なぜ佐野海舟は外せないのか。“献身性”で支える中盤の要

「チームの結果がすべて」。その言葉を体現するように、佐野海舟はワールドカップの舞台でも変わらぬ献身を見せている。派手さはなくとも、確実に勝利へと近づける働き。その根底にあるのは、どこまでも真っ直ぐな“フォア・ザ・チーム”の精神だった。

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揺るがぬ献身――中盤を支える“チーム第一”の思考

「自分のプレーも大事ですが、僕はチームの結果にしかフォーカスを当てていないので、自分のことはもう二の次。チーム第一のプレーをしたいと思います」

北中米ワールドカップ初戦のオランダ戦前日、日本の攻守の要であるボランチ・佐野海舟はそう決意を口にした。彼の真骨頂は「どこまでも真っ直ぐな献身性」にある。

この言葉通り、オランダ戦では先発フル出場し、多彩な攻撃を繰り出す相手に対して粘り強い守備で中盤を支えた。74分から途中出場したチュニジア戦でも、リードを守る局面でポジショニングの妙と鋭い予測を発揮。パスコースを遮断し、カウンターの芽を摘み、さらに攻撃のスイッチを入れる配球も見せた。

彼の思考は常に「チームの勝利」に向いている。そのために自分が何をすべきかを考え抜くことが、すでに日常になっているのだ。代名詞であるボール奪取、インターセプト、セカンドボールの回収。そのすべては、この揺るがぬマインドに支えられている。

無名の1年生が放った輝き――原点にあった覚悟

米子北高時代から、彼はひたすらチームのために汗をかく存在だった。1年時からボランチとして中盤の攻防に顔を出し、球際の争いの中心にはいつも彼がいた。初めてそのプレーを見たのは、1年生だった夏のインターハイ。3回戦の青森山田戦で、無名のMFは確かな存在感を放っていた。

相手には、当時2年生の郷家友太、3年生の高橋壱晟という実力者がいた。それでも佐野は一歩も引かなかった。ゴール裏脇でカメラを構えていた筆者のフレームには、彼らがボールを持つたびに佐野が飛び込んできた。鋭い寄せで自由を奪い、突破を阻み、危険な場所に必ず現れる。そのプレーぶりに強い衝撃を受けたのを覚えている。

その後も取材を重ねたが、彼は多くを語るタイプではなかった。それでも口にする言葉はいつも一貫していた。

「チームのためにやるだけです。僕が守備をすることで味方が救われるなら、いくらでもやります」

謙虚で、徹底してフォア・ザ・チーム。その言葉は決して飾りではなく、心の底から出てくる本音なのだとすぐに分かった。

世界の舞台で研ぎ澄まされる信念――さらなる進化へ

この信念を軸に、彼は高校3年間で大きく成長した。そしてプロになっても、その姿勢はまったく揺らがなかった。ブンデスリーガで結果を残し、ワールドカップメンバーにまで上り詰めても、佐野海舟の本質は変わらない。

「オランダ戦もチュニジア戦も、チームが厳しい状況の時にどれだけ自分が体を張れるか、走れるかを大事にして戦いました。いつも通りのプレーはできたと思います」

一方で、初めて立つワールドカップの舞台は、彼に新たな刺激も与えている。

「普段感じたことがない歓声だったり、雰囲気だったり、いつもと違う舞台なので、より責任感が増しているように感じますし、何よりサッカーをしていて本当に楽しいです。ワールドカップはいろんなプレッシャーがありますが、それすらもここにいないと感じられないもの。高い緊張感を持ってやれているのが大きいです」

これまで貫いてきた信念に、世界最高峰の舞台で得る刺激が加わる。類まれなボール奪取力とセカンドボール回収能力を武器にのし上がってきたボランチは、さらにその「フォア・ザ・チーム」の精神を研ぎ澄ませながら、大舞台で成長を遂げていくはずだ。

次のスウェーデン戦でも出番が来れば、彼はまたチームのために走り、汗をかき、隙を見逃さずに相手のブロックを破壊しにいく姿が目に浮かぶ――。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

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超ワールドサッカー編集部
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