2年前とは比べられない差…世界と渡り合う上で足りないもの/編集部コラム
2018.12.20 22:25 Thu
▽悲願のアジア王者に輝き、クラブ・ワールドカップ(W杯)に臨んだ鹿島アントラーズ。初戦のグアダラハラ(メキシコ)との一戦で見事な逆転勝利を収め、レアル・マドリーが待つ準決勝に駒を進めた。
▽2年前、日本で開催されたクラブW杯に開催国王者として出場した鹿島は、決勝の舞台に駒を進め、マドリーと対峙した。その時のスコアは4-2。しかし、一時は逆転するなど延長戦にまでもつれ込む接戦となっての敗戦だった。
▽そのリベンジを果たそうと強い気持ちで臨んだ鹿島。ケガでチームに帯同していないFW鈴木優磨は「みんなが戦って、レアルに勝ってくれるはず」とコメント。選手たちは強い気持ちを持って、チャンピオンズリーグを3連覇し、クラブW杯3連覇を目指すマドリーに挑んだ。しかし、結果は惨敗だった。
◆流れを分けたゲームコントロール
▽試合の立ち上がり、鹿島とマドリーとの間には、明らかな熱量の差があった。ボールへの反応やプレスの強度、選手個々の動きまで、上回っていたのは鹿島の方だった。一方で、マドリーはディフェンスラインも安定せず、鹿島は2分にセルジーニョ、直後のCKからも昌子源が触ればゴールという決定機を作り出した。
▽スローインの流れからではあったが、マルセロとベイルが絡んでゴール。序盤から何度となく試していたサイドバックとセンターバックの間を突く形で、見事に仕留めた形だ。
▽鹿島は良い入りをしたものの、マドリーのペースを崩すことができず、逆にコントロールされていく状況に。ピッチ内で選手たちが判断し、相手のウィークポイントを見つけて突いて行くという、強者のサッカーをしていた。
◆世界と渡り合う上で足りないもの
▽0-1で迎えた後半、鹿島はミスから失点。さらに、その数分後には人数こそ揃っていたものの、ボックス手前でキープしたマルセロのボールを奪いに行かず、ベイルをフリーにさせて決められてしまった。
▽Jリーグでは、試合巧者ぶりを見せる事も多く、低調な試合でもしっかりとコントロールして勝ち点を拾う鹿島。しかし、チャンピオンズリーグを3連覇しているマドリーを前には、その力を発揮することはできなかった。
▽ゲームコントロールの部分とも繋がってくるが、圧倒的な差を生み出したのは、ピッチ内での選手個々の判断力だろう。試合後の昌子源は「個々の力に圧倒的な差があった」と語っている。低調に見えても、しっかりと基本的な部分ではやらせない。それが王者・マドリーの姿だった。
▽また、ギアをチェンジし、相手のウィークポイントを見つけるという事も、鹿島に限らず、Jリーグクラブ、ひいては日本代表も苦手とするところだろう。日本のサッカーの場合は、自分たちのスタイルを通すことに軸点が置かれているケースが多く、4年前には「自分たちのサッカー」という言葉が一人歩きした。
▽さらに、ハーフタイムでは前半の分析から流れを変えることができる場合が多いが、後半の45分が始まってからは、試合をコントロール、流れに変化を加えることがあまりできないケースが多い。ピッチ内での判断力が問われる状況になると、打開する策を見つけられなくなる。それは、判断力でもあり、プレーの再現性が低いチームが多いからだろう。日本のサッカーが世界と渡り合うには、対応力と再現性をつけることが一番足りていない。
◆「自分たち」を出すなら「圧倒」を
▽「自分たち」のスタイルを出すのは強いチームであり、弱いチームは「相手への対策」を講じる。しかし、Jリーグにおいては、あまりにも“対策”がハマる試合が多い。
▽ポジティブに捉えれば、戦力差、実力差が拮抗したリーグと言えるだろう。一方で、ネガティブに捉えれば突き抜けたチームが存在しないとも言える。“対策”が講じられることは当然であり、それを如何にいなして勝利を掴むかが勝負の面白いところだが、それをピッチ内で判断する能力は、世界と比べればまだまだ乏しいと感じさせられた。
▽「低調」でありながらも力の差を見せつけ、鹿島のウィークポイントを炙り出し、試合をコントロールしたレアル・マドリー。世界最高峰の舞台で結果を残し続けるクラブに、まざまざと実力差を突きつけられた鹿島アントラーズ。日本で最も結果を残している常勝軍団は、この経験からさらに強さを増して行くに違いない。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
▽2年前、日本で開催されたクラブW杯に開催国王者として出場した鹿島は、決勝の舞台に駒を進め、マドリーと対峙した。その時のスコアは4-2。しかし、一時は逆転するなど延長戦にまでもつれ込む接戦となっての敗戦だった。
