【原ゆみこのマドリッド】引き分けにもイロイロある…2016.12.06 12:30 Tue

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▽「だから、勝たなくていいって!」そんな風に私が反応してしまったのは月曜日。ミュンヘンのアリアンツ・アレナで行われたアトレティコのCLグループリーグ最終節前記者会見の様子を知った時のことでした。いやあ、このところ、ベテランのチアゴに先発の座を取って代わられ、出番の減っているサウールですし、昨季の準決勝バイエルン戦1stレグの決勝点、FIFAのプスカシュ賞にもノミネートされたgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を挙げている身とあって、「Saldremos a ganar en un partido muy complicado/サルドレモス・ア・ガナール・エン・ウン・パルティードー・ムイ・コンプリカードー(とても困難な試合に勝つつもりでピッチに出る)」と、やる気になっているのはわかるんですけどね。

▽せっかくここまでグループで5連勝しているんだから、泣く子も黙るドイツの強豪を最後に倒して全勝したら、カッコいいだろうと選手たちが思ってしまうのも人情と言えば、それまでですが…。もしや彼ら、CLのグループステージで6勝を挙げている6チームが、そのシーズンに優勝していないことを知らない? ええ、身近な例ではモウリーニョ監督時代の2011-12シーズンや、アンチェロッティ監督時代の2014-15シーズンのお隣さんですが、どちらも準決勝で敗退の憂き目に。そう思うと、もちろんUEFAからの勝利報酬もありますから、負けて一銭ももらえないのは勧められないにしても、せいぜい引き分けに留めておくのがまずは無難かと。

▽え、シメオネ監督が「Hay veces que el orgullo cuenta mucho más que los puntos/アイ・ベセス・ケ・エル・オルグージョ・クエンタ・ムーチョ・マス・ケ・ロス・プントス(時に勝ち点より誇りが頼りになることもある)」と言っていたのは、2014年にマドリー悲願のデシマ(10度目のCL優勝)をプレゼントしてしまった選手たちが、その時の悔しさをバネに頑張ってくれるだろうと当てにしてのことじゃないのかって? うーん、土曜日のクラシコ以来、TVでは一生悔いても悔やみきれない、あのシーンの映像が何度も流れていますからね。すでに頭の中は今年5月の悲劇(ミラノ編)に上書きされていた選手たちだったとて、やっぱりアンチェロッティ監督のチームには意地を見せたいのかも。

▽そんなことはともかく、まずはそのクラシコがどうだったのかを語っていかないと。いやあ、予定通り、キックオフの1時間前には近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行って、ガッチリ席を確保。ランチを食べながら始まるのを待った私でしたが、スタメン発表で意外だったのは、どちらのチームも負傷上がりのイニエスタ、カゼミロをベンチスタートにしたことでしょうか。とりわけバルサの方はチームのゲームメーカーがいないのが響いたか、序盤はセルヒオ・ラモスがルイス・スアレスに乗りかかってしまうなど、相手の体を張った守備に正面からぶつかって、なかなかチャンスが作れない結果に。

▽かといって、マドリーが得点できた訳でもなく…。何せ、どういうタイミングか、その日に2009年から、1億5000万ユーロ(約185億円)にもなる肖像権収入をタックスヘイブンの会社に迂回させ、本来の4%程度の税金しか払っていないと、エル・ムンド(スペインの一般紙)で暴露されたクリスチアーノ・ロナウドが、カンプ・ノウのスタンドから「Hacienda somos todos, Crisiano paga ya/アシエンダ・ソモス・トードス、クリスティアーノ・パガ・ジャー(オレたち皆が税務署だ。クリスチアーノ、さっさと払え)」と歌われたことも影響したんですかね。前半の終盤に撃ったシュート、2本ともGKテア・シュテーゲンに止められていましたが、元々、この歌は名前の部分をメッシにして、スペインの様々なスタジアムで歌われていたもの。だとしたら、オリジナルの方もいい気はせず、前半中の枠内シュートがGKケイロル・ナバスにキャッチされたFK1本のみで終わってしまったのも無理はなかった?

▽それでも後半にはスコアが動き、52分には右サイドからネイマールが蹴ったFKを、ヴァランを出し抜いたルイス・スアレスがヘッドで決めてバルサが先制点をゲット。そこからルイス・エンリケ監督がイニエスタを投入し、ゲームの主導権も奪われてしまったため、ジダン監督は対抗策にイスコを引っ込め、カゼミロを入れたんですが、「Ser mas ofensivos/セル・マス・オフェンシボス(もっと攻撃的にしたかった)。少しリフレッシュして、コバチッチとモドリッチを前に出してね」という指揮官の意図に納得できなかったのは、ベンチで八つ当たりしていたイスコだけではなかったかと。ええ、結局、これだけでは足らず、マドリーは76分にはベンゼマをアセンシオに、80分には何と、先日のコパ・デル・レイ32強対戦2ndレグでハットトリックを挙げたマリアーノまでピッチに入れ、藁にもすがる気持ちで同点を目指したんですが…。

