・バスケス、マリアーノに続き、マルセロを投入して、DF3人体制で得点を目指したところ…。 ▽まずは83分、開幕前の夏にもこの冬にもリーガや国外のクラブからレンタルのオファーが尽きないにも関わらず、マドリーで成功するという夢を決して諦めることのないマリアーノがルーカス・バスケスのクロスを頭で流し込み、スコアは2-2に。その日は2位のバルサもオサスナに0-3と勝っていたものの、それでも勝ち点差はまだ4ありましたし、記録更新という意味ではここで終わっても構わなかったんですが、ロスタイムに入って、お馴染みの彼が発奮してしまったんですよ。 ▽いえ、2014年のCL決勝や先日のクラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)でCKを蹴ってくれた心の友、モドリッチはいなかったんですけどね。「Teniamos muchas veces hablado ese corner, lo habiamos visto mil veces/テネモス・ムーチャス・ベセス・アブランドー・エセ・コルネル、ロ・アビアモス・ビストー・ミル・ベセス(ウチは何度もCKのことを話し合って、何千回も映像を見ていた)」(ガリターノ監督)デポルティボのDF陣を振り切って、クロースからのボールをヘッドで叩き込んでしまったとなれば、「A Sergio Ramos se le puede parar con una gripe.../ア・セルヒオ・ラモス・セ・レ・プエデ・パラール・コン・ウナ・グリペ(ラモスを止められるのはインフルエンザだけ)」(ホセル)という答えは正解? ▽ただ、ガリターノ監督は「ロスタイムが5分と出た時、マドリーが得点するまで終わらないとわかった」と文句を言っていましたが、ラモスのゴールは今回、92分。むしろCKを与えないようにするとか、事前の策を講じるべきだったと思いますが、ジダン監督によると、「マークすることはできるが、ラモスは頭がいい。よく動いて常にボールが落ちるところにいる」そうですし、ゴール生産責任者の1人であるモラタに至っては、「No se como lo hace Ramos, pero siempre lo hace/ノー・セ・コモ・ロ・アセ・ラモス、ペロ・シンプレ・ロ・アセ(ラモスがどうして入れるのかわからないけど、いつもやるね)。ボクにも入れさせてもらいたいよ」なんて羨むばかりでしたからね。 ▽実際その日、お決まりで試合後、かなり遅くなってミックスゾーンに出て来た当人曰く、「Con ilusion, fe y entusiasmo hasta el final las cosas se dan/コン・イルシオン、フェ・イ・エントゥシアスモ・アスタ・エル・フィナル・ラス・コーサス・セ・ダン(最後まで夢と信念と情熱を持ち続ければ、物事は上手くいく」そうなんですけどね。ちなみにそのコメントを聞いた時には背の高いスペイン人記者が前に沢山いたため、横の方から伺っていた私はラモスの左手には甲にまでタトゥーがあるのを見て、驚いていたんですが、ずっと手をポケットに突っ込んだままだったのは、新作の各指の赤い数字を日本到着まで秘密にしておきたかったから? まあ、そんなことはどうでもいいんですが、クラブW杯準決勝、木曜日のクラブ・アメリカ戦や日曜日の決勝では、そのマドリーの伝統芸を日本のファンも目の辺りにする機会があるかもしれませんよ。 ▽一方、その土曜日にはマドリッドの新弟分、レガネスが前節のビジャレアル戦でスコアレスドローを演じた後、得点するというハードルを超えたものの、ラス・パルマスに先制点を奪われていたため、1-1でやっぱり引き分けに終わったなんてこともあったんですが、概ね平和に過ごした日曜日の後、災厄が訪れたのは月曜日。いえ、昼間に行われたCLベスト16抽選ではマドリーがナポリと、アトレティコもレバークーゼンと当たったため、レスター・シティを引いたセビージャ程ではありませんでしたが、PSGとまたしても当たることになったバルサなどよりは遥かに安心できたんですけどね。 ▽近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)にビジャレアル戦を見に行く前、バロンドール賞はロナウドが受賞と発表されたことも世間の予想通りだったため、それはそれで良かったんですが、まさか今になって、アトレティコ恒例の冬のcrisis(クリシス/危機)が再来しようとは! うーん、その兆候はすでにマドリーダービーの頃から現れていたような気はするんですけどね。