◆流れを分けたゲームコントロール
Getty Images
▽3-1の敗戦に終わった鹿島。当初期待されていたもの、思い描いていたものからは大きくかけ離れた結果となったはずだ。それは、スコアというよりも内容面。大きな力の差を見せつけられた。▽試合の立ち上がり、鹿島とマドリーとの間には、明らかな熱量の差があった。ボールへの反応やプレスの強度、選手個々の動きまで、上回っていたのは鹿島の方だった。一方で、マドリーはディフェンスラインも安定せず、鹿島は2分にセルジーニョ、直後のCKからも昌子源が触ればゴールという決定機を作り出した。
▽序盤は鹿島が優勢に試合を運んでいたが、マドリーは虎視眈々と鹿島の隙を見つけていく。FWガレス・ベイルを鹿島の右サイドバックの裏に走らせ、ゴールに近づく。中盤からディフェンスラインの間にスルーパスを通してボックスに侵入する。低調なスタートながら、ピッチ内で探り続け、鹿島の守り方にアジャストして行った結果、前半終了間際にゴールを奪った。
▽スローインの流れからではあったが、マルセロとベイルが絡んでゴール。序盤から何度となく試していたサイドバックとセンターバックの間を突く形で、見事に仕留めた形だ。
▽鹿島は良い入りをしたものの、マドリーのペースを崩すことができず、逆にコントロールされていく状況に。ピッチ内で選手たちが判断し、相手のウィークポイントを見つけて突いて行くという、強者のサッカーをしていた。
◆世界と渡り合う上で足りないもの
Getty Images
▽日本のサッカークラブで最も成功を収め、2年前はマドリー相手に善戦した鹿島。しかし、2年後の再戦は圧倒的な力の差を感じさせられる結果となった。▽0-1で迎えた後半、鹿島はミスから失点。さらに、その数分後には人数こそ揃っていたものの、ボックス手前でキープしたマルセロのボールを奪いに行かず、ベイルをフリーにさせて決められてしまった。
▽Jリーグでは、試合巧者ぶりを見せる事も多く、低調な試合でもしっかりとコントロールして勝ち点を拾う鹿島。しかし、チャンピオンズリーグを3連覇しているマドリーを前には、その力を発揮することはできなかった。
▽ゲームコントロールの部分とも繋がってくるが、圧倒的な差を生み出したのは、ピッチ内での選手個々の判断力だろう。試合後の昌子源は「個々の力に圧倒的な差があった」と語っている。低調に見えても、しっかりと基本的な部分ではやらせない。それが王者・マドリーの姿だった。
▽また、ギアをチェンジし、相手のウィークポイントを見つけるという事も、鹿島に限らず、Jリーグクラブ、ひいては日本代表も苦手とするところだろう。日本のサッカーの場合は、自分たちのスタイルを通すことに軸点が置かれているケースが多く、4年前には「自分たちのサッカー」という言葉が一人歩きした。
▽さらに、ハーフタイムでは前半の分析から流れを変えることができる場合が多いが、後半の45分が始まってからは、試合をコントロール、流れに変化を加えることがあまりできないケースが多い。ピッチ内での判断力が問われる状況になると、打開する策を見つけられなくなる。それは、判断力でもあり、プレーの再現性が低いチームが多いからだろう。日本のサッカーが世界と渡り合うには、対応力と再現性をつけることが一番足りていない。
◆「自分たち」を出すなら「圧倒」を
Getty Images
▽サッカーとは、野球やアメリカンフットボールなどとは違い、攻守の時間が分かれずに90分間を戦うスポーツだ。つまり、相手の出方に常に対応していき、最適解をいかに見つけるかが勝利への近道となる。▽「自分たち」のスタイルを出すのは強いチームであり、弱いチームは「相手への対策」を講じる。しかし、Jリーグにおいては、あまりにも“対策”がハマる試合が多い。
▽ポジティブに捉えれば、戦力差、実力差が拮抗したリーグと言えるだろう。一方で、ネガティブに捉えれば突き抜けたチームが存在しないとも言える。“対策”が講じられることは当然であり、それを如何にいなして勝利を掴むかが勝負の面白いところだが、それをピッチ内で判断する能力は、世界と比べればまだまだ乏しいと感じさせられた。
▽「低調」でありながらも力の差を見せつけ、鹿島のウィークポイントを炙り出し、試合をコントロールしたレアル・マドリー。世界最高峰の舞台で結果を残し続けるクラブに、まざまざと実力差を突きつけられた鹿島アントラーズ。日本で最も結果を残している常勝軍団は、この経験からさらに強さを増して行くに違いない。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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