恐れていたことが現実になった…

「遺恨が残らないといいんだけど」そんな風に私が心配していたのは木曜日、W杯決勝カードでアトレティコの選手10人が対決するという、最悪の巡り合わせになってしまったのに気づいた時のことでした。いやあ、そうは言っても、アルゼンチン勢は6人中、GKムッソはディブ・マルティネス(アストン・ビラ)の控えのため、絶対、出ないでしょうし、先発の多いフリアン・アルバレス、アルマダはもう、クラブには戻って来ないかもしれず。ニコ・ゴンサレスもレンタル元のユベントスとまだ話がついていなくて、実質はモリーナとジュリアーノの2人だけと言ってもいいんですけどね。

スペイン勢にしてもこのW杯でレギュラーなのはバエナだけで、ジョレンテ、プビルは控え、グリマルド(レバークーゼンから移籍)に至ってはまだ1度もプレーしていませんしね。それでも遅延開催となる8月19日(水)のリーガ1節マラガ戦の日、2018年のフランス勢グリーズマン(現オーランド・シティ)、レマル(昨季はジローナにレンタル移籍)、リュカ・エルナンデス(現PSG)、2022年のアルゼンチン勢モリーナ、デ・パウル(現インテル・マイアミ)、コレア(現ティグレス)らに続き、W杯王者として、メトロポリターノのファンに喝采を浴びて迎えられる選手たちが確実にいるのは決して、悪いことではない?

ええ、対照的に3位決定戦の方はエムバペ、チュアメニ、コナテ(リバプールと契約終了)のフランスとベリンガムのイングランドのレアル・マドリー勢対決となっていますからね。かといって、決勝進出目前で夢絶たれた彼らが、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)、マイアミのハードロック・スタジアムでの試合でそれ程、躍起になって争うことはないかと思いますが、さて。今週から、灼熱のバルデベバス(バラハス空港の近く)でプレシーズン練習を開始したモウリーニョ監督も、彼らのチーム合流がスペインのククレジャ(チェルシーから移籍)同様、8月10日頃となり、リーガ1節レアル・ソシエダ戦が26日に延期されたため、開幕戦となる22日のエスパニョール戦に間に合いそうにないのを迷惑に感じているかもしれませんよ。

まあ、そんなことはともかく、まずはスペインの準決勝がどんな試合だったかお話していくことすると。いやあ、相手のフランスは2大会連続決勝進出していますし、今大会もここまで6試合全勝で計16得点という豊作ぶりだったため、正直、私も絶対、スペインが勝てるという確信は持っていなかったんですけどね。それが蓋を開けてみれば、16強対決のポルトガル戦(0-1)、準々決勝のベルギー戦(2-1)の方がずっと、ハラハラさせられたじゃんという結末になったから、ビックリしたの何のって。

そう、ベルギー戦のスタメンをリピートしたスペインはまだほとんど何も起きていなかった前半22分、ククレジャの上げたクロスをクリアしようとしたディニュ(アストン・ビラ)にジャマル(バルサ)がエリア内で蹴られてしまいペナルティをゲット。昨季はコパ・デル・レイ決勝アトレティコ戦でもPKを決めているオジャルサバル(レアル・ソシエダ)が、憎いほどの落ち着きぶりでボールをゴールに沈めた日には、こうも簡単に先制点が入っていいのかと訝ったのはきっと私だけではない?

