【六川亨の日本サッカー見聞録】チリ戦開催中止決定まで遅すぎるJFAの判断2018.09.06 22:00 Thu

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▽今日6日の朝のこと、羽田空港6時10分発のフライトに乗るため、4時30分に友人のクルマで送ってもらった。テレビでは3時8分頃に北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とする震度7の地震が発生し、各地で被害が出ているというニュースは知っていた。

▽5時前に空港に着いてカウンターに行ってみると、すでに機内に荷物を預ける人の列ができている。しかしフライト状況を確認すると北海道行きの便はすべて「運航状況確認中」の表示が出ている。場内アナウンスでは「6時15分頃に発表します」と繰り返すだけ。

▽そして結果はというと「本日の新千歳行きは全便欠航です。便の変更ならびに払い戻しは●番カウンターで受け付けています」とのことだった。チリ戦は7日なので、明日の便を予約するかと思いつつ、早朝で申し訳ないが代表の広報担当者の携帯に連絡し、試合開催の可否を聞いたところ、「まだ夜が明けたばかりで、これから情報を収集してアナウンスします」という返事。

▽便の振り替えは試合の開催が決まってからでいいだろう。そう思って、まず今日の札幌行きは不可能なのでホテルにキャンセルの電話をしたところ、これがまったくつながらない。「災害用伝言ダイヤルをご利用ください」のアナウンスが流れるばかり。とりあえず空港内のテレビで現地の様子を見たが、次々と悪いニュースが入ってくる。

▽札幌市内の地下鉄とJR全線がストップしているだけでなく、全土で停電している。これでは札幌ドームでの前日練習もできないし、「明日の試合は中止になる可能性が高い」と判断し、8時過ぎに払い戻しをして自宅に戻った。

▽過去に地震により試合が開催中止となった例は多い。近くでは今年7月の大阪府北部地震の影響でJ3のG大阪U-23の3試合が中止になったし、2016年は熊本地震の影響でJ1~J3の14試合が中止となった。

▽海外では1986年メキシコW杯を翌年に控えた85年大地震があり、死者・行方不明者は8千人に及んだが、スタジアムの被害は軽微だったため無事に開催された例がある。

▽そしてチリ戦についてJFA(日本サッカー協会)は、「明日9月7日(金)に開催予定のSAMURAI BLUE(日本代表)対チリ代表の国際親善試合につきましては、現在、現地の詳しい状況を確認している段階です。日本代表チームとチリ代表チームの無事は確認しておりますが、試合開催につきましては、本日18時までに開催の可否を決定することにしております」とのメールを9時49分に発信した。

▽状況を確認するのは悪いことではない。しかし昼過ぎの時点で被害は深刻さを増し、死者・行方不明者も出ている。例え電力が復旧し、札幌ドームが使用可能になり、市内の地下鉄やJRが運行されたとしても(この原稿を書いている時点ではいずれも復旧していないが)、地震翌日の試合は避けるべきだし、もっと早く決断すべきだった。

▽プロ野球の日本ハムは7日から仙台で楽天との3連戦を控えていたが、新千歳空港が使用不可となったため試合の中止を正午のHP(ホームページ)で発表した。ラグビーのトップリーグも8日に札幌市内の月寒屋外競技場で神戸製鋼対宗像サニックスの試合が予定されていたものの、開催中止を12時40分過ぎにリリースしている。

▽「国内リーグなら簡単に決断を下せるが、国際試合では判断に慎重を期さざるを得ない。代替試合も開催できないのだから」という反論もあるだろう。しかし被害は時間の経過とともに拡大するばかり。日本代表はもちろん、チリも南米では地震大国ではあるが、日本人ほど地震に慣れてはいないだろう。選手の心情を考慮しても、JFAはもっと早く試合の中止を決断し、リリースを流すべきだった。

▽午前中からスマホが通じないことは書いたが、まだLINE電話による通話は可能だった(いまは不通でSMSしか連絡手段がない)。現地に先乗りしている記者に安否を確認すると「いま水を買うためイオンの長蛇の列に並んでいる」とか、「wi-fiが通じないのでテザリングで情報収集しているが、充電ができないのでいつまでパソコンとスマホが使えるかわからない」、「停電のため夜は真っ暗になるだろう」と不安を訴える。

▽さらに「東京に戻る方法を教えて」とフェイスブックに書き込む記者もいた。JRがストップし、高速道路も通行止め。このため稼働している帯広空港までの足を確保しようにもレンタカー会社は電話が通じないそうだ。苫小牧発、大洗行きのフェリーもすでに満席だという。まさに八方塞がりの状況だ。