エル・マドリガルでの彼らは開始から15分ぐらいまで、まるで「Hemos salido dormiendo/ヘモス・サリードー・ドルミエンドー(ウチは眠ったままピッチに出た)」という、懐かしい言い訳がピッタリの状態で、そこから少しは目覚めたものの、27分にはこれまた、ダメダメだったシメオネ監督時代前の悪癖、守備の大ポカが発現。 ▽今回はチアゴでバックパスをロベルト・ソリアーノに奪われ、ゴディンもボールを取り戻すことはできず、最後はトリゲーロスのシュートでビジャレアルに先制点を献上してしまったから、呆れたの何のって。その直後にチアゴがサウールと交代となったため、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)のコメンテーターなど、「シメオネ監督はパコ・ヘメス化してるんじゃ」なんて、現在2部にいるラージョや今季の始めはグラナダを指揮していた、ミスった選手をすぐ代える名物監督(今はメキシコのクルス・アスール)を引き合いに出していましたが、これは当人がヒザの痛みを訴えたせいだったと後に判明。ただ、その先の悲劇に比べれば、まだこんなの、ほんの序の口ですって。 ▽というのも37分にはGKオブラクがパトのシュートを不用意に弾き、詰めていたドス・サントスに2点目を決められてしまったんですが、そのプレーで彼が左肩を脱臼。翌日の検査で手術が必要、全治3、4カ月となってしまったとなれば、彼は昨季のサモラ(リーガで失点率が最も低いGK)ですからね。試合のその後を引き受けたモヤがプレシーズンから数カ月負傷のリハビリをしていたため、一旦はレンタルが決まっていた若いモレイラを呼び戻しておいて先見の明があったなんて、誰も喜べませんよ。 ▽この2人の交代で残り枠が1つになってしまったシメオネ監督には結局、その日はやることなすこと的はずれでイエローカードまでもらい、次節は累積警告になってしまったコレアを後半途中から、カラスコにするぐらいしか打つ手がなくなってしまったんですが、そんな時、哀しいのはアトレティコにはお隣さんに備わっているレモンターダ体質がないこと。いえ、それにはグリーズマンがここ8試合、ノーゴールと不調なのも影響しているんですけどね。とにかく1点でもと、捨て身で攻めていた後半ロスタイムには、ソリアーノに3点目を決められ、とうとう順位も6位まで落ちてしまったって、これが冬の危機でなかったら、一体何なんでしょう! ▽うーん、アトレティコの旧時代を知らないサビッチなど、「昨季はバルサと勝ち点差12ついたけど、最後は3になった。Queda Liga, Champions, Copa, no está todo finalizado/ケダ・リーガ、チャンピオンズ、コパ、ノー・エスタ・トードー・フィナリサードー(リーガもCLもコパ・デル・レイも残っている。まだ全部終わってないよ)」と試合後も前向きでしたけどね。現実的には「Estamos jodidos. La Liga se pone muy cuesta arriba/エスタモス・ホディードス。ラ・リーガ・セ・ポネ・ムイ・クエスタ・アリバ(皆、最悪な気分だよ。リーガはとても大変になった)」(ガビ)という方が真実に近いかと。 ▽実際、このままで来季、堂々完成オープンの新スタジアム、ワンダ・メトロポリターノでヨーロッパリーグを戦うことになったら、下手に収容人数が増えた分、空席も目立つのではないかと、私など戦々恐々しているんですが、一番気に懸かるのはシメオネ監督が「チームは戦っているし、よく働いて、勝つために努力しているが、los resultados no nos están favoreciendo/ロス・レスルタードス・ノ・ノス・エスタン・ファボレシエンドー(結果がウチに味方してくれていない)」と言っていたことで、だってこれって、ツキがないって意味ですよね。 ▽もちろん、プレーにこれまでのような激しさがないとか、ゴディンやガビ、ファンフランらベテランのプレーレベルの低下、そしてコケやサウールら若手の至らなさなども言われてはいますが、以前、チームが危機に陥った場合、アトレティコの解決方法は単刀直入に監督の交代。