おまけにスペインはこのところ、敵の負傷禍にも恵まれていて、ええ、ポルトガル戦ではヌーノ・メンデス(PSG)、ベルギー戦でもGKクルトワが途中交代してくれましたからね。マドリーの守護神は水曜にはバルデベバスに顔を出し、検査を受けて、ケガはしてないことを確認。そのままバケーションに行っていましたが、この日はお水休憩のすぐ後、28分にはフランスの守備の要、サリバ(アーセナル)が痛み、ラクロワ(クリスタル・パレス)と代わるという顛末に。

それでも前半残りは、流れるようなパスワークから生まれたファビアン(PSG)のシュートも惜しくもウパカメンコ(バイエルン)に弾かれ、追加点がなかったスペインなんですが、その努力の成果は後半13分に早くも現れることに。そう、今度はペドロ・ポロ(トッテナム)が出したパスをウパカメンコに倒されながらもダニ・オルモ(バルサ)がエリア内に入れると、誰にも邪魔されずに侵入してきたポロがフィニッシュ。GKメニャン(ミラン)との1対1を制してしまったとなれば、ジョレンテが右SBの控えにされたのも仕方ない?

いえ、残念ながら、その3分後に入ったジャマルのゴールはオフサイドで認められなかったんですけどね。0-2となって、フランスもいよいよ反撃体勢を強めてきたんですが、いやあ、何というか、この日はいきなり撃っても撃っても入らない病を発症してしまったようでねえ。とりわけエムバペのそれは昨季終盤のマドリーを彷彿させる姿だったんですが、おかげで後半のお水休憩後、お馴染みの選手交代を始めたスペインも、この日はミケル・メリーノ(アーセナル)のスピードミラクル弾を必要とすることはなし。そのまますんなり勝って、2010年南アフリカ大会以来の決勝進出を決めてしまいましたっけ。

さすがに準決勝にもなると、試合直後から、かなり遅い時間まで、近所中から歓声が聞こえてきたんですが、こんな結果になったのは、いえまあ、19才のクバルシ(バルサ)が、「ウチのDFとGKについてはちょっと言われたりもしてたけど、yo creo que hemos callado muchas bocas/ジョ・クレオ・ケ・エモス・カジャードー・ムーチャス・ボカス(ボクらは多くの口を黙らすことができたと思う)」などと言っていて、だってえ、ここまでたった1失点のスペインですよ。そんなこともあったのかと、私が戸惑ったのはともかく、何より、エムバペも「ボクらはテクニック的にも、戦術的にも、やりたい試合をプレーできなかった」と言っていたように、フランス側に問題があった感がなきにしろあらず。

「序盤から、こちらのかけるプレスには問題があって、中盤でいつも3対2になっていた。1対1になって、ボールなしで走るのが嫌いな相手を走らせる必要があったのに、プレスでのコミュニケーション不足があった」(エムバペ)そうなんですが、まあ確かにこの日のスペインはやたらパスの通りがスムースでしたしね。デ・ラ・フエンテ監督なんて、「ウチは世界最高のチームの1つと対戦したが、tenía ante sí al mejor equipo del mundo de la fuente/テニア・アンテ・シー・アル・メホール・エキポ・デル・ムンド・デ・ラ・フエンテ(相手は世界最高のチームを目の前にすることになった)」なんて強気でしたが、果たして、2大会連続ファイナリスト、前回王者のアルゼンチンを前にしても同じことが言えるのかどうか。

とういうのも、ダラスで夜を越したチームは翌水曜の昼間をオフにして、午後5時に最終目的地ニューヨークに向けて出発。彼らが現着した頃、アトランタで始まったイングランドvsアルゼンチン戦では凄まじい闘いが繰り広げられていたから。そう、とにかく気がつくと、ピッチに人が倒れていて、これはサッカーなのか、ラグビーなのか、はたまたコリセウムでのヘタフェの試合を見ているのかと錯覚したぐらいだったんですが、アルゼンチンって、あんなに乱暴なチームだったっけ?

