「静かなる万能戦士」がW杯で示した価値――鈴木淳之介、初出場の16分間

チュニジア戦でついに訪れたワールドカップ初出場の瞬間。途中出場という限られた時間の中で、鈴木淳之介は「彼らしさ」を変わらず体現した。派手さはないが、確実にチームに安定をもたらす万能性。その価値は、大舞台でも揺らぐことはなかった。

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“まず守る”から始まる仕事――右ウィングバックで示した冷静さ

ついに初のW杯のピッチに立ったDF鈴木淳之介。グループF第2戦のチュニジア戦の後半29分、MF鎌田大地に代わって投入されると、託されたポジションは左ウィングバックだった。

常に冷静沈着。与えられたポジション、タスクをハイレベルでこなすことが彼の武器だが、晴れの大舞台でも変わらず淡々とタスクをこなした。

この試合のタスクは「まずは失点をしない。その上で(チームとして)ゴールを狙い続ける。とにかく守備から入ろうと思っていました」と口にしたように、リスクヘッジと攻撃時にテンポを変えること。

3点とリードを広げる中で、失点のリスクを極力減らし、かつビルドアップ面で積極的に関わって追加点を狙いに行く。途中出場のアタッカーが貪欲にゴールを狙う中で、彼はサイドのバランサーとして的確なポジショニングを取る姿が印象的だった。

この姿を見て、筆者は「実に彼らしいな」と思った。昔から「僕は目立つタイプじゃないし、周りがプレーしやすい環境を整える方がチームの勝利に繋がる」と口にしていたからだ。

“司令塔”から“万能型”へ――進化を遂げた中盤プレーヤー

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帝京大可児高時代から彼の両足から繰り出されるスルーパスは一級品だった。常にピッチ全体を見ながら、ボールを受けにアタッカー、DFラインを含めてパスコースを作り出すサポートをし、攻撃のスイッチを入れたら自らも前線に駆け上がっていくというダイナミックさと繊細さを持ったボランチだった。

「中学まではスルーパスとか、ラストパスにこだわっていたのですが、高校に入ってより全体をコントロールするパスを意識するようになりました」

この言葉どおり、「単なる司令塔」になることなく、攻守において連続して関わり続けることができ、かつ繋ぎのパスも効果的な縦パス、ラストパスも出せる中盤のマルチロールになったことで、一気に高卒プロの道に繋がった。

そして、湘南ベルマーレでは3バックのCBにコンバートされたことで、1対1の守備やカバーリング、球際の部分が磨き上げられ、自ら奪って得意とするリズムメーカーの位置に持っていける選手となった。

初の海外挑戦となったコペンハーゲンでは、経験のなかった右サイドバックを忠実かつ自分の特徴も発揮してハイレベルにこなし、周囲の信頼を掴むと、日本代表でもボランチ、CB、サイドをこなせる選手として定着し、22歳で本大会のメンバーに選ばれた。

16分間に宿った価値――“変わらない強さ”がチームを支える

チュニジア戦、彼にとっては16分間のプレーとなり、大きな見せ場こそなかったが、W杯初出場という大きな一歩を踏み出せたことは大きな意義を持つ。

そして、その内容も彼らしく、瞬時に試合のリズムに馴染み、いつも通り与えられたタスクを忠実にこなしながら、自分のリズムを崩さないプレーを見せたことは、日本代表にとっても非常にポジティブな要素となった。

「投入される時には『やってやろう』という気持ちと、楽しんでプレーできたらいいなと思って入りました。3点リードした状態だったので、リラックスした状況で入れたのでチームに感謝しています」

試合後、彼はこう謙遜したが、どんな状況でも、どのポジションでも冷静沈着に仕事をこなすことは簡単ではない。彼がチームにいることの大きな意義を示したのは紛れもない事実だ。

これから先、チームのバランサーとして、鈴木の存在はグループリーグ最終戦のスウェーデン戦、そして強敵が連続する決勝トーナメントに向けて大きな武器になるはずだ。

初めて彼を見た高校2年生の夏から、あっという間の6年間。当時、彼のコラムを書いた際に、湘南ベルマーレのスカウト(当時)から「まだ記事にしないでほしい。他に見つかってしまう」と連絡を受けたことが昨日のことのように思い出される。

それほどの原石は、やはり本物だった。今の姿がそれを証明しているし、その価値はこの大会でさらに飛躍的に高まっていくだろう。日本の勝利とともに――。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

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超ワールドサッカー編集部
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