なぜ止められるのか――鈴木彩艶、“準備”で支配するゴール前

決勝トーナメント初戦、相手はサッカー王国・ブラジル。日本にとってこの大一番で鍵を握るのが守護神・鈴木彩艶だ。イタリアで磨いてきた「準備」と「タメ」が生む安定感――その真価が、いま世界の舞台で試される。

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「タメ」と準備――進化を支えるGKの本質

日本代表の決勝トーナメント初戦の相手はサッカー王国・ブラジルとなった。

この上ない強敵を前にして、勝敗の鍵を握る存在の一人がGKだ。日本の絶対的守護神である鈴木彩艶は、今大会でも安定したハイパフォーマンスを見せ続けている。

彼の何がすごいのか。イタリア・セリエAで鍛えられた屈強なフィジカルはもちろん、直前までプレーを選択できるGKとして必要な『タメ』を作り出せること。そして、イレギュラーなボールに対しても即座に反応し、コースに手を差し出せる俊敏性、柔軟性、パワーを兼ね備えていることだ。

この『タメ』が非常に重要になる。例えばシュートを打たれる場面で、ただ瞬時に反応するのではなく、コース、角度、高さを見極めてからダイビングすることで、より正確なセービングが可能になる。さらに、ディフレクションでコースが変わったとしても、まだ身体を投げ出す前であれば、そこから軌道修正ができる。

もちろん、ワンテンポずらしてダイビングするからこそ、より高いフィジカル能力が求められる。ジャンプの際のバネとパワー、セービング体勢に入った時の安定感、外に弾き出す力、あるいは確実にキャッチする握力と強さ。鈴木はその技術とフィジカルを身につけてきたからこそ、今のパフォーマンスを実現できている。

「イタリアに行ってかなり言われることは『準備』ですね。それは『縦のポジショニング』も指すのですが、それだけではなくて『横のポジショニング』も当てはまります。ボールが裏に抜けてきた時に縦に対応できるようにするためで、裏へのボールに斜めに対応してしまうとファールの確率が上がりますし、かなり難しい状況を生み出してしまうんです。なので、その前に横のポジショニングをしっかり取ってから、まっすぐにボールへ向かっていかないといけない。それ以外にも、クロス時の中央のマークの確認・準備、その際の手を置く位置、シュート時の足の位置など、本当に細かいですが、準備を怠ればその分だけ失点の確率が高まってしまう。その準備をイタリアで言われ続けていて、そこが良くなってきたことで、自分なりの手応えを感じられるようになりました」

ビッグセーブがもたらす流れ――試合を支配する存在

2024年7月にパルマへ移籍してから約2年。鈴木は改めてGKとしての下地を強化してきた。準備の質を高め、対応策と選択肢を増やすことで、セーブ率や背後のスペース管理の質を向上させ、不測の事態にも対応できる状態を作り出す。

それは偶発的なものではない。「相手の考え方を理解してポジションを取ることが大事」と口にするように、試合展開に合わせて緻密に準備を続けられることが、彼の大きな魅力となっている。

今大会、その緻密さはプレーにはっきりと表れている。グループリーグ初戦のオランダ戦では、開始3分にFWマレンの意表を突く反転シュートに冷静に対応。チームのリズムを崩さないビッグプレーを見せた。このファーストプレーがあったからこそ、日本は落ち着きを取り戻し、試合の流れに乗ることができた。

第3戦のスウェーデン戦でも、1-1で迎えた後半アディショナルタイム、左CKから至近距離でFWイサクにドンピシャのヘッドを合わせられたが、咄嗟に右手を出してボールをバーの上へ押し出した。シュートを止めたことはもちろん、ただ手に当てるだけでゴール前にこぼれていれば押し込まれていた可能性も高かっただけに、きちんとゴールの外へ弾き出したことも含めて、まさにスーパープレーだった。

決戦ブラジルへ――揺るがぬ信頼の理由

「W杯はどの相手もシュートが強烈で、どこからでも飛んでくる。非常にレベルが高い。だからこそ、シュートに対する準備はしっかりしないといけません。特に今大会のボールは反発性が高く、シュートのパンチ力が増すので、マレン選手のシュートのように、かなりスピードとパワーのあるボールが飛んでくる。自分のプレースペースをきちんと確保できることや、片手でもいかにボールをゴールから遠ざけることができるかが大事になってくると思います」

これまで積み重ねてきたものを、この大舞台で確かな形にし、日本を救い続けている鈴木彩艶。さらに相手の本気度が増す決勝トーナメント、しかも相手はブラジルだ。このラウンド32は、彼の存在なくして突破することはできない。

「これまで同様に相手の特徴を頭に入れながらも、どんなプレーが起きてもしっかりと対応していきたいです」

来るべき決戦に向けて、絶大な信頼感を抱かせる日本の守護神は、これまで通り抜かりない準備を繰り返し続ける。

大丈夫だ。日本には彩艶がいる――。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

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超ワールドサッカー編集部
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