▽もちろん日本とチリの代表チームはここまで困ってはいないだろう。一般市民の苦労を知らないからこそ、「18時までに開催の可否を決定」と悠長なことを言ってしまったのではないだろうか。危機管理能力の欠如と指摘されても仕方ない対応である。

▽日本代表が無事に何らかの手段で札幌から移動できれば、11日は吹田スタジアムでのコスタリカ戦である。こちらは台風21号の被害でまだ避難所生活を余儀なくされている人もいる。いずれも天災だから逃れようはないが、こちらの試合開催の是非が問われるのではないだろうか。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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南米勢がヨーロッパ化?/六川亨の日本サッカー見聞録

▽10月16日のキリンチャレンジ杯で日本はウルグアイを4-3で下した。前線の南野、中島、堂安らが躍動し、常に先手を奪う余裕の試合運びを見せた。3失点のうち2点目と3点目はいただけないが、ウルグアイのカウンターにもしっかりと対処し、森保監督の掲げる「全員攻撃、全員守備」での快勝だった。 ▽ドリブルで翻弄した中島のプレーを堪能したファンも多いだろうし、堂安のカットインからワンツーでのゴール、そして南野の神出鬼没な動きなど、これまで長らく代表を支えた本田、香川、岡崎らビッグ3の不在を補ってあまりある活躍だった。 ▽ただ、ウルグアイには正直物足りなさを感じた。スアレスこそ来日しなかったが、カバニ(パリSG)、ゴディン(A・マドリー)らロシアW杯のメンバー7人がスタメン出場するなど、ほぼベストメンバーに近い。タバレス監督は長旅の疲れや時差ボケを敗因にすることなく、素直に「勝利にふさわしいチーム。明確なチームができあがっている」と敗戦を受け入れていた。 ▽なぜ物足りなさを感じたのか。これまで日本は南米勢との対戦を苦手にしてきた。その理由の一因は「個の力」で強引に守備網を破られ失点してきたからだ。数的優位な状況にありながら、強引なドリブル突破や意表を突いたミドルシュートなど、想定外のプレーに苦しめられてきた。 ▽しかし今回来日したウルグアイには、「個の力」で突破を試みる選手は皆無だった。ボールを持ちすぎることなく、ていねいにパスをつないで攻撃を組み立てるスタイルは、南米というよりヨーロッパのサッカーに近かった。 ▽そして「こんな選手がいたの?」と、無名でも驚くようなプレーをする選手が、かつての南米勢にはいた。 ▽時代は変わり、インターネットやYouTuberの普及などで情報網が発達し、もはやダイヤの原石のようなサプライズを起こす選手は世界的にいなくなった。久保建英のように小学生の頃から海外のビッグクラブのリサーチによって、才能豊かな若手選手が発掘される時代でもある。 ▽と同時に、これは推測ではあるが、南米勢の主力選手のほとんどがヨーロッパのリーグでプレーすることで、代表チームのプレースタイルも次第にヨーロッパ化しているのではないだろうか。 ▽かつて1970年のメキシコW杯でブラジルは3度目の優勝を達成した。しかし4年後の西ドイツW杯では2次リーグでクライフ率いるオランダに完敗した。そこで78年のアルゼンチンW杯でコウチーニョ監督は、フィジカル重視のサッカーをブラジルに採用。するとファンやサポーターから猛反発を食らった。個人技を重視した華麗なサッカーがブラジルのスタイルだからだ。 ▽ブラジルは94年のアメリカW杯で34年ぶりに世界一になったが、ロマ-リオとべべ-トら2トップによるカウンター・スタイルに、ブラジル国民は82年スペインW杯でジーコらが見せたプレーこそセレソンだと懐かしんだ。 ▽そんなブラジルがW杯で4大会連続して決勝進出を逃した。ロシアW杯ではベスト8で敗退している。メッシを擁するアルゼンチンもロシアW杯ではベスト16で敗退した。もしも南米が南米でなくなっているとしたら、それはそれで寂しいことでもある。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.18 18:10 Thu
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代表の10番は中島に/六川亨の日本サッカー見聞録