といっても、たとえ選手たちが5年続く同じ指揮官に飽きてきているのかもしれないとしても、大功労者であるシメオネ監督を簡単にクビにできる訳もありませんし、それ以上の監督だって滅多にいないとなれば、やっぱりチーム揃ってお祓いにでも行くしかないのでは? ▽そうこうするうち、火曜日の練習ではヒメネスも足をケガしたなんて報も入ってきたため、本当に何かに憑かれているんじゃないだろうかと心配になった私でしたが、年内のリーガ戦はまだ1試合ありますからね。土曜日のラス・パルマス戦になりますが、せめてその際には首位のマドリーと12差に開いた勝ち点を、彼らが延期したバレンシア戦を来年こなすまでですが、とりあえず9に戻して、クリスマスのparon(パロン/リーガの休止期間)に入ってもらいたいかと。いやあ、アトレティコを見ていて、こんな憂鬱な気分になるのは私も久々ですが、それだけ事態が深刻ってことでしょうかね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.14 13:08 Wed
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【原ゆみこのマドリッド】一応、CLの順位は上だけど…

▽「今のやつの方が好きかな」そんな風に私が感じていたのは金曜日、来季からアトレティコがホームとするペイネタ・スタジアムの正式名称がワンダ・メトロポリターノになったと発表されたプレゼンで、同時にクラブのエスクード(紋章)もリニューアルされると知った時のことでした(http://www.atleticodemadrid.com/noticias/el-escudo-evoluciona-para-la-temporada-2017-18)。いやあ、このチームカラーの赤白ストライプをメインにマドリッドの象徴であるoso(オソ/熊)がmadrono(マドローニョ/ヤマモモの木)に乗りかかっている図柄が左上に入っているデザインは、今年も回りの黄色い縁取りを取ったとかで、細々とは変わっているんですが、基本は1947年から大体同じ。 ▽それが何故か、いきなり熊の向きが反対になったかと思いきや、アクセントになっていた木の葉の緑部分まで青くなったせいで、どこか茫洋としてしまった感は否めませんが、まあ、慣れの問題でしょうかね。逆にスタジアム名は、スポンサーの中国企業の名前はお約束で仕方ありませんが、ビセンテ・カルデロンができる前、1955年から1964年まで使っていたメトロポリターノを入れたため、プレゼンに出席したフェルナンド・トーレスが契約更新の希望を込めて、「いつか祖父に『ボクもメトロポリターノでプレーした』って言えるかも」と話していたように、年期の入ったファンの心はもちろん、若いファンの耳にもそこそこ恰好良く響くのではないかと思ってしまうのは私だけ? ▽いえ、だからって、「En 24 años que tengo sólo conocí un escudo y un estadio del Atlético de Madrid/エン・ベインテクアトロ・アーニョス・ケ・テンゴオ・ソロ・コノシ・ウン・エスクード・イ・ウン・エスタディオ・デル・アトレティコ・デ・マドリッド(24歳のボクはアトレティコの紋章もスタジアムも1つしか知らない)」と言っていたコケが、「悲しいけど満足もできる。だって、ボクらがサッカーで到達したレベルと同様、他の全ての面でもクラブが世界的なレベルになってきたってことだから」という意見には、諸手を挙げて賛成する気にはなりませんけどね。 ▽というのも、今のところ、新スタジアムには最寄りにメトロ(地下鉄)の駅がなく、セルカニアス(国鉄近郊路線)の駅からかなり歩かないといけないことや、来季の開幕から2試合は準備が間に合うかどうか不明で、LEP(スペイン・プロリーガ協会)にアウェイ戦にしてくれるよう頼んだりしているのはともかく、最近の彼らはそんなにサッカーの面で成長したところを見せているとは言い難くなってきているからですが、やっぱり一番わかっているのは最後にコメントしたシメオネ監督。曰く、「新スタジアムについてはもう言い尽くした。