それがまた、シメオネ監督が応援に行っていた32強対決カーボベルデ戦(3-2)、16強対決エジプト戦(3-2)、更に父がアトレティコのプレシーズン練習を指揮するため、マドリッドに帰ってしまった後の準々決勝スイス戦(3-1)では出番がなし。この日、今大会初先発となったジュリアーノのはっちゃけぶりったるや半端なく、あれにはこの土曜までと異様に短い、恒例の夏の地獄のキャンプ地、ロス・アンヘルス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)のホテルで試合を見ていたシメオネ監督も、決勝で息子がバエナとマッチアップするのを恐れたかも。

まあ、試合の方は後半10分にゴードン(ニューキャッスルからバルサに移籍)のゴールでイングランドが先制した後、守りに入ってしまったのもあり、決勝トーナメントで延長戦2試合を含む、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)で勝ち上がってきたアルゼンチンは、この日も後半40分にエンソ・フェルナンデス(チェルシー)がエリア外からのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で同点に。ロスタイム2分にはメッシ(インテル・マイアミ)のクロスをラウタロ(インテル)がヘッドで決めて、またしても土壇場で1-2の逆転勝利を挙げたんですが、どうやらマドリッドのアルゼンチン人たちはプエルタ・デ・ソルやマジョール広場を埋めつくして大祝いしていたよう。

それにしたって、現地で応援しているアルゼンチン人ファンの数も凄いことになっているんですが、一番、ビックリなのは日曜午後9時のメットライフ・スタジアムでの決勝のチケットが最安値でも7500ドル(約122万円)と報じられていたこと。元々、値段の高さは言われていたW杯ですが、なのにいつも満員御礼って、世の中には私が思っている以上にお金持ちが沢山いた?

ちなみにイングランド戦勝利後、「Islas Malvinas son argentinas/イスラス・マルビナス・ソン・アルヘンティーナス(フォークランド諸島はアルゼンチン)」という政治的メッセージが書かれた幕を選手たちが掲げて祝っていたため、ユーロ2024優勝祝いでは「Gibraltar es español/ヒブラルタル・エス・エスパニョル(ジブラルタルはスペイン)」とチャントして、モラタ(コモ)とロドリ(マンチェスター・シティ)が出場停止1試合に。その例を鑑みると、これからアルゼンチンにはFIFAの処分が下される可能性もあるんですが、スカローニ監督のチームには現在、負傷者は1人もなし。

対するスペインは木曜、ニュージャージーのメラニー・レーン・トレーニンググラウンドでの初練習を太ももに打撲を負ったジャマル、筋肉疲労で試合終盤にジョレンテと交代したポロは見学。それでも決勝出場に問題はなさそうですが、この大一番のため、コロン広場のパブリックビューイング会場には、大型スクリーンをもう1台の設置することが決まったのだとか。

そして最後にマドリッドのクラブのプレシーズン練習進行状況なんですが、月曜早朝にアトーチャ駅から電車に乗って、オリバ(地中海沿岸のビーチリゾート)キャンプに向かったヘタフェは暑さに苦しみながらも、時には海水浴もしたりして、楽しんでいるよう。昨季はサラリーキャップのせいで、クリスタル・パレスにレンタルに出されてしまったウチェも戻り、木曜にはアストン・ビラからアンドレス・ガルシアも加入。セビージャに行ってしまった右SBファン・イグレシアの穴埋めをして、いよいよ金曜にはこの夏、最初のプレシーズンマッチ、レディング(イングランド3部)戦を迎えることに。

ずっとフエンラブラダ(マドリッド近郊)で練習を続けていたラージョも金曜にはイギリスに飛び、エディンバラでハーツ(スコットランド1部)と対戦するんですが、どうも兄貴分たちはプレシーズンマッチも始まりが遅くてねえ。マドリーは28日(火)、今季も2部で頑張る弟分レガネスと、アトレティコは29日(水)にヘタフェとそれぞれ、練習場で親善試合をするんですが、どうやらどちらも非公開のよう。まあ、W杯参加選手が多く、未だにチームの半数以上のメンツがいないため、仕方ないんですが、日曜の決勝が終わったら、また双方、補強や放出の人事異動が活発になりそうですね。

author avatar
原ゆみこ
マドリッド通信員。南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。 遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。 今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
目次