▽10月12日、新潟のデンカビッグスワンスタジアムでパナマ代表と対戦する日本代表の森保監督が、11日に前日会見に臨んだ。就任2試合目、今回はロシア・ワールドカップ(W杯)に出場した海外組6人、吉田、長友、酒井宏、原口、柴崎、大迫を招集。恐らく彼らが日本代表の骨格となり、リオ五輪世代の室屋、遠藤航、中島、南野、伊東と三浦(2人ともリオ五輪のメンバーからは落選)、浅野(今回はケガのため代表を辞退)らとの融合を図ることになるのだろう。 ▽会見で森保監督は「練習の意図をくみ取ってやってくれているし、お互いに意見を出し合っているので、チームは確実に融合できていると思う」と手応えを口にした。そしてパナマ戦に関しては「相手の情報を持っていないといけないし、ウィークポイントを突かないといけないが、いま我々が何をできるのか。個人としてもチームとしても、この先につながる戦いをしたい」と、来年1月のアジアカップをにらんでチーム作りを進めていることを明言した。 ▽昨日は選手の背番号も発表され、5番は長友、吉田は22番、原口は8番、柴崎は7番、大迫は15番と慣れ親しんだナンバーを背負うことになった。注目の10番は、先月のコスタリカ戦に続いて中島が背負うことが決定。リオ五輪に続いてのエースナンバーだが、これまでの日本代表では香川、中村俊、名波らチームの司令塔を務める選手が背負ってきた番号である。 ▽その意味では、本来なら南野(中島と同じくA社のスパイクを履いている)が背負うべき番号かもしれない。コスタリカ戦での南野は8番だったが、今回は原口が復帰したために譲り、南野は9番を背負うことになった。9番といえばCFのイメージが強いため南野には違和感も覚えるが、追加招集の川又が11番、北川が13番ということで彼に落ち着いたのだろう。 ▽中島の背番号10について森保監督は、「背番号で選手のやることが決まるわけでもないし、背番号でチーム内の存在が変わるわけではない」と言いつつも、「10番は世界中で誰もがつけられる番号ではない。つける本人が責任を持って考えてくれると思う」と、やはり特別な番号であることを認めて中島への期待の高さをうかがわせた。 ▽当の中島は「10番はすごく好きな番号ですし、そういう番号をつけられてうれしいです」と目を輝かせた。10番を背負うことの責任感についても「背番号でサッカーをやるわけじゃないですけど、いままで10番を背負ってきた選手というのは本当にいい選手がたくさんいるので、しっかりとそういう責任は理解しているつもりですし、ただ楽しくプレーしたいです」と、中島の代名詞ともなっている「楽しくプレーしたい」という言葉で締めくくった。 ▽リオ五輪では得意のドリブル突破で地元ファンを沸かせただけに、パナマ戦はもちろんのこと、南米の古豪ウルグアイ戦でも中島のプレーを見たいと思うファンも多いのではないだろうか。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.12 14:30 Fri
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キリンチャレンジ杯の招待国から欧州勢が消滅。その対抗策は?/六川亨の日本サッカー見聞録

▽キリンチャレンジカップで10月12日にパナマ、16日にウルグアイと対戦する森保ジャパンのメンバー23人が10月4日に発表された。9月のコスタリカ戦から長友、吉田、酒井宏樹、原口、柴崎、大迫のロシアW杯出場組が復帰。森保監督は「前回招集したメンバーと海外組でどんな化学反応があるか見てみたい」と話し、全員攻撃・全員守備をチームのコンセプトとしてあげた。 ▽GK3人は前回と変わらないが、今回の2試合では是非ともシュミット・ダニエルのプレーを見たい。196センチの長身は大きな武器だし、26歳という若さも魅力的だ。それ以外のメンバーでは、それぞれバックアップを森保監督は用意した。 ▽右SBは酒井宏樹に室屋、左SBには長友に佐々木、CBは吉田と槙野のバックアップに三浦と冨安。ボランチは青山と柴崎、遠藤航と三竿健斗が該当し、右MFは原口と伊東純也、左MFは中島と堂安といったところか。1トップは大迫のバックアップに小林と浅野が控える形だろう。 ▽こうしてメンバーを眺めてみると、トップ下の南野のバックアップが不在であることがわかる。コンディション次第という前提つきではあるが、11月の2試合にはGK川島と香川、乾、さらに武藤のロシアW杯組を森保監督は招集するのではないだろうか。 ▽そしてキリンチャレンジ杯である。9月はチリ(北海道胆振東部地震で中止)とコスタリカ、10月はパナマとウルグアイ、11月はベネズエラとキルギスが来日予定だ。いずれも南米か北中米の国々でキルギスだけは中央アジアである。 ▽すでにご存じの読者もいると思うが、UEFA(欧州サッカー連盟)は18年9月から新たな大会、UEFAネーションズリーグをスタートさせた。UEFAに所属する代表チームによる公式大会で、18年9、10、11、12月にグループステージを実施し、19年6月に準決勝と決勝戦を開催する。さらに19年3月からはEURO2020の予選もスタートするため、ロシアW杯終了後からEURO2020までの2年間、UEFAに所属するチームと対戦する機会はほとんどなくなった。 ▽強化はもちろん、興行面でもヨーロッパのサッカー大国と対戦できないのは日本にとって(キリンはもちろんテレビ局も含め)大きな痛手であることは間違いない。さらに、来年1月にUAEで開催されるアジア杯に優勝したとしても、コンフェデ杯は17年で中止となったので、こちらもEURO優勝国(前回はポルトガル)と対戦する機会は消滅した。 ▽こうした状況にJFA(日本サッカー協会)関係者は「韓国や中国ら近隣諸国との連携が重要になる」と話す。例えば9月に来日したチリとコスタリカは、日本と前後して韓国と対戦した。今回来日するウルグアイも12日に韓国と、パナマとは16日に韓国と対戦する。日韓セットでの対戦により、彼らに支払うギャラを抑えることができるし、来日する彼らにとっても近距離移動で大会出場給が入るというメリットがある。 ▽今後も南米や北中米、アフリカ勢の来日が多くなるだろうが、いかにして強化と興行の両立を図るか、UEFAの変革にJFAも難しい舵取りを迫られている。 ▽現実的には、日本が対戦を望む国々にとって、日本戦が強化に役立つとは思っていないだろう。それは日本にも当てはまり、「テストマッチは所詮テストマッチ。それ以下でもそれ以上でもない」ことは過去の歴史が物語っている。 ▽このためUEFAに対抗して、アジア杯以外にアジアで新たな公式大会を創設し、コパ・アメリカのように南米からの招待枠を設けるなどの提唱をAFC(アジアサッカー連盟)にしていくことも1つの手だ。そして一番手っ取り早い解決方法は、カザフスタンのようにAFCからUEFAへ所属を変更することである。 ▽これまでのように毎回W杯に出られる保証はなくなるかわりに、予選から痺れる試合が続くことは間違いない。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.04 22:10 Thu
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湘南のチャレンジ。安価な簡易席を増築/六川亨の日本サッカー見聞録