Ahora hay que ganar el domingo/アオラ・アイ・ケ・ガナール・エル・ドミンゴ(今は日曜に勝たないといけない)」ということで、本質はその通りですから、次のビジャレアル戦は月曜なんだがというツッコミはなしにしましょうね。 ▽ちなみにどうしてまた、私がアトレティコのサッカーに疑問を抱いてしまったのかというと、もちろん今週あったCLグループリーグ最終節、バイエルン戦のせいで、いえ、前半27分にレバンドフスキにFKを決められ、そのまま1-0で負けてしまったのは、すでに首位突破は確定していましたし、6戦全勝チームはCL優勝したことがないというジンクスもあるため、別にいいんですけどね。点が取れそうなチャンスは前半15分までにカラスコがGKノイアーに弾かれた2本のシュートぐらいで、それ以降は向こうも本気でなかったにも関わらず、バイエルンの独壇場。「Todos hemos estado atras ayudando a defender/トードス・エモス・エスタードー・アトラス・アジュダンドー・ア・デフェンデール(ボクらは皆、下がって、守備に協力していた)」(グリースマン)という状態だったなれば、どんなにこちらのフラストレーションが溜まったことか。 ▽それでも終盤には少しは反撃を仕掛けたため、シメオネ監督は「Me quedo con los ultimos quince minutos, donde el Atletico volvio a ser lo que debe ser/メ・ケド・コン・ロス・ウルティモス・キンセ・ミヌートス、ドンデ・エル・アトレティコ・ボルビオ・ア・セル・ロ・ケ・デベ・セル(自分は最後の15分間が気に入った。アトレティコがそうでなければいけない姿に戻ったからね)」と満足を示していましたが、いや、ノイアーの純白のユニフォームは最後までまったく汚れてなかったですよ。おまけに先週末のエスパニョール戦同様、それどころか、マイナス4度でもっと寒かったアリアンツ・アレナでは尚一層、3本とパスが続かないのを見せられれば、たとえこのグループリーグ、6試合で32チーム随一のチーム走行距離703キロを記録したと聞いても、「そりゃあ、ミスパスであれだけボールを取り戻すのに駆け回っていればねえ」と思ってしまう私はもしや意地悪? ▽いやあ、敵方のアンチェロッティ監督など、気の毒に思ったのか、「Este Atleti tiene ahora mas calidad/エステ・アトレティ・ティエネ・アオラ・マス・カリダッド(今のアトレティコはより高い質を持っている)」と褒めてくれていましたけどね。丁度、その試合の直前には、これもアトレティコのカンテラーノ(下部組織出身の選手)故の間の悪さなのでしょうか。2012年にボルシア・メンヘングラッドバッハに移籍したCBドミンゲスが背中の負傷がずっと治らず、「A nadie le gustaría ser un inválido con 27 años/ア・ナディエ・レ・グスタリア・セル・ウン・インバリドー・コン・ベインテイシエテ・アーニョス(誰だって27歳で障がい者にはなりたくない)」と自身のSNSで引退を発表。それに選手たちもショックを受けてしまったのかもしれませんが、当のメンヘングラッドバッハも同日、カンプ・ノウでアルダ・トゥランにハットトリックを決められたりして、4-0でバルサに惨敗していましたからね。 ▽実際、この最終節で勝っても負けても火曜組のスペイン勢が来週月曜のCLベスト16組み合わせ抽選でシードチームとなるのは決まっていたため、ルイス・エンリケ監督も「seguro que nos tocara el mejor o el que mas puntos lleve/セグロ・ケ・ノス・トカラ・エル・メホール・オ・エル・ケ・マス・プントス・ジェベ(きっとウチは一番のチームが最も勝ち点の多いチームと当たるだろう)」と言っていた通り、バルサにはバイエルンやPSGといった強豪を引き当ててもらいたいものですが、何にせよ、決勝トーンメントは2月後半の話。 ▽今はむしろ、これでまたグリースマンのノーゴール時間が700分近くに伸びてしまったことや、せっかく先発に抜擢されながら、今回もガイタンは実力を見せることができなかったことなどが心配なんですが、さて。