林陵平チャンネルの撮影に同行
ワールドカップ取材2日目。
この日は早朝から、池田タツさんと一緒に林陵平さんの泊まっているホテルへ向かった。
タツさんは、今回、林さんのYouTubeチャンネルのディレクターとして現地入りしている。まだアメリカ生活も2日目で、レンタカーの運転にも少し不安があるということで、僕はタツさんのアシスタントのような形で同行することになった。
林陵平さんは、元Jリーガーで、柏レイソルや東京ヴェルディなどでプレーしたあと、現在は解説者として大きな人気を集めている。今回はNHKの解説者として北中米ワールドカップに来ていた。
林さんのホテルに着くと、さっそくYouTubeチャンネルの撮影が始まった。テーマは、日本代表の初戦となるオランダ戦のプレビュー。
林さんは高身長で、画面の中でも存在感がある。180センチ台後半だけど、190センチ近くあるようにも見える。現役時代にFWとしてプレーしていた人らしい明るさと、戦術的なディティールを掘り下げる細やかさが同居している。
タツさんとの掛け合いで、オランダ戦の見どころや、日本代表がどう戦うべきかを話していく。
撮影は1時間ほどで終了。ホテルを出て、また車で宿に戻った。
解説者・ズラタン!
この日はワールドカップの開幕日だった。2026年6月11日。北中米ワールドカップは、メキシコシティで行われるメキシコ対南アフリカで幕を開ける。
僕たちは、キャロルトンの一軒家でテレビをつなぎ、開幕戦を見ることにした。
画面の中には、緑に染まるスタジアムが映っていた。開催国のひとつであるメキシコの試合ということもあって、スタンドの熱気はすごかった。
試合はメキシコが2-0で勝利。南アフリカは2人の退場者を出して良いところがなかった。
ただ、僕にとって印象的だったのは、試合そのものだけではなかった。今大会を放送しているFOXの特設ブースに並んでいた顔ぶれだ。
ティエリ・アンリ(元フランス代表)。
ズラタン・イブラヒモビッチ(元スウェーデン代表)。
アレクシー・ララス(元アメリカ代表)。
サッカー界のレジェンドたちだ。
なかでも驚いたのは、“ズラタン”だ。195センチの巨体でスーパーゴールを量産したカリスマ。「俺様」という言葉がこれほど似合う選手もなかなかいない。
ちなみに、林陵平さんもズラタンの熱狂的なファンで「神のような存在」と公言している。
かつてズラタンがLAギャラクシーでプレーしていた時、アメリカで実際に試合を見に行ったことがある。その試合でも、ズラタンはゴールを決めていた。
そのズラタンが、スーツを着て、スマートに話している。もちろん存在感は相変わらずなのだが、解説者姿とのギャップが新鮮だった。
メディアADに感じた寂しさ
開幕戦を見終えたあとは、今回の大会取材に必要なメディアADを受け取りに行った。
向かったのは、ダラス・スタジアムにあるアクレディテーションセンター。ここで、メディアADを発行してもらう。
過去の大会では、メディアADの受け取りに時間がかかることも多かった。書類を確認され、列に並び、写真を撮り、ようやく発行される。そういう流れを何度も経験してきた。
ところが今回は、驚くほど早かった。パスポートを読み込んでもらうと、ものの5分ほどでメディアADを渡された。手続きがスムーズなのはありがたい。ただ、少しだけ物足りなさもあった。
これまでの大会では、メディアADはケースに入っていて、「これがワールドカップの取材証だ」という重みがあった。今回は、プラスチック製の薄いカードのままで、なんか味気ない。
さらに今回の大会は、ほとんどの手続きがメディアアプリで完結する。
これまでは、試合を取材するために会場やメディアセンターへ行き、チケットを発券するという流れがあった。その紙のチケットを受け取る瞬間が、けっこう好きだった。
「ああ、この試合を取材するんだ」
手元に物理的なチケットがあることで実感が湧いてくる。
でも今回は、チケットもアプリ上で完結する。時代としては当然なんだろう。便利だし、効率的だし、SDGS的にもペーパーレスの流れがある。
それでも、ちょっと寂しかった。
救世主「ライスクッカー」
メディアADを受け取ったあとは、日本食スーパーへ向かった。
ダラス近郊のプレイノにはトヨタの工場があり、その近くに「ミツワ」という日本食スーパーがある。宿からは少し距離があったが、共同生活を続けるうえで、日本の食材を確保できる場所は大きい。
店内には、アメリカの普通のスーパーではなかなか手に入らない食材が並んでいた。調味料、麺類、冷凍食品、そして米。
特に大きかったのは、米だった。
海外での長期取材では、食事が大事になる。外食ばかりではお金もかかるし、体も疲れてくる。パンや肉中心の食事が続くと、日本人としてはどうしても米が恋しくなる。
ただ、米を買っても、炊くのが難しい。鍋で炊くこともできるが、コツがいるし、ずっと張り付いていないといけない。そんな時、店内で簡易的な「ライスクッカー」を見つけた。しかも、ちょうどセールになっている。僕が言う。
「これ、買っちゃったたほうが楽じゃない?」
この先の1カ月以上滞在することを考えれば、炊飯器があるかないかで、クオリティー・オブ・ライフがかなり変わる。ということで、米と一緒にライスクッカーも購入した。
宿に戻り、さっそく炊いてみた。しばらくすると、部屋の中に米の炊ける匂いが広がってきた。異国の一軒家で、日本の米が炊けていく。炊き上がったご飯は、思っていた以上においしかった。
その夜も、安藤料理長が料理を振る舞ってくれた。前日に続き、4人で食卓を囲んだ。
取材・文=北健一郎