▽J1リーグは昨日26日、延期されていた第26節の湘南対川崎Fの1試合を行い、0-0で引き分けた。2位の川崎Fにとっては首位の広島に勝点1差に詰め寄るチャンスだったものの、小林のPKはGK秋元にストップされるなどノーゴールに終わり、勝点差3で広島を追走している。至近距離からのシュートに滅法強いGK秋元らしい活躍でもあった。 ▽さて湘南は、昨日のホームゲーム後、10月1日よりBMWスタジアムの一部改修に入るため、J1リーグは10月20日まで開催できない。改修場所は両ゴール裏のサポーターゾーン立見席で、観戦環境の改善を目的に、左右両サイドに708席、計1416席の座席を設置するからだ。 ▽同スタジアムは1994年のJリーグ昇格時に改修して以来そのまま使用してきた。今回の改修の目的について、真壁会長は「どうせやるならACL出場を目指そう。しかしAFCは立ち見席を認めていない。川崎がそのために等々力を改修したが、行政の支援を待つのではなく我々でできないか。そこでRIZAP(ライザップ)が協力してくれて安く造ることができた」と説明した。 ▽今シーズンから湘南はRIZAPの子会社となったが、真壁会長らが注目したのは、鉄骨作りながら“仮設”ではなく“簡易”のスタンドだ。フランスの仮設大手のGLイベンツという会社が開発した技術で、すでにF1レースやラグビーのフランス・ワールドカップでも使用された実績がある。さらに、来年日本で開催されるラグビーワールドカップ2019でも釜石会場が同社の簡易スタンドを採用しているため、耐震構造にも対応しているそうだ。 ▽真壁会長いわく「立派に造って借金を抱えるより安く造る」という発想は、市民クラブならではの発想と言えるだろう。 ▽気になる改修費だが、1席あたり9万円台に抑えられ、G大阪の吹田スタジアムの半額で済むという。単純計算で1億5千万円弱だ。そしてこの技法を使えば、新規のスタジアム建設は75億円から90億円ほどかかるが、それが60億円で済むという試算もある。 ▽今回の改修費は全額RIZAP(ライザップ)が負担するため、「RIZAPシート」と名付けられた。ただし、真壁会長によると「来シーズンのネーミングは変わるかもしれない」とのこと。新たなスポンサーを募り、クラブの収入増につなげようという狙いがあるのかもしれない。 ▽販売価格は未定だが、ホーム、アウェーとも席は指定席ではなく自由席のため価格を抑えてくることが予想される。今後は「サポーターの意見を聞き、増やして欲しいという声が出れば検討したい」と真壁会長。シーズン中の改修は、「来シーズンのチケット販売で認知させるため、今年中の改修を決めた」そうだ。 ▽永木、三竿雄、遠藤航と毎シーズンのように主力選手を引き抜かれた湘南。他クラブとの年俸差を少しでも埋めるためRIZAPの子会社となる決断をしたが、将来を見据えて次の手を打ってくる当たり(それも負担にならないよう)、財政難に苦しんできた湘南らしいクラブ経営と言えるのではないだろうか。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.27 14:15 Thu
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外人枠の規制緩和とHG制度の導入/六川亨の日本サッカー見聞録