木曜にヨーロッパリーグのステアウア戦に2-1と勝って、グループ突破を決めたビジャレアルとの月曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの試合に向けての数少ない、いいニュースは、フィリペ・ルイスは太もものケガが再発して年内はプレーできなくなってしまったものの、バイエルン戦で左SBを務めたルーカスが大いに信頼できることが再確認できたことでしょうか。 ▽そして翌水曜はサンティアゴ・ベルナベウに足を運んだ私でしたが、こちらはレアル・マドリーの1位がまだ確定していなかったせいで、fond sur/フォンド・スール(南側ゴール裏スタンド)には華々しい垂れ幕も現れ、前日よりは両チームにも緊張感があったんですが、前半28分にはカルバハル、後半8分には久々に先発に復帰したハメス・ロドリゲスからのクロスでベンゼマが2得点。もうそれでマドリーが逆転首位で終わるかと思われたんですけどね。香川真司選手は負傷で来ていなかったものの、相手が近年、マドリーと撃ち合いを演じてきたドルトムンドだったのが災いしました。 ▽そう、それまでも攻撃の回数では決して負けていなかった彼らは後半15分、シュメルツァーのパスを、「マドリーでいつかプレーすると祖父と約束した」というオーバメヤングがゴールにして、ペレス会長に猛アピール。これで1点を返すと、トゥーヘル監督は風邪気味だったロイスと若いエムレ・モレを投入して更に畳みかけることに。時間はかかりましたが、43分にはこの交代が功を奏して、今度はオーバメヤングのアシストからロイスが押し込み、とうとう同点になってしまったのですから、スタンドもガッカリしたの何のって。ええ、これでマドリーはまた2位に逆戻りです。 ▽結局、その日はロスタイムにセルヒオ・ラモスの奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)弾も生まれず、試合は2-2の引き分けで終了。うーん、終盤の失点をマルセロなどは「el empate final ha sido mala suerte/エル・エンパテ・フィナル・ア・シードー・マラ・スエルテ(最後に引き分けになったのは運が悪かった)」と言っていましたが、いえいえ。それでもジダン監督は34試合連続無敗というクラブ記録に並びましたし、何せ、今季は2位終了チームに強豪が少なくないという特殊な状況にありますからね。同日、リヨンとスコアレスドローに持ち込んで、やはり2位で突破したセビージャもそうですが、アーセナルはともかく、レスター・シティやモナコ、ナポリなら十分、ベスト16で勝ち目があるかと。 ▽ちなみにジダン監督の当たりたくない相手はユベントスなんですが、ファン的にはようやくこの日の試合で今季不調の汚名を払拭したベンゼマと、かつて彼とCFの座を争ったイグアインの元同僚対決なんか興味が持てますし、ケガが治ってドルトムンド戦に途中出場したモラタも2年間、お世話になった修行先の先輩たちに自身の成長を見てもらいたいことでしょうしね。そう思えば、結構、悪くないカードでは?ただ、その対戦相手が決まる前に彼らにも、クラブW杯のために日本に発つ前日の土曜、年内最後となるリーガ戦が控えています。 ▽え、相手は16位のデポルティボなんだから、ジダン監督が連続無敗の新記録を達成するどころか、かなりの可能性でgleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が期待できるんじゃないかって?いやあ、それが前節のデポルティボはレアル・ソシエダ相手に5-1と大勝をしていて、月曜のオープン放送枠だったため、TVを横目で見ていた私も呆気に取られた程の景気の良さ。それでもチーム力に自信を持つジダン監督は金曜日、クリスチアーノ・ロナウド、ベンゼマ、モドリッチに休養を与えるため、招集リストに加えないことにしたから、驚いたの何のって。 ▽いえ、確かに2位のバルサと勝ち点差6というのは余裕ですし、日本までの長距離移動をした後、来週木曜には準決勝、日曜には決勝を戦って、CL、UEFAスーパーカップに続く、今年3つ目のタイトル獲得を目指しているマドリーにしてみれば、とりわけドルトムンド戦で冴えが見えなかったロナウドとモドリッチにはエネルギー満タンでいてもらいたいところでしょうけどね。