グループリーグ最終戦は、少し不思議な90分になるかもしれない。
日本はオランダと勝ち点4で並ぶグループFの2位でスウェーデン戦を迎える。勝てば1位通過の可能性を残す一方で、引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる。
もちろん、森保ジャパンが目指すのは勝利だ。ただ、W杯はリーグ戦ではなく、勝ち上がるための大会でもある。だからこそ、最終戦では勝負にこだわるだけでなく、試合をどうマネジメントするのかという”したたかさ”も求められる。
1位通過か、2位通過か。グループF最終戦の構図
日本が1位通過するための条件は、決してシンプルではない。
2試合を終えた時点で、日本とオランダはともに勝ち点4、得失点差も同じ「+4」で並んでいる。ただし、総得点ではオランダが7得点、日本が6得点。直接対決は2-2の引き分けだったため、このまま勝ち点で並んだ場合、得失点差、総得点が順位を分けるポイントになる。
日本がスウェーデンに勝ち、オランダがチュニジアに勝てなければ、日本は文句なしで1位通過となる。日本が引き分けた場合でも、オランダが敗れれば首位に立つ。ただ、現実的にはオランダがチュニジアに勝利する可能性は十分にある。そうなれば、日本はスウェーデンに勝つだけでなく、オランダを上回る点差、あるいは総得点まで意識しなければならない。
スウェーデン戦で求められるゲームマネジメント
1位通過を狙うなら、ゴールはほしい。だが、ゴールを奪いに行きすぎれば、スウェーデンの強力なカウンターを受けるリスクも高まる。ヴィクトル・ギェケレシュ、アレクサンダー・イサクという世界トップクラスの2トップは、ロングボールから一気にゴール前まで運んでフィニッシュまで完結する力がある。
キャプテンの板倉滉は「リスク管理のところはちゃんとやらないといけない」と繰り返した。オランダ戦、チュニジア戦ではセンターバックが前に出てボールを奪い切る場面もあったが、スウェーデン相手に同じ感覚で前に出れば、背後に大きなスペースを残すことにもなりかねない。最終ラインで数的同数にならないように、3バックとボランチが常にカバーリングできる距離感を保てるか。そこは大きなポイントになる。
右サイドには、オランダ戦でゴールを決めた快速FWアンソニー・エランガもいる。左ウイングバックは前田大然、鈴木淳之介、あるいは経験豊富な長友佑都の起用も考えられる。長友はスウェーデンの攻撃陣について「止めるイメージはしっかりしている」と話していた。先発か途中出場かは分からないが、試合の流れを読めるベテランの存在は、こういう試合でこそ効いてくる。
森保一監督も前日会見で、「1位通過を目指したい気持ちはあるが、大量得点を狙ってバランスを崩し、チームがバラバラになるほうがリスクになる」と語っていた。
ベスト32を見据えたターンオーバー
実は、日本にとって1位通過だけがベストシナリオとは言い切れない。決勝トーナメント1回戦は、1位通過ならモンテレイ、2位通過ならヒューストンで行われる見込みだ。モンテレイは屋外スタジアムで暑さの影響を受けやすく、移動距離も長い。一方、ヒューストンならナッシュビルからチャーター機で約2時間。スタジアムは空調設備が整っており、中3日で迎えるノックアウトラウンドを考えれば、コンディション面では大きな違いがある。
しかも、ベスト32で対戦する可能性があるグループCのブラジル、モロッコは中4日で試合に臨む。日本は中3日。W杯優勝を掲げるチームにとって、この最初のノックアウトラウンドは大きな山場になる。そこに100%の状態でぶつかるためには、スウェーデン戦でどれだけ消耗を抑えられるかも重要なテーマになる。
だからこそ、大幅なターンオーバーが行われる可能性は高い。
オランダ戦、チュニジア戦で長い時間プレーした伊藤洋輝、鎌田大地、堂安律、中村敬斗、上田綺世らはベンチスタートになるかもしれない。一方で、佐野海舟のように2試合連続フル出場でも、その運動量と回復力から先発が予想される選手もいる。
チュニジア戦でW杯デビューを果たした鈴木唯人は、「誰が出ても機能するのが今の日本代表の強み」と話していた。ここまでの2試合で22人がピッチに立っており、初出場の選手たちがW杯の緊張感を味わえたことも大きいだろう。
中村敬斗は「引き分けでも突破できるということは考えず、自分たちは勝ちに行く」と話す。その一方で、「余計な計算をすれば足元をすくわれる」とも。勝ちに行くことと、状況を見ながら戦うことは矛盾しない。むしろ、その両方を同時にやらなければいけないのがW杯のグループリーグ最終戦である。
問われるのは日本代表の成熟度
思い出すのは、2018年ロシアW杯のポーランド戦だ。
あの試合で日本は、0-1でリードされている状況ながら、他会場の試合結果から終盤に攻めることをやめ、時間を使って決勝トーナメント進出を選んだ。あの判断は今も賛否が分かれる。ただ一つ言えるのは、W杯は「勝つ大会」であると同時に、「勝ち上がる大会」でもあるということだ。
今回のスウェーデン戦も、終盤のスコアやオランダ対チュニジアの結果次第では、90分の意味が変わってくる可能性がある。1位を目指すのか。2位を受け入れるのか。勝ち点3を取りに行くのか。あるいは、無理をせず試合を終わらせるのか。
勝利を目指すことは変わらない。その上で、試合の流れを読み、相手の状況を見極め、必要であればしたたかに戦う。1位か、2位か。その問いにどう向き合うか。グループリーグ最終戦は、日本代表が世界で勝ち抜くための“成熟度”を示す90分になる。
取材・文=北健一郎