▽Jリーグの原博実副チェアマンは、9月18日の実行委員会後、日本版ホームグロウン制度(以下HG)の導入と外国籍選手の規制緩和について、メディアと意見交換の場を設けた。これは7月の実行委員会でも議題に上ったそうで、来シーズンの課題の1つとして育成と強化に新たなシステムを採り入れるため現在も検討中だという。 ▽そもそもの発端は、2016年にダゾーンと高額契約する際に、Jリーグの競争力を高めるために規制を緩和して外国人枠の見直しをすべきではないかという意見が出たことだった。これはその後、「アジアの提携国の選手は外人枠に入れない」という形で、まずは日本から門戸を開いて行こうということになった。 ▽その結果、今シーズンは札幌のチャナティップだけでなく広島にティーラシン、神戸にティーラトンらタイ代表がJリーグに参入したことで、タイ国内でもJリーグの人気が高まり、観戦に日本を訪れるファンの増加というプラス効果があった。戦力としても効果的なため、この「アジア提携国枠」は今後も見直した方がいいという議論も出ているという。 ▽ヨーロッパに目を向けると、イングランドのプレミアリーグだけでなく、ドイツのブンデスリーガ、スペインのラ・リーガも現地でデーゲームを開催することで、アジアのマーケットの拡大を意識している。そこで日本も外国人枠の規制を緩和し、イニエスタのようなスター選手を獲得することで、アジアのマーケットを拡大したいという狙いがある。 ▽原副チェアマンいわく「外国人を使えと言っているわけではなく、外国人も競争になる。その一方でバスク人だけのアスレチック・ビルバオのようなクラブがあってもいい」と、チーム作りは各クラブに任せる方針だ。 ▽こうした規制緩和に舵を切ると同時に欠かせないのが日本人選手の育成で、HG制度の導入は両輪の輪と言えるだろう。UEFAは25名の登録選手中、「年齢、国籍を問わず15~21歳の3年間、現クラブに登録されていた選手=CTPを4名」か、「同じく協会のクラブに登録されていた選手=ATPを4名」の計8名を登録することを各クラブに義務づけていて、不足した場合は登録枠そのものが減らされることになっている。 ▽現在の日本は登録25名枠にプラスして5名のユース枠を設けているが、将来的に7~8名のHG制度を採用する方向で検討中だ。 ▽現状ではACLは外国人枠が3+1に対し、Jリーグは「アジア提携国枠」がありレギュレーションが違う。さらにCWCでのヨーロッパ勢との対戦では、鹿島が外国人部隊のレアルと対戦するなど整合性が取れていない。このため「すべてを決めているわけではなく、話し合いの土台を作っているところ。多くの方の意見を聞きながら、制度設計のための議論をしているところ」(原副チェアマン)でもある。 ▽規制緩和にあたり、「ロシアW杯の強豪国のGKは190センチ台が常識になりつつあるが、日本人選手の大型GKやCBは少ない。その結果、韓国人選手が増加している。規制緩和でその傾向が強まるのではないか」と懸念をぶつけてみた。 ▽すると原副チェアマンは「GKコーチは各年代で、日本の指導スタッフで一番遅れている。このため指導者の育成が急務になる」との見解を示した。そして「U-17の日本と韓国の試合を比べると、日本はペナルティーエリア内でのプレーが少なく、中盤でのプレーが多い。それが優秀な中盤の選手を生んでいるが、逆に大型GKやストッパー、ストライカーが育ちにくいのではないか」と私見を述べた。 ▽まさに正鵠を射ていると思う。Jリーグの多くのチームはボールロストを恐れ、サイドから攻撃を仕掛けながらも、なかなかクロスを入れない。かつての闘莉王や中澤のように、空中戦に圧倒的な強さを誇る選手も近年は激減した。ゴール前の競り合いほどスリリングなシーンはないだろう。「外国人枠の規制緩和」がJリーグのレベル向上につながるならば、早期の導入を期待したい。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.20 21:01 Thu
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