クロースが中足骨の骨折から早期回復、カセミロも徐々にリズムを取り戻してきている上、コバチッチやイスコ、ルーカス・バスケスらも出場すれば、高いレベルで仕事をするため、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)抜きでも不安はないんでしょうが…それにつけても世の中は不公平。 ▽だって、昇格したばかりの少ない予算で選手をかき集めながら、マドリッドの新弟分、レガネスなど、この土曜のラス・パルマス戦でも負傷欠場者が8人もいるんですよ。現在、順位は15位ですが、降格圏との差もいよいよ勝ち点2となって、お尻に火がついている状態なんですが、こればっかりはねえ。先週末のビジャレアル戦は緊急補強のGKエレリン(アスレティックからレンタル移籍)が活躍して、0-0で乗り切ったものの、果たして今度は得点の方まで手が回るかどうか。マドリーとその来年に持ち越される16節の相手のバレンシア以外、年内のリーガはあと2試合。ここで勝ち点を溜められるかどうかで、クリスマスのシャンパンの味も変わってきますから、レガネスの選手たちも頑張れるといいのですが…。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2016.12.10 10:23 Sat
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【六川亨の日本サッカー見聞録】クラブW杯初戦のMVP永木は当然の選出だった

▽昨日8日に開幕したFIFAクラブW杯の準々決勝プレーオフで、開催国枠出場の鹿島は金崎の逆転ゴールでオークランド・シティを2-1で下し、初戦を突破した。試合のMVPに選ばれたのは金崎ではなく、同点弾をアシストした永木だったが、納得できる選出だった。 ▽というのも、試合は立ち上がりから鹿島ペースで、ボールポゼッション率でもオークランドを圧倒したものの、言葉は悪いが「ボールを回しているだけ」の攻撃だった。石井監督が「なかなかギアが上がらない展開。CSの疲れからか、前半は全体的に身体が重かった」と言えば、永木も「立ち上がり、フワッと入ってしまった。過密日程と優勝した余韻に浸った気分があったのかな」と振り返っていたが、苦戦した原因は引いた相手に対し、足元から足元へとつなぐパスが多かったことだ。 ▽トラップしてからのパスは相手も予測しやすい。逆説的に言うと、ワンタッチ(ダイレクト)のパスでの突破がなかったのは、スペースへ走り込む選手がいなかったということにつながる。ここらあたりの動き出しの少なさを、石井監督は「身体重かった」と指摘したのかもしれない。 ▽引いて守りを固めるオークランドを攻めあぐねた小笠原は、何度もサイドチェンジを繰り返しては“幅”のある攻撃で揺さぶろうとした。しかし、最後の突破となるタテへの仕掛けではスペースがないため、遠藤や西、山本へのパスはゴールラインを割ることが多かった。 ▽流れが変わったのは、63分に小笠原に代わって金崎が投入されてからだった。この交代で、それまで左サイドハーフだった柴崎がボランチに入り、2トップだった土居を左サイドハーフにコンバートして、金崎と赤崎の2トップにした。すると柴崎は、サイドチェンジという“幅”を使った攻撃に加え、バイタルエリアの2トップへタテパスを入れる“深さ”を使った攻撃でオークランドDF陣をおびき出した。 ▽そしてもう一つの変化は、小笠原が司令塔の役を務める時はアンカーとして守備に回る永木が、柴崎がボランチに入ると果敢に前線へと飛び出したことだ。67分の赤崎の同点ゴールは、右サイドで永木が遠藤とのパス交換からスペースへ抜け出し、絶妙のクロスを送ったことで生まれた。突進すると見せて後方に戻りながら、自身の前にシュートスペースを作った赤崎のプレーも秀逸だったことも付け加えておこう。 ▽そして思ったのは、やはり柴崎はサイドに置くよりもボランチの方が生きるということ。小笠原とのコンビで攻撃力は確実に増す。しかし永木の攻守における貢献度も捨てがたい。ここらあたりが石井監督も頭を悩ますところだろう。 ▽最後に、CS第2戦の2ゴールに続き、この日も決勝点を決めて“神ってる”金崎を、ハリルホジッチ監督はどう評価するのだろうか。次の代表招集はまだ先のことなので、それまで金崎が好調を持続しているかどうか分からないが、ちょっと気になるところでもある。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2016.12.09 15:56 Fri