▽いよいよアディショナルタイム入りが近いという90分、またしてもお馴染みの救世主が登場したんですよ! それはもちろん、2年前のダ・ルス(ベンフィカのホーム)で、そして今年の夏、セビージャと対戦したUEFAスーパーカップでも延長3分に起死回生の同点ゴールを挙げたラモスで、いえ、ルイス・エンリケ監督は事前に「Habia indicacion de no hacer falta si un jugagor del Madrid esta de espaldas a la porteria/アビア・インディカシオン・デ・ノー・アセール・ファルタ・シー・ウン・フガドール・デル・マドリッド・エスタ・デ・エスパルダ・ア・ラ・ポルテリア(マドリーの選手がゴールに背を向けていたら、ファールはするなという指示はしていた)」ものの、血気にはやって、ついマルセロを自陣エリア近くで倒してしまったのが、元アトレティコのアルダ・トゥランというのも何かの前兆だったのかもしれませんけどね。

▽そのFKのキッカーに立ったのはモドリッチ。これもリスボン決勝でのCKと同じですが、そのボールを見事に頭で押し込んで、土壇場で同点ゴールをもぎ取ってしまったとなれば、ただただ感服するしかないじゃないですか。いえ、後でモドリッチは「Ha venido Sergio a vacilarme y me ha dicho: !menos mal que me has puesto una bien eh!/ア・ベニードー・セルヒオ・ア・バシラールメ:メノス・マル・ケ・メ・アス・プエストー・ウナ・ビエン・エー(セルヒオがボクをからかいに来たんだ。幸いにもいいボールを蹴ってくれたねって)」と話していましたけどね。加えて、このセットプレーは「Sale natural, no lo ensayamos/サレ・ナトゥラル、ノー・ロ・エンサジャモス(自然に生まれるんだ。練習はしていない)」そうですが、いやいや、それもチームメートの尽力があってこそ。

▽というのも、そのシーンの映像を見てみると、ルーカス・バスケスがピケをラモスに近づけないようにこの手あの手でマーク。おかげでラモスはマスチェラーノを振り切って、フリーでヘッドすることができたんですが、ピケ自身も「ルーカスはボクを邪魔することに専念していて、行きたかったところに行かせなかった。Supongo que saben que soy el mas alto del equipo e importante en esas jugadas/スポンゴ・ケ・サベン・ケ・ソイ・エル・マス・アルト・デル・エキポ・エ・インポルタンテ・エン・エサス・フガダス(自分がチームで一番、背が高くて、こういうプレーで重要な役目があるのを知っていたのだと思う)」と証言していて、いえ、身長云々は誰だって見ただけでわかりますけどね。

▽何も選りに選って、173センチと小柄なルーカス・バルケスがピケにつかなくてもいいんじゃないかという意見もあるでしょうが、バルサが攻撃のセットプレーではロナウドがメッシをマークしていたりとか、どうやらジダン監督はその辺はあまり気にしていないよう。ええ、「全員の働きが際立っていたが、luego Sergio esta ahi para meter el gol.../ルエゴ・セルヒオ・エスタ・アイー・パラ・メテール・エル・ゴル(それでセルヒオがゴールを決めるためにそこにいる…)」(ジダン監督)のなら、全然、問題はありませんって。おまけにアディショナルタイムにはカゼミロがセルジ・ロベルトのヘッドをゴールライン上でクリアして、同点死守の立役者になったとなれば、もう誰も彼の選手起用策に文句はつけたりしませんよ。

▽結局、「Creimos hasta el final/クレイモス・アスタ・エル・フィナル(ウチは最後まで信じた)」という、マドリーの特性がモノを言って、そのまま1-1の引き分けでクラシコは終わったんですが、おかげで両チームの勝ち点差は6で変わらず。つまり次節のデポルティボ戦でマドリーが負けなければ、年内最終節のバレンシア戦を延期してクラブW杯に出かけても、バルサは絶対に彼らに追いつけないのですから、こんなに安心なことはないじゃないですか。いえ、細事を言えば、ラモスのゴール祝いの時にカルバハルがスタンドに向かってpeineta(ペイネタ/中指を立てるヒワイなポーズ)をしたり、まったく冴えのなかったベンゼマや出番すらもらえなかったハメス・ロドリゲスが更に株を下げるなんてこともあったんですけどね。とりあえず、マドリーファンにとってはいい結果だったかと思います。

▽そして次の時間帯でビジャレアルをブタルケに迎えたマドリッドの新弟分、レガネスがGKエレリン(アスレティックから移籍)を緊急補強した甲斐があって、相手を無失点に抑えたものの、攻撃陣の重傷者の穴埋めがまだなせいですかね。ゴールを挙げることはできずにスコアレスドローに終わったと私が知ったのは、ビセンテ・カルデロンのスタンドで寒さに耐えながら、アトレティコvsエスパニョール戦が始まるのを待っていた時だったんですが、その日はキックオフ前に飛行機事故の犠牲になったブラジルのシャペコエンセに黙とうを捧げました。シャペコエンセにはアトレティコでプレーしたこともあるクレベル・サンタナがいたのもあり、他のスタジアムより黙とうがしんみりしていたり、それこそその彼が在籍時の指揮官だったキケ・サンチェス・フローレス監督がエスパニョールを率いて古巣を再訪。

