決め切れなかった一撃の先に――小川航基、ブラジル戦で証明するストライカーの価値

スウェーデン戦、難しい試合展開の中でピッチに立った小川航基。求められたのはゴールか、それともバランスか。揺れる状況の中でも、ストライカーとしての本能は消えなかった。決め切れなかった一撃の先にあるもの――その答えは、ブラジル戦で示される。

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揺れる状況下での決断――ストライカーが抱えた葛藤

グループリーグ最終戦のスウェーデン戦。1-1で迎えた後半21分、FW上田綺世に代わってピッチへ送り出されたFW小川航基は、難しい試合展開の中で絶えず頭を巡らせていた。

「森保一監督はこの試合に勝って1位通過をするという強い意志を持って僕らを送り出してくれた。1-1というシチュエーションの中で、スクリーンにチュニジアが1点返したとか、オランダが3点目を取ったとか表示され続けていたので、リスクを取るか、守備を優先するかの判断は相当難しかった」

ダラススタジアムの上空には巨大なオーロラビジョンが設置され、同時刻開催のオランダvsチュニジアの途中経過が、試合が動くたびに表示された。場内には大きなどよめきと歓声が響き渡り、その状況もまたピッチ上の選手たちに大きな影響を与えていた。

1トップとして前線からプレッシャーをかけるのか、それともブロックに加わって縦パスを警戒するのか。歓声で味方の声もかき消される中、小川は瞬時の判断を繰り返していた。

「FWなので決めるべきチャンスがあれば決めに行くべきだし、でも大事なのは決勝トーナメントに進むこと。相手がボールを回している時も、ずっと相手にボールを持たれているのも後ろにストレスを溜めてしまうし、かと言って迂闊に行くとロングボールなどで一気に裏を狙ってくるので、どこでどのタイミングでプレッシャーをかけるかはずっと考えてプレーしていました」

決め切れなかった一撃――それでも示したストライカーの本能

この試合は、小川本来の武器である得点力を発揮しやすい展開ではなかった。判断の難しさから守備にズレが生まれる場面もあり、決して目立ったプレーばかりではなかった。それでも、あの一本のシュートは見逃せない。

後半38分、MF鎌田大地が右サイドから鋭いクロスを送り込むと、小川はただ一人反応。ゴール前へ飛び込み、左足ボレーで合わせたが、ボールは惜しくもクロスバーの上を越えた。

ゴールにはならなかった。しかし、鎌田のクイッククロスに瞬時に反応してゴール前のスペースへ飛び込み、難しい体勢の中でも身体のバランスを保ちながら左足を振り抜いた一連の動きは、ストライカーとしての能力の高さを十分に示していた。

「イメージとタイミングはバッチリでした。シュートもイメージでちょっとこう、すらしてゴールに入れるというイメージだったので、本当に悔しいシーンでした。でも、体勢的にも簡単なシュートではなかったので、次に切り替えてやらないといけないなと思っています」

どんな状況でもゴールを狙う。そしてシュートを打った以上は決め切りたい。そのストライカーとしての本能をぶつける最高の舞台が、いよいよ訪れる。

乾坤一擲の一撃へ――ブラジル戦に懸ける覚悟

決勝トーナメント初戦の相手はサッカー王国・ブラジル。日本がW杯決勝トーナメントでW杯優勝経験国と対戦するのは史上初となる。歴史を塗り替える勝利をつかむためには、ゴールが必要不可欠だ。小川にとって、自身の価値を世界へ証明する絶好の舞台となる。

「僕自身はブラジルとやりたかったっていう部分もあるので、ワクワクしています。(ブラジルは)どの選手も怖いですが、一番はヴィニシウス選手を個人的に警戒しています。でも、一番大事なのは、細かいところまでみんなが共通意識を持ってタフにやり続けること。その先にゴールがあると思うので、まずは球際のところ、戦うところ、締めるところ、コンパクトに保つところが重要で、第一優先かと思います。チャンスは少ないと思うので、そこで僕の存在意義を見せたいです」

実はスウェーデン戦のスタンドには、桐光学園高校時代の恩師・鈴木勝大監督が、この一戦のためだけに弾丸日程で駆け付けていた。

「忙しいスケジュールの中で僕のために来てくれて本当に嬉しいです。目の前でゴールを見せたかったのですが、それは次のブラジル戦で画面越しになりますが、日本が本当に得点が欲しい場面で、きっちり決めて、勝さんを喜ばせたいですし、全て自分が持っていくという思いで、チャンスがあったらピッチに立ちたいと思います」

乾坤一擲――。

一瞬のチャンスを逃さず、勝負を決める。それがストライカーの使命だ。高校時代の恩師への恩返し、日本サッカーの歴史を塗り替える一撃、そして世界への証明。そのすべてを胸に、小川航基はブラジルとの大一番へ向かう。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

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超ワールドサッカー編集部
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