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【倉井史也のJリーグ】おーい、日本国民のみなさん、まだサッカーシーズンなんですけど?!の巻

▽ええっと、なんか自分で「鹿島来るかも!」とか書いといてなんですけど、ちょっと浦和かわいそうだったかなって。だって11月3日にリーグ戦終了! ってやって、29日と12月3日に試合でしょ? そりゃシーズン終盤の上り調子を維持できませんよ。ちゅうか、サッカーに関心低い人って、「あれ? 浦和優勝したじゃん。そのあと代表戦ですっごいイイもの見たんだけど、まだ何かあんの?」みたいな状態だったんじゃないの? ▽で、そのままの勢いで鹿島がクラブワールドカップ(FCWC)に参戦してんだけど、こういう感じでチャンピオンシップやらせてあげたかったかなって。 ▽んでもって、さらに不幸な扱いになったのが20日に開催される「Jリーグアウォーズ」。FCWC挟んだ後に開催されるから、またまた余計にわかんない催しになってないッスか? しかも今年も受賞者しか呼んでません! 賞に関係ない人は来なくてよし!! ▽今年のプレスカンファレンスでは会見なんかに関係ない監督は「行けたら行くわ」的な話で、おかげですんごく寂しい感じになったのに、終わりもそんなん? せっかく横浜アリーナでやるのに? ▽ちょっと前って全チームのサポーター招待してませんでしたっけ? それってたとえ自分のチームの選手が表彰されなくても、せめて勇姿だけは見に行こうって気持になれただろうに、ますます興味引きませんって。 ▽まぁ日程が悪いのはわかってますよ。ワールドカップ予選もあったし、チャンピオンシップもぶっ込まなきゃいけなかったし、FCWCもあったし。だけど、今回のアウォーズで紹介される選手って、もしかしたら11月3日以降、ずっとお休みでもよかったかもしれないわけでしょ? 1カ月半経ってやってきて「あぁどうも」って。 ▽せめて式典終わった後のパーティーはスポンサーだけじゃなくて、ファンや関係者やみんなで楽しくやったほうがいいんじゃないですか? 今のままだとどっちに向いてるか、全然わかんないんですけど。 ▽……いえいえ、応援してた川崎が負けたからって荒れてるわけじゃないですし、浦和の敗退にキレてるわけでもないんですよ。ただアジアチャンピオンではない開催国チームに負けたチームが、世界7位になる大会って、やっぱちょっとおかしいっしょって、フンマンやるかたないわけです。ま、それでも鹿島にゃがんばってほしいんですよ。鹿島が勝ち進むことが、「薄い」人の関心をサッカーに繋いでおいてくれるたった一つの手段な気がしてますんでね。ええ。【倉井史也】 試合当日は、はやる気持ちを抑えられずスタジアムに受け付け開始と同時に駆けつけ、選手のバスが両方行ってしまうまで名残を惜しむ。自慢は対戦カードの因縁をよく覚えていること。特にサポーター寄りのネタが得意。パッと見は若いが実は年齢不詳のライター。 2016.12.09 11:00 Fri
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【東本貢司のFCUK!】熱血コンテがプレミアを撃つ

▽12月3日のマンチェスター・シティーvsチェルシーは、事件満載、スペクタクルだった以上に、両軍のキャラと現状を如実に見て取れた感が強く、実に興味深かった。勝負のアヤは、ファーストハーフ終了間際のギャリー・ケイヒルによるオウンゴール。これが格好の“ビンタ”となって、アウェイのチェルシーイレヴンのスピリットに火が付いたという印象だったが、逆に後半のシティー・ディフェンスに時間が経つほど目に見える生ぬるさと小さな判断ミスの連鎖をもたらしたような気がする。得点経過を見ればそれがよくわかるだろう。60分、70分、そしてオフィシャルタイム末の90分。そこに、絵に描いたようなアグエロ(ダヴィド・シルヴァ)、フェルナンジーニョ(ファブレガス)のレッドカード退場劇が続いた。コンスタントでおよそブレの見えないチェルシー、とらえどころがもう一つで、ときにストレスが負の方向に働いて自滅したような、ちぐはぐそのもののシティー。 ▽そんな印象を振り返りながら、ふと、思い当ったことがある。他でもない、両指揮官のいつになく顕著だったお馴染みの風情だ。