▽2010年には長年の間、タイトル日照りに苦しんでいたチームをヨーロッパリーグ優勝に導いてくれたこともあって、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏)に「eternamente agradecido Quique/エテルナメンテ・アグラデシードー・キケ(キケ、永遠に感謝しています)」という横断幕がかかったりと、どこかセンチメンタルな雰囲気で始まったせいもあったんでしょうか。グリーズマン、ガメイロ、カラスコを先頭に攻めていたアトレティコでしたが、ほとんどシュートを撃てず。それどころか、41分にはモレノが、59分にはレオ・バチストンがカウンターから1人抜け出して、GKオブラクが必死で弾いてくれなければ、相手に先制されていてもおかしくありませんでしたっけ。

▽え、それでもアトレティコにだって、ガビやグリーズマンのチャンスがあったものの、ディエゴ・ロペスにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったんだろうって? そうですね、キケ監督も「Estaban los dos porteros mejores de Europa y era dificil hacer un gol/エスタバン・ロス・ドス・ポルテーロス・メホーレス・デ・エウロッパ・イ・エラ・デフィシル・アセール・ウン・ゴル(ヨーロッパ最高の2人のGKがいて、ゴールを入れるのが難しかった)」と言っていたのはその通りだったんですが、いくら敵が守備に特化していたとしても、あのアトレティコのパスの繋がらなさは異常。それこそ、フォルラン(現ムンバイ・シティ)やアグエロ(マンチェスター・シティ)のゴールでタイトルは獲ったものの、キケ監督が率いた2シーズン、リーガをそれぞれ、9位、7位で終えた、時としてファンを絶望させるチームのデジャブだったかと。

▽おかげで私など、その夜はやたら冷えるので、選手たちの足がかじかんでいるんじゃないかと疑った程ですが、ガイタンやコレアをピッチに投入してもその流れは変わらず。マドリー育ちのファンフランなど、後で「ウチは最後まで勝利を手に入れられると信じていた」と主張はしていましたが、残念ながら、アトレティコのDNAには土壇場の奇跡は刷り込まれてないんですよ。結局、最後まで0-0のまま、クラシコ引き分けだけでなく、お昼の試合でセビージャもグラナダに負けという、上位との差を詰める絶好のチャンスを掴めず、「Es un punto muy bueno/エス・ウンプント・ムイ・ブエノ(とてもいい勝ち点1だ)。ビセンテ・カルデロンでポイントを取るのは難しいから、チームは満足しているよ」(ディエゴ・ロペス)というお土産をエスパニョールに持たせて、バルセロナに帰ってもらうことになりました。

▽いえ、それでもレガネスが健闘してくれたのと、幸い月曜日の試合でもデポルティボがレアル・ソシエダに5-1と勝ってくれたため、アトレティコの4位は変わらなかったんですけどね。試合後の会見で、「El objetivo es ser tercero, tranquilidad/エル・オブヘティボ・エス・セル・テルセーロ、トランキリダッド(目標は3位になることだから、落ち着いている)」とシメオネ監督が言っているのを聞いた時には思わず、それだって危ないじゃないと抗議したくなったもんですが、彼らだって、好きで下手なプレーをしている訳じゃありませんからねえ。ここは気を取り直して、すでに首位通過が決まっている火曜日午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのCLバイエルン戦では、マドリッドで留守番することになったチアゴ、フェリペ・ルイスだけでなく、コパのギフエロ戦並にスタメンを落としてもいいので、リーガの次節、来週月曜日のビジャレアル戦に集中して欲しいかと。

▽その一方で、同日にはクラシコでの悪いイメージだけでなく、国内戦ここ4試合引き分けというスランプに陥っているバルサは、やはり1位は確定しているものの、「mañana jugará Messi de inicio/マニャーナ・フガラ・メッシ・デ・イニシオ(明日はメッシが先発する)」(ルイス・エンリケ監督)と、ボルシアMG戦に心血を注いでいるようですが、本当の意味で一生懸命やならいといけないのはマドリー。というのも、彼らの場合、決勝トーナメント進出は決まっているものの、現在は勝ち点2差の2位と、この水曜日の試合でドルトムントを倒さない限り、首位通過ができないから。

▽まあ、別に2位でもいいという考え方はできますけどね。ただこの試合には、クラブ記録となる34試合連続無敗も懸かっているため、ジダン監督はオールスターメンバーで迎え撃つはず。ちなみに月曜日には11月のスペイン代表戦でケガをしたモラタが全体練習に復帰、ベンチに入る可能性もありとされていますが、こちらもクロースと共にクラブW杯に万全で挑むため、まだ実戦は控えるかも。先週末のブンデスリーガでドルトムントはメボルシアMGを4-1と一蹴してしますし、彼らとの近年の試合はドキドキする撃ち合いが多いので、香川真司選手が出る出ないに関わらず、見応えのある一戦になるんじゃないでしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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