子供じみたという形容詞すら思い起こさせる、アントニオ・コンテの派手で感情むき出しのオーバーアクションと、舞台俳優も顔負けの露骨な表情。一方のペップ・グアルディオラは思索家然として洗練された物腰こそ変わらないが、画面に抜かれるたびに物憂い表情をにじませ、振る舞いも消極的だ。泡立つような熱血を全身で表すイタリアンと、何事にも動じないフリを肝に銘じようと自制する哲学者スパニッシュ。ふと「ローマは一日にしてならず」の諺を生み出したセルバンテスの古典的大ベストセラーを思い出す。ドン・キホーテは何やら屈託を抱えながらもひたすら我が道を突き進むが、内に秘めた狂熱の理想はいつ噴出して手も付けられない事態を呼び起こすがわからない。変な理屈だが、ペップとコンテはそれぞれ、ドン・キホーテの二面性を明確に分離したキャラに見えてくる。あるいは(舞台設定から)ジキルとハイドのように。 ▽そんな“妄想”を頭の隅に残したままでゲームの振り返りに戻ろう。つまり、ピッチの上ではベンチの指揮官とは真逆のキャラが、それぞれのプレーヤーたちによって演じられていた。末尾のアグエロとフェルナンジーニョによる激した粗相が象徴するシティーイレヴンの、的を外した大立ち回りと、終始クールで敵の心の隙をあざ笑うように落ち着き払ったビジタープレーヤーたち。あの“問題児”ディエゴ・コスタが人が変わったように“大人っぽく”見え、実際に大人びたプレーで脇役を務めてみせたほどに。コンテに周到な演技プランがあるとは思えない。あのホッドブラッド・アクションは彼の紛れもない“素”だ。それがむしろ、ピッチ上の戦士たちをクールに躍らせる。そんな気がしてきたのだ。多分、それで当たらずとも遠からず。ジョゼ・モウリーニョ時代の9試合に迫る、8試合連続勝利という事実もそれを裏付けする。なにしろこの間、コンテはほとんどチームをいじっていない。無論、ヨーロッパの試合がないというプラスハンディの恩恵もあるが。 ▽このコンテ流・チーム再生術の開花には、イメージ作戦(?)のみならず、実際的根拠も散見する。一に、最近のプレミアではとんと珍しい3バックで固定し、そのあおりで(不振模様の)イヴァノヴィッチはベンチが指定席になった。卵が先か鶏が先かの論議になるが、そこで注目すべきは実力者ファブレガスも控えに回されている事実だ。そして、8月の移籍締め切りぎりぎりに獲得にこぎ着けたダヴィド・ルイスとマルコス・アロンソ。ルイスは3バックの中央にどんと居座り、アロンソは左サイドで絶妙なバランスメーキングを披露して、ヴィクター・モーゼズの左サイドコンヴァートをここまで見事に支えている。コスタの“変貌”やアザールの復調、あるいは新加入カンテとマティッチのダブルアンカーシステムがどうしても目立つのは致し方ないが、チェルシーの“クール・レヴェレーション”に欠かせない肝のキーマンは、ルイスとアロンソだと見てほぼ間違いない。ということは、コンテはオフに「3バックの補強の目玉」のプランを温めていったはずである。 ▽対リヴァプール、アーセナルの連敗は、確かにちょっとした危機感を周囲に与えたかもしれない。が、今となってはむしろ願ってもない教訓、もしくは良き反動の種になったと考えられる。そして、この迅速な立ち直りにも、コンテの本能的なオーバーアクションが必ずや寄与しているはず。勝手も負けても、勝ちゲームを引き分けに持ち込まれても、慌てず騒がずのペップ・キャラではこうはいかない・・・・のかどうかは何とも言えないが、少なくともプレーヤーに苦笑いをさせ、ファンを楽しませ、全体として微笑ましい印象すらもたらす効果は、個人的に認めたくなる。もっとも、ペップやモウリーニョが同じキャラに転じても滑稽なだけだろう。コンテならではである。うん、そういえば、リヴァプールのクロップにも通じるものがある。あの、不敵そのもののニヤニヤ笑いは、実に人なつっこく、かつ頼もしく見える。アクションも結構派手だ。これはどうやら、コンテとクロップのアクションバトルがタイトルレースを占う、番外的目安(?)になりそうな気配で。【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2016.12.07 11:15 Wed
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